2000/11/09 衆議院・青少年問題に関する特別委員会

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黄川田徹(自由党)質問

青少年問題に関する件(有害環境について)

○青山委員長 次に、黄川田徹君。

○黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 まずもって、重複する質問があるかもしれませんが、私からの質疑ということで御理解をいただきたいと思います。

 二十一世紀の新しい社会を担う青少年の健全な育成は、国民すべての願いであります。しかしながら、青少年を取り巻く最近の社会環境は、露骨な性描写や暴力を売り物にした雑誌、ビデオなどのはんらん、テレホンクラブなどの増加、さらには覚せい剤等の蔓延など、悪化の傾向にあります。また、情報化が進展する中、テレビやインターネットなどのマスメディアが青少年へ悪影響を及ぼしていることも見逃せません。

 青少年を取り巻く環境問題を考える場合、人間と環境の相互関連を考える必要があると私は考えます。確固たる自我がまだ形成されていない青少年がそのような有害環境に直接さらされたとき、どうなるでしょうか。

 ことし五月、十七歳の少年が西鉄高速バスを乗っ取った事件に対し、劇作家であり演出家の山崎哲氏は、子供は成長する過程で、小さな悪を犯したり、親に反抗したりする、そうすることで無垢な存在から汚れを持った存在へと脱皮しようとする、人間とは汚れを持つ存在だからである、大人になるとは汚れを持った人間をも人間として認めるようになることだからであるとも言っております。

 そこで、最初に厚生省の真野局長に、以上の観点から、青少年の家庭環境と有害環境との関連についてお伺いいたします。特に、最近多い、一人っ子、母子家庭、単身赴任家庭などを想定して、有害環境に対する侵されやすさはどのように異なるでしょうか。

○真野政府参考人 先生御指摘いただきましたように、二十一世紀に向けまして、少子化、情報化、国際化、地域社会の変容など、社会全体が大きく変わろうといたしておりまして、そういう意味では、青少年を取り巻く環境も大きく変化をしてきているという状況の中で、青少年を地域社会からはぐくむという観点で、地域の構成員であります家庭、学校、地域住民、関係者が開かれた関係を構築する必要があるということが青少年育成推進要綱でもうたわれております。いわば、そういうさまざまな環境の中でも、御指摘の家庭環境、これは一番身近なものであり、かつ基礎的なものだというふうに思っております。

 そして、この推進要綱でも、家庭は子供の成長にとって大きな役割を担うものであるが、近年、家庭における基本的なしつけの不足、親子の触れ合いや信頼関係の不足、家庭の地域社会からの孤立など、家庭の教育機能の低下が各方面で指摘されているため、こういう家庭の育成機能を支援、補完する観点から施策の充実を図るべきだという御指摘を受けております。

 そういう観点から、厚生省といたしましては、地域子育て支援センター、また児童相談所などにおきまして、相談、情報提供というようなことで、それぞれの家庭の状況に応じた対応を推進してきているところでございます。

 なお、先生御指摘がございました一人っ子や母子家庭、単身赴任世帯等といった、家庭類型と有害環境との関係ということでございますが、この関係につきまして明らかにいたしました研究その他、報告等は、残念ながら私ども承知をいたしておりません。ただ、通常の家庭の養育機能そのものがなかなか低下してきている中で、やはりこういう先生御指摘のような家庭は、より一層そういう家庭機能が脆弱であるということは、たやすく想定をされます。

 そういう意味では、そういう面に配慮しつつ、さらに、私ども、今申し上げましたような地域子育て支援センター、児童相談所、そういういろいろな地域のネットワークを活用して、いわば家庭の機能低下、それをできるだけ支えていきたいというふうに思っております。

○黄川田委員 それでは次に、今までの政府参考人の説明でも、有害な情報は多岐にわたり、どこまでが青少年にとって有害か判断が難しいと思っております。特に、テレビ放送の場合、国民の知る権利から、有害無害の判断は難しいと思います。

 そこで、郵政省の金澤放送行政局長、その辺の判断基準についてお伺いいたします。

○金澤政府参考人 放送は、青少年の価値観や人生観の形成に非常に大きな影響力を有するということでございまして、配慮された放送が行われることは当然必要というふうに認識しております。

 ただ、一方、言論、表現の自由というものは憲法で保障された権利でもございますし、放送法は、放送事業者の自律を基本とする、そういう理念にのっとりまして、放送事業者による自主的な取り組みを基本としているところでございます。

 有害かどうかという判断基準でございますが、放送法においては、放送法第三条の二第一項に、「放送番組の編集に当たつては、」「公安及び善良な風俗を害しないこと。」というふうにされております。本準則を遵守することとなるよう、放送事業者はみずから番組基準を策定いたしまして、これに従って放送番組の編集を行うことを義務づけているということでございます。

 そういう意味から、判断基準とは何かという問いではございますが、放送法には「公安及び善良な風俗を害しないこと。」というふうに書かれておりますので、公安及び善良な風俗を害するものというふうに理解しているところでございます。

○黄川田委員 大分項目がありますので、次から簡潔に質問していきます。
 次に、麻薬、覚せい剤等の有害物質は、青少年の人格を変え、回復にも長時間を要し、かつ中毒患者が引き起こす犯罪は我々が想像もできないような大きなものになります。

 そこで、警察庁の上田審議官に、多少細かくなりますが、次の三点をまとめてお伺いいたします。

 第一に、海外の最近の密造国の状況と国際的取り締まり機関の活動状況、第二に、我が国の水際での防止作戦の実態、第三に、国内での流通、特に暴力団の関与の状況の変化及び末端で青少年に手渡される接点のおのおのの取り締まり状況、以上であります。

○上田政府参考人 三点の質問にお答えします。
 まず第一の、海外での密造等についてでありますが、覚せい剤を初めとする我が国の乱用薬物のほとんどすべては、海外で密造され、国際的な薬物犯罪組織と我が国の暴力団が結託して密輸入を敢行しております。薬物の供給ルートは、覚せい剤は中国、北朝鮮が二大ルートになっており、大麻はタイ、フィリピン等、コカインはブラジル、コロンビア等が主要な供給ルートとなっております。

 ちなみに、昨年は、中国から密輸入された覚せい剤の押収量が約八百四十キログラム、北朝鮮からは六百六十五キログラム、本年は、中国から約三百二十キログラム、北朝鮮からは二百五十キログラムとなっております。

 次に、国際的な取り締まりの状況でございますが、薬物の不正取引は国境を越えて行われており、一国のみでは解決できない問題であることから、地球規模の重大な問題として、国連サミット等の国際的な枠組みでその解決に向けた取り組みがなされております。我が国は、薬物関連の国際条約のすべてを批准し、各国の取り締まり機関と連携した取り締まりを強力に推進するとともに、薬物供給地対策として、捜査に関する技術的援助も行っております。

 第二の、水際での防止につきましては、警察では、我が国に薬物を入れないという水際対策を薬物対策の柱の一つとして推進しており、海上保安庁、税関等、国内関係機関と連携し、水際の監視体制を強化して密輸事犯の摘発に強力に取り組んでおります。また、この種事犯の取り締まりに当たりましては、先ほども申しましたとおり、各国の取り締まり機関との情報交換を緊密に行うなど、積極的な国際捜査を推進しております。

 第三の、国内での流通等に関する取り締まり状況についてでありますが、覚せい剤を初めとする薬物の密輸密売は莫大な利益を生み出すことから、暴力団が主要な資金源として我が国の薬物の流通に大きくかかわっているところであります。最近では、それに加えて、来日イラン人等の不良外国人による薬物密輸密売事犯も増加をしております。

 本年九月末現在では、覚せい剤事犯検挙人員の四割以上が暴力団員で占められており、依然として暴力団が覚せい剤の密輸密売に深く関与していることがうかがわれる状況にあります。また、その手口も、携帯電話、転送電話等を利用して、薬物を求める乱用者と直接顔を合わせることなく薬物を密売するなど、一層悪質化、巧妙化しております。また、イラン人等による薬物の密売は、潜在化、巧妙化しながらも、街頭無差別販売という形態をとり、覚せい剤を初めとするあらゆる薬物の密売を手がけ、青少年の薬物乱用事犯の急増の主要な一因となっております。

 このような状況を踏まえ、警察におきましては、国内における暴力団及びイラン人密売組織の壊滅に向け、取り締まりを強力に推進しております。
 以上です。

○黄川田委員 ボーダーレスの時代となりまして、大変な状況であります。
 青少年を取り巻く有害環境は、都市も地方もその差がなくなりつつあります。特に、薬物乱用の防止については特段の対応をお願い申し上げる次第であります。

 それでは次に、テレビ等のマスメディアについてであります。
 郵政省では、平成十年十二月、青少年と放送に関する調査研究会において、青少年と放送にかかわる基本的問題点をまとめており、ポイントをついた指摘がなされております。
 しかしながら、実態として、そこにうたわれているような青少年に夢を与える番組が多く放映されてきたか、疑問を感じるところでもあります。ヒマラヤの初登頂やアポロの月面初着陸など、大きな感動を受けたことが記憶によみがえります。時代の変遷とともに価値観も変わってきたこともあろうかと思いますが、私の子供と同世代の青少年は、テレビからこのような感動を受けることが少なくなっているのではないでしょうか。

 そこで、郵政省の金澤局長にまとめてお伺いいたします。
 第一に、以上の観点から、NHK、民放各社は番組編成上どのような工夫をしておられるのか、第二に、メディアリテラシーの具体策について、第三に、Vチップの導入と障害について、以上三点であります。

○金澤政府参考人 青少年に夢や感動を与える番組が最近少なくなったという御指摘がございました。

 みずから制作、放送した番組が感動を与えるものとして認知されるということは大変名誉なことでございまして、放送事業者は各社それぞれ努力をしているとは思いますが、先生御指摘のような点もございますので、放送事業者においてなお一層努力していただきたいというふうに考えている次第でございます。

 それからメディアリテラシーでございますけれども、このメディアリテラシーにつきましては、調査研究会を開催いたしまして、提言を受けました。現在、メディアリテラシーのための教材の開発に取り組んでいるところでございます。

 次に、Vチップの導入でございますけれども、これにつきましては、この調査研究会の中でもさまざまな御議論がございまして、なかなか意見が一致しないという状況にございます。

 郵政省といたしましては、放送と青少年に関する委員会という苦情処理のための第三者機関もつくりましたし、それから情報内容の事前開示というふうなことも放送事業者は努力するということでございまして、そのような状況も見ながら、Vチップの導入につきましても引き続き検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○黄川田委員 次に、先ほど警察庁の上田審議官から、薬物乱用に係る青少年を取り巻く環境浄化対策についてお話を伺いましたけれども、加えてテレクラについて一点お尋ねいたします。

 全国の都道府県において、テレホンクラブに対し条例が制定されていると思いますが、テレクラ等の営業に対する指導取り締まりにおいて、地域住民と具体的にどのような連携をとって進めておられるのでしょうか。

○上田政府参考人 お答えします。
 テレホンクラブ営業は、最近急速に増加している状況でありまして、警察としましては、テレホンクラブ営業の規制に関する条例による指導取り締まりを徹底するとともに、青少年保護育成条例、児童福祉法及び児童買春、児童ポルノ法等により、テレホンクラブ営業に係る福祉犯の取り締まりを徹底しております。

 さらに、関係機関、団体、地域住民等と緊密に連携して、少年がテレホンクラブ営業を利用することがないよう、非行防止座談会、非行防止大会等のあらゆる機会を通じて広報啓発活動を推進するとともに、ビラ、チラシの撤去等の諸対策を推進しております。

○黄川田委員 それでは次に、自販機設置規制を含めて、有害な図書、ビデオテープ、玩具等の規制に対し、ほとんどの地方自治体は率先して規制のための条例化を進めております。私のところの岩手県でも、昭和五十四年から条例が施行されています。

 そこで、この分野の問題に対し、関係省庁は地方自治体に対しどのような支援を行っているのか、代表いたしまして、青少年対策本部の川口次長さんにお願いいたします。

○川口政府参考人 青少年にとって有害な図書類を規制している条例としましては、長野県を除いて、そのほかの全都道府県には条例がございます。

 私ども関係省庁は、こういった条例が適切に運用されるように、いろいろな必要な連絡とか調整を行っておりますけれども、ちなみに私ども総務庁では、これらの条例を担当する都道府県の主管課長会議というものを年に二回開きまして、そこでいろいろな必要な助言だとか連絡を行うということをやっております。

 このほかにも、関東とか、あるいは山梨、長野、静岡、それから新潟のブロックで行われます青少年保護育成条例事務担当者会議に、係員を派遣してくれということなので、担当官を派遣して、そこで連携を図っております。

○黄川田委員 それでは、時間になりますので、最後に、まとめて二つお伺いいたします。
 まず一つは、青少年の健全育成に関する法律の制定について、幾つかの地方自治体から要望されているはずであります。その法制化の動向はいかがでしょうか。これにつきましては、総務庁の川口次長さんからお伺いいたします。

 そしてまた、参議院では青少年有害環境対策基本法の法制化が急がれていると耳にしておりますが、出版業界、民放連等では、表現、報道の自由という憲法上の権利にかかわることで、かつ有害環境の概念規定など不確実な点も多いと、立法化に反対を表明しているようであります。ここについては、法制局阪田第一部長から法制上の見解をお伺いいたします。

○川口政府参考人 先生御指摘の地方自治体からの要望でございますけれども、いろいろな要望がございます。

 内容的に分けますと、一つは、ここで議論になっておりますような、青少年を有害環境から保護するという観点に立った法律の制定を求めるもの、それから青少年の健全育成に関する基本理念だとか、あるいは推進体制について規定する法律の制定を求めるものなど、いろいろなものが出されております。

 ちなみに、青少年問題審議会の方でも、何らかの検討を加えるべきではないかというふうな御提言もございます。青少年を有害環境から保護するという観点に立つ法律の制定につきましては、現在この委員会でも議論がなされておりますので、私どもとしましては、この委員会の議論を見守りたいというふうに思っております。

○阪田政府参考人 今委員からお話がありました基本法につきましては、その内容を具体的に承知していないということでもありますのでコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、けさほど馳委員の御質問に際してもお話ししたところでありますが、憲法二十一条第一項は、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであることは、最高裁の判例においても認められているところであります。

 私どもも、これまで国会におきまして同様の見解をお示ししてきてまいっております。およそ、情報の提供等に関する一切の規制が憲法上許されないというものではないということだけは申し上げられると思います。

○黄川田委員 最後に、要望であります。
 いずれ、地域住民に身近なところは各都道府県の条例でいろいろ対応できるわけなんですけれども、長野県は特別、条例なしでも住民運動でいいということで、ないということなので、長野県を除き全部の都道府県でできているということであります。そうしますと、全国にわたることでありますので、やはり基本的な法律が必要であると私も考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上であります。


2000/11/09

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