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外務大臣会見記録 (平成13年7月31日(火)11:15〜 於:本省会見室)

閣議

(外務大臣)今日の閣議では、東チモールの国際平和協力業務実施に関して、当省が協力することについて発言した。また、先般のチェコ・ユーゴ及びG8外相会議およびASEAN+3、ASEAN地域フォーラム及びASEAN拡大外相会議出席の件、3つ目として、災害・紛争地域における難民及び被災民等を支援するジャパンプラットフォームに対する資金拠出について報告した。

 

外務省不祥事関連

(問)松尾事件の初公判が始まり、松尾被告は起訴事実を認めて謝罪をしたが、改めて大臣の感想如何。

(外務大臣)国民の皆様が、外務省の資金の問題で、機密費それからその他の官邸との関係について大変根強い不信感をもたれたきっかけとなったこの事件を、本当に残念に思うし、本人が罪を認めたということであれば、今後私共がしなければならないことは、再発防止であるが、どれだけその深刻さが省内、勿論在外公館を含め、あらゆる立場の外務省員が我が事としてそれを自覚しているのかと言うことを問うていきたい。今までは、外国出張等でかなり追われ、選挙もあったが、省員の意識を喚起する、喚起という生ぬるいものではないが、そういうことについて多くの職員の方を集めて話しもさせていただきたいし、また、個別には、内部からいろいろな意見を各省の方から頂いている。省外の他からも、退官された方からもいろいろとアドバイスなど頂いているが、中途半端なことでは、もうなかなかこの問題、こうした類の資金、お金に関する問題は解決はつかないと思っており、意識改革ということがどこまでできるか、一内閣、一閣僚ではとても出来ることではないが、繰り返すが、自分自身の問題として引き寄せて、皆が緊張感を持って仕事し続けるような職場環境づくりというものをしなければならないと今回つくづく感じている。

(問)その関連で、今回大臣の外遊中にいろいろな不祥事が相次ぎ、省内の志気を考えるためにも、大臣ご自身の処分をお考えになると述べていたが、いつ頃、どのような内容をお考えか。

(外務大臣)それについても、早急に、頭の中では考えていることはあるが、今出ている事件だけで、例えば沖縄サミットの件等いくつか出ているが、更に出てくる可能性がある。トータルで自分の処分、それから他の幹部も含めて考えなければならないと思うので、もう少し動きを見てからやった方がいいと思う。モグラたたきみたいに今やって、また次ぎもやったということではなくて、トータルで考えていかなければならないと思っている。

(問)閣議後小泉総理と若干お話をされたようだが、差し障りない程度でお聞かせ願いたい。

(外務大臣)差し障りがあるのでお話しできない。

(問)デンバーの前総領事について、刑事告訴をするかどうかについては大臣はどうお考えか。

(外務大臣)自分(大臣)はいつも、外務省はこのようなときに告訴しないで、松尾事件は告発しているが、自らに対して厳しくない役所だと思っているので、告訴についてどうかということを、外務省顧問の弁護士に、秘書官室を通じて聞いているが、法律的にそれが整うかどうか、検討中であるという返事を聞いている。速やかに法律的にどうかということを聞くようにしたいと思う。

(問)他の事件の検挙があるという情報は耳に入っているのか。

(外務大臣)国会でも、今現在ニュージーランドにいる人のことも、具体的な事例として質問されることがあり、また、文房具の問題等国会でずいぶん問題になったが、これらについてもずっとフォローしていただいていると、資料が無い、証拠が無いといったことがある。しかも、自分の外遊中に次官等幹部から、人を介して関係者をまた他に移転させたらどうかと、突然電話がかかってきたりした。しかし、この役所で一番問題なのは、官房付きにしておくとか、或いはなにかがあるとすぐ病気にしたり、在外に出したり、他の役所とは大分違った特異さがあると思う。本当に証拠がないというのであれば、荒木委員会で調べたのでそれでファイナルだというのであれば、なにもポストを変える必要は無い訳であるが、出来るだけ他の場所に行かせてしまいましょうと。何の理由で言うのか、しかも自分が国際会議等で分刻みで時間に追われている時に、重要なことについての判断を仰いでくるということは、自分も良いことだとは思わないので、個別のことについて副大臣達とゆっくり話をしたいと思っている。ところが、副大臣も選挙の間際まで外遊、海外視察等があり、選挙中は選挙応援で手一杯で、帰ってきたら早速杉浦副大臣は今日から外国に行かれるということであり、政治主導で副大臣制度、政務官制度を作ったにもかかわらず、なかなかそれが機能しない。ましてや他の人事の問題等も今踏み込んでの発言はしないが、やはり政治主導でやるというのであれば、総理や各閣僚がしっかりと話をして、内閣の意思を持ち、例えば財政構造改革の問題もそうであるし、或いは今回の外務省に関するマターもいろいろあるが、その他の大臣の皆様も思いがあるようだが、そのようなことについての内閣の意思を、自分達閣僚レベルで総理と確認をさせていただいて進むということでなくてはならない。時間が取れないとか、自分は(時間は)取る気になれば取れるはずだと思うが、各省庁から役所主導でどんどんスケジュールが入ってしまうためにそれに追っかけられ、それでなかなか政治主導になれない事をもどかしく思っている。この夏こそ政策の勉強もそうであるが、内閣全体の方針についても話をしたいと思っているが、なかなかそれが出来ず、各省庁がどんどん各大臣、総理の予定を入れてしまっている。そんなに忙しくする必要があるのか。優先順位があるはずだが、そうしないとまた閣内不一致だとか、横から、我々閣僚や総理がバタバタ出歩いている間に、また、選挙応援をしている間に、残っている人たちが官僚主導で意思決定をすることがミスリードすると思う。そのことが皆様もその辺の間隙を縫ってどっちに行くのかと関心を持っているかと思うが、そのことが自分は極めて残念だと思っている。本日も何人かの閣僚とそのような政策ベースの話をしっかりしようと、補正予算についても発言があったが、そのようなことについても、直接は外務省マターではないかもしれないが、当然関係してくることであるから、しっかりと自分が納得ずくでないと。委員会での答弁や、こうしてメディアの方とお目にかかるのは、その後ろにいる国民の皆様に閣僚として意見を発出しているわけであるから、正しく国民の皆様に意見を伝える内閣の方向性、外務省がどのようにしようとしているのか、どのような外交政策をし、現在起こっている不祥事等についてどのような方向性を持っているかということを、責任を持って発言することは今の状態ではなかなか難しいと思う。振り回されてしまって時間が無い。もう少しそのような方向に総理や官房長官が時間を作っていただけたら有り難いと思う。政治主導という言葉の形は整っているが、結論から言うと、実体としてなかなか機能しにくい状態だと感じている。

(問)昨日、総理から人事のことに関連したメッセージが伝えられたといわれているが、どのようなものか。

(外務大臣)中身は言えない。

 

総理の靖国神社参拝

(問)総理の靖国神社参拝問題に関して、田中大臣が行かないように説得するということで、国民もその行方に非常に注目していると思うが、今後どのような形で総理と、この話合いを持たれていくか、しかも大臣の姿勢からすると職を賭してというか、進退をかけて説得すると受け取っている方も多いと思うが、真意を伺いたい。

(外務大臣)自分は、今現在、本日7月31日の時点では総理は大変迷っておられるという印象を受けている。また、職を賭してとか言うが、日本外交の問題は、この靖国問題が全てであるとは思っていない。従って他の人達にも申し上げたが、他の国々との関係、日米、欧州、アジア、アフリカ、南米等いろいろな国といろいろな懸案があるが、このイシューについては自分も最善の努力をしているが、決して韓国や中国の代弁者になって言っているのではなく、自分自身がどうあるべきか、外務大臣として思っていることを申し上げ続けている。従って、このことが受け入れられるかどうかで、自分が辞職するということはありえない。なぜかと言うと、これは教科書問題とは違うと思う。教科書問題は検定の問題等もあり、また、文部省マターということもあり、各都道府県の教育委員会、私学の判断ということもあるが、この靖国問題は小泉純一郎内閣総理大臣一人の判断にかかっている。小泉総理の頭と心で考え、自分の足で、自分の足を靖国神社に運ぶかどうかという一点にかかっているので、人の心まで自分が踏み入って最終的に決定をしたりすることは無理だと思う。最終的に本当にこれは個人の問題であるので、自分なりの最善の努力はするが、努力ということは、自分なりに内閣総理大臣職とはどのような立場か、国家の意思を体現するたった一人の人であると思うが、勿論、各閣僚や国民の皆様の意見を集約しているわけであるが、やはりもう少し、現在持っている以上の影響があるということに思いをいたしていただきたいというのが自分の率直な思いである。すなわち外交だけではなく、他のあらゆる面で、総理がいかれると、近隣諸国は極めて大事であると思っているので、その皆さんと問題がこじれる、農業問題、また、教育問題も今後あると思うが、こじれていったらまた外交の面で負荷がかかってきて、また自分がそれをやらなければならなくなることも考えなくてはいけないので、そのことをしっかり総理が受け止めてくれるのか、いろいろな方からいろいろな意見があって(総理は)大変悩んでおられるようだと感じている。

(問)大臣は総理は靖国神社に参拝すべきでないということを自分の信念であると述べているが、総理が参拝した場合、自分の信念と異なる総理の下で外務大臣の仕事はできるのか。

(外務大臣)先ほど申し上げたように、靖国問題だけが外務大臣職の全てではない。従って自分なりの努力はするが、他のマターに対して放棄すべきではないと思っている。

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