2003/02/24

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156 衆院・予算委員会 

菅代表、改革なき医療費負担増を徹底批判 (民主党ニュース)

 衆議院予算委員会で24日、医療・福祉問題に関する集中審議が行われ、民主党の菅直人代表が小泉首相との直接論争に臨んだ。

 冒頭、菅代表は22日に行われたパウエル米国務長官と小泉首相との会談をめぐり、「新たな国連決議がなくても、米国のイラクへの武力行使を支持する考えなのか」と質問。国民に自らの考えを明確に示すよう求めた。小泉首相は「国際協調体制と日米同盟の重要性を考慮しながら、判断していく。これが現時点での日本政府の態度だ」などと言い放った。菅代表は「常に先延ばしのごまかし答弁だ」と断じ、国会答弁などではぎりぎりまで待って判断するとしながらも国連でははっきりと意思表示している政府の態度について、「まさに二枚舌外交だ」と厳しく指弾した。

 また菅代表は、医療費の患者3割自己負担の凍結をめぐって質問。民主党の2割据え置き案には独自の予算案の中で400億円の裏付けも与えていると説明し、3割に引き上げざるを得ないのは小泉首相が厚生大臣を務めた折、「2000年までに抜本的な医療制度改革を行う」としたが何ら実行していないことに起因するのではないかと指摘した。首相は「なかなか実現されていないことは残念なことであり、責任も感じている。今年度末までには基本方向を示す方針で検討を進めている」などと、危機感のない悠長な答弁に終始した。

 菅代表はさらに、自民党には抜本的な医療制度改革案はあるのかと追及。しかし小泉首相は「与党3党で鋭意検討を進めている」としか答えられず、現時点でもそもそも方向性すらまとめられていない実態が明らかになった。菅代表は「自らの案もないのは大問題だ」と厳しく批判するとともに、民主党がすでに2002年に「安心の医療」と題する包括的なプランを提示していることを改めて示した。


平成十五年二月二十四日(月曜日)

菅(直)委員 きょうは医療問題を中心に総理と質疑を交わしたいと思いますが、ちょっと医療とは関係のないことですが、この間のいろいろな総理との議論の中で懸案になっていることを一、二点だけお聞きしたいと思います。

 一昨日、パウエル米国国務長官とお会いになって、きょうの午前中の質疑でもそのときの議論があったようであります。端的にお伺いいたしますが、新たな国連決議がなくても、米国のイラクに対する武力行使について支持をする、そういう意思を総理がお持ちなのかどうか、国民の皆さんにはっきりとお答えをいただきたい。

小泉内閣総理大臣 何回も答弁しておりますように、まず、この問題は国際社会とイラクの問題であるということで、アメリカも国際協調体制をとるように努力しているわけであります。そういう中にあって、日本も、このような形に持っていくために、イラクに武装解除そして査察に協力を求めるような国際社会全体の働きかけ、圧力が必要だということで努力しようという点で一致しているわけであります。

 日本としては、新たな決議案が採択されるのが望ましい。アメリカはアメリカの態度があるでしょう。私は、ぎりぎりの段階までそのような努力を継続すべきだと思う。そして、仮に将来、今後、国連安保理でどういう決議がなされ、どういう対応がなされるか、まだ定かではありませんが、日本としては、国際協調体制と日米同盟の重要性をよく考えながら国益を踏まえて判断したい、これが現時点での日本政府の態度であります。

菅(直)委員 もう私も何度も総理に聞くたびに、例えば十二日だと十四日に何かがあるから、いついつだとまた次が何かがあるからと、常にそういう、そのときそのとき先延ばしのごまかし答弁。

 昨日もテレビの場面ではありますが、麻生政調会長ははっきりとこのことについて、まあ政調会長の意見としては、決議がないものであれば少しとめなきゃいけないかなというようなことを言われたり、あるいは与党三党の幹事長は決議がなくても容認するということを発言したりしているわけですけれども、総理は、国会では相変わらず、ぎりぎりまでとか、そういう言い方をされ、しかし国連の場ではかなりはっきりとそうしたことを言われていることを考えると、まさに二枚舌外交、国民の外交ではなくて、国民に対して説明する外交ではなくて、二枚舌外交であるということをあえて、きょうは本題ではありませんのでこの程度でとどめますが、申し上げておきたいと思います。

 もう一点、坂口大臣に、これも若干きょうの本題とは変わりますが、せんだってNHKの「日曜討論」で冬柴公明党幹事長が戦争反対を言うことは利敵行為だ、こういう言葉を私もテレビで見て、びっくりいたしました。かつての非国民だという言葉を何か連想させるような、そういう言葉であったように思います。

 この考え方は公明党としての正式な考え方なのか、その点について坂口大臣にお聞かせをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 突然の御質問でございますし、前回のNHKの討論会で幹事長がどういうことを言ったのか、私、見ておりませんので、それは何とも言いがたいわけでございますが、それは、そのときの発言は冬柴幹事長としての考えを言われたんだろうというふうに思っております。

 やはり平和というのが一番大事なことだけは間違いございませんし、最大限平和が守られるようにするというのがやはり我々の務めである、そういうふうに思っております。

菅(直)委員 今の坂口さんの言われたことと冬柴さんの言われたことが真反対だったものですからお聞きしたのでありまして、冬柴幹事長はその場でも撤回をされておりませんので、この点については、まあ神崎さんは、最近の報道では、新たな決議なしの武力行使には反対だ、これは党首として言われたんだと思いますが、どうもそのあたりが整合性がとれていないのではないかと思いましたので、あえて聞かせていただきました。

 もう一点だけ、きょう午後に韓国に出かけられるそうですが、日銀総裁についてはきょうの午後にもほぼ固めたいというふうにもお聞きをしておりますが、総理としてのその判断はもう固まったんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日銀総裁の人事につきましては、昨日も塩川財務大臣から、いい人物を人選してほしい、幾人かこういう名前が出ておる、しかし最終的に決めるのは総理に一任するという報告を聞いておりますし、この問題につきましても、国会の同意人事でありますから、よく国会の同意人事手続等、段取り等に支障がないように進めていかなきゃならないと思います。

 官房長官にもしかるべき対応を、こちらに、午後委員会に出る前に指示しておきましたし、今委員会があるから私がじかにできない分は、官房長官、しっかりとした対応をお願いすると言って今この委員会に来たわけであります。

 そこで、私の立場としては、国会同意が得られる前に具体的な名前を言えないんです。また、言うべきでもないんです。その点、御理解いただきたいと思います。

菅(直)委員 ちょっとおかしな話ですね。国会同意というのは、具体的な名前を挙げていただかなければ同意できるかどうか決まらないわけですから。私、別に問い詰めるつもりで申し上げたんじゃなくて、日程的にそろそろ決まると聞いたものですから、もし決まったのであればどうですかとお聞きしたんで、いや、まだだというならまだだで結構なんです。

 まさに今総理が言われたように、これは国会の同意人事でありますので、ぜひ、どなたが総理から指名されようとも、きちっと公聴会を開いてその方に出てきていただいて、その方の見識やこれまでやってこられたことについてきちんと私たちの前で意見を披瀝していただきたい、このように思っておりますが、これは当然国会が決めることでありますが、与党自民党の総裁でもある総理として、そのことについての公聴会を開くということについてぜひ同意をいただきたいと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは委員会で判断されることでありますし、今後の手続の面におきまして、今私が言ったのは、私の腹の中にあったとしても、たとえ国会に人事を求める際には、当然具体的な名前が出てきます。そのとき、これは公表していいかいけないかという問題もあるんです、人事なんですから。そういう点で非常に難しい問題もありますから、私は極めて慎重なんです。こういう点も御理解いただきまして、後々、この同意人事を得る問題につきましては、委員会にお任せしたいと思います。

菅(直)委員 それでは、本題に入りたいと思います。

 国会でいわゆる患者の三割負担という問題が、昨年、与党の強行採決で決まって、今回の予算にも、それを前提として政府案は組まれております。我が党は、他の野党の皆さんと一緒に、三割を従来どおり二割に凍結する、それに必要な四百億の予算を我が党の予算案の中に計上いたしております。

 そこで、私は、この三割、二割の問題のベースにあることについて、まず総理にお聞きをいたしたいと思います。

 総理は、一九九六年十一月から一年数カ月にわたって厚生大臣を務められました。その折に、二〇〇〇年に抜本的な医療制度の改革を行う、こういう趣旨のことを何度かおっしゃっております。その二〇〇〇年の医療制度の抜本改革というのは、今一体どうなっているんでしょうか、説明をいただきたい。

小泉内閣総理大臣 当時、菅さんも厚生大臣として、自民党と社会党とさきがけと連立政権を組んでいて、その経緯もよく御存じだと思います。その際に、抜本改革の案もいろいろ検討されまして、方向が示されました。しかしながら、なかなかそのとおりに実現できていないということについては、残念なことでありますし、また責任も感じておりますが、今後、今年度末までには基本方針を示すということで、坂口厚生労働大臣のもとでその準備がなされておりますが、私は、今回の三割負担を求める問題につきましても、今までの、菅厚生大臣時代の経緯も踏まえて対応している点も随分あるんです。御承知だと思います。

 いろいろ、費用負担の問題あるいは保険料負担の問題、さらに医療提供体制の問題、診療報酬の問題、多岐にわたっております。こういう問題につきましても、菅大臣のもとで、たしか平成八年でしたか、そういう今後の進め方の要点を踏まえて、今検討を進めているというところでございます。

菅(直)委員 大変、私が厚生大臣を務めたときのことを大事に思っていただいて、それはありがたいんですけれども、正確に申し上げますと、小泉総理が厚生大臣になられた九七年の十一月段階では、私は、さきがけを離れて旧民主党を立ち上げておりますので、厚生大臣に小泉さんがなられたときには野党の立場に移っております。その中でいろいろな議論をさせていただきました。

 そこで、もう一つ申し上げます。自由民主党には医療制度の抜本的な改革案というのはあるんでしょうか、お持ちなんでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 自由民主党は自由民主党として、今鋭意、抜本改革案というものについて検討を進めております。

 自由民主党、公明党、保守新党は今三党連立体制でありますので、そういう与党の意向も踏まえながら、政府としても検討を進めているところでございます。

菅(直)委員 ちょっと正確にお聞きしたいんですが。民主党の改革案というのは二〇〇二年六月に国民の皆さんに提出をしております。必要なら、ここにも二部か三部持ってきておりますが。

 自由民主党は、単独でないとしたら、現在の与党三党でそういう改革案をきちっと国民にお示しなのですかと聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 自由民主党との調整も必要でありますが、自由民主党は今、それぞれ議論がなされておりまして、まだきっちりとまとまった段階にない。今後よく協力しながらやっていきたいと思っております。

菅(直)委員 私は、この議論をぜひ国民の皆さんによく聞いてもらいたいと思うんです。少なくとも二〇〇〇年には抜本改革をやると当時の小泉厚生大臣が言われました。いろいろな経緯はありますが、現在の民主党は二〇〇二年に「安心の医療」という、かなり包括的な案を国民の前に提出いたしました。しかし、自由民主党は、現在の与党の中でまとまったのか、自由民主党として持っておられるのかと言ったら、いろいろ議論があって、まだはっきりしたものはありませんという答えであります。二〇〇〇年に改革をしようと言ったその党が、案が、今になっても、二〇〇三年になってもありませんというのは、一体どういうことなんですか。

 それでは、厚生省として、あるいは政府としてはそういう案をお持ちなんですか。医療保険制度ではありませんよ、医療制度全般にわたる改革の案をお持ちなのか、お聞きします。

坂口国務大臣 厚生労働省といたしましては、医療制度改革に現在取り組んでいるところでございますし、昨年、我々の考え方を明確にしたところでございます。ただ、昨年明確にいたしましたのはその骨格になりますところのみでございますから、全体のいわゆる医療制度改革というものにつきましては、その都度発表をさせていただいているところでございます。

 したがいまして、現在やっておりますこの医療制度の状況の中で、改革すべき大きな筋道は昨年お示しをしたとおりでございます。

菅(直)委員 昨年というのは、この平成十四年の八月の改革の基本方向という、これですか。

坂口国務大臣 昨年の医療制度改革の中で、その中の抜本改革としてまず手がけなければならない点というので……(菅(直)委員「これですか」と呼ぶ)はい。その医療制度の統合一元化の問題や診療報酬体系の基本の見直しの問題、高齢者医療の問題、そうした問題を提案したものでございます。

菅(直)委員 民主党の案をちょっとお渡しをしますが、どうぞ。

 民主党が出したのが二〇〇二年の六月でありますが、厚生省が出されたのが同じ二〇〇二年の八月でありまして、部分的には我が党の提案をつまみ食い的にいろいろ取り上げておられます。(発言する者あり)

 しかし、いいですか、総理、あるいは与党の皆さんもいろいろなやじを飛ばしていますけれども、金目の計算の話ばかりをするのではなくて、本当に国民にとってどういう医療制度が大事なのかという議論をちゃんとしなければいけない。自由民主党という与党第一党がみずからの案もないというところが私は大問題だと。総裁がそう言ったんですからね、ないということを。そういう意味では、私が申し上げたいのは、少し……(発言する者あり)総裁に聞いているんですから。

 そこで、少し中身の話に入っていきたいと思います。

 私は、この案をもって、いろいろなお医者さんのグループあるいは健保連あるいは経済界、労働界の皆さんとも少しずつ話を始めております。

 例えば、まず多くの国民は、何かあったら開業医のところに出かけるわけです。しかし、現在の日本では、ややもすれば、大きな病院に外来という形で最初から出かけられる患者さんも多いわけです。果たしてそのことが本当に医療供給サービスを最もいい形で受ける上でいいんだろうか。例えば、まずは開業医の皆さんが中心の診療所に出かけて、その中で、例えば、これはこういう装置がなければなかなか検査ができないとか、やはりこういう特別な専門のお医者さんのいる病院の方がいいとかという紹介がある場合に初めて病院に出かけるといったような、そういう形の方が望ましいんではないか。我が党の考え方にもそういう考え方が盛り込んでありますが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、菅さんも厚生大臣をされたからよく御承知のことだと思いますが、方向としては、大病院集中、すぐ大病院へ行くという方向をやはり改めていった方がいい。診療所には診療所のよさがある、大病院には診療所でできない設備も整っておる、そういう観点から、できるだけ大病院集中という方向というものを改善していこうというのはそのとおりだと思っております。

 また、先ほど自民党案というのがまとまってないという私の発言を取り上げられましたけれども、これは、自民党は厚生省とよく相談しながらやっているんです。いろいろな議論があります。そういう中で、その意見を調整しながらやっているという点も御理解いただきたいと思います。

菅(直)委員 私は、厚生省が、もちろん議論するのは当然だと思いますが、やはり国民の医療のあり方を考えるときに、政党は政党の責任としていろいろな関係者と話し合うことがあっていいので、ややもすれば、厚生省、まあ厚生省に限りませんが、霞が関というところは、自分たちの権限にかかわる問題あるいは財政にかかわる問題には大変深くかかわりを持とうとしますが、そうでない分野、後ほど時間があれば取り上げたいと思いますが、例えばC型肝炎の感染者が百五十万人から二百万人いるといったような問題に対しては、何か事が起きるまでほとんど手をこまねいている。

 しかし、国民にとって、今医療でどうですかといったら、何か患者を間違えたとかあるいは酸素を供給するところを違っていたとか、あるいはまさにこのC型肝炎のように、広い意味で医療行為、治療行為によって感染をしたとか、そういうところに非常に関心があるわけです。残念ながら、こういう問題は、厚生省の中からなかなか出てきません。ですから、そういう意味で私は、民主党は民主党としてそういう議論をしております。自民党もやられればいいんじゃないかと思っているんです。

 そこで、もう一点、一つの問題点を指摘したいと思います。

 実は、我が党参議院で今井澄さんがお医者さんで、この問題を大変長くやっておられましたが、昨年、残念なことに亡くなられました。お医者さんの教育のあり方について、もっと地域の治療を中心とした病院の中で研修を受けられるようにしたらどうか、あるいは今のようにアルバイトをしなければなかなか生活できないというお医者さんになりたての人たちの状況を、何とか研修を受けながらきちっと生活もできるような形にすることが必要ではないか、まさに、医療の質の問題を提起されております。

 ややもすれば、これまでは大学病院での研修、これは、ここに専門家もたくさんおられるようですけれども、大学病院というのはどちらかというと研究目的でありまして、必ずしも治療の研修にはふさわしいとは言えない分野がかなりあります。しかし、今の傾向を見ますと、どちらかといえば、治療病院での研修が従来以上に難しくなっている、こういう指摘も専門家の間でいただいております。こういった点についていかがお考えですか。

小泉内閣総理大臣 私も、今井参議院議員、亡くなられて、大変残念に思っておりますし、私は、厚生大臣在任中もその後も、今井先生とはよく話し合いをし、医療の見識というものに対しては敬意を持って、いろいろ相談なり意見を伺ってまいりました。特に、今井先生は長野県出身で、必ずしも医療機関とかお医者さんに診てもらわなくても長野県というのは健康な人が多いんだということをよく伺っておりました。

 そういう点から、私は、今井議員が言われました今まで提言なり御意見を踏まえて、これを参考にしていくことも大変いいことだと思っておりまして、いい点は大いに今後の改革に生かしていきたいと思っております。

菅(直)委員 そこで、もっとこういう本質的な議論を続けたいところですが、やはり、三割負担という問題が現実に今政府から出されているわけであります。

 総理はよく、三方一両損だと。いわゆる健康保険料を上げる、あるいは医療費を若干下げる、患者の自己負担を上げる、三方一両損だ、こういう言い方をされます。私は、しかし、考えてみますと、三方一両損なのか。つまりは、財政の穴埋めということをその三者が分担をするという意味ではそうかもしれませんが、そういう財政の穴埋めという観点だけで医療制度がこの間語られてきたこと自体が、私は最大の問題ではないかと思います。

 これは、もちろんお金の問題は重要ですけれども、例えば、公共事業の我が国のGDP比はたしか七%ぐらいになるでしょう。医療費も大体同じぐらいでしょう。多くの国では、公共事業がこんなに高くて医療費がこの程度というのは珍しいとも言われております。

 しかし、じゃ質がいいかというと、先ほど申し上げたように、確かに長野のように、例えば寒いところ、塩分をたくさんとっていたところを、今も言っていただいてありがたかったですが、今井先生たちがいろいろな活動の中で、塩分を少なくし、暖かくすることで高血圧などを少なくしていくという、健康教育という形で成果が上がったところもあります。まさにそういうことが本質的な質がよくなるのであって、三方一両損だからこれでいいんだという話には、実は質の問題が全くこの三方の中には入っていないわけです。

 そういうことを考えますと、私は、この三方一両損というのは、まさに、極めて財政当局的な判断でしかない、医療の本質の中の極めて一部分でしかない、こういうふうに思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これも、三方一両損というのは私は確かに言いましたけれども、それだけじゃないんです、言っているのは。非常にわかりやすい言葉でしたから、ワンフレーズポリティックスをマスコミが取り上げて、こればかり随分人口に膾炙されました。その点は別に非難することではありません。

 三方一両損というのは、一つの考え方であります。患者だけの負担、保険料の負担、そして公費、税金の負担、だれも、喜ぶ人は一人もいないんです。しかし、国民皆保険制度を維持するためには、これも、お互いが負担を分かち合うという面において、三方一両損という考え方があるんじゃないかということを言ったわけであります。

 もとより、健康のためには、お医者さん以外に、直す点、たくさんありますよ。まず、医療費が安いからお医者さんにどんどん行こうなんて言ったらこれはとんでもないことであって、薬やお医者さんが病気を治すものでもありません。もちろん薬も大事であります、お医者さんも大事であります。しかし、もっと大事なことは、日ごろの生活習慣、食事。正しい食生活、そして適度の運動、十分な休養、これはもう前から私は健康の三原則と言っているんです。

 そういう意味において、この国民皆保険制度を維持するためには、今言った三方一両損の考え方も必要ではないかと。これは結果的に、国民全体が、今、できるだけ安い負担で、どこでも医療に、病院でも診療所でも自由に行くことができるというこの制度というものは、やはり維持していきたいという観点から述べたということだと御理解いただけると大変いいんですけれども。

菅(直)委員 私たちも、大いにそういう医療の質に踏み込む議論に中心を据えていきたいと思って提案をしているわけですから、いただきたい。

 そこで、具体的な問題を一つだけ取り上げたいと思います。

 これは、坂口大臣でももちろん結構ですが、C型肝炎という大変深刻な問題が、本当に長年提起をされております。最近の調査では百五十万人程度、一説には二百万人程度の感染者があると言われております。これは、空気感染とか他の原因で感染する病気ではほとんどありません。私の知識が間違っていなければ、例えば輸血、例えばいろいろな、注射針を何人もに使ってそれから感染する、透析などでも感染した例が報告されております。それに加えて、血液製剤による感染が報告をされております。フィブリノゲンと言われるミドリ十字が発売した薬が、その相当の感染を生み出したことが言われております。

 今、患者さん、被害者から裁判も提起をされておりますが、厚生省は責任を、現段階では認めておられないんじゃないでしょうか。しかし、私が見るところ、薬害エイズの構造とほとんどそっくり、場合によったら出場メンバー、当時のミドリ十字の社長も同じ時期ですから、厚生省元薬務局長といった人たちが、同じメンバーが出てくるわけであります。そして、このフィブリノゲンによる感染の危険性ということについては、旧予防研究所の血液製剤部長がみずからの著書の中でそのことを指摘している。これは、厚生省の調査でそう書いてあるんですから、まさか否定されることはないでしょう。

 しかし、その調査報告の後の方では、しかし当時は、予防研究所の方からそういうことがあっても厚生省本体に対して話が来たかどうかよくわからない、そういうものに対して責任が、義務がなかったといったようなことをどこかでまた書いておられます。

 しかし、どう考えてみても、薬事法を読めば、厚生大臣が薬の安全性に対する最終的な責任を持っているわけですから、厚生省の一部門、しかも大変重要な部門からそういう指摘があったものが、もし当時、いわゆる薬事審議会なりあるいは当時の薬務局に伝わっていないとしたら、それも含めて厚生省の責任であることは疑いもありません。これでも、この問題について厚生省の責任がないと厚生労働大臣は言われるんでしょうか。

坂口国務大臣 血液を介しましての血清肝炎、今言われましたところのいわゆるC型肝炎あるいはB型肝炎も含むのかもしれません、あるいはまたそのほかの肝炎も含まれているというふうに思いますが、血液を介して伝播しましたことだけは間違いのない事実でございます。

 したがいまして、戦後ずっと続いてまいりました輸血の中でそうした広がりが起こったことも事実でございますし、血液の中で起こるといいますことは、それは、血液からつくりました製剤、すなわち多くの血液を集めてつくりました血液製剤からこれまた起こるということも十分考え得ることでございまして、それらのことを念頭に置いてそれは使用しなければならないものであったというふうに理解をいたしております。

 したがいまして、総論的なことで申し上げれば、私は、そうしたことに注意をしつつ今までの医療機関はそれらの製剤を使ってきたというふうに理解をいたしております。

 このフィブリノゲンの一企業に対します問題につきましては、今裁判になっているわけでございますから、それは裁判にひとつゆだねるということにせざるを得ないというふうに思いますが、全体で言えば、私は、そうしたことは事実あったというふうに言わざるを得ないと思っております。

菅(直)委員 あとは同僚議員に譲りますけれども、今、最後の一言だけは、厚生労働大臣、いただけない言葉だったと思います。つまりは、一企業がつくった製薬については裁判だから言えない、これでいいんですか。薬というのは一企業がつくって勝手に売れるんですか。薬事法上、最終的にはすべて厚生大臣が認可をおろすんですよ。つくったのがだれであっても、最終的責任は厚生大臣にあるんじゃないですか。一企業の問題で裁判だから自分は関係ない、この発言だけは少し変えていただかなきゃいけないと思いますが、いかがですか。

坂口国務大臣 私が申し上げましたのは、血液を通じてC型なりB型なりの肝炎が伝播したことを、それは間違いのない事実だということを私は認めた上で言っているわけでございます。

 したがいまして、その血液を多く使って、多くの人の血液を使ってつくりました血液製剤、それは可能性としてはあったわけでありまして、その可能性というものをどれだけ皆さん方に理解をしてもらう務めをしたかということが、今問題になっているのだろうというふうに思います。そこをどう裁判が判断されるかということだろうというふうに私は理解をいたしております。

菅(直)委員 きょうはこれで終わりますが、今の答弁は、やはり厚生省が本来とるべき注意義務あるいは安全性を十分にやってこなかったということを、厚生大臣もよくおわかりだと思うんですが、やはりそこはきちんとある段階で表明をされて、そして百五十万人ということになると、これは裁判というよりも、行政的に、政治的に何らかの対策をしっかりと立てなければならない大問題でありますから、そういう観点から、ぜひ前向きの取り組みを最後にお願いして、私の質問を終わります。

藤井委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。


2003/02/24

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