2007年10月26日 産経新聞インタビュー

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制度に課題 機能強化も

     江田五月参院議長

 ―― 参院60年の歴史をどう受け止めるか
 「参院は戦前の体制を大きく変え、貴族院ではなく、国民主権の立法機関としてできた。60年間は政党化などいろんな問題があった。しかし今、ずっとそうでいいかは別として、衆院の3分の2を超える巨大与党に対し、参院が別のバランスで国民合意の形成にあたれという体制になった。参院は頑張るときだ」

 ―― 参院のあるべき姿をどう考えるか
 「いつの時代、どんな政治状況でも通じるような答えは難しい。制度設計を合理的に説明すると、衆院は議院内閣制のもとで直接政権を選ぶ役割、それに対して参院は良識の府となる。創設期は政党政治と距離を置いてきたが、その後の流れは政党化だった。いま政党化の是非を抽象的に論じても始まらない。政党化された両院の中で問題なのは政治に緊張感がないこと。政権交代がないと議会制民主主義はうまくいかない。そうすると参院も良識の府とお高くとまってはいられない。ただ、政権交代が当たり前になれば、改めて衆参の形はどうあるべきなのか改めて問題になる」

 ―― 選挙制度を含め参院改革に取り組む考えは
 「日本の二院制は細かな制度設計が十分できずスタートしただけに課題は残っている。選挙制度も衆参が同じような比例代表と選挙区との組み合わせになっている。定数是正を含め、選挙制度も微調整ではなく踏み込んだ改革をしないといけない。近く参院改革の検討を始める」

 ―― 参院の権能についての改革は
 「これまでも決算重視とか、専門的な調査会の設置とか、累次の改革があった。衆院と違った独自の機能は強化しなくてはいけない」

 ―― 与野党逆転の中での議会運営は
 「参院は『衆院のカーボンコピー』といわれても仕方がないことがたくさんあったが、ねじれ国会となった。法案審議も参院の審議時間は衆院の7、8割ぐらいだったが、もうそれはない。衆院の審議が不十分なら、参院は独自に密度の濃い、掘り下げた議論をしていく。今後は参院が衆院と違う結論を出すことが、いろんな局面で出てくると思う。国民には、それがいいか悪いかの判断は少し時間を置いて考えるゆとりをもってほしい。一時は暗礁に乗り上げても、結果的にはよかったということがある」


産経新聞 2007年11月7日朝刊掲載
詳説・戦後シリーズ ■第7回「参議院」


2007年10月26日

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