2002/05/17

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平成十四年五月十七日(金曜日)

逢沢委員 自由民主党の逢沢一郎です。
 連休前に、個人情報保護法案、また、行政機関が持つ個人情報をいかに保護するかの法律案の提案理由説明を当委員会で行いました。連休を挟んだとはいえ、少し時間がたったわけでありますが、満を持してのいわゆる実質審議入り、こういうことでございます。
 国民も注目をしている今度の法律案、十分この委員会で審議を尽くして、今なぜ個人情報の保護が国を挙げて、官民挙げて必要であるのか、そのことを正しく国民、各界各層に理解をいただく、審議を通じて理解をいただく、そういう姿勢を大事にしていきたいというふうに思いますし、何といってもITの時代ですよね、ネットの時代。これにしっかり対応できる個人情報保護のシステムを立派につくり上げてまいりたい、そう心から願っているわけであります。
 実は、私的なことで恐縮ですが、私、自由民主党の情報化小委員長という仕事をやっていまして、けさも朝八時から党本部で半導体関係の方々と勉強会をしていまして、九時からのこの委員会でありますので中座をして急いでこちらに来たわけであります。産業の米と言われている半導体、今ちょっと韓国や台湾に押されてかつての勢いがないわけでありますけれども、情報家電なんという、将来の日本の産業を、あるいはまた経済や国民の所得を支えるとも期待をされている、そういう期待をされる分野がありますけれども、それにいかに半導体産業として対応していこうか、そんな議論をいたしておりました。
 とにかくITが物すごい勢いで、しかも世界規模で私たちの世の中といいますか社会を変えつつある、これはもう紛れもない事実だろうというふうに思うんです。人間には、いろいろな価値観とか人生観とか人生の目的とか、そういうものはもちろんあるわけでありますが、とにかく、産業の高度化、あるいは私たち国民の生活の利便を増すということを考えると、このITネットを生かしていくあるいはネットを活用する、そういう国づくり、また、社会の仕組みをしっかりつくり上げていく、これは、政治はいろいろな役割を負っておりますけれども、実は最も大切な、また喫緊の政策課題だ、そんなふうに認識しています。
 最近、もうホームページを持たない会社というのはちょっと珍しいですね。例えば、就職関係の資料を請求するのでもメールでやりとりをする。大学の入学願書のそれなんかも、何か手紙を書いてみたいな時代ではなくなってきた。本当に世の中は変わったなと思うし、政治家も、片山大臣も、竹中大臣はどうかあれですが、ホームページを持っているし、不肖私も逢沢一郎のメルマガというのをやっていまして、時々、きょうの内容は官邸のそれよりちょっといいんじゃないかなと思うようなこともあるわけでありますが、我々政治家の政治活動も、やはりネットの時代に対応してみずからその姿を随分変えつつある、これも事実なんだろうなというふうに思う。
 今から十年前、電子商取引なんと言ったってだれもぴんとくる人はいなかったんだろうと思うけれども、それが、企業の生産や、あるいはまた販売、流通、もう格段に生産性を上げる大変なツールとして脚光を集めています。
 長々と申し上げてまいりましたけれども、そういうことをつっと考えてまいりますと、いかにこれからのネット社会あるいはIT社会に日本が対応できるかどうか、これはもう二十一世紀の日本の、ちょっと大げさな表現になるかもしれないけれども、盛衰を決める、そうとらえてもいいんではなかろうかというふうに思います。
 そういう意味では、経済財政諮問会議でも、IT関連に投資をすれば減税をする、きょうのここのテーマにはちょっと外れますけれども、そういうことを考えていただいている。これはもう必要なことであるし、党の立場からも精いっぱい支援をしていきたい。そこに大変な眠れる需要があるし、それを引っぱり出していかなきゃいけない、当然雇用もついてくるということで、自信を持ってそこのところは進めていきたい。
 先ほど片山大臣も、中央だけではなくて地方のいわゆる電子政府化、これも進んでいるんだ、サポートしている、そういう御発言をいただいたわけでありますが、いわゆるe―Japan計画、その先頭にいわゆる電子政府づくりを走らせようということでやっている。適切な判断であるというふうに思っています。
 しかし、そういう時代になってくると、既に今でも、行政機関にも、あるいは、民間あるいは民間事業者と言ってもいいかもしれない、そこにさまざまな大量のデータといいますか情報が蓄積をされている。その中に、いわゆる今ここで議論をまさに始めようとしている個人情報もいろいろな形で実は蓄積がされているわけでありまして、それを適切に利用する、そしてまた的確に保護をしていく、ITが進めば進むほど、ネットの時代になればなるほど、その必要性、大切さ、これを疑う方は恐らくいらっしゃらないだろうというふうに思います。
 時々、テレビや新聞をにぎわわすニュースの中に、いろいろな顧客名簿がたくさんに流出した、あるいは、古いパソコンを買ったら中に昔の方が使っていた情報が残っていて、その中に病歴というのですか、あるいはどんな薬がなんて、そういうことも報道がされる、さまざまな事故と言っていいんでしょうか、あるいは問題と言っていいんでしょうか、そういうものが社会の中に散見をされる、そういう時代になってまいりました。したがいまして、官民両方でこの個人の情報というものをいかに保護をしていくか、そのことは喫緊の課題であるということを改めて申し上げておきたいというふうに思うのです。
 そこで、具体的な質問に入ります前に、とにかく国民的な注目が高いということもあって、いろいろな方がいろいろな意見をおっしゃっていただいている。それは必要なことだし、結構なことだと思う。某全国紙、有力紙も、具体的な形で、むしろ法案はこうあるべきではないか、そんな記事も掲載をされた、そういう経緯を承知しているわけであります。そのこと自体は私は必要なことだし、結構なことだと思うのだけれども、いよいよきょう、まさに三十分前に法案の審議が始まったばかりでありますが、ちょっと新聞報道を見ると、総理を初め政府の立場のある方が、ちょっと勇み足じゃないかなと思えるような発言をなさっているかの報道がなされているわけであります。
 官房長官は今ちょっと退出されているわけでありますが、しっかり原案を通したいと考えている、そう発言をなさっておられる。一方、大変この問題を熱心に考えていただいており、評価をしたい。熱心に考えていただいているということを評価したいという趣旨でおっしゃっておられるんだろうというふうに思うわけでありますが、一方、総理が担当大臣等々に幾つかの発言をなされている、あるいはまた幾つかの指示をしているんではないかというふうにとれる報道もあるわけでありますが、これは非常に大事なことでございますので、竹中大臣、片山大臣、総理あるいは官房長官の、この法案の審議に入る前に、何か個別具体的な指示なり示唆なり、そういうものがあったのかどうか、最初にちょっと確認、ただしておきたいというふうに思います。
竹中国務大臣 まず、ITに関しまして、その重要性を御指摘いただきまして、IT担当大臣としては大変大きな激励を受けたというふうに思っております。
 お尋ねの報道の件でありますけれども、一連の報道は十三日であったと思いますが、総理の発言をめぐってのものであるというふうに思います。
 この発言の趣旨は、前日の十二日に読売新聞に掲載された個人情報保護法等の修正試案に関して、その御趣旨は、非常に前向きに熱心に御議論をいただいている案である、よく勉強していくようにというような内容であります。この点については、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないというふうに明確に述べていらっしゃいますし、同じ日の記者会見で、私自身も、勉強しておきなさいというお話をいただいたということを明確にさせていただいております。本日からの委員会の審議をしていただくことに備えまして、政府としても、読売新聞を初め関係方面から提出されている修正意見について十分勉強していくということは当然のことであるというふうに思います。
 現在の案は、政府として最大限の努力を講じた最善のものとして御提案申し上げているものであるということは言うまでもございません。
片山国務大臣 総理なり官房長官から私の方には何の話もありません。私の方の行政機関や独立行政法人が持つ個人情報保護法制につきましては、私どもは最善の案だ、こう思っておりますから、ぜひこのまま御審議の上、御採択賜るように心からお願いしております。
逢沢委員 両大臣からはっきりとした答弁をいただいたわけであります。
 この法律案は、前の前の国会に提出をされた、そういう経緯がございます。もちろん、与党としても、政府からの提案を受け、あるいは与党は与党として、いかに個人の情報を保護するか、そういうことについて党内で精査をした、そういう経緯があります。そのことをしっかり踏まえて今後の審議に臨んでまいりたい、そのように発言をしておきたいというふうに思います。
 さて、改めて担当大臣竹中大臣から、大臣の言葉で、今なぜ個人情報保護なのか、そのことについて国民にわかりやすく解説をしていただかなくてはならぬと思います。IT社会、ネット社会というものが将来どのような形になるか、それを大臣も頭の中に想定をされて今度の法律提案ということでありましょう。あるいは、OECDの理事会勧告、OECDが示している八原則というものもございます。まあ、世界の常識と言っていいんでしょうか、世界の潮流と言っていいんでしょうか、そういうものも恐らく念頭に置いての今回の法律提案であろうかと思いますが、それを踏まえてよろしくお願いをいたします。
竹中国務大臣 先ほど逢沢委員が、IT社会の重要性、その意義について非常に詳しく御説明をくださいました。まさに、ITの時代というのは、別な言い方をすれば、私たちの情報をデジタルな形で持って、デジタルな形で送って、デジタルな形で処理するということが技術的に極めて容易になった時代であるということに尽きているのだと思います。そういった観点からいいますと、個人の情報というのがデジタルに容易にだれにでも処理されるような環境が出現したことによって、個人の人格権というものを本当に問い直さなければいけない時代になったということが、世界的にこれは共通の認識として持たれたということなのではないかと思います。
 したがいまして、一九九〇年代に入って、アメリカ、ヨーロッパ、アジア等の多くの国で、そうした意味での個人の人格を守るための法整備が必要だ、法的枠組みが必要だということが非常に広く認識されるようになったということだと思っております。同時に、しかし、私たちの社会には、表現の自由、報道の自由、守らなければいけない重要な価値があるということも十分に認識をしております。個人の人格権を守る、しかし、報道の自由等々と両立させる、その非常に狭い道を探らなければいけない。これは大変難しい問題でありますが、各国が共通して直面している問題であるというふうに思うわけでございます。
 そうした観点からいいますと、今回の法案といいますのは、その狭い道を一生懸命模索した結果であって、先ほど申し上げましたように、政府としては最善のものと考えるものを出させていただいているということでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 平成十一年に住民基本台帳法の改正案が成立をいたしたわけであります。随分あのときも議論がありまして、時間もある程度かかったわけでありますけれども、一生懸命審議をしてこの法案を通した。先ほど片山大臣が、官の側、行政の側もしっかりとしたネットワークを活用する、そのことがいわゆる行政の効率といいますか、生産性を上げていく、ひいては国民の利益に供する、そういう趣旨の御発言をいただいた。その趣旨に沿った住民基本台帳法の施行でなくてはならぬ、そんなふうに思っているわけでありますが、その法律案を審議する過程で、こういう住民基本台帳法が動くということになれば、それに相呼応する形で、やはり個人情報というものがしっかり保護されなきゃいけないじゃないか、こんなふうな議論が、当時の地行委員会なんでしょうか、間違っていたらちょっと訂正をいただかなきゃなりませんが、与野党挙げてのそういう認識であったというふうに私どもは認識をいたしているわけであります。
 改正住民基本台帳法を議論した際の経緯、そこから、ある意味では個人情報保護法という考え方、あるいはこれはどうしてもやらなければいけないという政府の姿勢というものがスタートしたと言っても過言ではないというふうに認識をいたしておりますが、改めて政府側からその経緯について説明をいただきたいというふうに思います。
竹中国務大臣 経緯についてのお尋ねでございます。
 委員御指摘のように、法案を立案することとなった一つのきっかけは、平成十一年の住民基本台帳法改正法案の国会審議の際に、先ほども申し上げました附則第一条第二項に次のような旨の規定が追加されたことでございます。「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」この附則の措置は、同法の問題とは別に、民間部門における個人情報保護法が整備されていないこと等を背景に、民間分野をも対象とする包括的な個人情報保護法制の検討が求められたものであるというふうに理解をしております。これは、先ほど御指摘ありましたように、国際的にも整合性を持った個人情報保護法の整備が急務になっているという背景もございます。
 これらを踏まえまして、平成十一年七月に設置されました個人情報保護検討部会及び平成十二年一月に設置されました個人情報保護法制化専門委員会において専門的な検討を進めまして、その結果を最大限尊重しつつ、この法案を立案したところでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 改めて、今法律案の提出に至る経緯について確認ができたというふうに思います。
 どうぞ参議院の方に対応ください。
 担当両大臣が参議院に対応されるわけでありますが、引き続き質疑を続行させていただきたいというふうに思います。
 さて、そこで、ではどんな手法、手段で個人情報をしっかり保護していくのか、いわゆるシステム設計、そのことに議論を移してまいりたいというふうに思います。
 先進諸外国、さまざまな法制を持っているようでありますけれども、伺うところによりますと、いわゆるEUに代表される包括立法方式、オムニバス方式、それからアメリカに代表される個別立法方式、大別すればこの二つの形態があるというふうに解説をされているようでありますけれども、我が国がいよいよこれから法制化しようとしている個人情報保護法案はどんなシステム設計になっているのか。EU型に近いのか、あるいはそうでもないのか、両方のいいところをミックスしているのか、そのことについて確認をしておきたいというふうに思います。
 また、やはりいろいろな考え方があると思うのですね。個別の業法でしっかりその中に書き込んでおけばいい、むしろその方が実用的であるといったような議論もあるということは承知をいたしているわけであります。今回我々が議論をしている法案はそういう形になっていないというふうに承知をしておりますけれども、どうしてそういう手段をとらなかったのか、あえてそのことについても明確な答弁を求めたいというふうに思います。
松下副大臣 個人情報保護制度の立法形式、今逢沢委員のお話しのとおりでございますけれども、諸外国の例を見てみますと、事業分野を特定せずに包括的に立法するEU型のオムニバス方式というのがございます。これは、一つの法律で公的部門と民間部門の双方を対象とするということですけれども、それと、もう一つは、個人情報の保護の必要性の高い特定の事業分野ごとに立法するアメリカ型のセクトラル方式が見られるわけであります。
 我が国では、IT化は社会全般にわたり進展しているというふうに認識しておりまして、セクトラル方式では個人情報の保護に欠ける分野が生じてしまうことになるというふうに考えました。このために、まず、民間のあらゆる事業分野を包括的に対象として必要最小限度の規律を設けることとして、その上で、保護の必要性の高い分野については、本法の規律を上回る措置を講じるための個別法を組み合わせるなどの、それぞれの分野の保護の必要性に応じた包括的でありながら多段階の実効的な制度を整備することとしたわけでございます。
 加えて、民間部門の制度につきましては、個人情報取扱事業者の自律性、それから民間団体による自主的な取り組みを尊重した制度としているということでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 次に、監督機関のあり方について、これも確認をいたしておきたいというふうに思います。
 ここもいろいろな立場の方から議論をいただいているところというふうに承知をいたしておりますけれども、考え方の一つとして、新しいいわゆる第三者機関を設置して個人情報取扱事業者の監督に当たった方がいいのではないか、そういう議論がある。議論があるということは承知をいたしておりますけれども、あえてその第三者機関を置かない。これは行革という一つの大きな思想といいますか考え方もあるんだろうというふうに思いますけれども、そうではなくて、いわゆる業界、業を所管する事業所管大臣を主務大臣として今回の個人情報保護法の実効性をあらしめるという体系といいますか、考え方に法律は整理をされているわけであります。
 なぜこのような体制をとるということを選択なさったのか。非常に大切な部分だというふうに思います。それぞれの大臣のグリップの握りかげんに差が出てくるかもしれない。あるいは、大臣とて永久、永遠、不滅ではありませんよね。一内閣一大臣なのかわかりませんけれども、個人差というものがあってはならない。そういうものをどういうふうに確保、担保していくか。もちろん、そういうことを考えれば、第三者機関においても人が変わるという面では同じかもしれません。
 メリット、デメリット、あるいは両方の方式に、この部分ではこっちが有効だ、ここはちょっと課題があるけれどもこんな手段でカバーをすべきではないか、恐らく政府内でもそういう議論があったはずでございますけれども、国会に対し、国民に対し、わかりやすくそこのところを説明いただく必要があろうかと思います。よろしくお願いをいたします。
若松副大臣 まず、先ほど、官房長官または竹中大臣等から個人情報保護を中心とする説明がなされましたので、私どもは、行政機関に対する個人情報保護について説明をさせていただきまして、そして松下副大臣から同様の補足的な説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる個人情報保護と行政機関ということを比較いたしますと、個人情報保護法は当然民に関係するものでありまして、行政機関の方は官ということで、よく受ける批判が、民に厳しく官に甘くというふうに私どもは理解しております。
 それではそうなのかということでありますが、まず行政機関等の法制につきましては、民に比較いたしまして、まず、対象となる個人情報が、ペーパー、紙にいわば散在しているわけでありますが、そのような散在的に記録されているものにも拡大しております。そして、二番目といたしまして、行政機関の長の判断基準、手続を明確かつ厳格に定めております。三番目といたしまして、個人情報ファイルごとの区分管理を求めているなど、公的部門にふさわしく厳格に制度化している。
 それで、ちょっと関係している質問なので、後ほど松下副大臣からありますので。
 かつ、罰則でありますが、一番目といたしまして、行政機関につきましては、まず、個人情報のうちの個人の秘密漏えいに関しては、既に国家公務員法に守秘義務と罰則が設けられておりまして、これは国家公務員法第百九条で一年以下の懲役、それに対して民がこの法律の第六十一条の六カ月以下の懲役という形で、国家公務員に対する罰則規定も大変厳しく取り扱っております。
 一方、民間につきましては、いわゆる一般的な守秘義務はなくて、漏えい行為等に対しても、まず自主的な是正を求めておりまして、直接罰則で担保する仕組みは設けていない。
 以上の観点から個人情報保護及び行政機関の個人情報保護の比較をさせていただきました。
松下副大臣 本法の義務規定では、各事業者がその事業活動の遂行に際して遵守すべき個人情報の取り扱いを規律するものである。これは何回も申し上げたところであります。
 我が国では、既に各府省はそれぞれの所掌に応じて各事業者の活動に関する行政事務を分担しているところでありまして、事業活動に伴う消費者等の個人情報の保護に関する事務は、既存の事務と一体的に遂行することが合理的かつ効率的である、こう考えております。
 なお、新たな第三者機関の設置については、これは、既存の行政機関と事務が競合する、屋上屋を架することとなるのみならず、責任関係も不明確になるおそれがある。加えて、地方組織を含む膨大な組織の整備は行政改革の方向性にも反するということで、現在のような形にしたわけでございます。
 欧米等の事例もいろいろ研究しておりますけれども、裁判制度等の基盤となる制度も異なっておりまして、事前規制、届け出登録制度をとっているところもあるということで、各国によりいろいろな対応があるように聞いております。
 以上でございます。
逢沢委員 行政機関が持つ個人情報の保護に関することで、若干、先ほどの若松副大臣の答弁と重なるところがあろうかとも思いますけれども、大事なところでありますので、あえて質問を続けさせていただきたいと思います。
 いわゆる行政の民間との比較ですよね。ここのところが随分議論になっていると思うんです。民間部門に対する規律とどこがどういうふうに違うのか、きちんとここは整理をしておく必要があるんだろうというふうに思います。
 例えば、民間は何が規律の対象になるのか。端的に言えば、いわゆるデータベース化された個人情報ですよね。一つ一つの、個別のばらばらじゃなくて、体系的に整理をされた、データベースになった個人情報というものが言ってみれば対象なんだということがはっきりしているというふうに理解をいたしております。
 じゃ、行政機関の場合は、その対象というものがどういう整理になっているのか。そこはやはりきちんとしておく必要があると思うし、国民の間に誤解があってはならない。もちろん、行政機関で活躍される方の間に誤解があってはならないことは当然でありますけれども、そこを副大臣、明確にしておいていただく必要があると思う。
 あるいは、民間の場合は、先ほど申し上げたデータベース化された個人情報全体の包括的な利用目的等を公表する制度という位置づけでございますけれども、じゃ、行政の場合はそこがどうなのかということもはっきりしていただく必要がある。不開示等の基準、あるいは開示請求の手続、このことはどうなっているんだろうかということについても、あわせて御答弁をいただきたいというふうに思います。
若松副大臣 先ほど、民間部門と行政機関等の包括的な説明をさせていただきましたが、今逢沢委員の方からいわゆる個別的にということで、基本的な考え方、対象となる個人情報、規律の対象者、または開示、訂正、利用停止請求制度の基準、こういった観点から比較の説明をさせていただきます。
 まず、基本的な考え方でございますが、民間部門というものに対しては、個人情報の取扱事業者の自主性、自律性を尊重する、かつ、個人情報保護の観点から必要かつ最小限の規制を確立、このような観点に立っております。
 行政機関等につきましては、行政の公開性、透明性の向上の観点を加味いたしまして、個人情報の取り扱いに関し、個人情報保護の観点から厳格に制度化しております。
 対象となる個人情報でございますが、民間部門は、一定規模以上の体系的に整理された個人情報、いわゆるデータベース化された個人情報が中心となるということでありますが、行政機関等につきましては、行政機関の保有するすべての個人情報、先ほども御説明しました散在情報も含まれております。
 規律の対象者につきましては、個人情報取扱事業者ということで、これは報道機関等は適用除外となっております。それに対して、行政機関等は、すべての国の行政機関及び独立法人等というふうになっております。
 そして、開示、訂正、利用停止請求制度の基準等でございますが、民間部門は、必要かつ最小限の不開示等の基準、手続、具体的には事業者が定める、このようになっていることに対しまして、行政機関等は、不開示等基準、請求手続等について、透明性の向上の観点から明確化している次第でございます。
逢沢委員 整理をして体系的に御答弁をいただいたというふうに思うんですが、もう一つ、重ねて申し上げておかなくてはならないことは、いわゆる個人情報取扱事業者、民の方、民間の方は罰則があるんですよ。きちんとこれは、個人情報取扱事業者の義務ということで、時間の都合もありますので長々とは申し上げませんが、いわゆる義務規定に違反した場合は主務大臣による勧告、命令、命令に従わない場合の罰則を規定する、そういうことになっている。
 それに対して、行政機関というのは罰則がないではないか、民にはこういう罰則があって、罰則があるのは民だけでいいのかと。民と行政は、もちろんその性格あるいはまた活動の目的は違うわけでありますけれども、しかし、こんなことがあってはならぬわけでありますけれども、何か悪意を持って対応する公務員がいないとも限らない。そういうことは国民はすぐ想定をするわけであります。
 そういうところから、やはりどうも国のやることは民にきつくて官に甘いのか、ちょっと短絡的な受け取り方ということになるのかもしれないけれども、一般にどうもそういう誤解を与える危険性もある。誤解があるとすぐその誤解を解かなきゃいけないわけでありまして、そこの部分についてきちんとした説明をしていただかなきゃならない。別のことで何か担保されているのか、そういうことについてはっきりとした答弁をお願いいたしたいと思います。
若松副大臣 罰則に関する民間と行政機関の比較の説明でございまして、これは大変国民の皆様の関心があるところでありますので、先ほどの説明と重複するところがあるかと思いますが、重要な点ですので、再度説明をさせていただきます。
 まず行政機関についてでありますが、まず個人情報のうち個人の秘密の漏えいに関しましては、先ほど申し上げました国家公務員法等に守秘義務と罰則が設けられております。あわせて、個人情報そのものの漏えいを本法案で禁止しておりまして、その違反は国家公務員法等に基づく懲戒処分の制度で担保されております。
 一方、民間につきましては一般的な守秘義務はございませんで、漏えい行為等に対しても、まず自主的な是正を求めておりまして、直接罰則で担保する仕組みは設けておりません。
 以上の点を比較いたしますと、行政機関に対してより厳格な制度をしいていると私どもは理解しておりまして、官に甘いとのいわゆる一般で言われているような指摘は当たらないと理解しております。
逢沢委員 行政の方には、個人情報の漏えいに関しては、既に国家公務員法にきちんとした守秘義務があるし罰則もあるんだという御答弁をいただきました。大切なところだろうというふうに思います。当然のことでありますが、国家公務員法がきちんとワークをする、そういう仕組みといいますか体制づくり、しっかり対応をいただきたいということを指摘いたしておきたいと思います。
 さて、我が党の持ち時間、あと三十分弱ということでございますが、渡辺先生にかわる前に、最後の質問をさせていただきたいというふうに思います。
 いわゆる、今議論をいたしております個人情報保護法案、行政機関が持つ個人情報を保護する法律案とメディアとの関係であります。
 若干、冒頭、竹中大臣が答弁の中で触れられたわけでありますけれども、個人情報の保護、あるいは言い方を変えればプライバシーの保護と、いわゆる報道の自由、表現の自由、自由な取材、あるいはまた言論の自由、そういう表現もあろうかと思います。これをいかに両立させていくか。非常に大事な観点でありますし、また、この部分について国民の各界各層からさまざまな議論が沸き起こっている、あるいは、率直に申し上げて懸念もいささか表明をされておるということは、私も承知をいたしておりますし、両副大臣初め政府側もそのことは十分認識をされておるというふうに思います。
 もちろん、法律の中にはきちんと、報道や政治、宗教、まあ学究、研究、そういうものは義務規定は適用除外をされている、そういうこともきちんと法律には明記がされているわけでありますが、なおその上でという議論が非常に厳しいということは率直に指摘をしておかなくてはならぬというふうに思います。
 この個人情報の保護といわゆる表現の自由、報道の自由をどうやって両立させていくか、また、両立ができるという判断、あるいはまた法律の体系になっているというふうに承知をいたしておりますけれども、どうぞ的確に、そしてまた簡便に、このことについてきちんと国民に説明をいただきたいとお願いをいたしておきたいと思いますし、また、この部分については、恐らく今後もこの委員会審議の中で、お互いもう少し突っ込んだやりとりを、与党の立場としてもしていかなくてはならぬという思いも持つわけでありますけれども、まず、審議冒頭といいますか審議初日に、このことについてきちんとした答弁を求めておきたいというふうに思います。
松下副大臣 大変大事なところでございます。
 この法案は、さきの本会議におきましても小泉総理も答弁されているとおりでございまして、表現の自由を侵害するものでもなく、またメディアを規制するものでもないということでございます。
 この法律案は、IT化が進展して個人情報がITにより処理されている状況下におきまして、個人情報を利用する有用性に配慮しつつも、個人の権利利益を保護することを目的としたものでございます。憲法十三条でも個人の人格権尊重がありますし、二十一条で表現の自由の保障ということがあるのも、このことを申し上げているところでございます。
 法案においては、メディアを含む万人を対象とする基本原則を定めておりますが、これは各人による自主的な努力を求めるにとどめておりまして、公権力による関与や罰則も一切ございません。また、報道分野につきましては、事業者に対する義務規定や主務大臣の監督を一切排除しているとともに、取材の相手方等に対する主務大臣の監督に関しても、表現の自由を妨げることがないよう配慮義務を明記してございます。
 このように、本法案は、表現の自由を侵したり、またメディアを規制するものでは全くないというふうに考えております。
逢沢委員 ありがとうございました。
 それでは、同僚議員に交代をさせていただきます。
大畠委員長 これにて逢沢君の質疑は終了いたしました。
 次に、渡辺具能君。
渡辺(具)委員 自民党の渡辺具能でございます。引き続き、与党として質問させていただきます。
 逢沢委員の質問の最後に、表現の自由と、人権といいますか、基本的人権といいますか、あるいは人格権という言い方も最近あるようでございますが、この二つの調整というか、そういう問題について質問がありました。私は、今回の法律の一番基本はこの論点ではないかというふうに思うわけです。いろいろな個別の話が出たとしても、最後は、この二つに対してどういうふうに考えていくかということがこの法律の議論の一番根本をなすものだというふうに思っております。
 そして、その点について、今この法律が提案された中で、いろいろな議論がなされております。特にマスコミはそういう観点から反対のキャンペーンを張っていると言ってもいいぐらいであります。私は、こういうことによって国民的な議論になる、議論が深まるということは大変いいことだというふうに思っております。
 ただ、難しいのは、表現の自由側の当事者がまさにマスコミでありまして、マスコミを使って国民的議論をする中で、マスコミ側が当事者であるだけにこの問題の難しさがあるのではないかというふうに思うわけです。したがって、マスコミも大変この記事の書き方については難しいというか、慎重にやっていただいているんだろうというふうに思うわけであります。
 国の法律を今から決めるわけでありますから、法律というのは、なるべく一人でも多くの方々の賛成を得ながら制定されるべきものだというふうに思うわけでありますが、今の状況を見ますと、少し残念な感じがするわけであります。いろいろな人がいろいろなことを言っておりますが、議論が深まるというよりは、言いっ放しじゃないかな。それに対する議論が深まるというところまではなかなかいっていない。特に、この法案を提出された役所側とマスコミ側の議論が深まることが一番いいことだというふうに私は思っております。
 したがって、最初に今回のこの議論について率直な感想を申し上げると、マスコミと政府がもう少し対話を深めることができないんだろうかという思いがするわけでございます。この法律の趣旨なり具体的内容について理解を深めるために、マスコミと政府がもっと対話できないだろうかということを思うわけでありますが、このことはまた後でお尋ねしたいというふうに思っております。
 先ほどから申し上げておりますように、この法案の基本的な論点は、憲法十三条に言われておる基本的人権と、二十一条ですかね、表現の自由、あるいはその周辺もありますが、この二つの衝突の問題であります。この二つの価値はどちらも重要であります。表現の自由が侵された社会というのはまさに暗黒の社会であります、恐怖の社会であります。したがって、特に当事者であるマスコミが心配し過ぎるぐらい心配するのも、私はむべなるかなという感じがするわけであります。しかし、また一方、基本的人権の重さも、これは比ぶべくものもないぐらいに重いわけであります。
 したがって、我々ははたと困るわけでありますが、こういう言葉がありますね。ペンは剣よりも強しというふうに言いますが、だからといって、ペンは基本的人権よりも強いというふうに言えるでしょうかということがこの法律の論点ではないかというふうに思うわけです。したがって、この委員会の場を使ってその点に関する十分な議論をすべきではないかというふうに私は思います。
 ところが、今マスコミの論調は、非常な反対の論調であります。しかし、マスコミの方々も、自主規制は必要である、あるいは、自主規制といいますか、先ほど申し上げている二つの大切なことについて調整を図る法律の制定も必要であるということをその公器の中で言っておられるわけであります。ところが、そういう立場に立ちながら、どうも論調は、政府が提案している法律をはなから問題にしないというか、出直してこいというような論調があるのはいかがなものか。
 これは、政府もいろいろな専門家を交えて、いろいろな専門家の意見を聞いて、長い時間をかけて、脂汗を流しながらこの法律案をおつくりになったんであろうというふうに私は思うわけです。したがって、せっかくこうやって努力の末提案された法律案に対しては、やはり具体的に、建設的に、この論点を明らかにしながら議論を深めることが大切ではないか。はなから問題にしないとか出直してこいとか、そういう論調があるとすれば、私は、ややどうかなというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、先般、読売新聞がかなり具体的に、自分のところの提案も含めて提案がありました。私は、この提案は、この論争というかこの議論に一つの潮目をつくることになるのではないかというふうに思います。非常に議論が具体的、建設的になるという意味では極めて大きなきっかけになるのではないかというふうに思い、また評価もするわけであります。
 今まで私が申し上げてきたような論点で一番問題になるところは、この個人情報保護法案の四十条が一つの大きな精神になるというふうに私は思います。
 この四十条について、先般の読売新聞は具体的に提案をしておりまして、四十条は、政府の原案でいくと、表現の自由などを妨げてはならないことに「配慮しなければならない。」というふうに配慮義務規定になっているわけでありますが、読売新聞は、この「配慮しなければならない。」というところを切って、「妨げてはならない。」というふうに断定的にすべきであるという提案がなされておりました。
 私は、先ほどからくどく申し上げているこの二つの大切な権利についての議論でありますから、この辺についてぜひとも政府側の見解を示していただきたいと思うわけであります。
 先に、私の感じでありますが、読売新聞の提案である「妨げてはならない。」という断定的な言い方をしてしまうと、私は、やはり基本的人権の重さをやや軽く見ることになりはしないかという心配があるわけであります。しかし一方、「配慮しなければならない。」というふうに言うと、マスコミが心配だというふうにおっしゃるのは、やはりそうかなという気もしないわけではありません。
 我々は、いろいろな議論を聞いて、国民の負託を受けた議員として賛成か賛成でないかを決するわけです。私は正直に申し上げて、議員としても、賛成であるか賛成でないか、一〇〇%賛成だとか一〇〇%反対だとかいうことではなくて、やはりその中で葛藤しながら、どうもこの部分はどうかなということもありながら、最後はやはり大切なものを考えながら我々としても意思を決定するわけであります。
 そういう意味で、この辺は、いずれにしても、表現の仕方としてなかなかどちらがいいということは難しいところがある。だからといって、「配慮しなければならない。」よりももっといい表現があるかなと言われると、私もなかなか具体的には思い当たらないわけであります。そういう大変難しい問題だというふうに思うわけであります。
 そこで、この辺で質問にさせていただきますが、今まで私が申し上げたこと、いろいろなことを申し上げましたが、表現の自由と基本的人権の対峙の問題、あるいはマスコミの論調の問題、特に、この四十条において、「主務大臣は、」云々について「配慮しなければならない。」というふうにしておりますが、この条文に決定されるまでに至る背景だとかこの条文に込められた意図とか、そういうものも私はこの大変大切な論点であると思うだけに、この辺についてしっかりした政府の答弁をいただきたいというふうに思います。
松下副大臣 渡辺委員御指摘の憲法十三条の個人の人格権尊重の問題、そしてまた二十一条による表現の自由の保障の問題、これは大変本質的で大切な問題であるというふうに認識をしております。そういうことで、この法案の第三条には、基本原則の性格として、個人情報が個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものであるということにかんがみて、個人情報を取り扱う者は、以下に規定する基本原則、五つございますけれども、にのっとり、個人情報の適正な取り扱いに努めなければならないというふうに書いてあるわけでございます。
 我が国憲法のもとでは、保障された表現の自由、学問の自由、それから信教の自由、及び政治活動の自由が尊重されなければならないということは、これは当然のことであるわけであります。この第四十条は、主務大臣がこれらの自由を妨げるような報告の徴収、助言、勧告または命令を行ってはならないということを定めたものでございます。
 本条におきましては「配慮しなければならない。」との文言を用いておりますけれども、これは、国の関与が直接表現の自由等の侵害をもたらす場合のみならず、これらの自由を妨げる可能性がある場合には主務大臣が権限の行使を行うことのないよう幅広く主務大臣を制約しようとするためのものでございまして、憲法十三条に言う個人の人格権尊重、二十一条の表現の自由の保障、これは大変大切なものとして認識している、そういうことでございます。
渡辺(具)委員 法律の制定もさることながら、私は、やはり運用上も十分慎重に、気をつけて、大いなる覚悟を持って、仮にこの法律が制定されたとすれば事に当たっていくべきだというふうに思います。
 この問題について、先ほど私も申し上げましたが、メディアも自主規制が必要だということで、もう十年ぐらいになるんでしょうか、そういう流れの中で努力をしてこられたというふうに思うわけであります。私は、本当を言うと、この自主規制の努力がもう少し進んでおったら、また別の展開にもなったのではないかという気もいたします。また、メディアの方も、こういう法律は必要だ、自主規制を促すような法整備も必要だということも言っておるわけであります。
 そこで、今回の個人情報保護法案は、五つの基本原則というものを書いて自主的な取り組みを求めるという形になっております。これは努力規定でありまして、私は、そういう意味では、マスコミが言っておられる自主規制の実態と基本的な部分についてはそれほど変わらないのではないかというふうにも思うわけです。自主規制しなけりゃいけないというふうにおっしゃっているわけだから、この基本原則を守ることについては、私は、実態的にはそんなに大きな差がないのではないかというふうに思います。
 しかし、そうはいいながら、こういう法律を書くということはある種の法的効果がないわけではないわけであります。仮に、この法律が制定されて、基本原則の努力規定に関して訴訟を直接起こすとか、そういうことは私はないんだろう、できないんじゃないかというふうに思うわけですが、その辺に関する政府の考え方を聞かせていただきたいというのと、しかし、何らかの法的効果はあるわけで、どういうところにそういう法的効果があらわれるのかというところをやはり我々としては考えていかなきゃいかぬ。
 例えば、ほかの法令に基づいて訴訟になった場合に、今回の法律がやはり裁判を進めていく上でかなり影響力があるかないかとか、どういうところに影響力があるのかとか、そういうことを慎重に考えておく必要は、私はこれだけの法律を、さっき私が申し上げたように、憲法に規定されている二つの衝突の問題であるわけでありますから、そういう難しい問題についてもぜひ検討を加えておく必要があると思うんですが、その辺について政府はどういうふうにお考えでしょうか。
松下副大臣 基本原則の問題でございますけれども、先ほどもお話し申し上げましたけれども、報道目的を含めた個人情報の有用性に配慮しつつも、個人情報を取り扱うすべての者が個人情報の適正な取り扱いについて自主的に努力することを求めるものであるということを書いてあるわけでございまして、何回も申し上げておりますけれども、この基本原則に基づいて具体的な義務が課されたり、公権力の関与や罰則が適用されるものではないということを繰り返し申しているところでございます。
 それからまた、基本原則によって、取材源の開示等の問題もお話がありますけれども、具体的な義務が課されるものではないことから、報道機関の取材それから報道活動の制限となるものではないというふうに考えておりますから、よろしく御理解いただきたいと思います。
渡辺(具)委員 今の答弁のほかにもう一つ、他の法令に基づいて訴訟が起きた場合、この法律の法的効果はどういうふうに考えておられるかという点については。
藤井政府参考人 努力義務違反があった場合に訴訟を起こすことができるかどうか等についてお答えいたしたいと思います。
 今副大臣から御答弁があったとおり、基本原則に違反したといってもそれは努力義務違反になっただけでございまして、それでもって具体的な権利義務関係が新たに発生するものではないというふうに考えております。したがいまして、それに違反したからといって直接だれかが権利利益侵害されたわけじゃないものですから、一般的にそれをもとに訴訟を直接起こすことはできないというふうに考えております。
 ただ、従来、別途プライバシー事件が既に発生していて、その事件に基づいて、例えば民法上の不法行為に基づいて損害賠償が請求されていたりあるいは刑法に基づいて名誉毀損の訴えがなされていたりする場合がございます。
 そういった中で、争点の一つとして、例えば取材方法が適法であったか、適正であったかということが挙がっていたりする場合は、学者の方の中には、そういった場合は裁判所の解釈原理になるのではないかというような御指摘があります。そういうことは私どもあり得るとは思っておりますが、ただ、いずれにしても、それは取材等が違法であったかどうかという場合の一つの判断根拠であって、それをもって即損害賠償請求あるいは名誉毀損というようなものの法的効果の構成要件に影響するというものではないというふうに考えております。
渡辺(具)委員 最後は裁判権にゆだねられるとは私も思いますけれども、そこがやはり国民にとっても非常に関心事でありますし、できたらまた次の機会にもう少し深めた議論を私はやる機会を持ちたいなというふうに思っております。
 それから、私は最初に、国の法律をつくるわけですから、一人でも多くの方々の賛成を得てこの法律は制定されなきゃいけないと思っているというふうに申し上げました。そういう意味で、今のマスコミとの対立と言うと言葉が悪いのかもしれませんが、そういう関係になっているのはやはり悲しむべき状態であるというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、もっと政府はマスコミの方々などと、ほかにもあるかもしれませんが、対話を深めていくことが本当にこの法律を制定させる意味で大切なことではないかというふうに私は思うんです。今までは言いっ放しで、どちらかというと、マスコミはその手段を持っておられますので、やや一方的かなという感じがして、政府の見解がなかなか伝わりにくいということもありますが、この両者が対話を深めるということが大切ではないかというふうに思うんです。
 これまで、この法律案をつくる上で、一生懸命対話を進められたと思うんですけれども、どんな対話を進められてきたか、あるいは今後さらに対話を進めて理解を求めていかれる決意があるかどうか、この辺について伺いたいと思うんです。
 それで、今マスコミの方でもいろいろなシンポジウムなんかを開いて、有識者あるいは国民代表みたいな方もあるのかもしれません、あるいは政府も時には加わっておられるようでありますが、そういうシンポジウムが開かれております。そういうものは大変いいことだし、これからも大いにやっていただきたいというふうに思いますが、私は、先ほども申し上げてあるんですが、この問題で大変難しいのは、マスコミが当事者なんですよね。マスコミが当事者であるところに国民的な議論を展開する場所としてのメディアの使い方が非常に難しい、使われ方と言った方がいいかもしれませんが、非常に難しいと思うんです。
 だから、ちょっとくどいようですが、例えば新聞社がシンポジウムをお開きになるのももちろんいいんだけれども、それはやはり当事者が決めた場所とメンバーと箱の中というか、そういうところじゃない、第三者的な方々がそういう対話を深める場所を持つことが大切ではないか。我々もこの委員会で参考人質疑をすることにもなろうかと思います。我々としてもそういういろいろな方々の意見を聞く機会もあるんですけれども、それも必要でありますが、私は、政府とマスコミの対話を何らかの方法で深めることができないか。そして、まず我々のこの委員会でこの法律に賛成するかどうかを決める。我々はその委員であるわけでありますから、この両者の対話を我々が直接見たり聞いたり考えたり、あるいは参加できるというようなことが、これだけの重要法案ですから、あればいいなというふうに私は思うわけであります。
 そういう政府とメディアの対話を深めていくことについて、これまでどういう努力をしてこられたか、今後どういう決意で、この法律をつくるためにどんなつもりでお臨みになるつもりか、その辺についてお伺いしたいと思います。
松下副大臣 大変大事なことだ、そう考えております。この法案は、マスコミのみならず、広く国民の理解を得ていくということが大事だというふうに考えておりますし、今後とも、メディアの人たちとの対話、それから国民の方たちに理解していただくような、そういう努力というのはあらゆる機会をとらえてやっていきたい、こう考えております。
 今までの法案作成過程におきましても、高度情報通信社会推進本部、現在、これがIT戦略本部に改組されましたけれども、そのもとに置かれておりました個人情報保護検討部会それから個人情報保護法制化専門委員会を通して、計三度にわたってマスコミ関係団体からヒアリングを行ったというふうに聞いております。また、各団体に対しましても、大綱でありますとか法案の内容について、これは個別に数度にわたり十分な説明、意見交換を行ったというふうに伺っております。
 法案が、広く国民の理解を得ることが必要だ、メディアの理解も得ることが重要であると考えておりますから、今提案のありました、政府としても積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。
渡辺(具)委員 これまでも努力をしてこられたということは理解できますし、これからも時間のある限り、この法律の制定のために、そういう実りのある対話を進めていただきたいというふうに思います。
 それから最後に一つ、先に個別法をやるべきだという話がありますが、私は、やはりこういうものは、最初に基本的な理念になる基本法を定めて、その後に、そういう基本理念が十分議論が尽くされた後で個別法というものを決めていく必要がある。特に十二条ですか、保護のための具体的な基本方針を施行までに定めることになっているようでありますが、そういう基本方針なども参考にしながら個別法というのは考えていかれるべきだというふうに私は思いますが、その点についてどうでしょうか、お答えいただきたいと思います。
 この質問をもって私の質問を終わらせていただきます。
松下副大臣 委員御指摘のとおりに、やはり一般法としての基本的な考え方、理念、そして基本原則といったものをまずきちっと整理していくということから個別に入っていくということは非常に大事だ、こう考えております。
渡辺(具)委員 ありがとうございました。
大畠委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。


2002/05/20

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