2006年4月26日

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参議院憲法調査会での発言  江田五月

 今日、私は発言の予定をしていなかったんですが、同僚議員の御発言に触発をされまして、若干の意見を申し上げます。

 国民投票制度の整備の必要、これは私たち民主党も当然だと思っております。現在の憲法は改正というものを予定し、第九章改正、そして第九十六条に改正の規定を置いているわけで、規定がありながらその制度ができていないというのは、やはりこれはいびつなことだと言わなければならない。

 そして、その改正の制度は、じゃ、どうやってつくるかというと、特別の国民投票又は選挙の際に行われる投票となっていますが、これは選挙の投票とは違って、やはり発議された憲法の内容に賛成かどうかを尋ねるわけですから、別の制度であると。しかし、その制度は、じゃ、どうやってつくるかというと、やはりこれは法律で作るほかないので、国民投票法というものを作らなきゃいけないと、これはそのとおりだと思っております。

 ただ、ここで考えなきゃいけないのは、この国民投票法というのは憲法の改正と極めて密接な関係を持っているということですね。

 簗瀬委員は準憲法的規範と言われましたかね、そういう言い方もあると思いますが、この九十六条の規定というのは、これは極めて面白い規定でありまして、この規定ができる経過についての学者の説などもいろいろあるようですが、今日はそれについては触れませんが、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会がこれを発議すると。これは、普通の法律のルールに従って、ただその要件が三分の二に上がっているというだけではないんですね。各議院がそれぞれ三分の二で同じ案を議決をして国会が発議をするということにならなきゃいけない。衆議院と参議院と内容の違うものを三分の二で議決をしてみても、それでは発議ができない。そういう特殊な性格の構造になっているわけで、したがって、憲法改正の発議は、内容を決めるに当たって、衆議院、参議院両方が、どういう方法であるかは別として、いろいろと知恵を絞りながら一つの案に到達しなければできないという、そういう性格になっているわけです。

 そういうものの発議をするときの法制度というのをどうやってつくるかということですから、この法制度も普通の法律と同じように、例えば内閣が提出をする、衆議院で可決をされる、参議院に来て、仮に参議院が否決をすると衆議院が三分の二で可決をして成立させると、そのようなやり方でこの国民投票法というものを作っても、うまくその後動くはずがないじゃないですか。

 したがって、私どもはやはり、この国民投票法についても、その内容の合意を得る方法というのは、これはよく考えていかなきゃいけない、衆参両方がこれをやろうと、作ろうという意思を持った議員が英知を絞って一つの案に集約させていくという努力がないといけないと思っております。

 そういう意味で、この経過の中で内閣が案を出すというようなこともちょっと議論されたことがありますが、これがさたやみになったことは大変有り難いことだと思っておりますが、今与党の方が与党だけでも早期に成立をさせようというような動きがもし仮にあるとするのなら、これは大変遺憾なことであって、そのようなことをやるならば憲法改正に対して大きな障害になると、この警告を私どもはしておかなければいけないと思っております。

 ですから、早期という、早期がどういう意味で、六十年たっているんですから、まあ二、三年も早期のうちに入るというなら、それは分からぬわけじゃありませんが、この通常国会の中でというような早期はいささか早期に過ぎるというように私は思っているところで、十分な議論をしていきたいと。私どももそういう意味でこの論点メモをちゃんと出しているわけでありまして、また、みんなの議論の中から結論を得るという意味で私たちは、この国民投票制度については大綱までで止めている、憲法改正についても提言までで止めている、この私どもの自制心というものをひとつ是非御理解をいただきたいと思っております。

 時間が余りありませんが、あと一、二点だけ。

 この数年の議論の中で憲法についての理解は私ども随分成熟をしてきたと思っておりまして、憲法をどう変えるかといういろんな議論はありますが、憲法の三原則というものは定着をし、これは貴重なものであって、これからも堅持をするというそういう合意ができているわけですから、私はそういう合意の下に憲法改正の議論もタブーなく大いに進めていければいいと思っております。

 ただ、投票権者ですが、先ほど選挙人名簿がやはり基本になるのではないかというお話がございました。それも一つの考え方かと思いますが、例えば三か月居住要件というようなものが憲法改正の国民投票に要るのかどうかですね。これは、やはり日本国民であれば二か月であろうが一か月であろうが、昨日転居してきた者であろうが、みんなそれは国民投票の投票権というのは持っていて当然ではないかと思いますし、また、例えば在監者なども、これは議員を選ぶ投票については確かにいろんな制約が免れないと思いますが、憲法改正の投票まで在監者は投票権がないんだという必要があるのかどうかというようなことを考えますと、やはりおのずから公職選挙法の選挙人名簿によるということではやはり足りない部分があると。そこで私は、これは、憲法改正の国民投票については、公職選挙法の選挙人名簿をもっともっと補充して豊かな制度につくるべきものではないかと思っております。

 そのほか、各論点については既に私どもの簗瀬委員が前回問題提起をしておりますし、今日また高嶋委員の方からも発言ございましたので、そちらにすべて譲ります。

 以上です


2006年4月26日

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