2002/05/17

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細野議員、無責任な法案修正の動きを批判(民主党ニュース)

 17日、民主党の細野豪志議員が衆議院内閣委員会で質問に立ち、個人情報保護法案の危険性について厳しく指摘した。

 冒頭、細野議員は「個人情報保護法案という国家の命運を握りかねない法案を、経済財政を担当する竹中経済財政相がIT担当でもあるからというだけの理由で所轄すると聞いて驚いた。むしろ、内閣を総括する福田官房長官が担当すべき法案である」と述べ、同法案への政府の取り組み姿勢を批判した。

 また、官の関与の問題について細野議員は「高度情報化社会において個人情報を守るためには、それを保護する法律が必要であると思うが、本法案には非常に大きなものが欠けている。それは個人情報の価値に対する認識であるとし、その認識を竹中大臣は全くもっていないのではないか」と質した。これに対し、竹中経済財政相は「個人情報の有用性については十分理解している」と述べたが、細野議員は「有用性は情報を使う側の立場だ。個人情報の本来の意味を理解しておらず、この法案を粗末に扱いすぎだ」と指弾した。

 そして、粗末に扱いすぎている理由の主たるものは、主務大臣が個人情報取扱業者に対して、「報告の聴取」「助言」「勧告・命令」と何でもできるようになっていることだとし、そうした状況下で薬害エイズ事件、BSE問題などが起こった点を鑑みても「官が個人情報を集中的に操るシステムが望ましいとは考えられない」と語気を強めた。

 さらに本法案の問題として、総理が指定すれば国会公安委員会が関与できる仕組みになっていること、個人情報の検閲制度が認められる仕組みになっていることを指摘した。また、城山三郎氏、櫻井よしこ氏など、保守派の自由主義者から強い懸念が表明されていることを例に挙げると、福田官房長官は「官の情報への関与に対する深刻な懸念については、審議を深めて理解してもらうように努めていく」などと答えることしかできなかった。

 メディア規制の問題をめぐっては、自民党内でメディア規制についての議論をリードしてきた熊代内閣副大臣、報道と人権などのあり方に関する検討会の谷川座長、内閣委員会の理事会で独自の主張を行って実質的に自民党の理事を解任された坂上議員を参考人招致して議論することを強く要求した。これに対し福田官房長官は「熊代副大臣については本法案の担当外であるので委員会には出席できない」と極めて後ろ向きな答弁に終始し、あいまいさだけが残るものとなった。

 最後に細野議員は、すでに与党サイドから法案修正に前向きな見解が示されていること、読売新聞社の修正案が発表されたことを受け、政府の中から修正に対する言及があったことなどを指摘。小泉首相が竹中経済財政相に修正案の検討を指示したと伝えられている問題についても事実関係を質した。しかし竹中経済財政相は「勉強するようにということであり、修正案を検討するというものではない。だから修正はしない」としか答えられなかった。

 細野議員は「政府が修正案を検討している状態の中、われわれは何を議論していいか分からない。本法案の責任者である竹中経済財政相が修正についてきちんと説明できないようであれば、小泉首相に状況を説明してもらう必要がある。それまでは竹中経済財政相を責任者とみなすことはできない」と厳しい口調で述べた。


平成十四年五月十七日(金曜日)

細野委員 竹中大臣、福田官房長官、大変御苦労さまです。片山大臣も御苦労さまでございます。
 きょう、個人情報保護法案の最初の質疑になるわけですけれども、三大臣、皆さん本当にお忙しく、出たり入ったりという若干落ちつかない委員会運営になっておりますが、実は、この委員会を始めるに当たりまして大変な議論がございました。この法案の基本法の部分の担当は竹中大臣、そして行政の部分は片山大臣がやられる。ただ、この個人情報保護法の持つ重要性を考えると、ぜひ福田官房長官にも御出席をいただきたいということで、この三大臣の方が、皆さんがそろうのを待ちに待った委員会の開催であるということを、ぜひ三人の皆さんに御理解をいただきたいというふうに思います。
 加えまして、初めに、私の方からこれは要望なんですけれども、きょうは、この三大臣の方に苦労して来ていただいたという経緯がございますので、私の質問は大臣に限らせていただきます。副大臣の方に来ていただいているんですが、大変恐縮なんですが、御質問はいたしませんので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。要求していないのに必ず副大臣が来られるというのは、事情はよくわかるんですが、きょうはそういう出発点があったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 まず、福田官房長官に、改めて理事会の経緯というのを説明させていただきたいというふうに思うんです。なぜ福田官房長官に来ていただきたいかという点、これは理事会の中でさんざん議論いたしましたが、一言申し上げたいというふうに思います。
 まず、個人情報保護法は、これは必ずしもITに限った話ではございません。もちろん、データベース化されてそこで大量の情報が蓄積をされれば、それはパソコンの中に入るなりネットワークでやりとりをされるということでITとかかわりがあるわけですが、実際、紙ベースの情報も含めて個人情報というのは極めて価値が高いんだ、そういう認識においてはこれは必ずしもITの部分に限るわけではない。この点で、福田官房長官に一点、出てきていただきたいという要望をいたしました。
 二点目が、実はこれはメディア規制にかかわる部分が大変いろいろ議論を呼んでまいりました。今、福田官房長官は記者会見にも出てこられたわけですけれども、まさに政府の広報官としてメディアを担当されているのが福田官房長官でいらっしゃるわけですね。ここの部分で責任ある答弁をいただくのは、やはり御出席いただかなければいけないのではないかという議論がございました。
 三点目が、逢沢委員の方からも御質問がございましたけれども、主務大臣の関与というのがこの法案では大きく問題になってまいります。すなわち、それぞれの分野においてそれぞれの大臣がどういう御判断をするのかというのが、民間でも問題になるし、行政の方でもこれは問題になるわけですね。そういうものを総括的に、やはり共通の基準を持っていくためには、当然、官房長官のある程度の御判断が必要である。この三点でございます。
 竹中大臣がいらっしゃるので、若干ぶしつけな話になるかもしれませんけれども、初め、正直言いまして、私は、この個人情報保護法案が竹中大臣の御担当であるというのを聞いてびっくりいたしました。といいますのは、そもそも竹中大臣がITを御担当されているというのを、私はこの法案が出てくるまで知らなかったものですから、経済財政の専門家で、そこでまさに専門的な力を発揮されていた、それがメーンの方がITも担当されていた、しかも、それはそれでやっていただいたのなら結構なんですが、個人情報保護法という、メディア規制というのがこれだけ大きくなっている問題がなぜ竹中大臣の担当なんだろうかと率直に疑問を感じたんですね。
 これは、竹中大臣はお答えしにくいと思うので聞きませんが、福田官房長官、今の経緯を踏まえて、ぜひこの内閣委員会に、理事会の中ではこういうことになっているんです。要求があれば官房長官は必ず出席する、この与野党一致の理事会の声にこたえていただきたい、このことを最初に要望させていただいて、御答弁をいただきたいと思います。その意気込みを一言お願いします。
福田国務大臣 おっしゃること、よくわかります。よくわかりますけれども、今回は、竹中大臣に担当していただく。竹中大臣は、IT戦略を担当していらっしゃるということもございますので、IT戦略を推進する上でこの今回の法案というのは極めて大事なものである、この法案なくして日本のIT戦略というものは進まないだろう、こういうように考えまして、今の事態は極めて深刻な事態であるということもあわせ考えてそのような形にさせていただいておるわけでありますけれども、お話もよくわかりますので、私も時間がありますれば、都合がつけば、極力出席をさせて答弁をさせていただきたいと思います。
細野委員 もう一度改めてお伺いします。
 今からこの法案の担当をかえろというようなことはさすがに申し上げません。ただ、少なくとも、内閣委員会から要望があれば時間をつくって福田官房長官に出席いただけるとお約束いただけますね。
福田国務大臣 必要あれば参上させていただきます。
細野委員 例えば、日本国憲法にはこう書いてあるのですね。六十三条、国務大臣は、「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」これは私どもだけの要望ではなくて、理事会として、総意として要望した場合は大臣は出席しなければならないという義務が憲法上書かれているのです。
 改めて伺いますが、要求があれば出席していただけますか。しつこいようですが、これは非常に重要な点ですので、御答弁いただきたいと思います。
福田国務大臣 これはまさに委員会で秩序を決めていただいておるわけでございますので、委員会でお決めくださったことには従わなければいけない、これは義務であると考えております。
細野委員 ようやく明快な御答弁をいただきましてありがとうございます。要求があれば出席をするということを官房長官に確約したことを、ぜひこの委員会の皆様にも認識をいただきたいというふうに思います。
 続きまして、後藤議員の質問、最後少ししり切れトンボになってしまったところがありますので、そこをしっかり確認させていただきたいと思うのです。
 小渕総理が在任中に、住基ネットのスタートは個人情報の保護法案の制定、これが前提条件であるという答弁をされました。先ほどの官房長官の御答弁、個人情報保護法案が制定されなくても住基ネットがスタートすることがあり得るのかどうか、ここは明確に御答弁ください。
福田国務大臣 今回、この法案を提出させていただきましたけれども、タイミングとしては、まさに時間の限りあると思っております。そういう意味で、ぜひこの国会で成立をするように御理解をいただきたいと思います。
細野委員 もちろん、政府として法案の成立に努力するのは、これは当たり前の話なんです。仮の話をしています。仮にこの法案が通らなかった場合、これは十分あり得る話です、これだけ国民的な議論を巻き起こしているわけですから。住基ネットと個人情報保護法案のこの制定はセットなのかどうかというところを明快に御答弁ください。
福田国務大臣 何度も同じことを繰り返しますけれども、ぜひこの国会で成立をさせていただきたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。
細野委員 この点は国民的な関心事なんですよ。我々も個人情報保護法は必要だと思っているのです。ただ、この政府の出してきている案は極めて問題が多い。この法案には賛成できないという立場です。
 さらに言うと、後藤議員の質問にもありましたとおり、住基ネットの準備が各地方自治体でできてないという現実も、これはもう既に明らかになっているのです。この延長を求めています。私は、整合性のある議論を野党としてはしているつもりでいるんです。政府としてここはしっかり御答弁いただきたい。
 委員長、非常に重要な点ですので、改めて答弁いただきたいと思います。仮にこの法案が通らなかった場合に、住基ネットはそれだけで単独でスタートするのかしないのか、御答弁ください。
福田国務大臣 この改正住民基本台帳法、これはもう三年以内ということが決まっておりますし、規定どおり本年八月にはこのネットワークシステムを実施する必要があるものである、こういうふうに考えておりますので、そういうこともあわせ、この国会でぜひ成立するようにお図りをいただきたいと思っております。
細野委員 今の大臣の御答弁というのは、住民基本台帳法の方の改正はもう既に成立をしているのでこの法案とは別ですよ、すなわち、住基ネットは八月必ずスタートしますよということでよろしいわけですね。
片山国務大臣 今、委員、地方の準備が進んでいないということを言われましたけれども、後藤委員にもお答えしましたように、もう十分進んでいるんです。もうスタンバイしているんです。しかも、条例につきましても、条例は必ずしも必要じゃないんですよ。六割の地方団体が条例をつくり、さらにプラス二割は規則やその他でいろいろなことを決めているのですね。必ずしもこれは必要じゃないんですよ。ネットワークや何かについては全部終わっているので、これは法律が決めているとおり、八月五日から施行させていただく、こういうことでございます。
細野委員 私、官房長官に聞きましたので、先ほどの質問に対して答えてください。
福田国務大臣 今まさに総務大臣がお答えになったのと同じことでございます。
細野委員 今の二人の大臣の答弁は、私、大変問題だと思いますよ。住民基本台帳法の制定時に、我々は、この法案は問題が多いということで反対をいたしました。それで、住民基本台帳法は一応改正はされたのですけれども、そのとき与党で合意をされるときに、また国民に対して説明されるときに、個人情報保護法の制定が条件だとおっしゃった。今の片山大臣と福田官房長官の御発言は、その発言をほごにするという意味です。仮に、これは分けて考えることになれば、当然それが前提条件にならないわけですよ。これは、私、国会答弁で、これからまたこれを機会に住民基本台帳法の問題についてやっていきますが、非常に重い答弁であるし、問題のあるテーマであるということを、冒頭ですけれども、申し上げておきたいというふうに思います。この問題はこれ以上はやりません。
 早速、個人情報保護法の問題、個人情報というものについて入っていきたいというふうに思います。
 きょう、朝からの答弁を聞いておりまして、特に竹中大臣の御答弁を聞いていまして、こう私は感じました。高度情報化社会ができて、そして個人情報があちこちで流れるようになった、その個人情報を守るためには個人情報保護法が必要なんだという御認識がたびたび示されました。それは確かに一つのお考え、私も賛同いたしますが、この法案を見ていまして、私、一つ欠けている部分があると思うのです。
 というのは、個人情報そのものの価値です。個人情報といってもいろいろあります。昔であれば、出生地であるとか生年月日であるとか、例えば学歴であるとか職歴であるとか、大体履歴書に書くぐらいのことが個人情報であったかもしれない。しかし、今は個人情報といえば、例えば所得であるとか買い物歴であるとか、最近注目されていますのは、通話歴であるとか、あとインターネットでどうやってアクセスをしたか、どこにアクセスをしたか、これなんかも個人の嗜好や価値観をはかる上で極めて重要な個人情報なんですね。
 さらには、今究極の個人情報と言われているのは遺伝子情報ですよ。この個人情報自体が本当に今重要性を帯びている。これがどこに帰属するかということが、ある部分、個人の命運も握るし国家の命運も握るんだということに対する御認識が竹中大臣にはおありでないのではないかというふうに私は感じるのですが、この問題、竹中大臣、きちっと御認識いただいているかどうか、御答弁いただきたいと思います。
竹中国務大臣 まさに、デジタルな時代における個人情報の有用性の問題というのは、この立法の大変重要な背景であるというふうに認識しております。であるからこそ、この法律の第一条に、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利を保護するんだということを明記しているというふうに私は認識をしております。
 重要性、有用性、どういう観点から議論するかということにもよりますが、個人情報が大変有用なものになっている、であるからこそ、それを使う、使いたい、使おうとする非常に大きな社会的な力が今もう既に動き出しているのだというふうに認識をしております。そうした中で個人の権利を守るということの必要性が生じている。これが九〇年代において生じてきた世界的な認識であるかというふうに私は思っております。その意味で、今委員御指摘のような個人情報の有用性というのは、私自身、十分に認識しているつもりでございますし、そういった趣旨が法案の第一条にも反映されているというふうに考えております。
細野委員 有用性というのは、利用する側からの観点なんですね。価値というのは、個人に帰属する個人情報自体の重要性。個人情報というのは、これは全部並べると人格すべてなんですよ。これを握られれば、例えば遺伝情報なり病歴なりそういうのを握られれば、個人は全くもう発言できないわけですよ。例えば竹中大臣、竹中大臣の遺伝情報なり病歴なりをだれかが情報を持っていて、場合によってはそれを使って、竹中大臣は実は、ちょっと物騒な話ですけれども、先が長くないんですよというような情報が流れたら、大臣としても政治家としても生命が終わるわけじゃないですか。有用性の話とは全く違うのですよ。そういう個人情報の価値について、私、この法律は余りに粗末に扱い過ぎだと思うのです。
 先ほど逢沢委員から、半導体が産業の米だという話がありました。大変失礼ながら、これは五年ぐらい前の議論だと思うのです。今は、産業の米は個人情報なんです。個人が生きていく上でも重要、また、今各業界が血眼になって個人情報をどうやって集めようか考えているのですよ。その中で出てきている法律だということを、余りにこの法律は粗末に扱い過ぎています。
 その一番端的な例が主務大臣の関与なんですよ。この法律を見まして、私は驚きました。三十七条から、主務大臣に対して報告をしなければならない、助言もできる、勧告も命令もできる。主務大臣がこれだけ大きな権限を持って、ただでさえ業法で抑えつけているのに、その業界に流れている個人情報をこれだけ強い権限を持って左右できるような法律、私は、この法律が個人情報の価値というものを全くわかっていない法律だということを一番端的にあらわしているというふうに思っております。
 この問題に関しては、三大臣それぞれに御答弁いただきたいと思いますので、まず竹中大臣、お願いします。
竹中国務大臣 先ほど私が申し上げました個人情報の重要性につきましては、先ほど申し上げたとおり、第一条さらには第三条にそういった点が明記されているというふうに私は認識をしております。
 それで、主務大臣の考え方でございますけれども、第五章の義務規定の順守、これは第一次的には個人情報取扱事業者の自主的な措置によって図られるものであるということであります。主務大臣の関与は、したがって、個人情報の取り扱いに関して当事者間で争いが生じた場合などにおける事後的な関与に限られているという点は、大変重要なポイントであろうかというふうに思っております。関与のあり方につきましても、義務規定の施行に必要な限度において、緩やかな、報告の徴収でありますとか助言を基本としているものであります。
 また、なお勧告は、個人情報保護取扱事業者が第五章の義務規定に違反した場合において具体的な個人の権利利益の侵害のおそれがあり、その保護のために必要があるときに限られていると、非常に幾つかの限定をつけております。
 法律上の強制力がある命令という点もございますが、これについては、事業者が正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫しているとき、または個人情報の漏えい等が既に生じている場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため、緊急に措置をとる必要があるときに限られている。その意味では、繰り返し申し上げますが、そうした関与は極めて限定的なものであるというふうな配慮、努力をしております。
細野委員 竹中大臣の答弁は物すごい性善説に立っているんですね。それぞれの主務大臣が抑制的で、本当に必要なときだけちょっと助言する。
 主務大臣というからには役所がかかわるわけですよ。今の役所の情報管理、そんなふうになっていますか。厚生労働省の薬害エイズ、そして農水省のBSEの問題、すべて情報が非常にいいかげんに扱われてきて、それがこれだけ社会的な大きな問題になったわけです。この部分に対して、官が今これだけ問われているときに、主務大臣が抑制的にかかわりますみたいな、この法律を読んでそういうふうに解釈する人はいないんですよ。
 この部分に対する役所全体としての取り組み、そして今この法律を出してくる意味、それについて、福田官房長官、どうですか。本当に個人情報の有用性、有用性というのは政府の言い方ですけれども、そして我々の観点からすると個人情報の価値に対して、主務大臣をこれだけ関与させることがあり得べき情報化社会の姿だというふうにお考えですか。
福田国務大臣 主務大臣による関与、これは法の適正な運用に必要な最小限度のものとするということで、権限の恣意的な運用を認めるということにはなっておりません。また、法案が成立して施行するという段階では、厳正な運用を図っていくことは当然のことでございます。そのようなことで、御懸念のことはないものと私は考えております。
細野委員 先日の本会議での小泉総理の答弁はこうなっているんです、この部分、主務大臣の関与について、既に内閣を構成する各大臣が分担している各事業者の活動にかかわる事務と一体的に遂行することが合理的かつ実効的であります。ここには、個人情報の価値を主務大臣に握られることに対する懸念に全く答えようとしてないんですよね。合理性と実効性のためにやらせるんです。さらに行革の観点から、第三者には情報を渡せないんです。そんな指揮官はつくれないんです。こんな答弁を聞いていて、私はちょっと信じがたかったんです。
 この点は、これから委員会の質疑を通じてさらに深掘りしていきますが、ぜひ竹中大臣、特に深刻に受けとめて、何を各省庁がやっていくのか。場合によっては各省庁の大臣に来ていただいて、あなたの省庁ではどういうふうにやるんですかということを聞かないと、安心してこんな法律通せないですよ。そのことも含めて、これは委員長に御要望ですけれども、各主務大臣を要求した際には誠実に対応していただきたいというふうに思います。
大畠委員長 今のお申し出については、理事会で協議いたします。
細野委員 片山大臣に具体的な事例を挙げてちょっとお伺いしたいと思います。
 片山大臣、桶川事件というストーカー事件、覚えていらっしゃいますでしょうか。九九年に起こった事件でありまして、ある女性がストーカーに遭って大変な恐怖心を抱いた。電話で脅迫され、家にまで押しかけられた。その状況を事前に警察に対して、私はこういう状況にあるんですというのを知らせていたんです。しかし警察は、これは事件性がないということで取り合わずに、最終的にその女性は亡くなりました。
 思い出しましたか。そこまでは結構です。ここで聞いてもしようがないんです。
 この事件で、結局この女性は亡くなりまして、女性の遺族が今県警に対して国家賠償請求を起こしているんです。しかし、今県警が何をやっているか。事件が起こった直後には、県警は捜査ミスを認めているんですね。実際に、自分たちの捜査の不手際が殺人を起こした可能性があるということを正式に記者会見して認めているにもかかわらず、国家賠償請求をしてきた遺族に対して、それまでに集めた遺族の遺書と手帳と電話の記録など、これを、警察は悪くないんだ、加害者が余りストーカー的な行動をしていない、普通の人間であった、警察には関知できなかったという部分だけ前面に出して、証拠として挙げてきているんです。
 これは法律的にどうかという議論はいろいろあると思いますが、私は、一度警察がこういう情報について捜査上で得たものを、国家賠償請求の中で自分たちを守るのにそのまま利用している、これは本当にけしからぬことだと思うんですね。
 例えば、じゃ、今回の行政機関の個人情報保護法で、こういうものって取り締まれるんですか。こういうものが取り締まれないようじゃ、私はこの法律の意味はないというふうに考えますが、片山総務大臣の御見解を伺います。
片山国務大臣 私どもの方で出している法律は、これは目的外に利用するということは禁じているんです。
 だから、今、桶川事件ですか、具体的な内容を必ずしも詳しく承知しておりませんから、そのケースがどうこうということは言えませんけれども、一般論としては、今私が言いましたように、目的外利用は禁じておりますし、それに係る個人の情報等を漏えいすることはまたこれも禁じておるわけでありまして、そのためにいろいろな手だてを一応とっております。
細野委員 じゃ、もうちょっと具体的に言いますね。
 刑事上で得た証拠を、訴えられた場合に国家賠償請求で利用することができるのか。これは極めて具体的な話ですね。言うならば、確かに大臣おっしゃるとおり、行政機関の個人情報は目的外使用は認められていません。しかし、法律にこう書いてある。当該保有個人情報を利用することについて相当な理由があるときは利用できる。こんなのざる法ですよ。相当な理由というのが何なのか。この場合に、果たしてこれは相当な理由となるのかどうか。これは極めて私は重要な問題だと思いますよ。お答えください。
片山国務大臣 相当な理由というのは、これは一次的には当該行政機関が判断せざるを得ないんですが、それについてはいろいろ争うことができますから、そのためのいろいろな手だてをとっておりますし、今の刑事訴訟法との関係では、法律に書いてなければそれに使えない、こういうことであります。法律上そういうことができると書いてなければ、法律上の根拠がなければできない、こういうことであります。
細野委員 大臣、訴訟になればそこでまた法律で解釈もされるんですというんじゃ話にならないんですよ。
 じゃ、ここの相当の理由というのは、法律の根拠があるときだけということなんですか。行政上の必要性が生じてその場限りで対応することは絶対ないと言い切れますか。
片山国務大臣 今の答弁は、刑事訴訟法の話とは別に前半は申し上げたので、相当な理由等の判断は、今言いましたように一次的には行政機関がせざるを得ませんけれども、しかし、それについて不服があれば申し立てができますし、あるいは訴訟も起こせる。国民といいますか、その方がそういうことができるし、また、個人の情報の差しとめ請求等も一定の場合にできますから、そういうふうな措置を講じておるということを申し上げたわけであります。訴訟の方は根拠が要るということを申し上げたのです。
細野委員 いや、ちゃんと聞いてくださいよ。相当の理由というのは法律の根拠がなければだめなのか、法律の根拠がなくても利用できるのかということを聞いているんです。
片山国務大臣 相当の理由というのは、法律上の根拠がなくても相当の理由があると判断すればできる、こういうことであります。法律の根拠がある必要はない。
細野委員 いや、もう何でもできるという話じゃないですか。基準を示してくださいよ。今のちょっと納得できませんよ。相当な理由というのはどういうケースを法律の担当大臣として総務大臣お考えなのか、お答えください。
片山国務大臣 相当な理由は、何度も同じことを言いますが、一次的には行政機関が行うこととなりますが、事案ごとに、個人情報の性質、利用目的に即した具体的かつ明確な理由であるとともに、客観的であることを求めており、恣意的にできるということは許していない。しかし、それは、何度も言いますけれども、最終的な担保は、場合によっては不服申し立てや訴訟になる、こういうことであります。
細野委員 いや、こんないいかげんな法律通して、最後は裁判で争ってください、国民の権利は裁判官に守ってもらいなさい、そういう答弁ですよ、今のは。
 ちゃんと改めて、相当の理由は何なのか。行政の必要性ですかなんか聞いてもすっと抜けちゃいましたけれども、そんな理由じゃなくて、どういう根拠に基づいて、あらかじめ予見可能な形で示すのか、これをきちっと答弁してもらわないと話になりませんよ。
片山国務大臣 一般的なことを申し上げたのです。行政が得る情報というのはいろいろありますよ。いろいろなものがある。それを、これはこうだ、これはこうだというのは、その都度判断するよりしようがないので、私が言ったのは、今、一般的な考え方、原則を申し上げたので、行政機関は恣意的な判断を当然するものだという前提でお話をされたら私は困ると思う。今言ったものは、一般的な原則の上で、個人が困る場合には差しとめ請求ができるんですし、あるいは不服申し立てができるんですから、そういうことを申し上げているんですよ。
 相当な理由、特別の理由を全部書けと。書けるわけはありませんよ、法律で。それは一般的なことを書く。相当な理由、特別な理由というのはほかの法律でもいっぱいあるわけであります。
細野委員 わかりました。総務大臣はお答えにならない。
 じゃ、もう、それぞれ大臣に来てもらいましょう。それぞれの省庁で主務大臣が何を判断基準にやられるのか。そうじゃないとこんな法律通せないですよ。個人情報保護法じゃなくて、個人情報を好きに流用できるという法律になっちゃっているじゃないですか。――いや、お答えは結構です。これ以上お答えいただいても総務大臣にきちっとお答えいただけないと思いますので、この点に関しては、さらにそれぞれの省庁について我々は聞いていきます。そのときに、総務大臣の御答弁と、それぞれの主務大臣はどうお考えになるのか、それは我々としては大きく問題にしていく部分だということだけ申し上げておきたいと思います。
 本法の方に戻ります。
 なぜ桶川事件の例を出したかというと、竹中大臣、この法律、実はもう一つ大きな問題があるんです。最終的にこの法律は、国家公安委員会、警察ですよね、警察にこの主務大臣を任せることができる。
 四十一条にこう書いてあるんです。「内閣総理大臣は、この節の規定の円滑な実施のため必要があると認める場合は、」、この節というのは個人情報取扱事業者の義務規定です。「円滑な実施のため必要があると認める場合は、」、ちょっと省きますが、「国家公安委員会を主務大臣に指定することができる。」と書いてあるんですね。円滑な実施のために必要があると認めるときは。
 これは、さっき言いました個人情報の有用性、そして個人情報の価値、国際的に広がっているわけですよ。その個人情報が日本においては総理の一言で警察の手に渡ってしまう可能性がある。警察の範囲に入ってくる可能性がある。これは余り議論されていませんけれども、昔は報道の自由に対する検閲があったかもしれないけれども、今、今回この法律で、我が国は個人情報に関する検閲を公的に認めることになる。私は大きな問題だと思いますよ。
 竹中大臣にこの点についての御答弁を求めます。
竹中国務大臣 情報に関する検閲という御心配は当たらないと思います。
 今お尋ねの、第四十一条に、確かに国家公安委員会という名称が出てまいります。この法案の第四十一条に規定する主務大臣については、基本的な考え方は、各事業を所管する大臣である、各事業を所管する大臣を主務大臣とするという考え方を基本にしております。
 その点で、警備業とか自動車教習所業などの業は都道府県の公安委員会が業の監督主体になっているということでありまして、これらの警察所管事業について警察運営をつかさどる国家公安委員会を主務大臣とする、そういう趣旨で書かれているものであります。
 したがいまして、この法案で国家公安委員会の関与は、専ら業所管の観点、業を所管するという観点からでありまして、法案第五章の義務規定の遵守に関する場合に限られる、そのように御理解をいただきたいと思います。
細野委員 いや、これも竹中大臣、性善説に立っているんですよ。総理大臣は、例えば警備業とか警察の所管の部分に関してのみ国家公安委員会を指定すると。
 戦前も、例えば新聞紙法とかそういうメディア規制法というのはあったわけですよね。その時代も、これは明治の時代からあったにもかかわらず、大正デモクラシーという自由を謳歌した時代もあった。それが、昭和に入ってだんだん暗黒の時代に入ったのは、為政者が、政治にかかわる人間が、この新聞紙法というものを利用して国家の情報を統制しようとしたから、ああいう暗黒の時代が来ちゃったんじゃないですか。
 この法律を、未来永劫、総理大臣が国家公安委員会にかかわるのは警察の所管しているところだけだということを絶対守るという保証が、竹中大臣できるんですか。この法律は、円滑な実施のために必要があると認められる場合は国家公安委員会を主務大臣に指定することができるというのは、政治的な意図があれば簡単に突破できる法案なんですよ。
 私は、竹中大臣は自由主義者だというふうに考えています。自由主義者であるならば、とにかく最悪の場合に備える、こういう検閲にかかわるような法律は、プリペア・フォー・ワースト、それに備えるのは当然の竹中大臣のとるべき姿勢だというふうに私は思っています。
 改めて伺いますが、この部分、本当に竹中大臣、危険性をお感じになりませんか。
    〔委員長退席、野田(佳)委員長代理着席〕
竹中国務大臣 基本的には、人格権を守るということを実現するために、必要最小限の関与というものはどこかでやはりせざるを得ないのだと思います。その場合に、民主主義社会において選出された政府の責任者がそれに当たる。それで、それに当たっては、そうしたことを担保するために、問題を生じないことを担保するために、先ほど片山大臣からもお話がありましたように、さまざまな司法の制度も準備されているというのが、この社会の、民主主義の仕組みであろうかというふうに思います。
 それで、プリペア・フォー・ワーストという考え方は、理解できないわけではありませんが、今まさに私が国会で法案作成者の趣旨として御答弁申し上げていること自体が一つのその歯どめであるというふうにも思います。
 繰り返し申し上げますが、専ら業所管の観点からということに限られる、そのような趣旨でこの法案はつくられているということでございます。
細野委員 私は、竹中大臣がそこまで責任をとれるとは思っていません。この法案を通して、十年後、二十年後、どういうふうに運用できるか。大臣はもう政治家じゃなくなっているかもしれませんね。経済学者として、本当に責任持てるんですか。国会答弁で枠をはめられるんですか。ゆっくり考えていただきたいと思います。
 私は、自民党内でいろいろ出ている議論、けしからぬところがあると思っているんです。例えば、城山三郎さんであるとか桜井よしこさん、この法案を批判されています。正面から批判されている。新聞紙上で読むと、城山三郎さんは自分のやっていること自体が言論統制だとわかっていないというような発言が出たという発言があります。だれか、ぼけているという発言までしている。違うんですよ。官に対する無謬性を前提として、しかもこういう危険な部分を残している。保守系の自由主義者だからこそ出てくる発想なんですよ。決して、メディアに加担して、自分たちが情報をとるのが難しくなるとか、そういうレベルの話をしているんじゃなくて、これはまさに国家観にかかわる点から懸念を表明されているのが城山三郎先生なんですよ。
 福田官房長官、この点の懸念に対して、この法案、本当にこたえられるとお考えでしょうか。お答えください。
福田国務大臣 やはり、個人情報を守るという観点からこの法案を提出させていただいておるわけでございまして、このことが城山三郎さんなどが懸念されておられるということについては、これは懸念でございます。この懸念を解くためにいろいろとこれからこの審議を通じて御理解を深めていただく、このことが求められているわけでございますので、ぜひそういう意味においてこれから真摯な討議を進めていただきたいと思っておるところでございます。
    〔野田(佳)委員長代理退席、委員長着席〕
細野委員 官房長官の御答弁も、そして竹中大臣、片山大臣の御答弁も、余りに、こういう問題に関して、何というんでしょうか、若輩の私が言うのはなんですが、無邪気といいますか、お気楽といいますか、今日本が抱えている状況、それに対してこたえなきゃならないその問題を目の前にして、本当に今の答弁で皆さんいいと思っているのか。これは正直言いまして、今回明らかに疑問として大きくなりました。
 我々は、これから建設的な議論をもちろんしていこうと思っています。絶対、この主務大臣という業法の部分で縛っている、そして個人情報もごっそり持っていくというような仕組みじゃなくて、第三者機関をつくろうじゃないか、そういう提案もしていきます。この法律では、私、絶対だめだと思いますよ。この点に関してはこれぐらいにしておきますが、ぜひ、特に御担当の竹中大臣、よく考えてください。よろしくお願いします。
 では、次に行きます。
 時間も大分たってまいりましたので、冒頭の質問ですので、まず、個人情報保護法案の制定の経緯について少し確認をして、その議論の中でどういう動きがあったのかということについて竹中大臣に御答弁をいただきたいと思います。
 先ほど来、個人情報保護検討部会と個人情報法制化委員会ですか、この二つの部分が出ておりますが、竹中大臣としてこの部分の経緯を改めて、短くで結構ですので、どういう経緯でこの個人情報保護法案が最終的に法案として提出されたのか、御説明をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 経緯のお尋ねでございますけれども、まず個人情報保護検討部会、これは、現在中央大学教授の堀部先生を座長とする検討部会でありますけれども、これが平成十一年の七月に、内閣の高度情報通信社会推進本部のもとに置かれまして、これには各界各層の代表がそのメンバーとして参加しまして、日本における個人情報保護システムのあり方を検討していただいたということであります。この検討部会はちなみに、十一年十一月に、包括的な基本法の制定が必要であるという旨の中間報告を取りまとめております。
 これが九九年、平成十一年の七月でありますけれども、他方、個人情報保護法制化専門委員会が設置されまして、これは、委員長は園部元最高裁判事でいらっしゃいますが、検討部会から提言された基本法につきまして法制的観点から専門的に検討をするために、法曹の実務家を中心に設けられました。平成十二年一月でございます。同年の十月に、個人情報保護基本法制に関する大綱を取りまとめたということでございます。
 この会議は、それぞれの役割を持って設置されまして、緊密に連携を保つ、具体的には、堀部座長が法制化の委員会にもお出になったというふうにお伺いしておりますけれども、連携を保ちながらこの法案の基礎となる考え方をおまとめいただいたというふうに認識をしております。
細野委員 竹中大臣に確認したいんですが、この個人情報保護検討部会と個人情報法制化専門委員会ですか、要するに、ここで議論を尽くしてこの法案が出てきたという理解でよろしいわけですね。
竹中国務大臣 そのように認識をしております。
細野委員 それでは、中の議論について若干お伺いしたいと思います。
 実は、この検討部会と法制化専門委員会の議論の過程で、メディア規制の部分に関してトーンが徐々に変わってきております。きょう、私の方から「個人情報保護法案制定の経緯」ということで紙を配らせていただいておりますので、それも参照しながら議論に入っていきたいと思うんですが、実は、一九九九年の十一月に出た、堀部座長のもとにできた個人情報保護検討部会では、基本原則の部分についてこういう規定があるんですね。「各原則の適用除外の要否等について、法制的に検討する必要がある。」分野の例として報道、出版というのが挙げられています。基本原則について例示した後、その適用除外について書かれた部分があるんです。
 さらに言うと、この先に行きまして、法制化専門委員会の方ですね、この部分の大綱を見ますと、「個々の基本原則は、公益上必要な活動や正当な事業活動等を制限するものではない。」「この趣旨は、報道分野における取材活動に伴う個人情報の取扱い等に関しても同様である。」法制化のときに例外を設けなければならないというところからは、実はここでトーンダウンしている。トーンダウンはしているけれども、一応、報道分野においても同様であるという規定がある。例外規定にもなりそうな非常に中途半端な書き方になっているんですね。
 この議論の経緯、基本原則を適用除外するかどうかというのは大変な議論になったところだと思うんです。竹中大臣、この議論の経緯、なぜ変わったのか、そして法制化されたときには基本原則の報道機関に対する適用除外はなぜすっぽり抜け落ちたのか、この点について御答弁をお願いします。
竹中国務大臣 ちょっと細かいお尋ねでございますけれども、検討部会の中間報告では全分野を包括する基本法制の整備を提言した。同時に、基本原則の法的性格、適用除外のあり方、開示、訂正等の制度化、罰則、第三者機関等の問題については、引き続きその後の法制面からの専門的な検討にゆだねることとしたというふうに承知をしております。メディアに対する基本原則の要否等については、事後の法制的な検討が必要とされていたところであり、適用除外とすることが決まっていたわけではないというふうに認識をしています。
 同報告を受けて設けられた法制化専門委員会においては、個人情報保護検討部会と連携を図りながら、これは先ほど申し上げましたけれども、連携を図りながら関係各方面から意見聴取を行って、中間報告で指摘された諸問題について具体的な検討を進めた。その結果、努力義務としての基本原則、開示、訂正等の制度化、主務大臣の事後的な監督の仕組み及び間接罰、報道等分野に関する義務規定の適用除外など、基本法制の具体的方策を内容とする大綱が取りまとめられたということだと思います。
 したがいまして、大綱は、検討部会の中間報告を踏まえて法制的観点から具体化したものでありまして、その趣旨を変質させたものではないというふうに認識をしております。
細野委員 どなたかが書かれたのを一生懸命読まれましたけれども、これは大事な問題ですよ。当初は、基本原則の適用除外を法制的に検討する必要があるというのは、よく聞いてくださいよ、法制的に検討する必要があるというのは、必要性をにおわした文章なんですよ、堀部教授のときは。それがなぜ変わったのか。検討は先延ばししたんですというのではなくて、ここの部分で法制的に検討をする必要があるという文章が出ているのに、なぜ消えたのか。これは竹中大臣、非常に重要な経緯なんですよ。なぜ必要ないんですか。必要ないという議論になったんですか。
竹中国務大臣 この辺の検討の経緯は、当時の責任者ないしは当時の専門家の意見をお伺いする必要があると思いますが、私の認識しているところでは、適用除外とすることが決まっていたわけではないということだと思います。
 先ほど申し上げましたように、メディアに対する基本原則の要否等については、事後の法制的な検討が必要とされていたところであって、適用除外とすることが決まっていたわけではない。その意味では、今委員御指摘のように、中間報告から大綱に行く過程で何か基本的な変質があったというふうには私は認識をしておりません。
細野委員 ちょっと待ってください。大臣、今重要なことを言われましたよ。この部分の経緯についてはかかわった方に聞く必要があるとおっしゃいましたね、専門家に。先ほど竹中大臣はこう答弁された。この検討部会と専門委員会で法律は決まったんだ、ここで議論は尽くされたんだとおっしゃいましたね。竹中大臣、堀部教授そして園部委員長と当然会って話を聞かれていますよね、この経緯について。確認させてください。
竹中国務大臣 堀部教授とは以前から面識もありまして、これのお話は伺ったことがございます。園部座長とは、この問題について直接議論をさせていただく機会は残念ながらございません。その法制化のメンバーには遠山現大臣が入っておられまして、遠山大臣から少しお話を伺ったことはございます。
 先ほど申し上げましたのは、私の基本認識ないしは政府の基本認識は私がもう何度も答弁したとおりでございますけれども、そうではないというふうに委員がおっしゃるのでございましたら、それはそれで、そういった当事者の御意見があるのかということで、そういった御意見を伺うというふうに申し上げたまででありまして、私自身の認識では、これは、特に堀部教授からもお伺いしておりますが、その中での変質はない、なかったというふうに認識をしております。
細野委員 ゴールデンウイークのときに、竹中大臣はヨーロッパに行く予定があったのにそれを中止された、それで勉強されているという話を聞きました。それはいいことだなというふうに思っております。
 ただ、じゃ、だれの話を聞いたんですか。検討部会と専門委員会の間に、実は内閣官房の中に個人情報保護担当室、これが発足しているんですね。その前のときは堀部教授を中心に議論がされていた。ここで担当室ができて、そちらにいらっしゃる藤井審議官もおつきになって、そして役所ベースの検討が始まった。竹中大臣、そのお休みのときに、藤井審議官だけから話を聞いて、私は極めて基本的だと思うんですよ。堀部教授とそして園部委員長に休みの間にちゃんとお聞きになったんですか。これは極めて重要だと思います。この経緯について御理解をいただくために重要だと思うんですが、竹中大臣、御答弁いただけますか。
竹中国務大臣 私が役所の外でだれと会ってどのような勉強をしたかということは、これはこういう場で申し上げるべきことではないと思います。私なりにしっかりと勉強させていただいたと思っております。
 さらには、さまざまな検討会の経緯というのは既にウエブ上で公開されておりますので、そういうものに関しましては、これはかなり幾つかのものがございますけれども、基本的に目を通させていただきました。
 ちなみに、あえて御質問がありましたので、堀部先生とは以前から大変親しいものですから、お話を伺っております。
細野委員 私は、私的に会ったか会っていないかというのを聞いているんじゃないんです。職務として、きちっと担当大臣としてこの部分についてヒアリングをされたかどうか聞いているんです。竹中大臣、この部分は極めて重要なんですよ。
 我々は、これをひっくり返して過去どういう経緯があるかと見ているんですよ。これにきちっと、この二人にお話を聞いていないんじゃ、答弁にならないですよ、本当に。お会いになったんですか、大臣として。
竹中国務大臣 基本的には、繰り返し申し上げますけれども、そうした議論の経緯というのは大変詳細にウエブ上に公開されておりますので、それで勉強をさせていただきました。会ったか会わないかということをいろいろ聞かれますので、先ほども申し上げましたように、以前から面識があって、プライバシーとかさまざまな基本的な考え方について御指導を受けております堀部先生にはお話を伺いました。
細野委員 この部分で、ウエブ上にある情報だけで大臣が満足しているとしたら、こんな答弁、話にならないですよ。私、この問題は非常に重要だと思うんです。この部分についてきちっと話を聞いて過去の経緯を御理解いただいた大臣じゃないと、とても質問できない。この経緯について聞いていないことに関しては、非常に問題だと思います。これ以上質問できないですよ。
竹中国務大臣 情報の収集の仕方には、それこそこのITの時代、いろいろな問題がありますから、私なりの情報の収集はさせていただきました。
 細野委員、具体的に私の例えばどの部分について基本的な情報収集が欠けているかとか、やはりそういう問題点をできれば御指摘いただきたいと思います。あとは、例えばの話でありますが、御当人にお目にかかっても、その議論の詳細全部を恐らく覚えていらっしゃるわけではないでしょうから、さまざまな形でこれは、そのときに出席していたか、事務方から詳細な意見を聞く、ウエブ上のデータを利用する、また、参加していて私自身が比較的お目にかかりやすい方からお話をしていただく、これはもういろいろなやり方があるのだと思います。
 その意味では、それの経緯について私なりに承知をしているつもりでございます。
細野委員 この変質の理由、では、ちゃんと聞いておいてください。当然ですよ。ここでの議論の経緯があって徐々に法案の形が変わってきたんですよ。特にメディア規制の部分に関しては、ここの部分で明確に書いてある。これはだれでも読めるんですよ。それが、検討が先延ばしされたから検討会の委員会の方で否定をされて必要がなくなりましたという答弁では、とても納得できないですよ。当事者からちゃんと話を聞いて、どういう経緯でこの部分が消えてうせたのか、これは次回までに、竹中大臣がウエブ上でしか調べられないのであれば、きちっと御当人に聞いていただきたい、そう思います。
 では、これは次の機会に譲るとして、私が配った資料に基づいて、もう少し、今度は与党と政府がどういう関係にあったのかということについて伺っていきたいと思います。資料、よろしいでしょうか。
 これは、私なりにまとめた個人情報保護法案の制定経緯であります。この一番初めに書いてある「報道を監視するための報道モニター制度創設」という部分に代表されるように、四角で囲ったものが自民党の動き、そして四角で囲っていないもの、これが政府の動きであります。
 九八年の十月に報道を監視するための報道モニター制度というのが自民党内にできています。これは、その直前にありました参議院選挙で自民党が惨敗した後にできた制度であります。どういう報道モニターをされていたのかは私も詳しくは存じませんが、何らかの選挙の報道に関してモニターをされていたんでしょう。そして、その経緯で、次の年の八月に検討委員会ができて中間報告ができています。
 そして、その経緯で、次にできているのが、いいですか、報道と人権等のあり方に関する検討会なんです。その資料を読みまして、なるほどなと私は思いました。
 この報告書の最後にこういうくだりがあります。根拠となる総括的なプライバシー保護法的な法的整備を推進する必要がある。いいですか、報道と人権等のあり方に関する検討会でプライバシー保護法が法制化が言われているんですよ。総理は、国会答弁の中で、メディアの活動を規制しようとする意図は全くありませんとおっしゃっているけれども、この九九年十一月に個人情報保護検討部会ができる直前に出た提案なんですよ。全くこれが関連しないと思う方はほとんどいないです。
 しかも、この部分で非常に私がアンフェアだと思うのは、この報道の部分から出ているプライバシーの議論を、この九九年の十月にはITの範疇に一気にとどめてしまっている。この経緯、竹中大臣、きちっと御理解されていますでしょうか。
竹中国務大臣 これは、IT担当大臣として、特にそういう認識を、正直言いまして、今まで十分に認識していたわけではございません。特にこれは党のお話等々であると思いますので、私としては必ずしも十分認識する立場にはなかったというふうに思っております。
細野委員 報告書はちゃんとごらんになりましたか。
竹中国務大臣 概要だけ報告を受けておりますが、隅から隅まで読んだというわけではございません。
細野委員 自民党の報告書というのは短いんですね。たった二枚なんですよ。隅から隅も、見るも、これを読めばいいだけですね。これは、竹中大臣お得意のウエブ上に載っています。これを読んでいらっしゃらないのは怠慢だと私は思いますよ。しかも、私、質問通告してあるんですからね。
 では、まあ、竹中大臣は自民党と直接かかわらないというふうにおっしゃるのであれば、福田官房長官に伺います。
 先ほど、事前の経緯については御説明いたしました。ちょっと紙を見ていただけますか、配った紙。私が資料としてお渡しした紙です。
 下の部分では、個人情報保護法案が閣議決定される前後には、放送活性化検討委員会というのも発足している。そして、四月には、報道番組検証委員会というのも発足している。ちょうど一年ちょっと前ですね。
 この時期というのは、言うまでもなく、森政権がいろいろなスキャンダルにまみれて、報道機関とまさに本当に大変な勝負になっていた時期です。参議院選挙の後に、報道規制の部分からプライバシー保護法の話が出てきて、議論がスタートをして、提出をされた時期に森政権がスキャンダルまみれで、自民党の中でこの報道被害、報道問題に関してさんざん議論がされていたという経緯、福田官房長官、この関連性についてきちっと考える必要があると思いますが、どうお思いでしょうか。
福田国務大臣 今御指摘の党の方のいろいろな議論というもの、これはあったと思います。私、関係していなかったので、どういう議論かわかりませんけれども、議論があったということは承知しております。
 しかし、このことと個人情報保護法の制定の経緯とどういう関係があるか。時期的に接近しているからかということなのだと思いますけれども、例えば報道と人権等のあり方に関する検討会、これは自民党でこういう検討会があったわけでありますけれども、ここでは、報道と人権とのかかわり方などについて、どういうあり方かというその基本的な考え方を検討した、それも広範に検討したというものでございまして、法案に関係する決定機関ではない、このように承知をしております。
細野委員 政府の側としては、確かに、直接自民党の案をそのままのんだと言うわけにはいかないでしょうから、今の福田官房長官の御答弁になるのかもしれませんが、この時系列の流れを見ていて、自民党の動きと個人情報保護法案の動きが全く別だと考える方はいないんですよ。だからこそ、今、この自民党の部分に関してもきちっと見ていかなきゃならない。一番初めの部分で、検討会でプライバシー保護法というのを初めて提案されている、この重みというのもきちっと政府として受けとめていただきたい。
 そして、きょう私は、この部分での自民党サイドの動きを一番御存じの方が内閣委員会にかかわっているところにいる、ぜひ御答弁をいただきたいということでお願いをいたしました。それが、理事会でもお話をしました熊代副大臣であります。
 この時系列の中でも書かせていただいていますけれども、二〇〇一年の二月にできた放送活性化検討委員会の中で、熊代委員長、今副大臣をやられていますけれども、当時委員長をされていた。そして、その前も、この自民党のメディアの規制に対していろいろとかかわってこられたという経緯があります。
 官房長官、覚えていらっしゃいますでしょうか。ことしの三月に大畠委員長のもとで委員長招待がございました。官房長官もいらっしゃいましたね。もしかしたらもうお帰りになっていたかもしれないですが、熊代副大臣がこういう発言をされました。あしたかあさって、民放の番組に出るんだ、そして、やはり放送、マスコミというのも、きちっと政治家として言うことを言っていかなきゃならない、自分は闘っているんだというような発言をされていました。実際に、番組に出て、個人情報保護法にかかわって、巨大権力マスコミを人権擁護の治外法権に置けない、そういう発言もされているんですね。これは、私は、見方によっては、明らかに、メディア規制の意図は全くないと言われた小泉総理の見解とは異なる見解だ。
 今回、私、委員会の席にこの内閣府の副大臣としてぜひ御出席をいただきたいというお願いをいたしました。政府としてどう考えるか、お聞かせいただきたいんですが、メディアに出て御自身の考えを発言される、委員会では答弁できない。これは、やはり国会を考えたときに、国民を考えたときに、おかしい、ばかにしている話だ。政府に対してこの熊代副大臣がきちっと答弁に立つことを要望しますが、官房長官、どうお考えでしょうか。
福田国務大臣 熊代副大臣が委員長招待の会でどのような発言をされたか、私全く承知していないのでありますけれども、熊代副大臣がこの委員会に出て答弁をすることができるかどうか、こういうことであります。
 理屈を申し上げますと、内閣府設置法の第十三条第三項、ここで、内閣府副大臣の行う職務の範囲については、内閣総理大臣の定めるところによる、こういう規定がございます。この規定に基づいて、総理から熊代副大臣に対して、内閣府本府の事務のうち規制改革、沖縄及び北方対策を担当するとともに、内閣府に係る道路四公団民営化推進委員会、これは仮称でありますが、関係の政策を担当していただきたいというような指示が総理からあったわけでございます。個人情報保護法に関する事務については、職務の範囲に含まれていないということで熊代副大臣は答弁はできない、こういうことになっておるわけでございます。
細野委員 官房長官、それはおかしいのですよ。今までの議論の経緯でいっても、ほかの省庁の副大臣も要求があればこれはきちっと出てきたんですよ。ほかの省庁の副大臣がこの委員会に出て答弁して、何で内閣府の副大臣が答弁できないのですか。政府としてこれはぜひ答弁すべきである。本当に内閣一体でこの法案をやっているのであれば、当然そういう答弁があってしかるべきじゃないですか。
福田国務大臣 これは今お答えしたとおりでございまして、この個人情報保護法案に対する質疑のこの場に出席することは、担当外であるということでできないのであります。
細野委員 官房長官、国会で呼んで、それで内閣が答える準備がないというのじゃ本当にどうしようもないですよね。
 私、実はきのう、熊代副大臣のきょうのお仕事についても聞いています。担当の行革推進室の方が来られて、直接話をして、今、有識者のヒアリングをされているということでした。ただ、要望があれば三十分だけ抜けて来ますよ、時間を指定してくださいということで、一たんお帰りになったのですよ。そうしたら、すぐ帰ってこられて、いやいや、出れないことになりました。なぜ出れないのですか。一たん出るとお約束されて、業務上も、それは一たん休んでいただかなければならないかもしれないけれども、出る段取りをしますよと言って帰った方がいるのに、なぜ出れないのですか。お答えください。
福田国務大臣 そもそも、この法案審議に当たりましては、松下副大臣が担当でございます。これはもう松下副大臣就任時の総理からの担当分野の指示において、内閣府に係るIT関係の政策を担当する、こういうことになっているので、松下副大臣が担当副大臣でございます。
細野委員 理由は明らかなんですよ。副大臣がメディア規制に今まで取り組んでこられたから答弁させたくない。これは自民党の皆さんにもぜひ言いたいです。内閣委員会の中でだれを呼ぶかということを、所管の副大臣について国対に相談しないと決められないというのはどういうことですか。この部分に関しては、いわゆるメディア規制の部分で議論をしてきた自民党の経緯を私もさっき説明しましたけれども、できるだけ隠ぺいしようという意図が明らかなんですよ。
 さらに言うと、もう一つ、私は皆さんに申し上げたい。内閣委員会の理事会で、阪上理事が独自の主張をされました。極めて興味深く私は拝聴いたしましたけれども、阪上理事が興味深い発言をされました。しかし、その後、理事からはいなくなられた。自民党の中でも幾らでも異論が出ているのじゃないですか。自民党の中でこういう議論をしてきたことをできるだけ隠して全部政府に押しやって、そしてITの看板を掲げて何とかこの法案を通そう。さっき国民的な議論をしようとおっしゃった方がいらっしゃいましたけれども、全然そういうふうになってないじゃないですか。福田官房長官、どうですか。
福田国務大臣 それは、党の方でいろいろな議論をします。ですけれども、ここは国会でございまして、国会の委員会でございまして、この委員会において答弁する者は、担当がしっかり決まっているわけでございますから、その者にお尋ねをいただきたいと思っております。
細野委員 官房長官から極めて後ろ向きな御答弁をいただきました。
 そもそも、ほかの省庁の副大臣も呼べるという現状の中で副大臣を呼べない、このことは極めて問題だというふうに思います。きちっと委員会の中で呼んで御答弁をいただくのが筋ですが、仮にそれができないのであれば、参考人として熊代副大臣に来ていただく必要がある。
 さらに言うと、先ほどプライバシー保護法について言及をした報道と人権等のあり方に関する検討会、これは、委員でもいらっしゃいます谷川座長がやられていたということを聞いています。この方についても参考人として聞く必要がある。
 さらに言うと、当然この間、経緯として、理事会からいらっしゃらなくなった、そして、漏れ聞くところによると、お一人でなったから自由に発言できるから個人情報保護法案について発言するよとおっしゃっている阪上理事についても、その辺の事情については参考人としてきちっと話を聞く必要があると私は考えます。委員長に要望させていただきます。
大畠委員長 今のお申し出については、理事会で協議いたします。
細野委員 言論統制の体質について、この部分できちっと自民党サイドで答えを出されることを非常に強く期待をしております。
 次に、そろそろ時間も少なくなってまいりましたので、逢沢理事からも御質問がございました修正の部分について、さまざまな議論について伺いたいと思います。
 私は、今回の経緯、いろいろ報道ベースでされているのを見ておりまして、当初から、例えば公明党の冬柴幹事長がこの法案は問題があるという発言をされたり、麻生政調会長が修正に前向きな発言をされているのを聞いてまいりました。いろいろ御意見はあるかもしれませんけれども、与党サイドから国会審議を通じてこの法案を修正しようという動きが出てくるとしたら、それは必ずしも悪いことではない、むしろ国民の前で議論を明らかにして、そして修正をするのであればいいことだと思うのですね。
 ただ、問題は、今回、いわゆる政府の中から修正論議が出てきているということなんです。しかも、国会審議に入る直前の十二日、十三日、十四日と続けて、きょう国会審議に入ったわけですから数日前ですよ、修正について議論があったという部分に関して、これは極めて問題だというふうに私は思っています。
 まず、福田官房長官、十二日に某新聞社から案が出てまいりまして、その翌日に記者会見されていますね。この部分の真意、改めて伺います。
福田国務大臣 某新聞がその一面トップで大々的にその新聞の案というものを掲載されたということでありまして、そのことについて記者会見で、どう思うか、こういうふうに問われたわけでございます。私は、そのときにお答えしたのは、そういうように出ていることについて、それはその社の、会社の考え方である、その考え方について、これは研究するということは、それは構わないのではないですかという程度のことは答えたと思っております。
細野委員 もう一度お願いします。読売案をどうするのですか。
福田国務大臣 検討というのは、研究してもよろしいのではないかということを申し上げたのです。
細野委員 竹中大臣、十四日に、さらに竹中大臣は記者会見で言われている。念のためそのまま読みますね。「昨日、総理にお目にかかりましたときに、非常に前向きに熱心に議論を、これ、いただいている案だなと。よく検討しておくようにというふうな話を総理からいただいております。」という御答弁をされている。さっき、勉強とおっしゃいましたけれども、検討とおっしゃっているのですね。総理からそういう話をもらったのは事実ですか。
竹中国務大臣 今委員お読みいただきました記者会見の私の議事録でありますけれども、その後も読ませていただきますと、「我々としては、もちろん政府案がベストだというふうには思っておりますけれども、よく勉強しておくようにというような総理のご指摘もありましたので、」というふうに私自身申し上げております。基本的には、いろいろ御答弁させていただいておりますけれども、人格権と表現、報道の自由とを両立させる非常に狭い道を探らなければいけない、その狭い道を探るということを熱心にこの案も検討してくださっているなということで、総理が、これからいろいろな議論が国会で出てくるであろうからこういうものをよく勉強しておくようにというふうに御指示がありました。これは、私自身、よく検討しておくように、よく勉強しておくようにという御意味であるというようなことを記者会見で述べさせていただいております。
細野委員 官房長官も竹中大臣も、焦点をぼかしていると思いますよ。読売案を検討しておくという話があるわけですね、読売案を検討する。読売案というのは何ですか。これは全条文の中の二つの条文だけを修正するという案なんですよ。修正案を検討するというのは、とりもなおさず修正を検討するということじゃないですか。(発言する者あり)そうですよ。一般的な問題じゃない。まさに法案の修正を検討しているということですよね。
 これは、私、本当に、一年間たなざらしにしておいて、皆さん熱意もなくだらだら来て、内閣委員会の中で議論しようという機運もなく来て、ようやく出てきたと思ったら、修正を政府の中で検討している案を今我々に押しつけてきているわけですよね。我々は政府案を前提に議論するんです。その前提が政府の中で崩れる可能性があるとしたら、こんな議論というのは成立しないんですよ。少なくとも政府の中で、与党は結構です、政府の中で修正について議論をしていただきたい、それがけりがつかない限り、我々は何を議論していいかわからないんですよ。これができないと意味がないということを申し上げたいと思います。
竹中国務大臣 繰り返しますが、修正を検討するとかということを総理は一切言っておられませんし、官房長官も私も一切そういうことは言っておりません。これからいろいろな議論が出てくるであろう、国会でいろいろな議論をいただくであろうから、こういうことも含めてよく検討しておけと。それでありますから、別に修正でも何でもない。
 繰り返し、記者会見の場ではっきり申し上げさせていただきましたように、私たちは、人格権と報道、表現の自由の非常に狭い道を探るという上で、政府案がベストなんだと思ってこの法案の御審議をいただいております。
細野委員 ぼかしちゃだめですよ。与党の中で議論するという話じゃなくて、よく聞いてくださいよ、竹中大臣、あなたは法案の提出者なんですよ。法案の責任者なんですよ。その上にいるのは小泉総理なわけですよ。その小泉総理が読売案について検討するようにと担当大臣に言ったということは、政府の意思として、読売案、すなわち修正を検討するということじゃないですか。そのものですよ。こんなのは、本当に私は怒っているんですよ、この部分に関しては、けしからぬと。一年間たなざらしにしておいて修正含みの案をここに出してくる。
 さらに言うのであれば、竹中大臣、この法案を担当されて、そして過去の経緯もほとんど研究されてきていない。自民党のサイドのことは自民党サイドで考えてください。きわめつけは、この修正、これがこれからどうなるか、与党の中でも、その前提として政府の中でもわからない。こんな国会をばかにした話はないですよ。この前提をクリアしない限り、私は、特にこの修正の部分、政府内で検討が終わらない限り、質疑できないと思います。
竹中国務大臣 いや、ちょっと今の細野議員の論理は余りに無理があるのではないのでしょうか。
 これは私は、修正という言葉は、総理からも、官房長官からも、私からも、一言も出ていないし、そういう案が、これだけ話題になっているんだから、しかも大新聞の一面に載ったものでありますから、それをそれなりに勉強しておけ、検討しておけというのは当たり前な話でありまして、それだけこの政府の案を通すために気を引き締めて審議に当たれという総理からの指示だったというわけでありますから、そういうことを言ったから修正だというのは、これはちょっと論理の飛躍であると思います。(発言する者あり)
大畠委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、ただいま細野委員の質疑の最中でありますが、政府はいわゆるこの法律案の修正を検討しているんじゃないか、そういう修正を検討しているような法案について質疑させるというのはおかしいじゃないかということでありますが、改めて、政府の方として、総理の発言等々もございますが、この法律案について、修正というものを検討している、検討していないといろいろありますが、ちょっと整理をして答弁をいただきたいと思います。(細野委員「委員長、改めて聞きます」と呼ぶ)
 それでは、細野君。
細野委員 端的に聞きます。もう一度伺いますが、読売案を検討しろという話が総理からあったというのは事実なんですね。この点をお答えください。
竹中国務大臣 ちょっと整理をさせていただきます。
 十三日の総理の発言でございますけれども、発言の趣旨は、まず、十二日の読売新聞に掲載された修正試案に関して、非常に前向きに熱心に御議論をいただいている案である、よく勉強しておくようにということでございました。この点については、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないことを明確に述べているところであります。
 この委員会で審議を始めていただくことに備え、政府としても、読売新聞を初め、各方面から提出されている修正意見について十分勉強していくことは当然でありますけれども、現在の案は、政府として最大限の努力を講じ、最善のものとして御提案申し上げているものであるということは言うまでもありません。政府として修正を検討しているということはございません。
細野委員 読売新聞の案は検討するということになっているんですね。その部分についてきちっと答えてください。読売新聞の案を政府内で今検討しているのですか。政府の中ですよ。いろいろな人がじゃない。総理と竹中大臣が読売案を検討しているのかどうか、答弁ください。
竹中国務大臣 読売の案等を含めていろいろな議論があるということを知っておかなければ国会での審議が十分にできないということでありますので、その意味において勉強し、検討しているということでございます。
細野委員 検討するというのは、読売案を検討する、修正案を検討する、修正を検討するということじゃないですか。それ以上とりようがないですよ。
 じゃ、竹中大臣がこの案をベストだというふうにおっしゃるんであれば、修正というのは検討する余地がないはずですね。本当にそれでいいんですか。政府としてはベストの案だと。
 きょう私が言った主務大臣の関与、竹中大臣は国家公安委員長に関与させるんですか。すべてこのまま通すんですか。基本原則のメディア規制の部分に関しても、これも外さないということなんですか。そこの検討を始めたんでしょう、政府が、小泉さんから指示を得て。どうなんですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、我々は政府案がベストな案であるというふうに思っております。そうした考えに基づき、閣議決定をして、法案の御審議をお願いしているところであります。
 繰り返しますが、修正案を、修正を政府が検討しているということはございません。
細野委員 じゃ、もう一度確認しますが、小泉総理から竹中大臣に対して読売案の検討を指示されたわけですよね。今竹中大臣が一生懸命総理の意向を話をされましたけれども、総理がどういう気持ちでそれを言ったのか、検討というのはどういう意味で言ったのか。みんなそう受け取っているんですよ。
 我々は竹中大臣が絶対の責任者だと思ってここで聞いているんですよ。それを、総理からの指示で読売案という修正を検討しているんじゃ、検討していないと今おっしゃったけれども、少なくとも、総理の指示で、修正について何らかの指示があったとしたら、これは、少なくとも総理に政府内での修正の状況についてこの委員会に説明してもらわない限り話にならないですよ。それが大前提ですよ。
竹中国務大臣 何度も申し上げますが、総理自身、記者レクでそういうことはないということを明言していらっしゃいますし、私もそういう指示は受けておりません。
 繰り返し、私も官房長官も、政府でそういう修正を検討するということはしていないというふうに申し上げている。これは、いろいろな意見があるから、そういったものについてはまあ勉強しておけば、そうしないと国会の審議は十分にできない、当たり前のことだと思います。
細野委員 わかりました。竹中大臣は、もう修正を検討していないと。修正を検討していないとよくわかりました。
 だから、少なくとも、それを指示した、検討を指示した小泉総理がここの場に来て、政府内では検討していないということについて、修正について言及していないということを答弁いただくまでは、この委員会での実質的な責任者として竹中大臣をみなすことはできない。(発言する者あり)
大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、総理に真意を聞かないといけないという話がございましたけれども、この件については理事会で協議をさせていただきます。
 そして、もう一度、政府の方からは事実経緯を明確に答弁していただきたいということですから、もう一度整理をして竹中国務大臣から答弁をいただきます。
 竹中国務大臣。
竹中国務大臣 もう一度申し述べさせていただきます。
 十三日の総理の発言をめぐっての議論でございますけれども、発言の趣旨は、その前日、十二日の読売新聞に掲載された修正試案に関して、非常に前向きに熱心に御議論いただいている案である、よく勉強しておくようにということでありました。この点について、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないことを明確に述べていらっしゃいます。
 したがいまして、この委員会の審議を始めていただくことに備えて、政府としても、読売新聞を初め各方面から提出されている修正意見について十分勉強しておくことは当然であるというふうに思っております。
 もちろん、現在の私どもが提出している案は、政府として最大限の努力を講じ、最善のものとして御提案申し上げている、この点は言うまでもございません。
細野委員 今後のために、今後この議論をきちっとしていくために、じゃ、一言一句ちょっと確認をさせてください。
 これは記者会見の資料を、インターネットに出ているものですが、大体そのまま出ていますので、ほとんどこれを利用して皆さん考えている文章です。
 「経済財政担当大臣」とありまして、「昨日、総理にお目にかかりましたときに、」竹中大臣、全部これをチェックしてくださいね。よろしいですか。「昨日、総理にお目にかかりましたときに、非常に前向きに熱心に議論を、これ、いただいている案だなと。よく検討しておくようにというふうな話を総理からいただいております。で、我々としてはもちろん、政府案がベストだというふうには思っておりますけれども、よく勉強しておくようにというような総理のご指摘もありましたので、これはしっかりと検討はしたいと思います。」
 しかも、もう一度記者がだめ押しで聞いています。「読売新聞の報道の案についてしっかり検討しておくようにと。」「ええ、そうですね。それについて検討しておくようにということです。」、こうあるんですね。勉強ではないんです。検討なんですよね。
 これ以上この部分に関して質疑を続けてもしようがありませんので、私、総理から少なくともこの指示があったことというのをきちっと明らかにしてほしいと思います。今の読んだとおりの発言が公式見解ということでよろしいですか。
竹中国務大臣 さっき答弁したとおりでございます。
 私もその中で言っていますけれども、勉強しておくようにという意味であるという趣旨の答弁をさせていただきました。
 ちなみに、この質問に、この記者会見でこれを私が申し上げたのは、たしかその前の日の総理の発言をめぐって、総理が修正を指示したというような新聞記事が出ておりましたので、そうではないですという趣旨で、この十四日の記者会見で、勉強しておくようにというふうな趣旨のことを私の方から申し上げた次第でございます。
細野委員 先ほども申し上げましたとおり、私は、竹中大臣に対して小泉総理はこういう指示をされたんだとすれば、竹中大臣の当事者能力というのが今疑われてきているというふうに思います。少なくとも、総理に、この部分に関して政府内部で、特に委員会の質疑の前にどういう議論があったのか、何をお考えなのかというのを答弁いただかない限り、今回竹中大臣にこれ以上質問しても意味がないというふうに考えます。
 加えまして、繰り返しになりますけれども、過去の経緯も含めて、竹中大臣、余りに危機感がなさ過ぎます。この法案に関して、きちっと過去の経緯も調べてください、そして、どこに問題があるのかも御自身で認識してください。
 そういう意味で、私、きょうの答弁を聞いていまして、竹中大臣を初め、政府の側の危機感が余りに薄い、だからこそ、こんな修正案に対してうだうだうだうだという話すら出てくるということを申し上げて、理事会の中であとは、総理の出席を前提とするということを私の主張として貫いていきたいと思います。
 以上で終わります。


2002/05/20

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