2002/06/28-2

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山花議員、情報公開請求圧力問題で総務省を追及 (民主党ニュース)

 情報公開を請求した行政書士に請求を取り下げるよう総務省が日本行政書士会連合会を通じて圧力をかけていたとされる問題について、野党側委員が28日の衆議院内閣委員会で集中的に質疑を行った。

 前回の委員会で事実関係の調査を約束していた片山総務相は、この日、ヒアリング調査の結果をもとに、請求を行った行政書士本人が全国の連合会会員らにファックスで開示請求書の写しを送付していたため、総務省からの情報提供がなくとも連合会幹部が請求の事実を知りうる状態だったと指摘、総務省として情報を提供したり圧力をかけた事実はなかったと答弁の中で報告した。

 これに対して、民主党の山花郁夫議員は、「情報提供がなくとも知りうる状態だった」ということと、実際に連合会幹部が何によって知ったかは別の問題ではないかと質した。総務省の芳山自治行政局長が「ファックスにより『知り得た』ではなく『知った』」と総務相の答弁を修正すると、山花議員は、細かい日時の前後関係などを精査する必要があるとして、委員会への書面での報告を求めた。片山総務相は、「これだけていねいに報告している。これ以上調査するつもりはない」とこれを拒んだが、山花議員の強い要請に、大畠内閣委員長が理事会で検討すると約束した。

 個人情報保護関連法案に関する質疑に移った山花議員は、基本法制である「個人情報の保護に関する法律案」では利用目的制限、適正取得などの規定に違反した民間事業者に対する罰則を設けている一方、行政機関を対象とする「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」ではこうした罰則が設けられていない理由を法制上の観点から質した。片山総務相や政府参考人は「国家公務員等については国家公務員法等で広く法令遵守義務をかけた上で、守秘義務等の罰則も設けているので問題ない」と答えたが、山花議員は「国家公務員法の規定の保護法益はあくまでも公務員の規律維持や行政の円滑な運営であって、個人の権利利益の保護ではない。個人情報保護は反射的利益にすぎなくなる」と指摘し、議論が平行線をたどった。


平成十四年六月二十八日(金曜日)

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 冒頭、今の吉井委員の質問と関連いたしまして少々質問をさせていただきたいと思います。
 総務大臣、今、調査の結果、情報提供したという事実、そして圧力をかけたという事実は一切ないんだという御答弁だったかと思いますが、もう一度確認をお願いいたします。

片山国務大臣 先ほども申し上げましたが、調査の結果、行政書士会連合会会長に情報提供した事実もないし、また、圧力をかけるように依頼した事実もありません。

山花委員 それで、先ほどの質疑の中で、役所の方の担当者からヒアリングをしたということをおっしゃっておられましたが、私も、きのう夜の時点で聞いたときには、四名の方からヒアリングをしているんだと。四人の人と、あと関係の団体と言っていましたから、恐らく行政書士会なんでしょう。ただ、担当者四人ぐらいから聞くのに何でこんなに時間がかかるんだと思ったんですが。
 先ほどの御答弁だと、行政課長とか課長補佐とかそういう人たちだというお話でしたが、だれから調査をされたのかということを明らかにしていただけますでしょうか。

芳山政府参考人 大臣の命を受けまして、厳正な調査を実施するために、今回、行政書士の業務にかかわりのない職員を補佐の立場で得つつ実施をしました。
 それで、指摘を受けた以降、二十六日、二十七日、総務省の行政書士の業務担当関係者、行政課長、課長補佐、係長、担当員から実施をしました。また、二十七日、日本行政書士会連合会の会長さんに来ていただいて、事実の確認を行いました。
 以上でございます。

山花委員 要するに、四名の方から事実についてヒアリングを行ったということですね。
 ただ、先ほど私、総務大臣、御答弁の中で、ちょっと発言で気になったことがあったんですけれども、なぜ行政書士会の会長さんがこの情報公開請求について知り得たかということについて、情報公開請求をした行政書士の人でファクスを送ったりいろいろやっているんですよという言い方をされていました。
 それによって知り得たというような言い方ですが、その人の名誉にもかかわることですし、会長がそのファクスなどによって知り得たのだと、それによって知り得たというのは、それは知り得たという話ですから可能性の話で、それによって初めて知ったんだということをちゃんと言わないと、つまり、本来であれば、今回、この問題というのは、総務省の方で情報提供していない、圧力をかけていない、そのことの証明でいいのかもしれませんけれども、大臣がああいう言い方をされるということは、会長が何でその情報公開について知り得たのかということをちゃんと証明して報告していただかないと、それこそ名誉にかかわることじゃないでしょうか。どうでしょうか。

片山国務大臣 吉井委員は、情報提供があったから会長が知っている、こうおっしゃるから、いやいや、ほかのいろいろなこともあるので、情報提供がなくても知り得る可能性はありますよと。例えば、当該二人の行政書士の方が、開示請求をしたとかいろいろなことについてファクスを何人かの方に配付している、そういうことの話を聞きましたので、可能性としてはありますよということを言ったんですよ。情報提供しか会長が知り得ないということはあり得ない、こういうことを申し上げたわけであります。詳細には、聞いてくださいよ。

山花委員 ですから、そのことは私は別に否定していないですよ。つまり、そういう可能性があったと。
 つまりは、情報公開請求があったということを総務省の方から日行連の会長の方に言わなかったとしても、そういうふうな形で、ファクスを送られたりとか、理事の方に送っていたとか何か言われていましたけれども、つまり、ほかで知り得たという話にはなりますが、私が申し上げているのは、何で知ったか。つまり、それによって知り得たという話にはなりますよ。先ほど、吉井委員に対して、あなたの言っていることは憶測だ何だと言っていましたけれども、これだって推測じゃないですか。それによって知り得たという話であって、それで初めて知ったということではないですよね。そこについての証明が必要なんじゃないですか。

芳山政府参考人 知り得たじゃなくて、知ったわけでございます。先ほどそういう御答弁をしたと思いますが、連合会の会長さんに来ていただいて、その事実の関係を調査しました。
 それで、五月の十九日にお二人に来ていただいて、今度の法律の改正の趣旨についてぜひ正しい御理解をしていただきたいということでお集まりいただくということでございますけれども、それは、十三日に、十二日付の開示請求書の写しの、合わせてセットを全国の理事さん、単位会長さん、また有志の皆さんにファクス、メールを送信しておる。そして、自分としては、会長は、行政書士会の会長さんから送付されたものを十五日以前に入手をしたということでございます。それともう一つ、それ以前にも、四月二十九日付の開示請求書の写しを全国に同人が発付しておりますので、それについても単位会の会長さんから情報を得たということでございます。そういうことで知った。
 それで、では、どうしてそういう会合を持ったのかということでございますけれども、先ほどお話ししましたが、会長としては、これについて、行政書士会連合会として長年の懸案の課題でございますし、組織運営上の混乱を来すために、ぜひとも今回の改正の案について御理解を賜りたいということで、ぜひ会を開きたいという形で十九日に開いたわけでございます。

山花委員 そのことと、要するに、私が大臣に言っていることは、御発言の中で、会長が知り得たかどうかという事実とはまた別の次元で、情報公開請求をした、先ほど吉井委員は名前も挙げられておりましたよ、その中で総務大臣は、最初、芳山局長がお答えになる前に、その行政書士の人はファクスを送ったりいろいろなことをやっているんだ、そういう言い方をされたじゃないですか。だから、そういう言い方をするということは、その行為によって知ったんだというふうに受け取れますよ。
 そうだとすれば、そのことについて、もし今のお話、間違いないということであれば、やはりちゃんと報告書なりなんなりつくってこの委員会で報告されるべきじゃないですか、書面で。いかがでしょうか。

片山国務大臣 これだけ丁寧に報告をしておりますし、議事録にちゃんと残りますから、もうこれ以上の調査をするつもりはありません。

山花委員 時間的な話で、例えば、今口頭でいろいろ聞いて、こっちもメモとっているぐらいであれですけれども、十三日にセットの写しがあったりとか、結構、日にちのこと、経過のお話がいろいろあるじゃないですか。
 委員長、これを報告書の形で、ペーパーの形で出していただくように求めたいと思います。

大畠委員長 理事会で協議いたします。

山花委員 それはお願いいたします。
 この問題はとりあえず一たん切りまして、法律の入り口のところで少し議論させていただきたいと思いますが、今回、民間の方の個人情報の保護法制というものと総務省から出されている行政の方の個人情報の保護法というものが出ております。同時に今この委員会で審議をしているわけでありますけれども、この第一条のところの書きぶりです。
 恐らく、こうやって同じ時期に出してくるわけでありますから、書き方についても調整をされたんではないかと推測をいたしますが、その中で、個人情報保護法の方なんですけれども、民間事業者を対象とする方の内閣官房が出されているものについては、「高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、」ということで、今回出されたことについて、高度通信社会の進展が伴っているから、いわばデータバンク社会というのが到来しているというバックグラウンドが書かれているんですけれども、行政の方の個人情報保護法についてはこれが書かれておりません。
 これは一体どういうことなんでしょうか。つまり、対比して読めば、反対解釈すると、行政については特にそういうバックグラウンドがないかのようにも読めるんですけれども、この点、御答弁お願いいたします。

松田政府参考人 お答え申し上げます。
 行政機関個人情報保護法案でございますが、これは、内閣官房の方から出されております基本法制を受けて制定される個別法、基本法に対して個別法の関係にございます。したがいまして、基本法制と同様の背景のもとに立案をさせていただいているところでございます。
 このため、基本法制の方で書かれております高度情報通信社会の進展ということを自明のものと考えまして、この行政機関個人情報保護法案の方には特に明記しておらないわけでございまして、高度情報通信社会の進展を立案の背景としている点につきましては、基本法制と変わるところはございません。

山花委員 つまりは、今回の、個人情報保護法という内閣官房から出されているのが基本法制で、総務省から出されている方が個別法であると。つまり、いわばもう表裏一体、密接不可分のものである、そういうことであると理解をいたしますが、この点について、これを前提にして、後、少し議論させていただきたいと思います。
 この第一条、これは両方ともそうなんですが、書きぶりについて少々気になるところがございますけれども、私どもは、どうも今回出されているこの法律というのは、行政の便宜ということに重きを置いていて、ついでに個人の情報を保護するというような、いわば官の方に非常に都合のいいような法律ではないかというふうな形で見ているわけであります。
 例えば、基本法制と言われましたが、個人情報、内閣官房から出されているものですが、第一条、「目的」ということでいろいろ書いておりますが、一番最後のところに、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と、個人情報の有用性という言葉が書いてありますけれども、当然、これはだれにとって有用かといえば、行政の機関ですね。個人情報を持っている個人にとってそれが有用なケースもあるでしょう。あるでしょうけれども、あえて、今回のこの法の枠組みで言っている個人情報の有用性というのは、当然、行政機関の側の便宜というふうに読めると思いますし、また、行政機関の保有する個人情報の保護の方にも同じような、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」こういう書き方になっているわけであります。
 私の日本語の語感からすれば、先に本来の、いわば本旨の部分を書いておいて、それをやりながら、ついでにこういうこともありますよというふうに書くのが普通ではないかと思います。
 例えば、今手元に東京都の個人情報保護に関する条例というものを持ってまいりましたが、東京都の方はこう書いてあります。「この条例は、個人に関する情報の取扱いについての基本的事項を定め、都の実施機関が保有する個人情報の開示及び訂正を請求する権利を明らかにし、もって個人の権利利益の保護を図るとともに、」これが主目的として書いてあって、「都政の適正な運営に資することを目的とする。」と。
 一義的には、やはり個人の、しかも、個人情報の開示及び訂正を請求する権利を明らかにした上で、もって個人の権利利益を保護するんだ、これをちゃんとうたった上で、結果として都政の適正な運営に資することを目的とする、こういう書き方の方が私は素直に受け取れるんですけれども、今回のこの書きぶりだったら、やはり行政の便宜ということを主たる目的としてつくられた、こういうふうに読めるんです。この点についていかがお考えでしょうか。どういう御説明なんでしょうか。

松田政府参考人 まず、行政機関個人情報保護法の方につきまして御説明させていただきますが、行政機関法制におきまして、第一条に書いてございますように、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と規定しているところでありまして、文理上、個人の権利利益の保護が主であることは明らかであると我々は考えております。
 現実に、この法律におきましては、個人情報の原則開示あるいは目的外への利用の原則禁止、例外は限定的に規定するということを行っておるところでございまして、まず個人の権利利益の保護が主であるというふうに考えております。

山花委員 内閣官房から出されている方についてはどうでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。
 ひとつ、条文の文理ということで御説明したいと思いますけれども、基本法制においても、「この法律は、」云々云々「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」こう書いております。御質問の趣旨は、「しつつ」というところの言葉の意味合いだろうと思っております。
 これは、文理的には、やはり主目的は、この法律は個人の権利利益を保護することを目的とするというのが一番の主目的でございまして、いわば、その際にという意味で「しつつ」はかかるわけでございまして、やはりこういう権利を保護するという際には個人情報の有用性にも配慮するんだ、こういう趣旨だということでございます。したがいまして、主たる目的は個人の権利利益保護ということであることは文理上も明らかだと思っています。
 なお、同様の議論は、昭和六十三年の行政機関の個人情報保護法、当初御論議いただいたときでも当委員会で御論議いただいていまして、そのときの高鳥総務庁長官からも同趣旨の御答弁を申し上げているところでございます。
 加えて、若干、御質問の中に有用性とは何かというような御質問がございました。
 これは確かに、個人情報の情報主体と言っていいと思いますけれども、御本人の権利利益の有用性というようなものもございますが、それだけじゃなしに、やはり社会的な有用性というようなものも有用性の中に含まれると思っておりまして、例えば、今メディアとの関係でいろいろ御論議いただいておりますけれども、ああいうメディアの報道の公益性のようなもの、そういったものもこの個人情報の有用性に入るという趣旨でございます。

山花委員 いや、だって、先ほどこれは両者表裏一体のものだと言われましたから、行政の方を読めば、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ」と、これに対応するのが個人情報の有用性に配慮するというふうに読めるわけですよ。
 だから、今いろいろ言われましたけれども、本来、この書き方については疑問があります。しかし、御答弁の中では、個人の権利利益ということ、あくまでもその保護が主目的だ、そういうお答えだったと思いますが、ただ、全体の構造を見るとそうなっていないんですよ。それが問題なんですよ。
 あえて確認をさせていただきますが、本来はそういう趣旨で提案をされたわけですよね。ところが、これはかねてより私どもも議論させていただいておりますが、水曜日のときに、仙谷委員からも総務大臣に罰則のことについて質問がされておりました。私は仙谷委員のように高尚な話はできませんが、ただ、言われていることについては私はそのとおりだと思っていたんですけれども、どうもお認めになっておりませんね。これは本会議などの場でも議論がございましたけれども、改めてもう一回ここでちょっと議論させていただきたいんです。
 理事会でペーパーをお配りさせていただくことを御了解いただいておると思うんですが、静岡新聞などからとった資料で、行政の方と民間の方の対比の表というものがございます。
 今回、これを対比してみますと、つまり、民間の方に関しては、ここに書いてございます利用目的制限だとか適正取得、利用目的通知、二十一条、二十二条、二十三条から三十五条まで、この点に違反した場合については、政府の助言とか勧告とか命令、これがクッションになっていますが、それでもこういったものについて罰則が設けられている。
 これに対して、私聞いていて、仙谷委員の議論を理解されているのかされていないのかちょっと疑問だったんですが、この紙だと、守秘義務違反ということで罰則という形でかかっていますが、そもそも行政機関の方の法律には罰則規定というのはないですよね、法律上は、この法律の中には。だからこそ、この点について民間の方に厳しくて官僚の方には優しいじゃないか、こういう議論があるんですけれども、これは今までこの委員会で、その中身についての議論よりももっと違うところの方が時間を割かれていましたが、この点についても今まで何度か議論があったわけです。
 本会議のときからいろいろ御答弁されていましたが、その答弁について、そうじゃないんだというその説明、まだ変わらないですか、総務大臣。

片山国務大臣 変わりません。また、変わるわけがない、同じことを言っているんですから。
 そこで、この民間と官僚の、今お配りになったこのペーパーなんですが、民間の方は罰則がかかるまでに、今委員が言われたように、助言がまずある、勧告がある、命令がある、それを全部こなすわけですよ。残った悪質なものだけ罰則をかける、こういうことですね。
 それから、公務員の方は、そこにありますように、書いているのは守秘義務違反ですよ。守秘義務違反だけこれは挙げているんで、この上に職権乱用だとか公文書毀棄罪に該当するものがあれば、例えば、この下の方の開示や訂正や利用停止やなんかで、これはそっちの罰則がまたかかるわけですよ。それ以外は懲戒処分でいく。こういうわけで、しかも直罰ですよね、直罰方式で。
 そういう意味で、どこまでを罰則にかけるかというのはいろいろな議論があるので、国家公務員の場合には、公務員法上に懲戒処分なり守秘義務違反の罰則なりがあるので、そっちでいけるではないかというのが立法過程における議論なんですね。法制局なんかとも相談し、罰則については法務省とも相談しますから。
 そういうことで今回こういう制度にいたしたわけでありますが、私は仙谷委員に言ったのは、仙谷委員を初めとして皆さんが言われていることもわかるので、ただしかし、罰則をかけるとすれば、今のいろいろな、直接の権利侵害になるとか、刑罰とのバランスをどうするとか、犯罪になるわけですから、構成要件該当性というのが犯罪をする大きな特色ですから、構成要件にたえ得るのか、そういうことのもっと詰めた検討が必要じゃないでしょうか、そういうことで将来の検討課題ではないでしょうか、こういうふうに申し上げたわけでありまして、本会議も、仙谷委員に対する答弁も、委員に対する答弁も、全く同じでございます。

山花委員 ちょっとこの点についてはもう少し詰めた議論をさせていただきたいと思います。
 当然のことだと思いますが、竹中大臣も福田官房長官も、当然この点については同じ認識だということでいらっしゃいますよね。――うなずいていらっしゃいますから、そうだというふうに受けとめさせていただきたいと思います。
 今のお話ですけれども、民間のケースでいいますと、この表の見方ですが、利用目的制限、適正取得、利用目的通知、ここに挙がっているのは、クッションがあると言われましたけれども、行為の態様として見たときに、違反すればすべて罰則の対象、つまり、これは懲役ですから刑罰ですよ。これがかかれば、有罪が確定すれば前科ということになるわけです。
 ただ、これは役人の場合、まず、そもそも違反したとしても、本当に守秘義務違反がかかって罰則の対象になるのは、これは安全管理措置と第三者提供制限だけじゃないですか。その他のは懲戒処分でと今言われましたけれども、これも前から話をしていますが、民間の、例えば竹中大臣、大学の方にいらっしゃったと思いますが、違法なことをやれば、内部的にやはり懲戒だ何だというのは当然あるわけですよね。首かも知れません。それとは別に、この法律、民間人の場合は罰則がかかってくるわけですよ。いいですか。それで、役所の方のこっちの方は罰則なしで懲戒だけという話じゃないですか。やはりこれは、民間の方に厳しくて官僚の方に優しいということじゃないですか。どう説明されるんですか。

藤井政府参考人 行政機関法制の方はまた総務省の方から御答弁いただきますが、基本法制の方の趣旨について御説明させていただきたいと思います。
 確かに、この資料には利用目的制限とか適正取得とか、こういういろいろな義務が取扱事業者にかけられております。しかし、その義務というのは、法律がその事業者に対してこうしなさいという義務でございまして、基本的に、事業者の方が自主的にやはり改善していただく、そういうための義務という形になってございます。
 ところが、いろいろ社会問題化したりした場合、やはり行政として関知できない状況が出てくる場合がある、そういったときにはいろいろ主務大臣から、まず資料を収集していただくなり、それに対して助言をするとか、それでもだめな場合は勧告をするとか、勧告でもだめな場合は命令処分を課すという形になって、その過程で事業者の方が自主的に改善されていただければ、これはもうこの法律上の義務は履行されたということで、その後の罰則というような問題は、基本法制では全然念頭に置いておりません。
 罰則が問題になるのは、あくまでも、改善命令が出されたにもかかわらず命令が遵守されない、やはりその命令を担保するためという意味で罰則をかけているわけでございまして、そこは行政機関法制の場合の守秘義務とか懲戒処分と言われるものと、性格はやはり相当違うというふうに考えているところでございます。

山花委員 法の立て方が違うということはわかりますよ。それはわかりますが、結局、行為をする態様の観点から見たときに、つまり、罰則を設けるということは、それによって応報感情の回復を図るとかそういう議論もありますが、一方で、今場内からもありましたけれども、抑止効果というところがあるわけじゃないですか。
 そうだとすると、懲役六月だって、これは恐らく行為に、例えば利用目的制限、適正取得、この中でも、六月以下ですから、どれだけに相当するかというのは個々のケースによって違うのでしょうけれども、およそ罰金とかそういうことではなくて、懲役六月というのはかなり重いと思いますよ。これについて、すべての行為について網がかかっている形になっているということを申し上げているわけですよ。つまり、政府の助言とか勧告、命令、これに従わなかった、最終的な場合だと言っていますけれども、それは最終的にはこういうものが控えていますよという形で、すべての行為に網がかかっているじゃないですか。
 行政の方は、そういうことではないですね。先ほども申し上げましたが、懲戒処分があるからと言いますけれども、民間だってそんなことはあるんですよ。当たり前のことですよ。それが、言ってみれば、行政の方は懲戒だけ。つまり、行為の方に注目をしたときに、こういう行為をやったらこういうふうな激烈なことが起こりますよということでいうと、民間の方がやはり厳しいという話になるじゃないですか。そこのところの説明になっていないわけですよ、今の話は。どう説明されるのですか。

藤井政府参考人 委員の御指摘は、罰則という制度の効果についての御理解の問題から始めなければいけないのかなと思っております。
 確かに、罰則というのはある意味で抑止力という面からも評価される面があると思いますけれども、基本的にやはり罰則というのは、何か間違ったことをしたということに対する制裁的な意味合いがあるだろうと思います。
 抑止力という面では、確かに罰則も一つの要素ではあろうかと思いますが、これは前から大臣から御答弁いただいていますように、むしろ、まず法律を運用する職員の認識の問題とか、あるいは、従来御説明させていただいておりますように、いろいろな本人チェックの仕組みとか公表制度とか、そういったもの全体で抑止力を期すというのがこの制度のつくり方になっているということでございます。
 今、委員からの御質問は、抑止力という点からだけの比較ということでそういう御指摘があったんだろうと理解いたしますが、ただ、先ほど御答弁申し上げましたとおり、民間の場合は、個々の事業者が仮に一回でも利用目的制限に違反するということであればすぐそれが罰則を受けるのかというと、そういうものではなくして、むしろ、利用目的制限なら制限に反するということであれば、まず自分で直してください、自分でも直されない場合に主務大臣が必要最小限の関与をする。関与をしたにもかかわらず守らないという場合には、その関与の最強力な命令処分、これを担保するものとしての罰則という意味合いであるということで、そこは、先ほど来の御説明に重複することになりますが、いわば国家公務員法の守秘義務なんかの罰則とは相当意味合いが違う罰則ですということを申し上げている次第でございます。

山花委員 今の御説明で、公務員の場合は職員の意識などに頼るところがあると言いましたけれども、そういう答弁からしても、この間の防衛庁のリストの問題は何なんですか。
 つまり、官僚は悪いことをしないなんという前提に立ってそういうふうな議論をされると困るんですよ。民間の方は、要するに、いつまでも言っても直らないような悪いやつらばかりいるからこういう仕組みにしたんだというような話じゃないですか。要するに官尊民卑の、本当によく出ているわけですよ。
 それと、片山さん、先ほど、刑罰法規の罪刑法定主義とかいろいろ言われていましたが、今回のこの法律について、懲戒処分という形でそれなりに厳しいペナルティーがあるじゃないかという御答弁だと思うのですけれども、これは、法律的な議論をされるんだとすると、私は非常に疑問があるのです。だって、懲戒処分もそうですけれども、内部的な話だということがまず一つ、これは先ほど来申し上げていることですが。守秘義務違反がかかるじゃないかというのは、これは私には詭弁にしか聞こえない。なぜか。
 私が先ほど、仙谷委員の指摘が理解されていたのかされなかったのかという話なんですが、先ほど役所の方からの御答弁ですと、この法律の目的のところですが、第一義的には主たる保護法益というのは個人情報である、つまり個人の権利利益である、そういうことを言われていましたね。今、表に対比して出しましたけれども、こういった行為というのは、個人の権利利益をいわば侵害した、法益を侵害したケースですね。ということは、個人の権利利益を侵犯したような人に対して、それ相当の、それに対応する形での罰則がなきゃいけないじゃないですか。今回の法律にはないんですよ。
 いいですか。守秘義務違反という国家公務員法上のもの、保護法益は何ですか。プライバシーじゃないじゃないですか。性質が違うものですよ。守秘義務というのは、国家公務員の、いわば公の利益を守るためのものですよ。それで網をかけようとしているわけですよ。全然性質が違うじゃないですか。つまりは、今回のこの法律に対して罰則がないじゃないかという指摘は認めなきゃいけないと思いますよ。いかがですか。

松田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども内閣官房の方から御説明がございましたように、民間の方は、先生のこの資料にございますように、違反がございましても直ちにペナルティーがかかるわけではございません。政府の助言、政府の勧告、命令、そういうものに従わない悪質な事態に対して、法令をまさに遵守させる最終的な担保として罰則がかかっているというふうに我々理解いたしております。
 これに対しまして、官の方は、そもそも民間が自主的な規律を前提とした非常に緩やかな規制であるのに対しまして、先般来御説明申し上げさせていただいていますように、非常に厳格な規律を前提にし、違反に対して直ちに罰則といいますか、違反に対するペナルティーがかかるような仕組みになっております。
 法令遵守義務違反に対して懲戒処分ということでございます。それから、個人の秘密も漏えいした場合に、公務員法の守秘義務違反に問われるケースがございます。それから、大臣からも御答弁申し上げましたように、職権乱用をして個人情報を入手すれば、まさにそれに問われる場合もございますし、あるいは、個人の情報を開示すべきであるにもかかわらず当該文書を廃棄した等々の場合には、公用文書毀棄罪ということで、まさに個人情報保護に関連する別途の一般的罰則がございますので、それによっているわけでございます。
 最終的には、この法令を遵守させる最終的な担保、民間の場合の罰則に対応するものとしては、まさに行政機関の責任ということで、大臣等々の政治的な責任も含めて対処をしていくということでございます。それ以前に、個々の職員に対してこのようなペナルティーがかかるということでございます。

山花委員 冒頭の御答弁と、ちょっとおかしいんじゃないですか。
 今回のこの法律というのは、あくまでも主たる目的は個人の情報である、個人の権利利益である。そうであるとすれば、ここに出ているような行為というのは個人の権利利益の侵犯として見なきゃいけないわけですよ、服務規律違反だとかそういうことではなくて。この法律の議論を離れて言えば、およそ法令遵守に違反すれば、それは公務員秩序を乱したりであるとか、そういった、むしろ公の、つまり公務の方が保護法益なわけじゃないですか。今のような御答弁で、懲戒とか、あるいは今回の守秘義務違反というのはこういうのがありますよというのは、それは国家公務員法を根拠にしているわけですよ。法益は何ですか。個人情報じゃないじゃないですか。
 つまりは、今回のこの法律というのは、先ほどの御答弁、第一条の目的のところで、個人情報の保護というのが主たる目的ですよと言っておきながら、罰則のところになれば、今のお答えだと、これはあくまでも、要するに行政の円滑な遂行とかを妨げた、そういう方で罰則がかかっている、そういうふうに聞こえるじゃないですか。どうですか。

藤井政府参考人 今、基本法制も通ずる問題として、保護法益が何かというような御質問がございましたということで、その点について御答弁させていただきたいと思います。
 確かに両法案とも、個人の権利利益の保護を目的とすると言っております。ただ、個人の権利利益は当然プライバシーを初めとしたもろもろの個人の権利利益が含まれているというふうに考えておるわけでございますが、法律の中身は何かと申しますと、むしろ、そういう個人のプライバシーを初めとした個人の権利利益がIT社会の中で侵害を受けるようなおそれ、危険性が増大している、そういった個人の権利利益の侵害のおそれがある段階で一定の法律上のルールをつくる。これはいわば予防法制と言っていいと思いますけれども、権利利益の侵害が始まる前の段階で、むしろそういう侵害が起きないようなルールなりシステムなりをつくろうというところにこの法律の一番の特色があるというふうに考えてございます。
 したがいまして、これは難しい学問的な議論が出てくるんだろうと思いますが、例えば、利用目的制限のルールを外れたということで即個人の権利利益に侵害が生じたというふうに判断できるかどうかというのは、これはまた一つの研究課題ではあると思いますが、ただ、申し上げたいのは、この法律は、その段階で個別具体的な権利利益侵害が起きているかどうかにかかわらず、やはり法律上の義務としてこういうルールを守ってくださいという義務を課しているというところに大きな意義があるというふうに考えているところでございます。

山花委員 やはりちょっとよくわかっていないんじゃないですか。
 いいですか。つまりは、国家公務員法というのは、あくまでもそれは国家公務員の規律に違反したということが違法なわけでしょう。例えば、警察官が警察官職務執行法などに反して一般の民間人に対して暴行を行ったりとかすれば、刑法上の罪と国家公務員法上の服務規律違反と両方かかりますよね。保護法益が違うからですよ。わかりますよね。当たり前のことですよ。
 今回のこれというのは、個人情報を侵犯したとしても罰則がかからない、そういう仕組みじゃないですかということを申し上げているんですよ。いいですか。一般的な法違反ということで、確かに守秘義務違反とか懲戒処分はかかりますよ。だからそれを繰り返し言っているんです。あくまでもこの法律というのは行政の方を守るためのものであって、個人の権利利益を守るためになっていないじゃないかと。何となれば、ここを一つとっても、個人の権利利益を侵害したという理由に基づいた罰則というのが公務員にはない、そのことを言っているんです。どう説明されるんですか。

松田政府参考人 先ほども御説明申し上げましたように、民間の方のケースでもそうでございますが、内閣官房から説明がございましたように、個人情報を保護するためのいろいろな規律、ルールをここでつくりましょうということで基本法の方は提案させていただいているわけでございます。
 そこで、そのルールに対する違反があった場合に、ここに一連の助言ですとか勧告とか命令ということでそのルールが守られるようにしていこうということになっているわけでありますが、最終的に、そのルールを守らない悪質な個人情報取扱事業者、それに対してまさにこのルール、この法令を守らせるために罰則がかけられているというふうに我々は理解いたしております。
 それに対しまして、公務員の方は、憲法及び国家公務員法でそもそも法令を守れということになっておるわけでございます。その上で、守らない場合につきましては懲戒処分、さらには、先ほど申し上げましたように、犯罪に該当するような秘密の漏えいですとか職権乱用的な事態ですとか公用文書毀棄的な事態ですとか、そういうものに対しましてはまさに罰則がかかるわけでありまして、そういう法令を守らせる仕方の違いであるということでございます。

山花委員 答えになっていないと思うんですよ。
 公務員には法令遵守義務があるというのは、それはそのとおりでしょう。私が先ほどから申し上げているのは、その例で言うと、さっきの警察官の話になるんです。
 つまり、警察官だって公務員ですよね。法令遵守義務がある上に、例えば警察官職務執行法だとかいろいろ規律を定めた法律がある。それに違反して、例えば人をあやめたりけがをさせたりすれば、身体、生命という保護法益を守るという刑法があって、傷害罪なり殺人罪なりが成立して、その話と、服務規律違反だとか国家公務員法の方で違反した行為だという評価はまた別途あるわけじゃないですか。それは、公務員秩序であるとか公の、保護法益は公のものなわけですよ。今言っている例で言えば、生命だとか身体というのは個人の法益なわけですよ。服務規律違反だとかそういうことで足りるという話にならないですよね。つまり、ちゃんと法益を守るためのサンクションがあるのが普通じゃないですか。今回のこの出てきている法案というのは、それに対応するものが公務員についてはないじゃないかということを言っているんです。ないという事実は、これは認めないと、どうしようもないでしょう。
 先ほど来、同じことを言われるんだったら、もう答弁しないで結構ですよ。公務員法違反だとか守秘義務違反だとかそういうのがございますと言っていますけれども、それは当たり前のことで、さっきの、例えば警官が人を殺したり服務規律に違反するようなやり方でピストルを乱射したりとかそういったときに、では、殺人罪とかそういう法制というのはそもそも要らないんですねというようなことですよ。要らないんじゃなくて、その場合はあるわけですよね、現に。
 今回のこの法律については、そういう形で、個人情報を侵犯したこの行為に対応するサンクションはないということですねという、これは事実の問題ですよ。事実としてそうですねということは、これは認めなきゃいけないじゃないですか。ここは全然難しい話じゃないですよ。評価じゃないですよ。
 ちょっと総務大臣、どうですか。これは……(片山国務大臣「今、やりとりやっているんだ」と呼ぶ)
 では、聞き方を変えます。
 今私が申し上げたことは理解していただいたと思いますが、もう一回申し上げますけれども、要するに、水曜日の仙谷委員の法益の議論というのはそういうことだったんですよ。つまり、保護法益がもし個人情報保護が主であるとすれば、それに対するペナルティーがあるべきだという言い方をすると、我々の立場になるでしょう。ただ、それは捨象して、事実として、今回出てきている法案に、例えば守秘義務違反という公務員法上の規律に触れた、懲戒処分という、公務員法上の規律に触れたという結果として個人情報が守られることはあるかもしれませんよ。あるかもしれませんけれども、個人情報を侵犯したという理由に基づくペナルティーは今回の法律にはありませんねという、これは事実の問題です。事実としてそうですねということはお認めになりますよね。否定できないと思いますよ。

片山国務大臣 今いろいろやりとりをされていますけれども、公務員というのは、御承知のように法令遵守義務があるんですね。御承知でしょう。その法令の、今回は個人情報保護という大きな法益があるんですよ。それを守らない者にペナルティーをかけるんですよ。

山花委員 いや、ですから、結局、もう少しざくっとした言い方をすれば、今言われたように、そういうふうに、結果として個人情報が守られるというような現象は起こるかもしれない。今の御答弁というのは、ちょっとくどいようですけれども、わかりやすく同じ例で申し上げますと、警官がいます。(片山国務大臣「わかった、わかった。もうその話はいい。あなた、警官が悪いの……」と呼ぶ)いやいや、仮の話ですよ。
 それで、服務規律があるんだから、例えば法的には多分、併合罪だか観念的競合だかわかりませんけれども、そういう評価になるかもしれませんが、一応別途の法律があるという例と対比すると、今の御答弁というのは、警官でいえば服務規律なり国家公務員法なり警察官職務執行法なりがございますという話にすぎないんであって、個人の生命、身体が侵害されたときには、それに対応するものとして刑法というものがございますが、刑法は、生命、身体を守るという保護法益があって、それに対するペナルティーがある。聡明な方ですから、こんなにくどく言わなくてもわかると思いますが。
 要するに、今回政府から提出されている法案というのは、今言ったように、結果として守られることはあるかもしれませんが、事実として言うと、個人情報を保護するということを目的としているんですが、それを侵犯したケースについてのペナルティーはないですよねという単なる確認ですよ、これは。

片山国務大臣 今回の仕組みは、基本法制の方は私の所管じゃありませんが、結果として守らせるということです、個人情報保護を。そのためのルールづくりをどうやるか、官と民をどうやるかということを考えてやっているんですよ。
 だから、何度も同じことを言いますけれども、民の方は、こういうことの違反があったら即罰則をかけるんじゃないんですよ。まず助言をし、助言でも聞かなければ勧告をし、勧告をして聞かなければ命令をするんです。命令というのは、これは一種の行政処分ですから。行政処分を聞かないことの違反として罰則をかけるんですよ。だから、極めて狭いんですよ、この罰則は。網は広いですよ、言われるとおり網は広い。しかし、結果としては、行政処分に対する違反について罰則をかけるんですよ、簡単に言いますと。そういうことで担保しているんです。極めて狭いんですよ、極めて。いろいろな手続を経ているんです。自主的に直してもらうということです。
 官の方は、これは全体の奉仕者で、公務をやっておりますから、今国家公務員法というのがありますよ。これは法令を全部守れということなんですよ、全部の法令を、警察官であろうが普通の公務員であろうが。法令遵守というのは大きいものになっているんですよ。そこでまず一つの担保があって、またその中で犯罪の構成要件になるものは、例えば守秘義務だとか職権乱用だとか公文書を捨てたり適当に扱うとか、そういうことは刑罰にしているんですよ。それ以外は懲戒処分でやる、行政処分でやる、こういうことなんですね。
 ところが、懲戒処分は、おまえ緩いじゃないかと。緩くありませんよ。懲戒免職なんというのは、もう場合によっては罰則以上の大変なペナルティーになる。あるいは、停職、減給、戒告、こうあるわけでありまして、公務員の方はそっちの方でルールを守らせよう、担保しよう、こういう考え方で組み立てを違えたわけでありますが、皆さんの方はといいますか、いろいろな方の意見で、罰則が一つもないのは、国家公務員法にゆだねて何にもないのはおかしいじゃないかという議論があるので、その議論の気持ちはわかりますということを私は仙谷委員には申し上げたわけであります。

山花委員 いや、答えてないじゃないですか。罰則があるのかないのかという、つまり、プライバシーとかそういう個人情報保護法を侵犯したことについて、イエス、ノーで答えられるじゃないですか。今回、政府提出のものは罰則はありませんねということを言っているんですよ。

片山国務大臣 守秘義務違反というものは、これは機密漏えい罪で、罰則であります。

山花委員 これは先ほどから申し上げていますように、守秘義務違反というのは、結果としてプライバシーとか個人情報が保護されることはあるでしょうよ。あるでしょうけれども、守秘義務違反というのは、それだけですか。外交機密を漏らしたとか、そういうことが守秘義務違反じゃないんですか。守秘義務ということは、プライバシーも入っているかもしれませんが、主目的としては、本来はこれは国家的法益なんですよ。
 ということは、先ほどから申し上げていますように、今回の法律というのは、個人情報の保護ということを言われましたけれども、そうじゃないじゃないか。つまり、反射的利益みたいな形で個人情報が、つまり行政が適正なことをやります、公務員というのは法令遵守義務がありますと先ほど言われました。それはそのとおりでしょう。その結果として個人情報が守られますよという話なんであって、あたかも個人情報というのは、何かその結果の反射的利益みたいな議論じゃないですか。(発言する者あり)

松田政府参考人 公務員法の守秘義務違反につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、国家機密とかそういうものに限られませんで、職務上知り得た秘密、したがって個人の秘密も対象になります。そういう意味で個人情報の保護にもつながる話であるということを申し上げたところでございます。
 それから、違反に対してすぐ罰則がかからないという意味では、民間の場合も同じでございまして、一定の違反をしても、罰則がかかるわけではございません。

山花委員 ですから、何でわからないんですか。守秘義務違反というのは私も認めていますよ、個人的な法益が入ることもあると。ただ、私が聞いているのは、それはあくまでも一般的なルールですよねということです。それでさっきから何度も警察官の例を出しているわけです、別に警官に敵意があるわけじゃないけれども。一般的なルールと別に、今回のこの個人情報保護という名前が、タイトルがついた法律だけれども、そのことを侵犯したという固有の理由に基づいた罰則というのはないですよねという、これは確認ですよ。評価じゃないです。確認をしているんです。いかがでしょうか。

片山国務大臣 今も局長が言いましたように、業務上知り得た秘密ですよ、仕事の上で。個人情報を扱う人は全部個人情報を知り得る。だから、それはぴしりと、守秘義務違反というか、秘密漏えい罪という罰則を適用するんです。
 だから、そこで、目的外利用にストレートに罰則がかけられないじゃないかという不規則発言が委員の方からありましたけれども、民の場合も同じなんですよ。目的外利用したからすぐ罰則をかけるわけじゃないんですよ。何度も言いますように、何度も手続を経て、行政処分に違反した場合に罰則をかけるんです。(発言する者あり)いや、だから、公務員の場合に直罰をかけるとすれば、目的外利用が本当の個人の権利利益のどういう侵害になるのか、それがどういう罰則と相応するのかという、そこの慎重な検討が要るということを我々は申し上げているわけであります。

山花委員 要するに、今の御答弁というのは、慎重に検討しなきゃいけないということですから、今回の法律にはないという話ですよね。そうですよね。
 ちょっとこだわりますが、今の御答弁はちょっと気になりますね。守秘義務違反とか秘密漏せつ罪とか、それは、でも刑法じゃないですか。(片山国務大臣「同じですよ」と呼ぶ)いやいや、同じじゃないですよ。要するに、今回、個人情報について、確かに秘密を漏らせば守秘義務違反になるかもしれませんが、私は先ほどから申し上げていますが、守秘義務違反というのは、これはあくまでも一般的な規律なんであって、今回の個人情報保護法制ができたことによってできた法律ではなくて、前からあるもので、これは特に今回の個人情報保護というか、個人情報を侵犯したことに対してのサンクションとしてもともとあるわけじゃない。
 もっと言えば、個人情報と絡まない形で、例えば総務省でこのことをやっている役人の方が違法行為をやったりとか、あるいは秘密を漏らしたりすれば、今回のこの個人情報保護法の中にひっかかってこないものだって当然守秘義務違反にかかってくるわけですよ。今回のこの法律にひっかかれない形でごく普通に、例えば、今回これで個人情報保護取扱何とか室とかできるのかもしれませんが、そこの役人が違法行為を行ったとかあるいは秘密を漏らしたとかすれば、必ずしも個人情報じゃなかったとしたってこの守秘義務違反がかかってくるという、あくまでもその程度のものなわけですよ。今回の個人情報を侵犯したということに基づいての罰則はないんですねということを言っているわけです。
 ちょっと時間がなくなってきましたので。
 先ほど場内からあって、私が聞いていないのに答弁されていましたけれども、そもそも、利用目的制限とかそういうところでひっかからないことがあるんじゃないかという議論がありますよ。あるけれども、私は、その前のことを言っているわけです。そもそも、ペナルティー、罰則が、個人情報保護ということの、これを侵犯したことに基づく、これを固有の理由とする罰則は今回のにはないですね、そういう話をしているわけです。

片山国務大臣 手を挙げないのに指名していただいて大変ありがとうございます。
 守秘義務違反というのは、これは委員御承知のとおりですよ。ただ、守秘義務違反が全部罰則の適用になるかどうかというのはまた別の議論で、権利侵害なんかの場合にはなる。そうでしょう。軽いものについては懲戒処分、こういうことでございまして、そういうふうに御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。だから、重大な個人情報の保護を、守秘義務に違反すれば罰則はストレートにかかるわけです。

山花委員 だから、それは現象として、つまり結果としてそうなるという話だということを申し上げているんですよ。
 いいですか。単なる事実の、今回の事実認識としてはないですねという、でもそれはお認めになるわけですよね。(片山国務大臣「言っている意味がわからない」と呼ぶ)意味がわからないというのは、つまり、結果として保護法益が守られるということはいっぱいありますよ。つまり、公務員法で懲戒だとか何だとかあれば、およそ違法行為はやっちゃいけないわけですから、そうしたら、ありとあらゆる国家公務員が基本的に、悪さするとは言いませんけれども、悪さすることについてはすべてそれで担保されているということになるじゃないですか。
 それにもかかわらず、例えば個別の法律がいろいろあるわけですよね。何度も言いますが、警察官についてはこれこれという法律があって、そういう法律があるわけじゃないですか。つまり、すべての一般的なものにかかるものがあるからといって、それにひっかかったとしてもそれは現象なのであって、あくまでも、この個人情報保護という法制があって、個人情報を侵犯したということに対するペナルティーとしての罰則はないんですねと。ないんですねというか、見ればわかりますよ、ないんですから。ほかにいろいろなのがありますという話はもうわかりますよ。結果としてそうなりますということだけれども、そのことを私は冒頭より指摘しているわけです。
 つまり、今回の法律の読み方、一条の「目的」のところで、どうも、個人情報の保護だとタイトルがついているけれども、実際は中身が違うじゃないか。個人情報ということよりも、むしろ行政がいかに円滑に動かせるか、そういうようなための法律なのであって、要するに、冒頭の書きぶりについても確認はさせていただきました。いただきましたが、そのときにも、あくまでも権利利益の保護ということが目的だ、そう答弁されたにもかかわらず、今の実際の中身を見てみると、この罰則一つとったってそうだということです。
 つまり……(発言する者あり)いや、時間はまだありますよ。今回のこの法律については、それを固有とする罰則とペナルティーというのがなくて、今の御答弁からもわかるように、結果として個人の権利利益が守られることがあるということです。
 結局、このことについてまだお認めにならないようですから、例えば目的外利用についての罰則が民間にあるけれども公務員に必要ないということについて、これの理由、最後に一言、それについてだけお答えをお願いいたします。

大畠委員長 時間になっていますので、簡潔に答弁をお願いします。
 総務省……(山花委員「大臣」と呼ぶ)それでは、総務省の方から答弁いただいた後、大臣に答弁を求めます。

松田政府参考人 目的外利用につきましては、端的には、公知の事実を含めて個人情報というのはあるわけでございまして、それを目的外に、ルールに違反したからといって直ちに罰則をかけるかどうか、そういう重要な問題があるわけでございます。
 それから、民間の場合はあるというお話でございましたが、民間の場合も、利用目的外で利用した場合に直ちに罰則がかかるわけではございませんで、先ほど来御説明していますように、悪質な事業者に最終的に法令遵守のために罰則をかけているにとどまるわけでございます。

片山国務大臣 局長の答弁と同じであります。

山花委員 時間が来ましたので、終わります。


2002/06/28-2

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