2002/09/20-1

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衆院・外務委員会  平成十四年九月二十日(金曜日)

吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、石破茂君。

石破委員 外務大臣、大変お疲れのところをお出ましをいただきまして、平素の御労苦に心から敬意を表したいと存じます。

 私どもはまず冒頭に考えてみなきゃいかぬこと、それは日本国憲法前文に書かれていること、つまり、我々は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」これはどういうことなのか。私は、かねてから申し上げているけれども、そうであればそれにこしたことはない、我々はそう願いたい、しかしそうでなかったらどうなのかということを私たちはいつも考えていなければいけない、そのことを今回つくづくと思ったことであります。

 私は、今回の総理の訪朝は日朝関係に新たな段階を開いたものだ、今回総理の御訪朝という決断がなければ、非常に悲しい、残念なことではあったけれども、拉致された人々の消息というものはわからなかった、そして、ミサイルにしても核にしてもあるいは工作船にしても、そのようなことについて新たな段階に入ることはできなかった、そう思っております。そういう意味で、今回の総理の御訪朝は大きな意味があったものだというふうに考えております。

 大事なことは、これをどうやって国民世論として支えていくかということだと思います。国民の支持と理解があって初めて外交は力を持つものだと思います。新たな段階を迎えた日朝の関係において、そしてまた北東アジアの安全にとって、国民の理解と支持を得るべく、政府そして外務省は万全の努力を今後もしていただきたい。そのような観点から、幾つか質問させていただきたい。

 かてて加えて申し上げれば、ここ数日の報道において、朝鮮人学校の生徒さんやそういう方々に対して、嫌がらせであるとか脅迫であるとかそういうようなものが行われておるというふうに仄聞をいたしております。そのようなことは、日本人として最も恥ずべきことであるというふうに私は思います。そのことを政府はきちんと認識し、国民の皆様方にも呼びかけていただき、そしてまた、そういう方々が悲しい目に、不幸な目に遭わないように政府としても万全の措置をとっていただきたい。心からお願いを申し上げたいと存じます。

 さて、まず外務大臣にお伺いします。
 今回、金正日総書記・国防委員長から、拉致という事実を認め、おわびをするということがございました。私は、この問題は、単なる犯罪ではなくて国家主権の侵害としてとらえるべきものだというふうに理解をいたしております。すなわち、誘拐をされたということで、単なる犯罪としてとらえるのではなくて、これは明確な国家主権の侵害であるというふうに理解をしております。その点についての御認識を承りたい。それが一点です。

 第二点、伝えられておりますように、亡くなられたとされる方、これは言葉を気をつけなきゃいかぬのですが、死亡が確認されたなどという言い方が当日なされたが、それは、北朝鮮が死亡という情報を伝えた、それが確認された方ということであって、まだ何ら確認はされているものではない。死亡が確認された方などという言葉は間違っても使うべきではないと申し上げておきます。

 その亡くなった日について、その日時はきのう報道であったとおりであり、官房副長官が会見されたとおりだったというふうに私は今思っています。しかしながら、そのことを御家族にお伝えするべきではなかったか。まだ未確認ではあるけれどもというただしつきで御家族に伝えるべきではなかったか。

 私も、その日飯倉公館におりました。福田官房長官、そして植竹副大臣、伝えられる方々がどんなにおつらかったかということは私もよく認識をしております。あの場におった者が涙しなかったはずはないのであります。

 しかし、家族の方が待っているのは、亡くなったか亡くならないか、生きておられるかということと同時に、それがいつなのか、どのような状況であったのかということを一番知りたかったはずで、亡くなったかどうか、生きているかどうか、そのことだけ断片的に伝えられても、それは納得しろと言う方が無理に決まっている。未確認ではあるけれどもということで、亡くなった日をお伝えすることは、私は、外務省として必要なことではなかったかというふうに思っている。

 そのことについて、官房長官も、あるいは外務大臣もそういう方向であるべきだというふうにおっしゃっておられるが、私は、必要なのは、御家族に対してそのことは非であったというふうに認めることだと思っているんです。

 主権の侵害だというふうに申し上げました。それは、御家族と政府が別なのではない、御家族と政府、御家族と外務省、それは一体となって当たっていかなければいけない。御家族の理解なくして、この交渉が一歩でも先に進むと思っていただきたくない。だとすれば、このことについて、外務省として率直に伝えるべきであった、申しわけなかったと言うことが私は肝要ではないかというふうに考えております。
 以上、お答えをいただきたい。

川口国務大臣 石破委員から幾つかの点についての御質問がございました。

 総理が北朝鮮に行かれたことについての認識について全くおっしゃるとおりだと思いますし、また、そのことについて国民の御理解をいただきながら進めていくことが必要であるということもおっしゃるとおりでありますし、それから、嫌がらせが起こりつつあるということについて、そういったことがあってはいけないということも全くおっしゃるとおりだと思います。

 それから、拉致の問題について、今回のことで国民あるいはすべての人が、そういった情報が出てきたということについて、非常に悲しむべき本当にむごい話が今表に出てきているわけで、拉致された方の御家族の方々のお気持ちが今どのようなことであるか、本当におつらい気持ちをお持ちであろうというふうに私は思います。心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 それから、先ほど委員がおっしゃられたような、あちら側から、北朝鮮から出てきた情報、死亡の年月日ということについて情報を外務省が直ちに明らかにするべきであったということについて、これは、私は、いろいろな考え方はあると思います。と申しますのは、そのときのこちら側の考え方として、恐らく、その非公式なものをお出しして、非常につらい思いをおさせ申し上げて、それでまたその上で違ったとかいろいろなことがあってはいけないという配慮があったということはあると思いますけれども、それにしても、御家族の方からすれば、少しでも多くの情報をそのことについて知りたいと思っていらっしゃるお気持ちがあるわけですから、私としては、その時点で、そういった非公式、もしかしたら間違っているかもしれない情報だけれどもというふうにお断りをして、そのお話を申し上げた方がよかったと思っております。

 そのことについて、御家族の方に外務省が情報を出さない、あるいは外務省に対しての信頼を失わせる、そういうような形になっているということは非常に残念でございますし、大変にその点については御家族の方に申しわけないと思っております。外務省としては、やはり石破委員がおっしゃいましたように、家族の方と信頼の関係を持ちながらこれをこれから進めていくということが何よりも大事なことでございまして、そのための努力は精いっぱいいたしたいと考えております。

 それから、もう一つの御質問でございます。これは、国の主権が侵害をされたかどうかということについてでございますけれども、基本的に、北朝鮮が日本人を拉致したということについて、幾つかきわめないとはっきり言えない部分というのも残っていると思いますが、いずれにしても、北朝鮮の当局が我が国の国内において日本人を拉致するということは、我が国の領土主権の侵害に当たると考えます。ただ、これはどういう状況で行われたかということにつきまして、まさにこれから話し合いの過程で明らかにしていくことでございますので、そういった真相の究明をするということがまず必要であるというふうに思っております。

石破委員 先ほど私は申し上げました。御家族は御家族、政府は政府という認識を持たないでいただきたい、御家族と政府は一体なんだと。そして、これは主権の侵害であるということであって、御家族は御家族、政府は政府、そういうような考え方を持たないでいただきたいのであります。それは、本当にその方々の気持ちに立って物事を考えてみる、そしてそれは国家主権の侵害なんだという認識を持てば、一体でやっていくのが当然であるというふうに私は思っておるから申し上げておる。

 言いにくいことですけれども、今まで御家族たちに対して、どれだけ政府がきちんとした対応をしてきたか、温かい対応をしてきたかといえば、それは首をかしげざるを得ないことがたくさんあった。ここに至るまでに、私なんかよりもっと一生懸命努力をしてこられた議員の方々もおられる、支援してきた方々もおられる。そういう方々の話を聞くにつけ、本当に外務省が、政府が、家族の悲痛な訴えをきちんと真摯に受けとめてきたかといえば、そうでないと言われても仕方がない。そうであったとおっしゃるかもしれないけれども、少なくとも、そう受け取っていないことを認めねばならないというふうに思います。今後一層の努力をお願いいたしたいと存ずる次第であります。

 今、大臣がおっしゃったように、これから先必要なことは、真相の究明、責任の明確化、そして正当な補償、これを求めていくということが必要なはずであります。

 十月から再開される。しかし、きょうは九月の二十日である。まだ十日もある。その間に、御家族がピョンヤンに行かれる、向こうの赤十字会を通じて必要な情報は知っていただく、少なくとも、十月に交渉を再開するまでにそのことはきちんとやっていただきたいというふうに私は思っておる。御所感を承りたいと存じます。

 続いて伺います。
 これは警察庁かもしれない。これから先どのように捜査をしていくかということについてであります。真相の究明というのはそういうことであります。だれがどのように拉致をしたのかということの状況。生きておられる方は、どのようにして生きておられるのか。あわせて、亡くなったという情報が伝えられた方は、どのように亡くなられたのであるか。

 国防委員長が、それは一部の英雄主義的な人たちがやったことで、既に処分したというふうにおっしゃっておられるけれども、この場合に、誘拐をしたということは、刑法に照らして考えてみた場合に、それが日本で誘拐をされているわけですから、当然、日本の刑法が適用になるということのはずであります。未成年であり、成年であり、そしてまた、不法に入国し不法に出国しということについては、少なくとも日本の刑法の適用がある。属地主義が日本の刑法のうたうところであります。

 しかしながら、本当に向こうが捜査に協力をするのか、国際刑事機構にも入っていない北朝鮮、向こうは協力するのか、そのことはわからない。しかし、日本の国の主張として、その辺を明確にしてくださいということは強く訴えていかねばならないし、それが、法と正義によって北朝鮮という国が裁かれるべき点は裁かれ、そうした法と正義、国際法と国際正義の中で、北朝鮮という国が国際社会の中で生きていくということの取っかかりにおいて最も必要なことであろうと思っております。

 申し上げたいことは、最初からボタンをかけ違ってはいけないということなんです。最初からボタンをかけ違ったままずっといって、このことはうやむやにして、とにかく正常化交渉ありきだ、正常化ありきだというようなことを思っておられる人は一人もいないと私は信じている。そういう思いで交渉してこられたというふうに、私はそれを疑うものではありません。だからこそ、その点を明確にする必要があるだろうと思っている。

 そして、亡くなった日が不自然だということがずっと言われています。同じ日というのはおかしいではないか、だれが見たっておかしいと思います。そのことをもって、予断を持って申し上げることはいたしません。しかしながら、捜査をしていって、亡くなった状況というものがあるいは刑法のほかの罰条に触れるものであるとするならば、構成要件に触れるものであるとするならば、それはどうなるんだと。これは、属人主義の例外になるはずなんですね。つまり、仮に故意に命を落とされた、奪われたということであっても、残念ながら、これは日本国刑法の適用にはならないはずなんです。それが刑法の条文のはずです。

 これから先どのように捜査をしていくのかということも含めまして、外務省並びに警察庁の御答弁をお願いしたい。

植竹副大臣 今、石破委員のお尋ねの前段でございますが、私は、当時、福田官房長官と私が直接御家族の方に安否についてお伝えいたした点から申し上げますと、委員おっしゃるとおり、不備であったことを本当に反省し、心から申しわけないと思っておるところでございます。そして、御家族の方がこの実態解明のために行かれる手配をできるように、すぐ指示いたしました。

田中政府参考人 私も、冒頭、副大臣並びに外務大臣が先ほど言われましたとおり、御家族に非公式なものとはいえ直ちに伝わらなかったこと、この結果については大変反省をしています。おわびを申し上げたいと思います。

 それから、委員が御指摘になった点、私どもとしては、できるだけ早い機会に御家族の北朝鮮への訪問を実現させるということで、現在、先方との折衝に取りかかっておるということでございます。御家族の気持ちを最大限配慮申し上げたいと思いますし、その中で、できるだけ早い機会に訪朝が実現するように最大限の努力をしてまいりたいと思います。

 それから、委員御指摘の二点目でございますけれども、ずっとこれまで私どもも、拉致を認めろ、八件十一名の方の安否情報を全部として日本に提供するべきだということを言い続けてきて、初めて、今回総理が訪朝されて、拉致を認め、遺憾なことである、おわびするという発言を金正日総書記から引き出した。

 御案内のとおり、今の日朝間においては国交がございませんから、国交がない相手とのことでございますから、委員が御指摘のようないろいろな点をこれから解明していかなきゃいけない。まず、その事実関係の究明ということをやっていかなければ物事は進んでいかないということでございますし、そのためにも、交渉の場というものがないとなかなか物事は進んでいかないということも事実でございます。ですから、国交正常化交渉の前、その中、あらゆる機会を利用して、そういう真相の解明をまず進めさせていただきたいと考える次第でございます。

 それから、正常化ありきということではございません。平壌宣言にもございますように、あの宣言の精神と原則に従った正常化ということでございます。

奥村政府参考人 お答えをいたします。
 警察といたしましては、この拉致容疑事案につきましては、事案の重大性にかんがみまして、これまで国内外におきまして、まさに地面をはい、血のにじむような捜査を営々と一生懸命行ってきたところでありますが、今般、北朝鮮が拉致を認めたことは、まさに私どものこの捜査が当を得ていたということになると考えております。

 警察といたしましては、今後とも事案の全容解明のため、法令と証拠に基づく捜査を、これまでどおり最大限の努力をもって厳正に進めていく決意でございます。

 ただ、御指摘のとおり、北朝鮮とは国交がございませんし、またICPOにも入っていないということでありますので、外務省等の関係各機関と十分な連携をとりながら必要な捜査を進めてまいりたい、こう考えております。

石破委員 最後に、一点申し上げておきたい。

 これから六カ国の枠組みをつくるというお話であるのですが、この六カ国の枠組みは必ず必要です。早急につくっていかねばならない。しかし、その土台となるのは日米の安全保障体制であるということを御認識いただきたい。日米安全保障体制がきちんとして、確固なるものとなって、だからこそこの六カ国の枠組みがうまくいくということであって、有事法制の整備なりそのようなことは、急ぐことがありこそすれ、怠ることがあってはならないということであります。

 それから、今後どのような支援をしていくかということであります。時々、これは人道的支援なのだからという名のもとに米が送られたりしたこともあった。これは国交正常化とは関係ない、人道的なことであるからということで行われることがあった。しかし、私どもは、このような事実が明らかになった以上、まず真実の解明が第一である、人道的という名のもとに、これから先きちんとした解明がなされない限り、そういうことが行われてはならないということだと思っております。
 以上をもちまして私の質問を終わります。

吉田委員長 関連質疑で、浅野勝人君。

浅野委員 今回の日朝首脳会談は、戦後の歴史の中で最も高い評価のできる画期的な外交成果であったと受けとめています。その評価はそれとして、一つ疑問がございます。
 北朝鮮が死亡したと発表した八人は、いずれも病死または災害死と説明されています。本当はほかの死因ではないかと推定される、断片的ですが、信憑性の高い情報を入手しています。同じ日に二人が死亡したという不自然さを含めて、田中局長はどのように分析しておいでですか。

田中政府参考人 先方から十七日の日に説明があったこととしては、今委員が御指摘のように、病死または天然災害によるものであるということがございました。私どもは、それに対して、亡くなった経緯について徹底的な事実関係を開示されなければいけないということを申し上げました。
 ですから、何を信じるかということよりも、私どもは、やはりきちんとした調査に基づく彼らの調査というものを聴取したい。これからのプロセスでそれはやってまいりたいと思います。現段階で予断を持ってお答えすることはできないというふうに思います。

浅野委員 終わります。
吉田委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 公明党の上田でございます。
 これまでのところ、隣国であります北朝鮮との間に正常な国交がないというのは、これはどう考えても決して健全な状態ではないので、今回、日朝首脳会談を契機として正常化に向けての交渉が再開されるということは、これは確かな前進であるというふうに考えております。
 しかし、今回の一連の経緯の中で、拉致問題についても納得のいく結論が得られているとは到底言えないということでありますし、もう一つの懸案であります安全保障上のさまざまな問題についても、平壌宣言では、ミサイルについては発射の停止、これはモラトリアムを延長するということだけですし、核開発疑惑については、先方がどういうような対応をするのかということが具体的には明記されていないというふうに思うわけであります。
 こうした問題というのは、これから、十月から始まります交渉の中で解決していくということになるわけでありますけれども、今後どのような進展が見られるのか、それによって今回の日朝首脳会談の評価が定まってくるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。私としても、この交渉が進んで、多くの成果が得られることは大いに期待しているところでございますので、外務省、ぜひこの交渉をしっかりと進めていただきたいというふうに考えているわけであります。
 それで、現在一番大きな問題になっている拉致問題についてでありますが、今回の、拉致された日本人に関する北朝鮮側からの報告、これは極めて耐えがたいものでありました。御家族の方々はもちろんのこと、日本じゅうが悲しみと怒りに今包まれているというふうに思っております。
 報告では、先ほどの石破委員の質問の中にもありましたけれども、不自然な点が余りにも多いし、ましてや死亡年月日などが公表されて、まさに北朝鮮が一体何をしたんだろうというような疑惑は一層深まったというのが事実ではないかというふうに思います。
 そういう意味で、この拉致事件について、これからの交渉の中で、いつ、どのように、だれの指令でだれが実行したのか、そうした全容の解明、あるいは、残念ながら亡くなられた方々、どういう原因で亡くなられたのか、そしてそれに至る経緯はどうであったのか、そういう全容の解明が正常化交渉の中での最優先課題であるというふうに考えております。
 今後、十月に交渉が再開されることで合意されているわけでありますが、それまでの間に外務省としてはどういう対応をしていかれるのか。また、私は、この拉致問題について納得のいく前進が得られるまでは経済協力についての交渉、こうしたことはやはり入るべきではないというふうに思いますし、また、人道上というような理由があったとしても、そういうような形での経済協力も実施するべきではないというふうに考えておりますけれども、その交渉に臨むに当たって、この辺の外務省としての基本的な考え方をお伺いしたいというふうに思います。

川口国務大臣 まず、拉致問題でございますけれども、政府といたしまして、今後、御家族の方々の要望をきちんと踏まえ、御家族の方々とともに、早急に、御家族の被害者の方との再会あるいは生存者の御本人の自由な意思による帰国について調整をしたいと思っておりますし、また北朝鮮側に対しまして、亡くなられたとされる方々についての事実関係、今委員がおっしゃったようなことについての真相が何かということを徹底的に調査をするように申し入れを、既にこれは行っております。そして、国交正常化の交渉の過程で、拉致問題を最重要課題としてこれを取り上げていきたいと思っております。また、省内に、拉致された方々の御家族を支援するチームを現在立ち上げつつあるところです。
 経済協力その他、さまざまほかに案件があるわけでございますけれども、安全保障といいますか、委員もお触れになった、この北朝鮮については、ミサイルや核の疑惑といったような懸念も、これは国際社会も含めてあるわけでございまして、こうした問題もきちんと取り上げていく必要があるというふうに考えております。
 こうしたさまざまな問題をこの正常化交渉の過程できちんと取り上げて、解明を一つ一つしていくということが大事であるというふうに考えております。

上田(勇)委員 今、大臣からも安全保障上の問題についてもお話がございました。平壌宣言においては、モラトリアムを延長するということでは合意をされたんですが、決してこれで我が国に対する脅威がなくなったというふうには理解できないわけであります。
 やはりこれからの交渉においては、北朝鮮に日本を標的にしているテポドンとかノドンというミサイルがあるという疑いが濃いわけでありますので、そうしたミサイルがまず撤去される、そして同時に、日本としても、安全保障を確保するために、そうした措置がとられたことを確認するというようなことが合意される必要があるというふうに思うわけであります。
 これも、我が国を標的としているようなそういうミサイルを設置したまま国交正常化ということは、これだけの近い距離の隣国でありますので到底あり得ないわけでありますので、このこともこの交渉の中で、まず日本を標的としているそういうミサイルは撤去すること、そして、日本としてしっかりとそういう措置が確実にとられたことを確認できるような措置、そこまで含めて合意すべきだというふうに考えておりますけれども、交渉においてはどういうようなスタンスで臨まれるんでしょうか。

田中政府参考人 委員御指摘のとおり、日朝の平壌宣言に盛り込まれている点というのは、種々の問題についての基本的な原則とか精神も含め、安全保障の問題についても、ミサイルのモラトリアムを延長していくことであるとか、あるいはミサイル問題というのは、ミサイル問題全般でございますけれども、開発であるとか配備あるいは輸出といったことについて、関係国との協議により問題解決を図るということが書かれておるわけでございます。核の問題については、国際的な合意を遵守するということでございます。
 ですから、そういう観点を踏まえて、私どもは平壌宣言の中でも盛り込まれております安全保障の協議というものを立ち上げてまいりますし、そういう観点から、一つは、これは日本だけの問題ではございません、国際社会の非常に大きな懸念でもあると思います。ですから、とりわけ米国、韓国と連携を強めながら、日本としても、北朝鮮との間で安保協議を立ち上げて、北朝鮮が誠実にこういう宣言を遵守していくのかどうかということを見きわめてまいりたい、かように考えております。

上田(勇)委員 これからの対応の枠組みとか方法というのは今おっしゃったとおりなんだというふうに思うんですが、我々日本国民として最も脅威に感じていることというのは、ミサイルは日本を標的にしているというふうに思われているものが配備されているという現実があるわけでありまして、国交を結ぶに当たっては、そこに対する脅威、何が具体的に除かれなければいけないのかというのは、もうちょっとやはりはっきりしたスタンスをお持ちじゃなければいけないんではないかというふうに思います。ちょっと今のでは余りにも、一般論としては確かにそのとおりですけれども、果たしてそれで本当に脅威が除去されるのかというと、私は納得のいくお答えではないんじゃないのかなというふうに思います。
 今局長から御答弁いただいたんですが、今度、交渉が十月中に開始されるわけでありまして、今申し上げたように、拉致問題についてもまだ全然解決の道筋が立っていない。また、安保の問題についても、具体的にどういう交渉をしていくのかということもここでお話をしていただけないわけであります。また、大臣は先ほど、経済協力をそういった一定の進展がないまま行うべきではないんじゃないかということを私が申し上げたことに対しても、明確なお答えはなかったように承りましたけれども、私は、この正常化交渉は大きな前進ではあるし、交渉を続けていくことは必要なんですが、我々が非常に大きな、国民としても大きな関心を持っている拉致問題、それから安保の問題、これについては、やはり一定の成果が得られない限り、これをもって経済協力の話に入ること自体が国民の理解が得られないんではないかというふうに思うわけであります。
 こうした国民の気持ち、そして世論、そして政府としても毅然とした態度で交渉していく。これはやはりそうした政治的なメッセージを大臣が第一回目の交渉において直接北朝鮮側に私は伝えていただきたい。その意味では、第一回目の交渉、それの前後になるかもしれませんけれども、ぜひ北朝鮮と直接大臣がお話をして我が国としての姿勢をお伝えいただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 これから行われます国交正常化交渉の過程、これを我が国は誠実に進めていくつもりでおりますけれども、私はその指揮は外務大臣としてとるつもりでおります。実際に会合を北朝鮮の外務大臣と持つかどうか、これはブルネイで一回会合をいたしました。また、そういう機会あるいはそういう段取りのことがあるかもしれません。今、どういうふうに今後進展をしていくか、まず第一回目を外務大臣の会合から始めるかどうかということは、これはまた相手もあることでございますので決めているわけではございませんけれども、全体の指揮は私はきちんととるというふうに考えております。
上田(勇)委員 終わります。


2002/09/20-1

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