2002/09/26-4

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参院・決算委員会 平成十四年九月二十六日(木曜日)

○小泉親司君 日本共産党の小泉親司でございます。今日は、日朝首脳会談について質問をさせていただきたいと思います。
 我が党は、今回の首脳会談について、過去の植民地支配の謝罪と清算の問題、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題の再発防止措置などに関して日朝平壌宣言が交わされた、国交正常化交渉の再開が合意されたことは、私たちは重要な前進の第一歩であるというふうに考えております。
 同時に、この首脳会談で、北朝鮮が日本人の拉致を行っていたという重大な問題が明らかになった。我々は、この犯罪については絶対に許すことができない点で厳しく抗議をしたいと思います。被害に遭われた御家族の御心中はいかばかりかということを心から察しております。その点で、私たちは、この事件について真相の全面的な究明が図られるべきだというふうに考えております。
 私も、九八年に国会に出していただいて、九八年のテポドンミサイルの発射事件があったときも、私、当時の河野外務大臣にも追及いたしましたが、この事件でも日本政府が正式な抗議もできない、再発防止策も要求できない。この点で、私たちは無条件でこの北朝鮮との対話、交渉のルートを開いて諸懸案を解決すべきだということを繰り返し要求してまいりました。
 今回の首脳会談では、金正日国防委員長が拉致の事実を認めたという国際社会でも大きな意味のある事実が明らかになった。その点で、交渉のルートが開かれた以上、この全容解明について徹底して行うべきだというふうに思います。その点で、政府は今、調査団の派遣などを決定して、今準備を進めておりますが、まずどういう方針で、また見通しでこの全容解明を進めていくのか、この点をまず私は外務大臣にお尋ねしたいというふうに思います。

○国務大臣(川口順子君) 拉致問題につきましては、大変に総理も、国民の利益と安全に責任を持つ者として大きなショックを、ショックで、強く抗議をする、家族の気持ちを思うといたたまれないということを金正日総書記に対しておっしゃっていらっしゃるわけで、きちんとといいますか強く抗議をなさり、そして継続調査、生存者の帰国、再びこのような遺憾な事案が生じないよう適切な措置を取ることを強く求めるということをおっしゃっていらっしゃいます。そして、これに対して金正日総書記からは、遺憾なことであり、おわびをする、関係者については既に処罰をした、今後二度とこのような事案が発生しないようにするという旨のお話がありました。
 今回、二十八日から拉致問題について事実解明のための調査団を政府として出すわけでございます。様々な情報を、できる限りの情報を得るために最善の努力を尽くしていきたい、事実解明を全力を尽くしてやっていきたいというふうに考えております。

○小泉親司君 私はやはり北朝鮮政府に対しまして、例えば十七日に明らかにされました拉致事件での被害者の方々の名簿、これにとどまらないで、本当にこれがすべての、拉致問題のすべてであるのか、拉致犯罪を行った責任者は一体だれなのか、拉致被害に遭った方々が北朝鮮においてどのような扱いを受けたのか、そういった真相を全面的に究明する必要が私たちはあるというふうに考えております。その点で、田中アジア大洋州局長は九月二十日の衆議院の外務委員会で、十七日の、つまり首脳会談の段階では、安否情報と、金正日総書記が拉致という言葉を初めて口にし、その関与を認めて謝罪をするということでございまして、事実関係の究明はこれからだというふうに答弁をされておられます。
 その後、九月二十一日と二十二日の両日、大連での日米政府間協議が行われました。その場所で日本側は具体的にどのような点を北朝鮮側に要求されたのか、また北朝鮮側からはどういう話があったのか、この点で新たな事実解明はあったのか、この点をまず次にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 非公式な協議という位置付けでございますけれども、正に金正日国防委員長が述べた拉致、それから小泉総理が強く要求をした調査、そういうことに基づいて今後の段取りを協議をしたということでございます。
 私どもとしては、断片的なことではなくて客観的にきちんと情報が開示されなければいけない、徹底的な調査がされなければいけないということは既に首脳会談の段階からの既定方針でございまして、これをきちんと実現をしていってもらいたいという要求をしたわけでございます。先方は、金正日総書記・国防委員長が述べたこと、すなわち拉致として認め、事実の調査、解明をしていくということにも合意をする、情報の全面開示について自分たちは最大限の協力をすると、こういうことでございました。

○小泉親司君 伝えられるところでは、十月の国交正常化交渉再開の日程や議題などの調整に着手した、死亡が伝えられた被害者についての詳細な経過の説明を要求した、曽我ひとみさんを含め五人の詳細情報を要求して、被害者家族のピョンヤン訪問の日程なども協議したというふうに伝えられておりますが、拉致問題では単なる安否情報にとどまらないで、亡くなられた方も含めて、どのように日本から拉致されたのか、どのような扱いを受けたのか、こういう情報の提供、調査要求も日本政府としてはされたということなんですか。

○政府参考人(田中均君) 経緯、事実関係についての情報をすべて開示してもらいたいということでございまして、ただ、こういうものはきちんとしたやり取り、政府間のやり取りとしてやっていかなければいけない、それが今回、二十八日の日に政府の調査団を送るその理由でございます。
 私どもとしましては、その政府の調査団に対して北朝鮮の当局がその経緯その他も含めましてきちんと説明をするということを求めた次第でございまして、先方はそういう説明を行うという方針であろうというふうに考えております。

○小泉親司君 もう一つ。私たちは、十七日に明らかにしたものが北朝鮮がかかわる拉致問題のすべてであるのかどうなのかということについての真相を究明すべきだというふうに思いますが、この点で田中局長はどのような感触といいますか、点をお持ちなのか、この点をもう一つお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 私どもの基本的な考え方といたしまして、そのような事案があれば、これは捜査当局の御捜査に基づいて私どもに情報の提供をいただけるものである、そういう情報に基づいて北朝鮮に提示をし、事実関係の解明をする必要が出てくる場合も当然あろうかというふうに思っています。
 北朝鮮側は、先般の首脳会談に先立つ会合において、日本側の八件十一名のリストに含まれていなかった方について先方から開示をしてきたという事実はございます。

○小泉親司君 先ほども出ましたが、あさってからの、二十八日から十月一日まで、政府の調査チームが派遣されるということでありますが、大変四日間の短い滞在であります。この派遣チームは主にどのような点の調査を行うことを目的としているのか、その交渉の見通し、どうなのか、この点をお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) これは先ほど御答弁を申し上げましたように、どのような経緯で北朝鮮で生活するに至ったのか、それから北朝鮮でどういう生活をしてこられたのか。それから、生存されているとされている方についてはその確認としてできるだけのことをさせていただきたいと思いますし、亡くなられたとされている方々についてはその事実関係について可能な限り詳細な情報を得たい。どういう経緯で亡くなられたのか、いつ亡くなられたのかということも含めて、できるだけ詳細な情報の開示を求めるということでございます。
 私どもは、北朝鮮の当局ではないので、北朝鮮がどういう情報を開示するのかということについては分かりません。これは正に調査団が行って聴取をするということだと思います。ただ、総論、一般論として、北朝鮮側は情報の全面的な開示をするということでございます。

○小泉親司君 伝えられているところでは、いわゆる生存されている方の五名の方にお会いするというふうなことが主な調査団の目的だというように伝えられておりますが、そればかりじゃなくて、当然北朝鮮政府から、先ほど私もお聞きしましたように、北朝鮮がかかわっている拉致問題のすべてであるのか、どういった扱いをされたのかというふうな問題も当然この調査の対象になっているというふうなことと理解してよろしいんですね。

○政府参考人(田中均君) 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

○小泉親司君 有本さんの事件では、伝えられているところで逮捕状が出されたということでありますが、北朝鮮に対してはこうした犯人の引渡しを求めるということも考えておられるわけですか。
 この点、外務大臣、どうですか。

○政府参考人(田中均君) よど号の犯人につきましては、私ども従来から引渡しを求めているということでございます。

○小泉親司君 我が党は、こうした真相の全面的な究明とともに責任者の厳正な処罰と被害者への謝罪それから補償、こういうものが行われるべきだというふうに考えております。新聞の報道などでは国としての補償とか個人の補償とか、様々な補償措置がいろんな巷間流れておりますが、外務省としてはこの点についてはどういう方針で臨むおつもりなんでしょうか。

○政府参考人(田中均君) まず、これも御答弁を申し上げたとおりでございますけれども、事実関係についての解明が先行しなければいけない。そういう事実関係が解明され、その中で、正常化交渉の中で、日朝間でこの拉致問題の解決のために交渉をすべきこと多々あると思いますけれども、交渉をしてまいりたいと、このような考えでございます。

○小泉親司君 私は、いずれにしろ、この拉致問題の真相究明というのを徹底的にやはり行うと、その点で外務省としてもしっかりとこの点をやっていただきたいということを強調したいというふうに思います。
 もう一つ、今度の首脳会談と平壌宣言の問題についてお聞きいたしますが、私たちは、先ほども申し上げましたように、この対話交渉のルートを開くことというのが朝鮮半島の平和的な解決、日朝関係の平和的な発展、北東アジアの平和の問題についても大変大事だというふうに考えております。そのルートが開始された以上、この場所を通じてミサイル問題などの日朝間の懸案を解決して敵対関係から協調関係に進み、日本の安全保障のみならずアジアの平和の流れを加速させることが重要であるというふうに考えております。
 平壌宣言は、第三項で、「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。」とし、第四項では安全保障問題で、「双方は、北東アジアの地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。」というふうにされておりますが、外務省はこの日朝関係の平和的な関係、アジアの平和の流れを加速させるという上でどのような展望をお持ちなのか、この点は外務大臣にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 委員御指摘の日朝平壌宣言の「三、」で、これは「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。」。これは、日本がそういう安全を脅かす行動を取らないことは自明でございまして、専ら北朝鮮のことを言っているわけでございますが、この中には当然のことながら拉致あるいは不審船の問題も当然に含まれているということでございます。
 総理は、首脳会談において、その一々について提起をされました。拉致問題については、先ほど外務大臣が御答弁をされたとおりでございます。
 不審船問題については、総理から、我が国の安全保障に直接かかわる重大な問題であり、先般引き揚げた不審船については、今後真相解明のための調査を行う、今後将来にわたり、このような遺憾な事案が発生しないことが確保される必要があるということを明確に述べられ、金正日国防委員長は、今後更に調査をしたいとしながら、今後このような問題が一切生じないよう適切な措置を取るというふうに述べております。
 それから、日朝平壌宣言「四、」では、「双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。」ということがございますが、これも宣言でも述べられておりますけれども、首脳会談でも総理は一つ一つを取り上げて先方の考え方を確認をしたということでございまして、一つは朝鮮半島の核の問題に関連するすべての国際的な合意を北朝鮮は遵守をするということ、それから二〇〇三年を超えてミサイル発射のモラトリアムを延長をしていくこと、それからミサイル問題について関係国との対話を通じて問題解決を図るということ、それから地域の信頼醸成については、総理から地域の信頼醸成のために六者協議といった対話の場が整備されることが重要であるという指摘をされ、これに対して金正日国防委員長より、信頼醸成の対話は関係国間の関係が正常化されるにつれ整備されていくであろう、北朝鮮もそのような対話の場に参加する用意があるということでございました。
 その諸点は、平壌の宣言にも盛られているところでございますし、そういう具体的な考え方が今後きちんと実行をされていくかどうか、そのために日朝間で安全保障協議を立ち上げ、その中できちんと問題の解決を図っていくということでございます。
 他方、核の問題とミサイルの問題というのは日本だけの関心事ではございません。米国その他の関係国の非常に強い懸念がありますし、私どももその強い懸念を共有をしているということでございますので、これは米朝の対話あるいは南北の対話、日米韓の連携、こういう中で問題解決に努めてまいりたいと、かように考えているわけでございます。

○小泉親司君 昨日閉幕しましたアジア欧州会議、ASEMでも、日朝首脳会談での合意が高く評価されて、朝鮮半島の平和のための政治宣言が合意されている。この中では、日朝間の諸問題及び国際的な安全保障上の諸問題及び国際的な安全保障上の懸案を解決するための首脳レベルの対話を高く評価し、ASEM参加国が北朝鮮を二国間、多国間レベルで更なる対話と協力に関与させることで合意しております。
 私は、外務省がこのようなASEMの評価をどのように受けているのか。私は、やはり本当に日朝関係の、日朝間の平和的な関係、北東アジアの平和を確保する上でこの宣言の精神と基本原則を双方がしっかりと実行に移すことが重要であるというふうに考えます。その意味で、日本政府がこの点、全力を挙げて追求されることを強く要望したいと。この点で私たちもその方向を強く支持して、必要な協力を惜しまないということを強調したいというふうに思います。
 もう一つだけお尋ねしたいのは、宣言の二項には、日本側が過去の植民地支配による損害と苦痛を与えたという歴史の事実の問題、特に、「痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。」というふうにあります。
 日本政府は今度の国交正常化交渉の中で、いわゆる経済協力方式で今後の補償措置などを検討するというふうな方針を取っておりますが、私、今度の交渉というのはこれまでの交渉と違って、九五年の村山談話で過去の侵略と植民地支配の反省、謝罪を明確にしたそれ以降の初めての交渉というふうになる点で、是非真摯な補償交渉を進めていただきたいということを要望したいというふうに思います。
 その点、外務大臣にこの点をお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 平壌宣言で盛られておりますのは、補償という概念で日本は応じるわけにはいかないということでございます。
 北朝鮮側は、ずっと戦後今に至るまで、日本は植民地支配をした、それで六百万人の強制連行等、彼らの言葉をかりれば百万人の虐殺等、そういうことの被害に対して補償ということを日本は応じるべきであるという議論を一貫して十七日に至るまでしてきたわけでございますが、十七日の宣言に盛られていることは、おわびの問題については、九五年の村山総理の談話を基に朝鮮の人々に対しておわびの意を表明するということでございますけれども、補償という概念で経済協力をやるわけではございません。これは相互の財産・請求権を相互に放棄をするという前提の中で、正常化後、経済協力という形で今後の北朝鮮の経済の発展、民生の安定、そういうことのために、平和を作るために支援をしていくという概念で合意がされているということでございます。

○小泉親司君 外務大臣。

○国務大臣(川口順子君) 今、田中局長からお話を申し上げたとおりでございまして、私から特に付け加えることはございません。

○小泉親司君 次に、私はイラク問題について質問をさせていただきます。
 ブッシュ政権は、イラクが大量破壊兵器の開発をしているので軍事攻撃を行うということを再三にわたって公言されております。しかし、イラクは既に国連に対して核査察を無条件で受け入れることを表明しております。この点でのブッシュ政権の軍事攻撃を行う言明には私は何らの根拠がないというふうに考えておりますが、日本政府は現在のイラクの核兵器開発の問題、査察受入れの問題、こうした現状をどのように認識されているのか、まず初めにお尋ねをしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) イラクの核の開発についての疑惑の問題でございますけれども、九一年の停戦以来、国連による査察を繰り返し繰り返し妨害をし、あるいは回避をし続けたということがございます。また、九八年以来四年間、国連の査察を全く受け入れていないということでございまして、国際社会は引き続き疑惑を持ち続けているわけです。イラクが大量破壊兵器関連活動をしているのではないかということについては、我が国としても懸念を共有をしているわけです。
 アメリカが十二日に資料を発表し、またイギリスが二十四日に資料を発表をいたしました。これらにおいても、イラクがフセイン政権の下で化学兵器、生物兵器を開発をして、周辺諸国を攻撃するためのミサイルを持っていて、核兵器の開発を執拗に試みたということが載っているわけでございまして、これらの資料によって国際社会の懸念は深まってきたということが言えると思います。私もこの点についてはニューヨークで国連総会のときにイラクの外務大臣と話をしまして、強く申し入れた次第でございます。
 国連の決議についてですけれども、イラクは国連の査察を受け入れるということを発表いたしました。これは第一歩ということでございまして、大事なことは、実際にイラクが査察を受け入れ、国連の安保理の決議をきちんと実施をしていくということでございます。これについては、まだ今後イラクがきちんとこれをやるかどうかということについてこれは分かっていないわけでございまして、こういう意味で今、国際社会が協調をして対処していくということが非常に重要なことだというふうに考えております。

○小泉親司君 私は、イラクが無条件の査察を受け入れられている以上、この実施を国際社会がまずきちんと実施させるということが何よりも大事だということは明らかだというふうに思います。
 しかし、それだからといって、その査察を、無条件査察を受け入れられているにもかかわらず、これに対して例えばラムズフェルド長官は、その後の下院、十八日の下院の軍事委員会の公聴会でも、議会や世界がいわゆる決定的な証拠を待っているとしたら長く待ち過ぎだと。つまり、決定的証拠は不要だという姿勢を取っておられる。このような軍事攻撃を私は前提とするようなこうした言動というのは非常に重大な問題だというふうに思います。
 その意味で、こういった具体的な疑惑に対して、疑惑に対して、それがイラクが受け入れると言っているにもかかわらずそれに対して軍事攻撃をする、こういう点はやはり非常に重大な問題だというふうに思いますが、外務大臣はその点はいかがお考えなんですか。

○政府参考人(海老原紳君) 今、小泉委員の方から、アメリカ、米国が軍事攻撃を行うというお話がありましたけれども、米国政府はこの問題に関しましては、終始一貫いかなる決定も行っていないということを申しておりまして、米国がイラクに対して軍事行動を取るということを決定しているわけではございません。
 軍事行動を取るということが仮にあるとすれば、それは当然、国際法に従った形で行われるということは当然でございまして、そこの点につきましては、日本政府としても特に疑いを持っているということはあり得ないということでございます。

○小泉親司君 国際法上、もし軍事攻撃を行うということであれば、国際法上と言われた、に従うのは当然と言われたけれども、私はこのような核疑惑だけで軍事攻撃を行うというのは先制攻撃そのものだというふうに考えております。
 その点で、私は外務省にお尋ねしたいのは、国連憲章上、いわゆるブッシュ政権が言っているような先制攻撃というようなことは絶対に認められていないというふうに思いますが、外務大臣、その点はどうですか。

○政府参考人(海老原紳君) 国連憲章におきましては、今、委員が申されましたように、武力が行使できる場合というのが規定されておるわけでございます。
 今、先制攻撃ができるかどうかというようなお話がありましたけれども、特に国際法上、先制攻撃というような定義ははっきりと決まっているわけではございませんけれども、いずれにせよ米国が仮に武力を行使する場合には、当然国連憲章に従った形で行うということだと思います。

○小泉親司君 いや、私がお聞きしているのは、それは国際法に従うということはこれは当たり前の話で、私がお聞きしているのは、国連憲章上、つまり先制的な攻撃、自らの国が攻撃を受けていないのにその国に対して攻撃をすると、軍事攻撃を行うということが国連憲章上認められているのかどうなのかと、この点をお尋ねしたんです。

○政府参考人(海老原紳君) 国連憲章の解釈ということでございますれば、国連憲章五十一条におきまして自衛権を行使できるということになっておりますけれども、これにつきましては、これも何回も国会で政府の方から今まで答弁をいたしておるわけでございますけれども、武力攻撃が発生した場合ということでございまして、そういうものがないときに自衛権を行使することはできないというのがこれまで一貫した日本政府の解釈でございます。

○小泉親司君 ということは、アメリカが国防報告や国家安全保障戦略の中で、必要に迫られたら先制攻撃も辞さないと、つまりアメリカが攻撃を受けていないのにそうした行動を行うと言っていることは国連憲章上は反することであるということを政府としてはお認めになることなんですね。

○政府参考人(海老原紳君) 今、委員がおっしゃいました米国の国家安全保障戦略というものが、最近行政府から議会の方に提出されたわけでございます。そこにおきましては、例えば脅威に対して先制的に対処をするというような言葉がございますけれども、先制的に対処をするために必ずしも武力の行使をするとしているわけではございません。
 さらに、この報告の中におきましては、先制を侵略のための口実としてはならないというようなことも明記しているところでございまして、米国政府といたしましてこの報告書の中で国連憲章に反するような形で武力を行使するというふうに述べているものではございません。

○小泉親司君 私がお尋ねしたのは、一般的にあなたが、国際法にのっとってやる、従ってやるとアメリカが言ったので、アメリカ自体は先制攻撃をすると。ということは、アメリカの国が攻撃をされていなくても先制攻撃をするということは、これは国連憲章上は認められない、これは反することだというふうに政府としては考えているのかどうなのかということをお尋ねしたんです。
 アメリカの戦略の解釈を私はお聞きしたんじゃなくて、政府としてはそういう見解なのかということをお聞きしているんです。

○政府参考人(海老原紳君) 私がこの米国の国家安全保障戦略の話を取り上げましたのは、ここに先制的に対処をすると、アクティングプリエンプティブリーという言葉がございますので、恐らくそのことを指して、委員の方がアメリカが先制攻撃をすると、武力攻撃が発生していないにもかかわらず武力を行使するのではないかという意味において先制攻撃をするということをここで認めているのではないかというふうに御指摘があったと思ったものですから、それであえてこの報告の言葉を引用させていただいたわけでございますけれども。
 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたように、この報告におきましても、米国は脅威に対して先制的に対処することはあるけれども、必ずしもその武力を行使するわけではないと。いずれにせよ先制を侵略のための口実としてはならないということをはっきり述べているわけでございまして、武力攻撃が発生していないにもかかわらず武力を行使するというふうに、従来から我が方が述べている、そのような国際法的にはできないという意味において、先制攻撃をするというふうに別に述べているものではないというふうに考えております。

○小泉親司君 私は、だから一般的にそういうふうな先制攻撃については国連憲章上は認められないんだなと、政府としてはそういうことなんだなということをお聞きしているわけです。
 時間がちょっと迫ってきたので、私は、アメリカは国連安保理でも、イラクが例えば無条件査察を受け入れると言っているのに、逆にイラクが受け入れられないような逆の条件を付けて、国連決議がなくても軍事攻撃を行うというような意図を私は大変明らかにしているんじゃないかと思います。
 例えば、ニューヨーク・タイムズは、猫とネズミの追い掛けっこで、どちらが猫とネズミか知らないけれども、イタチごっこみたいなのを繰り返していると。
 このような悪循環を私は繰り返すことじゃなくて、日本政府としては、こうした国連憲章にも明白に違反するイラクへの先制攻撃というのはやめるべきであるということをアメリカにきちんと主張すべきだと。イラクの無条件な査察の受入れ、これを直ちに実行させるべきだというふうな世論の先頭に立つべきだというふうに思います。
 その点、最後に外務大臣にお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) アメリカは、イラクとの関係で先制攻撃をすると決めたということは一つも言っていないわけでございます。ブッシュ大統領は、先般の国連の一般総会の演説で、アメリカは国連の安保理と協力をするということを述べているわけでございます。

○小泉親司君 終わります。

○岩本荘太君 国連の岩本荘太でございます。国連と申しましても、ユナイテッドネーションズじゃございませんで、国会改革連絡会でございますが。
 そういう立場で、少しでも国政が国民に見やすいように、また国民の現場の声が国政に反映されるようなふうに、なるようなふうに努力をしているところでございます。
 朝から日朝首脳会談並びにODAを中心として随分いろいろな質疑がございました。私がこれからいろいろ御質問することも、あるいは今までの質疑の中でもう十分話されたことがあるかもしれませんが、私の知恵ではどれがどうなのか分かりかねるところもございますので、重複がありましたら御勘弁のほどをお願いいたしたいと思います。と同時に、私、防衛、外交の専門家ではございませんので、御答弁は一般国民に分かりやすくお答えになられるというような立場でお願いをいたしたいと思っております。
 まず、この日朝首脳会談に関連しているといえば言えるんですが、今年の夏、第百五十四回通常国会の終わりころから、外務大臣が大変外交面で活躍されている姿を新聞やテレビで随分拝見させていただきました。それだけ重要なことをやっておられたんだと思いますが、外務省にお聞きしたら、外相の外遊実績、教えていただきまして、七月二十九日から八月六日までは、これは東南アジアですか、ブルネイ、シンガポール、ミャンマーと、ASEAN関係の会議や各国政府の要人とのお話合いをされたと。それから、八月二十五日から九月の六日まではアフリカ、これエチオピア、アンゴラ、南アフリカ、南アフリカは当然ヨハネスブルク・サミットということのようでございましたし、九月八日から十日は中国と。九月十二日から十九日はアメリカと、これはアメリカの政府要人との御会談や外相会議、会合等の多国間会議というようなことで教えていただきましたけれども、大変な御活躍でございましたが、まず外務大臣が、外遊といいますか外交の日程をこなされたその成果と御分析をまずお聞きしたいと思っております。

○国務大臣(川口順子君) 委員が今おっしゃっていただきましたように、七月の国会の閉会日のころから、ずっと幾つかの会議に出席をし、幾つかの国の訪問をしてまいりました。これらを通じまして、私はその行った国の政府の要人の方々とお話をいたしましたし、また国際会議では日本の立場を主張し、また会議をまとめることに貢献ができたのではないかと思います。
 いずれにしても、私はその外交を進めるときの姿勢といたしまして、強さ、温かさ、分かりやすさということを言ってまいりまして、これを具現する日本外交ということで、我が国の安全保障環境を一層強化をするとか、あるいは地球環境上の、地球レベルの問題、環境ですとか感染症ですとか、そういった問題に対応をするということをやってきたつもりでございます。
 個々の外国訪問については、まず東南アジアですけれども、ブルネイでは実にたくさんの会議がございまして、ASEANプラス3の、ということはASEANプラス日中韓の外相会議、それからASEAN地域フォーラム、そして安全保障問題や国境を越える問題等についてASEANの拡大外相会議で話をしてきたわけでございます。
 そして、その機会に北朝鮮の白外務大臣と二国間会談をいたしました。また、シンガポールのリー・クアンユー上級大臣を始めといたしまして、意見交換を、地域の問題について意見交換をしましたし、ミャンマーでは一層の民主化に向けた働き掛けを行いました。
 それから、アフリカでございますけれども、エチオピア、アンゴラ等行きまして、ここでアフリカの抱える様々な問題について実際に私の目で見たほか、来年の十月にTICADVというのが日本で開かれますけれども、それをアフリカに話をし、そしてヨハネスブルクでは、持続可能な開発の会議で日本として会議をまとめるための役割を果たしてきたわけでございます。
 それから、中国は、今年は日中国交正常化三十周年ということでございまして、江沢民主席ほかお会いをいたしまして、小泉総理の訪朝についてお話をし、強い御支持をいただきました。
 そして、その後の訪米では、国連の場で多くの方とお会いいたしまして、イラクの外務大臣との会議、サウジアラビアの外務大臣との会議、あるいはパウエル国務長官、パウエル国務長官とはアメリカにいる間に二回お会いをいたしましたけれども、そうした方々と会談を持って、イラク問題あるいは北朝鮮の話について会談を行ってきまして、この過程を通じて日米同盟の一層の強化にお役に立てたのではないかと思っております。
 今後とも、できるだけそういった主体的な外交をしていきたいというふうに思います。

○岩本荘太君 ありがとうございました。
 大変な御活躍で、現下の世界情勢をしっかりとおつかまえになったと思いますが、巷間言われておる内閣改造とかということがあるわけでございますけれども、これが修学旅行にならないように是非頑張っていただきたいと思う次第でございます。
 それで、私は特にこの日程でお聞きしたいのは、最後の九月十二日から十九日の間、これは正に午前中からいろいろ議論があります日朝首脳会談の時期だったわけでございますが、先ほどから盛んに答弁されております田中局長、それと外務省では高野外務審議官が総理に同行されたんですか、そういういわゆる日朝首脳会談といえばこれは総理が行きますけれども、国内の省庁別でいえば外務省の最大重要事項であると私は思っております。こういう省庁の分担からいえばそうだと思っておりますが、したがって、外務審議官あるいは局長がおいでになったと思うんですけれども。
 大臣は大臣なりにいろんなお役割があったんですけれども、普通考えれば、そういうときにはやはり日本におって、そういう外務省の局長等が接する情報の管理といいますか、そういう最高決定者であるべきじゃないのかなというのが素人考え。これは、先ほど申し上げましたように、一般国民の感情がこうある、こういうような感情を持っているわけです、実際に接してみますと。その辺を、私はだからといっていなかったのを責めるわけじゃないですけれども、外務大臣としてはこの日朝首脳会談のときはどういうお役割を果たされたのかということをひとつお聞きしたいと思っております。

○国務大臣(川口順子君) 日朝の首脳会談、これにつながるまでに様々なプロセスがあったわけでございますけれども、このプロセスを通じまして、一貫として、私が外務大臣になって以降でございますが、もちろん、これに関与をし、それまでの過程で必要な指示を与え、ということで仕事をしてきたわけでございます。また、先ほど言いましたように、その間、北朝鮮の外務大臣との会談も行っております。
 それで、実際に会談が行われた十七日、私はワシントンにおりまして、この日、ライス補佐官とそれからパウエル国務長官と、パウエル国務長官とは二度目のアメリカに行って会談でございましたけれども、をいたしまして、アメリカ側としてこの会談の状況をできるだけ早く知りたいということでございましたのでそのお話をさせていただいて、アメリカから、小泉総理の努力を歓迎し、支持をするというお話をいただいたということでございます。
 いろいろな重要な仕事の場合に、これはもちろん外務省にとって非常に重要な仕事でございます。私は、それぞれの分担がそのときにあるわけでございまして、国連総会でずっとニューヨークに行っておりましたので、その足で、ワシントンでそこで話をしたということでございまして、外国にいる間、アメリカからも小泉総理とはその間二度お話をしておりますし、それからピョンヤンあるいは東京から適時連絡をもらい、適時必要な指示をしてきたと、そういうことでございます。

○岩本荘太君 今の情報化の時代ですから、どこにおってもそれは可能かもしれませんが、たしか十八日ですかね、これは本当かどうか分かりませんが、外務大臣は何か当時、その死亡日時ですか、公表しなかったという問題があったときに、私はテレビしか見ていないんですけれども、外務大臣は公表すべきであったというようなことをちょっと語ったというような報道に接したんですけれども。それはともかくとして、こんなことをもし言われたら大問題だと思うんですけれども、要するに、例えばあの情報にしても隠すかどうか、これは事務的な判断だというようなお話で、これにも私はちょっと疑念を持っているんですけれども。少なくともそういう判断をするときに、要するに外務省の判断ですかね、言うなら事務方といっても。
 外務大臣、これは女性ですから、外務大臣は女性、女性と言って差別するわけじゃないですけれども、我々男性とはちょっと別の感覚があると思うので、そういう判断があったらまた別の判断があったかなというような私は感情を持つわけですし、それからこの事務的な判断というものについては、私はこれはつくづく感じますと、確かに相手の北朝鮮の外務省から日本の外務省に来たかもしれませんけれども、北朝鮮の外務省が、外務省かどうか分かりません、当局が日本の外務省に情報を流したというのは、これは絶対に首脳といいますか国の上部の指示があった、了解があったんだろうと思うんですね。そういうものが日本に来て、日本に来たら当然、それは今までの状態を考えれば当然事務的に流すような情報じゃないと思うんですよね。
 だから、当然そういうものは、例えば外務大臣がおられて、外務大臣がおられて判断されれば、もう少し私は違った結果が出てきたんじゃないかなというような感じがいたすわけでございます。
 そこで、私はなぜこういうことを申すかというと、今回、日朝の首脳会談、確かに私も一つの成功であると、ある意味の成功であるとは思っておりますけれども、要するに官邸と外務省の局長、審議官の幹部、こういうもののチームで動いているわけですね。それはいけないとは言いませんけれども、こういうものの動きというのは立憲国家にあるべきかなというような感じで、やっぱり各省各省で持ち分をきちんとやらないと、何か昔、歴史をひっくり返して、歴史をさかのぼって何か秘密主義につながるような危惧があってしようがないわけですね。
 だから、ここでしっかり、私は外務省の重大案件であれば外務大臣が指揮権を持ってしっかりやっていただくということが大事だと思いますし、また外務大臣は外務省改革で先頭に立ってやっておられるわけですから、もし、そういう自分がいなくて局長クラスで物事が進んじゃうというと、国民の目から見ると本当にできるかなという感じになっちゃうわけですね。この辺の、私はこう思うんですけれども、外務大臣はどうお考えか、お知らせを願いたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) まず、この問題について外務省として秘密主義でやってきたかどうかということでございますけれども、基本的に外交というのは外務省だけでできるわけではございませんで、各省、まあ政府全体として連携をしてやるということでございますし、特に外交は官邸と密接に連携を取りながら一緒にやっていくということでございますので、外務省としては従来より必要な情報をシェアしながら、みんなでシェアをしながら外交を進めてきたつもりでございます。
 この件については、物事の非常に機微な性格ということがございまして、その過程に至るまでについては非常にきちんと管理をしながらやってきたという側面は確かにございますけれども、これは問題の性格上そういうことであったと、そういうことにならざるを得なかったということでございまして、今、政府全体として閣僚会議も作りまして拉致問題については取り組んでいこうということで発表もさせていただきましたし、また政府全体として、拉致をされた被害者の家族の方の支援については、今日発表させていただきましたように、内閣に部屋を設置をして政府全体としてこの問題に当たるということでございます。
 それから、情報について、私がいれば別途な、リストについて別途な判断ができたのではないかということについては、これはちょうどタイミング的に私は十九日に大阪に降り立ったわけでございますけれども、アメリカから、この飛行機に乗っている間にこの件についてはいろいろ問題の提起がありということでございまして、私が現地にいればということですけれども、これは元々私が現地にいるということは想定をされていなかった。これは、安倍副長官が総理に一緒にいらっしゃって、それから向こう側の政府としても外務大臣がこれには出てこないということでございましたし、それから日本の外交としてずっと総理の海外への御出張について外務大臣が一緒に行ったということは、恐らく最近、十四、五年なかったということでございます。
 したがって、総理との間で適切に分担をして仕事を進めてきたということでございますし、先ほど申し上げましたように、この過程については全面的にずっと関与をし、総理と御相談をしながら進めてきているということです。

○岩本荘太君 私、今回の首脳会談が秘密主義だと言っているわけじゃないんです。別に、今回は別に秘密主義でやったと思っておりませんし、ただ、ああいう形態が将来ずっと認められるようなことになると秘密主義につながりかねないんじゃないかなということと、それから大臣が物理的におれなかったというお話で、それも確かにそうでしょう。だから、そういうことを予想されるようなことも考えておくべきじゃなかったかなということを僕は申し上げたかったわけでして。
 それと、これは私の感想ですけれども、朝からいろいろお聞きして、見ていて、非常に私の私的な感想ですけれども、午前中の会議で田中局長は、八名の死亡情報を聞いたときのショックをずっと引きずっていると言われて絶句されましたよね。それで、マスコミのテレビは盛んに、マスコミやテレビが盛んにフラッシュをたきました。私は、局長の胸中を察するには余りありますけれども、いわゆるああいう姿、あるいはその後の答弁される、外務省の方針みたいな答弁をされる姿を見ておりますと、外務省の代表ってだれなのかなという気がしてならないわけですよね。そういう疑問を持ってきちゃう。本来、もう少し外務大臣がイニシアチブを持っていろいろやっておられたり、いろいろ答弁をされるべき問題じゃないかなという気がしてしようがないわけです。
 そういう意味で、例えば外交マターであれば外務大臣というのはトップにおってしっかりと情報を管理して遺漏のないように努めてもらいたいなという気がしたわけでございまして、これは私の感想ですから別に御答弁は結構でございますけれども、そういう感じを持ったというのが実感でございます。
 それで、これは余計なことを申し上げたかもしれませんけれども、私は、こういう問題はやっぱりこれから反省していろいろ前に進むわけでございますけれども、反省というのはこれは前に進むためにあるものであって、後ろに進むべきでないという、こういう認識でおりますので、そういう意味で外務省はいろんな前向きに物事を進めていただきたい、こう思っているわけですけれども。
 ただ、今度のこの日朝の交渉はどう進むか私も予想できませんけれども、少なくとも今まで以上に交渉の場が広がると思うんです。広がるというか、増えると思うんですね、頻繁度が増すと思うんですね。そうしたときに、今回の状況を見ておりますと、例えば、一つは、外務省が事務方の判断でと言っておられる情報がなかなか出なかったということが一つの世の中の批判の対象になっているのが一つありますし、さらには、北朝鮮側も今回の拉致問題を国内でやっていない、報道していないというようなことが報道されているわけでございまして、そういう、国交というのはやっぱり政府だけの国交回復じゃない、国民全体がお互いに理解し合って国交を回復するのが、お互いに仲良くするのが最後の目的であると思うんですね。そんな中で、国民に情報がなかなか公開されないで進むということは本当にうまくいくのかなという感じが私はします。今度がそうなるとは言っていませんよ。
 そういう意味から、これから日朝ともしやる場合は、お互いにもっと情報を公開し合って進みましょうよ、ともに進みましょうよということを前提として進めるようなそんなことは、そういう考え方はいかがかと、これは私の提案でございますけれども、大臣、もしございましたら。

○副大臣(植竹繁雄君) ちょっとその前に、あえて私からお話しさせていただきます。
 今回の日朝の九月十七日、総理が御決定なさったときには、外務大臣は、ちょうどWSSDの、リオ10の十年目の重要なヨハネスの会議、これは日本としてどうしても行かなくちゃならない、そういう重要な会議でありました。そして、この日朝という、総理が行かれるということは、これは大変に重要で、これがオープンされていったら果たしてできるかどうか。そして、この判断、相手がああいう北朝鮮の国交がない国でございます、そういう国で、これを総理が自ら行かれるということは大変なことであります。その決断というものは、私は高く評価されるべきであります。
 したがいまして、大臣が一緒に行くとかいうんじゃなくて、秘密主義じゃなくて、常にオープンにできること、できないことというのは、これは外交交渉上あるわけです。しかも、それから後、帰ってこられてアメリカに外務大臣が行かれたということ、これは大変日米の、国連の問題で重要なことです。そういうときでございますから、総理が行かれた後は官房長官が主体に、私どもも外務大臣と常に連絡を取りながらやっていると。今回は非常に短い時間にやったので、決して秘密主義とかそういうことじゃないと思います。
 ただ、先生が言われますように、こういうものはできるだけオープンにするという御趣旨は分かります。それからまた、北朝鮮の国内においてこれがもっと北朝鮮の国民が知るべきだということは、ああいう全体主義の国では、すべてそういうのができないという北朝鮮の特殊事情もございますので、その点もお量りいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今、副大臣がおっしゃいましたので、ほとんど付け加えることはございませんけれども、一般的に我が国のような体制の国で外交をやっていくときに、内政と外交とよくつなげて言いますけれども、国内、国民の皆様に、委員がおっしゃるように、御理解をいただきながらでなければ外交は進められないということは、私は強く思っておりますし、その努力もしてきたつもりでございますし、今後とも外務省としてその努力は続けていきたいと思っております。私は、例えば就任以来タウンミーティングを開いておりますし、そういった過程を通じて国民の理解を得るための努力をしてきているつもりでございます。
 北朝鮮の方は、お国柄といいますか、その国独特の事情がございますから、一緒に情報公開を進めていきましょうということが必ずしもできるかどうかということは、これは北朝鮮の中の問題もあるかと思いますが、我が国としてはそういう形で進めていきたいと思いますし、それから植竹副大臣がおっしゃってくださいましたので、私もさっき申し忘れたことを一つ付け加えさせていただきますと、総理が北朝鮮に行くという決定をなさる段階で私はアフリカにおりましたけれども、そこでもお電話でお話をしていますし、様々な段階で緊密に連携をしていると、そういうことでございます。

○岩本荘太君 どうも私の質問の趣旨、十分には理解していただけなかったかもしれませんが、私は全然否定しているわけじゃないんです。こういうことを進める中で、一国民として今の進め方を眺めている中で、国民がこういうことを疑問に思っていますよということを御質問したんであって、それに対して端的に答弁してもらえばいいというふうに思って質問した次第でございますので、その辺はひとつよろしく御理解を。
 だから、私も恐らく今日のことは一般国民に、私の関係者に連絡しますけれども、それで分かったと言うかどうか、これは分からないんですけれども、それはまた次の問題になると思います。
 そこで、日朝は終わりにしまして、ODAなんですけれども、本当はODAの方を時間を長く取ろうと思ったんですが、一つ、今日、午前中からも午後でもODAについていろいろ質問が出ました。私も前から何回もODAについては質問させてもらっているんですけれども、いわゆるなぜODAをやるかという基本的な、ODAというか海外援助、政府開発援助をやるかという基本的なところが最近どうも国民に理解されないんじゃないかと。それでどうも、なぜやるのかという声が物すごく現実には強くなっているんですね。
 私自身、正直に申し上げまして、二十年前ぐらいはODAが私の仕事だったですから、これは知らないわけじゃない。ところが、そのころは経済成長期でしたから金が一杯あるわけですよね。お金があるから、まあ金持ちの慈悲というんですか、そういうふうな感情も半分あり、かわいそうなところへ援助してあげたらいいじゃないかということが国民的なコンセンサスとして割合作りやすかった。だから、そういうことで何も疑問は出てこなかったんですけれども、ここの財政再建といいますか赤字財政が盛んに言われている中で、なぜ、そうしたら日本の赤字に充てればいいじゃないかというような声が非常に強いんですよ。
 それで、私、前に宮澤大臣にもお聞きしたら、宮澤大臣はたしか、日本は軍事力で援助できないからこういうことで世界平和に貢献しているんだというようなお話。それから、先々週だったですか、塩川財務大臣にも経済、要するに財政当局からということでお聞きしたら、やっぱり日本も援助を受けて経済発展した、だからそういうものとの、相手の発展途上国が経済発展することによって、あるいはその見返りとして日本も経済発展していくんだというような経済的な面からのお話がございました。それぞれ本当だろうと思うんです。
 それに、外務省も出していますよね。一九九九年ですか、九九年度の我が国の政府開発援助の実施状況に関する年次報告、この冒頭に、「政府開発援助はなぜ必要か」ということで、人道的な立場とか世界的な問題、食料や環境の問題が、課題は世界的な課題だからというようなことでこう書かれているんですが、どうもまだもう一つ、私が先ほども言いましたように、一般国民の方は理解し得ていないような感じがするんですが、大臣は端的に言ってどういうふうにお考えか。
 先ほど何かちょっと、どなたかの質問で外交手段というようなことを言っておられましたけれども、確かに外交手段と言えばそれは聞こえはいいんですけれども、余計こうなると分からなくなっちゃって、外交手段と言えば発展途上国も何も関係なくなってくるでしょうしね。まあいろんな面で使えるというようなことにもなっちゃうような感じがいたしますんで、こういうお答えではちょっと私は納得させられないんじゃないかと思いますので、大臣の、こういう経済が緊迫してもなおかつODAをやる、やるべきであるというそのお考えを是非、これは僕は否定しているわけじゃございませんので、大臣のお考えを是非お聞きしたいということで質問しておりますので、よろしくお願いします。

○国務大臣(川口順子君) ODAが何で必要だろうかということについて、委員がおっしゃるようにきちんと国民の皆様に説明するということは私はとても重要だと思っています。
 先ほど申し上げたタウンミーティングでも、大阪でODAを議題として取り上げていたしましたし、また、九月の初めに新聞にもODAをなぜ行うかということについては投稿をさせていただいております。
 ODAがなぜ必要かということでございますけれども、まず、我が国は食糧もそれから資源も自給をする率が非常に低い国でございまして、国際社会、ほかの国々との間に相互に依存しながら発展をしていくという国でございます。そのためには国際社会が平和で安定しているということが何よりも重要であると思います。
 どうしたらその国際社会の平和と安定を図れるかということに次になるわけでございますけれども、これには様々な手段があると思います。例えば、アフガニスタンで米国がやったように、軍事力を使ってテロの根源を根絶しようとする試みもあるでしょうし、また、京都議定書が一例ですけれども、そういった国際社会が必要としている枠組みを提示して、それを実行に移していくということもあるでしょうし、そして、我が国は軍事力を使うということは手段として持っていないわけでございますから、ほかの国々が発展をし、その結果として国際社会が平和で安定するように必要な支援を行っていくということが非常に大事で、それが正にODAの役割であるわけです。そういう意味で外交手段として重要だということを申し上げました。
 確かに、厳しいODAの予算の状況になっております。したがいまして、それに対応していくためには、我が国としては今までのODA予算を更に重点的に、効率的に、そして戦略的に使っていくことが必要だと私は考えております。
 それならば、そういった重点、あるいは重点は何かということでございますけれども、それについて、今後は、我が国が近隣諸国としているアジア、このアジア諸国の平和と安定のためにODAを使っていくということが一つ。それから、先ほど東チモールの話もありましたけれども、アフガニスタンやあるいはアフリカの国々といったように、平和構築あるいは紛争予防のために、いわゆるDDR、あるいはその地域の国の治安の回復、そしてその後の発展、経済の復興、発展といったことに支援をしていく、いわゆる紛争予防とそれから平和構築というのがもう一つ柱としてあると思います。
 それから三番目に、アフリカの国々で私もつぶさに見てまいりましたけれども、感染症あるいは環境、そして今非常に重要な問題である水といったような地球レベルで考えなければいけない問題の対応のためにODAを使っていく。これらが今後、日本として重点的に考えていかなければいけない柱だと考えます。
 そして、効率的にというふうに先ほど申しましたけれども、この効率的にという意味では、しばらく前に十五の改革の具体策ということを発表させていただきましたし、外務省の改革のための具体的な行動計画の中でも、更なる改革を進めるための、例えば更なる透明化等々についても柱を立てておりますけれども、そういったことをきちんとやってODAを効率化、そして透明化していくと、そういう努力が必要だと思います。

○岩本荘太君 ありがとうございました。
 ただ、説明するのは簡単でないというのがよく分かりました。ODAというのはそういう問題かなと思うんですが。
 余り時間がないんですけれども、もっとODAについていろいろお聞きしたかったんですが、私は、一つは、ODAそのものが日本の経済に随分役立っているんじゃないかという感じがするんですよね。
 例えば、ODA供与するとき、ODAといっても、これ大変だと思いますよ、資金協力から技術協力からあるし、資金協力にしても、ひも付きというか、タイドの関係とか、アンタイドにしても、レシピエントアンタイドというのですか、その相手国と二国間の関係、あるいはゼネラルアンタイドとかいろんなあれがあってひとつ大変だと思うんですけれども、割合ひも付きになって返ってくると。言うなれば、日本の税金が相手国政府を通して日本の企業に返ってくる。そういうひも付きが多いんじゃないかという気がする、多いかどうか分かりませんけれども、そういうものはだから本当は援助と言えるのかなというような感じがするんですけれども。
 ただ、現実にその相手の国に物を残すわけですから、それがうまく使われればこれは立派な援助になると思う。ただ、日本の国で日本の税金を使うのとはちょっと違うんじゃないかと。日本の国で税金を使えば、日本の請負業者ももうかるし、物も日本に残る。発展途上国でそういう援助をすると半分しか行かないというような、残った半分がもしこれが全然使い物にならないとすれば、これは援助かという話になっちゃうんですね。そういう難しい面があるんですけれども。
 これ、後日の質問につなげたいと思うんですけれども、要するに、相手国とのやりとりで、日本のひも付きとかそういう面の条件はどんなふうな付け方をされているのか、それがだんだんどういうふうに変化しているのか。それだけちょっとお聞きして質問を終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。

○政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。
 タイド、アンタイド、御指摘のように様々なメニュー、形があるわけでございますが、国際ルールといいますか、OECDの中で各国が合意をしたアンタイドで進めるべきもの、タイドが可能なもの、そういう条件がございまして、それに則して幾つかのメニューを私どもとしては用意させていただいておるということでございます。
 基本的には、タイド方式の場合には、金利でありますとか期間でありますとか一定以上の有利な条件である必要があるわけでございまして、そういったメニューについて被援助国側が具体的にどういうプロジェクトにどういう方式を求めてくるかという要請を伺いながら決定していくということでございます。
 ちなみに、アンタイドの比率でございますが、OECDのデータによりますと、二〇〇〇年は、我が国の場合には八六・四%がアンタイドでございます。それから、円借款だけを取り上げますと、最近では三割強がタイドでございまして、七割弱がアンタイドということでございます。

○岩本荘太君 質問まだあるんですが、委員長から終了時間のお知らせが参りましたので、取りあえずここで中断させて、何かの機会にまた質問させていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○田嶋陽子君 社民党の田嶋陽子です。私で最後です。頑張ってください。よろしくお願いします。もうちょっと、大変ですね。
 今回の、ちょうど日朝平壌宣言を聞いたのはデンマークでしたが、胸が熱くなりました。国内、国外からも評価されて、歴史に残るエポックメーキングな出来事だったと思います。
 ただ、身内の方々を拉致された御家族の方々は、その安否に心を煩わされながら、希望と絶望の中でつらい毎日をお過ごしになっていられて、その御苦労はいかばかりかと心痛む思いでおります。社民党は、旧社会党時代に始まって、朝鮮労働党とは友党の関係であると強調しながら、結果としては、過去、拉致問題に関しては何もできなかったということを私個人としてはとても残念に思います。
 ところで、日本側がこの拉致問題の解決がない限り関係改善はあり得ないと思う人がいるように、北朝鮮側にも、過去の清算を関係改善の一里塚にしてきたと思います。今回の日朝首脳会談では、小泉首相も謝罪し、過去の清算は経済協力で実施するということが合意されました。
 そこでお伺いします、川口大臣に。日本側としては、この経済協力をする場合にどのようなことを重点的に考えるか、あるいは主眼点にしているのか、あるいは気を付けようとしているのか、その辺りのプランといいますか、ありましたら教えてください。

○国務大臣(川口順子君) この日朝の会談については、委員もおっしゃいましたように、御家族の、拉致された被害者の御家族のことを考えますと、私も心が痛みます。我が国として、委員がもう一つ御指摘になられました日本と北朝鮮との間の他の問題、日本の植民地支配によって朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えたという歴史があったということについては、平壌宣言の第二番目の項目で述べておりますが、こういった歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを総理が表明をなさったということでございます。
 そうした中で、その財産及び請求権を相互に放棄をし、そしてここに、平壌宣言に書かれているような、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたって無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施をしていく、後続きますが、ということが書いてあるわけでございます。
 そういった経済面での協力の具体的な内容あるいは規模といったようなことについては、これから国交正常化交渉の中で北朝鮮側と誠実に協議をしていくということでございます。
 それから、北朝鮮の市民の生活向上に資するようにということでございますけれども、今申しましたように、それも今の段階でどういう形でということをあらかじめお答えをするのは、正に北朝鮮とこれからお話をすることでございますので、予断をすることは控えたいと思います。

○田嶋陽子君 私はたった二十分しか時間がありませんので、申し訳ございませんが、簡潔にお答えを願います。
 すべてこれからということですので、これから私が申し上げることは、質疑というよりはお願いになると思います。
 今もおっしゃったように、北朝鮮に対して経済協力をすると。ですけれども、今回のことの対応は韓国への対応を踏襲していると言われていますよね。韓国に対しては、戦後補償というのを国への経済協力方式で行ったわけです。個人補償というのはしていないわけですね。まだ、特に従軍慰安婦にさせられた人たちに対しては補償していないわけで、被害者個人が納得していません。また、この北朝鮮国内にも元従軍慰安婦だと名のりを上げている女性たちは二百十八人います。そして、個人に対する補償を求めています。
 私は、現在内閣委員会で継続審議になっている戦時性的強制被害者問題解決促進法案の提出者の一人になっております。やはり被害者個人に対する謝罪と補償、そして真相究明が必要だということを言っておりますし、今回のこの件に関しても、何らかの形でそれを入れ込んでほしいというふうに思っています。
 ただし、これまで政府がやってきた、あるいは民間と共同してやってきた女性のためのアジア女性基金の事業は終了してしまいました。お金がないんです。これ以上、もうこのアジア女性基金で慰安婦問題を解決することはできません。それから、政府がこれまで戦後補償をしないという言い訳にしてきたサンフランシスコ条約なるものも、この二国間にはもうありません。
 平壌宣言では、今、大臣がおっしゃられたように、もう財産権、請求権はお互いに放棄しようということになっています。ですから、この問題に関してはどん詰まりなんですね。ですけれども、これをこのまま放置したら、また私たちがこの十年間、私は議員に一年前になりましたが、その前からこの問題にかかわってきて、そして議員になってからもこの問題をやっています。インドネシアに行ったりフィリピンに行ったり、来週は台湾に行きます。そして、個人補償を要求している人たちと話し合い、政府と話し合い、何とかこの問題を解決したいとみんなで努力してきましたが、今回新しく北朝鮮とのこの問題に関しては、どうか私のお願いとしては、その北朝鮮への経済協力の枠の中に何らかの形でこの慰安婦の方たちにこの個人補償の分も入れ込んでいただけないか、取り込んでいただけないかというふうに考えるんですけれども、どんなふうにお考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 日本と韓国の例を出されましたけれども、その前に、まず北朝鮮との関係については、この平壌宣言におきまして「財産及び請求権を相互に放棄する」ということを書いてあるわけでございます。それを国交正常化の中で具体的に協議をするということです。委員が先ほど補償というふうにおっしゃいましたけれども、韓国の場合についてもこの北朝鮮の場合についても、補償をするという考え方ではございませんで、財産権、請求権、財産の請求権の問題についてはこれをお互いに放棄をすると、そういうことでございます。
 それで、この「財産及び請求権を相互に放棄する」ということにつきまして具体的にこれから協議をするということでございますので、先ほど言いましたように、これは今後の話になるわけですけれども、北朝鮮の地域に在住する元慰安婦の方々との関係で日本として何を行っていくかということについては、委員のお考えはよくきちんと聞かせていただきました。しかしながら、これについては、今後行われる日朝国交正常化の交渉を始め、日朝関係全体の文脈の中でこれから総合的に検討していく課題であるというふうに考えております。
 委員のお考えはお考えとして承らせていただきます。

○田嶋陽子君 それでは、検討材料の一つに加えてくださるということですね、大臣。

○国務大臣(川口順子君) 繰り返しになりますけれども、北朝鮮に在住する元慰安婦の方については、今後行われる日朝国交正常化交渉、そして日朝関係全体の文脈の中で総合的に検討していくべき課題であると、そういうことでございます。

○田嶋陽子君 日本の方々で拉致された方々もその家族の方々も、それから五十年前に拉致されて慰安婦にされた方々も、歴史と政治のはざまで犠牲になられた方たちです。皆さん苦しんでいらっしゃることは同じです。(「何が拉致だ、よく調べてからやれ」と呼ぶ者あり)よく調べて言っている。余計なことを言わないでください。
 私は、先ほど田中局長がこの経済協力は平和を作るためのものだとおっしゃいました。そういう概念でこの経済協力をなさるんなら、拉致されたという意味では、苦しんでいるということでは同じ人間としての苦しみです。私は、この両方の人たちにきちんとした対応をしていただきたい。政府の手で救われて解放されることを望みます。
 今、大臣がおっしゃったように、補償という言葉はこれ以後使われないと思います。経済協力という言葉に置き換えられると思います。それなら、その問題を解決する場合に、例えば小泉さんが解決なさったハンセン病、政府の判断が間違っていたというその点で解決されたハンセン病、その手を使っても私はいいと思います。とにかく日本人の拉致家族の方、拉致された方々、そして五十年前に拉致された方々、その方たちも同じ苦しみだということを忘れないでほしいです。
 そして、アジア女性基金の償い金に相当するものは一人二百万から三百万でした。先ほど申し上げたように、その従軍慰安婦にされた方々は二百人ちょっといます。約五億円に相当します。そのことも考えてください。私は、ここで同じ過ちを繰り返さないように、十年間、ほかの国々の慰安婦の方たちと一緒に闘ってきた者の一人として、私はこのことをお願いします。
 それからもう一つ、前に福田官房長官が私に約束してくださいました。七月十六日の内閣委員会の私からの質疑に対して、福田官房長官は日本の戦後補償の窓口を明らかにするということを検討すると答弁してくださいましたが、まだ実現していません。その戦後補償の窓口については、その後どのように検討されていますでしょうか。

○政府参考人(井上進君) お答えします。
 戦後処理問題につきましては、基本的には関係府省庁の各々の所掌に従って担当しておりまして、例えば、今お話ありました従軍慰安婦問題につきましては外務省が中心となり、必要な場合には内閣官房が調整するとの対応を行ってきております。
 お尋ねのような部署の問題につきましては、官房長官の御意向も十分勘案しつつ、設置の是非も含め、関係府省とも引き続きよく検討してまいりたいと考えております。

○田嶋陽子君 検討検討とおっしゃっているんですけれども、本当は検討していらっしゃらないんじゃないですか。これは難しいから、各省庁にまたがって難しいから窓口を一つにしてくださいとお願いしているんですね。窓口がまたがっていて難しいのは当たり前です。そこをやってくださるのが福田官房長官であり、力を持っていらっしゃる皆さんなんじゃないかと思います。頑張って明日にでも作ってください。よろしくお願いします。
 次、中谷大臣、よろしくお願いします。
 防衛庁の中谷大臣にお伺いします。
 近年、国連平和協力活動への参加だとかテロ対策特別措置法に基づいたインド洋の派遣など、海外に赴く、任務を海外でする自衛官が増えています。自衛隊員の多くは各駐屯地で訓練に励んでいると思うんですけれども、中には実戦の場に行くと思って入隊した隊員はそう多くはないんではないかと思います。残念なことかうれしいことか私にはよく分かりません。ただ、自衛隊に入隊した動機を調べますと、一番多いのが技術が習得できる、それから二番目が自分の能力、適性が生かせるとか、心身の鍛錬だとか、給料が良いだとか、ほかに就職口がないだとか、国のために役立つというのはたったの二%です。これは平成五年度の調べですね。
 昨今の状況を見てみて、自分たちが実戦の場に行かなければならないのかと心配している自衛官もいると思うんですけれども、防衛庁長官にお伺いします。実戦の場に行く前というのは、どんなに訓練を積んでいても大変恐怖を感じるものだと想像します。そのための事前のメンタルヘルスというのは現在どのようになっているんでしょうか、行われているのでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 実戦の場ということでありますが、PKO法で五原則がありまして、派遣先は、停戦の合意がされたところ、受入れ国が同意をしているところ、そして活動自体も国連活動でありますので中立的立場で活動するわけでありまして、現在、平和維持活動を行っている場所も含めまして、実戦の場ではなくて停戦が合意している場である中で活動しているということであります。したがいまして、派遣される隊員もこういった国連の活動を実施するという自覚の下に、自分なりに意欲とそして世界に貢献しようというそういう高い志と理想を持って行っておりまして、非常に、行っている隊員につきましては、全員自覚と意欲を持って元気でやっております。
 派遣される前には現地の情勢とか任務の内容について本人にお伝えをいたしておりますし、そのための訓練も教育も実施をしておりまして、その際、本人の希望や家族の事情、本人の個人的な状況も十分しんしゃくした上で実施をいたしております。

○田嶋陽子君 先ほどの遠山議員とそれから中谷長官とのやり取りを聞いていても、実際に東チモールとかに行っていらっしゃる隊員の方たちは志高く頑張っていらっしゃると思うんですね。でも、どこの社会にも落ちこぼれといいますか、揺らいでいる人とかいろんな人がいると思うんですね。
 今のお話ですと、実戦の場には行かないということなんですけれども、有事法制、今回は議論されないでも済むようになると思ってうれしいんですけれども、そんなことを言うとまたやじられますね、三浦さんに。ですけれども、これからまたいろんな状況が出てくると思いますが、実戦の場に行くのは嫌だというようなそういう自衛隊員の意思というのがもしあったとしたら、それは尊重されるんでしょうか。それとも、行くのを拒んだ場合は強制的に除隊されるんですか。それとも、戦うことは義務とされていて、いろんな状況、入ってから、自衛隊員が自衛隊に入ってからいろんな状況の変化があるわけですよね。それに対してはどうこれから対応なさっていくんでしょうか。

○委員長(中原爽君) 時間が過ぎておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。

○国務大臣(中谷元君) 今の自衛隊は旧軍と違いまして志願制になっておりまして、自ら希望して自衛隊に就職した者であります。また、こういった国際的な活動をする場合には本人の意向を尊重しておりまして、現実的な問題としましては、派遣に参加を希望する隊員が多過ぎて、その人選に一苦労するという状況でありますし、またその選定の段階において派遣要員から外れた者については、処分はもとより、何ら人事上の不利益を受けることがないということを基本にいたしておりまして、現実としては、このような拒否をする者は一人もいないというのが現状でございます。

○田嶋陽子君 理想的ですね。何かちょっと受けていた印象と違って、それがもし本当にそうだったとしたらすばらしいと思います。
 ただ、じゃ、今、委員長はもう終わりだとおっしゃいましたけれども、あと二分ほどあるとのことですので、もう一つ慌ててお伺いいたします。
 カウンセリングシステムがあるということなんですけれども、部内、部外にカウンセリングシステムがあって、そして、そのカウンセリングの中で、私は結構いろんな病気になる人がいるんじゃないかと思うんですが、一番多い相談が、自衛隊を、任意に入った人の、任意の人のことなんですけれども、自衛隊を出た後の就職のことを心配しているというお話なんですけれども、その就職に関しては、再就職ですか、自衛隊を出た後の、あるいはその悩みの状況とか自衛隊を出た後の再就職とか失業率とか、そのことをちょっとお伺いできるといいんですけれども。

○委員長(中原爽君) 先ほどは失礼いたしました。お時間は五十七分まででございます。失礼いたしました。

○政府参考人(宇田川新一君) 先生の御質問は任期制隊員の再就職状況だと思います。
 三年ぐらいと申し上げますと、平成十一年度であります。退職者数が三千六百三十一名、援護の希望者数、これ再就職を面倒見てくれという話になりますが、この方が二千四十一名、就職の決定者数が二千三十四ということで、決定率は九九・七%であります。
 平成十二年度であります。退職者数が四千三百九十八名、援護希望者数が二千五百七十一名、就職決定者数が二千五百六十三名、決定率は九九・七%。
 平成十三年度は、退職者数が三千七百七十四名、援護希望者数が二千三百三十一名、就職決定者数が二千三百十四名の決定率は九九・三%であります。
 これ、任期制の隊員の状況であります。

○田嶋陽子君 これで終わりますけれども、もう一つ最後に、私が今すごく心配しているのは児童虐待です。ドメスティック・バイオレンスは夫が妻を殴ります。それから、児童虐待は親が子供を殴ります。強い者から弱い者へ。
 自衛隊の中でこの虐待に相当するものはあるのかどうか。というのは、多分、上官というのは大変なストレスを抱えていらっしゃる方たちだと思うんですね、ある意味では。で、その上官は、訓練の下に自分のストレスを部下に晴らしてはいないのではないかどうか、そこのところを。
 それで、そういうところをどんなふうに見ていらっしゃるのか、その上官のストレス解消をどんなふうに自衛隊はプログラムなさっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(宇田川新一君) おっしゃるように、上官、部下の指導等でかなり悩んでいる面もあります。これは一般的なカウンセラー、先生先ほどおっしゃいましたけれども、部内の中の人間が聞くカウンセリング、それから部外の方に来ていただいて聞くカウンセリング、この辺で悩みを、心情把握と申しまして悩みを聞いて解決しているところであります。

○田嶋陽子君 虐待はあるのですか、ないのですか。

○政府参考人(宇田川新一君) 虐待ということではなくして、私ども私的制裁と、私的制裁、私的、私的とは私の、私的制裁ということでありまして、残念ながらこれ全くないというわけではございませんで、時折、私的制裁が発生することがあります。例えば、自分の部下の教育上、どうも教育しても言うことを聞かないということでぶん殴っちゃったとか、何件か生じている、こういう話はあります。
 これもやはりカウンセリング通してとか、あるいは別な服務指導という面を通して、そういうことのないように措置を講じているところであります。

○田嶋陽子君 終わります、取りあえず。
 ありがとうございました。

○委員長(中原爽君) それでは、他に御発言もないようですから、平成十一年度のうち、外務省及び防衛庁並びに平成十二年度のうち、外務省及び防衛庁の決算についての審査はこの程度といたします。
 次回の委員会は来る十月二日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。


2002/09/26

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