2003/11/25

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158 衆院・予算委員会 


2003年11月25日 (民主党ニュース)
【衆院予算委】菅代表、大義なきイラク派遣に警鐘

 衆議院予算委員会の基本的質疑が25日に開かれ、民主党の菅直人代表が質問に立った。菅代表は、今国会での所信表明を拒否した小泉首相に対して、内外の諸問題に向けた基本政策を質した。

 菅代表はまず、イラクへの自衛隊派遣問題について質問。年内の派遣の有無や14回にわたる調査団派遣の結果を一向に明らかにしない政府の姿勢を批判した上で、「(派遣先として検討されている)サマワは非戦闘地域だと判断しているのか」と首相を追及した。しかし首相は「(自衛隊を)出すときに判断を下す」などと逃げた。菅代表は、「結局、米国との関係で、出すとか出さないとか、迷走している。これが自主的外交か」と一喝。これまでに首相が犯した2つの大きな判断ミス──米軍によるイラク先制攻撃への支持と復興支援への自衛隊派遣の事前約束──を指摘し、それを前提とした「大義名分のない派遣」を強行すべきでないと主張した。

 また菅代表は、日本道路公団の近藤新総裁に高速道路無料化についての見解を質したが、同総裁は「この世にタダのものはない。タダというと誤解を招く」などとピンボケな答弁。道路建設の見直しによって既存の道路財源から債務償還分を捻出し、通行料収入を不要にするという民主党プランについては何も言及できなかった。

 さらに、政府の「三位一体改革」について、地方への補助金の1兆円削減とは単なるカットなのか、自治体への税源移譲なのか、と質問。しかし小泉首相は「細かいことは各大臣に任せる」などとしか言えず、地方分権のビジョンの欠落をさらけ出した。

 菅代表はこの他、対北朝鮮政策をめぐって、経済制裁の一環としての送金停止を可能にする法的枠組み作りを要求。また雇用対策では、若年層の就職難への具体的な対応を迫った。

 最後に菅代表は、総選挙のマニフェストで示した政策の実現に責任ある野党としてしっかり取り組んでいくことを表明し、質問を締めくくった。


平成十五年十一月二十五日(火曜日)

菅(直)委員 総選挙が終わりました。今回の総選挙で、私たち民主党は二千二百万人を超える国民の皆さんに比例では投票いただき、第一党という形になりました。また、比例、小選挙区合わせて百七十七名が当選をいたしまして、衆議院における定数の三七%を占める二大政党の一方の柱という立場になりました。まず、私たち民主党に御支援をいただいた国民の皆さんに心からお礼を申し上げたい、このように思っております。

 その上で、目標といたしました政権交代というものを残念ながら果たすことはできませんでした。その点では、率直に負けは負けと認めておきたい、このように考えております。

 しかし同時に、政権交代ができなかったからといって、二大政党の一方の柱になった民主党がまたばらばらになっていいということではもちろんありません。この十年間、多くの政党が誕生し、そして多くの政党が消滅をいたしました。そういった意味で、二大政党が定着するかどうか、これはまさに私たち民主党がこれからどういう活動をしていくか、このことにかかっている。それだけに大きな責任があると私は思っておりまして、その責任を痛感しながら活動を進めてまいりたい、このように思っております。

 ただ、幸いにして、民主党は、生まれてから、少人数の離党者はあったことがありますけれども、順調に大きくなってまいりました。(発言する者あり)大島さん、少し黙った方がいいですよ、後、ちゃんと答えますから。そういった意味で、今、大島さんの方からいろいろとやじが飛んでおりますが、私自身の経歴をちゃんと申し上げますので、よく聞いておいてください。いいですか。

 私はこの二十三年ぐらい国会に籍をいただいておりますけれども、私が籍を置いた政党が選挙で議席を減らしたことは、幸いにしてこれまで一度もありません。そして、今回の選挙においても幸いにしてそのジンクスは破られませんでした。そういった意味では、次回のチャンスには必ず政権交代ができるよう、五十八名の新人議員の皆さんとともに国会で、そして全国各地で積極的な活動を続けていきたい、このことを申し上げ、国民の皆さんにもこれまでに変わらない一層の御支援を、お願いを冒頭申し上げておきたいと思います。

 そこで、この総選挙の中での大きな争点の一つでありました、イラクに対する自衛隊の派遣の是非という問題、これについてお尋ねをいたします。

 総理は、自衛隊派遣が必要だという主張をした与党が安定多数をとったのだから国民はイラク派遣を支持したんだ、こういう趣旨のことを述べられております。しかし一方では、世論調査などでは、イラクに対する自衛隊派遣に対しては反対論、慎重論が極めて強くなっております。

 まず、総理、総理や官房長官のこの問題をめぐる発言は日々変化をし、迷走の一途をたどっているように思えます。本年中、二〇〇三年中の自衛隊のイラク派遣を行われるのかどうか、国民の前ではっきりとお答えをいただきたい。

小泉内閣総理大臣 私は一貫してお話ししております。状況をよく見きわめて判断する。自衛隊派遣、自衛隊の復興支援、人道支援、イラクにおけるその活動分野、あると思っております。そういう際によく状況を見きわめて判断するということは、イラク支援法が成立した後も現在も変わっておりません。

 私は、資金的な支援も人的な支援も、イラクに民主的な安定した政権が早くできるように、これは日本としても応分の支援をしていかなきゃならないと思っております。

菅(直)委員 相変わらず全く答えておられません。
 イラク特措法が私たちの反対を押し切って成立をしたのが七月であります。そして、それ以来何度となく政府はいろいろな調査団を派遣されました。どうですか。調査団の報告書というものはきちんとすべて国会に報告されているんですか、どうですか。

福田国務大臣 調査団というのは何回か送っております。いろいろな形でもって、その時々の必要に応じてやっているということでございます。

 調査の報告を、じゃ、その都度国会に報告しているかどうか、こういうお尋ねでございますけれども、それは、できるものについてはしなければいけない、こういうふうに思っておりますけれども、この調査の内容につきましては、その内容が、自衛隊員の安全の問題、また文民もございますけれども、安全の問題とか、それから現地にいる各国部隊との協議とかいうようなことがございますから、そういう観点から、相手との話の内容を申し上げるわけにいかないといったようなことがございますので、これは、できるものはいたしますけれども、できないものはできない、こういうようなことでございます。

菅(直)委員 今まで報告したことがありますか。今まで国会に報告をしたことがありますか、官房長官。

福田国務大臣 私も正確に記憶していないんでありますけれども、先般、国会の中で、このイラク関係の委員会におきまして部分的に報告をしているかどうかということであろうかと思います。全体まとめて報告するということはなかったと思います。

菅(直)委員 全然答弁違うじゃないですか。できるものはするけれども、できないものはしない、しかし一つもしていない、一体どういうことなんですか。全く答えていないじゃないですか。

福田国務大臣 ですから、そういう国会において求めがあれば、それはその都度対応するということでございます。まずそういうことで、今までそういうことがあったのかどうか、求めがあったのかどうか、その辺は私も今記憶がございませんので、これ以上お答えしようがないということでございます。

菅(直)委員 じゃ、求めていますが、なぜしなかったのか、ちゃんと答弁してください。――とめてください、それなら。
笹川委員長 速記をとめて。
    〔速記中止〕
笹川委員長 速記を起こして。
 福田内閣官房長官。

福田国務大臣 今般の国会において、国会の中、委員会の中においてそういうようなお話があったというようなことでございますれば、それは、先ほど申しましたような状況の中でどこまでお答えできるか、こういうことでございます。

菅(直)委員 いいですか。いろいろな各種、与党三党も含めて十四回の調査団が出ていると聞いております。そしてここに、きょう朝、我が党の理事から、六月のときの紙一枚の調査報告というものが届いております。総理は、状況を見て判断する、状況を見て判断すると。そのために十四回にわたる調査団を派遣して、しかし、その中身は全くと言っていいほど示さない。一体、これで国民に対する説明ができていると言えるんでしょうか。

 そこで、具体的にさらに踏み込んでお聞きいたしますが、サマワというところに自衛隊を出そうということで、いろいろと調査団が今日も行っていると聞いておりますが、総理、このサマワはイラク特措法で言う非戦闘地域に入るという判断ですか、どうですか。また前のように、そんなことをわかるわけはない、そう答弁されるのですか。これは総理からお聞きしたい。つまり、総理と私は非戦闘地域について議論をした経緯がありますから、総理から、逃げないで答えをお聞かせいただきたい。

福田国務大臣 具体的なことでございますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 サマワにつきましては、これまで、現地を担当するオランダ軍に対しまして、今まで攻撃が行われたことはないということもございます。また、サマワ周辺の部族の序列が同市の評議会に反映されておりまして、評議会が機能している。こういうようなことでもって、ほかの地区に比べて安定した治安情勢にある、こういう認識をいたしております。

 この地区に対してどういうふうにするかという対応、これにつきましては、各種の最新の情報を総合的に分析するということでございます。

菅(直)委員 だからどうなんですか。
 非戦闘地域について派遣をするという枠組みに、派遣できるという枠組みになっている。ですから、総理に以前聞いたら、そんなこと知るわけがないと。しかし、そろそろ出そうかどうか、状況を判断してということは、相当その状況を見ておられるんでしょう。はっきり言ってください。この地域が非戦闘地域ということになるのかどうか、はっきり言ってください。

小泉内閣総理大臣 非戦闘地域に復興支援、人道支援のために自衛隊を派遣すべきときは派遣する。その際に、どこが非戦闘地域かということについては、調査団の報告というものをよく見きわめて最終的に判断いたしたいと思います。

菅(直)委員 一体何回、この数カ月間、同じ答弁を繰り返されているんですか。それなら、もうとてもではないけれども、今の状況から見てことし中の派遣は無理だ、はっきりそう言うなら、そうはっきり言われればどうですか。それをアメリカが、いや、そんなことは自分たちの期待に反することだと言われたら、翌日には官房長官の発言がまた、いや、ことし中に派遣することも考えると言ったり、いや、ないと言ったり、毎日毎日答弁がぐるぐるぐるぐる、まさに変わっている。迷走しているじゃないですか。これが自主的な外交なんですか。

 先ほど安倍幹事長が自主的な外交というようなことを言われていましたが、まさに全く自主性のない外交じゃないですか。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは私ははっきりと答弁しているんですよ、何回も。何回も同じ質問だから、同じ答弁というのは当然じゃないですか。それは勝手に決めつけられても困りますよ。

 そして、対米協力も必要であります。国際協調も必要であります。民主党だって、日米同盟、重要性を考えておられる。国際協調、重要だと考えておられる。

 私は、現在の状況においても自衛隊の派遣は無理だと断定する状況にないと思っております。非戦闘地域に、復興支援のために米英初め三十数カ国の部隊が協力している、そしてイラクにイラク人のための政府をつくらなきゃならないということも認識しております。対米協力、国際協調、日本の国益も考えて、イラクに民主的な安定した政権をつくることが必要だと思っております。

 その際に、資金協力だけでは済まないと思っております。できる限り人的貢献もしたい。その際に、自衛隊が活躍できる分野があれば、自衛隊を派遣したいと思っております。その際には、自衛隊、民間人、政府職員を含めて、どの地域に派遣しようが、安全面には十分配慮しなければならない。これはイラクの支援法案、法律にのっとって考えなきゃならない問題であります。

 ですから、法律にのっとって、憲法の枠内で、そして対米協力、国際協調、日本の国益を考えて、資金協力も人的支援も日本はしていく必要があるということを何回も繰り返し答弁しております。

菅(直)委員 小泉総理、いいですか、私たち……(発言する者あり)ちょっとうるさいですね、尾身さん。黙らせてください、尾身さんを。

 いいですか、小泉総理、私たちは、単にイラクが危険だから自衛隊を派遣すべきでないと言っているのではありません。そうではなくて、イラクに対して、本来日本を守るというためにつくられた自衛隊を送る、それだけの大義名分があるかどうかということを問題にしているんです。

 私は、小泉総理は大きな判断を二度にわたって間違えたと思っています。第一度は、まだ私たちが大量破壊兵器の査察を継続すべきだと言ったときに、アメリカの先制攻撃を、大量破壊兵器が拡散してテロが拡大するからと言ってそれを支持したという、その判断の間違いです。第二は、大規模な戦争が終結しそうな段階で、これで治安が回復するという見通しの中で、人道支援、復興支援に自衛隊を派遣する、そのことを実質上アメリカと約束をした。この二つの判断の間違いがあったと思います。

 そしてその後、今日のようにさらに、事実上これはテロというよりはゲリラといった方がいい状況になっている。イラク全土が戦争状態にいわば逆戻りしている中で、その判断の誤りに基づいてアメリカと約束をした小泉総理が、いわばみずからのメンツ、みずからの政治的なその責務といいましょうか、アメリカとの約束を守るために、大義名分のない形での自衛隊の派遣を強行しようとして、しかし、国民世論の反対、野党の反対もあってうろたえているというのが現状じゃないでしょうか。

 私は、小泉総理がそうした二つの大きな判断の誤りをしたことにこの原因がある、このことを指摘しておきますが、小泉総理、反論があったらお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 いずれも菅さんの主張には賛成できません。私の判断は正しかったと今でも信じております。

 アメリカを支援しフセイン政権を倒し、そして、イラクに民主的な安定政権をつくるために米英初め今各国が協力している。このときに、民主党、菅さんの言うように手を引いた場合に、イラクがどうなるかということを考えていただきたい。そして、国連の安保理決議においても、国際社会がイラクの復興支援のために協力するという決議が採択されている。

 こういう状況において、私は、治安の状況においては必ずしも安全とは言えません、非常にテロ、ゲリラ、こういう面があります。そういう中において、それでは、テロ特措法も反対、資金も巨額過ぎるからということで反対、人的もやらない、これで果たして、日米同盟、国際協調、日本が、国際社会が協力して、イラクに混乱を起こさせたくない、テロに屈しない、テロのおどしに屈しない、日本も応分のイラクの安定した政権づくりに協力しようということの判断において、私は正しかったと今でも信じております。これからも、資金協力だけでなくて、自衛隊もできる分野があれば派遣したいと考えております。

 それで、自衛隊がだめで人的ならいいと。今無差別ですよ。赤十字も攻撃する、国連も攻撃する、大使館も攻撃する、イラクの警察官も攻撃する。そういう中にあって、自衛隊はだめだけれども民間人ならいい、私は、それはかえって危険な面もあると思います。

 そういうことを考えれば、私は、今の時点、危険でないとは言えません。しかし、そういう中においても、安全面を十分に確保しながら、日本が、米英初め各国の部隊が協力している、このイラクの安定した政権づくりに資金においても人的な面においても協力しているのは、日本の国益から考えても、対米協力を考えても、国際協調を考えても必要だと思っております。それは菅さんと全く違います。

 それと、アメリカを非難されますが、私は、ブッシュ政権を危険な政権だとは思っておりません。大義と善意を持ってイラク復興支援に尽くされている。しかし、その大義と善意が多くの国に理解されていないという面もあります。そういう点については、アメリカも国際協調体制をとれるように努力する必要があると思います。

 もしこのように、菅さんについて、今まで、テロ支援も反対、自衛隊も反対、資金も反対、ブッシュ政権は危険な政権だと言って、政権をとった場合に日本の国益というものをどう考えるのか、その辺をお聞きしたい。

菅(直)委員 まずちゃんとお答えを私からもしますから、静かに聞いてください。
 まず、私たちは、イラクの戦争を開始することには反対でした。しかし、戦争が終わった段階で、復興や人道支援について、一般的にそのことについて反対をしたことは一度もありません。そうではなくて、イラクの特措法というものに基づく自衛隊の派遣に反対をしてきたわけです。

 そこで総理、もっと根本的な話をされたので、私も根本的な話をしますから、よく聞いてください、皆さん。

 今から二年前の九・一一のアメリカに対する連続テロが、いわばこの問題の残念ながらスタートになりました。そして、そのとき、これは私たちも、多くの、世界じゅうが、あるいはアメリカの皆さんは特に、こういうテロの続発を何としても抑えなきゃいけない、封じ込めなきゃいけない。それには、そのテロを起こしたと思われるアルカイーダを支援したタリバン政権を攻撃するという形でアフガニスタン攻撃が行われました。私たちも、それに対しては一定の理解をいたしました。

 しかし、それに対して、さらに、フセイン政権、イラク政権もそれに関与がある、あるいは将来そういうものの原因になる可能性がある、大量破壊兵器を持っているという前提のもとに先制攻撃を加えました。そして、フセイン政権は、確かに圧倒的な米軍の軍事力の前に倒れました。

 しかし、九・一一の連続テロのときに目的とした、目標としたそのことは達成されたと言えるんでしょうか。まさに私たちが、先ほどの選挙じゃありませんが、目的としたものには、政権交代達成できませんでした。しかし、アメリカも、戦争には勝ったけれども、テロをこれ以上拡散させない、防ぐんだ、抑え込むんだということに成功したと言える人がこの中にだれか一人でもおられますか。アフガニスタンの中でもまだテロが続いております。イラクにおいては、テロというよりもゲリラ戦がいわば勃発をしております。(発言する者あり)うるさいですね。ちゃんと言っているんですから。
笹川委員長 御静粛に。

菅(直)委員 そういった意味で、総理は、アメリカの今の政権がやっていることにただ盲目的に賛成することが日米関係を大事にするかのように言っています。しかし、現実には、アメリカと長年同盟を結んでいるNATO諸国であるドイツやフランスにおいても、この戦争に対してはスタートの段階からおかしいと言い、国連決議に対して賛成をしても、フランスもドイツも一兵たりともイラクには送っておりません。私たちが自衛隊を派遣するのを反対だと言ったら、すぐに反米か、そういう言い方をされるけれども、そういう言い方をすること自体がいわば議論のすりかえじゃないですか、もともと。

 では、九月十一日のテロからのこの一連の流れの中で、私は、テロというものと戦争というものの性格の違いを根本的に理解していないアメリカの政策にも大きな誤りがあった。今、アメリカの政策に対してアメリカ国内でも、この間の政策についてですよ、ブッシュ政権下のネオコンに引っ張られた政策について、見直しの機運が圧倒的に高まっているじゃないですか。

 つまり、国と国との戦争は、一九四五年八月十五日、日本国政府が敗戦を認め、そして無条件降伏をしたら、ごく一部はあったかもしれないけれども、基本的にはテロやゲリラは起きませんでした。それは、国の意思で、税金で戦った戦争でありますから、国の意思が変わればストップするわけです。

 テロというのは、国の意思だけではありません。国の意思が関与することもありますが、個人の意思やいろいろな集団の意思が絡みます。ですから、その国の政権を倒したからといって勝てるかどうか。戦争なら勝てるかもしれないけれども、ゲリラは逆にその種をまき散らす可能性がある。現実にそうなったじゃないですか。

 そういう根本的なことを言おうと思うと、すぐ二言目には、テロに屈するのか、常にそういう言い方で、ますます攻撃を強めて、結果がうまくいくのならいいですよ。

 私は、その手前まで言えば、パレスチナにもう一つの原点があると思います。パレスチナの、いわゆるイスラエルが強硬な軍事力をもってそれを抑え込もうとしたところから自爆テロが頻発をしたというのは、この数年の経緯を見ていれば明らかじゃありませんか。

 そこで、ちょっと局面を変えてお聞きしますが、アルカイーダという名を名乗った、その関連組織を名乗ったところから東京に対してのテロ攻撃の予告があったと報道されておりますが、そういうことに対して警察当局はどうとらえ、あるいはどういう対応をしようとしているのか、お聞かせください。

小野国務大臣 お答えさせていただきます。
 御案内のとおり、九・一一以降、同時多発テロ以降でございますけれども、我が国の重要施設の警備あるいは警戒警備、一昨年の米国における多発テロ以降、重要施設及び米国関連施設等の警戒警備を恒常的に行っているというのがまず現状でございます。

 我が国には、イスラム教過激派がテロの対象としてきました米国関連施設が多数全国的に散らばって存在をいたしております。これらを標的といたしましたテロ、これが菅議員おっしゃるように懸念されるところでもございます。そうした関連からいたしまして、我が国は米国の軍事行動に対する支持を明確にいたしております。まず一つでございますね。明確に……(発言する者あり)ちょっとお黙りくださいませ。我が国は、軍事行動に対する支持を明確に、イスラム過激派によるテロの根絶を目指します国際社会と共同歩調をとっているというのが三点でございます。

 ですから、標的とされるような米軍の関連施設があるということと、それから米国の軍事行動に対する支持を我が国が明確にしているということが二点と、三点はテロの根絶を目指す国際社会と共同歩調をとっているという、この三点からいたしますと、標的になる可能性があり得るということを私どもも認識いたしております。

 そういった観点から、先ほど申しましたように、恒常的に警戒警備を充実させていただいているということが現実でございますけれども、情報についての信憑性、これが一点でございます、それから背景等につきましては、まだ私ども分析途中でございまして、そういったことに、各都道府県警、そちらの方に私どもの方から警戒警備についてさらなる徹底を指示していると承知をいたしております。

 今後も引き続きまして、国内外関係機関との連携を密にさせていただきまして、情勢の変化に応じ各種のテロ対策を強力に推進し、未然にこれを防ぎますように万全を尽くしてまいりたい、そのように考えております。

菅(直)委員 この問題についてもう一度だけ申し上げておきたいと思います。

 私は、ちょうど高校生から大学生のころがベトナム戦争でありました。当時のアメリカも、今と劣らないぐらい世界で最強の軍事力を持っておりました。しかし、あのベトナムに勝つことができませんでした。いろいろ理由はあったと思います。私は、あえて言えば、その理由の中の最大のものは、本当の意味の大義名分が弱かった、あるいはなかったから、このように思います。

 今回、イラク・フセイン政権を圧倒的軍事力でアメリカは倒しました。しかし、なぜ戦争に勝った後これほどまでにいろいろな状況が悪化しているのか。私は、一言で言えば、アメリカの攻撃というものが世界全体あるいはイラク国民含めて本当によかったと思われていない、大義名分がないことに根本的な原因があると思っております。

 そこで、やってしまったことを今さらその前の段階まで戻すことはできません。できるとすれば、大義名分というものが成り立つ形に今からでも少しずつ方向を変えることだと思います。それは、先制攻撃を加えたアメリカ、イギリスを中心としたイラクの統治というものを、できるだけ国連を中心とした、攻撃に加わらなかった主要な国が相当程度の責任を持つ体制に変えていき、そして、当然ながら、イラク国民による統治にできるだけ早い時期に移していこうということだと思います。

 そのときに、もう一つ大きな問題はイラクの石油です。よく防衛庁長官はイラクの石油を指摘されて、日本の国益のことを総理も言われます。確かに日本にとっても国益なんですけれども、逆に言えば、イラクの国民から見たら、石油が目的で攻撃したんじゃないの、そういう見方をしている、そういうことを私は各方面から情報として聞いております。少なくとも、安定した国に回復するということは国際社会の共通した目的です。しかし、イラクの石油を目的にアメリカ、イギリスが攻め込んだという理解が広く存在している中で、果たして大義名分というものが成り立つのか、私は、その根本のところまでさかのぼって考える必要がある。

 あえて申し上げれば、今日本がかかわるべき形は、占領軍の米英にいわば加わった占領軍になると少なくとも相手から見られるような形をとるのではなくて、やはり国連を中心として、米英中心ではない形の、もっと中立的なイラク統治の機構に一日も早く変え、そしてイラク人中心の政権に移していく、このことだと思います。
 総理にもし反論があれば、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 反論ということでもありませんが、私は、対米協力も必要だと思っています。国際協調体制をつくることも必要だと思っています。日本独自の支援をすることも大事だと思っております。米英と一緒に参戦しなかった国、ポーランドとか韓国とかモンゴルでも今部隊を派遣しております。私は、日本としてできるだけの努力をしていくべきだと思っております。

菅(直)委員 問題を移しますが、一言だけ、私は対米協力がいけないとは言っておりません。対米というのはアメリカという国との協力です。もしアメリカのある政権が間違った政策を出したときに、それまで盲目的に協力するのが対米協力とは思いません。日米関係というものはもっと根の深いものだ。まず、このことだけは申し上げておきたいと思います。

 そこで、北朝鮮に対する経済制裁の一環としての送金の停止について、私たちは選挙中に、追加のマニフェストの中で、送金が停止できるような枠組みをつくるべきだ、このことを盛り込みました。きょうの安倍幹事長の話の中にもそうした話がありましたが、総理はなぜこのことに対して消極的なんですか。私は、経済制裁を初めから、例えば輸出入の禁止なんということまでやれと言っているんじゃありません。日本からの送金です。

 これまでも、国連決議に基づいてイラクやリビアについて送金停止をやったことがあります。イラクやリビアに対してやったことが、北朝鮮に、今すぐやるかどうかは別として、やれるという法律整備をすることがなぜできないのか、その理由をお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 できないともすべきでないとも言っておりません。現在、経済制裁をするつもりはないと言っているんであって、今党でそのような法案を準備、進めております。十分検討に値するものだと私は思っております。

菅(直)委員 政府として責任を持ってやるつもりはない、党に任せておる、こういうことですか。それとも、平壌宣言というものがあるから、そのことを政府が言い出すとその宣言に反することになるということですか。はっきりと国民に、ちょっと、官房長官に聞いているんじゃありませんから、総理に聞いているんですから、ちゃんと答えてください。平壌宣言にサインしたのは総理ですからね。

小泉内閣総理大臣 私は、現在、六者協議で、北との対応については平和的解決を目指す、外交的解決を目指すという努力が日本、アメリカ、韓国のみならず、中国、ロシア等においても行われている、そして北朝鮮も話し合いに向かって動きを進めている、そのときに、現時点で経済制裁を行うのがいいかどうかという判断をしている。

 同時に、これから、送金停止等の外為法の問題につきましては、自民党ですから、党でよく今検討しているそうです。党でも準備を進めているということでありますので、与党でありますから、自民党でありますから、その点についてはよく相談して、検討に値すべき問題だと考えておりますので、今後ともよく党と相談していきたいと思っております。

菅(直)委員 平和的と言われますが、経済制裁も、少なくとも軍事的ではありませんからね。

 それで、答えておられないことがあります。平壌宣言との関係でできないということなのですかということについて、関係がないなら関係がない、関係があるなら関係ある、はっきり答えてください。

小泉内閣総理大臣 平壌宣言は平壌宣言であります。この問題とは関係ありません。

菅(直)委員 今、関係ないとおっしゃったようですが、それならそれで結構です。私は、読みようによれば、平壌宣言というのは、日朝間の関係を、いろいろな前提条件があって、私たちは、崩れたと思っていますが、総理は、崩れていないと言われますから、崩れていない中で日本が送金停止といったようなことをやることは、平壌宣言に反するということでちゅうちょされているのかなと思いましたが、関係ないと言われるなら、それで結構です。

 もう一点、今、ジェンキンズさんがもし日本に来られたときの扱いをめぐっての議論がありますが、日米犯罪人引き渡し条約第四条の中に、政治犯については、不引き渡しに該当すると国、日本政府が宣言すれば引き渡す必要がないという規定がありますけれども、これを適用するという考え方を宣言するということはお考えになっておりませんか。

小野国務大臣 お答えさせていただきます。
 国際刑事警察機構における手配の有無につきましては、手配を要請した国の捜査にかかわることでもございまして、回答を差し控えさせていただきたいと思います。

菅(直)委員 官僚の答弁を読まれるだけなら、出てこなくて結構です。

 総理、これは政治判断ですよ。これは政治判断ですから、政治判断として、日本の拉致被害者で日本に帰られた方の御主人が元アメリカ国籍があって、アメリカからいわば刑事犯罪として逮捕状なり何が出ている、日本に帰られたときにそれを引き渡すのかどうかというのは一つの大きな政治判断です。

 こういう規定に基づいて引き渡さない、そういう考え方はありませんか、総理。総理の判断。

小泉内閣総理大臣 この点については、アメリカとの問題もあります。アメリカともよく協議していきたいと思っております。

菅(直)委員 自主的な外交と言う割には、こういう日本の法律に基づく適用ですら、はっきりしたことを言われないというのは残念です。

 そこで、少し国内の問題に議論を進めたいと思います。

 総理は、改革の芽が出てきたと言われておりますが、地方に行っても、その芽は全くと言っていいほど見当たりません。また、この春卒業した若者の多くは就職をいたしておりません。無業者という定義があるそうですが、大学卒業生で見ると、二割を超す人が無業者になっている、このような発表があります。

 総理は、特にこの若年層の就職の困難な状況について、どのような対策をお考えかをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 この若年者の失業問題につきましては、やはり厚労省だけじゃなくて、文部科学省、経済産業省、政府やはり挙げて取り組むべき問題だということで、各省連携してこの若年者対策を進めていこうということで、既に協議、対策本部を設けてやっております。この点については、今後とも各省連携のもとに進めていきたいと思います。詳しく各省それぞれ意見を持っておりますので、そういう点、お互い協力してやっていくことが必要だと思っております。

菅(直)委員 改革の芽という言葉は、何かさわやかな言葉になっておりますが、現実を見て言っておられるのか、それとも新丸ビルとか六本木の建物だけを見て言っておられるのか、私は、どうもそのように思えてならないということを申し添えておきたいと思います。

 そこで、きょうは、道路公団総裁、お見えですね、道路公団総裁にまず御意見をお聞かせいただきたいと思います。

 さきの選挙においてもそうですけれども、私は、この間、例えばアクアラインに乗ってみました。道路公団のものではありませんが、本州四国の橋も何度か渡ってみました。膨大なお金を使われてつくられたこれらのトンネルや橋は、非常に交通量が少ない。当初予定の半分とか三分の一であります。

 私たちは、それなら、思い切って現在の道路に使われているガソリン税などの一部を公団の負債の償還に充てて、思い切ってこれらの通行料を無料にすることの方が日本経済全体にとってプラスになる、地域経済にとってプラスになる、そういう考え方で提案をいたしました。

 経済界でも、私の知るところ、ある新聞には、ソニーの大賀名誉会長とか何人かの方がそのとおりだという趣旨のことも言われておりました。

 新総裁は、外国の生活も長いと聞いておりますけれども、アメリカなどでフリーウエーが無料だということはもちろんよく御承知だと思います。今、立場上いろいろ言いにくいところもあるかもしれませんが、ひとつ一民間人として、たしか就任前には道路についてそれほど詳しい立場ではないと言われましたが、ある意味での、経済界に身を置かれた立場として、そうした、思い切ってこれまでの道路財源、私どもの計算では、国、地方で約九兆円余りありますけれども、その一部を償還に充てれば、まあ経済上からいうと、あすからでも無料にできるわけでありますから、そういうやり方の方が日本の全体の経済にとってプラスになるのではないか。

 かつて信長が、いわゆる楽市楽座という形で関所を撤廃いたしました。私は、高速道路の通行所を撤廃する、関所を撤廃することによって日本経済を地域から興していく、このために役立つと思いますが、新総裁のこの問題に対する個人的な見解で結構ですから、お聞かせをいただきたいと思います。

近藤参考人 お答えさせていただきます。
 個人的な考え方、感想ということで御容赦を賜りたいと存じます。

 基本的に、私は、物事すべて、ただのものはないと考えております。ただほどまた高いものはないというふうに考えております。

 道路につきましても、これはただではございません。一般道路につきましても、これは納税者が負担をしているわけでございます。したがいまして、これを無料にするということは、利用者にとりましては無料でございますが、一般国民に対しては税金でしっかりと負担をするということでございます。したがいまして、これはただではない。ただのものは、この世の中にはございません。

 したがいまして、ただという言葉は一般国民に対して大変誤解を与える言葉ではなかろうかな、そのように私は個人的に考えております。

菅(直)委員 まあ総裁も、残念ながら、選挙中は自民党の参議院議員でおられたので、自民党のマニフェストに拘束されているのかもしれません。

 私は、一度もただということを申し上げたつもりはありません。通行料を無料にすると言ったんです。その財源は道路財源から出すということですから、ガソリン税などから出すということを今申し上げたんです。申し上げているのを御承知の上で、わざわざ通行料の無料のところだけを取り上げられるというのは、残念ながら、民間人というよりは、やはり自民党の政治家を単に当てはめただけだな、そういう感想を持ったことをまず申し上げておきます。

 その上で、高速道路について、もう一つお聞きします。

 民営化という議論が進んでおりますが、私が見るところでは、もともと民営化という議論は、採算性の悪い道路の建設を抑えたいとする、例えば猪瀬さんなどの意見が大きく反映してここまで議論が進んだと思いますが、どうも今のこの一年間の議論を聞いておりますと、もうその枠組みは壊れてしまっている。ことしの一月の予算案でも、つまりは採算性の悪いものは国が直接つくりましょう。これなら、まさに道路公団以外がつくるということですから、見方を変えれば私たちが言っていることとやや似てくるかもしれません、過去であるか未来であるかは別として。つまり、道路財源からつくりましょうということですから。

 そういう意味で、今、道路公団を民営化するという枠組みそのものが何の目的なのかほとんどはっきりしなくなっています。しかも、九千四百二十キロですか、三十キロですか、その整備計画についてもそれは必ずやるんだとかやらないんだという議論が盛んであって、いわばそういう計画が進み得る民営化ならどうぞどうぞやってください、進み得ない民営化など絶対にやらせない、これが自民党の道路族の考え方じゃないでしょうか。

 そこで、もう一つだけ申し上げておきます。これは新総裁にも申し上げておきますが、自由民主党が好きなのは、できた道路を使うことではありません。使うことであれば、私たちが提案をした、アクアラインを無料化して、本州四国を無料化すれば、もっともっと道路は使う人がふえるでしょう。そうではなくて、つくることが目的なんじゃないですか。ですから、建設をするための枠組みを残すためには、民営化でも建設ができるんなら結構ですよ、建設ができないんなら困りますよと。

 私たちはそんなことは言っておりません。九兆円の道路財源の中で、償還に充てる二兆円を除けば大いにその枠の中でつくればいいけれども、自由民主党は、九兆円の道路財源以外に二兆円の通行料もつくる方に充てたい。さっき新総裁は間違ったことを言われましたけれども。つまりは、二つのポケットでつくりたいから今の枠組みを守ろうとしているのであって、ただだからどうだということとは関係ないんです。つくれれば何でもいいんです。

 国交大臣、通されるんですか、計画は。九千四百三十キロの計画はそのまま実行されるんですか。

石原国務大臣 ちょっと誤解があると思うんですけれども、自民党の道路に関係する方が、道路をどんどんどんどんただつくればいいというふうなことを私のところに言っていらっしゃる方はいないということを名誉のために申し述べさせていただきたいと思います。

 私どもは、むだな道路はつくらない。地方の方々、民主党の方も含めて、無料化という話はされている方が、私、全国回らせていただいて大変少なかったような印象を持ちます。
 この問題点については、さきの予算委員会で議論をいたしましたので、御答弁は割愛させていただきますが、後段の御質問は、要するに九千三百四十二キロをつくるかつくらないか。

 今、近々、これは近々ともう申させていただきたいと思うんですけれども、これから、九三四二の中でできていないところが二千キロぐらいありますけれども、路線ごとに、この道路の採算性、あるいは先ほどお話が出ていた社会的な外部効果、こういうものを一本一本お示しいたします。それも民主党の皆さんにもお示しいたしますので、それでつくらないというような道路があるんだったら逆に言ってきていただきたいですし、私は、BバイCが残事業量を引いてやったところで一を切るようなものは、やはり有料高速道路としてはできないんだと思うんです。

 そういうものの基準を客観的にお示しするということをこの民営化の前提に置いているということもぜひ御理解いただきたいですし、菅代表の御質問の中にありましたように、これは、民営化は目的じゃございません、何度も言うように手段です。四十兆円の借金を、菅さんは二兆円ずつ今のキャッシュフローの中から返せということをおっしゃっていますけれども、じゃ、そこで発生する借りかえの金利分はどうするのか。現在の七兆円のところからしょっぴいていくのかという議論もこの間させていただきましたけれども、そういうものもパッケージでぜひお示しいただきましたら……(菅(直)委員「示している、示しているよ。示しているよ」と呼ぶ)それは論理的にちょっと破綻しておりましたので、またぜひ金利の部分のお話もしていただきたい。

 御心配になるようなことはないように民営化のスキームをつくらせていただいております。

菅(直)委員 新国交大臣ですから余りいじめないようにしたいと思いますが、言っておられることがほとんど自己矛盾を起こしているということを申し上げておきたいと思います。

 つまり、採算性を最終的に判断するのは、もし民営化するんであればその民間会社が判断するのが当然なんですね。それを何か民主党にも言ってきてほしいと。何か陳情を求められているようですけれども、一体何を勘違いされた答弁をされているんでしょうか。

 つまりは、本当に民営化するというんであれば、判断を含めて、民営化された会社に任せる。総理は、せんだって私の質問に対して、永久にそれだと料金が有料のままじゃないですかと言ったら、それは新しい会社の社長が判断することですと。まあそれはそのとおりでしょう。しかし、どの会社の社長が判断したって、永久有料化になることは間違いないところですから。

 ですから、そういう意味でもう一度申し上げますが、この民営化という議論が一体何のための民営化なのかということが、国民の皆さんから見てほとんどわからなくなっていると思います。

 もう一度、私たちが申し上げた料金の無料化についてだけ申し上げますと、私たちは、通行料を取らないということは、その分に当たる道路建設はできなくなるということです。現在日本では、ガソリン税などで九兆数千億、そして通行税で二兆数千億、いろいろ借りかえとかありますけれども、合わせて約十二兆円の、一般道と高速道路を合わせて十二兆円の道路予算が毎年使われているわけです。

 私たちの提案は、まずその通行料分、それを償還に充てる充てないは別として、通行料分はなくするということです。そして、ガソリン税などの九兆円余りの中から償還財源を出すということは、ただじゃありません、その税金でちゃんと返すということです。そして、その残った七兆円余りで十分に、日本の道路も効率よくやれば建設できるはずだ。フランスとイギリスとドイツの道路建設財源は、合わせても七兆円は達しておりません。

 そういうことを考えますと十分にやれるということを申し上げて、まさにワンパッケージで申し上げたんですが、どうも国交大臣の理解力では理解がされなかったようでありますけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。

 そこで、もう一度、もう一つだけ申し上げておきます。
 総理、もう一つ、マニフェストの中で三位一体改革というものが言われて、今回、一兆円のいわゆる地方への補助金の削減が指示されたと言われております。国民的に見ると、一兆円というと相当頑張っているのかなという見方もできるんですが、しかし、自治体の皆さんからすると、一兆円の補助金が独自財源としてそのまま移されてくるのか、それとも、単に一兆円が一円も来ないで削減されてしまうのか、一〇〇とゼロ、全く意味が違います。

 総務省の話を聞きますと、いやいや、できるだけ財源を移譲する方にウエートをかけたいと言われていましたけれども、必ずしも総理の指示は、せめて七割は財源移譲、三割はカットとかいう枠でもあればまだわかるんですけれども、一兆円という数字だけで、全部が移譲なのか、全部がカットなのか、どの割合が移譲なのか、全くはっきりしておりません。総理の三位一体とかという言葉は、言葉は躍るんですけれども中身がないというのは、こういうところにあるんですね。

 ですから、総理大臣、どういうイメージなのか、せめて、七、三なのか、五分五分なのか、九、一なのか、そのぐらいのことは国民に説明される責任があるんじゃないでしょうか、これは総理の口から。

小泉内閣総理大臣 私ははっきり申し上げているんですよ、補助金、交付税、税源移譲、これを三位一体で改革すべしと。総理大臣としては、方針を出すことが重要なんです。

 そして、これから一月かけて予算編成、具体的な数字が出てまいります。各省の担当大臣がいるんです。担当大臣にも腕を振るってもらわなきゃいけない……(発言する者あり)利害が対立している場合は総理大臣が調整する。よくわかって、総理大臣が細々、あれこれすべて口出しすべきとも思えません。方針を出して、そして方針にのっとって各担当大臣が指導力を発揮していただく。最終的に調整がつかない場合は私が出ていかなきゃならないなと。

 できたら、私が出ないでも、各担当大臣ならそれぞれうまく指導力を発揮して、解決できて、総理大臣、お呼びでありませんということなら、なおいいと私は思っております。

菅(直)委員 これは国民の皆さんにもぜひ御理解いただきたい点ですが、私たちがこのマニフェストの「五つの約束、二つの提言」の第一項目に掲げたのが、「霞が関からの「ひも付き補助金」を全廃します。」そして、具体的には、二十兆円の補助金のうち十八兆円を財源移譲しますという最終目標を段階的に進めていくということを提案いたしました。

 それに対して小泉総理のマニフェストには、三位一体で三年間で四兆円を、今言われたように、削減、それから移譲、それから何でしたか、三つの、交付金を含めて三位一体と言われていました。しかし、結局のところは、四兆円の財源が自治体の自主的な財源に移るのか移らないのかということは、これは大問題じゃないですか。基本的な方針じゃないですか。

 つまりは、総理にとっては三位一体という言葉が本質であって、その方向性、つまりは、ひもつき財源を独自の財源に移すのか移さないのか、どれだけ移すのか、どれだけの比率を移すのかということは一言も言わないでも、それは細かいことですから各大臣にお任せします、これが細かいことだったら、三位一体の公約なんというのはほとんど意味を持たないということじゃないですか。

 そういった意味で、小泉総理の三位一体のマニフェストというのはほとんど意味がなかった、そう理解していいんですね。

小泉内閣総理大臣 私が方針を明示しているから、各省、必死になって今この実現に向けて努力しているんですよ。意味が十分あるんです。

菅(直)委員 では、せっかくですから、財務大臣、どうぞ。

谷垣国務大臣 補助金の削減は小泉内閣にとりまして極めて大事な問題で、先般、一兆円を目標として削減せよという御指示が出ました。したがいまして、今まで骨太の方針二〇〇三で、菅さんが言っておられました工程表がございますが、それとあわせて、いろいろな知事会や何かから、地方としてはこうしてもらいたいという要望も出てまいりましたので、それを踏まえて、各大臣に汗をかいていただいてまとめていきたい、こう思っております。

 そして、財源移譲もできる限りやっていきたい。できる限りと申しますのは、補助金の中には、もうこの際廃止した方がいいだろう、地方にやっていただく必要もない、むだだというようなものも、一つ一つ検討していくとあるだろうと思います。それについて財源を移譲するというのは、むだの上塗りになりますから、そういうところは当然省いていかなきゃならない。しかし、でき得る限りやっていこう、こういうことでございます。

菅(直)委員 私の持ち時間はそろそろ終わりますので最後にしますけれども、私たちは、この選挙の前に、全国知事会の皆さんからも何度もお話をいただきました。多分、自由民主党にも行かれたと思います。そして、県が担当している補助金のたしか九兆円ぐらいを独自財源に移してくれ、それに加えて、市町村の皆さんからもいろいろと要請をいただきました。私たちは、その考え方が賛成でありましたから、先ほど申し上げたように、このマニフェストでそのことを実現するように盛り込みました。

 残念ながら、今回政権をかわることができませんでしたから、私たちは政権という立場でそれは実行できませんけれども、こうした国会の質疑などを通して、この問題についても、あるいは高速道路の無料化についても、きょうは私は取り上げませんでしたが、年金改革という最も重要な課題についても、私たちの案をきちんと提示していますので、野党の立場ではありますが、責任ある野党としてしっかりと取り組んでいく、このことを国民の皆さんにもお約束をして、私の質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。


2003/11/25

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