2001/06/06

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会長(堀之内久男君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
 本日は、私が会長を務めさせていただきます。
 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
 これより討議を行います。
 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
 発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。

鳩山由紀夫君 改めて、小泉総理、御就任まことにおめでとうございます。
 国民の一人一人として、民主党の代表の前に国民の一人一人として、国民の皆さんに期待される総理が誕生するということはすばらしいことだと思っています。正直にそう申し上げます。

 まず、総理がハンセン病の原告団に対して、控訴せずという英断をされたことを、大変、私ども民主党としても心から感謝を申し上げたいと思っています。

 私は民主党の代表ではありますが、総理が国民の皆さんに向かって正しい判断でこの国を導いていかれようとする、構造改革を断行されようと、そんなお気持ちで努力されることを、私は評価をしたいと思っているのです。

 ただ、多くの国民の皆さん方の期待感の中で、なぜ小泉総理が誕生したか。小泉総理が総裁選のときに、自民党を変える、そうおっしゃった。多分、自民党を小泉さんのもとで壊してくれるんじゃないかという期待感で、多くの国民の皆さん方が応援をされているんじゃないか、そんなふうに思います。

 私は、民主党として、外から自民党を壊していきたいと思います。どうぞ小泉総理には、自民党のこの古い体質を中からどんどん壊して、新しい政治の流れというものをつくり出していただきたいな、そんなふうに思っています。

 そこで、きょうは私は、三つの構造改革、総理が努力をされておられる三つの構造改革についてお尋ねをしたい。一つが政治の構造改革、二つ目が経済の構造改革、三つ目が財政の構造改革です。

 一つ目の政治の構造改革について申し上げますが、民主主義の原点は、やはり一票の格差をできるだけなくすということだと思います。

 私たち民主党は、もう既に、一票の格差を基本的になくすその法案を、この衆議院の選挙制度でありますが、提出をしています。総理は、伺いますと、その考え方に基本的に同調されているというふうに伺っていますが、それで本意でしょうか。よろしいんですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一票の格差是正ということに対しては、今までいろいろな議論が交わされてまいりました。

 私は、基本的に、衆議院の現在の制度も、中選挙区の制度の時代からも、二倍以内におさめるのがいいのではないかと述べてまいりました。現在でも、その考えに変わりはありません。

鳩山由紀夫君 一票の格差を二倍以内にするということを、現実にどうなっているかと申し上げると、九十五の選挙区で一票の格差が二倍を超えています。となると、その九十五の選挙区、動かさなければならなくなります。相当な覚悟がやはり必要ですが、私たち民主党は、既にそのことは了承を党内でいたしています。ぜひ自民党としても早急に、参議院の選挙が間近なんですから、参議院の選挙の公約として、一票の格差をなくす、選挙制度を根本的に見直す、その方向で党内をおまとめいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 選挙制度を根本的に見直すというのだったらば、私は首相公選制がいいと言っているんです。それと、今の小選挙区比例代表制度にも私は欠陥がいろいろあると思うんです。

 その中の一つに一票の格差の問題も含まれると思いますが、この点につきましては、現行法においては、たしか都道府県に一議席与える、そしてその他の問題について二倍以内におさめるということで、今、選挙区画定審議会で議論しているところだと思います。

 この問題については、参議院選挙制度と違いますから、衆議院選挙は。参議院選挙が終わってからいろいろな議論が出てくると思いますが、最初に述べたとおり、私の基本的な考え方は、二倍以内が妥当だなと思っている点は変わりないわけですから、議論の推移を見ながら、いつの時点でこういう議論がまた各党から持ち上がってくるか、状況を見ながら、選挙区画定審議会の意見もよく踏まえながら、判断をしていきたいと思っております。

鳩山由紀夫君 総理の首相公選論というものは、私も大変に興味を持っておりますから、いずれしっかりと党首討論で議論をしてまいりたいと思います。

 私は、今申し上げたのは、その一票の格差をできるだけなくすという方向で総理も努力をされるということでありますから、大いにそのことは期待をしたいというふうに思っています。

 参議院選挙であれ、衆議院選挙であれ、同じ日本の国民が有権者ですから、選挙の前に、どのように自民党は考えているか、民主党は考えているか、そのことを述べ合いながら、そして審判を受けるのが当然だと思いますから、ぜひ自民党をおまとめいただけるように、そういうところにぜひ小泉総理のリーダーシップを発揮していただきたい、心からそのことをお願いします。

 さて、二番目の議論に移ります。それは経済の構造改革でございます。
 総理も多分これは基本認識は同じだと思いますが、日本の経済がまだこんな状態、かなり地方は厳しいですよ。この原因、やはり不良債権の処理、十分に行ってこなかったこの不良債権の問題が最大の課題であるという基本認識は総理も同じでよろしいんですよね。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私の所信表明にありましたとおり、当面、緊急の課題として、二、三年以内に不良債権の最終処理を目指すということをはっきり打ち出しております。この問題について、現下の最重要課題の一つだと思って取り組んでいきたいと思います。

鳩山由紀夫君 その認識であるならば、お伺いしたいんですが、今日まで、銀行が自分たちの資産を査定して、そしてそれに対して引き当てを行っている、それは適切に処理をされているというふうに認識されておられますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) いろいろ金融問題については各行それぞれの対処があると思いますが、私は、今までのいろいろなやり方の反省も踏まえて適切に処理が行われなければならない。そのために、金融担当大臣も大変御苦労されております。今後、こういう問題について、不良債権処理を目指して適切な処理が行われるよう、我々も努力していかなければならないと思っております。

鳩山由紀夫君 今お尋ねしたのは、今日まできちんとした資産査定がなされて、そしてそれに対して引き当てが十分に、適切に行われているかという質問でございまして、行われるように努力をしなければならないということは当然でありますが、そうではなくて、現実にそうなっていますかと、現実の話を伺っておきたいと思います。
 もう一度、御答弁願います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 適切に処理されている面もあるでしょうし、あるいは甘いと思われる点もあるでしょう。それは今後、御指摘いただきまして、直していけばいいのではないかと思っております。(発言する者あり)

会長(堀之内久男君) 静粛に願います。

鳩山由紀夫君 柳澤大臣は、適切にすべて行われているというふうに判断をし、答弁をされていますが、それでは、その認識は違いますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 適切に処理されているということで担当大臣は答弁をされておりますが、いろいろな議論を個別に伺っていくと、中には甘いという点もあるのではないかということを今まで審議で言われてきました。その点は謙虚に、そういう意見も踏まえてやっていけばいいのではないかと私は思っております。

鳩山由紀夫君 ということは、柳澤大臣の認識とかなり違うということが明らかになったわけでありますから、ぜひ政府内で統一をしていただかなければ困るなというふうに思います。

 そこで、私は例を挙げたいと思いますが、優良銀行として誉れの高い三菱東京フィナンシャル・グループが、かつては、かつてといってもつい最近までですが、二兆八千億円、不良債権があるというふうに報告をしていましたが、この決算において、四兆五千億円、五五%、五割以上、実は膨れ上がってきていたという報告がなされたのです。これは自身で、要するに銀行自体が、どうも今までの査定はいいかげんだったと彼らが自分で言っているんです。こういう面がやはり今日の不良債権の処理をおくらせてきたというふうに御認識されるわけですね、今までの総理の答弁を拝見すると、やはり必ずしも十分ではない部分があったと。

 今、三菱東京フィナンシャル・グループのことを申し上げたけれども、そのようなことが実態としてあったから、だから不良債権の処理がうまくいっていなかった、そんなふうに理解してよろしいんですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 不良債権の定義というところからまず入らなければいけない。

 この定義の問題で、いろいろあると思いますが、建前だけ議論してもしようがないでしょう。私は、建前として議論をして、実態は違って、あなた方の定義と金融庁の定義が違うんだったら、意見を闘わせながら、どっちがいいか妥当な判断をすればいいのであって、私はそういう問題はもっと詳しい、こういう具体的な、専門的な議論があるんだったらば、予算委員会もありますから、担当大臣を呼んでやればいいんですよ。(発言する者あり)

鳩山由紀夫君 いや、わかっています。
 私は別に民主党の定義で申し上げたのじゃないんです。金融庁の定義に従って、査定を、今までずさんに行っていたのを、本気でやったらこれだけの額がふえてしまったという話なんです。別に、定義で変わったということじゃないんです。

 いま一つ申し上げれば、実は今まで不良債権の総額、八十一兆だというような報告がありました。ただ、我々、金融庁に再三、これも本当にそうなのかと、いろいろと調べてもらいました。最終的に百五十兆、問題債権があるという話になった。その問題債権が百五十兆あるということをどのように認識されますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) さっきも言ったように、定義で金融庁と鳩山さんと違う点がある。不良債権と問題債権と、金融担当大臣は違うと言っている。そういう点は、予算委員会の場がたくさんあって議論したじゃないですか。まだ、きょうの党首討論で、お互い政治家としてあるべき姿を議論しようと言っているんですよ。これでもし問題が片づかないとか聞き足りないことがあったら、予算委員会もたくさんあるんですから、私よりも柳澤金融大臣たちが答弁した方がはるかにわかるわけですよ。党首同士でもっとわかりやすい議論がたくさんあるじゃないですか。

 そういう意味において、不良債権と問題債権の違いというもの、もっと詳細に聞きたかったら、私は、予算委員会の場でも担当大臣からよく聞いていただければいいということを言っているわけであります。

鳩山由紀夫君 私は、別に定義がどうのこうのと言っているんじゃありません。問題債権と言っております。問題債権の中にも担保で保証されているものもあるんです。そのことは十分に知って申し上げているんです。でも、その中に不良債権になる可能性のあるものがたくさん含まれているということも実態なんです。

 それだからこそ、この百五十兆円、問題債権があるということで、アメリカが日本に対して、この国、まさに不良債権国家じゃないか、要注意国家だというふうに、アルゼンチン、トルコ、そして日本が挙げられてしまっているという事実があるわけじゃありませんか。

 私たちは、いいですよ、総理がその定義ですぐに不良債権の処理が二年、三年で終わると言うんなら、それならばいいかもしれない。しかし、現実にはそういうふうに推移していない。いつも大甘の査定のもとで引き当てが行われているから、不良債権が何年たっても、いつまでたっても、ふえ続けているだけじゃないですか。この原因をどうして認めようとされないのか、もう一度お答えを願いたい。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 不良債権をゼロにするというのは、まず不可能だと言ってもいいと思いますよ。しかし、今まで言われたような問題がありますから、これを何とか、不良債権の問題を後ろ向きな対応から前向きな対応ができるように、二、三年以内に処理をしようということを言っているんであって、それは、不良債権とか問題債権、いろいろ定義の仕方はあります。この点の問題につきましては、今後いろいろな議論を踏まえて、外国からも批判を浴びないような対応を日本もとっていきたい。

鳩山由紀夫君 今まで、小泉総理は必ずしもすべてのことをこの不良債権問題に関して理解されていないんだと思う。先ほどから柳澤大臣に聞いた方が正確だという話をされるということは、私は、日本にとって、いや、世界にとって日本の不良債権の問題というのが最大の課題になっているときに、総理が、自分は裸の王様で、全部柳澤大臣に任せているから安心だという話じゃないと思う。もっと正確に理解をしていただかなければ困る、私はそう思います。

 ですから、この問題に関して、私は、もっともっと、総理が今までの歴代の総理のように、真実を、終わった後で、知らされてなかった、大蔵省にだまされていた、そんな発言ばかりされては困るので、だから今、総理がしっかりとした認識をこの不良債権の問題に持っていただくように心からお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、時間の問題で、あと、三番目のテーマに入ります。財政の構造改革でございます。
 財政の構造改革、私は、総理が道路特定財源の一般財源化、その方向に向けて努力をしたいというふうに話されていることは、勇気ある発言だと本当に思っているんです。

 今まで道路は、確かに過去において重要な議論でありました。私たちも、私も田舎に住んでおりますから、田舎において道路というものが重要であることは十分に認識をしています。でも、いいですか、必ずしも車が十分に通っていないところに道路整備ができてしまっている。一方で、社会保障、福祉とか医療、お金が十分にない。環境、教育、お金が不足している。だから、道路の特定財源を一般財源化するという方向は、それは非常に勇気ある発言だと思う。

 私どもも、党内で議論はあったんです。正直申し上げると、さまざまな反対議論もあった。でも、私どもは、道路特定財源を一般財源化する、そして参議院の選挙の公約にそのことを入れることをうたったんです。ぜひ総理も、参議院の選挙がもうわずかであるんですから、それまでの間に、道路特定財源の問題に対してきちんとした方向を出していただきたい。お願いします。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今までの私の答弁でもはっきりしておりますように、参議院選挙前に道路特定財源は見直すということをはっきりうたうと言っております。どのように見直すかというのは、参議院選挙後にいろいろな議論を聞いて見直せばいいわけですから。見直すことははっきりしております。

鳩山由紀夫君 今の総理の発言には極めて落胆をいたしました。見直すというのは、あるいは検討するというのは、政治用語ではやらないことを意味します。

 道路特定財源、確かに自民党のある意味での利権の牙城でしょう。だから、そこにメスを入れるということは大変なことだと思う。しかし、参議院の選挙の前でしっかりと一般財源化をうたわないと、総理、むしろその選挙の後、いわゆる道路族、橋本派、そういう方々がどんどん誕生して、結果として、総理が見直そうという方向と逆方向に行ってしまう可能性があるじゃないですか。だから、総理、参議院の選挙前にこれはうたわないと、絵にかいたもちになる、そう申し上げている。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで何と言ったんですか。見直さないと言ったのを見直すだけでも大変なものだと言ったじゃないか、鳩山さん。見直しちゃいかぬと今まで言ったのを、私ははっきり、見直しますと、参議院選挙の公約に掲げますと言っているんですよ。

 しかし、私は独断専行は避けたい。見直すという議論は多種多様であります。国会の議論もある、地方の議論もある。いろいろ聞いて、どう見直したらいいかというのは、私一人でやるべきものでもない、いろいろな方々の意見を聞いてやっていくのが、これまさに民主主義ではないか、そう思って、具体的な中身は参議院選挙後にいろいろな方々の意見を聞いて、あるべき姿を見出していきたいと思っております。

鳩山由紀夫君 参議院の選挙、大変重要な選挙です。選挙において、ただ単に見直す。確かに、今まで見直す勇気もお持ちでなかった。それは、すべて聖域と言われていたかもしれない。その聖域の中に手を突っ込まれようとしている小泉総理の勇気には、むしろ私ども、背中を押してあげたいと思っているんです。だから、今も申し上げたように、参議院の選挙の前に結論を出さないといけないのだというふうに申し上げたい。(発言する者あり)

 いいですか、総理。今、あのようにやじが飛んでいますでしょう。あのやじを飛ばしている方々は、あなたの、小泉総理の改革路線に足を引っ張っている抵抗勢力なんですよ。私たちが、小泉さんがなさろうとしていることをプッシュして、背中を押してさしあげようとしている。だから、こういう党首討論でもっと前向きの答弁を総理から期待しているんです。私たちは改革勢力。小泉さんの、まさに後ろを振り向けばずっと抵抗勢力がそろっておられるということを、私は非常に心配をしています。

会長(堀之内久男君) 時間が参りました。

鳩山由紀夫君 だから、私たちは、小泉総理、勇気を持っていただきたい。勇気を持って行動していただきたい。もし、小泉総理が勇気を持って改革に邁進をして、志半ばで倒れたら、私たちが、民主党があなたの骨を拾ってあげますから。ただ、このように途中でひるまれてしまったら……

会長(堀之内久男君) 持ち時間が参りました。時間が参りました。

鳩山由紀夫君 多くの声を聞いたら何もできなくなるから、そのようなときには、私たちはあなたの首をとらなきゃならない。その覚悟で臨んでいただきたいと思います。
 以上です。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) こんなはっきり前向きなのはないでしょう。はっきり見直すと言っているんだから、これ以上の前向き、何があるんですか。

会長(堀之内久男君) これで鳩山由紀夫君の発言は終了いたしました。
 次に、志位和夫君。

志位和夫君 私は、集団的自衛権と憲法九条の問題について質問いたします。
 総理は、憲法九条のもとでは集団的自衛権の行使は禁止されているという政府解釈は尊重するとおっしゃられておりますが、その一方で、次のようにおっしゃられております。もし日本近海で日米が一緒に共同活動をして、そのときに米軍が攻撃を受けた場合、日本は何もしないということでいいのか、こうおっしゃって、集団的自衛権について研究する余地があるということを繰り返しておられます。

 しかし、総理は、何もできないかのようなことをおっしゃいますが、あなた方は、一昨年、ガイドライン法というのをおつくりになった。この法律では、私たち、これは憲法違反の戦争法だと厳しく批判しましたけれども、政府が周辺事態だと認定すれば、海外で戦闘中の米軍に対して、自衛隊が燃料、食糧の補給、武器弾薬の輸送、兵員の輸送、それから破損した兵器の修理、傷病兵の医療、通信活動、そして捜索、救援、さまざまな支援ができる仕組みがつくられました。

 総理は、何もできない、できないと言うけれども、これだけのことができる仕組みがつくられたわけであります、私たちは反対しましたが。これで一体何が不足しているというのか、これ以上何を研究してやろうというのか、具体的にお答えください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 具体的な状況というよりも、これから何が起こるかわからない、そういう点についてはいろいろな議論がありますから、研究の余地があるのではないか。今まで、憲法九条そのものについても、自衛隊すら憲法違反という議論がありました。一切の戦力は保持できない、だから戦車を戦車と言っちゃいかぬとか、特車と言わなきゃいかぬとか、いろいろな議論があったわけです。

 しかし、この憲法九条のもとでも、自衛隊は本当に戦力でないのか、戦う力がなかったらば自衛の役割を果たすことはできないのじゃないかという議論をする方の方が多くなってきた。そして、今は、当初は自衛隊は憲法違反だと言っている方たちも、個別自衛権は認められていると、憲法九条があるけれども、自衛隊は憲法違反じゃないという議論にだんだん変わってきている。そういう点につきましても、確かに集団自衛権について、権利は持っているけれども、行使できないというのが今の憲法解釈です。

 そういう点につきまして、周辺事態というのはどういう事態が起こってくるかわからない。今までできなかったことでも、できるような点が多々出てきました。あるいはPKOもそうです。自衛隊を海外に派遣することは一切できないと言っていたのが、PKO活動だったら自衛隊を派遣してもいいじゃないかという議論が出てきました。そういう点において、私は、集団自衛権においても、いまだ想定できない、今までできないということについて議論があるかもしれないが、そういう点も含めていろいろ研究する余地はあるのではないか、また研究してもいいのではないかということを言っているわけであります。

志位和夫君 私の質問に対して具体的にお答えになりませんでした。では、具体的にもっと聞きます。
 政府は、ガイドライン法がつくられたときに、憲法が集団的自衛権の行使を禁止しているために、次の二つの活動はできないと説明しました。第一は直接の武力行使、第二は米軍の武力行使と一体化した後方支援。つまり、戦闘地域、前線地域まで出ていって米軍の支援活動をやるのはできないのが建前だと言ってきました。

 総理は、集団的自衛権について研究するとおっしゃるわけですけれども、具体的に言った場合、これまで日本ができないとされてきたこの二つの行動、これはできないと言ってきたわけですから、政府自身が。直接の武力行使、戦闘地域、前線地域まで行った米軍への支援活動、この二つの問題、これは研究の対象ですか、あなたの。それとも、これは研究の対象にはしないと断言できますか。これはイエスかノーか、端的にお答えください、時間短いですから。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今までできないと言っていることはできないのですよ。そのほかの分野でいろいろ事態が起こってきたときに、研究の余地があるのではないか。

志位和夫君 そうしますと、いいですか、これまで米軍の武力行使と一体化する後方支援はできないと言っておられましたね。つまり、後方支援というのは、戦闘地域ではできない、後方地域でしかできない。この後方地域を超えて活動するということは、これは研究の対象には絶対しないと断言できますか。後方地域を超えた米軍への支援はやらないと断言できますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで歴代政府ができないと言っていたことはできない。しかし、後方地域とは何かという問題が出てきた場合、この定義についてはいろいろある、それはまた研究の余地があるのではないか。

志位和夫君 今のは大変ごまかしの答弁です。
 結局、後方地域、後方支援……

会長(堀之内久男君) 時間が参りました。

志位和夫君 さまざまあると言いますけれども、この問題についてはっきりと否定しないというところが重大な点だと思います。

会長(堀之内久男君) 簡単に願います。

志位和夫君 私は、結局、集団的自衛権について検討するというのは、今、後方地域というのはいろいろあると言ってごまかしましたけれども、これまでできなかったというところまで乗り越えて、海外での戦争の、共同での戦争をやる、この道を開くものとして、私は、憲法の枠内での集団的自衛権の研究なんてあり得ない、もうこれは憲法破壊の研究でしかあり得ない、これはきっぱりやめるべきだということを申し上げて、質問にいたします。

会長(堀之内久男君) これにて志位君の発言は終了いたしました。
 次に、土井たか子君。

土井たか子君 小泉総理には、五月の十日の日に本会議で質問をするという機会がございました。これは代表質問です。きょうは初めての、これは討論という形ですが、時間の方はわずか五分。

 最初に、私は、やはり改革の旗手である総理に、ひとつこの問題に対してぜひとも手を染めていただきたいということを言います。

 この場所の問題なんです。党首討論と称しているのですね。一名クエスチョンタイムとも言うけれども、これは党首討論の場所です。五分で討論できますか。今四十分、全体の枠が。少なくともこれを一時間にするということぐらいは考えていいんじゃないか。

 もうあと一案言いましょうか。
 党がそれぞれ大きい小さいにかかわりなく、党首同士の討論ですから、一人の持ち時間というのを三十分に考えていいと思うのです。(発言する者あり)それは与党の方は総理だけが党首じゃないから、今言われているとおりで、各党党首出られたらいいですよ。野党も各党の党首が出てやる。したがって、党首討論という場所に改革しようじゃないですか、ここを。まずこれを申し上げます。よろしいね、どうですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、国民の皆さんもテレビで見ておられますし、大体三、四十分がいいところじゃないですか。それ以上を過ぎると、だれる。やはり、緊張して注目して見るという時間は三、四十分がいいと思うんです。

 今、与党は三党あるけれども、全部遠慮しているんですよ。野党も協力すると言っているんだから、毎週やったり、あるいは月に二回やるんだから、たまにはお互い協力し合って、譲り合って、二十分ずつにしようということをすればちょうどいいじゃないですか。それで解決できるんじゃないですか。

土井たか子君 協力し合うというのは当たり前の話ですから、今でもやっているんです。全体の枠を一時間にするなんというのは、これは常識の範疇ですよ、少なくとも。

 私は、今から聞かなければならないことについて申しますが、これは五分の間に言うなんてとても至難のわざですよ、本当に。これはぜひとも、自民党の方が非協力なんだ、協力とあなたはおっしゃるけれども。総理、だから自民党に協力を、まず足元の自民党に要請してくださいよ。総理、よろしいか、これは。首を縦に振っていらっしゃるから、それはわかったということだというふうに理解をさせていただきます。

 さて、五月の十日の日の本会議で、アメリカの新たなミサイル防衛システム導入に対して、我が国として理解しておりますという御答弁なんですが、何に理解なすったんですか、どういうことを理解なすったんですか。これ、まずはっきりしていただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今、アメリカの考えている弾道ミサイル網、これが実現したら安全保障上の考え方は一変しますね。核兵器が無意味になるかもしれない、弾道弾が全く意味をなさなくなるかもしれない大きな意味を持った研究なんです。(発言する者あり)これが技術的に無理かどうかということも含めて、研究すべき問題ではないかな。

 科学技術の進歩は実に著しい。そういう面から考えて、話を聞いただけでは、実際これはどういう構想を持っているのか、また実現できるのかという疑問を持たれる方がいるのは承知しております。しかし、これができれば軍縮とか軍備管理とか安全保障上の問題、今までの考えは一変しかねないような大きな問題を含んでいるからこそ、私は、これは研究する価値があるなという意味を込めて、アメリカのそういう研究に対しては日本政府としては理解しているということを申し上げているのです。

土井たか子君 これ、はっきりさせなきゃならないことが、五月の一日のブッシュ大統領の演説を聞いておりましてあるんじゃないですか。最近、これに対しての説明をお聞きになったはずだろうと思いますが、その説明をお聞きになって、どうこの点を思われているか、これは理解をどのようにされたか、これこそ肝心問題だと思って、今から聞きます。

 クリントン前政権では、アメリカの本土の防衛をするための本土ミサイル計画、これは防衛計画としてNMDというふうに略語で呼んでおりますけれども、我が国などの同盟国に対しては、そこに駐留する米軍などを守る戦域ミサイル防衛、こっちは中短距離ミサイルということになりますね。アメリカの本土の方は長距離ミサイル。この両者が別々に進められてきたんですよね、御存じのとおり今まで。

 ところが、我が国自身は、今研究研究とおっしゃるけれども、この別々に進めている二つともやるわけにいかないんです。おのずとこれは、日本としてはやるということに対して、やれるものとやれないものがありますよ、はっきり。やれないものまでやるわけにいかない。これが何かといえば、後の中短距離のTMDについてアメリカと共同研究を進めている。片方のアメリカの本土のミサイルの防衛計画自体、それは協力できない。

会長(堀之内久男君) 持ち時間が参りました。簡潔にお願いいたします。

土井たか子君 なぜかといったら、集団的自衛権ということに、これは行使に当たるからということは明々白々だと思うんですね。これはあなた自身がおっしゃっている。昭和でいえば三十五年、一九六〇年の岸内閣のときの岸総理の答弁にもはっきり言っていますよ、他国の領土、領域について日本は防衛するわけにいかない、これはできませんと。

 集団的自衛権の行使にこれは当たるということになりますから、アメリカ本土のミサイル防衛計画に日本は研究としても入るわけにいかない、なじまない。これははっきりしておいてください。どうですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで弾道ミサイル網が集団的自衛権に入るかどうかの議論なんて全くなかったんですよ。だからこそ、集団的自衛権というのは研究の余地があるのではないかということを言っているのであって、このミサイル網についても、研究と開発と配備は違います。その点を混同しないでください。

土井たか子君 研究は何のための研究かであります。
 私は、最近の田中外務大臣の発言というのは……

会長(堀之内久男君) 土井たか子君、時間が参っております。やめてください。

土井たか子君 中身から考えて、私も同調する、共鳴する部分があります。共鳴する部分がある。さすがにやはり女性の閣僚だなと思っていますよ。けれども、後で発言を変えられるから、そこのところはちょっと惜しいと私は思っているんです。

 問題は、今月の末には首脳会談があるわけですから、アメリカに行かれたときに、この事柄について、足元が今がたがたしているからというので、アメリカの言うなりに、イエス、イエスは困りますよ。研究といえどもこのことに対しては、アメリカに行ってはっきりしていただきたい。いかがですか。

会長(堀之内久男君) もう、時間が来ております。
 次、小沢一郎君。

小沢一郎君 自由党の小沢でございます。
 小泉さんと公式の場では初めての対面ですので、総理の就任をお祝い申し上げます。
 鳩山さんの御配慮によって一分いただいたんですが、五分間でございますので、できるだけ簡単に、一問だけ御質問申し上げたいと思います。

 質問の前に、今外務大臣の発言に関連しましていろいろな報道がなされています。事の真偽は私はわかりませんけれども、報道を見る限りにおきましては、やはり我が国の将来に大きな影響を持つ内容を含んでいると私は思っています。ですから、一閣僚の発言がどうだとかこうだとかではなくて、やはり日本政府として、小泉内閣として、内閣総理大臣が御自分の責任できちんと整理して対応していく、いかなくてはならない問題であり、そういうところに今あるのではないかというふうに思いますので、一言申し上げさせていただきます。

 さて、質問ですけれども、郵政三事業の民営化というのは小泉総理の年来の、いわゆる看板の主張、政策であります。したがって、それに関連してお聞きしたいと思いますけれども、郵政事業であれ、あるいは多くの特殊法人で行われております事業、いわゆる政府がやっている事業、このことについて、所信表明でもあるいはその他の機会でも、ゼロベースから改革するんだ、こういう総理の御趣旨、承っております。

 私どもは、今までの時代は別として、政府のやる、特に特殊法人を通じて行う仕事、これはもうその役割を果たした、これは廃止して、そして民間に任せられるものは任せていくという時代に来ているんじゃないかと。そういう考え方の中で、現実に、これを何年かけて何年先にどうしてこうしてという話ではなくて、改革というのはしょせんスピードですから、五年かけて検討して、また計画を立てて、また実施まで何年かけて、これでは改革でも何でもないわけで、私たちはそういう意味で、平成七年でしたか、こういう考えに基づいて、俗にサンセット方式と呼ばれるものですが、五年間の間に、猶予期間を置くけれども、そこで特殊法人は全廃する、もちろん一、二の存続すべきだという事例があったっていいですけれども、原則として撤廃するという案を出しました。ところが、その案は、二度、三度とたしか出したと思いましたが、自民党の反対の意向によりまして、ほとんどというか、全く議論されずに今日を迎えているわけであります。

 今、総理の改革を断固やるんだという言葉は聞いておりますけれども、これに関して、予算委員会での答弁ですか、ちょっとお伺いしますと、森内閣時代に策定されました行革の大綱ですか、それから、同じ森内閣の時代に出された基本法ですか、今かかっていますかな、これに基づいてやるんだという答弁をなさっています。この考え方でやるとすれば、それはもう森内閣の延長線上の作業でしかないし、到底それは改革と呼べる作業には値しない、私はそのように思っております。

 したがいまして、そういう意味で、本当に言葉どおり改革するのか、あるいは、言葉であって、実態は従来の内閣の延長線上の仕事でしかないのか。そういう点について改めて総理の、今日の国が果たすべき役割、あるいは民間が果たすべき役割はどんなものなのか、そういうことを、特殊法人を中心といたしまして御見解、御認識をお伺いしたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 民間でできることは民間に任せようと言いながら郵政三事業だけは別だと言っていたところに、本格的な行財政改革が進まなかった最大の原因があると私は常々言ってまいりました。

 各党、特殊法人を改革すると言いながら、どの政党一つすら、民営化を言ってはいかぬと言って、残念ながら小沢さんの政党も民営化が言えなかった。今回初めて私が郵政民営化を言い出したからこそ、特殊法人をゼロベースで見直すというのが本格的になったのです。(発言する者あり)うそだと言うのだったら、郵政民営化論言ってごらんなさい、政党で。どの政党も言えないじゃないですか。

 自民党の中でも言えなかったのです。私がこんなことを言ったら、今まで袋だたきでしたよ。目玉どころか大目玉を食らうところだった。ところが、小泉内閣になって初めて民営化を言い出したから、これは財政投融資制度、特殊法人、全部の改革につながるから本気になってきたのです。剛腕と言われる小沢さんが郵政民営化に賛成してくれるのだったら、これほど心強いことはない。

会長(堀之内久男君) 小沢一郎君、時間が来ております。簡単にお願いします。

小沢一郎君 ちょっと今、総理の発言に事実と違うことがありますので、それだけ訂正いたします。

 私は、郵政事業の民営化に反対などしておりません。賛成を言っております。ただ、あなたがそう信じるなら、私どものようなちっぽけな政党の援助なんか必要ないのですよ。あなたは衆参多数の中で総理に選ばれているのですから、あなたがやるのなら今すぐにでもできるのですから、どうぞそこは問題をごまかさないで、すりかえないで、どうぞあなた自身でおやりください。

会長(堀之内久男君) これにて小沢君の発言は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。


2001/06/06

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