2002/10/10-3

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衆院・外務委員会


松本(善)委員 質問順位を繰り上げていただいたことに、委員長並びに同僚委員にお礼を申し上げます。
 我が党の総理訪朝並びに日朝会談についての見解は前回の委員会で申し上げましたので繰り返しませんけれども、私は、二日に公表された政府の拉致問題に関する現地事実調査結果を拉致問題の真相解明に向けた第一歩だと考えております。日朝平壌宣言を踏まえた国交正常化交渉を進めながら、政府に引き続いて拉致問題の真相徹底解明の努力を求めるものであります。
 今後の真相解明につきましては、当然、拉致被害者の意向を十分酌んで、世論も考えながら交渉することが必要だと考えますが、政府の基本的な方針を伺いたいと思います。

川口国務大臣 拉致問題の解明というのは、今後、国交正常化交渉を再開して行っていくに当たっての最優先課題、最優先の事項であるというふうに考えております。
 これについて、政府の調査団が事実関係の解明のために先般行きましたけれども、まだ引き続き資料の要求をいたしております。また、現在、持ち帰ってきました情報や資料を分析、解析をしている最中でございまして、それに基づいて、またさらなる、相手に、北朝鮮に対して要求をしたい事項があれば、それはしてまいります。そして、御家族の方の御意向も踏まえまして、必要に応じ、今後については判断をしていきたいと考えております。

松本(善)委員 この調査についての交渉というのはなかなか容易なものではないだろうと思いますけれども、今考えられる困難な問題点と、それを克服する方向、また、相手方北朝鮮の対応や、それを打開する展望等について伺いたいのであります。これは、十五日に帰国されると言われております生存している方々と、死亡したと言われている方々、それぞれについて問題があろうと思いますが、そのそれぞれについて御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣官房副長官 まず、死亡しているとされている方々についてでございますが、先般、調査団が北朝鮮に赴きまして、種々の調査を行ってまいりました。その内容を私ども今さらに分析をしているわけでございますが、私どもとしてはその中身について納得をしているわけではないわけでございまして、亡くなられたと言われている人たちについて、私どもが政府としての責任で確認をする必要がある、こう考えております。
 また、生存しておられる方々につきましては、その家族を含めての全員の帰国をあくまでも求めていきたい、この方針には変化は一切ございません。

松本(善)委員 今回調査報告があった人以外、四名の方々を拉致被害者と警察庁は認定したということでありますが、そのほかにあるのかどうか、これらの方々について、どういう方針で調査をし、そして交渉をするのか、まず警察庁からお聞きして、それから外務省に伺いたいと思います。

奥村政府参考人 北朝鮮による日本人拉致容疑事案につきましては、現在のところ、十件十五名と判断しております。これ以外の事案につきましても北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると考えておりまして、現在、所要の捜査また調査を進めているところでありますけれども、今後とも、内閣官房あるいは外務省等と十分に連携して、これらの拉致容疑事案等の全容解明に向けまして最大限努力をしてまいりたいと考えております。

川口国務大臣 今警察庁からお話ございましたように、まず捜査当局において捜査をきちんとしていただいているわけでございますけれども、その結果として拉致であるということでございましたら、その場合は、国交正常化交渉の中で、これについてはきちんと解明をしていくということに全力を挙げていくということでございますし、それをやるに当たりましては関係の府省と十分に連携をとって行うということでございます。

松本(善)委員 大体わかったんですが、相手方北朝鮮の対応や、この問題を進められる展望というようなことについても話がありましたら伺いたいと思います。

田中政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、私どもとしては、粘り強く事実関係の解明を求めていくということでございます。北朝鮮の全面的な協力を求め、北朝鮮は全面的な協力をしなければいけない、それが北朝鮮の誠意ある行動であるということでございます。
 ただ、資料その他一つ一つ精査をしながら、客観的な事実関係をつくっていくということを私どもはやっていきたいというふうに考えております。

松本(善)委員 総理も言われていますが、北朝鮮との関係が対立から協調、協力に転換をしますならば、東アジアの平和と安定、世界の平和に大きな貢献となることは言うまでもありません。
 きょうの答弁でもありましたが、政府は、米国、韓国と協議をしながらこの問題に対応しようとしておりますが、米国、韓国の対応はどうなのか、場合によっては中国、ロシアとの協力も必要と思いますが、これらの点についてはどういうふうに考えておられますか。

川口国務大臣 この問題につきましては、もちろん日朝の二国間の問題もございますし、同時に国際社会全体が懸念をしているさまざまな問題もございまして、この日朝関係を正常化するための交渉を行っていくに当たっては、韓国、米国との連携を緊密に行っていくことが非常に重要でございます。
 九月十七日の総理の訪朝が終わりました後で、私はそのときアメリカにおりましたけれども、ライス補佐官それからパウエル国務長官とその結果についてのお話を、会談を持ちました。その際、そのお二人の方から、拉致の被害者の方々及びその御家族に対するお見舞いの言葉があったと同時に、総理のなさった御努力について歓迎をし、サポートをする、支持をするということがあったわけでございます。
 ロシア、中国との間にも、これらの国々もこの問題に非常に関心を持っておりますので、今までさまざまな折に北朝鮮問題については話をしておりますし、今後とも、必要に応じ、これらの国々の支援、助力を得ながら、また連携をとっていくことが重要だと考えております。

松本(善)委員 米朝会談の状況と、特にその今後の見通しはどうなっているでしょう。おわかりでございますか。

川口国務大臣 米朝会談の後、米朝会談を行ったケリー国務省の次官補が日本を通って帰国をいたしまして、そのときにお話を聞きましたけれども、アメリカは北朝鮮に対してさまざまな懸念、これは大量破壊兵器の話もありますし、ミサイルの話もございますし、そして通常兵器の話もあります。また、人権、人道の問題もございます。そういった問題について懸念を表明したということでございます。そして、もし北朝鮮が米国とこれらの点について協力をしていくということであれば、米国と北朝鮮の関係についての改善につながっていくであろうという趣旨のことをおっしゃっていたというふうに記憶をいたしております。ケリー次官補の話では、アメリカと北朝鮮は非常に率直な話し合いを持ったということでございますし、その話し合いは有益であったということでございます。
 これからの展開については、これはアメリカの政策の話でございますので、我々としてはっきりした形で予測するということは難しいというふうに思いますけれども、これについて、ケリー次官補の報告を米国内でこれから検討するということではないかと思います。

松本(善)委員 アメリカは、悪の枢軸として、イラク、イラン、北朝鮮を挙げておりますが、北朝鮮とイラクとの進展の状況は全く違った状況になっていると思います。
 イラク問題が世界の平和に重大な影響を与えることは、もう言うまでもありません。もしイラクに対するアメリカの武力攻撃が行われるならば、また、それが非常に切迫しているということも言われておりますが、もしそういうことになれば、戦火はイスラエルを含む中東全体に波及し、そして、今、世界経済も大変重大なところへ来ていると思いますが、世界経済も含めまして、世界じゅうを大混乱に陥れるということは必至だと思います。この情勢について、外務省はどういうふうに考えておりましょう。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま松本委員御指摘がありましたイラクの点でございますが、まず、米国がイラクに対しまして軍事行動をとるということを予断することは適当ではないというふうに私ども考えております。と申しますのも、先般、十月七日ですが、ブッシュ大統領が米国民向けに行われました演説の中でも、軍事行動は差し迫ったものでも不可避のものでもないというふうに述べておるところでございます。
 仮に軍事行動が行われた場合の波及のことを御質問になられましたが、まずもって一番問題であることは、イラクが一連の安全保障理事会の決議を無視してきた、そういう事実。それは、米国だけではなくて、国際社会全体が懸念であるというふうに観念しているところでございます。
 我が国といたしましては、従来から一貫して、重要なことは、実際にイラクが即時、無条件、無制限の査察を受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安全保障理事会の決議を履行するということでありまして、そのためには、必要かつ適切な安全保障理事会の決議が採択されるべきであるという立場をとっております。こういうことで、我が方といたしましても、このための外交努力を継続してまいりたいというふうに考えております。

松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、今の参事官の御答弁では、安保理事会の決定を履行するということならば、これは国連の安保理事会の問題だ。国連の機関を通じてそういうことがやられるならば、全世界はそんな心配はしないわけです。
 しかし、国連抜きでもアメリカが攻撃をするということが何度も言われております。いろいろなところで、公式にも表明をされています。だから、中東はもちろん、フランス、ドイツなどのEU諸国、そしてカナダ、ロシア、中国の、イギリス以外の主要国は皆、反対の意思を表明しているわけです。イギリスでも、ロンドンで四十万人のデモ、アメリカでも、六日、ニューヨークで二万人のデモを初め、十数都市でデモが行われている。アメリカの有力者、マスコミを含めまして、世界の世論は反対が圧倒的であります。
 私は、軍事行動、国連を通じてすべてをやるというのは、これはいいですよ。これはそうでないという懸念が、アメリカの大統領や副大統領、あるいは国防報告や国家安全保障戦略報告などでうかがえるから、全世界が心配をして反対の意思を表明している。私は、日本はやはりそれらの諸国と同じように、そういう国連を通じてでなくて、通じないでやる武力行使に反対だということを表明すべきだと思うんですよ。
 今の参事官の答弁では、そういう情勢、もし行われれば、それで終わりなんですね、始まれば。やはりその前に態度を表明するということが、世界の平和のために非常に重要なんです。もし起こってしまったら、今私が申しましたような大変な事態になるから、だから質問をしているわけでございます。外務大臣としてどのようにお考えになっているか、伺いたいと思います。

川口国務大臣 今大事なことは、イラクが国連の決議を守って大量破壊兵器を廃棄するということであります。そして、そのために国連の査察官を受け入れるということであります。そして、それらのことをイラクに、国際社会全体としてイラクがそういったことを実行するために圧力をかけていく、そのために国連で決議をするということでございます。
 この点については、日本もアメリカも他の国々もみんな意見が一致しているわけでございまして、したがいまして、現在、安保理で決議を通すための話し合いが、あるいは交渉が行われているわけでございまして、我が国としても、こうした決議が通りますように、日本として外交努力を続けていくということでございます。
 委員の御質問の前提となっているアメリカの単独の武力行使、これにつきましては、アメリカとしては今別にそういうことを決めているわけではないということですし、それから、七日のブッシュ大統領の演説においても、軍事行動は差し迫ったものでもなく、不可避のものでもないということでございます。
 我が国として今やるべきは、国際社会全体がイラクに対して圧力をかけ、査察を受け入れ、そして大量破壊兵器を廃棄する、そのために決議を国連で、安保理でしていくということを国際社会と一緒になって外交努力をして、そういう事態をつくっていく、そういうことだと思っています。

松本(善)委員 しかし、ブッシュ政権が発表いたしました国家安全保障戦略報告では、対テロ戦争では単独行動をためらわない、必要なら自衛のための先制行動もするということを宣言しております。これには先制攻撃も含まれるということをホワイトハウスのアリ・フライシャー報道官が述べておりますので、一般的には先制攻撃戦略と言われております。このことが世界の懸念を引き起こしているんですね。
 言うまでもなく、国連憲章では、侵略された場合の自衛反撃以外は各国による武力行使を禁止している。自衛権に基づく各国の武力行使が許されるのは、加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間だけである。単独行動をためらわない、必要なら自衛のために先制攻撃もするというのは、私は、国連憲章に違反をしている。
 今大事なことは、国連憲章を遵守する、これは全世界の人たちの共通の意見だ。それが、そういう国連の手続にすべて沿ってアメリカが行うということがはっきりしていれば、私は全世界はこんなに心配はしないと思うんですよ。そこが問題なんです。
 外務大臣は、アメリカが国連の手続にすべて従ってやっていくというふうに考えておられますか、また、この国家安全保障戦略報告についてどのように考えているか、お答えをいただきたいと思います。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、ブッシュ大統領の七日の演説にもう一度触れさせていただきたいと思いますが、その中でブッシュ大統領は、イラクに対し、即時、無条件、無制限の査察を受け入れること及び大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理決議の履行を要求するということ、そのために安保理において強力な決議を採択する必要性を述べております。それとともに、イラクによる安保理決議履行を確保するために、必要な場合に同国への武力行使を容認する決議、これは米国議会の決議でございますが、これを議会に対して求めるということを明らかにしたものでございます。
 次に、今松本委員がお触れになりました米国国家安全保障戦略でございますが、これは九月二十日にブッシュ大統領が米国議会に提出した年次報告でございます。この中におきましては、米国が自国のみの利益のためではなく国際社会の共通の目的の追求のために国力を用いると述べる等、他国との協調を通じまして紛争や国際テロ、大量破壊兵器の問題等に対処するということを述べております。
 この報告の中の法的な解釈の部分につきまして、我が方といたしまして有権的な評価をする立場にはございませんが、この国家安全保障戦略は、脅威に対しまして先制的に対処するために必ず武力を行使するということを言っているわけではございません。また、先制を侵略のための口実としてはならないということも明示的に述べておるところでございます。

松本(善)委員 参事官が言ったようなことが述べられていることも、それから、ブッシュ大統領の演説についても承知をしておりますけれども、この安全保障戦略報告に私が述べたことが書かれていることも間違いありません。
 そしてまた、報告は、大量破壊兵器に対して、脅威が現実になる前に抑止し自衛しなければならない。この論理でいきますと、核兵器保有国はもちろん、非核保有国に対しても、そういう大量破壊兵器を持つというふうに、アメリカが脅威と判断をすれば、いつでも攻撃することができる。これは今までの国際法に対する全く違った考えなんですね。
 それで、もしこれが一般化をするならば、国際法上アメリカだけに認められる権利ということはありませんから、インドとかパキスタンなど、これは緊張関係にある国が先制攻撃してもいいということに、非常に危険な国際法の論理になると思うんです。だから各国が今非常に心配をしているんです。
 そして、これは何も文章だけでなくて、国防報告や、大統領、副大統領、国防長官などの演説でもずっと一貫して出ているんですよ。だから、この問題について、重大な問題としてとらえているからこそ、イギリス以外の各国が意思を表明しているんです。
 私は、外務大臣がそのことを認識しておられるかどうかを伺って、質問を終わりたいと思います。

川口国務大臣 我が国が、米国の国際法の解釈について、これを有権的に評価するという立場にはございませんけれども、この国家安全保障戦略は、米国は、生起する脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているわけではなく、国家は先制を侵略のための口実としてはならないというふうにも書いてあるわけでございまして、いずれにしても、米国は、行動をする際に、国際法上の権利と義務に合致をした形で行うというふうに考えています。

松本(善)委員 終わりますけれども、私はアメリカ信仰はよくないと思うんです。といいますのは、パナマとかグレナダなどでのアメリカの行動が違法だということを国連が決めたこともあります。私は、日本政府が世界の平和のために積極的な行動をとるべきことを強く要求して、質問を終わります。


東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。
 川口外務大臣が大臣に就任されて初めて質問させていただきたいと思いますが、日朝国交正常化交渉に物すごく危機感と憂慮を感じている人間の一人でございます。二十五分間という極めて短い時間でございますが、厳しい発言になるかもわかりません、礼儀を失するような言葉になるかもしれませんけれども、外務大臣並びに副長官、副大臣、御容赦願いたいというふうに思います。
 私のスタンスを初めに申し上げたいと思います。
 今回の小泉総理の訪朝それ自体も、ありとあらゆる角度から考えて失敗だったんだろうというふうに私は思っております。世間では大半の方々が、ある意味で、だれもなし得なかった北朝鮮を訪問した、また安否情報もそれなりに確認されたということで評価されている多くの方々がいらっしゃいます。しかし私は、客観的な、外交というその本質から見たときに、これほど愚かな外交をしたことはないんだろうというふうに思っております。
 とりわけ北朝鮮という、日本との間に、安全保障の問題、そこには狭義では拉致の問題も含まれると思いますが、工作船の問題もある、ミサイルの問題、核の問題、あるいはまたいわゆる歴史の問題もある、請求権の問題もある、ありとあらゆる問題を含んでいる、極めて広範な問題を抱えている国との交渉でございます。
 まず初めに、外務大臣は、日朝国交正常化交渉における役割といいますか、鈴木大使が任命されているわけでありますが、それを総括する外務省における最高責任者であるというふうに私は理解してよろしいんですか。そうでなければきょうの質問というのはする意味がありませんから、責任者であるのかどうなのかということをまずお聞きしたいというふうに思います。

川口国務大臣 私は、外務省という組織の責任者という立場にございます。日朝の国交の正常化の話はさまざまな問題を含んでいて、外務省だけで話が進む話ではないということでございますけれども、その中で外務省は北朝鮮との交渉のところについては責任を持っているわけでございますから、そこについては私が最高の責任者であるということでございます。

東(祥)委員 訪朝したときの僕の衝撃をまず告白させていただきたいというふうに思うんですが、普通の国では、外国の政府、官憲が自国の主権を侵して、その領土から何の罪もない自国民を拉致して、しかもその大半が死亡、私は殺されたと思いますが、殺害されていたことが判明すれば、間違いなくその国と国交を断絶するはずであります。それを、小泉総理は、事もあろうに国交正常化のために交渉を開始することを決めた。これは一体何なのかということなんです。これは本質的な、素朴な疑問でございます。
 外務大臣、ウェンディ・シャーマンさんという方を御存じですか。アメリカのクリントン大統領の末期のときに、オルブライト国務長官のもとでいわゆる北朝鮮外交をやっていた国務省の役人さんであります。彼女は、いわゆる一九九九年のペリー報告の延長線上で、北朝鮮が改革を進めていけば、それに見合った形でいろいろなことをやっていく、それを拡大解釈いたしまして、ある意味でばらまきの外交をやろうとしたんです。そして、御案内のとおり、オルブライト国務長官も北朝鮮に行ったんです。現場を見て、そして状況の判断によって、クリントン大統領を訪朝させようとしたんです。クリントン大統領は、そこでぐっと押し黙ったわけですね。
 そのときに日本のスタンスというのはどうだったか。外務省の方々はみんな知っているわけですよ。少なくとも日本と北朝鮮との間には拉致問題がある、安全保障の問題がある。後ほど安全保障の問題について言及させていただきますが。なかなか簡単にはいきません。ウェンディ・シャーマン氏の、彼女の発想というのは、日本から経済協力を導き出せばいいと。日本の外交は少なくともそのときまでは極めて普通の感覚を持っていたんです。
 突然、今申し上げましたとおり、なぜ、罪もない自国民が拉致され、死亡しているというのが判明し、謝罪を受けたから、国交正常化に入っていけるんですか。普通の国では考えられないじゃないですか。外務大臣、どういうふうにお考えですか。

川口国務大臣 まず、ウェンディ・シャーマンは、私の知人というか友人でございます。彼女について、北朝鮮の話をしたことはございませんけれども、我が国は我が国としての考え方があって、国交正常化交渉の再開に臨むということを決めたわけでございます。
 これについてさまざまな考え方があると思います。委員のおっしゃったような考え方もあると思います。ただ、前提としてお考えをいただきたいのは、我が国は、北朝鮮というこれほど近くにある国と国交が正常化されていない状態で五十年以上を過ぎてきた。その過程で、工作船がうろちょろし、そしてミサイルが頭上を飛び、さまざまな、拉致といった多くのケースが起こったということでございます。
 国交を正常化するための交渉を再開し、その再開した交渉の過程の中でこういった問題について真相を究明し、北朝鮮を追及し、あわせて、我が国としても今まで行っていない戦後の清算の問題をきちんとし、そして話が両方の満足のいく形で進んでいけば、満足のいく形というのは平壌宣言の精神及び基本原則にのっとった形でということでございますけれども、そういうことであるということで初めて国交の正常化というところにたどり着くわけでございまして、現在、これから始めようとするのは、正常化のための交渉を再開、中断していたものを再開するということでございます。
 総理が言っていらっしゃるように、拉致問題についての事実関係も、総理が今回北朝鮮においでにならなければ全くわからなかった。再発防止をするということも、そういう総理の訪朝がなければできない。向こうはそういうことを言わない。おわびも総理が行かなければない。そういうことでございます。
 そういったことが起こらないように、この国近辺に平和と安全が、世界のほかの国々にもわかってもらえるような形、安全に資するような形で行われるということを進めていくというのが我が国の立場で、今取りかかったところでございます。

東(祥)委員 外務大臣に申し上げたい。同義反復はやめてください。何のために国交正常化するのか、答えはこうですという形にしてください。僕は、委員会で外務大臣の話も全部聞いています、今までの記録も全部読んでいます。そういう意味において、私の質問に対して端的に答えていただきたい。
 総理大臣が訪朝したときに、いわゆる八人の死亡を聞いたときに、ここにいらっしゃる安倍副長官、総理帰りましょうと。これは極めて、外交感覚からいくならば、ぎりぎりの線であります。しかし、謝罪したから調印せざるを得なくなった。世界から見れば、日本の国というのはどういうふうになるのかということです。日本に対して他国が、いわゆる拉致を含めた上で犯罪、国家テロ的な行動を行う、二十数年間にわたってそういうことが行われている、しかし、それをトップが謝罪すれば、日本の国というのは水に流す国なんだ、国交正常化のための交渉に入る、それがまさに今回出てきている共同宣言の本質ではありませんか。世界じゅうはそのように見るんですよ。
 その意味で、今の外務大臣の御答弁というのは不満きわまりないものがあります。安全保障上の脅威がありながら、何のために日本は国交正常化をするのか。だれ一人答えていないじゃありませんか。過程だけを答えている。外務大臣、長くなるから、きょう私の警告を発しておきますから、その次に答えていただきたい。具体的に質問させていただきますから。
 外務委員会において、多くの同僚議員が拉致問題についてお話をしてくださいました。安全保障の問題について詰めていきたいというふうに思うわけであります。
 政府は、国交正常化交渉と安全保障協議を切り離しました。あの共同宣言を見る限り、安全保障問題、これは双方で一生懸命ごちょごちょっとやっていきましょう。拉致問題は、訪朝後、いわゆる国民そしてまた世論が騒ぎ出してきて、この問題について安倍副長官中心に積極的にやっていらっしゃいます。徹底的にやっていただきたい。しかし、この問題が解決されない限り国交正常化はないと、拉致問題に関しては言われております。安全保障の問題についても本当に言えるのかどうか、それを詰めていきたいというふうに思うわけであります。
 国交正常化に際しては、経済協力と引きかえに、北朝鮮の我が国に対する脅威をいかに減少させていくかということが日朝交渉の最大の眼目であると思われます。ところが政府は、国交正常化をなし遂げたいという誤った、ある意味で、言葉はきついですけれども功名心にあおられていて、経済協力問題と安全保障問題を切り離したと私には思われます。
 国交正常化交渉の主要問題としては、もはや経済協力の金額の問題しか残っていないはずであります。政府は、困難な安全保障問題を別枠の協議に切り離して、だらだらと建前だけの安保協議を続けさせ、その傍らで国交正常化交渉という名のもとに経済協力の金額交渉を、表裏のチャンネルを駆使して一気呵成に行うつもりなのではないのか。このことを私は危惧しているわけであります。
 この並行協議方式というのは、皆さん、この二、三年の間、どこかで聞いた話なんだろうというふうに思うわけであります。つまり、鈴木宗男議員が、歯舞、色丹の二島返還を画策して国後、択捉を切り離そうとした領土問題に関する並行協議の手法と同じであります。目先の利益に目がくらんで、国益にかかわる最重要問題を棚上げ、先送りしようとする極めて危ない仕組みであると私は思います。
 この問題に対しても、まだ政府の方からちゃんとした説明もない、国民の合意もない。経済協力と安全保障を切り離したことは、私は、最高責任者がどんなに謝罪したとしても足りない大罪になってしまうのではないか、そのことを危惧しています。
 政府が北朝鮮外交においてこれほど安全保障を軽視する裏には、戦後ひたすら安全保障問題を米国に頼り切って自分の問題として考えてこなかったという政府の無責任な体質があるわけであります。安全保障政策の企画立案は、本来外務大臣が行わなくちゃいけない問題であります。この立案を米国に任せ切ってきて、自分はその下請に徹するという、ある意味で被占領国家の奴隷根性がまだまだある、さらにひどくなってきている、このように私には見えてならないのであります。
 日本ほどの大国が、安全保障協議を切り離して、その進展は、よく外務大臣いろいろなところで言われています、いや、米朝ともいろいろ協議しなくちゃいけないのでと。米朝協議の進展次第という無責任な甘えを見せることは、私には、本当に無残なものであって、こっけいを通り越して、まさに悲惨な状況に見えてくるわけであります。
 ちょっと長くなりますけれども、北朝鮮との安全保障問題には、御案内のとおり、核査察、生物化学兵器、DMZの通常兵器削減等多くの問題があります。一つ一つが極めて重い、重要な問題であります。本日は、時間の制約がありますので、ノドンミサイルの問題だけ取り上げたいというふうに思います。
 ノドンミサイルは、現在、百発以上が日本をねらっているわけであります。その多くには化学兵器や生物兵器が装てんされている、このように言われている。弾道ミサイルは、発射されたら、御案内のとおり防ぎようがないのであります。今でも、新潟の原発も、天皇陛下の住まわれている皇居も、国会議事堂も、霞が関も、一千万人の東京都民も、既に金正日の人質になっている、誇張した表現で言えば同じ状況になっているわけであります。日米ガイドラインも周辺事態安全確保法も、ノドンミサイルの前には紙くずにすぎないのであります。金正日のミサイルによる恫喝の前に、例えば新潟の原発と県民を犠牲にして、基本計画を承認することなんてできないではありませんか。
 ノドンミサイルというのは千五百キロしかない射程であります。つまり、日本しか入っていないんですよ。ノドンは日本攻撃専用のミサイルと言ってよい弾道ミサイルであります。米国はこのミサイルに余り関心がありません。米国が真の関心を持っているのは、第一に核兵器です。第二に、射程が五千キロを超えるテポドンであります。第三に、イスラエルを射程におさめる国々へのミサイルやミサイル技術の移転なんです。
 もし米朝協議が進展して、仮に北朝鮮が無条件で核査察を認めれば、ノドンミサイル問題は置いてきぼりにされる可能性が十分にある。日本は、ノドン問題を自分自身の手で解決しなければならないんです。外務大臣の手でやらなくちゃいけないわけであります。しかし、政府は、これまでこのノドン問題を真剣に北朝鮮に提起したことはありません。クリントン政権時代でさえ、ミサイル問題はアメリカにおんぶにだっこだったと思います。
 安倍副長官は、僕のテレビの質問に対して、この問題について小泉総理は言ったと言っています。記者会見の内容を見れば、強い憂慮を表明したという話で終わっているわけであります。懸念を表明しただけなんであります。これではアリバイづくりのための発言と言われても仕方がない。
 平壌宣言には、皆さん御案内のとおり、経済協力に十数行の行数を割きながら、ノドンミサイルには一行の言及もないじゃありませんか。総理は、金正日に対して本当に外交をやろうとするならば、国民の生命と安全をかけた外交をするとするならば、ノドンミサイルの廃棄、製造及び輸出の永久停止なくして国交正常化も経済協力もない、このように言い切らなければならなかったんですよ。そう言わなかったこと自体が、そもそも安全保障問題を棚上げしているというふうに言っても言い過ぎではないんだろうと私は思っているわけであります。
 そこで、外務大臣にお伺いします。
 主要安全保障問題、たくさんあることを申し上げました。特に、ノドンミサイルの廃棄、製造及び輸出の永久停止なくして国交正常化はない、経済協力はないと国民の前に明言することはできますか。国交正常化交渉の中でノドンミサイルは妥協できない最重要事項であることを国民に約束することができますか。イエスかノーかでお答えください。

川口国務大臣 初めにお断り申し上げたいと思いますけれども、東委員の御質問が非常にたくさんのものを含んでいましたので、勢い、私のお答えも長くならざるを得ないということをお許しいただきたいと思います。
 東委員の御質問は幾つかの仮定を含んでいると私は受け取らせていただきました。
 まず、国交正常化交渉と安保についての協議、これを二つに切り離して、要するに、安全保障問題を国交正常化交渉から切り離して、二つを並行に進めていくのではないか。そして、安全保障問題を置き去りにして国交正常化交渉の方で合意に達して正常化をし、経済協力をやっていくのではないか。そういうことが前提になっているように私には聞こえたわけでございます。ただ、それについては、そういうことではございませんで……

東(祥)委員 ちょっと待ってください、時間がないから。
 その前段はそのように御理解して構いません。問題は、私の質問の核心は、ノドンミサイルの配備の撤去、製造の永久停止なくして国交正常化はあり得ないと国民の前に断言できますか、この一点であります。そうであるとするならば、私が言っていた並行協議云々というのも、それは雲散霧消します。そのことだけ言ってください。

川口国務大臣 委員の御質問の前提でございます、そういった並行協議あるいは二つに分けるという前提が間違っているということでございます。これをまず、国会の場でございますから、きちんと申し上げさせていただきたいと思います。
 この平壌宣言をお読みいただければどこにもそういうことは書いてございませんで、ミサイル問題もそれからほかの安全保障、大量破壊兵器の話も、日本にとってもこれは大きな懸念でございます、問題でございます。こういったことをきちんと取り上げて話をするということでございまして、これを安全保障協議の場だけでやるということは必ずしも決まったわけではない、これが本番の正常化交渉の中の本会談でも行われるということは十分に考えられているわけでございます。
 これについては、これから北朝鮮側と第一回の再開をされた正常化交渉の中で決めていくということでございますから、我が国としては、そういった、片方を置き去りにして正常化をするということについては全く考えていない、そういうことを申し上げたいと思います。

東(祥)委員 よくわからない。そういうことというのは何ですか。
 僕の申し上げたとおり、それはノドンミサイルの廃棄、製造及び輸出の永久停止なくして国交正常化はない、その前に経済協力もない、そういうことを外務大臣はおっしゃっているんですね。明確に言ってください。安全保障問題における究極の日本自身が解決しなければならない、のど元に突き刺さっている問題ですよ。これに対して、日本の交渉戦略として、これは欠かすことのできないポイントなんだということであるならば僕は承服しますよ。言ってください。

川口国務大臣 こうした問題というのは、まさに安全保障の問題あるいはその他の日朝の間の、二国間の懸念、こういった問題を解決して、そして正常化をし、ここに平壌宣言に書いてありますように、正常化をしなければ経済協力はないというふうに書いてあるわけでございます。したがいまして、日本としても、この安全保障会議の場で、あるいは日朝の交渉の本会談のところで、こういった問題は真剣に取り扱っていくわけですし、先方が日本にこのことについて脅威を与えないようにということを確保していく必要があると思っております。

東(祥)委員 川口大臣、外交というのは目的を達成しなくちゃいけないんです。話し合いの場だけ持っていたとしても、問題の解決にはならないんです。ノドンというものが日本に向けられている、向けられていて安全保障上の脅威があって、話し合いだけをやっていきましょう、それだったら国交正常化のための交渉をずっとだらだらやっていくということです。何のためにやるのかということです。
 日本に対しての安全保障上の脅威であるノドンの配備を撤去させる、それがない限り国交正常化はあり得るはずがないではありませんか。どうしてそのことを明確に言えないんですか。総理大臣がそういうことを考えていないからですか。考えていなかったとするならば、それを総理大臣に勧告するのが外務大臣の務めなんではないですか。
 もう一度聞きます。

川口国務大臣 私は、話し合いだけをすればいいということを申し上げたつもりは全くございません。平壌宣言の精神と基本原則にのっとって話をし、そして国交正常化ができるということになればしていくということを申し上げたわけでございまして、平壌宣言をよくお読みいただければ、ここに「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。」というふうにございます。北朝鮮側に交渉の過程あるいは交渉の結果としてこの平壌宣言に違反する、あるいは守っていないということがあれば、当然国交の正常化は行われないということになるわけでございます。

東(祥)委員 時間が参りました。
 このように、国会という国民を代表する場で議論させていただいていたとしても、日朝国交正常化における基本戦略、日本が国交正常化のための交渉をやるに当たって、安全保障上の脅威があるにもかかわらず、それを明示して議論できないということほど無残なことはないんだろうというふうに思います。
 外務大臣の言っていることは、何を言っているかわからない。共同宣言を読めばわかる、共同宣言の精神と原則に基づいて、日本政府の国交正常化における安全保障問題に対してのスタンス、目標を明確に問いただしているわけです。それに対して答えることができない。これほど何のための国交正常化なのかということがわからない交渉というのは私はいまだかつて見たことがないということを申し上げて、そしてまた、安倍副長官、ぜひとも頑張っていただきたいというふうに申し上げて、私の質問を終わります。

吉田委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。いつものようにラストバッターです。あとしばらくですので、よろしくお願いいたします。
 九月十七日の日朝首脳会談については、各種の世論調査を見ましても、国民のほぼ八割が評価しており、国際社会からの評価も高いものとなっています。私としましても、今回の小泉総理の決断については率直に評価をしたいと思います。
 しかし同時に、北朝鮮との早期国交正常化については、世論調査では慎重な姿勢を示した国民が多かったということは、言うまでもなく拉致の問題が国民の心に大きな衝撃を与えたことを示しているものだと思います。拉致という非人道的な行為は決して許されるべきものではなく、それが国の特殊機関の手によって行われたことに対し、私は強い憤りを感じています。そして、拉致被害者とその御家族の方々の怒りと悲しみ、苦悩を考えると、申し上げるべき言葉も見つかりません。
 拉致問題は、北朝鮮の特殊機関と個人という圧倒的な力の違いがある関係の中で、特殊機関が個人に対し犯罪を犯したという絶望的な状況を突きつけられたものであり、国の武装組織と個人という関係を思うとき、多くの沖縄県民は、戦後二十七年間続いた米軍による占領、そして復帰後三十年を経た今日も巨大な米軍基地が存在し続けるという、個人の力ではどうにもならない悲劇的な状況を思い起こし、被害者と御家族の方々に深く同情し、悲しみを共有しています。私も沖縄県民の一人として、多くの県民と同じ気持ちであり、政府は、被害者と御家族の方々の思いを真摯に受けとめて、事件の真相究明に全力を尽くしていただくよう要望し、質問に入ります。
 まず第一点目ですが、政府は九月二十八日から十月一日まで北朝鮮に調査チームを派遣し、拉致問題に関する調査を行いましたが、その調査結果については、死亡したとされる方々の死因についての説明内容や、遺骨、遺品がほとんどないなど不自然な部分も多く、御家族の方々も到底納得できないとの思いを抱いているという報道が連日なされています。政府も再調査を検討しておられるようですが、次の調査はいつごろ行われるのでしょうか。また、そこでも十分納得できる調査結果が得られなければ、さらに調査を継続する予定なのか。今後の真相究明に向けての政府の基本方針を伺いたいと思います。安倍官房副長官、よろしくお願いします。

安倍内閣官房副長官 調査団が得てきた資料、情報等を今私ども分析をしているところでございまして、納得できない点も多々あるわけでございますから、私どもが確信し得る資料を提出するよう、今も要求をしております。必要であれば当然、その調査の延長線上において調査団を出すということも選択肢の一つなんだろう、こう考えております。

東門委員 といいますと、今の時点では再調査はいつごろという予定はないということなのでしょうか。いわゆる北朝鮮の方から資料が返ってきてからということなのでしょうか。

安倍内閣官房副長官 北朝鮮労働党と友党である御党でございますから、よく御承知だとは思いますが、調査団が行って自由に活動ができるということではないわけでございまして、それなりの成果を得るためには、先方の了解をこちら側が得ていかなければいけないという中で、今粘り強く先方といろいろと交渉を進めている、川口大臣のもと、田中局長が一生懸命今努力をしているというところでございます。

東門委員 北朝鮮の朝鮮中央通信は、二十六日、日本人数人が死亡したことをもって日本側が度を越した騒動を引き起こしては、事態が収拾できない状況に追い込まれる可能性があると論評したとのことですが、この朝鮮中央通信の反応は甚だ遺憾であります。
 拉致問題については、金正日総書記が拉致の事実を認めて謝罪し、このようなことが二度と起こることがないよう適切な措置をとることを発言しているのであり、この発言を意義のあるものとするためには拉致の真相解明は必要不可欠であり、北朝鮮側は誠実に対応すべきものであると思います。
 そこで、実際に現地に行かれて調査をした調査団の感触として、北朝鮮側は誠実に対応していると感じられたでしょうか。また、今後北朝鮮側の対応に誠意が感じられないようなことがあった場合、どのように対応するおつもりなのか。これは齋木参事官にお願いしたいと思います。

齋木政府参考人 私ども調査団で参りまして先方に会いましたときに、先方は冒頭、平壌宣言を誠実に履行していきます、特に私どもの拉致の調査については、先方として可能な限り十分に情報提供いたしますということを言いましたし、そのための最善の努力をいたしますということを事前に申した上で、私どもに対してさまざまな説明をしてきた、個別の情報も含めてでございます。
 私どもは、それに対していろいろと質問をいたしましたし、納得できない点については厳しく追及いたしまして、さらに情報を提供するようにということをその場で相当強くやりました。彼らなりに一生懸命準備したということなんだと思いますけれども、私ども調査団の立場からすれば、内容的には甚だ不十分であるという印象でございます。
 持ち帰りました、向こうから提供されたいろいろな情報、それからまた私どもなりに集めました情報、これを今精査しておるところでございますので、その結果を踏まえて今後どうするかということを考えてまいりたい、こう思っております。

東門委員 拉致被害者の御家族をサポートする支援室が、外務省ではなくて内閣官房に設置されました。私は出席していなかったのですが、九月二十日の本委員会で川口外務大臣は、この支援室は外務省内に設置すると答弁しておられたということですが、そうならなかったのは、御家族の方々の強い要望によるものであります。これは、いかに御家族の方々の外務省に対する不信感が大きいかを示すものであり、国民と政府の関係としてはこれほど不幸なことはありません。
 昨年からの一連の外務省不祥事により、国民の外務省に対する不信感はこの上ないほど高まったわけですが、今回の首脳会談に際しても、被害者の方々の安否に関するリストを隠したことで、さらに国民の怒りを倍加させたものだと思います。外交は自分たち専門家に任せておけばよい、国民は知る必要はないという外務省の姿勢は一向に改まらないのだなと感じております。
 外務省のたび重なる不祥事を受けて次々と設置された外務省改革のための審議機関で何度も指摘されていながら、また今回も同じことを繰り返しています。これでは、どのような立派な行動計画をつくっても、外務省改革など永久に不可能であるのではないかと思わざるを得ません。
 それでお伺いしますが、大臣は、支援室が内閣官房に設置されたことをどのように受けとめられ、外務省が国民の信頼を回復するため今後どのような措置をとっていくおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 九月二十日の国会で、確かに委員がおっしゃったように、御家族の方を支援する部屋を外務省の中に、部屋といいますか、チームをと申し上げたと思いますけれども、外務省の中につくることを考えているということを申しました。
 それで、この内閣にできた支援室でございますけれども、私も、直接家族の方と向き合う窓口として内閣に置くということが適切であるというふうに考えております。それはなぜかといいますと、外務省は外国との交渉については担当いたしますけれども、この問題については、警察の関係もあり、都道府県との関係もあり、その他さまざまな関係がございますので、そういった幅広い問題を、御家族と一緒になって、御家族のためにこれに対応していくという部署としては、内閣に置かれるというのが、政府全体として対応ができますので、より適切であろうと私は思っております。この支援室を支援するための人たちが外務省の中にいて、一緒に連携をして動いているということはもちろんでございます。
 外務省に対して御家族の方がいろいろな不信の感情をお持ちでいらっしゃるということについては、私は大変に残念だというふうに思っています。外務省として、今まで過去ずっと、この問題が始まって以来、お話を伺ったり、あるいはこれを第一回の国交正常化交渉の場で取り上げたりという努力はしてきたわけでございますけれども、それが今日に至るまで結果が出なかったということについてはもうそのとおりでございまして、そういう意味では残念でございますけれども、今日、今までの積み重ね、あるいはいろいろな方の思い、御努力が実って、こういった形で支援室が御家族の方と一緒にこの問題の解明をやっている状況になったというのは、前進をしたことだというふうに思います。
 外務省として、改革については行動計画をつくって、これをスケジュールに沿ってきちんとやっていくということをやることによって、国民の皆様の外務省に抱いている不信については、一日も早くこれを減らしていきたいと思っていますし、外務省の職員一同、上から下まで、そのように思って毎日仕事を、あるいは外交にいそしんで、一生懸命に成果を上げようと思っているわけでございます。

東門委員 当然ですが、日本は民主主義国家でありまして、主権者は国民です。もちろん、無定見な世論迎合は危険ですが、国民の意思を無視した外交は成り立ちません。政府と国民が一体となった外交を実現するためには国民に十分情報を開示する必要がありますが、先月、NPOが発表した中央省庁の情報公開度ランキングでは、外務省は二年連続最下位であります。本委員会での質疑でも、なぜこんなことまで隠さなければならないかと思うくらい、外務省の秘密主義は徹底しているというふうに感じられます。こんなことでは、到底国民の我が国外交に対する理解は得られません。
 外務省、より一層の情報公開を進めるべきだと思いますが、大臣、見解をお伺いいたします。

川口国務大臣 これは委員のおっしゃるとおりでございまして、外務省が情報公開をもっと進めていかなければいけないと私は思っております。
 同時に、これは外交の問題、あるいはよその国の問題がかかわることでございますので、我が国だけで一方的に情報公開をするということもできにくいという事情にあるということも、ほかの省庁と違った、外務省が持っている特殊性として御理解をいただきたいと思います。

東門委員 確かにそういう面もあるのも私もよく存じておりますが、しかし、この委員会で質疑をしているときに本当に感じるのが、なぜこれほどまでにということなんです。
 今冒頭、大臣が、やはりもっと情報公開をしていかなければいけないと感じておられるということ、ぜひ今後それを進めていただきたいと思います。できる限りやっていただきたいと思います。
 次に、米朝協議について伺います。
 十月三日から五日までの三日間、米国のケリー国務次官補がブッシュ大統領の特使として北朝鮮を訪問され、関係改善に向けて協議を行いました。日朝首脳会談を契機として、北朝鮮を悪の枢軸と呼んでいた米国も北朝鮮との対話再開に踏み切ったということは、東アジアの平和と安定のために非常に有意義なことであり、今後の展開に期待したいと思います。
 しかし、今回の米朝協議においては、双方がお互いの主張を述べ合ったのみであるということであり、次回の会談日程も決まらず、七日には北朝鮮の朝鮮中央通信が、米国は極めて圧力的かつ傲慢だったとのスポークスマン談話を伝えたとのことであります。
 大臣は、六日、ケリー国務次官補と会談され、米朝協議についての報告を受けたようですが、報告内容は新聞等でも報道されておりますので、細かいことは結構ですが、その報告を受けられて、今後の米朝協議の行方について大臣としてどのような見通しを持っておられるか、そしてまた、我が国としてはどのように対応していくおつもりなのか、お聞かせいただけたらと思います。

川口国務大臣 米朝会談の内容については新聞にも出ていたということでございまして、これを米国は国に持ち帰って、そして分析をし、協議をするということであるかと思います。
 よその国の政策でございますので、我が国にとって、今後米国がどういうふうに、あるいは北朝鮮がどのように対応していくかということについては予測をすることもできませんけれども、米国と日本とは、今後、北朝鮮の問題、特に安全保障の問題について引き続き密接に連携をしていくということについては意見が一致をしているところでございます。

東門委員 米朝会談の内容が新聞に出ていたんじゃなくて、報告の内容が出ていたということを私は申し上げたんです。それはよろしいです。
 次に、北東アジアの平和と安定と、そして在日米軍基地の整理縮小についてお伺いしたいと思います。
 日朝国交正常化は、今回の日朝首脳会談でようやく交渉を再開することが決まったという段階であり、国交正常化が実現するまでにはまだ長い道のりが残されています。米朝協議も先行きは全く不透明であり、米国が主張している北朝鮮の核兵器、ミサイル、通常兵器の問題、人権問題など、解決しなければならない課題はたくさんあります。しかし、いろいろと困難な課題はあっても、北東アジアの平和と安定のためには、この対話による緊張緩和という流れを後退させることがあってはならないと強く思います。
 冷戦終結後も、アジア太平洋地域には依然として不安定性と不確実性が存在するとの情勢認識のもとで、政府は日米安保体制を基軸とする防衛力整備を進め、沖縄にも巨大な米軍基地が置かれ、多数の米兵が駐留をしてきました。そして、この不安定性と不確実性の大きな要因として、名指しされてはいないものの、この北朝鮮の存在を念頭に置いていたことは明らかであります。
 この北朝鮮がみずから対話を求めてきたこの機会を逃がすことなく、孤立している北朝鮮を国際社会の一員として平和裏に組み込むことができれば、アジア太平洋地域の不安定性と不確実性は大幅に改善されるはずであります。
 それで、我が国の対北朝鮮政策は、日米韓三国の連携のもとに行われてきましたが、韓国の金大中大統領の太陽政策、ブッシュ政権が発足してからは悪の枢軸発言など、これまでは韓国や米国が主導し、我が国はどちらかといえば従属的な立場に甘んじていました。しかし、今回の日朝首脳会談を契機として、その成果を踏まえて、対話による緊張緩和という流れを後退させないためにも、今後は、我が国がぜひイニシアチブをとって対北朝鮮政策を進めてもらいたいと思うわけです。外務大臣のその決意を伺いたいと思います。

川口国務大臣 日朝国交正常化交渉を通じまして、安全保障の問題というのは非常に大きな課題でございます。こういった問題についてきちんと議論をして、我が国に対する脅威がなくなるように、そして北東地域の平和と安全が高まるような、そういったことに資する交渉をし、その成果を上げたいというふうに思っています。

東門委員 絶対にこの機会を逃していただきたくないと私は思うんです。特に沖縄県の人間として、強くそれを感じております。
 日朝国交正常化が実現して、北朝鮮が国際社会の一員として認められる状況になれば、これは国際情勢の大きな変化であり、在日米軍の存在意義にも大きな変化が生じ、米軍基地の整理縮小も可能となるはずであります。川口外務大臣がいつも答弁で読み上げておられる平成十一年十二月の普天間飛行場移設に係る閣議決定の中にも、「国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議していくこととする。」と記されています。
 この閣議決定の趣旨に従えば、当然、在沖縄米軍の兵力構成も見直されるはずですが、懸念されるのは、米国がまた新たな理屈をつけて基地の現状維持を図ろうとすることです。冷戦の崩壊のときも大きな国際情勢の変化だったわけですが、あのときもアジア太平洋地域の不安定性と不確実性を理由として、駐留米軍のプレゼンスはほとんど変わりませんでした。朝鮮半島の緊張緩和が実現しても、また同じようなことが行われるのではないかと沖縄県民は危惧をしています。
 そこで、お伺いいたします。お願いも入っています。
 もし日朝国交正常化が実現することになれば、我が国としては、それを国際情勢の大きな変化と認め、米国に対し米軍基地の整理縮小の協議を申し入れることを今の時点で政府に確認しておきたいと思います。川口外務大臣、そしてでき得れば安倍官房副長官のお二人の見解を伺いたいと思います。

川口国務大臣 国際的な情勢の変化に対応して、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢について米国政府と協議をするということは前からも申し上げているわけでございまして、この北朝鮮の正常化の交渉がいい結果になったということで申し上げますと、それは一つの要素だと思います。
 ただ、そのときに国際的な安全保障の全般がどうかということをいつも考えておかなければいけないと思いますけれども、いずれにいたしましても、国際的な安全保障情勢において、起こる変化に対応して、日本と米国と、両方の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成、これを含む軍事態勢につきましては、日本と米国政府との間で緊密にかつ積極的に協議を継続していきたいと考えております。

安倍内閣官房副長官 まだ、日朝関係においても予断を許さない段階でございますので、委員の御質問自体、ちょっと気が早いんではないかという感じでございます。
 ただ、私ども、SACO最終報告について着実に実施していく、実現していくということについて、今までどおり努力をしていかなければいけないということでございます。

東門委員 お二人の御答弁をお聞きして感じることは、政府はやはり国際情勢に変化があっても動かないのではないか。前回もそうでしたけれども、今回も、今確かに安倍官房副長官が時期的に早いとおっしゃることもわからないではないのですが、国際情勢が変化したときはと常におっしゃってきた。国際情勢が変化したときにやはりアメリカと協議をして、その協議が全然違う協議、そういう形でしか日本政府は対応できない。常に国民あるいは県民の側を向いていなくて、私がいつも申し上げることなんですが、アメリカがどう考えるか、アメリカが何を要求しているか、そこだけに終始しているという考えを否めないということは本当に残念です。
 ともあれ、とにかく今回の国交正常化交渉、今月末から行われること、ぜひ私は進めていただきたいと思います。
 時間ですから、終わります。


2002/10/10-3

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