2002/05/22-1

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平成十四年五月二十二日(水曜日)

後藤(斎)委員 おはようございます。
 先週お約束をしたとおり、細かい議論にきょうは入らせていただきますが、冒頭、官房長官にお尋ねをしたいと思います。
 先週の金曜日にお尋ねをしておるんですが、官の規制が強くなるというふうに言われている、私たちは少なくともそう考えておりますが、この個人情報保護法案、基本法も含めてですが、一方で、きのう、有事法制に関する問題で公聴会が強行採決されました。
 基本法でも言われているように、メディア規制とも言われておりますが、表現の自由や報道の自由そして個人の自由も、ややもすれば束縛をしてしまう。そして一方で、有事法制も国民の財産や基本的人権を制限する。そんなものがなぜ一括、小泉内閣が出されてきたのか、私は不思議でなりません。昨年、基本法については既に国会に出されておりますが、継続になった意義、それらを全く考えていない。国家が国民を管理する、その規制に関するものが一挙に吹き出している、そこがメディアの皆さんや国民の皆さんが大変心配している点ではないかなというふうに私は思っています。まさに戦前の国家総動員体制の準備でもあるというふうな声も一部であるというふうに私自身は認識しております。
 官房長官、この個人情報基本法案、行政に関する保護法案も含めて、有事法制の国会の審議のあり方も含めて、どんな形で小泉内閣として考えているのか、冒頭、お尋ねをしたいと思います。

福田国務大臣 まず申し上げたいのは、この個人情報保護法案というのは、メディアに不当な公権力行使を及ばさないように万全の措置を講じております。メディアを規制するというものではなくて、そして、国民を管理しようという考えがあるものではございません。
 特に、この必要性を申し上げれば、近年、民間企業や行政機関全般にわたりましてコンピューターやネットワークを利用して大量の個人情報を処理している。そうした個人情報の取り扱いは今後ますます拡大していくということであります。個人情報は一たん誤った取り扱いをされますと、これは個人にとりまして取り返しのつかないことになるということもございます。
 実際、企業の顧客名簿などが大量に流出するといったような問題が相次いで起こっております。また、個人情報が売買の対象とされる、こういうケースも生じておりまして、個人情報の取り扱いに対する社会的な不安、これが広がっているというのが現状だというように認識しております。そこで、国民が安心してIT社会の便益を受けられるよう個人情報の適正な取り扱いのルールを定め、国民の権利利益の侵害を未然に防止しよう、これがこの法案の趣旨でございます。
 また、国際的に言いましても、御案内のとおりであるかもしれませんけれども、個人情報保護に関する各種の取り組みが進められております。特に、EUにおきましては、近年、個人情報の保護のレベルが十分でない第三国への個人情報の移転を制限する方針を打ち出している、こういうこともございます。こういうような状況とか、電子商取引の急速な拡大等を背景に、国際的にも整合性を保った国内法制の整備が急務でございます。
 以上のような状況を踏まえまして、この法案を、よりよいIT社会の実現に向け、その制度的な基盤の一つとして個人情報保護のための仕組みを整備しよう、こういうものでございます。
 特に、近年と申しますか、IT戦略ということが叫ばれておりまして、この戦略を推進するための本部も内閣に設けております。そういうような状況の中で、個人情報をぜひ保護する体制を整備しないと、IT戦略も実行できない、有効に活用できない、こういうような部分が非常に大きく叫ばれておる、こういうような背景もあるわけであります。
 有事法制につきましては、これは全く関係のない話でございまして、これも、小泉内閣がスタートするときに、小泉内閣の施政方針として取り上げた課題の一つでございます。それを実行に移しているだけということでございますので、これも、予想のできるところで、そういうことが起こるかどうかはわかりませんけれども、武力攻撃事態というものがあった場合に我が国としてどういう体制をとるか、そして国民を守るかという観点から法案をつくったわけでございまして、今回の個人情報保護法案とはこれは関係のないことでございます。

後藤(斎)委員 私がお話をしたのは、国民の側から見れば、ややもすれば、一括して国家が国民の義務権利そして報道の自由も規制をする、それが一気に出されていることが非常に不安感をあおっているという趣旨でお話をしたのであって、その点、今官房長官がお話しになられたように、そうではないということは、それぞれパーツが違うからいいんだということでなくて、やはり国民の目から見れば、今国会の最終段階に来ていろいろな議論がされている、それがやはり有機的に連動しているというのはぜひ御認識になって、いろいろな場でまたきちっとお話をしていっていただきたいというふうに思う次第でございます。
 竹中大臣、先週も議論がありましたが、総理から、先週、法案の修正の指示があったというふうな報道がされ、竹中大臣もそれをお認めになっております。
 その修正というのは、一部報道機関の修正案に対する修正を指示されたということですか。それとも、国会の審議や国民の議論の中で柔軟に対応していくべきだということで、もっともっと幅広い意見を取り入れて法案について考えていけというふうなことなんでしょうか。その点をまずお尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 一連のその修正のお話、十三日の総理発言をめぐることでございますけれども、前回も明確に申し上げましたように、修正をしろ、修正を検討しろというような指示を総理から受けたことはございません。この点は総理自身が、十四日の記者との懇談会で、法案の修正を指示したものではないということを明確に述べていらっしゃいます。十二日の読売新聞に掲載された修正案に関して、非常に前向きに熱心に御議論をいただいている案であるのでよく勉強しておくように、あくまでそういう趣旨でありました。
 読売新聞、その後、作家の吉岡忍さんを初めとするグループ等々がまたいろいろな提案を出しているということも我々承知しておりまして、そういったものについても十分に勉強しておくことは当然のことであるというふうに思います。まさに、皆さんに御議論をいただくに当たって、さまざまな意見を勉強しておくという趣旨であります。
 もちろん、現在の私たちが提案している案は、政府として最大限の努力を講じたもので、最善のものとして御提案申し上げているということは言うまでもないことでございます。

後藤(斎)委員 今の大臣の御発言の中に、よく勉強しておけということは、先ほどお尋ねした、幅広い意見、委員会の質疑も含めて、これから柔軟に対応していくという趣旨で理解してよろしいのでしょうか。

竹中国務大臣 柔軟に対応といいますか、これはまさに幅広く国会で御議論いただくわけでございますから、我々としては、法案を提出する側としてはベストのものを提出した、その上でまさに国民の代表である皆さんに御議論をいただく、そういう趣旨で申し上げているわけです。

後藤(斎)委員 では、ちょっと切り口を変えて話をしたいと思います。
 仮に、抜本修正をするという中で対応がもし進んでいくとしたら、それは、残り少ない会期であります。もう一カ月を切っております。基本法は、メディア規制も含めて国民の大きな議論の対象になって、まさにもっと慎重にすべきだということで、仮に継続審議をし、例えば行政四法案の方だけ先行分離審議をする、そのような柔軟な対応というのは考えておられるんでしょうか。それとも、あくまでも一括ということにこだわって対応なさるんでしょうか。

竹中国務大臣 あくまで最善のものとしてお出ししておりますので、仮にというその御質問に対してはなかなかお答えのしようがないのでございますけれども、法案の性格として一つ申し上げるとするならば、基本的に、個人情報保護法というのはまさに基本法で、アンブレラの一番上のところに来るものであります。その基本的な考え方に基づいて、一体的、総合的にこのIT時代にふさわしい個人情報保護のための法整備をするというのが、やはり全体として政策として求められていることだというふうに思います。
 こういう基本原則をこの法律で確立し、そのもとで各分野にふさわしい個別法制の整備を図る、そのための第一歩であるということでありまして、行政機関法等は、この個人情報保護法に定められた基本原則の内容について、行政機関等にふさわしく具体化するものであるということなんだと思います。であるからこそ、個人情報保護法案の第十一条に基づいてこの行政機関法が制定されるという形にもなっているわけであります。
 その意味では、繰り返し言いますが、IT社会にふさわしい個人情報の保護のシステム、データ利用の有用性に配慮しながら人格権を守るという目的のために、個人情報保護法と行政機関法とは一体的に整備されることが必要であるという観点から、今、御審議をお願いしているわけでございます。

後藤(斎)委員 確かに、基本法とその中身の官民一体ということは、そこの点については整合性があるということはよく理解できます。ただ、行政機関に関する個人情報保護の法律、これは、昭和六十三年の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、この全部改正であります。確かに、基本法の十一条との関連もよくわかりますが、この部分だけとってみても、仮にこれが先行して処理をされても、全部改正ということであれば成立するんじゃないですか。

竹中国務大臣 行政機関については、一九八八年の行政機関個人情報保護法が既に存在している、それの見直しを今行おうとしているわけです。一方、民間部門における法整備は全くといっていいほど整備されていない。むしろ、民間部門における法整備が急務であるという側面があるんだと思います。
 それが、一九九〇年代に入ってからの欧米諸国における一連のこの部門における法案整備、御承知のように、OECD、EU中心にこういう整備が進んでいるわけでありますので、そういう点からいたしますと、個人情報、民間部門における法整備が急務であるという事情は、やはり十分に勘案しなければいけない問題だというふうに思っております。

後藤(斎)委員 竹中大臣、確認なんですが、その民間の個人情報の保護、これをしなければいけないということ、これもよくわかります。ただ、法体系の話を先ほど大臣がされましたので、六十三年の全面改正ということであれば、その分だけでも済むんじゃないでしょうか、大臣、どうお考えになっていますかということをお尋ねしたのです。その点だけ簡単に。できるんでしょうか、できないんでしょうか。

竹中国務大臣 法律の問題として、法体系の問題としてできるかできないかという問題が一つあろうかと思いますが、IT担当大臣としては、IT社会にふさわしい法整備をやはり全般としてやっていく必要があるということで今回のことをお願いしているわけで、IT政策、IT時代における人格権を守るという政策の観点から、やはり一体で整備していただくのが望ましい、ぜひそのようにお願いしたいものだというふうに思っているわけです。

後藤(斎)委員 法律的な問題は、大臣、これは次にもう一度きちっと確認をしたいと思いますので、法制局も含めて、その辺は整理をしていただきたいと思います。
 なぜ今、メディアの皆さん、きょうもたくさんいらっしゃっていますが、一年間、確かに継続審議になっておった中で、その問題について何の調整も、話し合いというか意見聴取みたいなものは、過去の立法過程ではいろいろなパブリックコメントを求めたりしたという話は聞いておりますが、なぜここに来てこれだけの、メディアの皆さんから、また有識者と言われている皆さんから、この法案に対する強い、また反対の意見があるのか。この一年間、どんな形でメディアの皆さんと基本法について御議論を、メディアの皆さんを含めてですが、なさっているのか、簡潔にちょっと御答弁をお願いします。

藤井政府参考人 メディア等の調整についてお答えいたします。
 御質問の趣旨の中にもございましたけれども、当然、立案に当たって、二回の部会とか委員会を設けて立案しているわけですが、その部会、委員会の中では、メディアの方々からも御参集いただいて意見を言っていただく、あるいは、それぞれ中間報告とか中間整理の段階で、一回オープンにした上で再度意見をいただくというようなことで、メディアの方々の御意見もできるだけ立案に反映されるように努力してきたところでございます。また、法案が成案を得た段階でも、あらゆる機会をとらえて、個別のメディアの方々に対しても説明に回ってきているところでございます。

後藤(斎)委員 逆に、審議の中で、冒頭官房長官にもお尋ねしましたが、官が絶対である、メディアの報道や取材の自由はできるだけ排除をしようという意思というのはなかったんですか。

藤井政府参考人 お答えいたします。
 法制化専門委員会での検討の中でも、メディア等からの御意見をいただきまして、委員会としても、この法案がメディアを規制するものであってはならないというようなお考えから、その成果物である大綱の中にも、メディアとの調整規定を設けられたところでございます。
 例えば、法目的の第一条、ここには、個人情報の利用の有用性と個人の権利利益の保護ということを明記しておるわけですが、当然、メディア等の、憲法の保障する基本的人権に資するような利用のされ方というのは、個人情報の利用の有用性のいわば典型的な使われ方だということでございます。
 そういう考え方で大綱とか今回の法案の全体が構成されているだけではなく、第五章の個人情報取扱事業者に対する義務規定というのは、いわば予防的なルールを守っていただくというようなことで、特に検閲の関係等の乱用的な公権力の関与というものが問題になりかねないということで、この第五章の個人情報取扱事業者の義務規定あるいは主務大臣からの関与ということについては、メディアの報道目的の利用については全面的に適用除外している。
 また、メディアだけに限りませんが、情報保護というのは収集する側と提供する側があるんですが、収集する側のメディア側だけを適用除外にするということであれば取材が問題があるというような御指摘もございましたので、相手方も表現の自由を損なわないようにする必要があるということから、主務大臣の配慮義務というものを四十条に定めているということでございます。
 なお、第二章の基本原則のメディア等に対する適用問題についても、これも法制化専門委員会で相当御論議いただいたんですが、結論的には、基本原則というのはそもそも各人、万人がみずから努力する義務である、しかも公権力による関与とか罰則も一切ないということで、こういった努力をしていただくということ自体、メディアに不当な報道規制になるというおそれはないということで、基本原則からの適用除外というのはされていないということでございます。

後藤(斎)委員 今の点については、かなり問題があるというふうに思っております。引き続き、これからも同僚議員から細かく質問をさせていただきますので、その点、よろしくどうぞお願いします。
 総務大臣、前回もお尋ねをしておりますが、それ以降、私も幾つかの自治体にも含めて確認をしておりますが、本当に八月五日から住民基本台帳ネットワークが稼働していいかどうかというのは、ほとんど一部の担当者にしか自治体の中でも知られておりません。
 私は、みずほが、この何年かかけてネットワークを組んで三銀行が一緒になった、それだけであれだけの問題を起こした、トラブルを起こした。それで、住民基本台帳ネットワークというのは、三千を超える自治体が、全部そのネットワークが結合しなければ意味がないわけですよね、もともとの趣旨ですと。
 本当にその数字を、きちっとそれぞれの自治体に把握をされて、大臣この間、絶対大丈夫だと、絶対とは言いませんでしたが、大丈夫だとお話をされておりましたが、その後いろいろな形で各自治体を調べていただいて、大丈夫だと本当に今思われておりますでしょうか。

片山国務大臣 せんだっても申し上げましたが、システム構築の進捗状況をその後も私確認しましたが、再度確認します。まだ約二カ月ぐらいありますから確認いたしますが、現在の状況では、指定情報処理機関というのを地方自治情報センターにしておるんですよ。ここにおいては、全国ネットワークやサーバー等の機器の整備が終了して、ソフトウエア開発も、ほぼこれは完了して、今一部修正をやっている、こういうことでございますし、また、地方団体においては、委員御承知のように、都道府県単位でまずネットワークを組むわけですから、そこで、都道府県ネットワークや都道府県や市町村における関係機器の整備も全団体で終了している。それから、それに伴うテストも終了している。
 まあ、みずほの場合、私はよくわかりませんけれども、あれは全国的なネットを三つ一緒にしたというところがなかなか大変だったんじゃないかと思いますけれども、我々の方は完結したネットワークをそれぞれつないでいくわけですからね。都道府県につないでいって、それを指定情報処理機関で全国的にまとめていくということで、同じじゃないと思いますが、大変な作業であることは事実なんで、今後ともさらに状況について点検しながら、八月五日にはスムーズにスタートするように努力いたしたいと思っております。

後藤(斎)委員 今の点で、私の知り得ている範囲では、NTTさんが基本ネットワークは仕組んでいるという話はお聞きしています。ただ、それ以前、いろいろなネットワークはそれぞれの自治体でやった、それはまさに別物で対応している。それに新しいNTTの基本ネットワークをつなげている。これは同じようなことが起こる可能性というのはやはり否定できない。これは本当に徹底的にきちんと検証をして、本当にスムーズに、パンクしてしまったら、本当にそのときには大変な事態になると思いますから、それには絶対ならないような形で私はやっていただきたい。
 確かに当時、私たちも含めて党は反対をしておりました。後でまた同僚議員からその点については細かく質問をさせていただきますが、本論に入りたいと思います。
 私は、行政機関の保有する個人情報保護法案については、ある意味では、従来であれば各省が行政サイドでやっていた部分、それを法律で一定の枠組みを設けて裁量権の歯どめをかけているということでは、一定の評価は私はできるというふうに思っております。
 ただ、私は、後で目的も含めてきちっとお話をしますが、やはり、法案の目的が行政の運営の円滑化みたいなことに主眼を置いて、本来の目的であります個人情報の保護という部分が軽んじられているというのが一点。そして、行政機関の目的外利用を広く認め過ぎているというのが二点。そして、安全確保義務違反に関する罰則規定がない。もろもろ、もっといっぱいあるんですが、私は、抜本的にこの修正を本気でやっていかない限り、やはりこの行政機関に関する方も大変大きな問題を持っているというふうに思っています。
 一条は目的であります。目的というのは、もう言うまでもなく、それぞれの法律の趣旨、一番の基本原則をあらわすものであります。原案では、行政機関における個人情報の利用拡大と、最後に「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」ということで、私は大変抽象的ではないかなというふうに思っています。
 冒頭、官房長官や竹中大臣にもお話をいただいたように、この目的は全体、あくまでも、時代背景としたら高度情報通信社会の発展に伴う行政機関における個人情報の利用が拡大している中で、そういうものをきちっと明示をしながら、なおかつ、個人のプライバシー権の保護という観点をいえば、個人情報の開示ないし訂正、利用停止の請求権利、これはいろいろな地方自治体の条例を見ても、明確に、開示権、訂正権、利用停止権に関する権利というのは、ほとんどの自治体では目的に入れ込んでおります。
 まず目的をきちっとしていくことが、この法案全体の流れが国民の皆さんから見てもわかりやすい形になっていく。そして、個人の権利利益という非常に抽象的な概念が今原案にありますが、私は、今お話しした二点について、まずこの目的自体を修正していかなければ二条以下の部分が生きてこないというふうに考えておりますが、総務大臣、その点についていかがでしょうか。

片山国務大臣 目的は、今委員言われましたように、なるほど、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」とありますけれども、その下に「個人の権利利益を保護することを目的とする。」。後ろに書いてある方がメーンなんですよ。図りつつ、これをやると。
 行政部門の中に個人情報がだんだんはんらんしてくるようになると、やはりその取り扱いについてきちっとルールを定めて、結果としては国民皆さんの権利利益をきちっと保護していくということがこの法律の建前ですからね。法律は、法制局とも協議して、立法技術上の議論もありますからいろいろな書き方がありますが、これは、行政の便宜のためというよりも、国民、それぞれ個人の皆様の権利利益の保護を図るということに私はメーンがあると。
 そこで、今開示や訂正の請求権のお話がありましたが、これはほかのところでぴしっと書いているんですから。十二条と二十七条に書いておりますから、それをまた目的規定にわざわざ入れるというのも、まあこれは書き方の議論ですけれども、法律上は明確にしているわけであります。

後藤(斎)委員 確かに、大臣がおっしゃるように、個人の権利利益の保護というのは目的にあります。しからば、大臣、その個人利益の保護というのは、具体的にどんなことを想定しておられるんですか。

片山国務大臣 この個人の権利利益とは、個人情報の取り扱いの態様いかんによって侵害されるおそれのある個人の人格的、財産的な権利利益であり、プライバシーということがよく世上言われますけれども、そういうものもこの人格的、財産的な権利利益の中には含まれておる、こういうふうに考えております。

後藤(斎)委員 先ほどお話をした、本人が情報開示をしたり、訂正したり、利用停止をする、そういう権利は含まれていないということですか。

片山国務大臣 これはこの権利利益の範囲をどう考えるかということですけれども、私は、含まれている、こういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 何か時間が来たみたいなんですけれども、もう一点。この法律の中には取得の目的の規定が入っていないというふうに思っております。取得について、どんな形でやるのかという明文規定がないのは何ででしょうか。

若松副大臣 委員の、いわゆる行政機関が適法かつ適正な取得を義務づける規定を置くべきではないか、そのような質問だと理解したわけでありますが、行政機関の長が法令を遵守して適法に個人情報の取得に当たるべきことは、当然憲法上の要請であると理解しております。また、行政機関の職員が法令を遵守することは国家公務員法等により規律されておりまして、行政機関法制におきまして適法取得に関する規定を置いていないのは、このように行政機関が不適法な取得をしてはならないという法規範が既に確立していることから、改めて規定しなかったものでございます。

後藤(斎)委員 時間が来ましたので、今の点も含めて、引き続き次回にしたいと思います。よろしくどうぞお願いします。ありがとうございました。

大畠委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。

武正委員 おはようございます。民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。
 まず冒頭、竹中大臣には、先週の質疑の中で、本法案の提出に当たり、住民基本台帳法改正案の附則第一条第二項、これを理由に挙げられ、そしてまたIT化の進展ということを挙げられておりますけれども、情報公開法の制定もこの個人情報保護法提出の大きな理由になっているのではないかと考えますが、御所見を伺います。

竹中国務大臣 情報公開法、平成十一年に制定されたそのものの立法過程において、委員御指摘のように、行政改革委員会の意見書の中で次のように述べられているところがあります。本人開示の問題は基本的には個人情報の保護に関連する制度の中で解決すべき問題である、そういう指摘がございました。

 ただ、個人情報保護法案は、IT化の進展等を背景に、民間部分をも対象にして、個人情報の有用性に配慮しながら、今総務大臣もおっしゃったような、プライバシーを初めとする個人の権利利益を保護するために立案されたものである、この趣旨はあくまでもそういうところにございます。情報公開法と直接これがつながっているということではないというふうに認識をしております。

武正委員 先週の委員会での質疑もございまして、金曜日に総理が出席して改めて政府の姿勢を問うといった形で委員会が組まれているように伺っておりますので、きょうは、行政機関の個人情報保護法を中心に、総務大臣に、そしてまた内閣の方針につきましては官房長官そして松下副大臣にということで御答弁をお願いしたいと思います。
 同じ質問になりますが、この行政機関の個人情報保護法を行政機関の情報公開法、いわゆる情報公開法と比較いたしますと、行政機関の個人情報保護法の十三条の一項、三項、十四条、十五条、十六条、十七条、十八条、十九条、二十条、二十一条、二十三条、二十四条、二十五条、四十三条、これが、情報公開法の四条、五条、六条、七条、八条、九条、十条、十一条、十二条、十三条、十四条、十五条、十九条とほとんど一言一句同じでございます。このことも、私は、情報公開法の制定が本法案提出の理由と見るのでありますが、総務大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 先ほども竹中大臣からお答えがありましたように、情報公開法の制定を提言した行政改革委員会の意見がありますね。その中に、本人開示の問題については早急に専門的な検討を進め、その解決を図る必要がある、関係省庁においては個人の権利利益の保護の観点からそういうことをやれ、こういう意見が言われている。こういうことを受けてつくったということもありますし、今委員御指摘のように、情報公開の方と大変似ておりますよね。むしろ向こうを参考にしながら立案した、こういうことであります。

武正委員 竹中大臣からは、直接は関係はないんだ、総務大臣からは、行政機関の個人情報保護法については参考にしながらつくったということでありますが、情報公開と個人情報保護と密接な連携、関係がありながら、実は、しかし法律の目的が全然違うといったところをこれから指摘をさせていただきたいと思います。
 まず、行政機関の個人情報保護法四十二条で「審査会への諮問」とされておりますが、情報公開・個人情報保護審査会、これは情報公開法制定時は九名、独法の情報公開法が施行されると三名ふえて十二名、そして今回の個人情報保護法施行でプラス三名、十五名となるわけですが、先ほど言ったように、情報公開と個人情報は、大変連携密接なものがありますが、法律の目的が違う。九名に独法で三名ふやしたのはわかるとして、個人情報保護という大変大事な側面なのに独法の公開と同じ三名というのは、個人情報保護を軽視しているのではないかと考えます。そしてまた、そもそもこれは法律の目的が違うわけですから、審査会は分けるべきではないか。さらに、情報公開法でも議論のあった三条委員会にすべきではないかと思いますが、以上、総務大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 数の問題なんですが、新たな制度ということもありまして、どのくらいの審査会の諮問件数になるかということは今は予測困難であります。ただ、都道府県や政令市における状況等を勘案して、情報公開関係の四分の一ぐらいでどうかな。なるべく少数精鋭で、こういうことですが、実際は、十五人の中でやるんですから、状況に応じてはその分担関係を変更することもあり得るし、業務量を見ながら今後考えていけばいいんではなかろうか、こういうふうに私は思っているわけであります。
 それから、例の三条か八条か、こういう議論はありますけれども、諮問機関として第三者的な立場から中立公平な意見を述べる。決定権者はそれぞれ各大臣ということになるんでしょうけれども、諮問機関の答申、それをそのとおり尊重するということでやっておりますから、三条というとちょっと物々しいですよね。だから、そういう意味では、八条で、機能さえしっかり担保できればいいんではなかろうか、こういうことであります。

武正委員 二つに分けるべきであるということはいかがでしょうか。

片山国務大臣 我々は、十五人の中でやった方が効率的ではないかと考えておりますけれども、状況によっては、今後の検討課題に私はなると思います。

武正委員 先ほど、地方自治体のお話をされました。これは行政機関等個人情報保護法制研究会第四回の議論の中で東京都の例を挙げておられまして、東京都では、平成十二年度の新規諮問を見ると、情報公開審査会が二十五件、個人情報保護審査会が七件となっていて、情報公開の諮問件数に比べると個人情報保護の諮問件数は少ない、これを理由に挙げているんですが、これは後ほど指摘をしますが、全国の自治体の個人情報保護条例が個人情報を対象としておりまして、本法のような形で個人情報ファイルを公表する、そうするとどこに自分の個人情報があるかわかるというような仕組みはとっていないといった問題点も地方自治体の条例にあるということを指摘させていただきます。
 先ほど来のお話ですが、行政機関の個人情報保護法と行政機関の情報公開法は目的が明らかに異なるというふうに考えます。もちろん、これは個人情報保護法も同じであります。
 ちなみに、個人情報保護法では、目的のところ、かいつまんで言えば、個人情報の適正な取り扱い、そして基本となる事項を定め、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務など、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する。行政機関の個人情報保護法においても、行政機関における個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定め、行政の適正かつ円滑な運営、これはいろいろ問題がありますが、個人の権利利益を保護する。一方、情報公開法は、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判のもとにある公正で民主的な行政の推進に資する。明らかに目的が違うわけですね。
 ですから、先ほど審査会も二つに分けるべきであるといったことで、検討に値するといったことが総務大臣から御答弁があったというふうに私は理解をいたします。
 さて、不服審査会の性格について、先ほど、物々しいという総務大臣の御答弁がありましたが、八条と三条の違いは、申すまでもなく、三条の方が、例えば各省の大臣に対してやはりきちっと物が言える、八条では、建議というのでしょうか、下から物を申し上げるというような形で、明らかに格が違うといったことが言われておりますので、私はやはり三条委員会がふさわしいというふうに思うのですね。
 これについては、総務庁の行政管理局がまとめておられる行政改革委員会の「情報公開法制の確立に関する意見関係資料」でも、不服審査会の性格については、裁決機関とするとの考え、三条委員会にするとの考え方もあり得るが、しかし、裁決機関とすると、一般に手続が厳格になり、簡易迅速な救済の実現が困難になるおそれがある、そこで諮問機関とすることとした、八条委員会にすることとしたということなんですが、昨年スタートした情報公開法での不服審査会については迅速さに欠けているという指摘がございます。
 不服申し立て件数は千三百四十二件、うち諮問件数は三百八十四件、ですから千件近い件数が棚上げになっている。また、開示決定の期間延長がされたものが四万五千七十一件中七千七百四件、それも三百六十日以上というようなケースもある。これは、各省庁が諮問するまでの期限がないということで、省庁側で抱えてしまっている。
 これも、やはり私は、三条委員会として各省庁に対してきちっと諮問を速やかにするようにというような性格も必要ではないかなと思うのでありますが、重ねて、三条委員会にすべきと考えますが、総務大臣の御所見をお願いいたします。

片山国務大臣 三条委員会は大変独立性が強くなるのですね。それから、手続が今言いましたように厳重になる。そういう意味では機動性に欠けるというような議論が三条委員会についてある。三条と八条については昔から議論があるのです。
 そこで、今委員が言われましたこの処理状況なんですが、昨年の四月に情報公開法を施行いたしましたが、本年の五月二十一日までに、諮問件数四百二十七件のうち、二百五件を答申済み、取り下げが四件あって、結果としてはそれをカウントすると二百九件、約五割ですね、これが処理済み、こういうことでございます。
 スタートしてまだ一年ということもあると思いますし、いろいろな関係人からの状況聴取も手間がかかっているということがあると思いますけれども、余り時間をかけるのは必ずしもよろしくない。こういうことはもう少しスピードアップを図ってもらう、こういう必要があるのではなかろうかと思いますし、今回の審査会の委員さんは両議院の同意を得て任命されるということも大変権威が高いわけでありまして、三条、八条の議論はよく行われるのですけれども、私は、三条よりも八条の方が、トータルとしてはそういう考え方がベターではなかろうか、こう思っております。

武正委員 この情報公開については、開示率八九%、ただし部分開示が三三%ということでございます。部分開示が多いといった問題も指摘をされておりますし、また、文書管理の法制化が必要であるということですね。
 我々も、いろいろ各省庁に資料を要求しますと、もう五年たちましたので破棄処分にしましたというような答えが返ってくるのですが、失われた十年と言われる中で、やはり十年は見たいわけですね。あるいは二十年前から見たいんですが、ないですという答えが出てくる。これについては自民党の若手議員も、新聞で、結局情報公開法で請求しなければ省庁から資料が来ないということも報道にあります。
 こういった問題点を指摘して、今の三条委員会の件、これは官房長官にお伺いしたいのですが、この通常国会では、人権擁護法案で、法務省の外局として人権委員会を国家行政組織法三条委員会として設ける。これは、その意味では一つ前進したのかなというふうに思うのですが、ただ、民主党とすれば、法務大臣、法務省のもとではやはり問題だ、内閣府の外局とすべきということを対案として提示をしております。
 しかしながら、聞くところによりますと、法務省の外局である司法試験管理委員会ですか、これを三条委員会から八条委員会におろす、格下げにする。こういったことで、一個三条委員会にしたら一個は八条委員会に戻しますよ、こんな形にうかがえるわけなんです。
 私は三条委員会はもっとどんどんつくっていいというふうに思うのですが、内閣として何らかの方針のもと臨んでおられるのか、官房長官、御所見をお願いします。

福田国務大臣 まず、人権擁護法でございますけれども、ここに新たに整備されます人権救済制度におきまして、公権力による人権侵害や報道機関による人権侵害を特別の救済手続の対象としております。これを所掌する人権委員会については、高度の独立性を確保する必要があることから、いわゆる三条委員会として設置する必要があると考えております。
 また一方、司法試験管理委員会につきましては、司法制度改革審議会意見でもそのあり方の見直しが提言されておりますが、中央省庁等改革基本法第二条に規定する基本理念、また同種の国家試験の多くが国家行政組織法第八条に規定する機関で実施されているということなどを総合的に勘案しますと、この委員会はいわゆる八条機関として改組することが適当、このように考えている結果でございます。

武正委員 いわゆる行政改革の視点からということはございますか。

福田国務大臣 行政改革におきましても、三条委員会は、これについてはふやすべきでないという考え方が示されていると思います。

武正委員 私は、さきの質問で続けて聞いたのですけれども、行政改革の視点からというふうに伺っております。
 ただ、やはり国民の知る権利、これは附帯決議になりました、情報公開法のとき。今の情報公開の流れの中において、また、行政のさじかげん、裁量をできるだけ減らしていくという意味では、独立行政委員会は、これは行政改革会議が最終報告で言っております。戦後二十幾つあったのが今七つですね。行政改革会議は、行政委員会を公正中立性や専門技術性などの必要から評価し、現行の諸委員会を存置する、残すという方向を打ち出すとともに、政策の企画立案機能と実施機能の分離という理念のもと、行政委員会を実施機能の分離、充実の観点から活用、新設するという展望を示しているのですが、平成四年の証券取引等委員会、平成七年の地方分権推進委員会、平成十一年の原子力安全委員会、いずれも三条委員会を求めたわけですが、見送られ、八条委員会になりました。
 私は、増設を求めていく、増設すべきであろうというふうに考えますが、再度官房長官の御所見を伺います。

福田国務大臣 三条委員会につきましては、独立行政機関であるこの委員会が、大臣で構成される内閣が行政責任を負うという憲法上の考え方から、我が国の行政制度にはなじまない、こういう批判もございまして、公正中立的な立場において慎重な判断を必要とする受動的な事務を主とするものを除いて昭和二十七年以来大幅に整理されまして、現在は七機関のみ、こういうことになっております。

武正委員 当時、吉田茂、吉田内閣のときでありますが、行政委員会制度の再検討ということで、二十幾つあったものを減らしていこうということが決められたのは承知をしております。しかし、私は、先ほど来触れておりますように、行政委員会、これはやはり日本国憲法のもと、国民主権といったことを実現するためにつくられた制度ですよね。私は、やはり行政の準立法、準司法的なものは独立をさせていくべきだろうというふうに考えております。
 さて、次に移らせていただきますが、情報公開審査会は、事務局の定員、現在九名、独法が施行されますと十一名。これでいくと、先ほどの委員が三名、三名ふえたんで、本法案施行後は二人ふえて十三名になってしまうのか。事務局がたった十三名。そしてまた、その他各府省からの併任職員が十四名という今の現状ですが、各国の監督制度の事務局は、イギリスの情報保護委員会が百名、フランスの情報処理及び自由に関する国家委員会が六十名、ドイツの連邦データ保護委員会が六十二名からしても余りにも少ないと考えますが、松下副大臣、御答弁をお願いします。

松下副大臣 確かに、委員が今おっしゃったような状況になっております。
 調べてみたんですけれども、各国における個人情報保護の監督機関、これはいろいろあるようでございます。例えば、イギリスの例でいきますと、これは国だけではなくて地方公共団体でありますとか民間団体をも対象としているということ、それから、個人情報保護の制度上の問題そのものにもいろいろ権限を有していくという幅広い大きな組織であるというふうなことがわかっておりまして、職員数だけで単純に比較はできないかなというふうにも思っております。
 我が方の情報公開審査会、これは内閣府に今あるわけですけれども、情報公開に関する諮問事件を調査審議するということになっております。開示請求者から開示請求が役所に出てくる、役所がそれを開示する、あるいは開示しないと決定して不開示を通知する。こうなったときに、開示請求者が、それじゃ不満だということで不服申し立てをする、それが行政機関を通してこの情報公開審査会に来るということで、この不服申し立てに対する審査をしていくということに限られているということもありまして、仕事の中身は限定されているのかなというふうに思っております。
 そういうことからいきますと、現在、おっしゃったように合計二十四人体制で進めておりまして、今仕事はこれできちっとこなしているなというふうには思っております。
 今回の法案によって、情報公開審査会が情報公開・個人情報保護審査会へ今おっしゃいましたように改組されてくる、そして個人の情報保護関係の諮問事件を新たに処理していくことというふうになってくるわけですけれども、これはまた状況を見ながらさらに必要な整備充実は行っていかないかぬかなとも思っておるところでございます。

武正委員 先ほど総務大臣も状況を見ながら、今も松下副大臣も状況を見ながらと言う。これだけの大事な重要法案をスタートしてから考えようというような政府の姿勢は、到底容認できないのでございます。
 そして、次に移らせていただきますが、安全確保、六条、従事者の義務、七条については、国家公務員法の守秘義務だけでは不十分であり、アウトソーシングする法人、従事者の守秘義務を違反した場合の義務違反に対する罰則がない。少なくとも、住民基本台帳法六章にあるように、従事した職員及びアウトソーシング法人、従事者に対する罰則規定を新設すべきと考える。この国家公務員法の守秘義務の罰則は一年以下の懲役、三万円以下の罰金。住民基本台帳法の守秘義務違反の罰則では二年以下の懲役、百万円以下の罰金に比べても軽過ぎる。日弁連さんは、重大かつ深刻な被害が生じ得ることに対する罰則であることが明らかになるような法定刑、三年ないし五年とすべきというような提言も出しておりますが、この点について、総務大臣、御所見をお願いいたします。

片山国務大臣 今回の行政機関法制は、個人の秘密に限らず、広く個人情報一般を対象としております。したがいまして、個人情報の漏えいによる実質的な支障の有無を問わずに一律に適用される罰則規定を設けることは適当でない、こういうふうに考えております。また、個人情報の漏えいのみを特に重く処罰するとしたら、全般の似たものとのバランスの問題などがある、こういうことでございまして、これは法務省その他ともよく協議しながら慎重に検討を重ねる必要があるのではないかと考えております。

武正委員 「公務員と秘密保持義務」ということで、石村善治さんが、「とくに行政の「公開原則」のもとでは、「公務員の秘密保持義務」にいう「秘密」の内容・態様について再検討・再構成されるべきことが緊急の課題」というふうにされておりますし、また、これは沖縄密約事件第一審判決、東京地裁でありますが、「わが国のような民主主義国家においては、公務は原則として国民による不断の監視と公共的討論の場での批判又は支持とを受けつつ行われるのが建前である」ということでありますので、情報公開、公開原則、その中での公務員の秘密保持義務、これは緊急に見直す必要があるということで、私はこの罰則はやはり重くしていかなければならないというふうに考えます。
 その理由として、年次別刑法犯の検挙人数が、平成十二年、十三年と前年比二〇%の高い伸びを見せております。ちなみに、平成九年千二百九十三件ですが、平成十三年にもう千六百二十一件ということで、特に十二年、十三年と高い伸びを見せておりますが、このように公務員の犯罪、刑法犯がふえている。こういったことも多くの国民はまた報道で知るところであります。
 その点でいっても、この公務員の情報漏えいといったこと、しかも、これは情報をどういう形で漏らしたのかというその見きわめが大変あいまいでありますから、そういった中で、果たしてこの罰則で十分なのかどうか、再度、総務大臣の御所見、御答弁をお願いいたします。

片山国務大臣 委員の御意見、御心配は、それなりに私も理解できないことはないものですから、まあこれも同じ答弁でおしかりを受けるかもしれませんが、状況を見ながら、幅広く検討させていただく対象にいたしたいと思っております。

武正委員 本法案では絶対罰則を重くしていくべきだなというふうに私は考えます。
 さて、最後に、自治体の条例なんですけれども、先ほどあるいは先週、八割の自治体でもうつくられていますよと総務大臣の御答弁があったんですが、ただ、冒頭言っておりますように、個人情報そのものを保護し、そして開示対象としておりまして、個人情報保護と情報公開が一緒くたになった形になっているんですね。これは、個人情報が一定の規則で蓄積されるに至った個人情報ファイルという形で地方自治体の条例も明文化すべきではないのだろうか。
 それをされなかった理由というのが、我が国最初の条例である春日市の条例に範をとったからだ、あるいは、我が国で初めて自己情報開示請求権を規定したと考えられる大阪府公文書等公開条例が、情報公開制度の中でこの自己情報開示請求権を規定したからだというふうに言われておりますが、この自己情報を個人情報ファイルという形で条例に規定すべきだと考えますが、大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 地方公共団体における個人情報保護条例は、それぞれの団体が自主的な判断によって制定される、こういうものでございますけれども、例えば、その条例を見ますと、個人情報取扱事務の事前登録だとか、個人情報取扱事務登録簿の作成、公表、閲覧などに関する規定を設けているところもありまして、地方公共団体の判断によってそれなりに適切な個人情報の保護措置を講じているところがある、こういうふうに我々は認識いたしております。
 総務省では、地方公共団体に対しまして、我々こういう法律をつくるんですから、こういう法律を一つの参考にして条例の中身についての精査を行ってもらって、必要があれば改正してもらう、こういう指導もいたしたいと考えております。

武正委員 参考になるのは、西宮市の個人情報保護条例のように明文化していくべきだろうと考えます。そのためにも、やはり、審査会が一緒くたになっていると、情報公開と個人情報保護が一緒くたでいいのかというような誤解を招きますので、私は、これはやはり分けるべきということを再度申し上げて、あと一分でありますので、日弁連が二〇〇一年二月二日に意見書で、地方公共団体の措置ということで、条例制定等の施策ということを基本法制にも盛り込むべきではないかということを言っております。ですから、地方自治体に対して、努力義務という基本法制でありますが、私は、この条例制定等の施策というような形も盛り込むべきではないかということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。


2002/05/22-1

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