1997/05/01

戻るホーム目次


140 参院・決算委員会

吉川芳男議員(自民党)の拉致事件についての質問部分


○吉川芳男君 次に、横田めぐみさんに象徴される日本人拉致事件についてお尋ねいたします。

 まず、この事件について、その内容を簡潔に紹介しておきたいと思います。また、皆さんのところに見取り図等も配っておいたと思うのでございますので、御参照願いたいと思います。

 今から二十年前の昭和五十二年、一九七七年十一月十五日の放課後、新潟市立寄居中学校の一年生でありました横田めぐみさんがクラブ活動のバドミントンの練習の後、クラブの同級生女子二人と六時三十五分ごろ学校の正門を出て、一人は正門を出てすぐ別れ、いま一人と学校から約二百メートル海岸寄りの新潟大学教育学部附属小・中学校の十字路で別れたまま消息を絶ったという事件であります。

 その日の午後十時ごろ、母親の早紀江さんから新潟中央署に通報がありまして、中央署では警察犬も投入して大がかりな捜索を行い、また県警本部の機動隊、近隣の警察署も応援して広範囲にわたる海岸線の捜索を行い、新潟海上保安部による海からの捜索も行われたわけでございますが、めぐみさんの行方は杏としてわからないままでありました。

 ところが、最近になってわかったことは、韓国に亡命した元北の工作員安明進氏の証言によりますと、安氏が金正日政治軍事大学の二年生であった一九八八年十月十日、朝鮮労働党創立記念行事の準備会議の際、教員、職員の席の一角に、一見して日本人とわかる六、七人のグループがいたので、不審に思って丁という担当教官に尋ねると、あのうちの一人の女性は七〇年代半ばにおれが新潟から拉致してきた、日本へ三人で特殊任務に行き、帰りに新潟の海岸で迎えを待っているときに、顔を見られたので通報されるかもしれないと思って誘拐したと打ち明けられたとのことです。この女性は、年齢二十歳半ばで身長約百六十センチ、紺色のスーツ、白のブラウス姿、おかっぱ髪にふっくらとした顔つきだったということであります。

 めぐみさんの両親である横田御夫妻は、本年三月、この亡命工作員に会うためにソウルに行き、直接、安氏から証言を得ておられます。この模様は、五月号の文芸春秋に手記として掲載されておるわけでございます。

 安氏の証言によると、教官は、めぐみさんと思われる少女のほかにも、八〇年代初めに北海道から三十歳代の男性を拉致してきたこともあると自慢していたということであります。

 そのほかにも新潟県柏崎市では、昭和五十三年七月に柏崎図書館に自転車を置いたまま大学生と美容師の青年男女が消息を絶っております。

 そこで、まず警察庁にお伺いいたしますのは、先般、衆議院の西村眞悟議員の質問主意書に対する内閣答弁書によると、北朝鮮に拉致された疑いのある日本人の数は、これまでに六件九人であると明らかにされておりますが、この中には横田めぐみさんの事件は入っているのかどうか、お答え願いたいと思います。とお聞きする理由は、この事件が明らかになって以来、さまざまなマスコミが報道しておりますけれども、中でも毎日新聞は、拉致された人物と一つ一つの事件の概要を報道しております。これによると、八件十人になっておりまして、この横田めぐみさんの事件は答弁書の六件九人の中には入っていないという話もあるのでございますが、これほど公々然となっておる事件に対してなぜ当局は、件数、人数の発表だけで詳細は発表されないのか。

 しかも、ただ捜査のためあるいは本人の安全及びプライバシーの保護の観点から答弁できないと答弁書は述べておりまするけれども、横田めぐみさんの両親初め拉致者の関係者の大部分は、もう二十年もひっそりと沈黙を守ってきたが何ら事は前進していない、今後は政府や国会に積極的にお願いし、事件を解明したいと言っておるわけでございます。

 そういうことを思うとき、これはどうも政府の発表は全く国民の期待感をそぐような発表でございますが、もう少し具体的な調査報告がなされないものでしょうか。

○政府委員(伊達興治君) 北朝鮮による拉致の疑いのある事件は、従来、六件九人と判断していたところでございますが、これまでの捜査を総合的に検討した結果、御指摘の新潟県における少女行方不明事案も拉致の疑いがあると判断し、全体で七件十人と判断するに至ったところでございます。また、拉致が未遂であったと思われるものは一件二人であると判断しております。

 新潟における少女行方不明事案以外、これらの事例の内訳は、昭和五十二年に石川県警察が外国人登録法違反等で検挙した宇出津事件、昭和五十三年七月から八月にかけて福井、新潟、鹿児島の海岸で連続発生した三件のアベック行方不明事件、同年八月に富山県の海岸で発生したアベック監禁致傷事件、拉致未遂であります。それから、昭和六十年に韓国で検挙された辛光沫事件、それに李恩恵と呼ばれる日本人女性の事件であります。

 なお、これらの者の氏名及び失綜前の住所等につきましては、本人の安全あるいはプライバシーの保護等々の観点から答弁を差し控えさせていただきます。

○吉川芳男君 それから、このめぐみさんの問題は北朝鮮から韓国への亡命者の証言が端緒になっているわけでございますが、我が国と韓国との間には情報交換や捜査の協力が重要であろうと思うんですが、どうなっているのか承らせていただきます。

○政府委員(伊達興治君) 北朝鮮による拉致の疑いのある事件に関しましては、警察当局におきまして、韓国当局との情報交換も含めて関係各機関と連携しつつ所要の捜査を継続して実施しているところでありまして、今後ともかかる努力を継続してまいる所存であります。

○政府委員(加藤良三君) 外務省といたしましても、捜査当局における所要の捜査と並行いたしまして、韓国側を含む外交ルートを通じた情報交換を含め、各関係機関と連携しながら関連情報の収集に最大限努力をしておるところでございます。

○吉川芳男君 今のお二人の答弁は甚だどうも物足りないと思いますが、それじゃこの問題についてはどういうふうな見解を持っていますか。

 横田めぐみさんが消息を絶った翌年の昭和五十三年夏には青年男女のカップルが連続して行方不明になるという事件が相次いでいるのでございます。七月七日には福井県小浜市で、三十一日には新潟県の柏崎市で、八月十二日には鹿児島県で起こっております。そして、八月十五日には富山県高岡市の海岸でやはり若いカップルが四人組の男に襲われて、猿ぐつわや手錠などで縛り上げられた上に布袋をかぶせられて数十メートル離れた松林の中に運び込まれたけれども、犬の鳴き声に驚いた男たちはそのまま逃走したという事件が起きているわけでございます。

 これらの未遂を含めて四件の事件は、すべて青年男女のカップルであることと行方不明になった時刻は夏の夕刻であることから、同一のグループあるいは同一の訓練を受けた者のしわざとしか思えないのであります。また、富山県で起きた未遂事件の遺留品は日本で製造されたものではないということも明らかになっておりますが、そういうことについて警察庁はどういうふうに調べておられるのか。

 また、つい最近、五月一日号の週刊文春で日本海側で起きた事件について、これはヤマとかという暗号めいた言葉で言っているようでございますが、こういう事件はこれだけの資料があるじゃないか、政府は認めるはずだというふうに週刊文春は言っていまするけれども、一体この事件というのはどういうものであったのか、これらも含めてひとつ御説明願いたいと思います。

○政府委員(伊達興治君) 先ほど申し上げましたように、御指摘のそれぞれの事件、石川県の宇出津事件、それから福井、新潟、鹿児島の海岸での連続発生したアベック行方不明事件、富山の拉致未遂事件、それから韓国で検挙された辛光沫事件、李恩恵の事件等々、これらにつきましては、先ほども申し上げましたように、韓国当局との情報交換も含めて関係各機関と連携しつつ新たな関連情報の収集に当たり、また各事件相互の関連性の調査など所要の捜査を真剣に継続しているところであります。

 それから、通称ヤマと言われていると御指摘の内容でありますが、警察は公共の安全と秩序の維持という法令の定める警察の責務を果たすため、法令の定める所掌事務の範囲内で諜報通信に係る情報の収集、整理等は行っておりますが、その具体的内容につきましては、体制等も含め捜査上の秘密の保持という観点から答弁は差し控えさせていただきます。

○吉川芳男君 捜査上と言えばすべて発表しなくても済むという仕組みになっているのかどうかわかりませんけれども、やっぱり国会での知る権利とでもいいますか、そういうことも重要に考えてもらわなきゃならぬと思いますし、それでは、具体的な問題についてそれぞれそれが真であるか偽であるかということについて今答弁ができないなら、それら全体を含めて国家公安委員長である、日本の治安の責任者であります白川自治大臣に所見をひとつ承ります。

○国務大臣(白川勝彦君) ちょっと質問の趣旨がわかりませんが、この横田めぐみさんの件でしょうか、それとも全体に関する件でしょうか。

○吉川芳男君 全体です。

○国務大臣(白川勝彦君) 全体の件に関していろいろ情報を収集しておりまして、今、特にお尋ねの横田めぐみさんの件に関しても、所要の捜査の結果、今まではその辺については必ずしも北朝鮮による拉致の疑いがあるという断定はできなかったわけでございますが、そういう疑いが濃厚であるということで、先ほど答弁したとおり七件、十人でございますか、というふうにいたしたということであり、それらについては全体を含めて捜査をしているということであります。

○吉川芳男君 それでは、外務大臣にひとつお伺いいたします。三月に我が党の山崎政調会長を初め、与党三党の政策責任者が訪韓した際に、韓国の柳外相は、横田めぐみさんの事件については韓国としても調べてみると調査を明言されたと報道されておりますが、政府としては横田めぐみさん事件の真相解明について韓国側に協力を申し入れているのかどうか。また、真相解明についての日韓間の協力が確立されるならば、両国の捜査機関の情報交換活動がさらに有効に機能すると思いますが、この解明に向けた外務大臣の所見及び決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(池田行彦君) 横田めぐみさんの件につきましては、最近になりましていろいろな新しい情報であるとか、あるいは証言なども出てまいりました。そんなことにもかんがみまして、捜査当局とされても当然捜査を進められたわけでございますけれども、外務省といたしましても外交ルートを通じましていろいろ情報の収集に努めてまいりました。

 そういった中で、韓国の当局とも連携をとりまして、私どもいろいろな情報の収集等々に当たってきたわけでございます。そういったことを踏まえまして、先ほど警察庁の方から御答弁もございましたけれども、従来必ずしも北朝鮮による誘拐というふうには考えていなかった本件につきましても、その疑惑が非常に濃厚であるということが現在までの時点で出てまいりましたので、政府としてもこれを従来の六件に加え疑惑案件に入れたと、このように承知しております。

 今後におきましても、いろいろそういった関係の方面と連絡をとりまして、でき得る限り事件の解明というか、一番大切なのは行方不明になっておられる方の安全を確認し、そして御無事でおられることを、そして帰ってこられるということが実現するのが一番でございますから、難しい事情がございますけれども、外交ルートを通ずるいろんな協力等も含めまして今後とも最善の努力をしてまいりたいと考える次第でございます。

○吉川芳男君 外務大臣、事件解明については、二国間だけでなくて国連等国際機関に持ち出すとか、もう少し国際世論に訴えるとか、政府としてのあらゆる手段、方策を講じる必要があると思うのでございます。現に、この横田めぐみさん両親をアメリカにお連れして世論に訴えさせろという動きもあるんですね。そうなった場合には、これは日本の政府としてはいささかいかがなものかなと私は思いますし、そういうきちっとした態度が必要だろうと思うのでございます。

 こういうことは私も言いたくないんですけれども、北朝鮮への緊急食糧援助も大切でございまするけれども、数々の拉致疑惑に対する北朝鮮側の、今、全部帰してくれと言ったってこれはなかなか容易じゃないでしょうから、誠実な態度というものが見られない限り、国際機関等からの食糧援助の要請があっても、これは応ずるべきものでないと思いますけれども、外務大臣はいかがお考えですか。

○国務大臣(池田行彦君) この誘拐疑惑事件の解明、その際一番大切なのは、行方不明になっておられる方が帰ってこられるということだと私は思うのでございます。だから、ともかく事件の解明の努力をしながら、一方におきまして、その行方不明になっておられる方のまず安全というものが損なわれないように配慮し、その上でいろいろ努力をしてまいりたいと思います。

 そういう具体的な方法につきましてはいろんな手法が考えられましょう。例えば二国間の外交ルート、韓国につきましてはとりわけ新しい情報をお持ちになっているということで、我々もある程度表へ出ることも承知しながら進めてきたわけでございますが、それ以外にも委員御指摘のようにいろんな手法はあり得ると思います。そういったところを我々も考えながら今後とも最大限の努力をしてまいりたいと思います。

 ただ、安全を一番大切にしなくちゃいかぬというところがございますので、世論に訴えることはもちろんもとより大切でございますけれども、それだけに焦点を当てるわけにはいかぬと、どういう方法が最も効果的であるか、そういったところを捜査当局の方の御意見もお伺いしながら、よく考えてこれからも取り組んでまいりたい、こう思っております。

 それから、米の支援の問題でございますね。これはいろんな要素を考えなくちゃいけないと思っております。現在、WFP等の国連機関が人道的な観点から緊急アピールということで訴えておりまして、米国、韓国等々の国々はそれに応じておるわけでございますけれども、私ども、北朝鮮が大変深刻な食糧不足の状況にあるということはわかっております。それからまた、去年までそういった国連機関の人道アピールに応じて我が国も協力してきたわけでございますけれども、さあことしのアピールにつきましてどうするかはいろんなことを考えなくちゃいけないと思うんです。

 この北朝鮮の食糧不足というのは、去年、おととしあたりは異常天候に基づくものだと、こう言われたわけでございますけれども、どうもそれだけじゃないだろうと。食糧政策をも含めた経済運営の基本的なところに問題があるんじゃないか、構造的な問題じゃないか。そうなると、そういった毎年毎年、人道的観点で、緊急で、今回限りでということでいいのかということも、これも国際社会としても考えてもらわなくちゃいかぬだろうということもありますし、あるいはこれまでの経験にかんがみまして、支援したのはいいけれども、それが本当に人道的な観点から渡るべきところ、今回でも例えば子供さんだとか、こう言われておるわけですけれども、そこへ本当に行っているんだろうか、むしろそうじゃなくて軍事部門なんかに優先的に行っているんじゃないか。そういった透明性の問題なんということもいろいろ考えなくちゃいかぬということがあります。

 また、一方におきまして、やはり食糧の危機、それを含めた経済的にずっと逼迫していくという状況のもとで今の体制がどういうふうな道をたどるのか。場合によって、これが非常に暴発的なことになると安全の面でも問題がありはしないかというようなこと。あるいは中長期的に考えまして、朝鮮半島の安定というものは我が国を含めた近隣諸国、そして国際社会全体にとっても大切なことである。いろんな要素がありますので、我々も今慎重に検討しているところでございます。

 そういった中で、今回の拉致疑惑事件なんというのは、直接的にそれとリンクさせるというのはなかなか難しいところもございますけれども、しかし国民の感情として、気持ちとして、一方においてこういうことをあれこれ言われておる。それに対して北朝鮮としての、今委員もおっしゃいましたようなある程度の解明に向けて協力しようというような柔軟な姿勢、そういったものも見られないままに、一方、人道的考慮でございますから米を出せと言われても、これはちょっとなかなかという気持ちが国民世論の中にあるということは我々も考えざるを得ませんし、そういった意味で、北朝鮮も今そういったことに自分たちは関与しないんだと、こう言っているわけでございますけれども、それならそれで自分たちの方に何か行方不明者についての情報はないのか、そういったどころについていろいろ姿勢の変化が出てくるかこないか、そんなことも考えながら、今慎重に検討中である、こういうことでございます。

○吉川芳男君 いささか隔靴掻痒の感もありますけれども、今押し問答しても時間がありませんので、次に進ませてもらいます。

 次に、法務大臣にお伺いいたしますけれども、北朝鮮の貨客船万景峰九二号は新潟港に頻繁に出入りをしておりまして、平成八年の入港回数は三十一回に及んでおります。また、我が国への北朝鮮の貨物船の入港回数は、平成七年では四十五回、八年では三十一回であります。北朝鮮からの年間一万五千人以上の入国者の九八%以上が再入国者であって、北朝鮮と日本との間を在日朝鮮人は自由に往来を繰り返しております。

 そして、この自由な往来をいいことに、日本を舞台にあるいは日本を経由して韓国に潜入したり、北朝鮮の工作活動が繰り返されておりますことは、これまた文芸春秋新年号に「日本人拉致組織「洛東江」の二十年」でも明らかにされておるとおりでございます。

 一方、北朝鮮に渡った日本人妻と言われる我が同胞の問題は放置されたままで、日本への親族訪問は認められないこ乏になっているわけでございまして、これは大変な人道問題であり、また不公平きわまりない扱いだと思っているわけでございます。

 法務省は、法秩序と人権の擁護を最大の任務とされておると思いますが、法務大臣はどのような今御所見をお持ちでございますかということを尋ねますとともに、最近また、宮崎県の細島港に寄港の北朝鮮船籍の貨物船から大量の覚せい剤が発見されたことに関してどのように受けとめられているのか、入国審査は万全な体制で行われているのかどうか、この点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(松浦功君) お答え申し上げます。
 委員御指摘の件につきましては、御家族や御親族、関係者等の気持ちも十分に思いをいたして、できるだけ速やかに一時帰国等その希望がかなえられますように努力をしていくのが当たり前ではないか、このように考えております。

 また、麻薬の事件については大変残念なことで、そういうことに対しては厳正に取り扱ってまいりたいという気持ちでおります。

○吉川芳男君 それじゃ、この問題の最後に、内閣を代表して梶山官房長官にお伺いしたいのでございますが、梶山官房長官は国家公安委員長に就任されていた昭和六十三年三月参議院予算委員会で、「五十三年以来の一連のアベック行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚」として、「事態の重大性にかんがみ、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならない」と決意を述べておられたわけでございますが、今回明らかになった横田めぐみさんの事件を含めて一連の拉致事件に対する官房長官の所見と政府の対応について御答弁いただきたいと思うんです。特に、もう外務大臣からも御答弁の中にありましたが、北朝鮮の食糧事情に対しアメリカを初めWFP等国際機関よりの要請が高まる昨今でありまするが、いかなる方針で臨まれるのか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(梶山静六君) 事件の推移については今、国家公安委員会委員長から、そして当面の外交手段については外務大臣からそれぞれ話があったとおりであります。
 私が昭和六十三年、ちょうど事件が起きてから既に十年をたった時代でありますが、今でもこの北朝鮮による拉致の疑いが極めて濃厚であるという判断に間違いはございません。ただ、国交のない国で事実を確定することができる手段、方法を持っておりません。

 ですから、今、委員御指摘のように、韓国の極めて北朝鮮に対する情報網を豊富に持っているところからいろんな情報を提供願い、そしてあとう限り、これからの今の食糧援助その他もひっくるめて何が有効であるか、この問題解決のための手段、方法をこれから検討しながら進めていかなければならないと思っております。

 恐らく、総理が今回訪米をされたことでも、あるいは非公式か公式かは別として、いわゆる食糧援助についての話し合いが出たと思いますけれども、我々国民は極めてこの拉致事件等、人道に大きな影響を持つその疑いを北朝鮮に持っているという事実、それから今覚せい剤の話が出ましたけれども、これまた麻薬や薬物に対する極めて高い関心をお互いに国際社会で持っている、その北朝鮮からストレートに来たという事実、こういうものを見ればにわかに、国際世論の中で人道的な意味でということが言われるかもしれませんが、片や人道的なことをしているのかどうなのか、あるいは麻薬や薬物等をとにもかくにも資金源に調達をする手段としている北朝鮮に果たしてそういうものが有効なのかどうなのか、あるいはしなければならないのかどうなのかというのは国民の間にはたくさんの疑問があるわけであります。

 こういうものを整理しながらこれからの対応に努めてまいりたい、このように考えます。


1997/05/01

戻るホーム目次