2002/10/10-2

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衆院・外務委員会

木下・中川議員、政府の日朝交渉方針を批判 (民主党ニュース)

 衆議院外務委員会は10日、日朝国交正常化交渉および拉致事件に関する閉会中審査を行った。民主党・無所属クラブからは、木下厚、中川正春の両議員が質問に立った。

 木下議員はまず、9月17日の小泉首相による北朝鮮訪問が決定された経緯について質問。首脳会談開催で合意した8月25日〜26日の日朝事務レベル会合の時点で、外務省担当者が拉致被害者の安否についてどの程度の情報を入手していたのかを質した。田中大洋州局長は、「(北朝鮮側は)誠実かつ深い調査を行っているとのことだった」などとし、具体的な安否情報については入手していなかったとした。木下議員は「そんないいかげんなことで総理を北朝鮮まで連れていったのか」と一喝し、外務省の事前交渉のずさんさを断罪した。

 木下議員はまた、首脳会談の当日朝に8名の拉致被害者が死亡しているという情報を受け取りながら、平壌宣言の文言を一字一句変えることなく、そこに署名したことについて、「これが交渉か」と厳しく批判。金正日総書記が拉致を認め、謝罪したといっても、宣言文に盛り込めなければ証拠がないとし、「なぜそこでもう一泊するなど時間をかけて、事実確認や宣言文の再検討などをやらなかったのか」と詰め寄った。田中局長は、「北朝鮮が拉致を認め、謝罪したことは国際社会では幅広く知られている」などと苦しい弁明に終始した。

 続いて質問に立った中川議員は、木下議員の質問を引き継ぐ形で、まず日朝首脳会談の際に日本の代表団が松茸などのおみやげをもらって帰ってきたと伝えられていることについて、「国民世論を考えれば、説明すべき」と質した。田中局長は「どこの国でも、何をおみやげとして交換したかは外交儀礼として公表しないもの」などと述べ、暗に事実であることを認めた。

 中川議員は、首脳会談後に金正日総書記が拉致問題に関する発言を一切行っていないことを指摘し、拉致問題に対する遺憾の意を国際社会に向けて総書記自身の言葉で表明するよう今後の交渉の中で要求すべきだとした。川口外相は「(拉致問題の)事実解明に北朝鮮が誠意を持って真剣に取り組むとしていることを見守りたい」などと答えるにとどまった。

 さらに中川議員は、国交正常化交渉と拉致問題、安全保障問題での交渉とを並行して進めようとしている政府の交渉方針を批判。「国交正常化というこちらのカードを拉致問題、安保問題と切り離してしまってどうするのか。あくまで拉致問題、安保問題を国交正常化交渉の前提条件とすべきだ。小泉内閣は功を焦りすぎているのではないか」と詰め寄った。しかし安倍官房副長官は、「拉致問題の解決がなければ正常化しないというのが総理の一貫した方針だ」と述べるにとどまった。

>>中川議員の質問


木下委員 民主党の木下厚でございます。
 今回の小泉首相の訪朝が、拉致問題の全面解決につながるのかどうか、あるいは、武装工作船、ミサイルの開発、配備、輸出あるいは核兵器などの大量破壊兵器の開発問題に終止符を打ち、北東アジアの平和と安定に向けて大きく前進するかどうか。これは、我が国の主権や国民の生命財産を守り、国益を第一と考えながら、北朝鮮に対して日本政府がどこまで毅然とした外交姿勢を貫けるかどうか、この一点にかかっている、私はそう思います。

 しかしながら、これまでの日本外交、とりわけ北朝鮮あるいは対中国、対ロシア、この外交を見ていると、我が国の主権や国民の生命財産あるいは国益、そういったものよりもむしろ、相手側の機嫌を損ねないように、いわゆる腰の引けた外交、あるいは一部からは土下座外交、そこまで屈辱的な言葉を浴びせられるほどの外交姿勢に終始してきた、これが我が国の外交ではなかったか、そんな思いさえいたします。

 そういった観点から、改めて、今回の小泉首相の訪朝と、そこに至るまでの日本の北朝鮮に対する外交姿勢、これをきちんと検証し、拉致問題や武装工作船問題を含めた懸案事項の解決がなぜこれほどおくれたのか、その責任はどこにあったのか、これを明らかにしていきたいなと思っております。

 まず一点、小泉首相の今回の訪朝は、外務省の田中局長が、八月二十五日、二十六日の両日、ピョンヤンで行われた日朝外務省局長級協議の際、姜錫柱第一外務次官との間で最終的に確認したと言われていますが、日本政府が認定した日本人の拉致被害者八件十一人について、安否情報を含め、どの程度の情報を得て小泉首相の訪朝を決断したのか、これを明らかにしてもらいたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘の点でございますけれども、八月の二十五、二十六日にピョンヤンに参りまして、日朝のアジア局長レベルの会合を行いました。姜錫柱第一副相という名前で呼ばれていますけれども、その際行った議論もそうですけれども、これは日本が従来から主張していた点、小泉総理、外務大臣も従来から主張しておられた点、すなわち、国交正常化の基本的な問題並びに日朝間の懸案事項、特に拉致の問題、工作船の問題、安全保障上の課題、こういう問題について真剣かつ誠意を持って取り組む用意があるかないかという点が基本的な課題でございました。私どもは、その事後の記者発表でも明らかにいたしましたけれども、この二つの問題に真剣かつ誠意を持って取り組むということでございました。

 しかしながら、北朝鮮の体制、これは日本のような体制ではない。金正日総書記・国防委員長が実権を握り、首脳会談を行うということがなければ、いろいろなそういう基本的な問題が解決の方向に向かって動き出さないという判断もございました。そういう観点から、総理は、帰国の御報告を申し上げた上で、最終的に訪朝ということを決められたわけでございます。

 拉致の問題については、私どもの主張は、安否について完全な形で調査をして出してもらいたい、拉致を正面から認めてもらいたい、この点でございまして、事前に拉致、安否の内容については承知をしておりませんでした。

木下委員 ちょっと答弁が長いんですよ。もっと簡単に。私は聞いていないです、そんなこと。拉致問題についてどういう安否情報を確認したのか、その一点を聞いているだけなので。

 では、それについては、ただ日朝交渉を再開すれば明らかにするというだけだったんですか。それとも、もう何人お亡くなりになっているとか、そういった情報は全く得ていなかったわけですか。

田中政府参考人 北朝鮮側は、誠実かつ深い調査をしているということでございました。したがって、その内容については事前には承知しておりませんでした。

木下委員 八月二十五、二十六日に協議をやったわけですよ。その時点でまだ調査をしている、そして九月十七日、そのとき結論が出たわけですか。そうじゃないでしょう。そんないいかげんなことで交渉を、わざわざ総理が北朝鮮に飛んでいったんですか。もっと明らかな事実を入手していたんじゃありませんか。どうなんですか。

田中政府参考人 これは先般、政府の調査団が参りましたときの先方の説明でもございますけれども、先方は深い調査をして、十六日の夜の段階で調査が終了したということで、十七日の朝の段階で、安否情報については私が先方の局長から受け取ったということでございます。

木下委員 あなた、そんないいかげんな情報でもって我が国の総理をわざわざ北朝鮮まで連れていくんですか。もし情報が出なかったらどうするつもりだったんですか。もっとはっきりした情報を確認した上で総理を訪朝させる、これが外務省としての当然の仕事じゃないですか。知っていたんでしょう、ある程度。もう一度聞きます。

田中政府参考人 御案内のとおり、拉致問題というのは、十数年の間、彼らは一切認めてこなかった、安否についても一切出してこなかった。しかしながら、北朝鮮側との接触あるいは外相会談、局長級会合を通じて、彼らはきちんとした調査をして安否調査の結果を出すということについては心証を持っておりました。しかしながら、具体的な情報については、十七日の朝、知り得たということでございます。

木下委員 そして、もしそれが事実ならば、十七日の朝、その事実を知らされたとすれば、日朝平壌宣言というのは、いつつくられたんですか。

 この前、同僚議員が質問しました。既につくられていた、そして交渉によって文面を少しも変えていない、そう答弁していますが、事実が、八人がもうお亡くなりになっていると言われながら、なぜ平壌宣言の文言を一行も変えない、一字一句変えない。そんなのが交渉ですか。もう一度答えてください。

田中政府参考人 私どもも、平壌宣言については事前にぎりぎりの交渉をやってまいりました。御案内のとおり、その中には、日本国民の生命と安全にかかわる遺憾な問題、懸案問題という表現もございます。

 十七日の朝の段階で安否の情報を知らされたとき、これは総理とも御相談をしまして、金正日総書記に対して首脳会談の場で厳しい抗議をする、事実の徹底的な解明を求める、それから拉致を拉致として認めるということを強く申し入れるということでございまして、午後の会談で金正日総書記が拉致を拉致として認め、謝罪をしたという経緯でございます。

 国家の最高責任者から拉致並びにその謝罪を引き出したわけでございまして、それを総理は全体として判断をされて、平壌宣言に署名をするという判断をされたわけでございます。

木下委員 拉致問題について平壌宣言に書いてある、どこに書いてあるんですか。拉致あるいは謝罪、何もないですよ。ここにあるのは、今おっしゃったように、三項目めに「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。」その後、「また、日本国民の生命と安全にかかわる」、このくだりがあるだけじゃないですか。

 「双方」とは何ですか、「双方」とは。我が国が北朝鮮に対して何か脅威を与えたことはありましたか。あったら言ってください。「双方」とは何ですか、これは。そしてその後に、拉致問題だと言われる「日本国民の生命と安全」、これはどういうことですか。「双方」とはどういうことですか。日本が何か北朝鮮に対して脅威を与えたことはありますか。答えてください。

田中政府参考人 当然のことながら、日本が北朝鮮に脅威を与えたということがあるとは思いません。ただ、北朝鮮が通常の国際法の中で、国際法に従った行動をしている国かどうかということについては、私どもは明らかにそうではないと思っているわけでございます。

 ですから、こういうものというのは明らかですけれども、日本は当然のことながら国際法を遵守して、互いの安全を脅かすような行動はとらない、これはもう当たり前のことでございます。北朝鮮という国が、従来の行動様式から見て、そういうことを約束すらしてこなかった、それを約束させるということに大きな意味があったということでございます。

 それから、「また、」以下は「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」、これは御案内のとおり、拉致の問題と工作船の問題というのは非常に不可分の関係にございますし、この両方を指しているということでございます。

木下委員 拉致や謝罪を認めたというのは、これは金正日総書記と小泉首相の会談のときだけでしょう。これは単に日本側がそう言っているだけなんですよ。北朝鮮側から見ても第三者から見ても、日本政府がそう発表していること以外、金正日総書記が謝罪をしたとか拉致を認めた、証拠としてどこにも残っていない。客観的な証拠がないんですよ。事実、北朝鮮では拉致や謝罪したなんという発表は、テレビあるいは国民に対して全く知らせていない。ただ我々だけが、日本だけが、いや、正日さん、拉致を認め謝罪したよと。歴史的に見たら、こんなのは何の価値もないんですよ。なぜ文言の中に入れなかったんですか。

田中政府参考人 金正日総書記が拉致の問題について拉致を認め、謝罪したということは、今や国際社会では幅広く知られていることでございます。

 それから、北朝鮮という国が、先ほども申し上げましたけれども、一夜にして変わるということを想定するわけにはいきません。私どもは、この拉致の問題というのは、まさに日朝首脳会談を出発点として徹底的な解明を行っていくということで、この問題の解決というのはこれからのプロセスの中で解決が図られなければいけない。

 工作船もそうだと思います。工作船についても、二度とこのようなことはしないという約束の中で、それを一々検証していくという作業がこれからあるということだと思います。

木下委員 世界が知っているなんといったって、こんなものは半月もすればみんな忘れてしまうんです。最後は、平壌宣言に何が書いてあるか、ここが歴史的に見たら評価されるんです。外交をやっていたら、そのぐらいのイロハは当然承知していなければいけない。

 しかも、平壌宣言を署名する直前に、いわゆる非公式のペーパーを見せられた。なぜ、それを十分確認し、そして平壌宣言に修正を加えなかったのか。一晩でも宿泊して、鉛筆なめなめ向こうの当事者と真剣な議論をするのが交渉じゃないんですか。なぜそこまで徹底してやらなかったんですか。これだけ重大な情報を得ながら、八人お亡くなりになっているという情報を得ながら、その事実確認もしないでサインをする。

 安倍官房副長官、どうですか。安倍さんは、一時は署名をすべきではないという意向だったと伝えられていますが、この点についてどうお考えでございますか。

安倍内閣官房副長官 今般、首脳会談によりましてもたらされた安否情報、八名の方々が既にお亡くなりになられているという北朝鮮の情報でございますが、これは極めて重い、重大なことであったわけでございます。

 それを受けまして、私ども、昼の打ち合わせどきにおきましては、金正日本人がみずからこの事実を認めて、国家の関与を認めて、その上で謝罪、遺憾の意を表明しなければ、それは当然署名するべきではないという考え方、総理もそういう考え方でございました。しかしながら、午後の会談において金正日みずからがそうした事実を認め、謝罪を表明したわけでございます。

 そしてさらに、まだまだ拉致問題についても当然これから解決を図っていかなければならないわけでございますし、また、核・ミサイルの問題もたくさん残っております。そうした諸問題について正常化交渉を通して、そのテーブルをつくって、そこで厳しく追及をしていく、そしてその中で我が国の安全も確保していく、拉致問題についても徹底的にはっきりさせていく、生存者はすべてちゃんと帰国させる、家族も含めて帰国をさせる、ほかの方々は本当にそうだったのかどうかということも究明していく、そのためにも、これは正常化交渉をスタートさせるべきであるという判断を総理がされたわけでございまして、私は、その判断が正しかった。その結果によって、今度十五日には五人の生存者の方々が帰国をされるということに結びついた、私はそのように思うわけでございます。

木下委員 それからもう一つ、今回の小泉訪朝で極めて異例だったのは、この訪朝を首相官邸で知っていたのは総理と福田官房長官、古川官房副長官、そして秘書官の二人。安倍さんは直前まで御存じでなかった、あるいは川口大臣も直前まで御存じでなかった。あとは外務省の竹内事務次官、田中局長、平松アジア課長、このライン。まさにごく一部だけのラインで決められたわけですが、安倍さんは三十日ですか、その発表の直前に知ったわけですか。どう思いましたか。

安倍内閣官房副長官 確かに、私が知りましたのは、発表された三十日の朝でございます。

 しかしながら、私は副長官でございますから、いろいろな重要事項について、私が知らないということはほかにもいろいろあるわけでございます。この件に関しましては、私がそれを知らされた後は、総理ともかなり突っ込んだ協議をさせていただいたわけでございます。

木下委員 外交の当事者である川口大臣、蚊帳の外に置かれていたことに対して反論はありますか。どう思いましたか。

川口国務大臣 この件につきましては、外務省といたしまして、総理の訪朝に至る過程において、私の、外務大臣同士の会談もございましたし、八月に局長の会談もございました。そして、その前からこれについては準備を進めていたわけでございまして、その過程で私は逐一報告を受けておりますし、プロセスについてはずうっとそれを把握しながら、そして、必要に応じて指示をしながら事を進めてきたということでございます。

 事柄の性格上、外務省の中で大勢の人が知っていたということではございませんけれども、限られた人数の中でこれはきちんと組織として仕事をしてきたということでございます。

木下委員 大臣、今回の小泉さんの訪朝というのは、これは拉致問題だけではなくて、不審船問題、あるいは核開発、ミサイル開発、あるいは化学兵器、北東アジアの安全保障にかかわる重大な問題が背景にあるわけですね。だとすれば、当然、拉致問題を追及していた警察庁、あるいは防衛を担当している防衛庁、あるいは公安調査庁、関係省庁、これがプロジェクトチームをつくって、北東アジアの軍事情勢とか北朝鮮の状況、金正日体制の行方、現状、こういったものを、十分現状と将来を見越した上で、むしろプロジェクトチームをつくって徹底的に情勢分析をして、時期なり、あるいは内容を含めてやるのが外交じゃないですか。民意も無視して一部だけが突っ走る、こんな危うい外交をやっていていいんですか。

 これまで、例えば韓国との日韓交渉あるいは日中国交回復、これも政治、経済、社会、国民を巻き込んで徹底的に議論した。そして韓国と国交を結び、中国とも国交を結んだ。何で北朝鮮だけ、これだけ、一部の人間だけがやるようなこうした外交をやるんですか。これは異常じゃないですか。

川口国務大臣 まず申し上げておきたいのは、ミサイルあるいは大量破壊兵器、工作船、拉致その他の日朝間の多くの問題、これ自体につきましては、我が国の政府の中で、関係の省庁あるいは外務省の中で密接に協議をし、連携をしております。また、国際社会の中でも、特に安全保障問題に関心を持っている国は非常に多いわけでございまして、こういった問題についても、アメリカ、韓国と連携をしながら議論をずうっとしてきております。

 私が限られた人数の中でこれについては組織として仕事をしたということを申しましたのは、国交正常化交渉を再開するかどうかということの事前のコンタクトあるいは事前の準備の段階の話でございまして、政策一般については、当然のことながら、警察庁とも、工作船の話については海上保安庁とも、関係の省庁とは密接に連絡をとっております。

 今回の総理の訪朝というのは、こういった問題について、先ほど来申し上げていますように、北朝鮮側が誠意を持って真剣に取り組むという姿勢を持っているかどうかということについて、総理として総合的な観点から見きわめるというためにおいでになられたわけでございまして、そういった準備ということについては、これは外交上のさまざまなことがございますので、事柄の性格上、少ない人数で行ったということでございますけれども、今や入り口に立ったわけでございまして、既に、今後どうやって進めるかということについては、十分に関係の省庁ともお話をさせていただいているわけでございます。

木下委員 いや、そんなことは聞いていないですよ。いつタイミングをはかるかはやはりチームを組んで、きちんと訪朝するという前提のもとでやらないで、いろいろな情報を集めてきて、あとは一部だけが独走する、こういう体制じゃ困るんですよと言っているだけなんです。

 時間がありませんので、もう一つ。
 先ほど、委員の方からマツタケの土産の話が出ました。午前中の参議院の外務委員会でもこの問題が出たようなんですが、どうなんですか。本当にマツタケがお土産として、トラック二台分と言われていますが、お土産があったんですか、なかったんですか。答えてください。

安倍内閣官房副長官 午前の委員会でもお答えをしているわけでございますが、私自身は、そういうお土産があったかなかったかということについては全く承知をいたしておりません。報道されているということは承知をしておりますが、そういうものがあったかなかったかということについては全く承知をしておりません。

木下委員 田中局長、どうですか。

田中政府参考人 承知をしておりませんし、確認もされていないということだと思います。

木下委員 そんなばかな話がありますか。いいかげんにしなさいよ。さっきも、安全保障上にかかわる危機管理の問題なんですよ。テレビにちゃんと映っているんです。知らないなんてふざけたことを言っちゃいかぬですよ。なかったんですか、あったんですか。もう一度答えてください。

安倍内閣官房副長官 先ほど来私も答えているわけでございますが、この問題について、私、全く承知をしていない、知らないということでございます。

 また、一般論として、こうした外交上の儀礼上のお土産等というのは間々あることでございますが、そのお土産はどういうものをもらったのか、あるいはまたそれをどうしたのかということは、基本的にはそれを公にするということについては議論があるところであろう、私はこのように思います。

木下委員 そんな矛盾した話、ないでしょう。なかったのならなかったと言ってください。知らなかった、知らないじゃ済まないんですよ。あれだけ報道されているんです。秘密でも何でもないじゃないですか。あったのならあった、お土産がありました、なぜそう言えないんですか。

 午前中の委員会では調査をするという答弁があったようですが、報道されてからもう何日たっているんですか。こんなものは、午前中に調査すると答えたらしいんですが、今までになぜ調べられないんですか。

 あったかなかったか、田中局長、あなたが知らないということはないんだから、どうなんですか。

田中政府参考人 答弁の繰り返しにはなりますけれども、今、安倍副長官が御答弁されましたように、北朝鮮という国といえども、やはり礼譲ということはございます。ですから、通常、お土産ということについては、そういう慣例に従って適切に処理がされるということでございますし、具体的なものが何であったかということについて公に議論すべきものではないというふうに思います。

木下委員 では、あったということですね。お土産があったと認めたわけですね。中身は言えないけれども、あったということですね。

田中政府参考人 お土産が何であったかということについては、確認をしておりません。

木下委員 そんな、マツタケぐらいのことで何で隠す必要があるの。あったのならあった、マツタケでしたと言えば済むことじゃないですか。何でそんなことにこだわるんですか。

 マツタケなんでしょう。もう一度答えてくださいよ、ちゃんと。そんなことで隠す必要はないんじゃないですか。日本からだって持っていったんでしょう、お土産を。

吉田委員長 木下厚君の質問は、あったかなかったかということでございますから、あるならある、ないならないと答弁をしてください。

安倍内閣官房副長官 申しわけないんですが、私は、今の段階ではあったかなかったかも承知していないということでございます。

木下委員 田中局長。

田中政府参考人 確認をしておりません。

吉田委員長 木下厚君、残念ながら時間が来ていますので。

木下委員 いや、さっきは儀礼としてそういうものはあり得る、今は確認しておりません、何でそんなことでぐらぐら揺れるんですか。
 委員長、これはきちんと理事会で確認してください。
 時間ですので、以上で終わります。

吉田委員長 木下厚君の時間はもうなくなりましたので、今理事会でということでございますが、その後、中川理事からの質問がございますので、引き続き中川理事からやってください。


中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。

 まず、木下議員の続きをやらなきゃいけないと思うんですが、マツタケ。こんなことで審議が中断するとか理事会を開かなきゃいけないとか、そんなことにならないように心して聞いていただきたいんですが、私は先ほどの議論を聞いていて改めて思ったんですけれども、まだ外交の展開というのが変わってきたんだということを認識していないんじゃないかなというふうに思うんですよね。

 国民世論というもの、これに対して余りにも鈍感ですよ。大体、今なぜマスコミが取り上げて、国民の人たちがあれを見て何だこれはという気持ちになっているか、そこのところをしっかり認識しなければいけないというところなんですよね。

 あの交渉の中で出てきた結果を見て、おめおめと何でああいう土産を持って帰ってきたんだという、この気持ちなんですよ。これがあるから、あの報道がされたときにこれだけ話題になって、どういうメディアであろうと、それが国民の心にはね返るんですよ。それに対して、どうして説明する手段を持たないのかということですよ。

 それが、そもそも、この拉致問題そのものについても同じようなことが言える。ここのところがいまだにわかっていないのが外務省であり、安倍副長官はわかっているのかと思ったら、全くそれに対して関知せずという他人事みたいな話をしている。ここから始まってくる不信感というのが、次、外務省が何か説明したときに国民の心が閉ざされてしまう一つのきっかけになってしまう。そういう今の時代背景というのをどこまで敏感に外務省が受け取っているかというのがこの議論で反映されているんだというふうに思うんです。

 そういう意味で、もう一回聞きます。これは素直に言ったらいいんですよ。説明する責任ありますよ、これだけ騒がれているんだから。この問題についてちゃんとした見解を説明しなさい、田中局長。

田中政府参考人 先ほどの御答弁の繰り返しになりますけれども、何をお土産としていただいたのかということについては確認をしておりません。けれども、どの国であっても、外交儀礼上の問題として、何をお土産として交換したかということを公にするということは、いずれにしても差し控えているということでございます。

中川(正)委員 これは、さっきの答弁でいくと、もらってきたものはもらってきたんだということは認めたということですね、中身が何であれ。どうなんですか。

田中政府参考人 私が申し上げていますのは、これは、どこの国、北朝鮮だからとか北朝鮮でないからということではございません。外交儀礼という形で、一体何を贈り物として交換したのかということも含めて公に議論をするものではないということでございますし、もらった物については適切に処理がされているということだと思います。

中川(正)委員 処理を、だれに何を配ったかということを非常に気にしているようですが、それ以上に私が気になるのは、あれをもらってきたという行為なんですよ。

 こういう外交儀礼を超えた交渉をしているわけですよね、拉致問題で八人も死んでいたという事実を聞かされた、その中で。それで、これをおめおめと持って帰ってきたという、このことに対して、副長官、改めてこれは弁明をする必要があると思うんですよ、これはあなたが知らない間にちゃんと積まれて帰ってきているわけですから。そのことについて知る知らないよりも、事実がそうしてある、マスコミもそういうふうに報道された、そのことに対する弁明はやはりすべきことであります。これはけしからぬ話です。

安倍内閣官房副長官 当日も、正常化交渉に向けて、再開すべきかどうかの判断をする、そしてまた調印をするかどうか、そういうことをその限られた時間の中でそれぞれ判断をしなければならないという中で、それに没頭して、また帰ってきたわけでございまして、翌日からは、調査団を出すかどうか、そしてまた昨日までは、生存者の方々を何とか日本に帰国させなければいけないということに没頭していたわけでございまして、このお土産がどうであったかこうであったかということについては、私自身は、はっきり申し上げまして関心がなかった、それどころではなかったわけでございまして、そしてまた、私は全くそれについては承知をしておりません。

 そしてまた、それを調査するかどうかということにつきましては、ただいま田中局長が答弁いたしましたように、相互儀礼上、それは基本的には公にはしないということなんだろうと思います。

中川(正)委員 国民の気持ちを代弁すれば、この際、これを受け取ってきた人間を処分すべきです。それぐらいの調査をして説明責任を果たすということ。いかにこの問題について皆が敏感になっているかということに対して、しっかりこたえていくということ。そのことを改めて申し上げたいというふうに思うんです。

 さっきの副長官の話は、説明じゃなくて言いわけですよ。これは格好悪い。そんな話をしないで、前向きに国民に対峙をしていただきたい。改めてこのことをお願い申し上げたいと思います。

 さて、本論に入っていきます。
 この委員会の議論でも、あるいは、当初、小泉総理が北朝鮮に行くか行かないかというそこの時点での論点でも、まず問われているのは、金正日体制、金正日という総書記が交渉相手として値するのかどうか、それだけ信用できるのかどうか、ここだというふうに思うんです。それを見きわめながらの交渉なんだというふうに言いたいんだろうと思うんですが、先ほどの議論の中で、この拉致問題に対して、遺憾であった、そういう言葉が出てきたという報道、それから、そのことを説明しているのは日本のサイドだけなんですね。

 これは改めて聞きたいんですけれども、あの会談が終わった後、金正日総書記みずからが、どこの場所で、どういう形で、世界に向かって、みずからがこのことを取り上げて話をしたか。それは日本としてはどういうふうに見ていますか。

田中政府参考人 大変残念ながら、北朝鮮という国が通常の、日本のような体制の国ではないという前提でございますし、私どもは、金正日総書記が国内あるいは国外でこの問題について発言をしたという情報は把握しておりません。

中川(正)委員 ということは、これは一つ一つ確かめていくという部分の一番大事なところ。先ほどみずから言われましたが、この北朝鮮というのは普通の国じゃないんだと。どこが一番違うかといったら、金正日総書記の独裁軍事国家なんだということだと思うんですよ。その独裁者本人がこのことについて何も言わない。

 そこで、北朝鮮の体質と姿勢が変わったという本質的な見方が前提になって、恐らくはこの二十九日、三十日の国交正常化交渉が始まってくるんだろうというふうに、日本のサイドは一歩踏み出しているんだろうと思うんですが、その根拠になることというのは何なんですか、大臣。

川口国務大臣 金正日総書記が、先ほど来出ていますように、この拉致問題について、これが遺憾であり、おわびをすると言い、そして再発防止をする、そして関係者を処罰したと言ったことは、これは事実でございます。

 これが外に出ていない、彼が外に向かってそれを自分自身で発言していないということでございますけれども、彼が、金正日総書記がこのことについて真剣に、そして真摯に対応していくかどうかというのは、まさにこれからの正常化交渉の中でこれは私たちにわかるわけでございまして、平壌宣言の精神と基本原則にのっとっていないというふうに我々が判断をすれば交渉の過程というのは前に進まないということでございまして、これは金正日総書記もよくわかっているということでございます。

 独裁国家云々というお話がございましたけれども、金正日総書記が現在北朝鮮の最高権力者であって、この問題について解決ができるという意味で金正日総書記が相手であるということは、これは間違いのないところであると思います。

 なお、金正日総書記の自身の言葉ではありませんけれども、北朝鮮外務省のスポークスマンは談話として、かつて日朝関係が不正常であった際にこのような問題が発生したことについて、これは遺憾である、今後このような問題が発生することを防止する、そして家族の方が面会できるように、そして、本人たちが希望する場合には帰国または一時帰国が実現できるように必要な措置をとる用意があるということは言っているわけでございます。

中川(正)委員 金正日総書記みずからの言葉で外に向かって、この拉致問題について遺憾であったということと、それから家族に対する補償、そしてさらなる調査、そういうような、本来、その交渉の過程の中で出てきたという言葉を外に向かってみずから話をすべきだ、それが大前提じゃないかというその話は、これからの交渉の中で当然、日本としては一つの条件として打ち出していくわけですね。そのことを確認したいと思います。

川口国務大臣 拉致問題の解明は、国交正常化交渉の中で最優先の事項であると我々は考えておりますし、昨日、関係閣僚会議で基本方針を決定いたしましたけれども、そこにもきちんとそういうふうに書かれているわけでございます。

 我々としては、平壌宣言の精神と基本原則、そして昨日決まりました基本方針にのっとって、拉致問題については、事実の解明について、これは全力を挙げて解明をしていくということでございますし、総理もおっしゃっていらっしゃるように、この問題を棚上げしては正常化というのはあり得ない、そういうことでございます。

中川(正)委員 大臣、ごまかさないで、直接問いに答えてください。
 私が言っているのは、北朝鮮国内の新聞にも取り上げられない、マスコミが入り込んでいって国民に確かめたら拉致ということさえ知らない、言葉も知らない、そういう状況の中で、我々が、日本のサイドがそのことを金総書記から閉ざされた密室の交渉枠の中で聞いたからといって、こちらから一方的な情報だけが世界には伝わっている。このいびつさなんですよ。

 このいびつさについて、相手の国が、北朝鮮という国がまともな国になってくれるのであれば、交渉する相手としてそれなりの信頼性を持ってくれるという国であるとすれば、それは、金総書記、変わってきたんですねという一番大きな証拠になるんですよ。自分がしっかり腹を決めてこの国の体質を変えていこうとする、そこが一つのメルクマールじゃないですか。それをなぜ交渉しないのかということを今聞いているんです。

 当然、直接、そうした報道と本人の言葉、外に出してもらえますねという確認はするんですね。どうなんですか。

川口国務大臣 先ほど来申し上げていますように、北朝鮮との交渉に際して拉致問題というのは優先課題、この事実解明については全力を尽くすということでございますし、そうした過程で北朝鮮が、平壌宣言に書いてありますように、この問題について誠意を持って真剣に取り組んでいくかどうかというのは、まさにそれを我々はその過程で見ていくということでございまして、その結果として、先方の北朝鮮の態度、行動がそれにのっとっていないということでしたら北朝鮮との正常化の交渉は前に進んでいかないということですから、そしてまた、このことは北朝鮮はよく理解をしているということでございます。

中川(正)委員 様子を見守っていくというだけで、こちらから一つのカードとして示さないというこの交渉姿勢というのが私はどうもわからない。そこが腰が引けていると言われる一つの大きな要因なんですよ、一つ一つ積み重ねていけば。このことを指摘しておきたいというふうに思います。

 それからさらに、今後の日朝交渉、いわゆる正常化交渉、二十九日、三十日というような予定が立っていますけれども、私は、これは話が早過ぎる、もっと整理しなければならない、あるいはまた国民に対してももっと説明しなければならない枠組みがあるというふうに思っています。

 これまでの報道で、この交渉の枠組みとして、国交正常化のその本格的な交渉というものと、それから日本人の拉致事件あるいは個別事件の解明のための分科会を設置していって、これを分科会ベースでやっていくという話と、それから安全保障協議会の設置、これは核やミサイル問題あるいはアメリカとの連携ということもあるんでしょうが、そうした問題と不審船問題、こうしたものをこの安全保障協議会という形で切り離してやっていく。

 ということは、この日朝の交渉、いわゆる正常化していく交渉の前提として拉致問題があり、あるいは安全保障問題があり、こうした問題が解決されて初めて本格的な正常化交渉に入っていくんだというイメージを我々としては当然持って見守っていたんですが、どうも、最近出てきている報道を見ると、そうじゃなくて、これは全部並行協議でいきたいと。正常化交渉は正常化交渉、それから拉致の問題は拉致の問題、安全保障の問題は安全保障の問題、これは並行協議でやっていきたいというふうな形で、分科会とかあるいは協議会とかというものをつくっていくというふうに受け取れるんですね。

 この姿勢というのは、もう一回私、確認したいんですが、これはやはり当初からの話で、安全保障にしても拉致問題にしても、あるいは人権という問題もあるかもしれない、そうしたトータルな話の前提が全部そろった上での正常化交渉というふうにこれは理解していいんですね。だとすれば、この分科会や協議会あるいは並行協議というのをどういうふうに説明するのか、どういうプロセスでやっていこうとしているのか、ここのところを説明してください。

田中政府参考人 委員先ほどから御指摘がございます、北朝鮮が本当に変わったのかどうか、私たちにはわかりません。だけれども、北朝鮮が本当に変わるまで待つということなのかというと、それはそうではないと思います。まさに北朝鮮を本当に変えるような努力をしていかなきゃいけない。そのために、平壌宣言の中に書いてありますように、この平壌宣言の基本的な精神、原則に従った正常化をやるというのが基本原則でございます。

 ですから、先生が御指摘になりました日朝国交正常化交渉もそうでございますし、安保協議もそうでございますが、あの宣言全体の中で連携をとって進めなければいけない。我々は、諸懸案というものを解決しなければいけないという大前提に立って国交正常化交渉も安保協議というものもやる。したがって、それは並行協議というよりも、日朝宣言の中に位置づけられた、連携をとって行っていく交渉であるということでございます。

 拉致問題についてどういう形で取り上げるかということは今後議論をしていく必要があると思います。最も効果的で適切な形で拉致問題を取り上げていきたい。これは政府の方針として決めていただきましたけれども、最優先の問題として国交正常化交渉の中でやっていくということですから、それが具体化されるように最も効率的、有効な方法でやってまいりたい、かように考えております。

中川(正)委員 大局的に見て、最終的にアジアの安定と平和という中で北朝鮮という国をどう位置づけていくかという観点からいくと、先ほどの話では、どうも日本が、日本がというよりも小泉内閣がということかと思うんですが、小泉内閣が功を焦り過ぎているという話だと思うんです。

 正常化交渉というのは何が具体的な話になるかといったら、向こうのカードですよね、これ。経済支援を具体的にどういう形で進めるかという中身になるわけですね。これと切り離して安全保障の話をやり、そして拉致の問題の解明をやる。これを同時並行的にやるというのだったら、こっちのカードはどうなるんですか。完全に向こうのペースじゃないですか、これだったら。

 こういう動きが出ているからこそ、アメリカのケリーさんがやってきて、北朝鮮に行って一方的に彼は言ったわけです、安全保障の条件を。私は、あの様子を見ていて、あるいは日本に帰ってきていろいろな人への説明を聞いていて、あるいは韓国の中の説明を聞いていても、どう考えてみても、北朝鮮に物を言いに来たんじゃなくて、日本にくぎを刺しに来たとしかとらえられないというふうに思うんです。勝手にやってもらっちゃ困りますよ、日本との国交正常化というのはこちらのカードじゃないですか、そのカードを先に使ってしまって、安全保障やら拉致問題やらをそのまま後にずれ込ませるような、そんな日程でやってもらっては困りますよ、そういう意思表示だと私は受け取りました。そのことが実際に行われるとすれば、もう一回根本的にこの交渉過程というのは考え直すべきだというふうに思います。

 どうして並行協議という考え方が出てくるんですか。どうして正常化交渉の前の条件にそれをしないんですか。どうですか。

川口国務大臣 カードという意味で申しますと、正常化をするということ自体が日本のカードでございます。

 ということで、この進め方については、その安全保障協議を立ち上げるということについては第一回の正常化交渉の場で話をしていくということでございますけれども、今の時点で、それぞれの問題、工作船とかミサイルとか、あるいは拉致とか、あるいは原爆被爆者の問題とか、さまざまな日朝間の問題がありますけれども、そうしたことを、何をどの委員会で、要するに安保協議でやるか、あるいは本筋の交渉ですね、そこでやるかということについては決まったわけではない。テーマをはっきり二つに分けないかもしれない、両方の委員会でやるかもしれない。いろいろな可能性があるわけでございます。

 その中で、拉致の問題というのは非常に大事な、我が国として最優先の課題、事項として考えているわけでございまして、これは当然ながら、先ほど来申していますように、全力を挙げて解明をする、そのために先方には強く迫っていくということでございまして、今の時点でこれを分科会でやるというふうに決めているわけではございません。

中川(正)委員 安全保障も協議会でやるというふうには決めていないんですか。これは決めているんですか。

川口国務大臣 第一回のといいますか、第十二回の国交正常化交渉におきまして、どのような議題でどのような進め方でやっていくかということを先方と話をしていくということでございます。

中川(正)委員 それでは、こういうことを発表している外務省の事務方、しっかり処分してください。これはしっかり出ているんですよ。

 そんなことを改めて指摘をしておきたいのと、ここで確認をしたのは、もう一回言いますよ。これは安倍副長官にも答えていただきたい。この日朝の正常化交渉の前提になるのは、拉致問題と安全保障、この辺を前提にして、この辺の議論がしっかり煮詰まらないとこの正常化交渉も始まらないというふうに、国民としても私たちとしても理解をしていいんですね。

安倍内閣官房副長官 小泉総理の立場は一貫しておりまして、原則としては、拉致問題については、拉致問題の解決がなければ正常化はしない、そういうことでございます。

 その上で、拉致問題につきましてもさまざまな問題がございます。どこで解決をすればいいのかということなんだろうと思います。一番結果が出しやすいところでそれを話し合い、また解決するのが国益を考えた上でベストであろう、こう考えております。ということは、正常化交渉の中で解決すべきものは当然ある、こう考えております。

 安全保障問題については、安保協議もございますし、また正常化交渉もございます。しかし、正常化交渉を先に終えてしまって、安保協議の中で、重要な課題はそちらでやっていくということにはならないということでございます。

中川(正)委員 次に、拉致の問題に移っていきますが、先ほども責任者の処罰の話が出ました。この現地調査の中でも、二人の人間が九八年に処罰をされた、これも矛盾した話ですが、実はもう一つ、その実行犯の問題もあると思うんですね。

 例えばここに、よく話が出てくることなんですが、原さんのときに関与をした辛光洙が、韓国で一たん死刑の判決を受けて、特赦をされて北朝鮮に帰っていますね。この辛光洙が、このときの裁判記録、これは一九八五年のソウルの刑事地方法院判決の中で、そのときの拉致の状況が非常に詳しく供述をされている。これが裁判の中で有罪となったその根拠になっているわけですね。これは一九八五年に出た判決なんですけれども、これに対しても、日本の外務省、非常に鈍感なというか、鈍感を超えているんですね。そのころのコメントを見ていると、非常に情けない話が出ているんですよ。

 例えば、阿南さん、この人はたびたび登場しますけれども、今中国大使になっている阿南さんが、このころの本省の中の責任者であったころ、これは九七年のコメントですが、拉致疑惑については、亡命者の証言以外には証拠がないわけなんですから慎重に考えないといけないですね、韓国の裁判で証言があるからといったって、韓国にとらまえられた工作員だから、彼らが何を言うかわからない、こんなコメントを出しているというのは、これはよく報道されている事実ですね。あるいは、槙田氏も、これはよく引用される話ですが、当時アジア局長の時代に、日朝国交正常化がたった十人のことでとまっていいのか、拉致にこだわり国交正常化がうまくいかないのは国益に反すると。これぐらいの現状認識と、それから、日本の国益に対して全く背を向けた形のコメントをしていたということですね。こういうことについては、これは改めて外務省としても総括をする必要があるというふうに思うんです。

 一つは、そのことについてのまず国内の問題の総括ということについてお尋ねをしたい。どんな心づもりでいるのかということですね、これをお尋ねしたいというのが一つ。

 それからもう一つは、この辛光洙が、日朝の首脳会談の十五日前、だから九月二日ですね、首脳会談の十五日前の九月二日に板門店で辛光洙の帰国二周年の集会に参加をしていまして、代表して宣言を読み上げているんですよ。これは、息がとまる瞬間まで偉大なる将軍を絶対的に崇拝し、党と祖国と人民が呼び起こした信念と意志の強者らしくチュチェ革命偉業の完成のための聖なる道で自分のすべての知恵と力をささげると。それで、彼は英雄になっているんですよ。実行犯が、こういう形でたたえられて、大衆の前で宣言文まで読んで、このことを背景にしてあの首脳会談があったんです。それで、拉致問題がこうして今表に出てきているということなんです。

 その後、この辛光洙が捕らえられてそれなりの処罰を受けたという連絡はありますか。

安倍内閣官房副長官 ただいま委員が名前を挙げられた方々とも、私は随分激しく議論をしてまいりました。

 辛光洙の件につきましては、私は平成九年にこの場でかなり詳しく質問したこともございます。しかし、ただ、当時は、その辛光洙についても、質問したのは私と西村眞悟議員だけではなかったか、こう思うわけでございます。それだけではなくて、辛光洙が韓国で捕らえられたときに、当時の盧泰愚大統領に釈放の要望書を我が国から送ったわけでございますが、それには土井委員長も、また御党の大幹部も名前を連ねていたわけでございまして、そういう時代であったということも、また一方事実であるわけでございます。

 ただ、私どもとしては、今までそれぞれ、その当時、時々の外交が適切であったかどうかは常に謙虚に検証、反省する必要はあるんだろう、こう思うわけでございます。

 また、辛光洙につきましては、私どもは北朝鮮に対して引き渡しを要求しているということでございます。

川口国務大臣 先ほど委員が、阿南大使それから槙田大使の局長時代の御発言を引用なさったわけでございますけれども、私ども、そういった発言があったかどうかということについて記録を調べてみましたけれども、公的な場でそういった発言は見当たらなかった、確認できなかったということでございます。

 ただ、非公式の場でそういった発言がもしなされていたとすれば、これは、当時、拉致問題をどうやって解決していったらいいかということを外務省として考える、議論をしている中で出た話かもしれませんけれども、これについて誤解を招くようなことがあったとしたら残念であると私は思いますが、先ほど安倍副長官もおっしゃられましたように、国交正常化交渉すら始まっていなかったこの時期に、外務省として対応できるということについては制約が当然にあったということも御理解をいただきたいと思います。

 安倍副長官もおっしゃられましたように、外務省としては、常に外務省に対する批判は謙虚に受けとめていきたいと考えております。

中川(正)委員 いつも外務省の中の問題になると、同じような答弁から始まって、結局また内部から出てきた資料だとかあっちから出てきた資料だとかと追い詰められて、最終的には、済みませんでした、その事実がありましたということで処分しなければならないというパターンをずっと外務省は繰り返してきたんですよ。だから、今回も恐らく最終的にはそういうことになるだろうということを予告しておきたいというふうに思います。

 だから、やはりこれは、議員自体もそうです、先ほど官房副長官から出ましたけれども、私たちの総括も含めて、すべてがこの問題について日本のサイドも一遍襟を正すということが必要なんだろうというふうに思います。それが、改めて国民に対しての信頼というのをベースにしながら北朝鮮に向かっていく、一丸として向かっていく、そういうことになっていくんだろうというふうに思っております。そのことを指摘しておきたいと思います。

 改めてその関連で、辛光洙の例を取り上げましたけれども、実行犯については、辛光洙だけじゃなくて、何十人あるいは何百人という関連の中で組織的にやられたことだと思うんですね。そのことについてのそれぞれの調査と犯人の引き渡し。それから、よく今報道されていますが、北朝鮮の工作員だけじゃなくて、日本の国内でそれぞれこれに関与した人たちがいるわけです。これについての調査、そして過去にさかのぼった形での総括、これが必要だと思うんですね。

 警察の方に聞きたいんですが、日本の中でこれを幇助した、あるいはこの拉致に携わった人たちに対する捜査それから処罰、これについては今どういう対応をしていますか。

奥村政府参考人 お答えをいたします。
 北朝鮮による日本人の拉致事案、拉致容疑者につきまして、日本の中で北朝鮮に協力した組織とかあるいは人間がいるんじゃないかということでございますけれども、これは、私ども今いろいろな事案を捜査している最中でございまして、そういう事実を把握しているかどうかを含めまして、捜査中のことでございますので、お答えは差し控えたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げれば、警察といたしましては、犯罪に協力した者が明らかとなり、またその協力行為が具体的な刑罰法令に違反する場合には、これに対して厳正に対処してまいりたいというふうに考えております。

中川(正)委員 現在、この拉致の人たち、まあ十五人まで認定が出てきましたけれども、実際にそれぞれの地方の警察署管内では、百人を超える人たちがうちも拉致の可能性があるというふうな申し入れをし始めてきているということですね。さらに、さまざまな情報を、NGO等々含めて、今錯綜していますけれども、総合すると、やはり七十人を超える、あるいは、韓国の例からいくと四百人を超えていますから、三けたのレベルに至る拉致という犯罪があったんじゃないかということが言われています。

 これについては、これからの交渉の中で、その前提でいくのか、それとも十五人の限られた人数を対象にした交渉でいくのか、そのこともはっきりしてください。

田中政府参考人 先ほど来警察当局からも御答弁がございましたけれども、私どもも、警察当局と緊密に連絡をし、内閣官房とも御相談をしながら対処をしてまいりたい、かように考えております。

中川(正)委員 わかりにくい答弁はしないでくださいよ。ちゃんと日本語をしゃべってください。どちらなんですか。十五人に限らないということですか。

 ということは、警察からの拉致という認定がないと外務省も動かないということなんですか。それとも、そうじゃなくて、もっと主体的な調査を中に入れていく、外務省なりの調査を入れていく、そういう誠意を私は見せてほしい、見せるべきだというふうに思うんですけれども、そういうようなことなんですか。どっちなんですか。

安倍内閣官房副長官 日朝国交正常化に関する閣僚会議のもとに拉致問題の専門幹事会が置かれておりまして、私は議長を務めておりますが、先般開かれましたこの幹事会におきまして、新たに、私の子供ももしかしたら拉致されたのではないかという情報が寄せられているわけでございまして、そういう情報につきましては、すべて警察におきまして調査、捜査をいたしまして、その中で北朝鮮側に問い合わせるべきであるという案件につきましては、これは外務省を通して北朝鮮側に問い合わせを行っていくということでございます。

中川(正)委員 時間が迫っておりますので、最後の課題を一つ取り上げたいと思うんです。

 これは先ほどから話が出ていますように、日本だけが功を焦って突っ走るんじゃなくて、世界の枠組みの中で北朝鮮を正常な形にしていく、あるいはまた国際社会の中に引き込んでいく、そういう戦略、これが周辺からやはり日本に対して期待されている、求められている、そういうことなんだろうと思うんです。

 そういう意味で、この拉致という問題も、一つ一つ誠意を持って解決をしていくという、これはもうもちろんのことなんですが、もっと言えば、日本の過去の歴史からいって、九万五千人の在日朝鮮人の帰国運動で帰った人たち、それについていった二千三百人の日本人妻、そういう人たちがあの北朝鮮にはいて、非常に専制軍事政権の中で苦しんでいる、いわゆる人権侵害と、それから非常な命にかかわる圧迫感の中で生活をしてきた、それが日本のそれぞれの親戚筋にとっても人質をとられているような形で資金が送られて、資金が送られたところが差別をされて何とか生き延びてきたというふうなこと、こんな報道が日々、それこそ帰還者から、北朝鮮から日本へ帰ってきた人たちからどんどん明るみに出されて、その中身というのが今明らかになってきている、こんな現状があるんですね。

 そんな中で、国際的な枠組みというのは、これは人権だというふうに思うんですよ。その人権ということの中で、やはり同じような境遇の中で、韓国も腰が引けながらその辺の交渉を続けてきたけれども、うまくいかなかった。それが、今経済的な大きな逼迫の中で、恐らくこの金正日という体制そのものが存続できるかどうかというその危機的な状況の中で、貨幣経済に変わり、そして北朝鮮の難民というのが中国にあふれ、これが二十万人から三十万人、NGOの中では、これは五十万人を超えていますよ、そういう指摘をしているアメリカのNGO団体もありますが、そういうことの中で進められてきた話ですね。

 実は、アメリカの方で、日本とネットワークをつくろうじゃないか、その中でアメリカとしては、中国を説得して、あの中へ難民キャンプをつくるために八千万ドルを政府として出していこうという法案が今、国会に上程をされています。そういう流れが一つ起こってきているんですが、これを大きくとらえて、日本もそうした世界各国との枠組みの中で、この拉致問題、そして北朝鮮の中でまだ苦しんでいる人たちの救済ということも、あるいはまた金正日という体制そのものに対して投げかけていくこちらのカード、外交カードという意味でも、そうした枠組みに同じような形で歩調を合わせながら協力して乗っていく。そして、そのためにも中国に対してはっきり物を言っていく、中国は難民と認めていないわけですから。そういうようなスタンスというのが今必要なんだろうというふうに私は思うんです。

 どうですか。中国をこの話に巻き込んで、特に難民問題について、こちらのキャンプの設置と、それからアメリカとの協力のもとにこれを進めていく、そういうスタンスをぜひ外務省のサイドからも持っていただきたいというふうに思うんですけれども、お答えをいただきたいというふうに思います。

川口国務大臣 北朝鮮から、人数はよくわかりませんけれども、多くの脱北者がさまざまな事情によって中国に出てきているということは全くおっしゃるとおりでございまして、国際的にも、そういった問題に対して何かやらなければいけないという動きがあるということも聞いております。

 おっしゃったような形で中国にキャンプをつくるのがいいのか、あるいはモンゴルにつくるという話をしている人もいるようですけれども、国際的に取り組んでいくという動きがあるといたしましても、これが現実化するためには、やはり関係の諸国がみんな合意をするということにならないと話は前に進まないということでございます。

 いずれにしても、これは北東アジア地域全体の非常に重要な問題ですので、関係国の間で、二国間で話をしていくということは大事なことだと考えています。

中川(正)委員 さっきのをまた最後に。
 私たち民主党を中心にした議員団が、韓国とそれからアメリカの議員のメンバーと、これについての国際議員団、調査団というのをつくっていこうという動きが今あります。こういった中でアメリカはもう既にアクションをとり始めておりますので、ぜひ政府のサイドでも、こうした大きな流れの中でこの問題を取り上げながら一つ一つ連携をして解決をしていくというスタンスをとっていただきたい。ひとりよがりで功を焦って、ただそれだけで交渉を進めるということ、このことについては断じて許さない、このことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。


2002/10/10-2

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