2001/11/28

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平成13年(訴)第1号 罷免訴追事件

            判     決
本 籍  岐阜県岐阜市 (江田事務所の判断で以下略)
住 居  東京都中野区中央一丁目50番4号
       最高裁判所東中野宿舎1号棟402号室
          東京地方裁判所判事兼東京簡易裁判所判事
          (東京高等裁判所判事職務代行)
          被訴追者  村   木   保   裕
昭和33年3月23日生

            主     文
       被訴追者を罷免する。

            理     由
第1 認定した事実

1 被訴追者の裁判官歴

(1) 被訴追者は,昭和61年4月11日判事補に任命され,平成元年4月11日簡易裁判所判事に兼ねて任命され,同6年4月1日簡易裁判所判事兼判事補に任命され,判事補任期終了翌日の同8年4月11日判事兼簡易裁判所判事に任命され,簡易裁判所判事任期終了翌日の同11年4月11日簡易裁判所判事に兼ねて任命された現職の裁判官である。

(2) 被訴追者は,昭和61年4月11日広島地方裁判所判事補に補せられて勤務した後,転補により名古屋,金沢,山口の各地方,家庭,簡易裁判所に勤務し,平成8年4月11日山口家庭裁判所判事兼山口地方裁判所判事に補せられて勤務した後,転補により津地方,家庭,簡易裁判所の勤務を経て,同12年4月1日東京地方裁判所判事兼東京簡易裁判所判事に補せられるとともに,東京高等裁判所判事職務代行を命ぜられ,同高等裁判所刑事第5部において刑事事件の審理裁判を担当していた。現在は,当面事件配てんのない同高等裁判所の特別部に配属されている。
 なお,上記の家庭裁判所勤務の際には,通算3年程度,少年事件を担当した。

2 被訴追者の犯罪行為

 被訴追者は,下記のとおり3回にわたり,各児童買春をした。

(1) 平成13年1月20日,神奈川県川崎市川崎区駅前本町所在のホテル客室内において,当時14歳の少女(以下「児童A」という。)に対し,同女が18歳に満たない児童であることを知りながら,対償として現金2万円の供与を約束して,同女と性交した。

(2) 同年4月5日,千葉県市川市市川一丁目所在のカラオケ店客室において,当時16歳の少女(以下「児童B」という。)に対し,同女が18歳に満たない児童であることを知りながら,対償として現金の供与を約束して,自己の性的好奇心を満たす目的で,同女の乳首を指で触るなどした。

(3) 同月28日,東京都八王子市子安町四丁目所在のホテル客室内において,当時15歳の少女(以下「児童C」という。)に対し,同女が18歳に満たない児童であることを知りながら,対償として現金1万円の供与を約束して,自己の性的好奇心を満たす目的で,自己の性器を手淫させるなどした。

3 刑事事件の経緯

(1) 上記2の刑事事件は,平成13年2月20日に東京家庭裁判所に身柄付で虞犯送致された児童Aの供述を端緒とし,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,「児童買春処罰法」という。)違反の容疑で,捜査が開始された。そして同年5月19日午後4時48分,被訴追者は,神奈川県川崎市川崎区日進町の路上において,捜査員らから任意同行に応じ車両に乗車するよう求められたところ,捜査員らを押しのけるようにして逃走を図り,制止しようとした捜査員らを振りほどこうと暴れ出したため,緊急逮捕された。

(2) 捜査の結果,次のとおりの事情が判明した。

ア 被訴追者は,前記1の(2)のとおり同12年4月1日に東京高等裁判所勤務になった直後の同年5月下旬ころ,伝言ダイヤルで見知らぬ女性と知り合いたいと考え,プリペイド式携帯電話を購入し,電話に添付の利用ガイドに記載されていた伝言ダイヤルサービスを,「コージ」と名乗って利用するようになった。

イ 同年6月ころ,メッセージが入った当時15歳の少女(以下「児童E」という。)に電話をかけ,初めから「セックスをしよう」などと言って,そのころ同女を呼び出し,同女及び同道した児童Cに対し,現金を交付して性的接触をした。

ウ 被訴追者と児童Cとの接触は,逮捕直前の同13年4月28日まで,十数回にわたって続き,その間性的接触も頻回で,現金も交付していた。

エ 被訴追者と児童Aとの接触は,被訴追者が伝言ダイヤルを通じ携帯電話で呼び出した当時14歳の少女(以下「児童D」という。)に,家出中の児童Aを紹介されたことから始まった。児童Bとの接触も,伝言ダイヤルを利用した携帯電話での会話を通じて始まった。

オ 被訴追者の携帯電話には,18歳以上の女性からもメッセージが入ったが,これらの女性とは深く交際することはなかった。

(3) 被訴追者は,同年6月8日に上記2の(1)の事実により,同月18日に同(2)及び(3)の各事実により,東京地方裁判所に起訴された。同裁判所は,公判審理の上,同年8月27日,同(1)ないし(3)に沿う事実を認定した上,児童買春処罰法を適用して,被訴追者に対し,懲役2年,執行猶予5年の刑を宣告し,同判決は,同年9月11日に確定した。

(4) 被訴追者は,上記(1)のとおり,逮捕時こそ抵抗したものの,その後は一貫して刑事訴追された各事実を認め,同年5月24日には退官届を提出し,罷免されることを当然と受け止める反省の態度を示している。

4 社会的背景

(1) 児童買春処罰法が制定された背景

 世界中で商業的性的搾取を受けている児童は,100万人から150万人いるといわれ,国際的に深刻な問題となっている。平成元年に国連総会で採択された「児童の権利に関する条約」第34条は,児童はあらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から保護されると規定しており,日本も同6年4月に同条約を批准している。

 しかし,情報産業の急速な発達に伴い,中・高校生らの間にも携帯電話が普及し,テレホンクラブ,出会い系サイト等が次々と誕生し,いわゆる援助交際など,児童が気軽に性的交渉に関わるようになったことが社会問題化してきた。

 これに対し,児童買春等を規制する立法措置等を求める数々の請願が国会に提出され,第141ないし143回国会においては,多数の請願が採択された。

 国会では,与野党を問わず議員間で立法の気運が盛り上がり,さまざまな検討と努力の結果,同11年3月31日,参議院に児童買春処罰法案が議員立法として提出され,同年5月18日の第145回国会で衆参とも全会一致で成立し,同年11月1日施行された。

 同法第1条は,「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ,児童買春,児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに,これらの行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより,児童の権利の擁護に資することを目的とする。」と規定し,同法が児童の保護を目的としたものであることを明確にしている。

(2) 捜査機関の取組み

 警察庁は,同年10月14日,同法の施行に先立ち全国の警察に対し通達を出して,捜査体制の整備や被害児童の保護等の具体的留意事項を示し,積極的な対応を促した。その後も折に触れ,同法違反事件の防止に万全を期すことを呼びかけている。

(3) 本件に対する世論の動向

 同13年5月19日,被訴追者が児童買春処罰法違反の容疑で逮捕されたことを受けて,各報道機関はこれを大きく報じた。現職刑事事件担当裁判官の逮捕は,裁判に対する国民の信頼を大きく失墜させると受け取られた。

 さらに,携帯電話などの匿名性の高い通信手段が引き起こす現代社会の病理現象と裁判所という「閉鎖的社会」との関連性や,裁判官の仕事量,裁判所内の人間関係,裁判所のキャリア人事制度との関連性などが論じられた。

第2 証拠の標目

 以下,括弧内の番号は証拠等関係カードにおける裁判官訴追委員会請求証拠の番号を示し,弁の付された番号は弁護人請求証拠の番号を示す。
第1の1ないし3の各事実について
 被訴追者の当公判廷における供述
 被訴追者の裁判官訴追委員会に対する事情聴取書(31)
同1の事実について
 最高裁判所作成の被訴追者の履歴書写し(20)
 被訴追者の司法警察員に対する供述調書謄本(21)
同2の各事実について
 被訴追者の検察官(30)及び司法警察員(25)に対する各供述調書謄本
同2の(1)の事実について
 被訴追者の検察官(2通。26,27)及び司法警察員(3通。22ないし24)に対する各供述調書謄本
 児童Aの検察官(4)及び司法警察員(2通。2,3)に対する各供述調書謄本
 児童Dの検察官に対する供述調書謄本の謄本(7)
 司法警察員作成の被害場所確認捜査報告書謄本(6)及び引当り捜査報告書謄本(8)
 東京都大田区長作成の附票写し添付の戸籍謄本の謄本(5)
同2の(2)の事実について
 被訴追者作成の「裁判官訴追委員会殿」で始まる書面(32)
 被訴追者の検察官に対する供述調書謄本(28)
 児童Bの検察官(10)及び司法警察員(9)に対する各供述調書謄本
 司法警察員作成の被害場所確認捜査報告書謄本(12)
 千葉県船橋市長職務代理者助役作成の身上調査照会回答書謄本の謄本(11)
同2の(3)の事実について
 被訴追者作成の「裁判官訴追委員会殿」で始まる書面(32)
 被訴追者の検察官に対する供述調書謄本(29)
 児童Cの検察官(14)及び司法警察員(13)に対する各供述調書謄本
 児童E(16)及び内藤正幸(17)の司法警察員に対する各供述調書謄本
 司法警察員作成の引当り捜査報告書謄本(18)
 東京都足立区長作成の附票写し添付の戸籍謄本の謄本(15)
同3の(1)の事実について
 緊急逮捕手続書謄本(1)
同3の(2)の事実について
 被訴追者の検察官(5通。26ないし30)及び司法警察員(3通。22,24,25)に対する各供述調書謄本
 児童Aの検察官(4)及び司法警察員(2)に対する各供述調書謄本
 児童Dの検察官に対する供述調書謄本の謄本(7)
 児童Bの検察官(10)及び司法警察員(9)に対する各供述調書謄本
 児童Cの検察官(14)及び司法警察員(13)に対する各供述調書謄本
 児童Eの司法警察員に対する供述調書謄本(16)
同3の(3)の事実について
 起訴状写し(33)
 追起訴状謄本の写し(34)
 判決謄本(35)
 証明書(36)
同3の(4)の事実について
 退官届写し(弁1)
同4の(1)の事実について
 参議院法務委員会調査室作成「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案(参第14号)《参考資料》」と題する書面(37)
 参議院事務局作成の第百四十五回国会参議院法務委員会会議録第八号(38)
 衆議院事務局作成の第百四十五回国会衆議院法務委員会議録第十一号(39)
 衆議院事務局作成の第百四十五回国会衆議院法務委員会議録第十二号(40)
同4の(2)の事実について
 警察庁次長作成の「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行について(依命通達)」と題する書面写し(41)
 警察庁生活安全局長作成の「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に基づく積極的な取締り等について」と題する書面写し(42)
 警察庁生活安全局少年課作成の「少年非行等の概要(平成13年上半期)」と題する書面写し(43)
 警察庁生活安全局少年課長作成の「テレホンクラブ,出会い系サイト等を利用した犯罪から少年を守るための広報啓発活動の強化について」と題する書面写し(44)
 警察庁生活安全局少年課作成の「テレホンクラブ,出会い系サイト等を利用した犯罪から少年を守るための広報啓発活動の強化について」と題する書面写し(45)
同4の(3)の事実について
 新聞記事写し(15通。46ないし60)

第3 法律上の判断

1 在任中任命欠格事由に該当した裁判官の身分

 裁判官訴追委員会は,平成13年8月9日,当裁判所に対し,被訴追者につき,裁判官弾劾法第2条第2号の「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当する事由として前記第1の2の(1)ないし(3)の各犯罪行為をあげ,罷免の訴追をした。その後,被訴追者は,東京地方裁判所判決により懲役2年,執行猶予5年の刑を宣告され,同判決は同年9月11日に確定したことにより,裁判所法第46条の「禁錮以上の刑に処せられた者」として,任命欠格事由に該当することとなった。そこで,これにより直ちに,被訴追者が裁判官としての地位を失ったことになるかどうかについて判断する。

 国家公務員法第76条には,国家公務員一般職が在職中に任命欠格事由に該当することとなったときは,当然失職するという規定があるが,裁判官は国家公務員特別職であるから,同条の適用はない。裁判所法第46条は,任命欠格事由を定めるが,国家公務員法第76条の欠格による失職に相当する規定は存在しない。そこで,当然失官するとの法律上の根拠はないことになる。

 この点に関し,禁錮以上の刑に処せられた者が依然として裁判官としての地位に留まるのは,国民感情から許されず,また,在任中に任命欠格事由に該当することとなり,そのことが裁判所の判決によって確定した以上,その事由の発生につき疑義が生ずる余地はなく,これを裁判官弾劾裁判所の裁判によって再確認する必要はないとして,裁判官が在任中に任命欠格事由に該当することとなったときは,当然失官するとの考え方がある。

 しかし,日本国憲法は,三権分立の原理を採用し,司法権の行使が他の国家機関の干渉を受けやすいという歴史的経験に鑑み,司法権の独立を強く保障するとともに,現実に裁判の職務に当たる裁判官が,その良心に従い独立してその職権を行うことを保障している。

 さらに,大日本帝国憲法が第58条第2項に「裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ」と規定して刑の宣告による失官の規定を置いていたのに対し,日本国憲法は第78条に「裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない。」と規定して,裁判官が罷免される場合を限定している。これは,裁判官の職権行使の独立を制度上も保障しようという趣旨にほかならない。

 裁判官について,国家公務員法第76条に相当する規定が設けられていないのは,そのように規定すると,日本国憲法第78条が失官事由を厳格に限定することを通じて裁判官の身分を保障しようとした趣旨が没却されることとなるからであって,このことは,裁判所法の制定経過(司法研究報告書第八輯第一〇号「終戦後の司法制度改革の経過(第二分冊−一事務局当局者の立場から−)」)からも推察される。

 日本国憲法第64条第1項は,同第15条第1項に規定する国民の公務員選定罷免権を,強く身分保障された裁判官に対して制度化するものとして,国民の代表者である両議院の議員によって組織される弾劾裁判所を設け,司法権の独立との調和を図っている。この制度設計に鑑みても,在任中に任命欠格事由が生じた場合にも,失官させるには弾劾裁判を必要とすると解する方が,国民の公務員罷免権の保障に資することになる。

 また,仮に当然失官すると解した場合,刑法第34条の2第1項の期間を経過し,あるいは執行猶予期間が満了すると,裁判官弾劾法による資格回復裁判を経ることなく,当然に法曹資格を回復する効果が生じることとなる。ところが,有罪判決を受けることなく弾劾裁判を経た場合には,罷免から5年経過した後に,改めて資格回復裁判を受けなければならない。一般に,有罪判決を受けた場合の方が,受けない場合より,社会的非難の程度は重いと考えられるのに,それと逆の結果となるこのような扱いは,著しい不均衡を生じさせることになる。このような不均衡を生じる法解釈は,採用することができない。

 以上を総合し,罷免の訴追を受けた裁判官が,在任中任命資格を失うに至った場合には,当然には裁判官の地位を失わず,裁判官弾劾裁判所の罷免の判決があってはじめて失官の効果が生ずると解するのを相当とする。

2 裁判官弾劾法第2条第2号該当性について

 次に,前記第1の2及び3に認定した被訴追者の行為が,裁判官弾劾法第2条第2号に規定する「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当するかどうかを判断する。

 裁判は,もっぱら事件を担当する裁判官の責任によって,その独立した判断で行われるものであるから,国民に対し,その判断に服するよう求めるためには,単に裁判官が,その職務の遂行につき,事実認定と法律適用に職業的技量を備えているだけでは足りず,職務の内外を問わず,国民から信頼される人権感覚と識見を備えていることが必要である。日本国憲法第76条が「その良心に従ひ」と規定するのも,裁判官が国民に対し信頼を求めるに足りる良心を備えていることを前提としているのであり,裁判官の地位には,このような良心を保持する倫理規範が内在しているといわなければならない。

 この倫理規範に背き,法律に違反して国民の信頼に背反する裁判官によっては,到底,憲法の負託した重大な職責が果たされると期待できないことはいうまでもない。よって,裁判官にこのような事情が生じたときは,裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときに該当することになる。そして,その判断に当たっては,国民の信頼に対する背反と最終的に認められるかどうかが重要であるから,訴追状記載の罷免事由とされた行為の有無はもとより,被訴追者の具体的職務や地位,その行為を行うに至った経緯,その行為が社会に及ぼした影響,司法権に対する国民の信頼を損ねた程度等,訴追事由に起因して生じた被訴追者に対する国民の信頼の崩壊全体が審理の対象となるというべきである。

 以上をふまえて,被訴追者の行為に対する当裁判所の評価を示す。

 訴追事由は,3人の児童に対する児童買春であり,同2に認定した被訴追者の児童買春行為が,法的にも倫理的にも許されないのは当然である。

 そのうえ,同4に認定したとおり,国内外を通じて強く求められてきた児童の性的権利擁護に資するため,大きな世論の高まりを受けて,刑事罰まで伴った児童買春処罰法が制定され,この法律の執行に当たる捜査関係者も,児童の権利擁護のため積極的な対応を行っているのであって,今まさに関係者が児童買春の根絶と取り組んでいるところである。

 ところが被訴追者は,刑事事件の控訴審を担当する裁判官であり,しかもこれまで少年事件を担当した経験さえあり,また買春行為の違法性を熟知しているにもかかわらず,その上被害児童の1人は家出中で虞犯に該当することも知りながら,こうした関係者の取組みを裏切る行為に及んだ。しかも被訴追者は,同3に認定したとおり,匿名性の高いプリペイド式携帯電話を利用し,偽名を使って犯行に及んでおり,同行を求められて逃走を図り緊急逮捕されるなど,国民が裁判官に期待する良心が一片でもあれば到底行い得ないような行為を重ねた。これらの事情は大きく報道され,国民の司法に対する信頼は限りなく揺らいだ。

 以上の事実に照らせば,被訴追者がいかに反省を示しても,被訴追者の行為により失われた司法の信頼を回復するには,弾劾により被訴追者を罷免するほかなく,被訴追者には裁判官弾劾法第2条第2号の「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」に該当するといわざるを得ない。

 よって,当裁判所は,同法第2条第2号を適用して被訴追者を罷免することとし,主文のとおり判決する。

裁判官訴追委員会委員長 谷川和穗,同委員 石川要三,同 上田勇,同 塩田晋,同 簗瀬進,同 荒木清寛,同 畑野君枝,同 加藤紀文,主任弁護人 鶴田進,弁護人 金澤優 各出席

  平成13年11月28日

   裁判官弾劾裁判所
   裁判長裁判員 葉梨信行
       裁判員  清水嘉与子
       裁判員  石井 一
       裁判員  奥野誠亮
       裁判員  中山正暉
       裁判員  佐藤観樹
       裁判員  漆原良夫
       裁判員  野沢太三
       裁判員  陣内孝雄
       裁判員  江田五月
       裁判員  森本晃司
       裁判員  吉川春子
       裁判員  池田幹幸
       裁判員  野田聖子


2001/11/28

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