2002/09/20-2

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衆院・外務委員会

外務省の拉致問題への対応を厳しく追及 (民主党ニュース)

 民主党の伊藤英成ネクストキャビネット外相は、20日に開かれた衆議院外務委員会で、17日の日朝首脳会談をめぐる外務省の対応を厳しく追及した。

 伊藤議員はまず、「日朝平壌宣言に“拉致”“謝罪”の言葉が入っていない。これで解決したとの誤解を与えたのではないか」と質した。川口外相は「これで終わったとは思っていない。交渉の中で徹底的に追及していく」と答え、質問にはまともには答えなかった。

 さらに伊藤議員が宣言について原案の修正があったかを質したのに対し、田中均アジア大洋州局長は「修正はない。総理は総合的に判断されて署名された」と回答。伊藤議員は「交渉の結果、宣言が出される。重要なことがあれば反映されるべきではないか。外務省は人間の命を軽く見ているのではないか。安否情報のリストの翻訳にはどれくらいの時間がかかったのか。総理はいつ知ったのか」と厳しく追及した。

 田中局長は「朝の準備会合で、年月日が入ったものを非公式なものとして受け取った。公式なものは赤十字から通知文を渡すということで、それには年月日がなかった。従ってこの正式なものを採用した。翻訳に長時間かかったということはない。総理が知ったのは午後の会談の直後」と回答。伊藤議員は「交渉ではすべてを頭に入れてしなければならない。こんな重要な話がなぜすぐに耳に入らないのか。国民を守る意識があるのか」と外務省の外交姿勢そのものを強く批判した。

 この日の外務委員会では、首藤信彦金子善次郎渡辺周の各議員もそれぞれ外務省の姿勢を追及した。


伊藤(英)委員 私は、この北朝鮮の問題につきまして、九九年の十二月の村山訪朝団のときの一員としても、そしてまた翌年、二〇〇〇年の、一昨年の十二月に民主党の訪朝団の団長としても北朝鮮に渡りまして、拉致問題等も含めて真剣な議論をしてきた経緯、そしてまた日朝関係について強い関心を持って取り組んできたつもりであります。

 今回総理が、まさに日本人の拉致問題について具体的な進展がなければ国交正常化交渉の再開はあり得ない、こういうことを言われて行かれたわけでありますけれども、いろいろな側面はありますが、八名死亡された、そういう信じがたい結果が報告もされたりしております。日本が今まで、八件十一人のすべてに関して北朝鮮が安否を報告すること、あるいは、その問題について国家として拉致の関与を正式に認め、口頭ながら謝罪もされたということであります。しかしながら、拉致や謝罪のことにつきましても、今回の共同宣言の中には、その拉致や謝罪の言葉ということも文書の中には入っておりません。

 そういう意味では、拉致問題の解決に道筋がついたというふうに言えるかどうかということでありますし、今回、極めて残酷な非情な結果でありまして、家族の皆さん方の本当に長きにわたる精神的、肉体的な苦しみを思い、日本の国民として、この起こった悲劇に対して、本当に私はあの報を聞きながらも胸が張り裂けるほどの悲しみと憤りを感じました。まさに主権侵害と人道的な見地からも、これからも本当に毅然として取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに思います。

 さらに今回、金総書記が、拉致問題、不審船問題も軍部の一部にその責任を帰したわけですが、この平壌宣言では、みずから軍の最高責任者としての国防委員長の肩書で署名しているわけですね。そんなこと等を考えたときに、本当に国家責任をどういうふうにとるんだろうかということも非常に大きな問題として残っていると思います。

 いわば、こういう状況の中で小泉総理がこの平壌宣言に署名したわけでありますけれども、日本側が、八名の死亡確認で拉致問題が解決し、あるいは不審船事件も片づいたんだ、こんな感じで北朝鮮に誤解を与えることになりはしないだろうかと非常に危惧をするわけであります。
 こうした点について、外務大臣はどのように認識をされますか。

川口国務大臣 拉致問題につきまして、今回、北朝鮮から、公式、非公式の通知として、拉致被害者の安否の確認及び死亡年月日に関する情報の提供がございました。

 我が方としては、当然のことながら、これで問題が終わったとは毛頭思っておりませんで、これが国民の生命と安全にかかわる重大な問題であるというふうな認識を持っております。今後、再開をされる国交正常化交渉の中で、この問題について北朝鮮側に対して、事実関係については徹底的に究明をするように、それを求めていくということでございます。

 総理のお考えが北朝鮮側に対して誤解を与えたことにならないかという御質問でございましたけれども、これは、今回の会談を通じて総理は、日朝間の諸問題、たくさんあるわけでございますけれども、これについて包括的な促進を図る上で一定のめどがついたという御判断の上に立って日朝平壌宣言に署名をなさったわけでございます。政府としては、これから開催される国交正常化交渉、それから安全保障協議の場で、北朝鮮がこの宣言の内容を行動に移すことが大事でございますので、それを注視し、さらなる調査、それから再発防止、そういったことの確保に努めてまいりたいと考えております。

伊藤(英)委員 田中局長に伺う話だと思いますが、この首脳会談に至る準備会談のとき、そのときに、この安否の状況というのはどのくらいわかっていたんでしょうか。だれか、一部死亡された方がいるというようなことは全然わかっていなかったのか、何か聞いていたんでしょうか。

田中政府参考人 私どもが事前の協議あるいは水面下での協議も含めて一貫して求めてきたことは、八件十一名の方々の安否情報をすべて出すということを求め、かつ、拉致を拉致として認めて、それに対してしかるべく措置をとってくれということを一貫して求め続けてきたわけです。

 ですから、そういう観点で、物事を包括的にとらえ、安全保障の問題もその他の問題についても日本の主張というのは変えない、そういう前提基盤の中で国交正常化の交渉を再開するということについての準備をしてまいったわけでございます。
 その間、具体的な安否の情報が寄せられたことはございません。

伊藤(英)委員 十七日のそのときに、共同宣言案についての話なんですが、これは一応事前に準備はされていたと思うんですけれども、どちらからか、両者で準備されていたんでしょう。十七日の日に一部修正されたところはあるんですか、ないんですか。

田中政府参考人 十七日の日に修正されたところはございません。
 とりわけ拉致の問題については、私どもが一貫して求めてきた安否情報を全体として出すということ、それから、これは総理御自身が強く求められ、首脳会談の中で金正日総書記が、拉致問題については遺憾なことである、おわびをするということで、拉致を事実上認める、その説明をする、そういうことも含めて総合的に総理が判断をされ、まさに国交正常化交渉を再開するということだから一定の基盤はできたという意味で、総理が最終的に承認をされ、宣言に署名をされたものであるということでございます。

伊藤(英)委員 この宣言文の中では、日本は過去の植民地支配の問題等につきまして謝罪等もしているわけですね。北朝鮮が、まさに国家的犯罪として拉致ということを認め、あるいは口頭では謝罪もした、こういうことなんですが、もう一回改めて伺うんですが、共同宣言案の中には拉致とか謝罪という言葉を入れなくてよいと判断したのか、入れようと努力といいましょうか主張はしたけれども結果はこうなったということなのか、もう一度伺います。

田中政府参考人 平壌宣言の三の中に「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」というくだりがございます。これは、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」、明らかに拉致の問題を意味しているわけでございまして、この「遺憾な問題」、ですからこれは……(発言する者あり)いや、先方ともこれは確認をしているわけでございますけれども、まさに、今まで全く、安否の情報についても、拉致についても認めてこなかった、それを総理が行かれて、彼らが調査をした結果というのを出してきた、なおかつ、国家の最高責任者としての金正日国防委員長が、その事態を説明し謝罪をしたということは、重いものであるというふうに受けとめております。

伊藤(英)委員 私は、今のように判断をされて、入れようともしなかったということなんですが、これはいわば基本的な認識の問題ですね。これから正常化交渉を進めていく上においても、あるいは正常化交渉をする前の段階で、日本がどうしていくかということについての認識の話だと思うんです。

 これは、ただ口頭で言っただけじゃなくて、いわばこの宣言文の中にしっかりと書いてあるかどうかということが、今後に与える影響も含めて、どんなに重要かと思うんですが、そうは思いませんか。外務大臣、どうですか。

川口国務大臣 ただいま田中局長からお話を申し上げましたけれども、まず、日朝の首脳会談では、拉致問題について、遺憾なことであり、おわびをするという発言があったわけでございます。それから、その日、北朝鮮外務省が、北朝鮮側、我々は本件に重く向き合っている、かつて日朝関係が不正常であった際にかかる問題が発生したことは遺憾である、我々は今後、かかる問題が発生することを防止する等の内容の談話を発表したわけでございます。日朝平壌宣言においては、拉致問題を念頭に、先ほど局長が申し上げたようなことが書いてあるわけでございまして、そのような北朝鮮側の対応を全体として見れば、この問題に対しての北朝鮮側の姿勢は明らかであるというふうに考えます。

 いずれにいたしましても、ここで我々は国交正常化の交渉の再開のまさに最初の入り口に立ったわけでございまして、引き続き、今後徹底して拉致問題については真相究明をしていくということでございますし、国交正常化交渉の場や新たに実施をされる安全保障協議の場でも、この件については協議をしていきたいと考えております。

伊藤(英)委員 今後再開をしていくということについては、どういう段階かは別にして、私は賛成なんですよ。やっていくんだけれども、その前提はあるんではないか。

 もう一度言いますと、先ほどの局長の話ですと、私はこういうことだと思うんですよ。いいですか。共同宣言案は十七日の朝の段階で準備されておりました。それで、十七日になってから、八人の方も死亡されたという話もわかった、あるいは北朝鮮側から国家として拉致したということも認めた、あるいは謝罪したということもあった。そういう状況は、あの共同宣言の原案が朝ある段階ではわかっていなかったということでしょうね。しかし、このことがわかった。にもかかわらず、共同宣言案を修正しなくていいんだろうかということをなぜ思わないんだろうかということがわからないんです、私は。もっと答えますか。

田中政府参考人 当然のことながら、これは相手がある話でございますし、かつ、今まで北朝鮮との関係が、こういうものが出せるような状況になかったことも事実だと思います。

 通常、正常化交渉というのは実はずっとやってきている、十年以上前に開始がされてずっとやってきていることでございます。今回、宣言に書かれてあることは、正常化交渉を十月から始めるということでございまして、そのために、こういう共同宣言を総理が行かれて署名をされたということでございます。

 その間、確かに拉致の問題について情報が、安否情報が全面的に開示をされたとか、その問題について謝罪がなされたということは、十七日において首脳会談で起こったことでございます。ですから、総理としても、そういう全体、先ほど大臣が御答弁になりましたように、外務省のスポークスマンの発言もありますが、そういう全体をとらえて、総理は、まさにこれから拉致問題をさらに解明していく上でも交渉はやっていかなければいけないという判断をされ、宣言に署名をされたということでございます。

伊藤(英)委員 共同宣言というのは、もともとあってやるんじゃないんですね。要するに、本来、交渉をする、議論をする、その結果、共同宣言というものはされるんです。だから、いいですか、その首脳会談が行われる前には知らなかった新しい重要なことが起こってくれば、それを反映した共同宣言にするのは当然だと思うんですよ。なぜその努力をしないんだろう。先ほどの局長なんかの話を聞いていますと、何で人間の命をこんなに軽く見るんだろうかというふうに私は思いました。

 じゃ、次に伺います。
 今、きのう、きょうも非常に大きく報道されたりしておりますが、いわゆる死亡年月日つきのリストの話なんですが、これはなぜすぐ翻訳しなかったんですか。私は、そのリストを下さいと言ったんですが、外務省は下さらない。何枚あるんですか。なぜ翻訳にそんな時間がかかったんですか。

田中政府参考人 事実関係を申し上げさせていただきます。
 私どもが朝、事前協議をやりましたときに、これはあくまで赤十字―赤十字の行方不明者に対する安否情報として正式に伝えるものであるという前提の中で、口頭でその内容について説明がございました。その段階では、亡くなられたとされる方々の死亡の年月日はもちろん入っていなかったわけでございます。

 その会合が終了したときに、先方から、非公式なものだがという前提で、最終的には赤十字―赤十字の通知文を待ってくれということで、非公式な紙が渡された。通訳がそれを受け取って、それを翻訳に回したということでございます。

 結果的にその翻訳ができたのが遅かったということはありますが、すべての前提というのは、北朝鮮という国でございますから、そこは私ども、きちんと正式にやってくるものというものを見きわめないといけない。正式にやってきたものの中には、死亡者、死亡年、日時、年、月について記述はなかったということでございまして、それが正式なものということでございますので、その正式なものを採用した、情報としては使ったということでございます。

 ですから、翻訳に時間がかかった、そういう大部のものではございません。ですから、そういう意味では、翻訳に長い時間がかかったというのは、多少誤った言い方かもしれません。

伊藤(英)委員 じゃ、総理に、総理の耳にこの内容が、その死亡年月日等が入ったのはいつですか。結論だけ。

田中政府参考人 首脳会談直後、首脳会談宣言式の以前でございます。

伊藤(英)委員 じゃ、死亡年月日が入っていたということは、その通訳の方かどなたかは知りませんが、我が日本政府の関係者は、だれか知っていたんですか、知らなかったんですか。

田中政府参考人 その文章が配られたときに、私たちも含めて政府の関係者は知り得たということでございますが、これは総理も言っておられますけれども、やはり一番重要なのは、生死ということも含めそういうことであり、それから総合的に判断をして物事を決めるということであって、総理は、これをごらんになった上で宣言への署名を決められたということでございます。

伊藤(英)委員 公式か非公式かとか、正式かそうでないかという話は、もちろんそれなりに意味があるんですが、それがすべてではないんですね。
 今回は、我が日本国家の最高責任者の総理が行って交渉しているわけです。したがって、赤十字云々という話も含めてもそうなんですが、そこにあるあらゆる情報といいましょうか、重要な情報は頭に入れて交渉はしなければなりません。

 十七日の午前中に、十一時前に日本側に手に入っていた。そして、十一時から交渉も行われる。午後の二時からも交渉が行われました。そのときにこんな重要な話が何で耳に入らなくていいのか、なぜそんなことを踏まえて交渉しなくていいのかということについて、今の局長の話なんか聞いていますと、何か当然かのごとく発言されるのが、私は全く理解できないんです。

田中政府参考人 これは一貫して私ども申し上げているところでございますし、私も、最初に八件十一名の方の安否情報を受けたときには、非常に強くショックを受けました。動揺をいたしました。

 ただ、その会合の場で、何よりも必要なのは亡くなられたとされる方々についてきちんとした情報が開示されなきゃいけない、そういうものを総合的に勘案しなければいけない、まさにそういう調査をやってもらいたいということを申し上げ、総理も首脳会談の場でそういうことを申し上げた。まさに私どもがやっていかなければいけないのは、これから交渉の場も含めてそういう事実関係をきっちり究明すること、交渉の場がないところではそれはできないということでございます。

伊藤(英)委員 今のような話を聞いてみても、あるいは最近の状況を見てもそうなんですが、私自身もこう思うんですね。よく最近言われます、外務省の隠ぺい体質そのものじゃないか。外務省は、拉致問題について当事者意識がないんじゃないだろうか、日本の国家をあるいは国民を本当に守るんだ、そういう気概で本当にやっているかなと。それはまた、今回のケースで言っても、家族の人たちの気持ちや、あるいはもっと言えば人間の気持ちというものをどのくらいわかっているんだろうかなというふうに私は思うんです。ほとんどわかっていないんじゃないかとさえ私は思う。

 もう一回聞くんですが、今回、拉致被害者の家族の人たちになぜすぐ知らせなかったのか。条件づきでも構わないんですよ、条件づきでも。なぜ知らせないんだろうか。なぜ知らせなくていいと思うのか。これは、局長、大臣、どうですか。

田中政府参考人 これは、先ほどから御答弁を申し上げていますとおり、委員も訪朝団等に参加をしてこれまで拉致問題の解決に御努力をいただいてきておりますから、よく承知していただいていると思いますけれども、北朝鮮の場合には、やはりきちんとした公式な情報ということをベースにしないと、こういう重い問題というのは、なかなか後では撤回がきかない。したがって、彼らが最終的な文章は赤十字―赤十字の通知文であるということを言っている以上、私どものそのときの判断は、この通知文をもとに御家族の方に通報を差し上げるということであった。しかしながら、その判断というものが、非公式なことであるということを十分御説明した上で直ちに通報すべきであったという判断をすべきであったというふうに私も今は思っております。

伊藤(英)委員 私は、先ほど申し上げたように、北朝鮮の問題については自分でも結構関与してきていると思っているんです。それでも、非常に今までも、例えば外務省の方の説明の中でも、よくこういう話が出ました。北朝鮮という国は本当に自尊心の高い国だ、だから云々という話がよくあったんですね。私はそのときに言ったんですよ、日本、私たちも自尊心が高い国ですよと。今の私の言った意味は、私の受け方は、自尊心が高い、誇りを持った国だから、いわば相手を傷つけないようにという言い方のように思えてならなかった。拉致問題でも同じなんですね。

 だから、しばしば言われますように、例えば、具体的な名前を言って申しわけないんですが、阿南局長のときでも、あるいは槙田局長のときでも、要するに拉致の十人のことで日朝国交正常化がとまっていいのかというような趣旨をいろいろ言われたと報じられますよね。本当にこういうような感じを持っているんじゃないかと私も思っているんですよ、外務省は。今回の一連の動きを見ても、あるいはそれに続いておる対応の仕方を見ても、私は、本当にそういうことの延長線上だなと。さっき申し上げたように、本当に日本を守る、日本の国民を守るという意識が本当にどれだけあるだろうか、あるいは家族の気持ちを考えているんだろうか。

 外務大臣、私がさっき申し上げたのは、この北朝鮮外交は、さっきお二人のアジア局長のお話を申し上げていたんですが、少なくともそういう側面はあったと思うんです。外務大臣として、今までのそうしたことについて家族の皆さん方にもおわびの気持ちもあってしかるべきだ、今までの外交の仕方の問題についてもと私は思うんですが、そうしたことを含めて、今までの北朝鮮外交についての認識を外務大臣に伺います。

川口国務大臣 私といたしましては、これは外務省が本当にどのように一生懸命にやってきたかということとは別に、世の中にはある種の認識、パーセプションというものがあるといたしましたら、それはそういうものがあるというふうに受けとめて反省をしなければいけないというふうに思っております。ただ、他方で、これは外務省として今までこの拉致をされた方々を救出するために決して手をこまねいていたということではなくて、誠心誠意それぞれの時点において努力をしてきたと思います。

 これは、まさに委員よく御存じのように、ずっと冷戦が続いていたという国際情勢もございましたし、日本と北朝鮮との間の歴史的なさまざまな事情もございました。そうした中で、努力に努力を重ねて、これは外務省も当然のことですが、伊藤委員を初め大勢の方々の御努力をいただいて物事が少しずつ進んで、きょうこういう事態にまでようやくなった、再開が可能になったということであったかと思います。

 その間、外務省が努力をしてきたにもかかわらず、世の中に違うような印象を与えてきたとしたら、それは私としては残念なことだと考えますけれども、今後、そういったことについては、できるだけそういうふうに世の中が外務省をごらんになるようなことがないように、これは外務省改革の一環としても十分に注意をして仕事をしていくべきだと思っております。

 拉致の方々との関係では、今回、先ほど申しましたけれども、省内に、拉致された方の御家族を支援するチームというのを設けて全力を挙げて御支援をし、また、外務省は外交面でも一生懸命にこの問題の徹底的な究明を図っていきたいと考えております。

伊藤(英)委員 私の持ち時間がもう参りましたので、最後に一つだけお伺いいたしますが、さっき、他の同僚議員の質問に対してなんですけれども、いろいろな、拉致の問題等々重要課題について、交渉の過程でいろいろやっていくような話がちょっとあったと思うんです。私は、交渉の過程でやるものもあるんですが、交渉を再開する前にやっておかなきゃならないことも今回は多々あると思っているんです。

 それで、例えば拉致の被害者の家族の方の訪朝の問題とか、あるいは生存者の帰国の話とか、あるいは今回の拉致事件についての詳しい状況なり、責任の明確化なり、補償の問題等、その他いろいろあると思うんですが、大臣は、交渉を再開する前にはこういうことをやっておかなきゃいけないなというのはどういうことがあると今考えていらっしゃいますか。

川口国務大臣 今委員がおっしゃったような問題、これは全部重要な問題であると思います。交渉の再開前、今から既に取りかかっているわけでございますし、国交がない国でございますので、引き続き交渉の過程で取り扱っていくということにもなるかと思います。

伊藤(英)委員 いや、具体的に何をするかということです。

川口国務大臣 まず、生存をしていらっしゃる方の御家族につきましては、これはできるだけ早い機会に訪朝をしていただいて、そして御確認をいただくといったようなことがまず必要だと思います。

 それから、残念ながら亡くなられたとされている方々の御家族につきましても、やはりいろいろな、その時期の真相を一刻も早く、少しでも多く知りたいと思っていらっしゃると思いますので、もちろんこれはそれぞれその御家族が御希望なさってということが前提でございますけれども、行っていただいて、いろいろお話を聞いていただくということが大事かと思います。

 そして、政府の立場として、亡くなったとされている方々のその状況について、やはり全力を挙げて情報を集める、真相究明を図るということがまず大事だと思っております。

伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 まず最初に、ピョンヤンにおける共同宣言でございますけれども、今の時点で日朝首脳会談を持つことに関しては、私は必ずしも合意できない点が非常に多々あると思います。

 短期的には、確かに、行くことによって、今まで国交がないところへ総理が行くわけですから、何らかのお土産を持って帰ることもあるだろう。しかし、長期的には、日本の全体的な東アジア外交戦略において、果たしてどういった整合性を持っているんだろうか、そうした長期的な視点からは私は非常に問題があるんだ。しかも、今の時点で行くことは、必ず相手のペースに乗せられるということで、大変危惧をしておりました。しかし、それは私だけではなくて、多くの人がそうだったと思うんですね。

 これに対して小泉総理は何とおっしゃっていたか。正常化交渉開始のためにピョンヤンに行くんじゃない、正常化交渉を果たして金正日総書記との間で本当に始められるかどうかを見きわめに行く、こういうことをテレビの前でおっしゃっていたわけです。しかし、現実にはどうですか。行ったらもう宣言文は決まっていて、一言一句修正せずにサインしてくる。

 私は、この交渉がこんなにも短期でやったということに最初から危惧を持っていました、これでは交渉なんかできないじゃないかと。こんな微妙なことがあって、問題を見きわめるだけでも、幾つかの問題を整理するだけでも、幾つかの問題を通訳を通して言うだけでも、とても一日使ってしまう。一体、どうしてこんなことができるんだろうかと思ったら、わかりました。要するに、これは、もう日朝正常化で交渉を始めるんだ、その合意でそのサインに行くと最初から決まっていたわけですね。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 我が国と北朝鮮との間にはずっと五十年以上国交がないという、そういう意味では極めて不正常な関係にあるわけでございまして、しかも、北朝鮮は我が国の本当にすぐ近くにある国でございますから、そのもたらす不安定性というのはかなり大きなものがあったわけでございます。

 そして、その点について、総理は、拉致問題を初めとする日朝の間の難しい懸案問題について、首脳レベルで対話をして、正面から解決を迫って、そして進展を図るということを目的として訪朝をなさったということでございます。そして、この首脳会談によりまして、拉致問題や安全保障問題や国交正常化といった基本的な問題について一定の前進があったということであったため、総理はこの結果を総合的な見地に立って判断をされて、前に進める、すなわち国交正常化交渉の再開ができるというふうにお考えになったということでございます。

 その結果として平壌宣言への署名があったわけでございまして、これは初めから署名ありきで総理は行かれたということでは決してございませんで、そういうことが可能かどうか、首脳間同士の話し合いでそれを見きわめる、そういうことのために行かれた、その結果として署名があった、そういうことでございます。

 今回のこれで問題が払拭をされたということではなくて、まさにこれから交渉が始まるということでございますから、交渉前、交渉中、具体的にそういった問題については前進を図っていく、そういうことでございます。

首藤委員 いや、質問に全然答えていただいていないですよ。それは、魚で尾っぽとひれだけ出して、はい、魚ですと言われているのと全く同じです。私の質問に全然答えていないじゃないですか。

 本当にどれだけ真剣にここで交渉するつもりがあったか、本当にどれだけ見きわめるつもりか、全然明確じゃないじゃないですか。もう決まったとおりの文言を言って、一言一句変えない。それでどうしてあなたのおっしゃったような見きわめるということが言えるんですか。

 ただし、私、時間がないので次へ進ませていただきますが、この交渉を見れば、これは限られた時間で説明しなければいけないので残念ですが、もう本当に相手のペースに乗せられたと。恐らくは、例えば待合室で、交渉が中断する、その間で話している仲間同士の話だって全部盗聴されて、それが全部向こうの交渉戦術になってきて、これがなければ進めるのをやめましょうね、総理と言ったら、向こうがぽんと出してくる。これはまさに乗っかっているじゃないですか。

 私は、驚いたのは、そうした対象と例えばアメリカが交渉するときは、よくカプセルなんか持っていきますよ。全く防音の、音が一切漏れないもの。大体、どれだけ準備を田中局長がやっておられるか、これも聞きたいわけですが、さらに驚いたのは、日本の映像を見れば、小泉さんは厳しい顔をして握手していますね。しかし、ピョンヤンで流れた放送、どうですか。こうやって、ほほ笑みをもって話している映像になっているじゃないですか。あの映像は、あそこに、現場におられたからよくわかっていると思いますけれども、どうして日本では放映されていないのですか。田中局長、いかがですか。

田中政府参考人 どの映像を使うかということについては、私ども承知をいたしておりません。

首藤委員 いや、だから、現場でその映像はあったわけですね。向こう側は別なカメラで撮っていて、我々は撮っていなくて、向こう側だけが撮っている映像というのはあったわけですね。いかがですか。

田中政府参考人 基本的には、会議の冒頭、日本と北朝鮮側双方が映像を撮ったということでございます。

首藤委員 いや、私が見たのは、会談している中の写真が撮られていたんですけれども、これはどういうふうに解釈すればいいんですか。テレビカメラがあったんですか。どこかにあったんですか。

 ただし、今時間がないから私はこれ以上言いませんけれども、非常に不明確ですよ。一体何が行われていたのか。我々が毎回毎回、朝から晩まで見ているのが本当の映像なのかどうかということですね。実際には何が行われていたかということです。

 今回の問題は、当然のことながら、拉致の問題で非常に我々はショックを受けたわけです。私も、こういう海外の安全の問題、海外における邦人の安全の問題に二十数年間携わってきて、本当にもうこの問題に関しては心の痛い思いをしております。

 そこで、こうした問題、特に北朝鮮の問題に関しては、公安調査庁は外務省とは別ルートで、別な方向からいろいろな調査をしております。例えば横田めぐみさんに関しては、安明進という工作員が九三年八月、すなわち、いわゆる北朝鮮情報によると横田めぐみさんがお亡くなりになったその直後に韓国に亡命しているということになっていますが、この時期というのは、まさにノドンが出て、核疑惑が出てくる非常に緊張した時期なわけです。こういうときに安工作員が出てきて、またそのころいろいろな工作員が入ってきたりして、捕まったりしています。

 こういうときに、公安調査庁は、実は横田めぐみさんの安否に関しては明確な情報を持っていたんじゃないか。例えば、この安という人はいろいろなことを、横田さんに関して必要以上によく知っているんですよ。ですから、そういう意味ではきちっと調査をされ、またさらに大物の亡命者としてファン・ジャンヨブという方は韓国に今亡命されているわけですね。当然のことながら、公安調査庁としては別ルートで明確な情報を持っていたと思うんですが、いかがですか。

町田政府参考人 当庁は、北朝鮮に関しまして、我が国国民の安全に大きな影響を及ぼすおそれがあるという観点から調査を行ってまいりました。その中で、御質問の拉致被害者の安否につきましても、重大な関心を持って、さまざまな情報収集手段を用い、全力を挙げて関連情報の収集に努めてきたわけでございます。

 しかしながら、国交のない地域内のことであり、また、北朝鮮という特殊な閉鎖的体制下のことであるという難しさがあります上に、政治や経済等の動きでありますと、少なくとも一定範囲の人にはその目的を伝えますので、情報がどうしても表に出るわけでありますから、これを手がかりにさらなる情報を入手しやすい、そういうことでありますが、個々の拉致被害者の安否情報についてはそういう性格がなく、しかも、北朝鮮は北朝鮮名をつけて隠ぺいする等して意図的に隠しておりましたので、今御質問の中で御指摘がありましたようなことがないと、必ずしも、何というんでしょうか、的確な情報の入手は難しいわけです。私ども、いろいろな角度から全力を挙げて努力したわけですが、結果的には的確な情報の入手に成功していなかったわけでありまして、まことに遺憾に思っております。

 なお、今後もさまざまな手段を使って、可能な手段を使って、示された情報の正確性を含めて関連情報の収集に努めてまいりたいと思っております。

首藤委員 そんなことは今後やらなくて結構です。税金を使ってこれだけの組織を維持しているんですが、もう価値がないということです。私は、組織的に、公安調査庁の意味はないんじゃないか、それに関しては、組織的な行政改革の対象として当然考えなければいけない問題だと考えております。

 さらに問題なのは、最後に、有本恵子さんの問題を話させていただきます。
 有本恵子さんが、日本に生存を伝える手紙があった、その後、急に、その北朝鮮情報によれば死亡しているということになっています。

 私は、この海外安全の問題、あるいは誘拐や拉致の問題に取り組んできましたけれども、こういう情報があったらどうするか。あったら、最初にまず、誘拐した犯人、拉致した側に対して、その対象となった犠牲者の安全を確実に確保しなさい、もし危害を加えることがあれば、それは物すごい報復がありますよということをきちんとした明確なメッセージで言うわけですね。

 外務省は、例えばこの有本恵子さんの生存情報に関して、有本さんに危害が加わらないような対応をどのようにとられましたか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 政府といたしまして、拉致をされた被害者の氏名の公表については慎重に対応をしてまいりましたところでございます。御家族の御了承なしに、拉致の対象となった、被害となられた方の氏名の公表ということは控えてまいりました。

 それから、政府といたしまして、拉致をされた方々の生命の安全のためにどういうような方法が効果的な方策であるかということを真剣に考えながら、ありとあらゆる機会をとらえて北朝鮮に真剣に働きかけてきたわけでございます。

 今回の日朝首脳会談の折に、北朝鮮側から安否について調査の結果の非常に悲しい知らせが届いたわけでございますけれども、政府としては、引き続きこの事実関係を解明するように北朝鮮側に対してきちんと申し入れをしていく、そういうことでございます。

首藤委員 私は、恥を知れということですよ。外務大臣、外務省の皆さん、全員ですよ。

 外務省、有本恵子さんに関しては、例えば、ことしの三月二十四日に、有本恵子さんの生存情報について報道されています。あるいは小泉政権の前の森総理も、第三国でどこか見つかるんじゃないか、こんな話をずっとされていたわけですよ。それと今我々が手元にもたらされた情報とどういう整合性があるのか。どういう努力をやっていたのかですよ。

 この横田めぐみさんの本、「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」という本ですよ。お母さん、一生懸命めぐみさんを助けようと思って、いろいろ活動されて、こういう本を書かれました。めぐみさん、外務省がきっと助けてあげる、こんな本が書けますか。せいぜい一枚か二枚の事書きじゃないですか。ここは国会なんですよ。これは国民を代表しているんです。この件に関しても、私は、小泉総理がこの場に来てきちっと釈明することを要求して、私の質問を終わりたいと思います。
 以上です。

吉田委員長 次に、金子善次郎君。

金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 植竹副大臣おいででございますので、ちょっと質問させていただくことから始めたいと思います。

 官房長官と御一緒だったというような報道もございますけれども、九月十七日の日でございますが、被害者家族の方々に対しまして、北朝鮮から示されました一枚のペーパーをもとに安否の状況をお伝えになった。その場合はかなり断定的なお話であったというようなことが家族の方々からいろいろな機会に耳に入るわけでございますが、これはあくまでもこのペーパー、北朝鮮の方から、まあ赤十字というような話もございますが、このペーパー以外の何かの根拠もおありだったのかどうか。まずそこを副大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

植竹副大臣 十七日の十一時からピョンヤンにおいてこの交渉の第一回が始まったわけでございます。そして、午前中は総理の方から、内容については皆様御存じのようなことでありますが、申し入れ、そして二時から先方から回答があったという点につきましては、これは向こうからペーパーというよりも、電話というか、そういうような連絡があった。ペーパーもございましたが、今極めて断片的とおっしゃいましたけれども、その部分的なこと、連絡があったことだけが私どもに参りました。それをお伝えしたということでございます。

金子(善)委員 今副大臣のお話がありましたように、一枚のペーパーをもとに、あくまでも本来、そういうことが北朝鮮の方から話があったという伝え方をすべきところを、断定的な言い方をされたというようなことで、以来、家族の方々は大変な、この情報内容に対しましていわば不信感に近いものが渦巻いている、そういう状態になっていることは御承知のとおりだと思うんです。

 そこでなんですけれども、北朝鮮が示してきたペーパー以外にほとんど判断材料がないというようなことだと思うんですが、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会、いわゆる救う会という会がございます。この会のお話によりますと、昨年八月二十四日、朝鮮日報は、九〇年代末までにピョンヤン、平壌に、八人の拉致された日本人がピョンチョン地区アンサン招待所に集団生活していることが確認されたと報じたと言われているわけです。

 救う会が、それに基づきまして調べた。その話によりますと、この新聞情報は、現在韓国に住む北朝鮮亡命者、これは氏名は伏せられているわけですが、目撃した情報であるということが確認されたということでございます。この救う会は、N氏から聞いた話といたしまして、自分が目撃した中に、今回の安否情報では亡くなられたと言われている横田めぐみさん、それから、生存されていると言われている奥土祐木子さんの顔写真とよく似た女性がいたという証言があることを確認していると。

 実は、このN氏の証言は外務省にも伝えられているということでございますが、大臣、これは御存じでいらっしゃいますか。

植竹副大臣 その朝鮮日報から出たということは、私、見ておりません。
 なお、先ほどおっしゃいましたペーパーということですが、これはピョンヤンにおける会合のことを伝えてきた日本側のペーパーでございまして、北朝鮮側のペーパーではありませんということをお伝えしておきます。

金子(善)委員 私が言いたいのは、今回は北朝鮮政府として赤十字という機関を通じた形で出してきているわけですが、さっき同僚議員の方からも公安調査庁に対しまして質問あったように、いろいろな情報がある。これは一つ一つ調べていって検証して、その事実関係というものをはっきりさせていくというのが国民の生命財産を守る政府の役割だというふうに私は思います。

 そういう観点からいいますと、例えばでございますけれども、こういう情報を日ごろからきちっと分析をしていれば、この奥土祐木子さんと、今回、イギリスの公使、梅本さん、お会いになっているはずですから、こういう情報をよく、いつも頭に入れておけば、そのとき、実はこういうあれがあったんだけれどもどうなんだということぐらい聞いて当たり前じゃないかと私は思います、本当に救出するという気持ちがあればですね。
 そこで、はっきりしたことをここで御答弁いただきたいと思いますけれども、今回の北朝鮮の安否情報というものはあくまでも北朝鮮が出してきた情報にすぎないのであって、これは、例えばその中で死亡とされている方は一人残らず死亡とは断定していない、外務省としては断定していない、日本国政府としては断定していないということを確認させてもらいたいと思います。いかがですか、大臣。

田中政府参考人 委員御案内のとおり、確かにこれまでもいろいろな情報、果たして十分な信憑性があるものかどうかということはありますけれども、いろいろな情報があったことは事実だと思います。ですから、私どもは、一定のプロセスの中で、北朝鮮が正式に政府として安否情報を出してくるということを求めてきたわけでございます。その結果が、公式に赤十字の通報ということで今スタンドしているということです。ですから、北朝鮮から公式に来た情報ということで、安否情報ということでございます。

 これから私どもがやっていかなければいけないのは、それに基づいてきちんとした事実関係の解明を進めていかなければいけないし、それから、生存されている被害者の方々の家族との面会を通じて確認作業ということもやっていかなければいけない、こういうことでございます。

金子(善)委員 次の点を質問をさせていただきますけれども、実は、先ほどの田中局長の答弁で、これまでずっと北朝鮮に対しては、八件十一人の問題について明らかにしろということを、これまでの事前交渉というんでしょうか、ずっと言ってきたと。ところが、これは御承知だと思うんですけれども、今回も、八件十一人のリストに入っていない方々の情報も北朝鮮の方から来たという事実があるわけです。

 この日本人の北朝鮮による拉致事件について、最も一生懸命心血を注いでこの問題に取り組んでこられたのは、救う会を中心にした方々であるというふうに私は思っております。そこが作成したリストがあるわけですが、これは今回の八件十一人のほかに四十人以上の疑いのある方々、これは警察は証拠がはっきりしないというようなことで、八件十一人というのは、日本の警察がはっきりした証拠がありますよということで認めた方々なんです。今回も、きょう、お昼、テレビでも放映されていましたけれども、ソガさんという方が新たに発見されたと。これはこのリストにさえも載っていないんです。ですから、本当のところ、北朝鮮にどれだけの方々が拉致されたかわからない、これが実情だと思います。

 とすれば、本当の意味で拉致問題というものを解決した暁に日朝交渉というものを積極的に進めるということであれば、この八件十一人だけじゃなくて、少なくとも疑いのある方々については調べていく必要があると私は思います。

 その中で、私はちょっとお聞きしたいんですけれども、この点について、日本がこの人たちについてどうなんだと言うだけではなくて、これから日朝の正常化がなされる中で、経済援助の話もちらほら出ている、あくまでも北朝鮮が本当に誠意があるとすれば、今まで拉致した方々の安否というものを日本政府に、日本国民にはっきり言うべきではないか。言わせるべきではないか。それぐらいの迫力を持って交渉しないことには、またこの八件十一人というのは矮小化されてしまうおそれがあるんじゃないか、私はそのように思うわけですが、この交渉についての決意、四十人以上について、どういう扱いを外務省としては外交交渉でやっていくつもりがあるのか、その点について明快な答弁をお願いしたいと思います。

田中政府参考人 委員御案内のとおり、これまでは、非常に厳しい関係の中で、日本が拉致があると言ってもないと言い、そこで何らの事実も解明されなかったというのが残念ながら実情であったと思うんです。ですから、まさにそういう事実を解明していく上でも、一定の協調的な関係になるんだという決意がないとなかなか物事が前に進んでいかないということだと思います。ですから、全く敵対的な関係の中で、拉致があると言って、相手が認めないということでは物事が進まないということも事実だと思いますので、そういう観点から、小泉総理はまさにそこを打開されたということだと思います。

 ですから、そういう意味で、私たちにも非常に驚きであったわけですけれども、リストの中には含まれていない人があったということで、そこは、北朝鮮側がいろいろな調査をしたことの証左ではないかというふうに考えていますし、当然のことながら、私どもは、基本的には警察の捜査の結果挙がってきたものをもとに我々の交渉を組み立てるということでございますけれども、今後の協議の中では、まさに北朝鮮がどれだけ誠意を持ってこういう問題に取り組もうとしているのかということについては常に見きわめながら、きちんとやっていきたいというふうに考えています。

金子(善)委員 私の方から強く要望をいたしておきますけれども、とにかく、先ほど来の各先生方の質問に対する答弁等、外務大臣の答弁も含めまして聞いておりますと、あくまでもこれは、拉致問題というものは入り口論、つまり、この疑惑がはっきりした段階で本来の交渉に入っていくというような位置づけであるべきだというふうに私は思っております。そういう観点から対応を強くお願いいたしておきたいと思います。

 最後ですが、一点だけお伺いしておきます。
 例の非公式文書と言われている安否の、特に亡くなられた方々の年月日、これが示されている、ハングル文字で書かれたペーパーが北朝鮮から非公式に提出された、既にこの内容は外務省から電話によりまして被害者家族の方々に通知されたというふうにも報道がなされているわけですが、この文書を、たとえ非公式文書でありましても、既に国民の中に報道を通じまして明らかになってきておりますので、これをぜひこの委員会に提出をしていただくようお願いしたいと思いますが、委員長のお取り計らいをお願いいたします。

吉田委員長 理事会で協議をしたい、こう前提に思っております。

金子(善)委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。もう時間がありませんので質問を進めたいと思いますが、今の同僚の金子委員の質問に続きます。

 拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないと繰り返し述べられてきました。我々も当然そうでございます。これは日本国のコンセンサスであろうと思うわけであります。どの時点で拉致問題は解決をされたと判断をするか。この拉致問題について今、まだこちらの八件十一人以外に行方不明になっている方、そして北朝鮮が今回出してきた方、あるいは救う会の方々が非常に疑わしいと見ている方々のお名前が複数挙がっているわけでございます。こうした方々に対して、日本国として今後どのような要請をしていくのか、どの時点において拉致問題が解決されたと判断するのか、その点について政府の御見解を伺いたいと思います。

田中政府参考人 少なくとも今回安否情報として正式に提出があった方々については、先ほど来申し上げていますように、必要な事実関係の解明であるとか御家族の方々の面会というような一連の当面急いでやっていくべき事項というのは多々あると思います。多分、そのうち、いろいろな形での議論の中で、国交正常化交渉の中でやっていかなければいけない案件もあると思います。

 ですから、大事なのは、宣言の趣旨にもありますように、こういう遺憾な事件が二度と起こらないような適切な措置をとるということでございますから、仮に過去そういう、これ以外の拉致の問題があるということであるならば、それも徹底的に解明をされなければいけないということだと思います。ですから、そういう交渉、状況を見ながら拉致問題というのはとらえていく、交渉していくということだと思います。

渡辺(周)委員 そうしますと、例えば交渉の過程において、日本国籍を有する人間が北朝鮮の国内にどれぐらいいるのか、そういうのを全部出させなきゃいかぬと思うんですね。その方々がどういういきさつで北朝鮮に移り住んできたのか、あるいは帰国運動で日本人妻として帰ったのか、あるいは我々の知らぬところで拉致をされ、何らかの形で北朝鮮国内に存在している、そのことをやはり北朝鮮側に対してはっきりと、これは、日本国籍を有する者で北朝鮮国内の人間に対しては、それについて明らかにせよとやるべきだと思う。

 そうしませんと、またいずれ新しい拉致と思われる方々のお名前が出てきたときに、またこの確認作業をしていくとまた時間がたってしまう。下手をすると、また向こうからこの方は死亡しましたなんということで、また向こうのペースにはまって、生死も全くわからないまま向こうの一方的ないわゆる発表を待つということになりやしないかというふうに思うわけであります。

 その点については、この拉致問題が解決されたという判断の一つ明確な点は、これは政府内でしっかりと議論をしていただきたいというふうに思うわけでございます。

 そしてまた、今後のスケジュールについてどうされるかということです。
 北朝鮮に任せて、とにかく返ってきた返事をそのままうのみにして、北朝鮮の調査をしたらこうでございました、北朝鮮当局がこう言っていますというのでなくて、我々が主体的に日本国として、この亡くなられたと向こうが発表する方々の、本当にそうであるか、あるいはそれは事実ではないということを確証するためにも、まずは我々の国が、北朝鮮の、向こうが発表する死亡したという方々に対してどのような手だてを講じることができるのか。

 これは、結果として、不幸にして万が一亡くなっているということであるのならば、そう信じたくはないわけでありますが、例えば、その方々の墓はあるのか。あるいは、その方々の残された家族が例えば髪の毛一本もらってきてDNAの鑑定をして、そこで本当にそれが家族のものであるのかどうなのか。あるいは、もし最悪の結果を考えれば、遺骨があったとすれば、それを例えば持って帰ってくる、そういうことはできるのかどうなのか。今後はどうされるわけですか、外務省として。その点については、何か交渉は今後用意されているんでしょうか。

 それからもう一つ、生存が確認されてお会いしたという四名の方、この方々の、実際に何ら証明するものがない。どういういきさつでこの方々と梅本英国公使が会われたのか。ピョンヤン市内の高層アパートの一室で会ったというふうに報じられていますけれども、なぜそこには何の記録も残っていないのか。その方が会ったというだけで、全く記録がないわけであります。

 例えば、朝、会談の休憩時間に突然連れていかれて、実は、この方がここにいます、会ってくださいと言われたから、何も、写真も、カメラも持っていなければ、テープレコーダーも持っていなかった。その方をどう信用しろということを、まさに客観的な証明するものがないわけでありますから、その点については、どういういきさつでその生存者という方に引き合わされたのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

田中政府参考人 首脳会談が始まる前に、事前の準備会合をやりましたときに口頭で安否情報の開示がありました。そのときに私が求めたことの一つは、生存者の方々に対して直ちに政府関係者による面会の便宜を図ってくれということでございました。ですから、そういう意味では、あの日の午後になったと思いますけれども、急遽、梅本駐英公使が準備本部の本部長ということでございましたので、何人かの人とともに面会をさせたということでございます。面会自体につきましては、梅本公使が帰国後、詳細なお話を家族にさせていただいている。

 ただ、これも北朝鮮の赤十字会から日本赤十字社に対する通知の中にありますが、彼らも御家族の訪問について便宜を供与する用意があるということでございますから、当面必要だと思うのはできるだけ早く御家族に行っていただきたいということで、現在その調整をさせていただいているということでございます。

 それから、いろいろな協議でございますけれども、当然のことながら、私どもも、亡くなられたと言われている方々についての事実関係の調査、これはもう既に総理からも私どもの方からもしてあるわけでございまして、できるだけ早い段階で、御家族も含め、御家族の御希望がある場合にはぜひ行っていただきたいというふうに思いますけれども、その辺も含めて調整をさせていただきたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 一日も早く行きたいという方もいれば、心の整理がつかないからまだかの国に行きたくないという方も当然御家族の中にはいらっしゃるんだと思います。そこの点については、拙速に、すぐにでも行けというふうに断言できるだけの思いはまだ私どもにもあるわけじゃございませんけれども、ただ、客観的な何らかのことは何一つないわけでございます。

 だとするならば、例えば、ちょっと話は戻りますが、先ほどの生存者の、梅本公使が会ったと言われる方々、この方々を、なぜテレビカメラも連れていくことができなければ、御本人の声を聞くなり、何らかの客観的なことを残そうとできなかったんですか。あるいは、北朝鮮側からカメラやテープレコーダーの類のものは一切持っていくなと、ある意味では言われたのかどうか、その点の事実はどうなんでしょうか。

田中政府参考人 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、朝の段階で、直ちに政府関係者の面会を認めてくれという要請をして、彼らがそれに応じたということでございまして、他方、同時に、その生存者の方々については、家族とか政府関係者がきちんと面会をする機会を将来つくるという約束もございました。

 ですから、そういう意味で、とりあえず面会をするというのはどうしても必要なことだと思いましたけれども、本当に確認をするためには、十分な準備をして、かつ御家族の方も含めて確認をするという作業がどうしても必要である、北朝鮮側はその便宜を保証するということを言っておりますので、そういうプロセスをたどっていきたいということでございます。

渡辺(周)委員 先ほどから便宜、便宜という言葉が出てくるんですが、そんなの当たり前のことなんです。日本人を拉致して連れていったのが北朝鮮でありまして、それを帰国させる便宜を図ってもいいとか、あるいは入国させる便宜を図ると言っていますけれども、便宜を図るというのはサービスをするということでありまして、これは当然のことじゃないですか。向こうが犯罪を犯しているわけですから、その家族なりが会いに行く、あるいは釈放して帰すということ、帰国させることは当然であります。

 先ほど来のお話を聞いていますと、日本側は、便宜を図ってくれた、便宜を図ってくれたと言いますけれども、北朝鮮の完全なペースに、もう皆さんも実は洗脳されていたんじゃないかと思うんですね。これは便宜じゃないですよ。当然のことなんですよ。日本人がさらわれて、日本の主権が侵された人間を帰してやってもいいよ、あるいは、その家族が会いに来るんだったら便宜を図ってやるよ、こんなことを向こうに平気で言わせること自体が、この交渉は実は非常に日本にとっては、はなから北朝鮮のペースにもう乗せられていたんじゃないかと言わざるを得ないわけであります。

 この問題については改めてやりますけれども、いずれにしても、今回、まさに北朝鮮に都合のいい交渉の舞台を用意した。日本がそれに乗ってしまった。申し上げれば、ピョンヤンという相手国の、サッカーでいえば、ホームとアウエーがあればアウエーで日本の国はあえて試合をせざるを得なかった。
 先ほどちょっとありましたけれども、例えば、盗聴器が総理大臣の、官房副長官の休憩室の中に、いろいろなところにあったんですよ。そうすると、午前中の会談を終えて午後の会談までの間に、ひょっとしたら盗聴器が仕掛けてあって、その昼間の時間に、これはもう交渉決裂だ、席を立とうといったときの会話が全部向こうに筒抜けになっていて、それで、これはえらいことだと思ったから、あえて謝罪を冒頭にせざるを得なかった、そういうふうに当然考えられるわけなんです。

 ですから、相手の国を交渉場所に選んだという時点で、この交渉というのは非常に最初からハンディを負っていたと我々は思わざるを得ないわけです。

 最後に、もう時間がございませんので申し上げますけれども、先ほど、当日修正したところはないと。しかし、この共同宣言には二〇〇二年十月ということがもう既にあるわけです。そうすると、これは本当に署名をするためだけのセレモニーだったんじゃないかと思われる。

 直前の共同通信からの文書取材で、文書回答で金正日総書記は「大きくない問題をもって中傷し」云々とあるわけですね。つまり、もう拉致問題というのは大きくない問題だというふうに彼らは、かの国は思っているわけであります。

 まさにそのことを考えますと、今回の正常化交渉の開始における共同宣言、この点についてのすり合わせの時点ではもう既にほとんどレールが引かれていた、そう思わざるを得ない。

 ここでお尋ねしたいんですけれども、この共同宣言は、一体いつからすり合わせをしていて、どの時点で総理の了承を得ていたんですか。その点についてお答えいただきたい。

田中政府参考人 その前に、先ほど便宜ということを申し上げましたけれども、これは、北朝鮮赤十字会という機関が便宜を図るということを言っているということを申し上げたにすぎません。ですから、その点は御了解をいただきたいというふうに思います。私が北朝鮮が便宜を図るということを意味したわけではなくて、北朝鮮赤十字会というものが便宜を図るということを言っているということを申し上げているわけでございます。

 それから、共同宣言でございますが、総理は、まさにそういう共同宣言の素案、いろいろな形で準備の作業がございましたけれども、その過程で常に御相談をしてきているわけでございます。なおかつ、そのバランスからいって、いろいろな形で日本としての懸念事項というものが、方向性というものができているという御判断をされた上で、今回の首脳会談におきましては、個々の問題について改めて金正日総書記の考え方をただすという形で物事を進めていかれたわけでございます。そういう形で、金正日自身の考え方も反映されているということを確認された上で署名をされたということだと思います。

 ただ、同時に、私ども一夜にして北朝鮮という国に対する見方が変わるわけではないわけで、当然のことながら大きな懸念が残っています。まさに、そういう懸念を解消していくためにも正常化交渉をきちんとやろうということが今回の署名の意味であるというふうに思います。

渡辺(周)委員 今のお答えの中で、金正日総書記の意思が反映されているとありますけれども、日本側の意思は反映されていないんですよ。拉致問題ということについては、先ほど来出ていますように全然書かれていない。そのことを考えますと、やはり我々の国として、共同宣言自体は、もう初めから、すり合わせの時点で、もしかしたら、文言には北朝鮮側の体面を考えて拉致という言葉を入れない、そのかわり会談のどこかで謝罪を入れるというふうな口約束が、実は約束があったんじゃないかと思うわけです。その点についてお尋ねをしたいのが一点。

 もう質問時間が終了しまして、これでやめますけれども、もう一つ。
 戦後の外務省のいろいろな北朝鮮政策をしてきた中で、一つお尋ねしたいんですが、最近本を出された青山健煕さんという方、この方が実は外務省の北京大使館を経由して日本に帰ってきた。もう極秘情報を何度も、北朝鮮の元工作員として情報を外務省に渡しているけれども、自分の身柄については守ってくれていないというようなお話があるわけですが、その点については、この人物を知っているか、この人物の言っていることは事実かどうか、その点だけ最後にお尋ねをして、この問題については改めてやりたいと思います。お答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 大変申しわけございませんが、特定の個人にかかわる問題でもございますし、お答えを控えさせていただきます。(渡辺(周)委員「最初の質問の方は」と呼ぶ)そのような事実はございません。

 まさに首脳宣言というものは、総理は非常に明確に、一定のバランスをつくる、国交正常化交渉を一定の精神の中でやっていくというための一つの土台をつくるということでございましたし、同時に、拉致の問題については明確に、安否情報、それにかかわる一連の調査、それから謝罪、そういうものをきっちり求めるという考え方で臨まれたということだと思います。

渡辺(周)委員 終わります。


2002/09/20-2

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