2003/09/29 >>会議録全文

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「小泉首相では日本沈没を防げない」菅代表が代表質問 (民主党ニュース)

 民主党の菅直人代表は29日、衆議院本会議で小泉首相の所信表明演説に対し代表質問を行った。原稿なしで質問に臨んだ菅代表は、「構造改革の種をまき、ようやく芽が出てきた」と自画自賛する首相に、「総理の公約に真正面から反対してきた青木参院幹事長を味方に引き入れて再選したが、これで公約が実行できるのか。2年半もかけてまだ芽が出た段階というようなスピードでは、日本が沈没することを防ぐことはできない」と断じ、小泉首相に一刻も早い退陣を求めた。

 菅代表は、民主党の政権公約(マニフェスト)をもとに、事務次官会議廃止など官僚政治の打破、雇用・景気重視の経済運営、郵貯・簡保資金の中小企業向け金融への活用、高速道路無料化、衆議院比例定数の80削減や選挙権年齢の18歳への引き下げなどを具体的に提案。同時に小泉首相に対して、道路公団の民営化により通行料金は未来永劫無料にならないのではないか、郵政民営化の際に郵貯・簡保をどう取り扱うのか、イラクへの自衛隊派遣や財政支援を具体的にどうするのか、などと質した。

 答弁に立った小泉首相は、郵政民営化問題について「これからの構造改革の本丸。党内に今まで反対の声があったが、必ず党の公約にする」などと手振りを交えて雄弁に答えた以外は完了答弁の棒読みに終始し、郵貯・簡保問題、道路公団民営化後の料金無料化の有無、イラクへの財政支援などの具体的質問には答えなかった。

 再質問に立った菅代表が「まさに官僚主導政治の実態を示す答弁」と批判し、再答弁を求めたが、小泉首相は「これから案をまとめる。先送りでも何でもない」と開き直り答弁を連発。イラクへの財政支援の再答弁漏れを指摘され、異例の再々答弁を行ったが、「国際社会の一員としての責任を果たす」と無内容な抽象論に終始した。


2003年09月29日 
「代表質問で脱官僚国家のあり方示した」菅代表 (民主党ニュース)

 民主党の菅直人代表は29日の定例記者会見で、同日行った衆議院本会議での代表質問について「首相との公開討論会のつもりで、原稿なしで質問した。脱官僚国家のあり方について国民の皆さんに伝えることができたのではないか」と述べた。
 
 また、小泉首相が郵政民営化、特に郵貯・簡保の350兆円に上る資金について方向性を明確にしなかったことを「11年以上も前から郵政民営化を唱えている政治家が、答弁できなかったのは残念」と批判した。
 
 さらに、小泉首相が答弁で絶叫したことについて記者から感想を求められ、「野党の党首にふさわしいと思う」と述べた。


議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。菅直人君。
    〔菅直人君登壇〕

菅直人君 まず、北海道十勝沖地震で被災された皆さんに心からお見舞い申し上げますと同時に、政府に対して、的確迅速な復旧活動に従事されるよう強く申し上げます。

 民主党と自由党が合併をいたしました。新しい民主党と無所属クラブを代表して、さきの小泉総理の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)

 同時に、間近に迫った総選挙に向けてのマニフェストをめぐる討論を行いたい。総理にも真正面から答弁をいただきたいと思います。

 まず、小泉総理大臣、総裁再選おめでとうございます。政局に強いと言われる小泉総理の真骨頂が発揮されたと感心をしております。

 特に、小泉総理が最大の公約とされている郵政事業民営化に真正面から反対を表明している自由民主党参議院青木幹事長を味方に引き入れて、再選の流れをつくった。まさに政略的には見事だと言えます。

 しかし、総理大臣、これであなたの公約は実行できるのでしょうか。青木幹事長は、たとえ衆議院が民営化法案を通しても参議院でつぶしてみせると言っておられます。マニフェストに盛り込むにしても、与党と総理が一致していなければ、にせもののマニフェストになってしまいます。結局のところ、与党と総理の意見が一致しない、それを理由に足踏みが続くのではないですか。総理、お答えください。

 総理は、所信表明でも、改革の芽が出てきたという表現をされます。しかし、小泉改革に期待していた経済界の中からも、小泉改革は余りにも遅過ぎる、スピードが遅いという指摘もあります。どちらが正しいのでしょうか。

 私ごとで恐縮ですけれども、私は、一九九六年一月に厚生大臣に就任し、十一月に小泉厚生大臣に引き継ぐまで、十カ月間務めました。その十カ月の間に、薬害エイズの和解、そして、O157をめぐる法定伝染病法の改正、豊島の産業廃棄物の問題の取り組み、さらには介護保険制度の最後の取りまとめなど、多くの改革を推進したと自負をいたしております。

 小泉総理の在任期間は既に二年半、三十カ月でありまして、私の厚生大臣の三倍の期間を在任されております。これで、まだ芽が出たという段階なんでしょうか。これからさらに三年、小泉政権が続くとして、この芽がせめて大きな木になるとでも言うのでしょうか。とてもそうではありません。小さな葉っぱが出るのが精いっぱいじゃないですか。こんなスピードで、日本が沈没することを防ぐことはできません。一日も早く退陣をお願いいたします。(拍手)

 それでは、なぜ、小泉総理にできないスピーディーな改革が、民主党が政権をとれば、私が政権をとれば実行できるのか、そのことを国民の皆さんに説明させていただきたい。ぜひとも、しっかりこのところをお聞きいただきたいと思います。

 その理由は、政権をつくる原理そのものが根本的に違うからです。端的に言えば、脱官僚政権を私たちはつくるからです。

 これまでの政権は、例えば、大臣は自分の役所の利益代表として発言することが役割だ、与党の政策決定の場も官僚と手を組んだ族議員が支配しているのが実態でありました。ですから、官僚が嫌がる政策はほとんど日の目を見ません。そして、官僚は戦前の職業軍人と同じく一人一人は優秀でありますけれども、組織としては方針が根本的に間違っています。つまりは、国の利益や国民の利益よりも自分たちの役所の利益を優先する。この官僚政治を打ち壊さない限り日本の改革が進まないことは、ここにおられる皆さんは大なり小なり感じておられるわけです。

 その官僚政治の象徴が、閣議にかける案件を決める事務次官会議であり、さらには、総理のそばに仕える総理秘書官の五人のうち何と四人までもが役所からの出向者で占められているというこの現状です。

 官房副長官の事務が古川さんからかわりましたが、総理はだれを選ばれたのですか。結局、霞が関の不文律、旧内務省の事務次官経験者にするというその慣例を踏襲された。つまりは、官僚政治をそのまま認めてきたわけじゃないですか。

 もし民主党が政権をとったときには、まず、事務次官会議は廃止します。そして、総理大臣の秘書官には、政治的な任用で選び、間違っても、お役所からのスパイを兼ねた出向を秘書官にすることはいたしません。そして、与党と内閣の意思決定を一本化するために、与党幹事長、民主党の場合は岡田幹事長ですけれども、内閣に入閣してもらって、閣議で党の方針も一本化して決める。さらには、総理大臣のそばには五人の総理大臣補佐官、さらには秘書官をしっかり固めて、内閣全体の指導ができる体制をつくります。

 このようにすれば、選挙前に国民の皆さんに約束したマニフェスト、政権公約を、選挙後、政権をとったときに改めて議論する必要はありません。直ちに閣議で決定し、直ちに実行を始めることが可能になります。(拍手)

 ところで、小泉総理、総裁選の折に、経済のイロハのイの字も知らないと言われたといって激怒されたとお聞きをいたしております。先日の所信表明演説を聞いていて、総理は経済のイロハのイの字も知らないばかりでなく、世の中の実情も知らないのではないか、こんなふうに感じました。(拍手)

 小泉総理は、これまで、サラリーマンをされたことがありますか。あるいは、自分で事業を営んだことがありますか。私は、サラリーマンの息子で、サラリーマン経験を四年間いたしました。その後、小さな特許事務所を経営して、従業員にボーナスを払うために銀行からお金を借りた経験もあります。

 サラリーマンにとってリストラがどれだけ厳しいものか、中小企業経営者にとって融資を断られることがどれだけ厳しいことか、今の自殺者の激増がそのことを物語っているじゃありませんか。

 総理が痛みに耐えてという言葉を吐かれるときに、本当にこの人は痛みがわかっているのかな、こう思うのは私だけではないと思います。(拍手)

 今、日本の経済がここまで落ち込んだ最大の理由は、国民の皆さんが払われた税金を官僚や族議員が自分たちの都合で使って、本当に国民のために使ってこなかった、そのツケがあらわれたのです。

 民主党が政権を握ったときには、雇用と景気を重視した、そうした財政運営を行います。

 まず、財政規模については、名目二%程度の景気回復が定着するまでは規模を小さくすることはできません。しかし、その中身については大幅に変えていかなければなりません。これまでのような、投資効果もない、一部の人たちにのみ利益を上げるような予算は全部組み替えます。

 例えば川辺川ダム、二千億円余りの予算で工事が予定されておりますが、こうした自然を破壊するむだな公共事業は即座に中止します。そのかわりに、川辺川の上流の五木村に広がる三万五千ヘクタールの山々を、例えば毎年二十億円の費用で山に入って山を保全する。

 全国の山、先日も長野県の黒姫山にC・W・ニコルさんと行ってまいりましたけれども、本当に山が荒れております。そうした自然回復のために、森林レンジャーを活用していく。安定した雇用にもつながり、そして、自然回復にもつながる。こうした財政運営を行ってまいりたいと思います。

 それに加えて、最も大きなむだ遣いを生んでいるのは、国がひもつきで地方自治体に補助金を配賦していることです。

 私たちは、改革派の知事の意見を受け入れて、原則的にそうしたひもつき補助金はすべて廃止し、自治体がみずからの判断で使える、そうした財源に振りかえていきます。そうすれば、改革派の自治体は、雇用につながるように、あるいは国民生活につながるように、老人福祉施設を拡大し、あるいは保育園を拡大して、女性が介護や育児で仕事を追われることがないような、そうした施策もきめ細かく実行されるものと確信をいたしているわけであります。(拍手)

 そこで、総理、総理は、四兆円の補助金を削減した上で地方に移すと言われております。削減が目的なんですか。一体具体的にはどうされるというのか、明確に、具体的にお示しをいただきたい。

 総理はマニフェストに郵政事業を盛り込む意向と聞いております。

 そこで、麻生総務大臣に、あなたは総理の言う郵政事業民営化に賛成なのか反対なのか、疑問をお持ちなのかどうなのか、はっきりとお答えください。

 私は、小泉総理の言う民営化によって郵便貯金と簡易保険がどうなるのか、まだ一度も聞いたことがありません。この郵貯、簡保からすべて引き揚げて民間に任せるという形での民営化なんですか。それとも、二百四十兆の郵貯、百十兆の簡保を大きな民間の銀行や生命保険会社とすることによって民営化しようとするのですか。一体、東に行くのか西に行くのか、はっきりも言わないで、ただ民営化だけを言っていても、これでは公約にはなりません。はっきりとお答えください。(拍手)

 私は、今、郵貯、簡保の三百五十兆円を中小企業に向けた融資に振り向ける方法を、そうした改革案を検討いたしております。

 信組、信金という地域の金融機関は、貸し出しの経験はありますけれども、残念ながら、お金を集める力は弱い。こういう地域の銀行に商工中金や中小企業金融公庫を介して郵便貯金のその膨大なお金が流れる仕組みをつくれば、中小企業に対する大きな支援になると考えるからです。

 郵政事業の最終的な経営形態は、この三百五十兆円という巨額の資金をどのように扱うかということの結論が出た上でなければ判断できないというのが当然のことではないでしょうか。(拍手)

 道路公団についても、まず私の考え方を申し上げて、質問をいたします。

 私は、大都市、首都高や阪神高を除く全国の高速道路を三年以内に無料化することを提案しております。そして、十四キロに一カ所の出入り口を三キロ程度に一カ所、増大させることを提案いたしております。その場合に、日本道路公団と本四公団については廃止をして、その債務は国が肩がわりする。そして、その債務は、現在約九兆円に上る道路財源の中から二兆円弱を振り向けて償還に充てます。そうすれば、残りの七兆円余りの金を一般道やさらなる高速道の建設に充てることができます。

 こうすれば、地域の生活に高速道路が活用でき、そして流通のコストが下がり、旅行などのコストも大幅に低下し、地域経済に大きな活力を生み出すものと私は確信をいたしております。(拍手)

 自由民主党の中でも、夜間だけの無料化とか料金の引き下げといったことが出てきておりますけれども、しかし、料金を取る限りは、出入り口を増大させることは大変困難が伴うことは御理解できると思います。

 総理の言う民営化は、永久に有料化する、会社が存続するためには未来永劫有料化することを意味しますが、総理、それでいいんですね。このことを明確にしていただきたいと思います。

 さて、イラクと北朝鮮についてお伺いをします。

 近く、アメリカのブッシュ大統領が来日され、自衛隊のイラクへの派遣、さらには費用負担を強く要請されるのではないかと言われております。その場合に、総理はいかに対応されるつもりか。イラクに自衛隊を送るとすれば、いつ、どの地域に、どの規模で送るのか、どうした財政支援を行うのか、この場ではっきりとお答えください。

 私は、今回のイラクの戦争は根本的に間違っていたと思います。しかし、攻撃を加えてフセイン政権を倒してしまった以上は、アメリカ、イギリスが責任を持って治安を回復し、そして、国連の支援を受けてイラク人による政府を一日も早く立ち上げることが必要です。

 私たちは、そうしたイラク人の政府や国連からの要請があった場合には、PKOあるいはPKFといった活動にも参加を検討すべきだと考えております。また、人道的な援助、復興援助に資金の援助もすべきだと考えております。しかし、今の、一方的に攻撃をし占領した米英軍に後から参加する形での、イラク特措法に基づく自衛隊のイラク派遣には絶対に反対であります。総理の見解を伺います。(拍手)

 北朝鮮についてお伺いをします。

 昨年、総理の訪朝で拉致被害者の皆さんが帰国されたことは率直に評価をし、私たちも喜びたいと思います。これからも拉致被害者、その家族の全員の帰国を私たち民主党も全力を挙げて支援していくことを、この場所でお約束をいたします。

 そこで、お聞きをいたします。
 拉致被害者の家族の帰国の見通しについて、総理の見解はいかがでしょうか。また、北朝鮮の核兵器開発をいかにすれば断念させることができるのか。六者会談は開かれておりますけれども、まだ不透明であります。日本としてやるべきことは何か、改めて総理の見解を伺います。

 最後に、政治改革についてお尋ねをいたします。

 民主党は、まず政治資金については、より透明化を高めるべきだと基本的にその政策を提案しておりますが、与党は、さきの国会で不透明化法案を出されました。総理はこの不透明化法案に今でも賛成されているのでしょうか。

 また、民間企業がリストラされ、地方議会が定数を削減する中で、私たち国会は衆議院の小選挙区をより強めるその意味も含めて比例代表定数を八十削減すべきだ、このことを我が党マニフェストに盛り込む予定にいたしております。総理の見解を伺います。

 さらには、定数の二倍以内の格差、さらには選挙年齢の十八歳への引き下げ、これらについても総理の見解を伺っておきたいと思います。

 総理、いよいよこの国会が経過をする中で解散をされる意向だと聞いておりますが、ぜひとも国民の前で、あと三年間、一体何をやってどういう成果を期待しているのか、さらには、これまでの二年間、なぜ何一つとして改革が進まなかったのか、そのことをわかりやすく国民に説明してこそマニフェスト論争になると思いますけれども、いかがでしょうか。

 どうか、真正面からお答えをいただき、総理の答弁が不十分な場合には、私の持ち時間の範囲内でさらに質問させていただくことをこの場で申し添えて、私からの質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菅議員にお答えいたします。

 まず、総裁再選に対する祝意をいただきまして、ありがとうございます。

 郵政事業と道路公団の民営化が実現できるかというお尋ねでございます。
 私は、郵政事業の民営化というのは、これからの官業の構造改革の本丸だと位置づけてまいりました。今回、私の総裁選挙の公約にも、郵政三事業民営化を、具体的に年限を明示して、十九年に民営化するという公約を盛り込んでおります。

 党内には、もちろん、今まで反対がおりました。しかし、それをあえて総裁選の公約に掲げてやってきたわけであります。これを実現するというのが、自民党が真に改革推進政党になったかどうかの一つの試金石だと思っております。必ず党の公約にします。今は反対でも、これは今後、民主党ともいい争点になると思います。

 私が二年数カ月前、四月に総裁選のときは、郵政公社後、民営化の議論は一切行わない、そういう党大会の決議がなされました。なおかつ、国家公務員だ、民営化はしない、そういう枠がはめられたにもかかわらず、私は、総裁就任後、一貫して、なぜ郵貯も簡保も郵便も、民間人が現在やっている事業を国家公務員がやる必要はあるのかと。二十八万以上の国家公務員が民間と同じような仕事をしている。自衛隊だって、現在二十三万五千人ぐらいしかいない。そういうことから、私は、これは、民間にできることは民間にということで、民営化できるという主張を掲げてまいりました。

 郵政公社が、十九年三月で一定の期間が参ります。今、私は、その期間、来年までには、どういう民営化の形態がいいかということを経済財政諮問会議で議論して、そして再来年の国会には、具体的な民営化法案を提出いたします。

 私は、民主党はよく官の構造改革が必要だと言いますけれども、今まで、自民党も民主党も、一度たりとも郵政民営化の方針を出すことができなかったじゃありませんか。民営化の方針を出しただけで中身がない、菅さんは今言ったけれども、中身がないのはどっちだろうかと言いたい。

 しかも、自由民主党は、国家公務員とか地方公務員の役人集団の既得権を守る政党ではありません。公務員の集団の選挙の票も当てにしておりません、自由民主党は。(拍手)

 もしも民主党が本当に官僚の改革をするんだったらば、郵政事業に従事している人は、なぜ国家公務員でなきゃいけないんですか。なぜ民営化はしてはいけないんですか。それすらも言えないで、小泉内閣になってから初めて民営化を出すと、公社になると不十分だ、民営化しろ。民営化を言いますと、今度は、民営化には問題がある。いつも反対ばかりしているのが民主党じゃありませんか。

 批判のための批判です。真に官僚機構の構造改革をするんだったらば、民間にできる郵政三事業を民営化すべしと言ったらどうなのか。こんなことまで言えないで、何で官僚の既得権を破棄できるのか。私は、そういうことから考えて、郵政民営化に反対する民主党が官の構造改革なんかできるとは思えない。(拍手)

 自由民主党は、議論はします。議論はしますけれども、常識豊かな政党であります。これから、自民党は変わったというのを見せます。変わったのは、若い安倍幹事長になっただけじゃない。政策の面においても官僚に頼らない。民間にできることを役所の役人がやっていいとも思わない。

 私は、郵便局をなくせとは言っていないんです。国鉄がJR民営化になって、鉄道がなくなったわけじゃない。電電公社がNTTになって、電話がなくなったわけじゃないんです。郵便局の仕事を国家公務員じゃなくて民間人に任せれば、いろいろな仕事が展開できる。

 あの一等地にある郵便局の官舎、利用価値はたくさんあります。今、国家の財産が眠っている。いろいろな事業が展開できるはずだ。地域の再開発にも役立つはずだ。私は、民営化によって、今まで眠っていた資源が目を覚まし、やる気のない人がやる気を出して働いてくれるような、そういう郵政事業の活性化に向けた民営化をしていきたいと思っております。

 まず、今まで民営化の議論さえいけないということが、これほどはっきりと内閣の公約に挙げて自民党の政権の公約になる。こういうことは野党の民主党にはできないでしょう。今後、党内の今までは反対していた人たちも、必ずや、来るべき総選挙におきましては党の公約として良識ある活動をして、自民党は内閣と一体となって改革政党としての役割を果たしていかなきゃならないと思っております。

 構造改革のスピードについてのお尋ねがありました。

 私は、今、あらゆる分野において改革を進めております。郵政民営化とか道路公団民営化だけじゃありません。不良債権の処理あるいは税制改革、構造改革特区の導入、特殊法人への一兆円を超える歳出の削減など、従来では考えられなかった改革が確実に進んでおります。今後、芽が出てきたこの改革を大きな木に育てることができるよう、さらに全力を挙げて改革を推進してまいります。

 改革のスピードが遅いとの批判は当たらないと思います。

 内閣が官僚主導ではないかということではございますが、私は、閣僚には、辞令交付時に重要な課題及び対処の方針について明確に指示を与えています。会見前に役所から受ける説明を会見の場でどう活用するかは、各自に任せております。

 事務次官会議は、内閣の意思決定を行うに当たって、事務的な面で最終確認を行うとともに、内閣の方針を迅速に行政各部に徹底する機能を果たしており、今後とも、その適切な運営に努めてまいります。

 また、事務副長官については、行政実務に精通し、各省庁を調整する能力にすぐれた人物を適材適所で登用しております。

 また、道路関係四公団の高速道路を永久に有料とするかとのお尋ねであります。

 現行の高速道路制度は、建設資金を借入金で賄い、完成後、利用者からの料金収入でその借入金を返済し、借入金の債務償還後は無料開放するものです。このため、道路公団改革に当たっての閣議決定においては、「現行料金を前提とする償還期間は、五十年を上限としてコスト引下げ効果などを反映させ、その短縮を目指す。」としたところであります。

 道路関係四公団の民営化後の高速道路の料金については、この閣議決定の趣旨も踏まえつつ、今後十分検討すべきものと考えており、現時点では、民営化後の高速道路について、永久に有料とすると決定しているものではありません。

 政府案と民主党案との比較についてのお尋ねです。

 今後の高速道路の建設に当たっては、債務を先送りせず確実に返済しつつ、必要な道路をできるだけ少ない国民の負担でつくることが重要であります。

 民主党案は、必ずしも全体像が明らかではありませんが、大都市以外の高速道路を無料化し道路特定財源を一般財源化するとの提案は、借入金債務の返済あるいは道路の維持管理、必要な道路の建設を行うために要する財源として、収支のつじつまが合わないと思います。債務の返済を一律に税金で行う上、大都市の高速道路の利用者はさらに料金を負担しなければならないことは不公平だと思います。

 いろいろ問題があるものと考えますが、いずれにしても、具体的な中身を明らかにしていただければ、また今後議論をしたいと思います。

 政府としては、今後、道路関係四公団民営化推進委員会の意見を基本的に尊重するとの方針のもと、国民にとって真にメリットのある改革となるよう、建設コストの大幅削減、ファミリー企業の見直し等を引き続き推進するとともに、債務の確実な返済及び必要な道路の建設が可能となる政府案を取りまとめてまいりたいと考えております。

 痛みの意味を理解しているかとのお尋ねがありました。

 私は、就任以来、二、三年の低成長を覚悟して、今の痛みに耐えて明日をよくしようと国民の皆さんに呼びかけて、改革を進めてまいりました。

 民間主導の持続的な経済成長が実現するように、新しい雇用や新規産業の創出を促進し、規制改革を進め、また、不良債権の処理など金融改革や税制、歳出の改革を進めてまいりました。

 改革を進める過程では、社会の中に痛みを伴う事態が生じることがありますが、痛みを和らげ、不安を解消するために、雇用や中小企業のセーフティーネット対策に万全を期してまいりました。

 私にはサラリーマンや中小企業の経験はありませんが、国民の痛みには常に注意を払い、これを最小限に抑えるためのセーフティーネットを十分に整備しながら、多くの国民の努力によってようやく改革の芽が出てきた今こそ、民間の活力と地方のやる気を引き出して、改革を進めてまいりたいと考えます。

 今後の経済財政運営についてでございます。

 我が国の財政状況は、主要先進国中最悪の状況となっておりまして、将来の世代に責任の持てる、持続可能な財政構造の構築が急務となっております。

 このため、政府としては、二〇一〇年代初頭におけるプライマリーバランス黒字化を目指すこととしており、この目標の実現に向けて、徹底した歳出改革を行うとともに、あわせて、金融、税制、規制の構造改革を進め、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図ることとしております。

 こうした取り組みの進捗状況については、毎年度、「改革と展望」において評価を行い、将来の展望を示すこととしており、無責任な経済運営との指摘は当たらないものと考えております。

 イラクに対する復興支援とブッシュ大統領の日本立ち寄りについてのお尋ねでございます。

 イラク復興支援は、国際社会の重要課題であり、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。ブッシュ大統領が我が国に立ち寄られる際には、こうした考え方に基づき意見交換を行っていきたいと思います。

 北朝鮮の拉致、核問題についてでございます。

 拉致問題については、現在、被害者御家族の帰国の具体的見通しは立っていませんが、その早期実現を含めた問題解決のため、国際社会の理解と協力を待ちつつ、北朝鮮側に対し、前向きかつ具体的な対応を引き続き強く求めていく考えであります。

 核問題については、米国、韓国等の関係国と緊密に協力しつつ、六者会合を通じた取り組みを初めとして、さまざまな場で北朝鮮に国際社会の一員としての責任ある対応を働きかけ、問題の平和的・外交的解決を図っていく考えであります。

 政治資金についてでございます。

 政治資金の透明性を確保しながら、広く、薄く、公正に政治資金を確保することが認められるルールをつくっていくべきであると考えております。

 また、衆議院議員の定数の問題につきましては、議会政治の根幹にかかわる問題であり、今後、国会において十分な議論をいただくべきものと考えます。

 地方分権については、政府としては、真の地方分権の確立につながるよう、地方の意見も把握しつつ、補助金改革だけでなく、交付税の改革、地方への税源移譲を行う三位一体の改革を進めることとしており、これにより、地方がみずからの支出をみずからの権限、責任、財源で賄う割合が増すこととなると考えております。

 そのうち、補助金改革につきましては、基本方針二〇〇三において、社会保障、教育・文化、公共事業、産業振興その他の各行政分野にわたる改革工程を決定しており、今後、その改革の方向性、スケジュールに沿って廃止・縮減等の具体化を確実に進めていく考えであります。

 その際、補助金の性格等はさまざまであることから、個別に事務事業の徹底的な見直しを行いつつ補助金の改革を進めていくことが重要と考えており、御提案のように、補助金の大半を一律に一括交付金化するということは、少々無理があるのではないかと思っております。

 また、予算、とりわけ公共事業の見直しについてお話がございましたが、むだなものはやめ、必要なものに重点化していくということについては、私も同感であります。

 また、公共事業については、川辺川ダムについて触れられましたが、地元の方々などの意見もよく聞くことが重要と考えております。川辺川ダムについては、球磨川流域の治水対策上の観点から、地元自治体からも必要な事業と聞いており、引き続き、環境保全に十分配慮しつつ、事業推進のための努力を続けていくべきものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 郵政事業の民営化の件につきましては、当然のこととして、小泉内閣の基本方針に沿って取り組んでまいります。

 郵政事業の民営化という問題は、国民生活に大変深いかかわりのある問題でありまして、さきに行われました総理の郵政事業の民営化にかかわる懇談会において案が示されておりますああいった論議も踏まえ、かつ、総理の所信表明の中にも示されておりましたが、幅広く国民的論議を行う等々の話がありますが、基本的に考えておかねばならぬ点は三つあると思っております。

 一つは、これを利用しておられる方々が、それを民営化された結果、どのようなメリットがあるのか。また、そういったところをよく踏まえなければわからぬという話を、今、懇談会でしておられるわけでありますので、その点も十分に考えておかねばいかぬのは当然のことだと思っております。

 二つ目は、そこに勤めておられる従業員の方々が約二十八万人、家族を含めて百万弱と思われますが、そういった方々の生活の安定という点は、二つ目に考えておかねばならないのは当然のことだと思っております。

 そして三つ目が、国全体としてこういったような観点全体で考えていかねばならぬことだと思いますので、私どもとしては、こういったことを十分に考えた上で民営化が取りまとめられますように積極的に取り組んでまいります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 菅直人君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。菅直人君。
    〔菅直人君登壇〕

菅直人君 国民の皆さんは、今の小泉総理の答弁を聞かれて、どんなふうに思われたでしょうか。持論の郵政民営化の場合は、手を振り、声を上げ、いろいろと脱線ぎみの発言もありましたけれども、それ以外の答弁は、目を下に伏せて、私が必ずしも質問した項目にないところまでちゃんと読み上げられました。これがまさに官僚主導政治の実態である、このことを国民の皆さんにぜひ御理解いただきたいと思います。(拍手)

 そして、小泉総理は、その得意分野、郵政事業について、私が明確に質問したことを一切答えられておりません。つまりは、小泉総理の言う民営化を行ったときに、郵便貯金がどうなるんですか、簡易保険がどうなるんですか。

 総理は、具体策は懇談会でと言われました。十一年前の郵政大臣はどなたですか。小泉郵政大臣じゃなかったのですか。十年以上前から郵政事業民営化、民営化と、そのことだけを言ってきた総理大臣が、いまだに郵貯、簡保をどうするかということを一つも示すことができなくて、これが何の民営化の公約でしょうか。(拍手)

 そして、マニフェストに盛り込むに当たって与党の皆さんからの賛成が得られるはずだと述べられました。そのときは、余り与党席からは拍手がありませんでした。しかし、青木参議院幹事長が、参議院で法案が来ても通さないと言われている。そんなに甘いものですかね、総理。

 つまりは、口先だけでごまかしてしまって、選挙で勝ちさえすればいいという、そういう公約だとすれば、マニフェストに盛り込むには値しない。しっかりと与党の衆議院候補者すべてがサインをした、そして、参議院も認めた公約でなければマニフェストにはならないということを、改めてこの場で申し上げておきます。どうすればそのことを実行できるのか、改めて総理にお尋ねをいたします。

 財政の運用について、地方自治体への補助金についてお尋ねをしましたが、これも明確な答弁をいただいておりません。

 平成十八年に四兆円の補助金を削減して、そして地方へということを所信表明でも言われましたが、四兆円すべて削減したら、地方へは一円も行かないことになります。そういうこともあり得るということなのかどうなのか、具体的に答弁をいただきたい。

 加えて、最も重要なことについての答弁がありませんでした。

 ブッシュ大統領と小泉総理は、まさに盟友ではないんですか。そのブッシュ大統領が日本に来られたときに、イラクに対する自衛隊派遣の要請があることはほぼ間違いないでしょう。それについて一切の答弁がないというのは一体どういうことなんですか。結局は、国民に説明ができないために逃げてしまっている。例の、フセインが見つからないから大量破壊兵器が見つからないのも仕方ないんだという、その詭弁すら聞かれなかったのは残念でなりません。はっきりと、イラクに対する自衛隊の派遣をどうするのか、いつ、どの時期にやるのか、やらないのか、財政支援についてどうするのか、明確な答弁をいただきます。

 それに加えて、もう一点申し上げます。

 総理は、我が党に対して、道路公団の改革案がないと言われました。耳をあけて聞いておられたのでしょうか。九兆円の現在の道路財源の中から二兆円弱を振り向けてもあと七兆円で、まだ道路の財源はあるわけでありまして、建設は可能であります。総理こそ、民営化したときの有料化について、有料化が永久に続くのではないかと言ったことについて、それは株式会社であるからそのときの社長が決めることだと私に予算委員会では答えられました。こんなばかな答弁がありますか。

 今の答弁も、民営化すれば会社です、会社が利益が上がらなくては成り立ちません、その民営化した道路公団株式会社が料金を無料にするという選択が本当にあると思って答弁しているんですか。それならそのことを明確にしてください。

 逃げの答弁で、自分に都合の悪い永久有料化は逃げて、そして逆に、我が党の提案をまともに聞かないで、そして批判だけをしているのは、まさに批判政党自民党になったのではないですか。

 総理に対して、もう一度、メモに目を向けないで国民に対してしっかりとこれらの問題についてお答えいただくように申し上げて、私の再質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで全部答弁したつもりなんですが、再質問されましたので、さらに補完いたします。

 郵貯、簡保の質問でございますが、私はもう既に答弁しているつもりなんです。

 まず、民営化の方針を出すことが大事だと。民営化させないと、みんな言っていたんじゃないですか。だから、来年の秋ごろまでに案をまとめると。

 これは先送りでも何でもない。独断専行を排す。民営化にはさまざまな議論があります。国民各界各層、そして政党の方々も、それぞれ意見を持っています。議員も意見があるんです。それを一年間かけていい案にまとめていこうというのですから、もうこれでしっかりした答弁じゃないですか。(拍手)

 私があれこれ専門家のような細かいことまで今決めることはしない方がいい。専門家の意見を聞いて、できるだけいい民営化案を決める。そのためには、一カ月や二カ月ではできません。来年の秋ごろまでにいい案をまとめていきたいと思います。現に、批判されている菅さんこそ、具体的な議論というものを提示していないじゃないですか。

 それと、補助金についてでございます。

 これも、年末の予算編成で具体的な額と項目が決まるんです。方針を出すのが大事なんですよ。三年間で約四兆円補助金を削減する、こういう方針のもとに、それでは予算編成のときに、幾らの額になるか、どういう項目を地方に譲るか、税源は何にするか。これは年末に、予算編成のときにははっきりします。これも、先送りでも何でもない。今まで方針を出せなかったことを、総理として方針をはっきり出したということであります。

 ブッシュ大統領が訪問されるときのイラク、自衛隊に関する御質問です。

 私は、ブッシュ大統領との会談では、世界の中の日米同盟、この重要性が増している、北朝鮮の問題、イラクの問題、テロ対策の問題、いろいろ意見交換する問題はあると思いますが、イラクの復興支援についての自衛隊の派遣につきましては、現在派遣中の調査団の調査結果を踏まえ、法律の規定するところにのっとって日本が主体的に判断すべき、決定すべき問題だと思います。

 また、道路公団につきましても、私は、既にはっきりと公約にしております。民営化という方向を出して、あの民営化推進委員会の基本的な意見を尊重してこれから年内にまとめて、来年の通常国会に法案を提出する。これだけはっきり方向を出している。

 総理大臣というのは、こうはっきり方針を出して、これに従っていい意見を集約して、いい知恵を出して具体化していくのが私は正しいやり方だと思っております。(拍手)


2003/09/29

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