2002/05/22-3

戻るホーム情報目次


平成十四年五月三十一日(金曜日)

漆原委員 公明党の漆原でございます。
 本法案についてお尋ねします。
 個人情報保護法を今国会で成立させる必要性について、先進諸国における法制化の状況も踏まえて御説明を願いたいと思います。
竹中国務大臣 個人情報保護法の必要性でございますけれども、御承知のように、日本は今、世界一のIT国家を目指して、世界最高水準のIT国家を目指してさまざまな制度整備を進めております。企業等からの個人情報の大量な漏えい、個人情報の売買事件が社会問題化しているこの状況の中で、プライバシー等の侵害を防止して国民生活を守るために、IT社会の必要な、不可欠な基盤法制として、この法制の制定は急務であるというふうに考えます。
 諸外国との比較のお尋ねでありましたけれども、今、OECD加盟国二十九カ国中で、民間部門を包括的に対象とする個人情報保護法を持っている国は二十四カ国であります。民間の包括法を有していないのは、個人情報保護法を有していない二カ国は別としまして、三カ国のみという状況になっております。
 加えて、この法案でありますけれども、基本法制として必要最小限の規律を定めるとともに、その保護の必要性の特に高い分野については、この法律の規律を上回る厳格な措置を講じるための特別法の制定を条文上要請しているという形になっております。
 さらには、地方公共団体が保有する個人情報に関しては、現在約六割の団体が何らかの条例を制定しているところでありますけれども、この法案に沿いまして必要な条例の制定または改正を進めてもらう必要があるというふうに思っております。
 こうしたことから、この法案の審議、成立がおくれますと、個人情報保護施策全体に影響を及ぼすということとなりますので、御審議をいただいた上、ぜひともこの国会での成立をお願いしたいというふうに思っているところでございます。
漆原委員 法案の中身についてお尋ねしたいと思うのですが、法第一条、目的が書いてありますが、ここで、「個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」こう規定しております。
 ここで言う個人情報の有用性というのはどんなことを意味するのか、お聞きしたいと思います。
藤井政府参考人 お答えします。
 法目的の個人情報の有用性について御質問がございました。
 当然、個人情報は現代社会では大いに利用されているわけですが、それはやはり有用であるから利用されているわけでございまして、そういった側面もバランスをとる必要があるというような考え方に沿うものでございます。
 具体的には、さまざまな有用性というのはあると思いますが、一つの典型的な例は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、憲法上保障されているような基本的人権に資するような利用のされ方、これはメディアなんかがやはりその例として挙げられると思いますが、そういったのは当然有用性として評価されるべきものと思います。
 それ以外にも、五章の規定で念頭にある一般企業が顧客データを利用するという側面を考えますと、これはもちろん企業の面でも経済的な効率性、合理性という側面もございますが、むしろ、やはりいかに顧客ニーズを的確にしてサービスに反映させるかとか、あるいは顧客サービスを迅速に提供できることを可能にするかとか、申し上げれば、消費者の立場に立ってもやはり個人情報の有用性はあるということです。
 こういったもろもろの有用性をやはりバランスをとりつつ個人の権利利益保護を図るというのが、この法目的としているところでございます。
漆原委員 法三条では、「個人情報を取り扱う者は、次条から第八条までに規定する基本原則にのっとり、個人情報の適正な取扱いに努めなければならない。」こう規定しております。
 しかし、この部分についての個人情報保護基本法制に対する大綱では、その説明部分で、「なお、個人情報の保護に当たって個人情報の有用性に配慮することとしている本基本法制の目的の趣旨に照らし、個々の基本原則は、公益上必要な活動や正当な事業活動等を制限するものではない。基本原則実現のための具体的な方法は、取扱者の自主的な取組によるべきものである。この趣旨は、報道分野における取材活動に伴う個人情報の取扱い等に関しても同様である。」こう解説されているわけですね。
 しかし、法三条で、先ほど述べましたように、単に「個人情報を取り扱う者は、次条から第八条までに規定する基本原則にのっとり、個人情報の適正な取扱いに努めなければならない。」としか規定しておりません。
 大綱に示されたこの精神はこの法律ではどのように具体化されているのか、お尋ねしたいと思います。
藤井政府参考人 公益上必要な活動や正当な事業活動、いわば個人情報の利用の有用性と言っていいものでございますが、こういった有用性への配慮は、個人情報保護法制度全体について、やはりそういう考え方でつくらなければいけないということでつくっているとともに、当然、今申し上げました有用性の配慮というようなのは法目的に明記しているところでございまして、この法目的に明記するということは、法制の個々の条文の解釈に当たってもその解釈原理に当然なるという意味で、御指摘の点については、もう法目的に明記していることから、当然に基本原則もそういう趣旨で解釈されるべきことは明確であるということで、改めて規定することとはしていないというところでございます。
漆原委員 法第四十条に明確に、主務大臣の配慮義務ということで、信教の自由、表現の自由、政治活動の自由、学問の自由の観点から配慮義務が規定されておりますが、この表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由の基本的人権が尊重されなければならないというこの精神を第三条のところで明確に宣言するべきではないか、こういう意見もあるんですが、この点についての御見解を問いたいと思います。
藤井政府参考人 表現の自由等について、なぜ基本原則で再度明記されていないかという御質問の趣旨でございますが、またちょっと法制的、技術的な御説明になって恐縮でございますけれども、もともと憲法上の自由というのは、いわば法律に上位する規範でございます。そういう意味では、もともと本来、法律に書くかかわらずに守られるべき義務でございます。
 ということもございますが、もう一つ、法目的に、今申し上げました個人情報の利用の有用性、それのいわば典型例として、当然、基本的人権にかかわるようないろいろな個人情報の取り扱いは、その法目的の趣旨に沿って解釈されなければならないということは明確であるというところから、特段規定することとしなかったところでございます。
漆原委員 確認しますが、法第三条には明記されておらないけれども、法の全体の精神から、基本的人権が大事である、尊重すべきであるということが明記されていると同様な解釈がなされるというふうに伺ってよろしいんでしょうか。
藤井政府参考人 そのとおりであります。
漆原委員 次に、本法案に対しては、メディアの方から、言論の封殺だとかメディア規制法などといった強い批判がなされております。本法案は、メディアとの関係をどのように考えて、またメディアに対してどのような配慮がなされているのか、説明願いたいと思います。
竹中国務大臣 先ほども申し上げておりますけれども、この法案のねらいというのは、IT社会を前提にしまして、主として一般の企業においてコンピューター処理されている顧客情報等を念頭に置いておりまして、消費者等の権利利益を保護するということであります。これによってメディアの活動を規制するというような意図は全くございません。
 メディアにつきましては、むしろ法律の規制対象とならないように、次の三点で十分措置しているというふうに考えております。
 第一としましては、万人を対象とした最初の基本原則は、メディアにも及ぶわけではありますけれども、これは各人が自主的に守るよう努力すべき抽象的な規律であり、公権力による関与や罰則等々、一切ございません。
 第二に、報道分野については、事業者に対する義務規定、さらには主務大臣の監督、そうした第五章の適用を全く除外しております。
 さらに、三点としましては、取材の相手方に対する懸念もあるようでございますけれども、これは表現の自由に対する主務大臣の配慮義務を明記しておりまして、公権力の介入の余地を排除しているということであります。
 IT社会における個人情報保護の必要性、これは何度も申し上げましたけれども、さらには、メディアに対する不当な権力行使は排されるべきである、この二点について、メディアと政府との間にはむしろ共通の認識があるというふうに考えております。
漆原委員 法第五十五条第一項一号はメディアに対する適用除外の規定でありますが、義務規定だけではなくて、第五章第二節に規定されております主務大臣の監督の適用も除外をされております。その理由について説明を願いたいと思います。
藤井政府参考人 御指摘の認定個人情報保護団体というようなものは、主として苦情等の処理に当たるいわば任意の団体でございます。もともと、つくるかつくらないかというのは事業者の方々の任意なのでございます。したがいまして、メディア等適用除外されている方々でも、任意であるからは、つくりたければつくれる制度があっていいじゃないかという考え方もあり得ると思います。
 ただ、これはいろいろな関係方面等の御意見をお聞きしていたところ、もともと外されている分野について、任意であっても、わざわざ主務大臣の認定を受けるような形での認定団体というものをつくるというニーズが余り見込まれなかったということが一つ。
 もう一つは、逆に、認定団体に対する大臣の関与というのも、これは実はほとんど皆無に近いのでございますが、むしろそういう主務大臣からの関与を通じて、本来適用除外になっている分野に行政権力が介入するというふうに誤解されるのではないかというようなこともございまして、そこは、本来であれば、あくまで任意で設立していただくものに対していわば主務大臣が後ろ支えというか、その程度の制度ではあるんですが、この際、適用除外された分野についても、あわせてこういう認定団体の制度を設ける必要がないということで設けなかったというところでございます。
漆原委員 同項本文は、原則適用除外として、ただし書きで「ただし、次の各号に掲げる者が、専ら当該各号に掲げる目的以外の目的で個人情報を取り扱う場合は、この限りでない。」と規定しておりまして、少しわかりにくいかなという感じがしますが、専ら云々というのはどういうふうな意味になるのか、御説明願いたいと思います。
藤井政府参考人 この適用除外に関する規定は、御指摘のとおり、一たん適用除外にした者の中からさらにまた適用にする者を規定するという趣旨で、ひっくり返し、ひっくり返しで規定しているものですから、非常にわかりにくいところがあろうかと思います。
 ただ、御指摘の趣旨のとおり、専らというのは、少しでも報道に関連するような個人情報の取り扱いであるという場合は、これはむしろ、表から申し上げますと、それはもう適用除外されるのである。逆に、全体として、全くと言っていいくらい報道に関係のない個人情報の取り扱い、報道目的とは関係のない個人情報の取り扱いについては、これは適用除外されませんよ、そういう趣旨でございます。
漆原委員 次に、宗教活動と政治活動には、括弧の中で「これに付随する活動を含む。」というふうに規定してありますが、報道及び学術研究にはその旨の規定がありません。この差別はどのような理由によるのか。また、宗教活動と政治活動の方が報道及び学術活動よりも適用範囲が広いと考えられるのか。その辺をお答え願いたいと思います。
藤井政府参考人 御質問の件も、すぐれて立法技術的な、ちょっと細かい説明になって恐縮なのでございますが、結論から申し上げますと、なぜ違うことになったかと申しますと、宗教団体とか政治団体、これについては既存の法律で宗教法人法とか政治資金規正法で概念がある程度法律上規定されちゃっていた。その規定のされ方が、非常に中核となるような事務だけを規定していて、普通であれば副次的と申しますか、付随的な活動、そういったものがこのままほっておきますとこの法律の適用除外にならないというふうに読まれる可能性があったということで、そこは、そういうものも本来、そういう既存の法律がなければ、当然宗教活動とか政治活動といっていいようなもの、そういう付随的なもの、そういったものも適用除外されるんですよということを明記したということでございます。
 これに対して報道と学術研究については、これも非常に法制技術的な御説明で恐縮なんでございますが、もともと報道とか学術研究について既存の法律で定義的に定めている規定がなかった。非常に一般概念としての理解のされ方で、それをそのままこの法律でつくっている。その場合、どういうことかと申しますと、宗教法人とか政治資金規正法等の政治活動、政治団体のように限定的に解されずに、報道に付随するような行為、こういったものも当然この法律の条文では適用除外されるということには紛れがないということで、特に付随事業というような形で拡大していないということでございます。
 御質問の趣旨から申しますと、それでは範囲は違うのかというと、報道それから学術研究、政治活動、宗教活動、いずれも範囲は異ならないということになります。
 個々の条文の関係はちょっと御説明を省略させていただいてよろしいでしょうか。趣旨としてはそういうことでございます。
漆原委員 たくさん指摘されておる中で、義務規定の適用が除外される報道機関の中に出版社やフリーのジャーナリストは含まれるのかどうか、いかがでしょうか。
藤井政府参考人 御質問の件でございますが、出版社であっても、報道活動を業として行っておると言われるものは当然この五十五条一項一号の報道機関に含まれる、例示には挙がっていませんが、当然含まれるというふうに理解しております。
 それでは、なぜ出版社を例示に挙げなかったかという点でございますが、これは出版社の営業形態からいって、主として報道事業をやっておられるというような出版社はむしろ普通ではなく、いろいろ広範な著作物を販売されているのが通例であるということで、出版社をいわば報道機関の典型的な例として例示するということはちょっとなじまないということで明記していないということでございます。
 繰り返しになりますが、出版社であっても、報道を業として行っている場合は当然それは報道機関に含まれるということは明確だと思っております。
漆原委員 フリーのジャーナリストも報道目的のために活動している場合は当然含まれるというふうに理解させていただいて次に移りますが、事実に基づく小説を書く作家の皆さんは報道機関に含まれるのかどうか、お答え願いたいと思います。
藤井政府参考人 これも小説家、いわゆるノンフィクション作家とかモデル小説作家とか、細かく分ければジャンルはいろいろあるようでございますが、この法律から見た場合、問題は、その著作物なるものが報道的目的を持っているかどうか、含まれているかどうかで決められる。
 ただ、報道目的を持っている場合は当然報道機関の行う報道目的の行為ということになるんですが、では、純粋文芸作品のようなものはどうなるかというと、それは、もともとその登場人物が架空の人物ではなくて実在の人物をモデルにしたものであったとしても、そのモデル人物というのはいわば創作物であるということで、そもそも個人情報ではないんではないかというふうに考えているところでございます。
 加えて、今申し上げた話は、もともと第五章の個人情報取扱事業者の適用対象となる事業者になるか否かということは、その作家の方が、個人データ、個人情報をいわば相当規模のデータベースとしてその活動に用いられているという前提がありまして、そういうことがなければ、基本原則上のせいぜい自主的な努力義務の対象となるにすぎないということでございます。
 あと、いずれにしても、付言させていただきますけれども、政府との関係においては、第四十条で表現の自由については配慮義務が課されているということでございますので、いわば公権力がそういう作家の御活動に関与するということは禁じられているということでございます。
漆原委員 この点に関して、作家の皆さんは大変心配をしておられるわけですね。
 EU指令の第九条にこう書いてあります。プライバシー権と表現の自由に関する準則を調和させる必要がある場合に限り、ジャーナリズム目的または芸術上、文学上の表現目的のためにのみ行われる個人データの処理について、適用除外を定めなければならない、こう規定をされておるわけですね。
 本法案では報道目的だけが適用除外になっておりまして、表現目的は適用除外になっていない。今おっしゃった法第四十条で表現の自由については主務大臣に対する配慮規定が置かれているだけである。明文における適用除外の場合と配慮規定では、法文上も天地、雲泥の差があると私は思っております。
 芸術上、文学上の表現目的を本法案において適用除外にしなかった理由を尋ねたいと思います。
藤井政府参考人 芸術上、文学上の表現等を適用除外としなかった理由について御質問いただきました。
 これはちょっとEU指令との比較ということで御説明させていただきたいのですが、EU指令でも、ジャーナリズム目的または芸術、文学上の表現目的のためにのみ行われる個人データの処理について適用除外と考えてもいいというような話になっていて、具体的には各国の法制に必要な範囲で任されているわけでございますけれども、ドイツの法律なんかを見ても、芸術目的というのは除外されていないわけですが、文学目的といっても、事実上ルポルタージュ的なものだけが除外に限定されているというような状況もございます。
 そういった各国の制度も踏まえつつ、問題は、ちょっとこれも法制的な御説明になるのですけれども、もともと著作物等であっても報道に引っかかるものは報道で適用除外される。それと、実質的に国家公権力の関与というものは配慮義務で排除されている。
 それから、実は、途中プロセスとしての作家等のいわば取材ファイルは国家公権力に対しては関与を排除されているのですけれども、いわば当事者間での義務関係というものは法律上残っておるわけでございます。
 これも、先ほど申し上げましたように、多分事実としてそんなに相当規模の個人データを有しておられる方はちょっと考えられないのではないかということと、仮に適用になったとしても、これも何かひっくり返した言い方になるのですけれども、実は義務規定というのは、当然、冒頭御説明申し上げましたように、そもそも個人情報の有用性、それの配慮をした上で権利利益保護ということでございますので、個々の義務規定においても著作者のいわば表現の自由というものは保護される、そういう規定ぶりになっているということで、これはちょっと本当に技術屋的な御説明で恐縮なんですけれども、今の制度でも、特段、適用除外とするほどの状況も認められないし、実益もないというところで、今のところは適用除外ということにはしていないというところでございます。
漆原委員 法理論上は私もわかる気がします。いっぱい理屈を積み重ねていけば、四十条だとか憲法だとか積み重ねていけばそうなるんだな、保護されているんだなということが理解できます。
 しかし、難しい法律論と作家の皆さんがぱっとこの法文を見て受ける印象というのは、全然また違った別物じゃないのかなと思います。特に支障がなくて事実上守られているというふうに今審議官おっしゃるのであれば、これはむしろ、表現の自由という観点から正面から認めたっていいじゃないかと私は思っております。そのことを意見として述べさせていただきます。
 時間がなくなってきましたので飛ばします。
 報道機関が義務規定の適用除外となっていたとしても、取材の相手方に義務規定が適用されれば、情報提供者が萎縮をして必要な情報が得られなくなる、こういう心配がメディアからなされております。
 本当に、政治家だとか官僚のいろいろな悪を暴露するというメディアの力というのは大変なものだな、予算委員会なんかでも週刊誌を参考にしながら質問しているケースがよくあるわけですが、やはりそういうメディアの効果というのは認めてやらにゃいかぬな、私はこう思っているんですね。
 したがって、そこに情報提供者が罰則を受けるようなことがあると、メディアの言うとおり、情報提供者が萎縮して必要な情報が得られなくなる、こういう批判がなされている。これについてどう思うかということと、多分、法四十条で大丈夫だというふうにおっしゃるんだと思うんだけれども、それなら、そこのところをもっとはっきりアナウンスしておいた方がいいんじゃないかなというふうに私は考えておるのですが、御意見を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 漆原委員の御指摘、重要なポイントであるというふうに思います。
 この法案においては、取材相手が個人情報取扱事業者に該当する場合には、第三者提供の原則禁止を初めとする例の第五章の義務規定が適用されることになります。
 ただし、これは、今委員も御指摘くださいましたけれども、公権力によって報道の自由が侵害されるといった問題につきましては、この法案の四十条の表現の自由に対する配慮義務によって、取材相手に対して表現の自由を妨げないような、主務大臣の報告徴収、助言、勧告、命令、こういったものは行わないということになっておりますので、そのような問題が生じる余地はないというふうには考えます。
 しかしながら、メディア等において御指摘のとおりの不安、懸念が強く持たれているということは確かでございまして、その意味からも、この委員会における、国会審議における答弁を通じまして立法者の意思が明確になるように、私としては努力してまいりたいというふうに思っているところでございます。
漆原委員 ちょうど時間となったようでございますので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
大畠委員長 これにて漆原君の質疑は終了いたしました。
 次に、桝屋敬悟君。
桝屋委員 桝屋敬悟でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 今の漆原委員の質問に続きまして、同じ公明党から、私は、行政機関の個人情報保護について中心に議論をさせていただきます。
 先ほどこの委員室に入ってまいりましたら、同僚の河村委員が厳しく官房長官をしかっておられる姿を見まして、私も肝を冷やした次第であります。と申しますのも、私も、平成十一年の住基法の改正のときに、当事者の一人として審議に参加をさせていただいたわけでありまして、河村委員の怒りに満ちた厳しい指摘というのは、叱責というのは、これは私も身に当たる話だな、こう感じさせていただいた次第であります。
 そういう意味では、あのときもそうでありましたが、個人情報の保護に関する法制あるいはシステムというものは、みんな必要だと各党こぞっておっしゃったし、本当にできるのかという指摘があったぐらいでありまして、最近の一連のマスコミの報道を見ておりましても、異口同音に、前段としては、やはり法制は必要だ、個人情報保護法は必要なんだという議論とともに、なお問題がある、こういう論法であります。
 そういう意味からいきますと、河村委員のあの厳しい指摘は、一日も早く法律を上げろ、こう言われているような気がいたしまして、私はそのように理解をさせていただきながら、しかも、今回のこの委員会では、基本法とそれから今から議論したい行政機関の個人情報保護法、一緒に議論されるという。これは、基本法を出したときに、民間の方から官はどうなっているんだという声があったわけでありまして、そういう意味で、やっと二つそろったということは、河村委員の指摘も重く受けとめながら、両方あわせて一日も早くやらなきゃいかぬな、こう私は責任を感じておる一人であります。
 そういう意味で、幾つかの議論をさせていただきたいと思いますが、一点目に、今申し上げた民間部門との比較の問題であります。
 基本法制には、もう議論がありますが、第五章に民間部門の規律が書いてあるわけであります。個人情報取扱事業者に対して、自主性、自律性を尊重しながら、必要かつ最低限の規律、規範を求める、こういうものであろうと思いますが、では、行政機関の保有する個人情報保護、この取り扱いについてはどうなのか。やはり公的部門としての制度化の特徴があるのではないか、民間と比べてどうなのかということを端的に、これは副大臣からお伺いしたいと思います。
若松副大臣 今桝屋委員から、基本法制第五章の民間部門の規律、いわゆる必要かつ最小限の規律のことについて御説明いただきました。
 一方、行政機関につきましては、まさに公的部門にふさわしく、行政の公開性、透明性の向上の観点を加味しながら、個人情報の取り扱いに関しまして、個人情報保護の観点から厳格に制度化した次第でございます。
 具体的には、まず、民間は、これも以前触れさせていただいたかと思いますが、一定規模以上の体系的に整理された個人情報、いわゆるデータベース化された個人情報、これを規律の対象の中心としているわけでありますが、行政機関法制では、保有する行政文書に記録されているすべての個人情報を対象としております。それと、行政機関は、個人情報ファイルの保有に当たりまして、総務大臣への事前通知制度、いわゆる事前チェック型の制度を導入しております。
 そして、民間でございますが、データベース全体の包括的な利用目的等を公表する制度にしているわけでありますが、行政機関は個別の個人情報ファイルごとに管理する仕組みをとっておりまして、利用目的、記録項目、経常的提供先等、詳細な事項を整理し、公表することになっております。
 さらに、行政機関は、不開示等基準、開示請求手続等につきまして詳細かつ明確に規定されておりまして、民間は、事業者の認定団体による苦情処理が中心となっております。
 これにつきましては、行政機関は、さらに、不開示等の決定に対して不服申し立てがある場合には、第三者的な不服審査会、いわゆる情報公開・個人情報保護審査会への諮問を制度化している次第でございます。
桝屋委員 今の副大臣の御説明のように、やはり民間と違いまして行政でありますから、公的部門としての今の副大臣御説明のそうした内容が整理をされているんだろうというふうに私は思っております。
 大臣に続けてお伺いしたいんですが、やはり一連のマスコミの報道を見ておりますと、どうしても、この二つの法律を並べると、官に甘くて民に厳しいということがあるのではないかという指摘がある。特に、例えば六条の「安全確保の措置」、これは個人情報の漏えいに対する安全確保の措置を規定するものでありますが、あるいは七条の「従事者の義務」、これは守秘義務に当たりますけれども、そうした規定において、義務違反に対して罰則がないではないか、民間は厳しい罰則があるんだよと。こういう、多分に誤解の部分もあろうかと思いますが、私は、国家公務員法や地方公務員法だけで、本当にその守秘義務だけで足りるのかということは確かに思います。
 今まで、国家公務員法の守秘義務違反で本当に責任をとらされた、あるいはきちっと法廷の場で明らかにされたということが過去どのぐらいあったのかということを思いますときに、ここはやはり明確に説明をしていただきたいな、こう思うわけでありますが、この点はぜひ大臣にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 今桝屋委員が言われましたように、官に甘くて民に厳しい、こういう御意見もちらほら耳にいたしますけれども、例えば、漏えい行為等に対して、罰則の適用を見ますと、民間部門については直接罰則で担保する仕組みになっていないんですね。自主的に是正してもらおう。助言をする、勧告をする、さらには改善命令も出す、こういうことで自主的に直してくれと。その改善命令について聞かない場合だけ罰則をかける、こういうことなんですね。
 ところが、今度は、官の方と申しますか行政機関の方は、行政機関の長は、大臣は、これは特別職ですから国家公務員法の適用がありませんけれども、長を補佐する職員の義務違反につきましては、国家公務員法による服務上の懲戒処分の対象にストレートになるわけでありまして、守秘義務もございますけれども、法令の遵守義務違反についていろいろな罰則がストレートにかかる、こういうことでございまして、この点は、私は、民よりは官の方がずっと厳しくなっている、こういうふうに思うわけであります。
 また、公務の場合には、職権乱用罪、公用文書毀棄罪等、こういう刑法上の罪につきましても、犯罪構成要件を満たす場合には直ちに処罰の対象になる、こういうふうに思っておりまして、この一つの法律にどこまで書いているかという議論はありますけれども、仕組みとしては相当官に厳しい仕組みになっていると思います。
桝屋委員 今大臣おっしゃった法第七条、これをもし義務違反を犯したならば法令遵守義務違反、そして懲戒処分になるんだという点は、ぜひともこれからもよく説明をしていただきたいし、特に民間の方に御説明をいただきたいと思います。
 私、きのう本屋で「電子自治体」という本を見ました。小泉さんの絵があるので気になって開いてみたんですが、開いたら大臣の顔がばっと一面にありまして、電子政府、電子自治体だ。これはいいのでありますが、これをずっと見ておりますと、電子、ITの、電子政府、電子自治体の光の部分はばっと出ている。影の部分はどうも後ろの方へ、ないかと思ったらありましたので安心をいたしましたけれども、この中に、ハッカーは外からではない、ハッカーはうちから来るんだという指摘がありまして、そのとおりだなと思ったわけであります。
 これから、二十一世紀、電子政府、電子自治体というものを大臣は目指されている、政府を挙げて目指されているわけでありまして、そうした観点からも、ぜひともそうした取り扱いをする職員に、これはセキュリティーをやればやるほど扱いは難しくなる。だから、魔が差すといいますか、漏えいをしようと思わずに、少し使いやすくしようと思う心が働く。私も役人をやっておりましたからよくわかるんですが、これが役人の道理でありまして、そこにITの世界には大きな落とし穴があるということをぜひ御理解いただいて、全職員に督促をお願いしたいと思います。
 もう一点、そういう意味でお尋ねしますが、今回の行政機関の保有する個人情報保護法、あるいは独法もそうでありますが、あくまでも中央の機関、国の機関ということになろうかと思いますが、地方団体が持っております個人情報保護、これも住民生活に密着をする大事な話でありまして、特に電子政府、電子自治体ということでは大事な点だろうと思いますが、これは今後どうなるのか、どう整備をされていくのか、お伺いしたいと思います。
片山国務大臣 御指摘のとおりでございまして、電子政府、電子自治体をつくる場合には、まずセキュリティーをしっかり、楽なことなんか考えずにこれを確保してもらいたい、こういうふうに思っております。
 そこで、地方団体の場合ですけれども、状況は同じですね、国の行政機関と。そこで、今個人情報保護条例の制定などをやっている地方団体が、全団体の六〇・一%に当たります千九百八十二団体。三千三百ですけれども、約六割が個人情報保護条例を持っている。それから、条例でなくて、首長さんの規則や規程等により対策を講じている団体を加えますと二千六百二十四団体。全団体数の七九・六%が何らかの形で個人情報保護対策を地方団体としてもとっている。
 こういうことでございますけれども、内容についてはいろいろあると思いますし、この国の行政機関の個人情報保護法ができることを機会に内容を精査してもらいまして、できるだけ国に合わせた対応をとってもらうように、今後とも指導を十分やってまいりたいと考えております。
桝屋委員 大臣、私は地方団体、今六〇%という話をいただきましたけれども、ここの整備を本当に急ぐんだろうと思います。その急ぐという意味からも、今回の法制を一日も早くやり上げて、今回、基本法制の中に、十六条、十七条に、地方団体における必要な措置、ただ、これは「努めなければならない。」という努力義務規定ですから、ぜひこれは、大臣が目指される電子政府、電子自治体ということでは、早急に手を打たれる必要があるだろう。
 今回の行政機関が保有する個人情報保護法、これが各自治体にとっては一つの規範になるだろうと思いますから、これを一日も早く仕上げなきゃならぬ。と同時に、もう内容もある程度見えているわけでありますから、年度当初の部長会議等ではさまざまに情報を落とされているようでありますが、中には、いまだに、情報漏えいを心配する余りオンラインそのものも禁止しているというような自治体もまだあるようにも感じますし、ここは相当頑張らないといかぬのではないか、こう思っております。その辺の対応方をぜひお願いしたいと思います。
 それから、一つ先へ質問を飛ばしまして、本当は一条一条やっていきたいところでありますが、四条の関係であります。
 いわゆる利用目的の明示ということでありますが、行政機関が情報を収集する、その場合の利用目的を明示しなきゃならぬ、そしてそれはちゃんと相手に伝えなきゃならぬということでありますが、この明示というのはどういう形で行われるのか。
 それから、明示することができない場合ということで例外規定が置いてありますが、果たして例外がそんなにあるのかなと。今回の個人情報の保護の最大のポイントは、やはり自己の情報のコントロール権を確保するということでありますから、ぜひともできるだけ明示をしていただくのがいいわけでありますが、例外規定というのは例えばどういう場合があるのか。そんなに多くないんじゃないかと思っておりますが、具体的にお示しをいただきたいと思います。
松田政府参考人 まず、お尋ねの利用目的の明示の仕方でございますが、一般には、申請とか届け出等の手続によりまして個人情報が集められるということになるわけでございます。そういうものが多いと思いますけれども、書面による取得の場合は書面で利用目的を明示する、あるいは、ITでございますが、電子申請というようなことになりましたら、電子媒体で利用目的を明示するということがあろうかと存じます。緊急の場合等々において、口頭でどうしても明示をしなければいけないという可能性もなくはないと思っております。
 この利用目的を明示することが除かれる場合が第四条に書いてございます。「人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があるとき。」とかいうようなこと等いろいろ書いてございますが、こういうケースは非常に少ないと思いますけれども、万が一あった場合のための規定として掲げておるものでございまして、中には、本人に利用目的を明示することによって例えば監査や検査事務の関係で手のうちがわかっちゃうような、そういう利用目的を明示するとか、あるいは交渉事務に関していろいろな対処方針がわかってしまうような、そういう業務に支障を及ぼすような、そういう場合もあろうかと思いますが、いずれにしましても、万が一あった場合の規定として置いているわけでございます。
桝屋委員 数は少ないだろうとおっしゃいましたが、ここは多くの方が関心を持たれているところでありまして、我々もしっかりと注視をしていきたいというように思います。
 今官房長官、お帰りになりました。最後に、もう時間もないので、同僚の河村委員の気持ちをそんたくしてもう一回お願いをしておきたいと思います。
 私は、今回の一連の個人情報保護というシステム、法整備をする中で、これは本会議でも申し上げましたけれども、最後、大臣、作業が終わった段階で住基ネットにぜひもう一回返っていただきたい。先ほどから御答弁がありますように、住基ネットそのものは、当然ながら、プライバシーの保護について、情報漏えいについて十分な対策が講じられているとはいいますものの、なお漠然とした不安があるというような議論が随分行われたわけでありますが、私は、今回のこの行政機関の個人情報保護法、このシステムというものをもう一回整理して、これから見て今の住基ネットは本当に大丈夫なのかということを、先ほどの地方自治体の条例の問題もあります。全国の自治体が動くわけでありますから、ぜひとも、さらなる個人情報保護措置を住基ネットにおいてもあわせて検討いただきたいというふうに私は思っておる次第でございます。
 最後にお願いを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて桝屋君の質疑は終了いたしました。
 この際、休憩いたします。
    午前十一時四十一分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


2002/05/22-3

戻るホーム情報目次