2000/11/09 衆議院・青少年問題に関する特別委員会

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松浪健四郎(保守党)質問

青少年問題に関する件(有害環境について)

○青山委員長 次に、松浪健四郎君。

○松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。
 参考人の皆さんにおかれましては、長時間にわたり本当に御苦労さまでございます。朝から参考人の御意見をお伺いし、そして、多くの委員の皆様方の御質問を拝聴させていただきました。本当にこの国は青少年にとっては大変な有害環境にあるということを十分に認識させられたものでございます。

 しかし、よく考えてみますと、単に有害環境だということだけで、表面上我々はこの問題を論じるだけで十分なのかという思いもさせられたところでございます。

 過日、ハタミ・イラン大統領が公賓として日本にお見えになられました。思い起こしますと、あのパーレビ国王が絶大な権力を誇っていたイランにあって、なぜイスラム革命が起こったのかということをほうふつとさせられたわけでありますけれども、革命の原点は、イランという国が余りにもアメリカナイズされて自由な国になり、そして非イスラム的な社会ができつつあったところに革命が起こった、私はこのように理解をするものであります。町を歩く女性は、きれいにお化粧をし、そして肌を露出させる。そして、夕刻になれば男性が自由に酒を振る舞う。そして、あちらこちらに娼婦が立ち、売春宿ができる。こういうふうなことから、結局は、イスラムの原点に戻ろうということでイスラム革命が起こったわけであります。

 イスラムは、御承知のとおり、売春を許すものではありません。したがいまして、このような日本の有害環境、これが嫌だな、そして、ない国はどうなんだろう、そういう国を見たければ、イスラムの国に旅をしたり住んでみれば十分であります。けれども、そういう社会の中に人間の本来持つべき自由というものがあるかどうかということになりますと、決して自由ではございません。女性は美しさを誇ることはできません。そして、人々は、アルコールでもって疲れをいやす、あるいは交友を深める、そのようなこともできません。

 私は、自由というのはもろ刃の剣なんだということを、イスラムの国の中で長い間生活をして、十分に私なりに理解をしてきたものであります。つまり、私たちの国の今ある有害環境というものはこの国の自由の上にあるということをまず認識しなければいけないなというふうに思ったわけであります。

 きのうの毎日新聞の一面の下にあります「余録」という欄に興味深い記事がございました。それは、パキスタンのペシャワールというところでアフガニスタン難民の医療活動をされている中村哲というお医者さんとのインタビュー記事でありました。

 日本のお金持ちが、この地域の人たちは学校教育を受けることができない、学校がないから学校を援助してやろうということで中村医師に相談したそうであります。そうしますと、中村医師は、教育は学校教育だけではない、彼らが親と一緒に、小さいときから、どのようにしてヤギや羊を飼い、追うか、これを学ぶことがこの地で生きる一番の大きな教育だ、だから学校の援助なんかはこの地にあっては不必要であるということで、地域地域、国々によって価値観が異なるということ、私たちが絶対だと思っていることは国々や地域によっては違うんだということをその欄が私たちに教えてくれておったわけであります。

 その中村医師はアフガニスタンの難民をずっと治療されておるわけでありますけれども、このアフガニスタンという国は二十数年戦争状態にあります。この国を旅しますと、ピンクのチラシを一枚も見ることはできません。娼婦の姿を見ることもできません。このような平和でない国、そこにはわいせつに関するようなものは全くと言っていいほどないわけであります。

 このように考えてみますと、我々の有害環境というのは、この国が平和であるがゆえにこのような有害環境をつくり出しているんだということをも理解しなければならない。平和で豊かである、そして自由がある、その社会の中にあってどのようにして有害環境を除去していくかということが私たちに課せられた大きな使命であろう、こういうふうに思うわけであります。

 私は、長い間イスラムの国で生活をして、そして人類学に携わってきたわけでありますけれども、人間の原点は、安産であり、多産でありました。したがいまして、往古、その昔から、性器の崇拝、信仰、性交の崇拝、信仰というものをやってまいりました。そのことは、モヘンジョダロあるいはハラッパから出土する巨大な性器を見ても容易に理解することができます。これは、人間が生きていくための一つの考え方、宗教的考えであったわけでありますけれども、私たちの今の社会の中にあるわいせつ行為というのは、実はそういう崇高なものでないというところに、大変残念だなという思いがあります。

 そこで、古代エジプトのミイラがたくさん発見されておりますけれども、このミイラ、男性のミイラの性器を見ますと、全部割礼がされてあります。もちろん大人のミイラであります。このことは私たちに何を教えてくれているのかといえば、往古、その昔、古代の人々の恐れたのは性病であるということ、このことを教えてくれております。それゆえに、ユダヤ教徒やイスラム教徒は今日にあっても割礼をするんだなというふうに思うわけであります。

 そのように、わいせつ行為、性交、人の命というものを考えてまいりますと、かつて我々は戦争を経験しました。多くのとうとい国民の命が奪われたのは皆様御存じのとおりでありますけれども、戦後、どれだけのとうとい命がむだな形で失われたか。過日、憲法調査会で曽野綾子さんが、戦前の日の丸よりも戦後の日の丸の方がはるかに血塗られていると言われました。それは、戦後、中絶でとうとい小さな命が奪われたのは一億人になるからだ、このように発言をされ、私たちは心を痛めたわけであります。結局は、最終的に、処理することがこの国では違法であるのか合法的であるのかは知りませんけれども、逃げ場がある、そういうことがこのようなわいせつ行為をより盛んにしているのではないのか、そういう思いもいたします。

 そこで、かつてこの国も警察が非常にうるさくて、雑誌に掲載された絵や写真で、わいせつなのか芸術なのかという論争がございました。ここ数年前から、メジャーと言われる週刊誌にまでヘアの女性のヌード写真が掲載されるようになり、そのことに対して警察は全く関知しないというような社会状況になりました。もしかしたら、そういうふうに社会が変化をし、警察がもはや犯罪と認めなくなった今、そういう意味で少年犯罪がだんだん増加しつつあるのではないのかという危惧を持つものであります。

 ここで警察庁にお尋ねしたいのは、ここ数年、そういう社会環境に変わってまいりました。少年犯罪がどういうふうな状況になってきたかをお尋ねしたいと思います。

○上田政府参考人 お答えします。
 最近の少年の性犯罪に関してお答えしたいと思います。
 過去五年間に性犯罪で検挙した少年は、平成七年が五百八十五人、平成八年が五百五十一人、平成九年が七百五十四人、平成十年は七百五十六人、平成十一年は七百四十人と、増加の傾向にあります。

 また、少年が性犯罪被害に遭った事件は、平成七年が三千三十件、平成八年が三千百三十件、平成九年が三千六百八十一件、平成十年が三千六百三十七件、平成十一年は四千三百六十七件と、これも増加の傾向にあります。特に平成十一年は、前年に比べまして七百三十件と、増加が顕著であります。

 さらに、売春の被害者など性の逸脱行為で補導、保護した女子少年は、平成七年が五千四百八十一人、平成八年が五千三百七十八人、平成九年が四千九百十二人、平成十年が四千五百十人、平成十一年は四千百七十五人となっております。

 委員もおっしゃいましたように、いろいろな、例えば性に関する情報のはんらん、あるいはその根底にありますいろいろな規範意識の変化等によってこのような増加傾向にあるというふうに考えております。
 以上です。

○松浪委員 性犯罪がふえておるということを本当に心配するものでありますけれども、今のままでは、これからもどんどんふえていくんだろうというふうに思うわけであります。

 その手だてはどうすればいいのか。各委員がいろいろな視点から質問をされましたので私は繰り返しませんけれども、今、大蔵委員会で酒税法の一部を改正する法律案が議論をされております。この法律はいわくつきでありまして、この国の規制緩和をどうするか、おくらすのか、それとも規制緩和するのかという議論にかかわってくる法律であります。

 イスラムの国では、酒を飲むことはできません。私は顔がごついので大酒飲みのように見えますが、一滴も飲まない者であります。ちなみに、家内は大酒飲みであります。酒を飲まない者からいたしますと、酒を飲む人を、何となく悪いことをしている人だなというような思いがあるんですが、この酒税法の一部を改正する法律案、つまり、青少年に酒を売らない、買えないようにする、酒は対面でなきゃだめだ、私はそう思っております。

 もっとも、青少年の一番の特徴は好奇心を持つということでありますから、大人がおいしそうに飲んでいるから一回飲んでみたい、そういうような興味に駆られるでしょうけれども、もはやその好奇心を通り越してアルコールに浸る、そこで犯罪が増加してくる。

 酒に関して少年犯罪がどういうふうになっているのか、あるいは交通事故で、飲酒運転での事故の件数、傾向がどうなっているのかをお尋ねしたいと思います。

○上田政府参考人 お答えします。
 まず、酒に関しまして、全国の警察でいわゆる少年の補導をしておりますけれども、昨年ですと、百万件補導しまして、そのうち三万件余が酒に関するものでございました。要するに、少年が酒を飲んで、これを補導しました。

 飲酒に起因する少年の事件等につきましては、本年に入って警察庁が報告を受けているものとしましては、一点は、静岡県におきまして、河川の中州で飲酒して遊んでいた少年九人が、降雨で増水した中州に取り残されまして、救助されましたが、その際に、二名の有職少年が取材していた記者に暴行を加えた事件がございました。また、東京都において、高校のサッカー部員二十人が飲酒した後運河で遊泳中、高校一年生が水死した事例等があります。

 それから、平成十一年中に、少年が原動機付自転車以上の車両を運転して第一当事者となった、酒酔い及び酒気帯び状態にある、いわゆる飲酒運転に係る交通事故は三百七十一件でございまして、そのうち死亡事故は四十四件でございます。

○松浪委員 どうもありがとうございます。

 きのうの夕刊に、小さくべた記事でありましたけれども、中国から密輸入した覚せい剤が二百五十キロ押収されたという記事がありました。二百五十キロの覚せい剤が輸入されて、一番下にべた記事なんです。二百五十キロの覚せい剤が押収されて、なぜこんなに小さな記事なのか、私はそのことに驚いたんです。

 なぜならば、平成十一年までの年間の覚せい剤の押収量は、一年間で平均約二百六十キロだったわけです。その一年分が一回で押収されておる。恐ろしいぐらいの量の覚せい剤が中国から入ってきておった。

 かつては、覚せい剤は、北朝鮮、韓国、台湾、中国、こういう国々から入ってきておったわけでありますけれども、どうも覚せい剤がどんどんこの国に入ってきている傾向にある、そして青少年が、高校生、中学生までがシャブ漬けという状況になっておる。これも恐ろしい現象だ、こういうふうにとらえております。

 かつて、高校生や中学生がどのような形で覚せい剤を入手したのか。これは、イランの人がたくさんやってきていて、そういう人たちが簡単に子供たちが買えるような形で売っておった。今、覚せい剤は注射ではなくなった。覚せい剤のことをエスとかスピードというような形で呼んで、犯罪意識を希薄なものにする傾向にある。

 こういうようなことから、覚せい剤が中学生や高校生にどんどん行き渡るようになった、こういうふうに言われておりますし、この覚せい剤のビジネスによって暴力団が一日に三十億から四十億稼いでおるというような統計もあるそうですが、私は、この覚せい剤をも含む薬物乱用については、恐ろしいなと。そして、これは何としても水際で防がないとどうしようもない。その水際作戦をどういうふうな形でやっておるのか。それは、大蔵省の国税あるいは警察庁、海上保安庁等が一生懸命やられておるんでしょうけれども、何としても覚せい剤がこの国に入ってこないように努力をしていただかなければなりません。

 そこで、心配しておりますことは、最近、町を歩いておりますと、あちらこちらに輸入の薬が売られているお店があります。そして、そこには、合法覚せい剤というような形で表現して、あたかも認められた覚せい剤だと言わんばかりにして売っておるものもあります。

 これらは大体アメリカから輸入されたものであります。薬事法によって許される範囲内で薬を輸入しておるのかどうかは知りませんけれども、とにかく、その薬を飲むことによって、覚せい剤を使ったのと同じような現象が起こる、そういうふうな薬があるそうでありますし、それらのことを書いたチラシがはんらんしているのもまた事実であります。

 こういうものを専門的には脱法薬品というふうに呼ばれているらしいんですけれども、これらのことについて、厚生省にお尋ねをさせていただきたいと思います。

○白石政府参考人 先生今御指摘のありました脱法ドラッグ、宣伝の文句でございますが、御指摘のありましたように、覚せい剤の取締法あるいは麻薬及び向精神剤取締法といった法律で、持っていること、所持、あるいは使うこと、使用が禁止されていない化学物質であるがゆえにこれは合法ですというふうな宣伝をしまして、快感を高めますとかいう効能をうたって売っているものがございます。

 いろいろな方法で売るものですから、残念なことに正確な実態というのは必ずしも把握しておりませんけれども、御指摘ありましたように、チラシであるとかあるいはアダルトショップの店頭での販売があるという報告が、先進的な取り組みをしております東京都によりまして明らかになっているほか、インターネットを通じまして多くの広告が行われております。

 例えば、ある検索サイトにキーワード合法ドラッグでアクセスいたしますと一万件を超える該当がある。そういうサイトもあるということを承知しております。

○松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。参考人の皆さんにおかれましては、長時間本当に御苦労さまでした。

○青山委員長 以上をもちまして本日の質疑は終了いたしました。


2000/11/09

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