2002/05/29

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平成十四年五月二十九日(水曜日)

河村(た)委員 河村たかしでございます。
 きょうの九時にお話を聞いておりましたけれども、正直言ってもうがっくりしましたね、これは悪いけれども、福田さん。これはお立場もあると思うんだけれども、やはり国会と内閣というのは厳しい対立関係にないといかぬ、本当に。与党の皆さんにもお願いしたいんだけれども、憲法の六十六条三項で、さっきまで暗記しておったけれども、ちょっと書きましたが、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」連帯して責任を負うと。
 議院内閣制というのは、どっちかというと、そんな国会と内閣が、行政府が、いわゆるずぶずぶの関係ではいかぬのですよ、これは。より厳しい対立関係をかえってとらなければいかぬ、特に与党の方は。そういうことですよ。反対に、内閣の人たちは、自分たちが、国会という国民の代表が全部来ておるところで、この法律をどう施行していくか、どう解釈すべきかということに物すごい緊張関係を持って答弁せにゃいかぬ、約束せにゃいかぬ。約束したことは自分の責任で守らにゃいかぬ。もし変えるんだったら、それは政権交代が起こったのか、それとも、きちっと政治責任をとって、こういうふうに変えますというのが連帯責任の趣旨なんですよ。本当に情けない。
 何で情けないかを今から言いますよ。
 きょうの朝の話の中のポイントは、いわゆる小渕さんの答弁について、これは必要性についての認識を示したものであるということですね、必要性についての。
 もう一回、ちょっと速記録の関係上言っておきますと、当時の小渕総理から、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たり、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識との答弁がなされました。この答弁は、行政府の長として、個人情報保護の必要性についての認識を示したものである、こうなっておるんですけれども、必要性についての認識って、何を内閣としてそんなたわけたことを言っておるんですか、本当に。これは厳しい責任がありますよ、皆さん、連帯責任として。立法府に対してどういうことを約束したかということを。私ら、当然のことだけれども、一億二千七百万人の帰趨を握ってここに来ておるわけでしょう、国会に。そこで政府として、これはどうすべきだということを、きちっと言ったことを、解釈を変えるなら政権交代か責任をとることですよ、ちゃんと。
 では、それがどんなにひどいことか、ちょっと言いましょう。これは、地方行政委員会会議録、平成十一年六月十日、ここでちょっと事実を、幾つかありますから、言っていきますね。
 ここで、まず古賀民主党の委員の方から、いろいろありまして、「今般、修正案ということで「速やかに、所要の措置を講ずる」という一文が入ること、それを総理がしっかりとオーソライズをされる、こういう趣旨でお見えになったと理解しまして、質問をさせていただきたいと思います。」その後に、「まず、ちょっときつい言い方かもしれませんが、内閣のトップにおられる総理大臣が、本委員会で、修正案に対していわば保証するというか、中身を答えられるというのは、ある面では、この政府案がそれだけやはり今後所要の措置を講じなければならぬということを総理みずからが認めることに等しいのではないか。」まず、こういうふうに言っております。
 それから二番。これは、今与党になりました公明党の富田さん。富田さんは、私も仲いいんだけれども、プライバシーに非常に理解のある方で、こんなのはだめだと言っておった、人間に番号をつけるというのは。彼が、「自治大臣として、この所要の措置について現在どのような認識でいらっしゃるか、ぜひ明確な御答弁をいただきたいと思います。」これに対して野田国務大臣が、「附則第一条第二項の「所要の措置」とは、第一に、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、」こういうふうにきちっと答弁されております。
 それから、やはり富田さんが、「そして修正案の所要の措置、これをどのように現在認識して今後取り組まれていくのか、ぜひ総理のお言葉で、御自分の、御自身の言葉で明確な回答をいただきたいと思います。よろしくお願いします。」これに対して総理大臣が先ほどのことを言っておるわけですよ。「特に住民基本台帳ネットワークのシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識をいたしております。」こういうふうに答えておるわけです。これね。
 それから、まだ物すごいありますよ。富田さんがここで、その総理の答弁を聞いて、答弁というより約束なんですよ、これははっきり言って。聞いていてどう言っておるかというと、「特に、今総理の御答弁の中で、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たっては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提だ、こういうふうに御答弁いただきました。」こういうふうに富田氏が確認しているんだよ、さらに。
 まだたくさんありますので、これは大変ですけれども、それからもう一つ。まだこれもかなりあるんですけれども、共産党の方の質問に対して、小渕さんは当初こう言っております。「包括的な個人情報保護法の制定を要するものでないとの認識を持っており、その旨、去る四月十三日の本会議で述べたところであります。 が、しかしながら、改正法案の審議の中で、」いろいろ云々があって、「こうした状況の中で、」「民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識に至ったところでございまして、」こうやって小渕さんは言っておるんだよ、これは。
 国会に対して、何か質問通告をせずに総理大臣に突然にだれかが聞いて、それに総理がぱっと答えた、それについてこれほどまでに私は言いませんよ。しかし、こういう状況ですよ。
 もう一つあるのが、これは、まだ、社民党の知久馬委員に対してもはっきり答えております。「前提である」と。
 それから、三党合意というのがありますね、実は。この覚書があります。これはちょっと読みますと、「個人情報保護に関する法律については、自由民主党、自由党及び公明党・改革クラブ間で今国会中に検討会を設置の上、法制化の検討に着手し、年内に基本的枠組の取りまとめを行い、三年以内に法制化を図る。」こういうことです。三年以内というのは、ちょうど今の八月五日ということですね。この辺のことになっております。
 それからもう一つ。これは、今、与党の公明党さん、見えるかな。河合さんおるな。公明新聞というのがありますね。一九九九年、平成十一年六月四日金曜日、公明新聞、一面トップですよ、一面トップ。これは、坂口さんが出てみえて、坂口さんは、私、かつて新進党だったものですから、ようお話をしておりまして、あの人もさすがに、医者をやっておった方ですから、非常にプライバシーに対しては理解が進んだ方です。ですから、実は反対しておられた。それで、一番最後のところにこう出ていますよ。ちょっと読みます。
 「これに対して本日(三日)、政府側からは(1)付則に「この法律の施行にあたっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、所要の措置を講ずる」と加える(2)「所要の措置」が、包括的な個人情報保護法の制定であり、この保護法ができるまで、ネットワークシステムは運用しない、という趣旨を審議している地方行政委員会で首相、自治相が確認する――という提案がありました。」こういうことで賛成に回ったんだよ。
 これは、官房長官、悪いですけれども、きょうの話じゃとても私承服できないし、個人じゃなくて、もっと国会に対して内閣が本当に責任とってくれよ、きちっと、皆さん言われたことは。どうですか、こうやってはっきりやらないと言っているんだから、約束を。施行しない、両方セットだとはっきり言っているんですよ。そのとおり答えたらどうですか。突然これが、何ですか、必要性の認識とか政治姿勢を示したもの。国会と内閣のこんな緊張関係のないことじゃ話にならぬよ、これは。
 特に、テレビで見ておる限りですけれども、非常にまじめな印象を受けます福田官房長官からすれば、こういうところはやはりはっきり、それは間違っておった、前の内閣総理大臣がそう言ったんだからそのようにしますと言うのが当たり前じゃないですか。どうですか。

福田国務大臣 今いろいろと御説明を伺いました。また、小渕総理の発言もございます。政府において、小渕総理の答弁は、そのときの政府ですね、みずから情報の保護を制定することはできない、しかし、その成立に向けて努力する、そういう意味で述べられたものというように考えます。
 しかし、一般論として申し上げれば、もとの内閣の総理大臣の国会答弁がその後の内閣の行為を、これは法律論ですけれども、法的に拘束することはないわけですね。しかし、当時の小渕総理の答弁というのは、今申しましたように、住民基本台帳法改正の国会審議に際しまして、個人情報保護の必要性についての認識を示したものでございます。ですから、これは政治的には重く受けとめなければいけないと考えております。
 したがいまして、政府といたしましては、小渕総理の答弁を踏まえまして、個人情報保護法案を昨年三月に国会に提出して、その早期成立に向けて今現在全力を挙げている、こういうことでございます。

河村(た)委員 法的にはと言われましたけれども、「所要の措置」とは何かという解釈として、例えば野田さんも、「民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、」こういうふうにはっきり言っているんですよ。要するに、行政府がきちっと法律の、第一義的にはいわゆる有権解釈ですよね、これを示しているんですよ。そんなの法律的にも全く間違っておるじゃないですか、まずこれは。

片山国務大臣 議会の修正で、国会の修正でその附則が入りましたよね、「所要の措置」。「政府は、」と書いてあります。政府は所要の措置を講ずるものとすると書いてありまして、政府としては、法案を練って、つくって、国会に出して、国会で御審議の際、誠実に答弁して通していただくということで、通すか通さないかは国会の権限ですからね。だから、法制局的にいえば、法案を出すところまでが内閣の責任で、政府としての「所要の措置」は国会提出までだ。それで、去年の三月にそういう意味では個人情報保護法を出させていただいている次第でございます。

河村(た)委員 よう言ってくれますね、こんなめちゃくちゃな話を。何だと思っておるんですか。出すだけが責任ですか、出すだけが。冗談じゃありませんよ。それは通さなきゃ、両方セットで、今回の防衛庁の問題でもそうじゃないですか。要するに、背番号がつけられると、ああいういろいろな情報がどうしても今よりもっと簡単に集めるようになるんだよ、当然のことながら。データマッチングが容易になるわけですよ。そのためにつけるんだよ、番号というのは。
 だから、そういうものをやるためにはこういう個人情報保護の法整備が必要である。努力目標じゃない。そういうものが両方セットして、公明新聞にはっきり書いてあるじゃないか、坂口さんが。もう一回読もうか。この保護法ができるまでネットワークシステムは運用しないという趣旨を、審議している地方行政委員会で首相、自治相が確認するという提案があった、こういうことですよ。こんなことだったらやめてもらおうじゃないか。じゃ、みんな提案をすればいいのかね、いろいろな約束は、努力すれば。

片山国務大臣 もちろん提案をする以上、それを通すというのが政府の責任で、全力を挙げているわけであります。したがいまして、住基の改正法の施行は八月五日でございますから、まだ期間がありますから、政府は今全力を挙げて、国会での御審議に応じて御理解を求めているわけでございます。その努力を買っていただく。

河村(た)委員 まあ、どっちにしろ、こんなむちゃくちゃな法案を出すものだから、これはもう全然理解されていないじゃないですか、悪いけれども。これは考え方があるかわかりませんよ。あるかわからぬけれども、こういうような、僕らからすれば、旧通産省が言ってきたような、いわゆるセグメント方式で、民民規制でやっていけばええやつを、こんな投網をかけたようなことをやるから、健全な自由主義者である自民党の人も怒っている人ようけおるよ。
 こんな変な法案だから通らぬのであって、だから、ここは素直に、自分らは責任があるなら、約束したんだ、皆さん国会で。出直すんだよ、これ。出直す。それで、少なくとも住基については、それはもし何だったら改正案を出せばいいじゃないか、附則なんかでも。附則は簡単に出せるじゃないか。それがあなたたちの国会に対する責任だよ。当たり前だよ、こんなの。どうなんです。官房長官、どうですか。

福田国務大臣 先ほど来御説明しているとおりであります。ですから、今審議をしていただいておるこの法案について、極力早期成立に向けて御協力をいただきたいということを再三お願い申し上げている次第でございます。

河村(た)委員 悪いけれども、おれは別にもうあれなんだけれども、こんなことだったら、本当に、議会としてこんなことを質問しておったってしようがないじゃないか。
 今、いろいろな約束をしておると思いますよ、いろいろな答弁を。この間言ったのは、例えば報道機関にフリージャーナリストは入るかと。竹中さんが、それは入るだろうと。総理大臣も言いましたわね、入る。あれも希望になっちゃうのかね、みんな、一つずつが。そうでしょう。皆さんが言ったことというのは、憲法六十六条三項で連帯責任を負うと。すさまじい緊張関係があるんですよ、実はこの間で、与党であっても。いや、与党だからこそあるんだ、議院内閣制というのは。大統領制よりももっと緊張関係があるんですよ、皆さんが入っていくから。そういうことなんです。
 おれは、悪いけれども質問できぬよ、これ、本当に。ちゃんと誠意ある回答を示してくださいよ。それか、政権交代が起きたのか。なぜ前の内閣総理大臣の答弁がそんなふうになるんですか、希望に。

片山国務大臣 御承知のように、もう河村委員には釈迦に説法ですが、住基のシステム、あの改正基本法の中で、我々は万全の情報保護とセキュリティーをとっているんですよ。ただ、あのときの議論は、全般の、民間を含めての個人情報の仕組みが要るな、こういう議論なんですよ。万全の上にもさらに万々全を期そうということでああいう取り決めをしたわけでありまして、私はその方がいいと思いますよ。いいと思いまして、政府は努力をして去年の三月に法案を提出したわけでありますけれども、いろいろな御都合で現在になっている。
 だから、まだ時間がありますから、最大限の努力をして御理解を得てこの法案を通したい、こういうことでございまして、それじゃ、住基のシステムそのものでどこに問題がありますか、セキュリティー、どこのところで。どこにどういう問題があるかという具体的な議論をやっていただかないかぬので、我々は改正住基法の中で万全の対応をとっていると思いますけれども、さらにその上に、誤りなきを期すために全般の個人情報の保護の仕組みをつくろう、民間も入れよう、こういうことでございまして、この個人情報保護法が直ちに住基の何かに関係あるということじゃないんですよ、法的には。

河村(た)委員 むちゃくちゃだよ、これ。何を言っているんだ。小渕さん、はっきり言ったじゃないか。冗談じゃありませんよ。住基の内容というのはあのときもうわかっておったんじゃないのか。それに加えて、わざわざ委員会へ出てきて、私、そのときちゃんとおった。わざわざ委員会に出てきて、小渕さんは、こういうような保護システムをつくることが施行の前提であると言ったんだよ。あなた、むちゃくちゃだよ、こんなの。連帯して責任とってくれ。やめてくれよ。

片山国務大臣 前提だから、法案を去年、十三年三月に出して国会での御審議をお願いしているわけです。現在も一生懸命我々は議論しているわけですよ。皆さんの御質問に答えているわけでありまして、だから、前提としての政治的な姿勢を明らかに小渕さんが示しまして、我々もそれに従って現在最大限の努力をしていると。

河村(た)委員 そんなもの、通らなくても施行すると言っているじゃないですか、あなた。通らなくても施行するとはっきり言っているじゃないですか。全然違うことを言っているじゃないですか。書いてあるじゃないですか、ここに。書いてあります。何を言っているんですか、あなた。四番か。政府としては所要の措置を講じたことになるものでありますということで、施行するということじゃないですか。これもそうだけれども、その前に答弁しているじゃないですか、そう言うて。全然違うじゃないか、これは。何を言っておるんですか。通らないから……(片山国務大臣「今、成立のための最大限の努力を我々はしているのでありまして、通らないことを決めていただくのはいかがかと思いますよ」と呼ぶ)

大畠委員長 片山総務大臣、指名をしてから答弁するようにしてください。

河村(た)委員 努力するだけじゃなくて、この四の「法律上、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、法令で定められている日に施行することが義務づけられております。」とはっきり言っておるじゃないですか、成立するか否とにかかわらずと。だから、この附則は、この附則をつくる前提として小渕さんがわざわざ出てきて、それで皆さん、三党合意までして、全委員が、これ、今読んだじゃないですか。今、与党の委員も施行が前提なんだなということを確認しているんだから。そういう委員会をやったんですよ、国会で、ここで。だめだよ、こんなもの、全部やめてくれよ、本当に。本当、だめですよ、こんなもの。それじゃ、連帯して責任とってくれよ。答弁変えたのかね、これ。変えたなら変えたで言ってくださいよ。

片山国務大臣 だから、この個人情報保護法を通すために現在審議をやっているわけでありまして、政府としても最大限の努力――四に書いてあるのは、法的には、改正住基法の施行は法律上決まっているので、八月五日に施行しないと法律違反になる。だから、これは法律上そういうことになる、こういうことを言っておるわけでありますけれども、政治としての小渕総理の答弁は大変重いわけでありますから、今最大限の努力をしているということを再三申し上げているわけであります。

河村(た)委員 法律的にはということは、では、政治的にとめるんですね、今の話の中で。今の聞いた話だと、法律的にはそう決まっているが、やはり政治責任はあるわけでしょう。重い重いということは政治責任のことでしょう。
 それでは、もし法律が、法律的にはこうなっておるけれども、しかしやはり小渕さんの答弁の政治責任を感じにゃいかぬから、その場合は施行しない、そうするんですね。

片山国務大臣 だから、一生懸命努力して法案の成立を期す、こういうことでございまして、まだ結論が出たわけでも何でもないので、国会は審議中でございますから、最大限の努力をする、こういうことでございます。

河村(た)委員 とにかく、こういうところははっきりしていってもらわないと、とにかく前のこの小渕総理のときの内閣との解釈の姿勢を、はっきりこの前提ということを言ってもらわにゃいかぬ。もし、今言ったようなふうで希望だというんだったら、単なる希望だというなら、それは、正式に答弁を変えます、小渕さんのときの姿勢と変えます、そうやって言わにゃいかぬ。そうじゃないとこんな審議しておれぬじゃないか。言ってください。ちょっとこれはどっちかしか質問できぬね、悪いけれども。できませんな、これは。(発言する者あり)

大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 それでは、速記を起こしてください。
 そこで、今河村委員の質疑の最中でありますが、先ほど、この委員会の冒頭に官房長官から政府としての統一見解が五点示されました。この問題について質疑を行っているさなかに、いろいろと質疑者と答弁者の間の、何といいますか、行き違いといいますか、かみ合ってないという部分がございますので、そこで、今各党の理事に集まっていただきまして、ちょっと整理をさせていただきたいと思います。

 一言で言いますと、法律論と政治論と二つがありまして、法律論の整理と政治論の整理と二つ必要だろうということで、政府の先ほどの公式の発言の五点は法律論であろうと思いますが、改めて、きょう政府特別補佐人として津野内閣法制局長官においでいただいておるわけでありますが、まず、津野内閣法制局長官の方から法律論に的を絞った形の見解を求めようということになりましたので、津野内閣法制局長官から法律論に関する見解を求めます。
 津野内閣法制局長官。

津野政府特別補佐人 御指名でございますので、住民基本台帳法の一部を改正する法律附則第一条第二項の関係につきましての法的な考え方というものについて、御説明いたしたいと存じます。
 まず、平成十一年の住民基本台帳法の一部を改正する法律案の国会審議の過程におきまして、自由民主党、自由党及び公明党・改革クラブの議員修正によりまして、同法附則第一条第二項に、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」との規定が追加されたところでございます。
 この附則第一条第二項の趣旨と申しますのは、同法を施行するに当たっては、民間部門をも対象とした個人情報の保護に関する法律の整備を含めたシステムを整えるなどのために速やかに所要の措置を講ずるという、一種の要請が政府に対してなされたものと解されるところでございます。
 しかしながら、個人情報の保護に関する法律の整備について申し上げますと、所要の措置を講ずる主体である政府につきましては、これは立法機関ではございませんで、みずから法律を制定することはできないわけでございます。したがいまして、所要の措置として政府としてできることは、法律案の検討、作成、それから国会への提出、そういったことを意味するものと私どもは解しているわけでございます。
 政府といたしましては、その附則第一条第二項の規定を踏まえて平成十三年三月に個人情報保護法案を提出しているところでございまして、その早期成立に向けて全力を挙げて努力しているところでございまして、個人情報の保護に関する法律の整備に関しましては、同項、先ほど言いました住民基本台帳法の一部を改正する法律附則第一条第二項との関係で問題が生じることはないというふうに考えているわけであります。
 なお、住民基本台帳法の一部を改正する法律の審議の際に、当時の小渕総理大臣からいろいろございましたけれども、これは、私どもの方からはとりあえず法律論ということでございますので、以上の見解を申し述べたいと存じます。

大畠委員長 今、津野内閣法制局長官から法律論に基づく見解を求めました。基本的には、先ほど官房長官がお示しいただいた五項目の内容でありますが、法律的にはこのような解釈なのかもしれませんが、そこで、政治論としてそれでいいのかということが河村委員からの御指摘でありました。法律論は法律論、しかし、小渕総理がそういう、前提とすることを認識しているという発言もされておられましたので、この問題について単に法律論だけでいいんだろうかという御質問が河村委員からあったように受けとめます。
 したがって、官房長官の方から改めて政治論としての考え方を少しいただきたいと思うわけでありますが、あるいは河村さんの方から改めて質問されますか。

河村(た)委員 要するに、小渕さんは、セットである、個人情報保護法の制定と住基ネットの施行はセットである、こういうふうに言われて、その前提でもってこの法律はできたんですよ。国会は、その前提を解釈してできたんですよ。そういうことでしょう。では、そのとおりやってくださいよ。そういうことですよ。
 ただ、もし変えられるなら、皆さんは憲法によって連帯して責任を負うんだから、当然、こちら側に対して説明責任があるわけです。そのとおりやってくだされば、それでいいんです。もし変えるなら、それはちゃんと責任をとって変えてもらうということ。ですから、セットなんでしょう。努力しているだけじゃだめですよ。努力していることと小渕さんの言ったことと、全然違うじゃないですか。

福田国務大臣 ただいまのいわゆる政治論、これは先ほど申し上げたとおりでございます。それ以上ございません。
 ただ、住基ネットの方は、これはもう法律で決まっているんですよ。法律で決まって日にちが決定されているわけでございますから、その中において、今提案申し上げている個人情報に関するこの法案について、できるだけ早く、間に合うようにということが我々の願いなんです。再三申し上げているとおりです。

河村(た)委員 いや、もう前提も、こんな防衛庁の問題等で、さらにもっとデリケートにやらないかぬようになってきたんだ。だから、政治論として、今の状況だったらもうこれはだめですよ、本当に。こんなものはだめだよ。

大畠委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 河村委員の質疑時間があと一分残っております。それで、先ほど理事間で協議しましたが、河村さんの方から再度質問していただいて、政府の答弁を求めます。そして、その問題については、もしも問題等があれば理事会で引き取るということで進めさせていただきます。
 では、河村委員からの質疑をお願いします。

河村(た)委員 時間、だから残しておいてくれないか、今のそういう条件で質問しているんだから。
 要するに、法的には今法制局の方が言われましたけれども、では、政治的にも、前回の、小渕さんは、セットである、前提であるというような、条件であるとはっきり答えられて、そういう前提でもってこの法案が当時通ったということは事実です。それに対して、官房長官も、その発言の意味は重い、これは、そういうことは政治的に重いということですね、言われた。
 では、内閣として当然、これは前回の答弁でありますけれども、内閣は、前内閣、前々になるかな、姿勢を引き継ぐと言っておられるということだから、小渕さんの姿勢を引き継ぐために、もしそういうことだったら、これが通らなければ、その施行をしないための法的な措置をとられますね、政治的な責任を感じられ、政治的な意味が大きいと言うんだったら。

福田国務大臣 まず前提として申し上げるのは、小渕総理が答弁されたその中身で、その認識をされたということです。しかし、諸般の事情で、小渕総理の発言というもの、これは政治的に重く受けとめなければいけない、こういうふうに前から申し上げているわけですね。そういうことでもって、この法案を準備して、間に合うようにひとつお願いしますということで御審議をお願いしているということであります。
 今、それでは、法律が仮にできなかったら施行を延ばすのかどうか、住基の方ですね、ということ。これは、だって、立法府の方でもって決めてくだすった法律に基づいて行政府が、これが八月五日ということでございますので、これはもう私どもとしてもそれ以上どうしようもない、御返事を申し上げることはできないということを申し上げておきます。(発言する者あり)

大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 河村委員の質疑時間は終了したわけでありますが、ただし、河村委員の質疑に対する政府の答弁については、河村委員が十分御納得いくような内容ではないということは理事会の中でも確認しておりますので、今の質疑のやりとりの問題点については理事会で協議させていただきます。
 次に、北川れん子さん。

北川委員 今の河村委員の指摘、この間ずっと、前回、今回引き続いておやりになった点について、私自身は、河村委員のおっしゃっていることの真っ当性という面と、政治的な国会と内閣との先ほどもおっしゃった緊張感の点において、今の御答弁では、もし包括的個人情報保護法が成立しなくても八月五日の住基ネットは施行するということを、片山大臣は以前、総務省大臣としてそういうふうな答弁をされた。
 けれども、内閣の官房長官でいらっしゃる福田官房長官の答弁があいまいでした。速やかに成立するのを希望するというような形のことでしかおっしゃらずに、そのことを避けた。そこを私たちはずっとこの間問題にしてきて、きょうに至って、先ほどの河村委員への御答弁に対して、明確な法律的な、もし――どうなるかわからないんです。成立するかしないかしかないわけですから。
 九九年をもう一度思い出してくださいよ。あのときの国会がどれだけ混乱していたか。そして、各地域から、拙速にやろうとしていることに関して気づいた、住民基本台帳ネットワークのあの改正というのは、総背番号制に限りなく近くなることを決めていこうとしているんだと気がついた人たちが徐々にふえていた、そういうときだったんですよ、タイミング的には。そして、廃案寸前に追い込まれる土俵際だった。そのときの小渕首相の発言であったがゆえに、重きを、なお一層高まったのではないかということで、三年後の今のこの委員会で問題にしているわけです。
 先ほどの河村委員のというのを理事会預けにもなりましたけれども、成立するかしないかなわけですから、する場合は簡単ですよ。八月五日に施行するわけですよ。しない場合、簡単なことは、もう委員会で質疑するのはやめようということで、もししなかった場合に、法的根拠の措置をとるのは幾ばくでも簡単にできるわけですよ。政令、省令に落として、八月五日の延期ということを、施行の凍結ということを一時的にやられるということだって、一番簡単な方法としてできるわけですよ。
 大きな法的解釈として変えるというような、法律根拠を根幹から変えるようなことをしてくださいというような意味で河村委員はお述べになった点もありましたけれども、私は、一番目先、一番簡単な方法で御提案したいと思うんです。もしこの包括的個人情報保護法が成立しなければ、福田内閣官房長官にお伺いいたしますが、八月五日の施行というものを凍結するというような、一番簡単な附則の改正ぐらいでできるようなことをするおつもりがあるのかないのか、続きまして明確な御答弁をいただきたいと思います。

大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、北川さん、質疑の続行をお願いします。

北川委員 済みません。すごい緊張感を持っていたのに、後ろを向いたら委員の皆さんが本当にまばらにしかいてくださらなかったと気がついてびっくりしましたが、今私がお伺いしたかったのは、そういうふうに、八月五日の凍結、延期ということは、大きな意味での法解釈を変えるということではないわけで、そういうことならまずできるのではないですかという質問なんですが、福田官房長官、いかがお答えいただけますでしょうか。

福田国務大臣 住基ネットワークの方は、日にちは決まっているわけですね。それは法律によって決まっているわけでございますから、これはやはりそれを優先して考えるべきだろうと思います。ですから、それを前提にして、あと個人情報のこの法案についても審議をしていただきたい。そして、早く成立をさせて、この住基ネットワークの施行に間に合えばいいけれども、しかし、その個人情報の中身について、その形式論ばかりおっしゃって、中身についての議論をされないというのはいかがなものかな、私は先ほどからそういうふうに拝聴しております。

北川委員 それはちょっと、こちらはこちらで、この法案に対して、もう閣外というか、表の世界で、外の世界で、この法案がいかに欠陥法案でだめな法案であるかということの検証は一つ一つ押さえてやってきているわけですよ。やっているんですよ。ですから、国会質疑に百五十一にようおろさなかったわけでしょう、小泉首相は。そして、今の福田官房長官のお話では、八月五日が法で決まっているからやらなければいけないと。
 では、なぜ八月五日なんですか。四月一日とか三月三十一日、八月五日、八月六日、いろいろありますよ。八月五日ということに関しての凍結ぐらいを今できないということは、小渕首相の答弁を政治的に重きを置かないということと、先ほどから言っていらっしゃいますけれども、連帯責任性を問わない、問われないという立場をとるということを明言されたに近いというふうに思うんですけれども、八月五日の施行ぐらいを凍結、延期ということは幾ばくでも簡単なことなわけですよ。
 それは私は前提は、この包括的個人情報保護法案が通らなければということでお伺いしているわけですから。通らないには通らない理由があるわけですよ。あった前提をいっぱい言っているわけですから、私たちの方は。そのことを抜きにしておっしゃられることに関しては、とても心外ですし、やはり、九九年がどんなに混乱していたかということ。委員会採決を省略したんですよ。委員会採決を省略して、強硬に本会議で立てられたということ、その前段で、何とか合意をとれる、一番の本当のすれすれのところが小渕首相のあの発言であったということを、みんなまだ、三年前ですから覚えているわけですよ。私は普通の市民でした。覚えていますよ。そのことは今、国会の中でとても政治的に浮かび上がっていて、もし小渕前首相がここに御存命でいらっしゃるならば、本当に出てきていただいて聞くというようなこともさせていただきたい。それぐらい大きなことであったことに関して、答弁を逃げようとされている。
 だって、片山大臣は、個人情報保護法案が通らなくても八月五日の施行はやりますよと、総務省大臣として、管轄大臣としておっしゃったわけですから、福田官房長官がこの間ずっと答弁をあいまいにされていることは、とても私は納得できない。そのことが河村委員の中にもずっとあって、きょう答弁台に立たれたわけで、政治的な面に関してお伺いをしているんですから。答弁をお願いいたします。(片山国務大臣「ちょっとその前に、委員長」と呼ぶ)いや、私は福田官房長官にお伺いしているんですよ。(片山国務大臣「ちょっと待って」と呼ぶ)いやいや、いいです。福田官房長官に。

大畠委員長 お二人の方に答弁を求めましょう。

北川委員 いやいや、私だって時間があるわけですから。

片山国務大臣 何で八月五日かということは、改正住基法が通った、公布の日から三年以内に施行と法律でこれは明定されているからであります。
 それから、誤解が恐らく委員にあると思うんですが、これは国のネットワークじゃないんですよ。全部の地方団体の共同のネットワークなんですよ。全地方団体がこの八月から施行してくれと言っているんですよ。国の意思でそれをとめるなんということは、それはとってもできない。全地方団体の共同ネットワークですよ。そこが基本なんですよ。だから、皆さんはやや誤解があるんです、その点は。

福田国務大臣 政府が個人情報法案の成立をお願いしているところなんですね、今。委員の話を伺っていると、この法案がもう通らないから延ばせ、こういうふうな話に聞こえますけれども、通らないことを前提にこの住基法の施行をおくらせよ、そういう法案を出せというのは、これはちょっとむちゃな話じゃないんでしょうか。まずは、この法案の審議をぜひお願いしたいということであります。小渕総理の趣旨にもそれが沿っているものだというふうに私は思っております。

北川委員 とんでもないです。今のは答弁じゃないです、私に対しての。答弁ではないですし、百五十一国会が今じゃないわけですよ。一年たっちゃったわけですよ。一年たって、三年目めどの八月五日がもう目前に迫っている。それをお互い共通の事実認識として共有できた。共有できたその時点から私たちは話をさせていただいているわけですから、福田官房長官が今おっしゃったことは、百五十一国会で審議をしているこの場面であったら、通るか通らないかそれはわからない、そういう御答弁も返ってくるのはいたし方ないかなと思いますが、私たち、百五十一に出されたまま、政府の方が強くおろしてこなかった。そのことを受けて、百五十四、ぎりぎりのこの国会になって、六月十九日が閉会になって、おっしゃる今、まだ審議の内容にも入れていないわけですよ、現実的に。
 そして、今の御答弁は、限りなく小渕内閣との連続性についてということにおいて、先ほど河村議員もずっと言われておりますが、政治的に責任をとらないということをあからさまに言われていることに関して、私たちが本当に道理を尽くして、信義を尽くして議論をしたって意味がないということになりますし、信用できないですよ。不信任に近いですよ。そして、地方……(発言する者あり)それはそうですよ。

大畠委員長 静かにお願いいたします。

北川委員 それと、今、片山大臣の方が御答弁いただきました、なぜ八月五日か。それに対して、今、地方自治体や、さまざまな問題点というのがもう一度洗い出されたり、国の方の説明の不十分さ、先ほどもどなたかおっしゃいましたが、十一省庁になって百五十三事務に広げたら、九十三事務から百五十三になったらどうですかとかいうのを、聞いたら、ことしの二月二十四日にやったりしているじゃないですか。もう、あたかも八月五日に施行ということを踏まえた上での前もった話というものを各地方自治体に投げられたりして、それで困惑している自治体がありました。私はそれを決算委員会の方でも御質問させていただいた経緯もあるわけですけれども、福田官房長官、下向いて、ずっとそういうふうにおっしゃるけれども、連続性の意味から、そして、先ほどのを使わせていただくなら、日本国憲法の遵守の面からいっても、今の御答弁というのは私に対しての答弁になっておりませんし、不信任以外の何物でもありません。
 私自身は、きょう、この問題で質問しようと思っていたわけではないですが、この問題の重要性にかんがみて、連続性の中で、河村委員の部分を引き継がせていただいて今御質問させていただいているわけですが、これは、委員長、一番簡単な方法での法的に八月五日を凍結ということさえも、もうしないんだよということをおっしゃる。(発言する者あり)当たり前じゃないですよ。それだったら信任できませんよ。不信任です。答弁になっていないです。

片山国務大臣 住基法に今度の事務を追加するというのは、地方団体と各省庁の意見を聞いて調整した上でございまして、ぜひこれを追加してくれということなんで、私どもの方がこれを追加するなんということはないんです。
 何度も言いますけれども、このシステムは全部の地方団体の共同のネットワークシステムでございまして、全部賛成しているから、全部入って、全部経費も負担しているわけであります。国が出しているわけじゃありません。(発言する者あり)

大畠委員長 北川さん。(北川委員「できないです」と呼ぶ)速記をちょっととめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 北川さんの質疑の最中でございますが、北川さんの質問趣旨と、それから政府側の答弁とが食い違うといいますか、合っておりませんで、北川さんの方から、そのようなことでは質問を続行することはできないということで、今、理事の皆さんに集まっていただいて協議をいたしました。
 このことについては、河村さんの質疑のときにも、理事会でこの問題を協議するということにさせていただいたわけでありまして、この問題は協議させていただきたいと思いますが、そのほかの質疑について北川さんに質問をしていただきたいと委員長としては思いましたが、北川さんの方は、今、理事を通してお話を伺いますと、この問題が解決しないと次の質問に入れないというお話がございました。
 したがって、今、理事間で協議をさせていただきましたが、きょうは、この委員会は散会とさせていただきまして、そして後日、理事会でこの問題について十分協議をしてまいりたいと思います。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。


2002/05/29

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