2003/02/06

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156 衆院・予算委員会 

菅代表、経済・外交で対案を明示  (民主党ニュース)

 衆院予算委員会で6日午後、2003年度予算案に関する質疑が行われ、民主党の菅直人代表が小泉首相と2度目の論争を戦わせた。終始、論点を整理して執拗に追及・提案する菅代表に対し、小泉首相はじめ閣僚は説明責任を回避した、不明確な答弁を重ねた。

 菅代表は冒頭、民主党版平成15年度予算案を作成したことを報告。「本来なら民主党の予算案を国会に提出し、内閣提出の予算案とどちらがいいか議論したいところだが、残念ながら現憲法ではかなわない。そこで予算委員会での質疑を通じて、民主党案を国民に示し、小泉内閣案とどちらが日本の将来にとって望ましいか、議論したい。逃げないで真正面からの答弁を」と呼びかけた。主な論点は以下の通り。

●イラク情勢への日本の対応 >>

 菅代表はイラク情勢への川口外相の考え方を質問。午前中の同委員会で「イラク査察で疑惑を裏付ける証拠が出ないのは、イラクが協力しないことに問題がある」といった主旨の答弁をした川口外相に対し、菅代表は「つまりは予め『有罪』を断定したうえで、自白しないのはおかしいと迫っていることに論理的にはなる」と指摘。政府が大量破壊兵器の査察の実行ではなく、あらかじめイラク政権の武装解除を求める立場をとっていることを問題視した。

 また、6日未明にパウエル米国務長官がイラクの査察妨害に関する録音・写真を公表したことをめぐって、「ロシアやフランスも結局のところ、査察の継続が必要だとの認識を示している。日本は新たな国連決議なしの米国の軍事行動を支持するのか」と質した。それに対して小泉首相は「イラクが懸念を払拭していない。むしろ深まったと認識する。国連の査察委員長がイラクを訪れて協議した結果、その後の国連安保理での議論などをふまえ、日本としての最終判断を下す」とした上で、「もうひとつの安保理決議が出されることが望ましい」とした。

●北朝鮮に対する姿勢 >>

 菅代表が「北朝鮮に対する韓国の太陽政策に対し、首相は支持を打ち出していた。現在もそうか。必ずしもそれが悪いとは言わないが、イラクと北朝鮮に共通する大量破壊兵器の開発疑惑を見ると、北朝鮮の方が日本にとって大きな脅威ではないか」と追及。これに対し小泉首相は、「イラクと北朝鮮は似ているが、経緯が違う」などとし、北朝鮮に対しては「平和的解決に向けて関係国と緊密に連携して働きかける」とする一方、「イラクはクウェートに侵攻した後、停戦決議に10年以上違反し、大量破壊兵器を使用した経緯がある」と強調し、国際社会と協調した対応が必要だとした。菅代表は日本の首相であるならば、イラクより北朝鮮の脅威を重く受け止め、それをいかにして取り除くかに心血を注ぐべきではないかと注文。また川口外相に対し、北朝鮮における人権抑圧について、国連の人権委員会など国際的な機関に対し、現地調査の実施を強く働きかけていくべきだと提案した。

●財政健全化の目標と実績 >>

 菅代表は、小泉首相が就任以来、「骨太の方針」等で、2010年初頭のプライマリーバランスの黒字化を目指すとしてきた点について、「前進しているのか、それとも後退か」と塩川財務相に質問。塩川財務相は「一時後退したが、2013年をめどにプライマリーバランスをゼロにする方向で進めている」となどとした。菅代表は小泉首相就任後のプライマリーバランスの推移をパネルで見せ、「(方針は繰り返しだされているが)実際には一度として上にあがってはいない。これで前進といえるのか」と指弾。併せて、こうした後退が1年9ヶ月まえに発表した税収見通しの誤りに起因することを明らかにした。

 この点への答弁を求められた塩川財務相は、最初、椅子から立ち上がらず答弁を回避しようとしたが、議長に連呼されてしぶしぶ起立。「骨太の方針を出した折りの税収見通しは少し間違っていたのは事実」として、見通しの誤りを認めた。

●デフレ克服・行財政改革の現状 >>

 まず菅代表は、2002年の初頭に出された「改革と展望」と03年になって出された改訂版との違いを確認。02年版では、02年の1年間の集中調整期間ではデフレ克服が最重要課題と位置づけられ、その後は「物価上昇はプラスに転じると見込まれる」とされていたが、今年の改訂版では集中調整期間をまず1年延ばし、その上で見通しを「デフレは克服できると見られる」と修正していることを明らかにし、「だいぶ腰が引けてる」と政府の姿勢を批判した。

 菅代表は民主党版平成15年度予算案に盛り込んだ「100万人創出予算」「地方分権推進予算」「住空間倍増予算」などについて具体的に説明し、国民の現状に即した税のあり方について小泉首相はじめ閣僚に提言した。


平成十五年二月二十四日(月曜日)

菅(直)委員 きょうは、一月二十三日の補正予算の審議に続いて、私が代表になってから、総理とは第二ラウンドということになります。この間に、民主党は、民主党としての平成十五年度予算案を作成いたしまして、昨日、発表いたしました。本来なら、我が党民主党の予算案を国会に提出して、内閣が出したものとどちらがいいかという議論をしたいんですけれども、残念ながら、現在の憲法は、内閣にしか予算を提出する権限を認めておりません。

 そこで、この予算委員会の場で、私たち民主党の予算案を、いわば国民の皆さんに提示して、小泉内閣の予算と民主党の、私、菅直人内閣の予算と、どちらが国民にとって望ましいものなのか、日本の将来にどちらが望ましいものなのかを真正面から議論いたしたい、このように思っております。

 いろいろとリングの外からやじなども飛んできそうでありますけれども、そうした雑音にはひるまず、戸惑わされず質問をいたしますので、どうか総理大臣も逃げないで真正面から答弁をいただきたい、そのことを冒頭に申し上げておきます。

 さて、川口大臣、きょう朝の質疑の中で、あなたはたしか北側さんの質問に対して、イラク査察によっていろいろ疑惑、疑惑と言うけれども、確たる証拠が出ないのはイラクが協力をしないんだから、そこに問題があるんだ、こういう趣旨の答弁をされましたが、それで間違いありませんね。

川口国務大臣 わかりやすく申し上げるという意味で、少し乱暴に申し上げますがという前提をつけて申し上げたことをおっしゃっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、査察をした場合に、イラクは過去にさまざまな疑惑を残しているということがあるわけでございます。それは、例えばUNSCOMという、今のUNMOVICの前のところの疑惑としても、VXとかボツリヌスとか炭疽菌とか、いろいろあるわけでございますね。それをどうやって廃棄したか、その廃棄をした証拠、あるいはだれが廃棄をしたか、そういったことをイラクが見せなければいけない、これが一四四一の言っていることであるわけです。

 そして、査察をした結果、何もそういうことが出てこないということであれば、これはイラクが能動的に協力をしていないことである、そういうことを申し上げたわけです。

菅(直)委員 私は、イラクに大量破壊兵器の疑惑はある、かつてクルドに使用した、あるいはイラン・イラク戦争で使用した、そういういわば過去の経歴があるわけですから、そのことは当然よくわかっております。

 ただ、川口大臣の論理は、証拠が出ないということは証拠を出さない方が問題だ、つまりは、冒頭から……(発言する者あり)いいですか、尾身さんとかいろいろ言われたかったら、そちらに座ってやってください。いいですか、これは重要なところですから。あらかじめ有罪というふうに断定した上で、あなたはやったんだろう、だからそのやった証拠を出しなさい、いやそんなものはやっていないから出さないと言ったら、いやあなたはやっているんだから、それを自白しないのはあなたの方が悪いんだと、あらかじめもう有罪であることを断定した形に論理的にはなるんですね。

 つまりは、査察というものがどういう意味を持っているのか。初めから武装解除を求めている、初めからイラク政府の政権を放棄しろ、武装解除をしろということを求めているのか、大量破壊兵器が本当にあるかどうかを、査察を求めているのか。論理的に、私は、川口大臣の先ほどの答弁は、微妙に言いごまかしていますけれども、有罪を断定した上での、つまりは問題の見方になっている。そうじゃありませんか。

川口国務大臣 決議の一四四一に書いてあることをちょっと読み上げさせていただきたいと思いますけれども、まず、ちょっと捨象しますが、イラクは、「義務の重大な違反をこれまでも犯しまた依然として犯していることを決定する。」というふうに書いてあるわけでございます。そして、その後でございますけれども、これも途中から読みますけれども、「この決議により、同理事会の関連の決議の下での武装解除の義務を遵守する最後の機会を与えることを決定し、」以下云々と続きますが、ということを書いてある、そういうことでございます。

菅(直)委員 総理、きょうの未明というべきか、国連安保理でパウエル長官が発言をされました。

 総理は、ブレア・イギリス首相と電話会談もされたようでありますが、そういうことを踏まえて、結局のところ、パウエル発言を含むこの中で、どういう判断をされたんですか。例えば、ロシアやフランスは、いろいろニュアンスの差はありますが、査察の継続が必要だという認識を示しています。総理は、先ほどの同僚議員の質問もありましたが、いや、もはやこれ以上の査察はしてもしなくても同じだ、もうこれで一定期間たったら、新たな国連決議がなくても、アメリカが軍事行動を起こすことに対しては支持をするんだ、そういう腹を固められたんですか。はっきり言ってください、イエスかノーか。

小泉内閣総理大臣 これは、今朝、パウエル国務長官の報告によって、イラクが懸念を払拭していないという疑念が深まったと私は認識しております。

 そしてさらに、これからブリクス査察委員長等がイラクを訪問し、協議します。その結果をまた国連安保理に報告いたします。そしてまた、国連安保理でいろいろ議論が出てくるでしょう。

 そういう中で、私は、日本として最終判断を下しますが、結論からいいまして、仮にイラクが遵守していないという場合、私は、もう一つの新しい安保理での決議がなされることが望ましいと思っております。

菅(直)委員 初めて、新しい安保理決議についての意見が、私が聞いたところでは初めて言われましたね、望ましいということを。

 そこで、少し話を進めたいと思います。

 小泉総理は、私が前回に質問したときにも、他の議員に対しても、韓国の金大中大統領あるいは盧武鉉次期大統領が太陽政策をとっておられることについて支持すると言われましたね、どうですか。

小泉内閣総理大臣 私は、支持しますと言いました。

菅(直)委員 私は、必ずしもそのことが悪いと言っているんじゃないんです。必ずしも悪いと言っているんじゃないんですが、イラクと北朝鮮というこの二つの問題は、大量破壊兵器の開発疑惑ということでは共通です。そして、ちょうどきょうのニュースを見ておりますと、ラムズフェルド・アメリカ国防大臣は、北朝鮮には核があるんではないか、数発は近いうちに保有するんではないか、こういう発言をしております。

 イラクはまだ、私が知っている限りは、イラクに核兵器があるというところまで断定をアメリカはしていないと思います。つまり、ある意味では、イラクと北朝鮮は大量破壊兵器を開発し保有しているんではないかという疑惑では同じで、見ようによっては北朝鮮の方が核兵器保有の可能性がイラクよりは高い。我が国と近い、遠いの話はまた後にします。そういう共通性がある中で、総理が韓国のそうした太陽政策を支持すると言われることと、イラクに対する姿勢との、何かすとんと落ちないんですね。説明をしてください。

小泉内閣総理大臣 イラクと北朝鮮は似ているではないかというお話ですが、似ていないんです。

 説明させていただきますが、イラクはクウェートを侵略したんです。そして、湾岸戦争が起こり、現在まで停戦決議なんです。この停戦決議に十年以上違反している。それを国際社会が一致して、この停戦決議を守りなさいといって今働きかけているんですが、守っていないんです。そういうことから、私は、イラクと北朝鮮につきましては違うということを申し上げたいと思います。

菅(直)委員 どうですか、自民党の皆さん、これでいいんですか。あなた方の総裁ですよ。経緯がいろいろ違うということと、現在問題になっている大量破壊兵器を、一方はNPT条約からの脱退を宣言し、一方は今現実に査察を受けている。イラクが停戦決議に違反しているところが、何かこの大量破壊兵器の疑惑ということと決定的な差になるんですか。

 私は、そうじゃないと思う。基本的には、もし核であるとすれば、核拡散という問題からしても、我が国の核に対する政策からしても、あるいは生物化学兵器という幾つかの条約はありますが、そういう問題からしても、そういうルールに違反した形でそれを開発することは大変問題だし、もっと言えば、先ほどあえて次にと言いましたけれども、我が国の安全保障にとっては、イラクの大量破壊兵器よりも北朝鮮の大量破壊兵器の方が大変大きな脅威である。当たり前のことじゃないですか。

 それなのに、単に、クウェートの停戦協定が守られていないから違うんだ、片方は太陽政策を支持するけれども、片方は太陽政策となるのかどうかわかりませんが別の立場だと。私が言っているんじゃないですよ。これは総理が言っているんですからね。もう一回説明してください。

小泉内閣総理大臣 北朝鮮とは違うということは、北朝鮮につきましては、日米韓の緊密な連携をすることによって、今働きかけているんです。ロシアも中国もこれを支持している。そしてなおかつ、この北朝鮮に対しては、我々としても平和的解決に向けてこれからも働きかけを行っていくことが重要である。

 イラクについては、現に大量破壊兵器を過去に使用した経緯があるんです。しかも、安保理決議上の義務の重大な違反を続けていることが、既に安保理決議一四四一などによって認定されているんです。そして、安保理決議一四四一はイラクに最後の機会を与えるとして、今イラクは査察に十分な協力を行っていないというのも、これは国際社会の一致した見方なんです。

 これは北朝鮮とはっきり違うでしょう。

菅(直)委員 本当に、これが我が国の総理大臣の言うことですかね。何か教科書の棒読みでもしているんじゃないですか。日本にとっての脅威が、イラクの大量破壊兵器と北朝鮮の破壊兵器とどっちが大きいんですか。国民はそのことを心配しているんじゃないですか。そのことをベースにして聞いているんですよ。

 私も、北風政策がいいか、太陽政策がいいか、一概になかなか言えません。北風政策でやってもなかなかうまくいかないときもある、太陽政策でいって、うまくいきそうに見えてもなかなかうまくいかないときもある。しかし、総理は、その太陽政策を支持すると言われた。それには何らかの、いや大した脅威でないというのか、いやいや太陽政策の方が大量殺りく兵器をなくすることに近道だというのか。

 現実に、九月でしたか、ピョンヤンに行かれて平壌宣言をサインされた後に、北朝鮮はNPT条約からの離脱を宣言し、査察官を追い出し、査察のカメラを全部封鎖したんですよ。現実に、黒鉛炉から出ている核物質からプルトニウムを取り出すかもしれない、あるいはそれを稼働させる準備に入ったとも言われているんですよ。

 そういう中にあって、いや、教科書みたいな、何とかのイラクの何とかが、何とか条約だから、何とかだったから。私は、そうじゃないと思う。(発言する者あり)

 いいですか、ちょっと扇さんは後からちゃんと質問しますから、そこからやじを飛ばさないんです。いいですか。

 これは国民の皆さんの前で、私が総理だったらこう言いますよ。私が総理だったら、イラクの大量破壊兵器の問題と北朝鮮の大量破壊兵器の問題は、大量破壊兵器という点では共通の国際的な問題がある。その中で、イラクのことはもちろん国連を中心にいろいろな経緯があるけれども、北朝鮮のことはより日本に対して脅威である。だから、日本としては、イラクも重要だけれども、もっと重要なのは北朝鮮の脅威をいかにした形で取り除くか。そのためには、太陽政策もあるかもしれない、北風政策もあるかもしれない、イージス艦を戻すこともあるかもしれない。つまりは、そういうことをちゃんと国民の前で議論をするのが我が国の、日本の総理大臣じゃないですか。何か教科書の端っこを読むようなことはやめてください。

小泉内閣総理大臣 教科書と言われるぐらい、いかに私が丁寧に答弁しているかというあらわれだと思います。

 北朝鮮の破壊兵器もイラクの破壊兵器も、日本にとって、世界にとって脅威であることには変わりありません。それだけに、日本一国だけでは対処できない。各国と協力して対処していかなきゃならない問題であり、特に北朝鮮については、韓国、お隣、同じ民族であります。金大中政権、そして盧武鉉新政権も、ともに太陽政策を支持している。私も支持しておりますので、今後とも、韓国とも、アメリカとも、ロシア、中国とも連携しながら、北朝鮮の問題については当たっていきたいと思っております。

菅(直)委員 私どもも機会を見つけて、金大中あるいは盧武鉉次期大統領と、この問題で意見交換をしてみたいと思っています。

 そこでもう一点、北朝鮮の人権抑圧に対して、国連には人権小委員会というものがあって、いろいろな国を現地調査しているはずです。我が国は、北朝鮮、在日の人で北に渡った人、その奥さんで渡った人、いろいろな人がいます。関係の深い国です。今脱北者の問題もいろいろ問題になっています。この小委員会に対して、そうした北朝鮮国内の人権に対する調査を要請したことはありますか。

川口国務大臣 我が国が北朝鮮の脱北者の問題等について、非常にこれについては懸念をもちろん持っているわけでございまして、特に我が国の邦人であった、日本人ですね、それから在日の朝鮮人であった方については特に強い関心を持っているというのは、再三国会答弁でお答えを申し上げているとおりでございます。

 それで、これを我が国は、中国あるいは韓国、アメリカと連携をしながら解決をしていくと同時に、国際的な機関、例えば国連の人権委員会の場ですとか、そういうところであるいは働きかけているということもやっておりますし、人権委員会における決議、この中で強制失踪という言葉も我が国が主張して入れてもらっている、そういうことでございます。

菅(直)委員 なぜ最後のポイントだけ答えないんですか。そういうことをやっておられることは知っています。現地調査の要請をその小委員会に出されたことがありますか。

川口国務大臣 これはきちんともう一回確認をしたいと思いますけれども、私が今承知をしている範囲では、それはまだ行っていないというふうに思います。

菅(直)委員 たしか与党、公明党の皆さんもその関係者に会われてそういう要請を受けられたと聞いておりますけれども、なぜなんでしょうね、これだけ日本に関係の深い人が北朝鮮で人権抑圧を受けている可能性が高い中で現地調査という、これはなかなか、それはイラクはオーケーしましたが、北朝鮮がオーケーするかどうかわかりませんよ。しかし、少なくともそれを要請するということはやるべきだと思いますが、総理、どうですか。

川口国務大臣 方法はいろいろあると思います。我が国が考えておりますのは、どういう方法で働きかけるのが一番効果があるか、そういう観点で考えている、そういうことでございまして、北朝鮮と我が国は直接のチャネルもございますから、そういう場で話をしたりということをやっております。

菅(直)委員 なぜそういうふうに逃げるんですか。総理、どう思われますか。ちょっと答えてください。

川口国務大臣 いろいろなやり方というものがありまして、それを具体的に今の時点で北朝鮮と二国間の話し合いの場、そこでこの前十月にはいたしましたし、それから、そういったチャネルを利用して、使って、どういう方法が一番いいかということを、そのときの状況を見ながら政府としては考えているということでございまして、現在は、直接に働きかけたり、あるいは中国を通してということもやっております。

菅(直)委員 北朝鮮のことについて、政府あるいは与党は一生懸命だということを言っておられるし、私もそれは認めます。しかし、今のことを聞くと、私は、現地に調査団を出すことを要請するのがほかのことと矛盾するとはとても思えない。あるいは、北朝鮮との何かのやりとりが裏であって、いや、それだけはやめてくれと言われているのか、説明をちゃんと聞かなければ――扇さん、そこでやじを飛ばすんだったら、後でマイクの前でやってください。

 ですから、そういう意味で、理由もなく説明をそういった形で……(発言する者あり)いいですか、この問題に対して総理大臣としては、じゃ川口さんの言われるとおりでいいわけですね。それだけ聞いておきます。川口さんの言われるとおりでいいわけですね。

小泉内閣総理大臣 いろいろ御提案を検討して判断したいと思います。

菅(直)委員 それでは、次の問題に移ってまいります。

 総理大臣、もっと大きなことということをせんだって総理は言われました。もっと大きなことがあるから、まあ三つの公約は大したことはなかったんだと言われましたが、そのもっと大きなことというのは総理にとって何なんですか。総理が、三つの公約を守らなくてももっと大きなことをやるんだと言われましたが、そのもっと大きなこととは何ですか。

小泉内閣総理大臣 まず靖国の参拝、十五日に行くべきか、確かに約束だった。しかし、菅さんも、もちろんいろいろな方も、十五日は外した方がいい、もう盛んに言われたわけです。もちろん十五日に行けと言う方もおられました。そういう中で、いろいろ国際情勢、近隣諸国、国内情勢、総理大臣の立場も考えました。そういう中で、約束は守れなかったけれども、十五日は外した方がいいなということで十三日に伺った。

 国債三十兆円枠。これを守るのも大事であります、確かに。しかし、これはいろいろ経済情勢を見て、この三十兆円枠を断固として守って果たして今の経済情勢にとっていいかどうかということも考えると、これは、私のこの約束にこだわって一切この三十兆円枠を守ってやるかというのと、大胆、柔軟に対応するのとどっちがいいか。経済は生き物だということで、これを外す方がいいかどうかという点を考えて、この三十兆円枠も、税収減もありましたけれども、もろもろのことを考えまして、三十兆円枠も外さざるを得なかった。

 ペイオフもそうであります。こうして金融不安を起こさせちゃいかぬ。まだ金融改革がきちんと進んでいないという状況において不安を与えないために、ことし四月よりも十七年四月の方が国民に不安を与えないんじゃないかということでペイオフも延期した。

 しかし、この基本というものはやはり大事だ。なおかつ、現在、行財政改革、これを進めていかなきゃいかぬ。特に私が毎々言っております、税金のむだ遣い構造をなくそう。過去にはうまくいっていた制度や機構も時代に合わない面もある。そういう点を考えますと、根本的に直さなきゃならない点もたくさんあるが、例えて言えば、具体的に言えば、郵政三事業から始まって財政投融資、そのもとにある特殊法人改革、これはもう道路公団もあります、あるいは石油公団もあります、いろいろあります、特殊法人。この税金を使う構造、将来にいろいろ負担を残しかねないいろいろな問題、これにやはり切り込む、これがやはり行財政改革で大事じゃないか。

 そういう点につきまして、私は基本的な路線を変える気はありませんし、こういう改革をしないと、将来的に持続可能な民間主導の経済成長は果たせないのではないかということで、金融改革、税制改革、規制改革、歳出改革、こういうことをあわせて進めていくことによって、改革なくして成長なしという本来の大きな目標に向かって進むことによって活力ある社会を実現していこうということが、本来の目指すものではないかなと私は思っております。

菅(直)委員 私は一言聞いたんですが、わけのわからない話が大分長く続きました。

 私の方から今の総理の言葉を解釈すれば、やはり行財政改革を進めるという大きなことのために、まあ個々のことではいろいろあるということかなと思います。

 そこで、財政改革、財政健全化について、総理は就任以来、骨太方針とかいろいろな所信表明、いろいろなことを言われています。大体二つ言われていますね。これは財務大臣にもお聞きしますから。一つは、先ほどもう放棄された三十兆の問題と、もう一つは、二〇一〇年初頭のプライマリーバランスの黒字化、つまりは、過去の借金の利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない財政を目指す。

 まず、財務大臣に聞きましょう、塩川さん。あなたも一年九カ月間この内閣で財務大臣をやっておられますが、この方向に向かって前進しているんですか、それとも後退しているんですか。

塩川国務大臣 一時後退いたしましたけれども、これからの方向として、二〇一〇年の初頭、私たちの方針といたしましては、二〇一三年をめどにプライマリーバランスをゼロにするという方向で向かっております。

菅(直)委員 それじゃ、このパネルをごらんいただきたい、あるいは手元にはお渡しをしております。

 総理がまさに総理大臣に就任された直前ですが、二〇〇一年、森内閣のときのプライマリーバランスは、差額が二十一兆五千億でありました。そして、昨年出された「改革と展望」では、上にかいたグラフのように、これが十八兆九千億から十八兆になり、十五兆八千億になって、ずっと行って二〇一〇年ごろにだんだんゼロに近づくという、こういう試算になっておりました。これは政府が発表されていますからね、閣議決定で。

 しかし、実際はどうなったかというと、二〇〇二年、マイナス十八・九兆という形で少し改善するどころか、今財務大臣も言われました、逆方向に進んだ、マイナス二十六・五兆まで差額が広がりました。そしてことしの予算、予算段階でも、マイナス二十六・九兆まで下がっています。しかし、平成十四年と同じような補正予算を組むとすれば、さらにこれが五兆程度下がる可能性があります。
 つまりは、二〇〇一年、あるいは総理が就任された二〇〇一年の四月から二〇一〇年に向かって山に登るんだと言われている、そう書いてはありますけれども、一度として山の上には向かっていない。前は向いているかもしれないけれども、ずるずる下がっているばかりじゃないですか。これで前進と言えるんですか、財務大臣。

塩川国務大臣 数字で示しておられるように、二〇〇二年でどんと落ちましたのは、前内閣、前々内閣からのずっと持っておりました要するに負債額を表へ正式に出してきた、それを国債化にしてきたということがございました。そして、二〇〇三年で横になりましたことは、これは要するに、前年度から繰り越してまいりました国債を表面化してきたということでございまして、あえて二〇〇二年、二〇〇三年に新規のやつの発行、増額によって起こってきたものではなくして、当然に処置しなけりゃならないものを処理したということでございまして、要するにスタート台を二〇〇三年に持って、今後のプライマリーバランスの改善を図るということであります。

菅(直)委員 今の財務大臣の答弁はうそですからね、はっきり言っておきますけれども。

 じゃ、何でこの上の数字を「改革と展望」で試算を出したんですか。あなたは閣僚じゃないんですか。これは閣議決定ですよ。平成十四年一月二十五日の閣議決定の中で、その添付資料の中に、参考資料の中にこの上のグラフがあるじゃないですか、これはこの数字から私がつくったグラフですが。

 つまり、あなたは、いろいろな一時的な要因で下がったので、自分のところの責任はこれからだと言うけれども、そうじゃない。一年九カ月前、そして一年前に見通した数字から大幅に下がった。昨年も、平成十四年度の審議のときも言いましたが、税収見通しを間違ったんですよ。あえて言えば、総理大臣以外で税収見通しの一番の責任者はあなたじゃないですか。それが、天気が悪かったからみたいなことを言わないでください。間違ったんですね、見通しを。

藤井委員長 塩川財務大臣。
 いやいや、塩川財務大臣を指名していますから。塩川財務大臣、お答えしてください。指名していますので、まず塩川財務大臣、それから竹中金融大臣。

 塩川財務大臣、まず答弁してください。

塩川国務大臣 それは確かに、骨太方針を出しましたときにその数字を出したんですが、「改革と展望」を後に出しました。そのときの見通しは、当初のことでございましたので、確かに見通しは少し間違ったということは事実です。

竹中国務大臣 「改革と展望」の試算は参考試算でありまして、閣議決定ではありませんが、これは私の内閣府の方でやっておりますので、その中身を御説明させていただきます。

 まず、この「改革と展望」で数値を出すというのは、毎年毎年ローリングをしていくというふうに決めております。これは、アメリカの予算教書なんかでもそうでありますけれども、まさに経済は生き物でありますから、さまざまな状況の変化が起こります。その状況の変化に対応して、政府として説明責任をきちっと果たすために、これは毎年毎年見直していく。現に、アメリカの予算教書の中の見通しなんかも、ことしは物すごい変化をしているわけであります。

 ちなみに、しかし八・九兆円悪化している中身は何かということは、これはきちっと精査しなければいけないと思っております。八・九兆円の悪化のうちの中身の四兆円は、足元の発射台の税収見積もりが違ったこと。これは税収見積もりの発射台が違った。発射台というのは、実は十三年度の税収見積もりが違っていたというところに端を発しております。これは、残念でありますけれども、発射台が違ったということは認めなければいけないと思います。

 そのほかの四・九兆円は、今回、不良債権処理をするために、新たな事態に対応するために補正予算を組んで、その歳出増が実際にはこの年度に出てくる、三兆円ぐらい出てくる、さらには経済活性化のために先行減税を一・八兆円やった。まさしく経済が生き物のように変わっていく中で、政府として積極的に対応して、それを取り込んだものになっているわけでございます。

 しかし、重要なことは、こういった新たな対応を行った後も、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復させるというシナリオは十分に達成できる、そのことをこの試算はかなり精緻なマクロモデルをもって示しているわけでございます。

菅(直)委員 いいですか、総理、話をきちんとベースからもとへ戻して言いますと、総理が大きなことと思われたのは行財政改革、そして、財政改革については三十兆という目標はやめたけれども、二〇一〇年初頭のプライマリーバランスの回復という方向は変えていない。今の竹中さんもそう言われました。しかし、どう見ても、山に登るんじゃなくて下っているんじゃないですかと私は言ったんです。塩川さんは半分認められました。今の竹中さんも、私の知識が間違っていなければ、うそを言っています。

 平成十三年の発射台が違ったと言うけれども、平成十四年の税収見通しは間違わなかったんですか。それが発射台じゃないんですか。その発射台が間違ったから、二兆五千億の穴埋めのためにプラス二兆五千億で、五兆円の補正予算をついせんだってここでやったばかりじゃないですか。発射台というのは十三年だけで決まるものじゃありません。十四年の初頭の見通しが十四年の後半で間違ったじゃないですか。これは小泉政権の発足後ですよ。違いますか。

竹中国務大臣 私が申し上げたのは、十四年度の税収見積もりは何に基づくかというと、十三年度の実績見込みに基づいて、そこが発射台になって実は予測を行うわけでございます。その平成十三年度の実績見込みが、今から検証してみるとかなり違った、その意味で発射台が違ったということを申し上げているわけで、うそを申し上げているわけではございません。

菅(直)委員 それじゃ、神武元年からということになるじゃないですか。自分の内閣でないときのことに責任を押しつけて、それで済むんですか。前のことだってわかるじゃないですか。そんな無責任なことを言うんだったら、国民の前で説明責任を果たしていませんよ。十四年初頭には、これだけ税金が取れるはずだといって予算案を出されたじゃないですか、去年。それが違っていたからといって補正を出されたじゃないですか。それなのに、全部十三年の責任で、私は知りません、そんな言いわけが国民に対してきくはずがないじゃないですか。

 そこで、次に話を進めます。

 デフレについてどういうふうにこの二つの、二つという意味は「改革と展望」の昨年の二〇〇二年の一月に出されたものと、ことしに出された改定とでどうなっているのか。

 まず、集中調整期間というのを一年延ばされましたね。そして、デフレについてはこの期間、すなわち、これは二〇〇二年ですよ、二〇〇二年からの集中調整期間の間に最も重要なことはデフレの克服だ、いろいろやってみたら、デフレも克服され、物価上昇はプラスに転じると見込まれると二〇〇二年の「改革と展望」にあります。ことしの「改革と展望」の改定案には、集中期間をまず一年延ばした、延ばした上で、またこの期間の後には、ですから一年落ちているわけですね、おりているわけですよ、「後にはデフレは克服できるとみられる。」、大分腰が引けていますね。つまりは、一年たったら目標が一年延びて、しかも克服できると言ったのが、克服できると見られる、これが「改革と展望」の二つの比較です。

 前に進んでいるんですか、後ろに進んでいるんですか、言ってください。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、経済の状況を見ながらローリングをしていくというのがこの「改革と展望」の、アメリカの予算教書に倣った非常に重要なポイントです。

 そこで、一年間で何が一番重要な変化であったかということになりますと、残念ながら、実質成長率はそこそこいったんだけれども、デフレが予想よりやはり厳しい。このデフレの問題というのは、世界の中で日本がフロンティアで直面している問題でありますから、それに関しては改めて政府、日本銀行一体となってさらなる政策が必要であるし、不良債権の処理も加速させなければいけない。これは、正直言って、この一年間に、我々が予想していた以上に厳しい問題として学んだことであります。それに対処するために不良債権問題を、まさに処理を加速する、そのために集中調整期間も一年延ばす、それに向けて改めて政府、日銀が新たな体制をとってこのデフレを克服していくという決意を述べているわけであります。

菅(直)委員 結局は見通しが間違ったということでしょう。だって、デフレについて先ほどの二〇〇二年の方は、こういうことをやればデフレは克服できると書いてあるけれども、予想以上にデフレが激しかったというのは、予想が間違って、デフレについても前に進めると思ったけれども、一年目標を延ばしてもまだ危ないというふうに見通しを間違った。

 総理、近いうちに何か与党で、いろいろ党首同士で集まられるようですが、何かデノミでも考えているんですか。

小泉内閣総理大臣 与党と会うのは、たまに会いますが、いつ会うか、まだ、決まっているか決まっていないか、ちょっと私の耳には入っていないんですが、いずれ会うにしても、デノミの話は出ないんじゃないですか。デノミは、いろいろ議論されていることは承知しています。私のところにも、デノミをやれという方もおりますし、いや、デノミなんかやるなという方もおります。そういう議論はされておりますが、私は、与党との間で、これからまだいつ会うのかわからないのに、デノミのことで議論するという予定は全く知りません。

菅(直)委員 それはそれで、一つのエピソードですから。

 そこで、今いろいろと財務大臣も竹中大臣も、見通しの間違いを認められました。私は、総理に一つ、総理就任直後にカルロス・ゴーンさんに会われましたよね、カルロス・ゴーン、日産のCEO。そこで改革について秘訣を教えてもらおうと思ったと当時のマスコミは書いておりますが、記憶をされていれば、どういうことを、参考になるような話があったんでしょうか。もしあったとしたら、どういうことがあったでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日本人というのはすばらしいと言ったことが印象に残っておりますし、同時に、この合理化、再建、成功したのは、日産の社員の皆さんが本当にやる気を起こしてくれたと、謙遜でしょうけれども、自分の手腕ということに対しては余り触れず、みんながやる気を出してくれたんだ、みんなのおかげだと言っていたのが印象的でした。

 しかし、外国から来られて、全く習慣も違う、考え方も違う、労働慣行も違ったでしょう、そういう中にあって、大胆な合理化、リストラをして、うまく再建させたんだから、私は、大したものだなと敬意を表しながらお話ししたところであります。

菅(直)委員 私も、カルロス・ゴーンさんという人は、経営者として大した人だと思います。

 そこで、場所は違いますが、ゴーンさんと総理の実績をちょっと比べてみました。

 カルロス・ゴーンさんがCEO、責任者に就任されたのは一九九九年の六月、そして九月には、日産再建のためにはどんな聖域も設けない、何か聞いたことありますね、九九年九月にこう言われています。そして、十月には日産リバイバル・プランを出して、一年半後の二〇〇〇年度、年度ですよ、年度までには黒字にするという約束をされました。そして、一年半後のその二〇〇〇年度の決算が、実際は六月ですが、三月がめどですが、三月には三千三百億の黒字で、その約束を、公約を達成されました。

 このリバイバル・プランを出したときに、マスコミに、もし達成できなかったらどうしますかと聞かれて、カルロス・ゴーンさんは、当然やめます、つまり、全経営者はやめます、こういうふうに言われました。

 そして、小泉総理は、時期は違いますが、二〇〇一年四月に就任されました。いろいろな計画、いろいろな案をたくさん出されました、先ほど来言っているように。そして、一年九カ月がことしの一月ですね。一月になったときに、どういうこれらのいろいろな計画、いろいろな公約ができたか。先日の施政方針で何と言われたか。改革は道半ば、成果があらわれるまでいまだしばらく時間が必要、こう言われました。

 そこで、一つ大変重要なカルロス・ゴーンさんの語録を私は目にしました。総理の語録とちょっと比較をしてみたいんです。

 ゴーンさんはこう言っています。計画を策定することは再生の取り組みのせいぜい五%にすぎない、残り九五%は、それが実行できるかどうかにかかっている。つまり、ゴーンさんは、それを就任四カ月後の日産リバイバル・プランで一年半後の黒字を約束して、それができなかったら私はやめます、だから従業員の皆さん、関係者の皆さん、痛みにこらえて再建に協力してください、こういうふうに言われたんだと思います。私の地元の座間工場も閉鎖されました、確かに。それだけの痛みを超えて、今、日産がよみがえりました。

 総理は、一年半たって、改革は道半ば、成果があらわれるまでいまだ時間がかかる。何か失敗したのも、若者に対して、失敗はこれからの成功になるというのはわかります。自分に対してああいう言葉を言った人は、私は初めてでしたね。あなたは、このカルロス・ゴーンさんに学んだら、一年九カ月たって、何一つ自分が約束した計画が成り立っていないときに、どういう行動をとるべきか。どう思われますか。

小泉内閣総理大臣 私は、総理就任後、二、三年は痛みに耐えていただきたい、少しでもあすをよくしようとする改革に取り組みたいと言って、総理に就任いたしました。確かにゴーンさんと違って、成果はいまだ出ておりません。しかしながら、これから進める改革、将来必ず大きな果実となってあらわれるよう、これからも不断の努力を続けていきたいと思っておりますし、いずれ、これについては国民が審判してくれると思います。

菅(直)委員 ですから、成果が上がっていないことを認められた上で、まだしばらくやらせてくれ、そういうのが今のお答えだったと思いますね。

 しかし、先ほど、あなたの最も大きなもの、つまり行財政改革の一方の柱である財政再建あるいはデフレの解消が、山に登る、登る、二〇一〇年初頭までに山に登る、登ると言いながら、実際は山から下っている。デフレに対しては、それを解消する、すると言いながら、一年たっても一年前よりももっと下っている。これから一年、二年総理に任せて、この閣僚に任せて本当に登れるのか、本当に改革できるのか、まさにこの論議を通して国民が判断してもらえる、私はこう思っております。

 そこで、我が党が平成十五年度の予算案をまとめて発表いたしました。皆さんのお手元にもかなり細かいものもお届けをしていると思います。

 規模はあえて政府の案と同じにいたしました、八十一兆八千億。なぜ同じにしたかというと、これはせんだっての議論でもやりましたけれども、景気が悪いから積極予算で予算を大きくしようという意見と、いやいや、財政規律のためには抑えようという議論がいつもあって、予算規模にばかり目が行って、議論が行って、予算の中身に必ずしも目が行ってこない。税金の使い方こそ問題だというふうな認識ですから、あえて私たちは小泉内閣と同じ規模で、その同じお金でもって、どちらの予算であれば国民にとって望ましいのか、あえて同規模のものをまとめたところです。

 そこで、大まかなことだけ申し上げますと、政府案とは中身は全く大きく変わっています。政府案の中から一部のむだな公共事業等々を含めて八兆八千億を削減した上で、改めて重点配分をいたしました。また、地方自治体に対する補助金の大部分といいましょうか相当部分を一たんカットして、一括交付金十五兆という形で自治体に配分をいたしました。

 それによって、この民主党平成十五年度予算を執行すれば、第一に、百万人の雇用が創出される。仕事を生む予算になっております。第二には、地方分権、つまりは自治体が自分で判断をして使えるお金が大幅に広がっていく。一括交付金十五兆です。そして、医療、介護、障害者の問題など、将来不安の問題の解消、医療保険の患者自己負担二割から三割をやらないということも含めて、二割にとどめるということも含めて、これにも九千億を充てました。

 さらに、せんだって私が、居住空間倍増計画とか、あるいは新たに学校耐震化問題とかいろいろ提案を我が党はしておりますが、それらも盛り込んだ内容にこの予算案はなっております。

 総理、我が党の予算案について感想があればお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 今すぐ見たわけでありますが、私は、細かいことは言わずに、野党第一党として対案を出されたことはいいことだと思っております。

 今後、こういう予算が、各省庁見て、どういうことになるかというものも聞いてみたい気がするんですが、これについて今具体的に言えという質問じゃないでしょう。ですから、ありますが、ともかく対案を出されたということについては、私は歓迎いたします。

 しかし、公共事業費が三兆六千億円。八兆八千億円も削減して、これは本当にもつかなとちょっと心配しますね。

 だから、具体的には言いませんが、ともかく対案を出されたということは私は評価いたします。

菅(直)委員 私に対してでもいいですが、また後ほど我が党政調会長も質問に立ちますので、もし御質問があれば、そちらの席からでもやっていただければ。

 きちっとした試算に基づいてやっている。少なくとも、我が党は財務省のお役人にお願いしたわけじゃありませんので、我が党自前でやったんです。自民党の予算ではなくて、内閣の予算に対して、我が党は霞が関の力をかりないでやったわけでありまして、総理にもお褒めをいただきましたが、ぜひ国民の皆さんにも、霞が関がつくった予算は、せんだっても申し上げましたが、下からの積み上げですから、どうしても、現状が一〇〇%で、それから変わってもせいぜい五%の範囲内で、思い切ってカットしたり、思い切ってふやしたりすることができないんです。

 ですから、今、こんなにも切れるんですかと小泉さんが言われたのは、まさに正鵠を得ている。小泉内閣ではできない、そういう大胆な、配分を変えることが我が党だったらできるということを見事に、小泉さん、さすがによく見ていると私もお褒めをしておきたいと思います。

 そこで、この中でも最も力を入れた一つが雇用拡大であります。

 私は、一月三十日ですか、高校卒業生の雇用のいわば現場、つまり、これは東京でありますが、まだ就職の決まっていない人、高校卒業予定者と就職を求めている人たちの会に少し顔を出しまして、当事者の生徒さんを含む話を幾つか聞かせてもらいました。ちょうどお会いをした方が農業関係の学校だったそうで、自分たちは植物を扱うような仕事がしたいんだけれども、今なかなか少なくなっていると。ちょうど我が党には、扇大臣も御存じのように、緑のダム構想というのがあるから、我が党が政権を握ればそういう仕事もふえるんだけれどもなという話もいたしておきました。

 また、ヤングハローワークという渋谷のハローワークにも出かけまして、いろいろ端末をたたきながら、三十歳未満の方を基本的には対象にしているわけですが、なかなか厳しい状態を目の当たりにしてまいりました。

 政府の今回の予算で、どのくらい雇用が拡大する、新規の雇用が発生する見通しですか。

坂口国務大臣 新しいこの十五年度予算、そしてまた十四年度の補正予算、これを連続いたしまして効果的に活用するということでございまして、またこれを百万やります、七十万やりますということを言うと、実際とえらい違うじゃないかという話にもなってくるわけでありまして、我々としては、現状の中で全力を挙げてこれは取り組んでいく。そして、それは今までは国が中心になってやっておりましたのを、これはやはり都道府県単位で見ないことには十分にこれが対応できない。都道府県におきまして、非常に失業率、有効求人倍率も違っている。

 ですから、その地域地域にやはり対応した施策をとって、マンツーマンで対応する以外に、それ以外のいい方法はない、こういうことでありまして、ことしの、これはまた法律の御厄介になりますけれども、都道府県、地方自治体におきましても、これはハローワークと同様のお仕事をしていただけるようにする。民間のお力もかる。そして、国と地方と民間と相携えて、この雇用対策に取り組んでいく。私たち、こういう考え方でおりまして、全力を挙げたいというふうに思っている次第でございます。

菅(直)委員 今の説明は、小泉内閣の予算では何人新たな雇用が発生するか試算ができていない、わからないということだと思います。

 なかなか難しいことはわかりますが、私たちは、例えばグループホームを建設することに予算をつけて、それにかかわって十万人の雇用が発生する、あるいは緊急地域雇用創出特別交付金事業で、私も昨年の暮れに行ってまいりましたが、緊急に清掃とかいろいろな仕事を改めてつくって、そういうものによって十万人の雇用を発生する、あるいは緊急対応型ワークシェアリングの拡充、いろいろな政策で十万人拡充する、こういう形で百万人の雇用を創出する、このことを申し上げております。

 今、坂口さんは、大変正直ですから、計算がないと言われたんですが、実は骨太の方針の二〇〇一年の六月の中には五百三十万人という数字が躍って、何度か総理が、五年間で五百三十万という言葉を言われました。

 私も、根拠もいろいろ調べてみました。きょうはこの議論にならないかもしれませんが、たしか島田晴雄さんがメンバーの雇用の調査会などがあって、逆算したらそういう数字が出たみたいなことを書いてありますから、言われたらそのことも言おうかなと思っておりましたが、正直に計算が出ていないと言われるんですから。

 私は、これだけ雇用状態が厳しいときに、どういう予算を組んだら雇用に対してどういう影響を及ぼすのか、そのことを考えないで予算を組んでいるというふうに理解したんですが、とても考えられませんね。それでいいですか、総理。

坂口国務大臣 我々は我々としての試算も、それはあるわけです。緊急地域雇用対策特別交付金にいたしましても、これは今まで十五年、十六年と一千億ずつ組んで、今度また八百億円ふやしたわけでありますから、これは十四万人ぐらいの雇用創出というのはある。今度プラスしましたから、今度は三、四万これに対してプラスすることができ得る。それは、そういう計算はやっているわけです。

 しかし、そういう計算だけではいけない。例えば保育所にいたしましても、保育所の待機児童ゼロ作戦をこれからやっていくわけでありますから、これは五万人の人たちをなくしてくるわけでありますから、それに対しても一万人とか二万人とか、そういう個々のそれは持っているわけでありますけれども、それだけではなくて、私が申し上げているのは、そうしたことをより効率的にしていくためには、もっと大きくこれをしていくためには連係プレーが大事だということを申し上げているわけでありまして、それによって、この我々が試算をしておりますもの以上の効果を上げたいということを申し上げたわけであります。

菅(直)委員 そういうふうに大いに連携をとって、効果的にやっていただきたい。ただ、二〇〇二年の年間の失業率は五・四という、この間の最悪の結果が出ていることだけはよく頭に入れておいていただきたい。

 次に、先ほど申し上げましたように、地方分権を推進する、そういう考え方の予算になっております。例えば、せんだって同僚議員も言っておりましたが、滋賀の豊郷小学校なんかで、新規の学校をつくるのがいいのか補強をするのがいいのか、それぞれ補助率が違ったりしてなかなか流用ができない、では多少金がかかっても多いのでいこうかということになるわけですが、この我が党の考え方でいえば一括交付金の枠の中に両方とも入りますので、それは自治体で、より効率的に、あるいはその中身によってどちらを選ぶかを考えることができる、こういう仕組みになっていますが、せっかくですから総務大臣、見解を伺いたいと思います。

片山国務大臣 国庫補助負担金は、大変細かい注文がついて、ある意味では地方の自立性、自主性を害していますから、それについてそこを直すという点では私は同じ考え方ができる、こう思います。

 ただ、一括交付金みたいな形でなくて、むしろ地方に税源を与えたらいいんですよ。国税、地方税の六対四、それを私は、経済財政諮問会議でも当面五対五にしてくれ、国税から地方税に五兆五千億移す、その過程で必要度の低い国庫補助負担金はやめていくと。一遍に税源移譲というのは大変でございますから、ある程度段階的に、計画的にやっていかなければなりませんけれども、それが本来の地方分権からいっての趣旨ではないかと。

 そこで、骨太方針の中にも、税源移譲を念頭に置きながら国庫補助負担金の整理合理化をやる、地方交付税の見直しをやる、税源配分を直す、この三位一体の改革というのを打ち出しているわけでありまして、来年度予算でも芽出し、芽を出す、そういうことが例えば義務教育の国庫負担金や市町村道の補助金等で私はできたと。これは、総理の御指示で本年の夏ぐらいまでに全体の工程表をつくれ、こういうことでございますから、ぜひそれはやっていきたい。

 それから、今の改造と改築の話は、改築というのは財政措置が手厚いんですよ、大きいから。改造はちょっと規模が小さいものですから、この辺の財政措置についての御質問もせんだって菅代表のところの同僚の議員さんからありましたので、検討はいたしますけれども、これはなかなか難しい問題を含んでおります。

菅(直)委員 片山総務大臣とは余り意見が合わないことが多いんですが、特に住基ネットなどでは大変対立をしているんですが、大きい方向では我が党と同じで。

 今回は、平成十五年の予算という形の中での組み替えですが、将来的にはまさに税制まで含めて財源そのものを、権限と財源を自治体に移していく。私は、国の権限は外交防衛あるいは都市計画の基準や福祉の基準で、江戸時代の中央政府がやったようなことで、あとは、藩がやったようなことは全部自治体がやればいいと個人的には思っていますし、我が党の考え方は大体そういう方向ですが、そのことについて総務大臣も共通だということですので、その点については協力していきたいと思います。

 医療保険について、いわゆる自己負担の三割を凍結する、これでも十分に今回のこの厳しい財政状況の中でやっていけるはずだし、またやるべきだ、こう考えておりますが、いかがですか。

坂口国務大臣 医療費の問題につきましては、昨年の医療制度改革の中でいろいろ御議論をいただいたところでございます。そして、今後の少子高齢社会のことを考えていきますと、皆さん方にも御負担をいただかなければやっていけないという数字もその中でお示しを申し上げたところでございます。

 したがいまして、特に政管健保なら政管健保のことを例に挙げてまいりますと、この三割を二割のままで据え置くというようなことになりますと、この平成十五年度中にマイナスになることだけは間違いがないわけでありまして、そうしたことを考えていきますと、これはどうしてもお願いをしなければならないというふうに思っている次第でございます。

 いろいろの試算をそれぞれのところでお出しいただいているわけでありまして、その内容をいろいろ拝見いたしておりますが、やはりその試算の前提条件が非常に違うわけでありまして、そういういろいろの試算に対しましては、我々の考え方というものも御説明を申し上げて、どこが違うかということも明確にして、そして皆さんにも御理解を得ているところでございます。

菅(直)委員 まさにそういう議論をこれからしっかり予算委員会、あるいは総括、一般質疑の中で個々の課題について、まさに小泉内閣と我が党、次の内閣のメンバーおりますので、その間でやっていきたいと思っております。

 そこで、もう一つ、居住空間倍増計画というものを私はさきの予算委員会の場でも御披露いたしました。きょう、麻生自民党政調会長もやや似たことを言われていましたが、日本は住宅というものを消費財、せいぜい二十年か三十年の耐久消費財としてしか見ていない。その話をしましたら、せんだって、アメリカと日本に行っておられるアメリカの学者の方が、菅さん、この間私の家へ来たけれども、あれ一九〇〇年にできたアパートなんだよということを言われておりました。ボストンですけれども、アメリカでも、古い町には百年以上使われている建物がたくさんあるそうで、ヨーロッパにはもちろん言うまでもありません。そういう意味で、私は、住宅は社会インフラだ、これを大きくすることは、在宅介護や在宅福祉にもつながりますし、豊かな時間を過ごすことにもつながる。

 そこで、どういう手法が一番効果的なのか。これは、扇大臣も所管をされているかつての建設省、住都公団に対して、私は、もう土地を買って家を建てて貸すのはやめろ。それよりも昔からある農住構想、農地などを持っている、土地を持っている人に逆に安い資金を貸したり、あるいは一部補助金を出して、そして一定基準以上の住宅を建てる。広さやバリアフリーといった、そういう特定優良賃貸住宅やあるいは高齢者向けの特定優良賃貸住宅を建設することが望ましいんではないか。そうすれば、土地を買って建物を建てて、そして管理までしてやるよりも、同じ予算であれば数倍の、しかも質のいい住宅が建つことができるということで、私も野党与党、いろいろな時代がありましたが、進めてきたところであります。

 そういった意味で、我が党の案では、特定優良賃貸住宅などの公営、これは公営といっても、先ほど言ったように公団とは違います。土地を持っている人に対して補助を出すわけですから、所有権はその土地を持っている人そのものですが、そういうものに我が党は三千三百二十二億の予算をつけました。政府の方も、若干頑張ってはいただいているようですが、千六百六十一億円。政府案の倍つくことができまして、だから居住空間が倍になるとまでは言いませんけれども、居住空間を倍にしていく予算のまさにスタートにしたい、こう思っていますが、扇大臣、見解がありましたらお聞きします。

扇国務大臣 いつも菅代表からもいろいろなことを言っていただいて、ありがたいことだと思っておりますけれども、共通できるところは、国家国民のために、当然お互いに知恵を出し合う。そういう意味で、私は、いつも拝聴しておりますので、よく拝聴しているという証拠でございます。

 そういう意味で、今、民主党の案を出していただきましたけれども、今、総理も評価されましたけれども、ただ、私は、きのうのきょうでございまして、今、一生懸命、出されたものを拝見しておりました。

 それで、今、居住空間の話で、私たちが千六百億円出している倍だというふうにおっしゃいましたけれども、菅代表がおっしゃいましたように、日本の居住空間の狭さ、少なくとも、今、我が国の床面積というのは、標準で、三大都市圏では四十平方メートルということで、大変少ない。四十一平方メートルにとまっています。これを今おっしゃったようにバリアフリーを使って、そして廊下を広くしたり手すりを使ったり、あるいは、今回、税制をもし早く認めていただくなれば、住宅税制で三千五百万円という大変大きな額がございますので、それで中古も含めて、生前贈与も含めて、住み心地のいい住宅にできるという、その目標を持っております。少なくとも私は、千六百億という額を、民主党は倍出したとおっしゃいますけれども、倍の効果が上がるようにしたいと思っていますし、私も、千六百億を倍に効果が上がるように知恵を出して対応していきたいと思っております。

 ただ、問題は、危険地域というものがございまして、三大都市もございますけれども、危険地域の整備、改善という面では、私は、まだまだ社会資本整備が行き届いていない。電柱の地中化ですとかあらゆる面で、住宅の安全のためには町の整備も必要であるということで、総合的な計画を国土交通省でいたしておりますので、そういう意味では、お互いに知恵を出し合うところは出し合い、なおかつ有効な資金の活用をしてまいりたいと思っております。

菅(直)委員 大変前向きな答弁をいただきまして、私ももちろん国民のプラスになることのために議論をしているわけで、別にやじを飛ばされても構いませんから、よく聞いていただいているものだとは思っていますが、せっかくですから時々反応をさせていただいているということです。

 次に、今安全性ということがありましたが、学校施設の耐震化について、これは従来からいろいろな数字が出ているんですが、いま一つ、政府の方で一体どういう段取りで、どのくらいの順位づけでやっていこうとしているのか、必ずしもはっきりしておりません。我が党では、学校施設の耐震化を五年以内に進めるということで、耐震関連で千七十七億円を計上いたしております。

 できれば文部科学大臣に、余り長い時間とらないで、政府としてはどういう段取りでこの耐震化を進めようとしているのか。子供を持たれている人は、あと十五年先というと子供はもう学校を出ているわけですから。一番危ない地域がどことはなかなか言いにくいですが、いろいろ報道もありますけれども、そういうところから優先的にやるならやる、そのことについて、我が党の案も含めて見解を伺いたいと思います。

遠山国務大臣 学校の施設といいますものは、子供たちにとっても大変安全でなくてはいけないわけでございますが、地域の住民にとりましてもいざというときの避難の場所ということで、大変私はこれの耐震化というのは重要だと思っております。

 そのようなことで、今、公立の小中学校、全国で十三万三千棟ございますけれども、私どもの調査では、それのうちの四三%が、耐震化という角度でいきますと十分でないという実態を得ております。

 そこで、毎年この問題については誠意を持って一生懸命やっているわけでございますが、先般お認めいただきました補正予算におきましても、五百六十億円、この耐震化のために予算措置をさせていただきました。また、今お願いいたしております平成十五年度予算案におきましては、公共投資関係費を、全体で対前年度三・七%減でありますところ、百五十一億円増、一五・二%増の千百四十九億円を計上いたしております。これは、新築分とは別に耐震だけに使えるものでございますから、来年度は、両方合わせますと千七百億円近くということでございます。

 この問題につきましては、私どもも、どのような優先順位でやっていくかということについては大変大事なことだと思っておりまして、この問題につきましては、私ども既に、地域が難しい、地震が起こりやすいような地域につきましては、特別に対策が必要な地域ということで補助率のかさ上げなどもやっておりますけれども、もっと、より合理的に、効率的にやっていくというために、指針の策定を今やっております。

 昨年十月にその調査会を発足いたしまして、これは日本のトップクラスの専門家にお集まりいただきまして、そして、優先度の決定方法あるいは年次計画の策定方法、地震調査研究推進本部が進めております地震動予測地図の活用などについて、今真剣にこれは御議論いただいておりまして、三月中にその結果を得まして、今後の予算の使用に反映してまいりたいと思っているところでございます。

 そのようなことで、順次やっておりますが、公立学校耐震化の基準についても既に策定をいたしております。そのようなことで、耐震化の問題につきましては、全体に非常な厳しい財政状況ではございますけれども、今後とも我が省といたしましては、非常に優先度を高くこの問題に対処していきたいと思っております。

菅(直)委員 先ほど、ちょっと我が党の数字と政府の数字を間違えましたが、政府が千幾つですよね、我が党は実は六千百六十億、政府案の五・七倍をこれに振り向ける、そういう案になっておりまして、また、学校耐震化改修促進法という法律も用意をいたしております。

 総理は、いつの国会ですか、米百俵の話をされました。たしか学校をつくるという話でした。やはりこの問題は、子供たちの問題であると同時に、地域のある意味での避難場所でもある学校でありますから、いろいろ財政が厳しい折ではありますが、私は優先度高くやるべきだと思います。総理の所見をお聞きしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 公共施設の耐震性、これは非常に大事なことでして、今学校の話になっておりますが、政府としては、学校のみならず、病院、保育所等、それも含めて耐震化の整備を図っていきたいと思います。

菅(直)委員 そこで、少し財政投融資に関連した問題に移ってまいりたいと思います。

 道路関係四公団民営化推進委員会が昨年十二月の六日に意見書を出されました。私は、本当に御苦労されたと思います。特にこの中で、プール制による新たな建設というのがもう完全に行き詰まっている、国会も通さないで、国幹審、国幹会議といったようなものでやってきた、財投の金をじゃぶじゃぶ使っていたやり方が問題だ。また特に、この後半の多くは、ファミリー企業がいかにこの公団を食い物にしていたかということをしっかりと調査をされました。私は、すばらしい意見書だ、このように思っております。その意見書に対して、今回の予算で出されている中身が一体どういう関係にあるのかなと。

 まず、お聞きします。

 平成十五年度予算の中に、直轄高速道路の費用が千三百億円入っています。これは、公団と無関係に無料で通行できる高速道路を建設するということだと説明を受けておりますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。また、そうだとしたら、どういう意味づけでこれがつくられるんですか。

扇国務大臣 今、菅代表がおっしゃいましたように、昨年民営化推進委員会から出された答申に関しては、総理から、それを尊重してということを言われております。私も、それを実行するためにはどういう手法が必要なのかということで、その答申に対してのこともございましたので、その答申に関しては、私は、国土交通省で今すぐしなければいけないこと、例えば、今、最後におっしゃったファミリー企業の話、これをどう対処できるかということ。そして、財務諸表を出してもらって、一般の民間の会計処理と道路公団との会計処理がどういうふうになるかというので、三公団からも財務諸表をいただくということが第二段階。第三段階は、総理から言われておりますように、来年度の法律をつくるまでにしなければいけないということで、短期、中期、長期の区別をして、国土交通省で今論議をしている最中でございます。

 そして今、最後におっしゃいました十五年度予算、これに関しましては、今回は、少なくとも私たちは、今の道路と今後つくるべき道路、だれがつくるか。今おっしゃったように、道路の民営化推進委員会が今回、十六年度、法律を出した後でどういうふうな道路の建設の仕方をするかということをお互いに、これは法律ですから、皆さんにも御理解いただくために、私たちは委員会の答申を尊重しながら、どうやっていくのが一番いいかという方法論を国土交通省で今与党三党ともすり合わせしながら、なおかつ、内閣としてそれを尊重しながらどうできるかという方策を練っている最中でございますから、これを直轄方針でいくということも私は一つの選択の方法であると。

 そして、社会資本整備で、どの知事さんからもどの市長さんからも、つくってくれ、つくってくれという陳情が昨年来から絶えません。民主党の地元の皆さん方もおっしゃいます。それを、ない資源の中でいかにつくっていくかという方法を直轄事業という中でも私たちは考えているということでございます。

菅(直)委員 勉強はされているのかもしれませんが、私の聞いたことには答えがありませんでした。いいですか、一般的なことを聞いたんじゃありません。これは平成十五年度予算の審議をしているんです。

 平成十五年度予算の中に、直轄で千三百億円の予算が計上されているんです。先の話じゃありません。それは公団への補助金でもありません。一般の道路でもありません。高速道路です。通行料金は取らないんです。そういう、いわゆるフリーウエー、無料の高速道路をつくる。私は一概にそのことが悪い、いいを言っているんじゃありません。そのことと、これまでの公団中心の考え方、それを民営化するしないはありますが、どういう関係にあるんですかと聞いているんです。

扇国務大臣 十五年度の予算に関しましては少なくとも私たちは、四公団で四十兆円というものをいかに債務を減らしていくか、また、それを確実に返済する方法はどういうことかということが基本でございます。これが民営化推進委員会で論議されたことでございますから。

 その基本に沿って、私たちは、それぞれの地域によって、直轄で、自分たちも負担するからこれをつくってくれというところもあるでしょう。それは、それぞれのところでそれぞれの意見を出していただいて、国と地方の負担による直轄方式を導入するということも私たちは大事であるということで、直轄方式にするところもあるということを申し上げている。

菅(直)委員 全く答えになっていないんですが、これはちょっと総理にも聞いておかなきゃいけません。

 総理は、いろいろな発言をされたのでややこしいんですが、たしか平成十四年のときは、国費は投入しないとたしか言われました。当然国民は、四公団に対して国費を投入しないんだろう、こう思ったわけですが、結局のところは、四公団のうち、国費を投入しないという約束どおりなのは比較的成績のいい日本道路公団だけ。本四公団については既に一兆数千億の処理を国費でやる、他の二公団についてはこれから国費投入もあり得るという中身になっています。総理が言ったことと違うんじゃないですか。少なくとも国民が理解した総理の言ったことと違うんじゃないですか。どうですか。総理。

扇国務大臣 後で総理に答えていただければいいと思います。本四のことを今おっしゃいましたので。

 少なくとも、本四というものはもうでき上がっているわけです。三橋ができ上がっているわけですから、この本四のでき上がっているものをいかに持続していくか。また、料金を半額にしなさいという御提案もございました。

 この本四のむだだという話も世間にはたくさんございます。けれども、この本四というのは国会で全部で賛成してでき上がったものですから、その債務というものをどうしていこうというので、十五年度予算では、本四の有利子負債の一部に今おっしゃった一兆三千四百億というものを一般会計で継承して、少なくとも国の道路公団財源よりも早期にこれを処理しよう、それが本四の重荷を少し取ることだということで、高速道路建設については国と地方の負担によって新たな直轄もしますけれども、本四は本四として処理をしましょうということで、今回は私たちはこれを決定させていただいたわけでございます。

小泉内閣総理大臣 はっきりと、間違わないように聞いておいていただきたいんですが、「国費は、」これは日本道路公団です、日本道路公団について「国費は、平成十四年度以降、投入しない。」本州四国連絡橋公団、これは「日本道路公団と同時に民営化する。なお、債務は、確実な償還を行うため、国の道路予算、関係地方公共団体の負担において処理することとし、道路料金の活用も検討する。」

 日本道路公団について、十四年度以降、国費は投入しないと言ったんです。

菅(直)委員 私はちゃんと読んでいます。ですから、先ほどの質問もそのように申し上げました。しかし、平成十四年度の予算の前に、我が党やいろいろなときには、国費は投入しない、こういうふうに言われていました。頭に何々公団とありませんでした。その後に閣議決定を見たら、ちゃんと三公団が外してあったんです。

 つまり、そういう国民をだますようなやり方をおっしゃったんじゃないですかということを申し上げているんです。そうでないんなら、最初から形容詞をちゃんとつけてください。一番交通量が多くて料金の上がっている日本交通――だって、実はもうとっくの昔に償還が終わって無料になっているはずの名神なども、お金を取っているんですから。一般的に言えば成績がいいのは当たり前なんで、そういうところについてはお金を投入しないけれども、あとの三公団ですよ。一公団じゃないですよ。本四はもうお金をことしから出す。他の二公団も出す可能性がある。それに加えて、総理、もう一つあるんじゃないですか、国費は。今申し上げた直轄事業ですよ。これは国費じゃないんですか。

 公団ではありません。しかし、少なくとも、公団の改革議論をやっているときには公団で高速道路をつくることを前提として議論がされていたのに、公団の中の四つのうちの三つまでは税金投入もあり得る、あるいはもう税金投入をする。そして公団以外の高速道路は、またそれはそれで無料で走れるものをつくる。では、公団はどういう位置づけになるんでしょう。もし第二東名が直轄事業でつくられたら、公団の道路に乗る人は一人もいなくなるでしょうね、一台も。どういう考え方なんですか。

 つまりは、結局何が目的か。扇さん、よく聞いておいてください。(発言する者あり)今、やじで、高速道路をつくることが目的と言われましたけれども、実はそれならまだいいんです。そうじゃないんですよ。高速道路をつくる公団という組織を守ることが目的なんです。

 多くの国でいろいろな形で高速道路をつくっています。アメリカ、ドイツ、イギリスは、新たな直轄事業と同じやり方です。税金です。フランスやイタリア南部は、日本の公団とやや似ていると先日説明を聞きました。

 私は、公団は二重の意味で悪かったと思いますね。まさに国会も通さない税金でやるわけですから。税金じゃなくて、やるわけですから。それで償還期限を、当初はできて三十年が一体何年延びていますか、日本道路公団なんか。次々にそれが延びて、昭和三十七年からの三十年でしたからね、最初の予定から六十年から七十年延びているんですよ。そういうやり方をやって、ある意味では、国民から見えないところでまさにファミリー企業をどんどん抱えて、道路族議員とかつての建設省の道路局がつるんで自分たちの利権にしてきたわけじゃないですか。

 どういう形にするんですか、この高速道路を。総理、頭をちょっと整理された方がいいんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 問題があるから民営化しようという議論が起きたんでしょう。そして、これから民営化になった場合には、民営化でできる道路、しかし、今までの方式ではつくれない、民営化会社になったらつくれない道路が出てくる。しかし、どうしても必要だという場合は、これは国と地方、どういう税負担でつくろうか。税負担とすればみんなただでつくってくれると思ったのが、つくってほしいけれどもこれだけ負担なら嫌だという意見も出てくるかもしれない。そこにやはり効率性とか採算性、今までよりももっと厳しい見方が出てくる。私は、こういう改革をしていかなきゃならない。そうでないと、どんどん道路は国がやってくれる、地方は負担がない、これじゃみんなつくってくれという陳情が来るのは当たり前ですよ。しかし、その負担はだれがするのかということに問題があるから、そこに今メスを入れて、民営化議論が出てきたわけでしょう。

 だから、私は今後、民営化の委員会の皆さんが結論を出して、答申を出してくれましたので、これを基本的に尊重しながら、これからどういういいものをつくっていくかというのは、十分国会の中で議論をし、これはいずれ法案が出るんですから、その中で議論していけば、今よりももっと効率的な、後に負担の少ない、しかし必要な道路はつくるというものを目指して、この改革に突き進んでいきたいと思っております。

菅(直)委員 基本的なところが抜け落ちています。理念がないんですね。

 つまり、理念がないという意味は、高速道路というものは、あるところは公団、あるところは税金で無料でつくって、あるところはそれを民営化して、あるところは、民営化する前か後か知りませんが、国費投入する。(発言する者あり)それが自民党の理念ですか。やじを飛ばすんだったら、それが自民党の理念なら、ちゃんと書いてみなさい。

 では一度、もう一つだけ答えてもらいますが、きょうは、この問題はいろいろな議論がありますので、私も一つの実態だけを申し上げておきますが、中国地方に私もいろいろな関係があってよく行くんですが、高速道路はがらがらです。下の道路はかなりいっぱいで、バイパスをつくってほしいという要請が多分たくさん行っているはずです。

 つまり、先ほど扇大臣は、四本の橋がある、あるんですからと言われた。私もそう思う。(扇国務大臣「三本」と呼ぶ)三本ですね、三本の橋がある。確かにつくったことは私は間違いだったと思う。それは主に当時の与党の責任と建設省だと思います。しかし、できたものについてどう活用するかというのはあります。

 そういうことを考えたときに、一体どういう形で高速道路網をきちんとつくるのがいいのか。必ず、国土交通省に案を出させると、いいですか扇さん、組織を守ることを第一に優先します。間違いありません。国民のための高速道路じゃなくて、国土交通省のための何らかの組織、公団が一番いいけれども、公団でなきゃ天下りができる民営にしたいと思うでしょう。

 それからもう一つは、鉄道と道路は若干違うんです、よく総理は一緒にしますが。何が違うか。鉄道は、運転する人、車両、そういう運行を担う組織が要ります。当たり前ですね。道路は、道路の管理は要りますが、一般道路と同じように。別に運転手を派遣する必要はないんです。自動車を派遣する必要はないんです。ですから、何でもかんでも、JRで、国鉄でうまくいったから何でもかんでも高速道路と同じだというふうに考えられるのは、基本のところの認識が違っているということを頭に入れて、これからまたゆっくり議論をしますからきょうはこの程度にしますが、もし何かあったらどうぞ。

扇国務大臣 先ほど私、菅代表に申し上げたように、今の道路公団の改革しなければいけないところ、すぐ手をつけようと、これを指令してあります。そして、私は、ファミリー企業、関連企業の天下りも、剰余金が幾らあるというのも国土交通委員会で全部公表しております。

 ですから、それを私は改革していこうということで、今たまたま菅代表が国鉄との対比をなさいました。私は、その委員会から答申をいただきまして、尊重するとは言いましたけれども、簡単に分割するといったって、大根を切るわけじゃないんですから。少なくとも道路公団一つとってみても、役員は九名です。そして、国鉄と今対比をなさいましたけれども、国鉄はあの当時、少なくとも国鉄職員の役員は十八名だったんです。それが分割して、今百三十四名いるんです。

 ですから、ただむやみに分割するということではなくて、現実的に私は一番国民に負担を少なく、あるいは国民の要望にこたえるためにはどうしたらいいかと、いただいた答申を精査して、法律に、より納得できるようにしているというのが現実でございますから、私は乱暴なことを言っているわけではありません。一つ一つ緻密に私はそれを精査しているというのが今の現状です。

菅(直)委員 乱暴でなきゃだめなんですよ。目の前の改革なんかやっていたってだめなんですよ。公団をつぶさなきゃいけないと言ったのは総理じゃないですか。それを何か、何とかの人数が少ない、多い。ここに書いてあるじゃないですか、数万人がぶら下がっているじゃないですか、ファミリー企業で。何が何十人ですか。数万人がぶら下がっているじゃないですか。

 つまり、目の前のことを改革したってだめだというのがこの意見書であり、だめだというのがこの二十年間、三十年間の日本の高速道路での現実ですよ。目の前のことをちょっと手直しするのではなくて、根本から変えるためにこの答申が出ているのに、ことしじゅうには法案が出ない、来年になって法案を出す、再来年から始めますと。余りにも、目の前のことを急いでいる割にはゆっくりじゃないですか。このことはきょうはこの程度にしますが。もういいでしょう。まあ、どうしてもなら。

扇国務大臣 今おっしゃっているように、ファミリー企業、関連企業、少なくとも八十六社の中で天下りが六九%います。それをどうしたらいいかということで、また、それぞれの四業務に対しても私は今切るようにしています。

 それは、今までなぜ決まったところに発注していたかというと、道路を修理するのに、緊急のときには、あの会社はこの車を持っているからあそこにおろさなきゃいけないと言うんです。ですから、私は、公団に、その車を高速の下に待機させなさい、そこに車を持っていなさい、そうすると一般の人でもみんな入札できるじゃないかと言って、一つずつそれを改革しようということをやっているわけでございまして、高速道路の保全、修理、安全性というものは必要であるということを、今、全部ぶった切るのではなくて、一番国民に目に見える、また廉価な方法はないかということをしている最中でございますので、十二月に答申を出されて、一月にできるわけはありません。

菅(直)委員 もうこれ以上言いませんが、今言われた数字だけいっても天下りが六九%。これは天下りというんですかね、一体。ほとんどが天下りでなっていて、例外的に外から採っているというんじゃないですか。そういうのは天下りといわないんですよ。もともとが官営なんですよ。ですから、そういうものを、この六九を六五に下げてみたって、六三に下げてみたって本質は変わらないんです。

 公団をやめるんです。やめたときにどうするかという議論をきちんとやるためにこの意見書が出ているんですが、扇さんには手直ししか多分やらせてもらえないでしょう。まあそれはいいです。(発言する者あり)現実ですから。先ほど手直しのことばかり言われたじゃないですか。

 それでは、年金のことをちょっと申し上げます。今、年金問題、たくさんの問題を抱えていますが、一つだけ。

 まず、二〇〇四年から国民年金の国庫負担を三分の一から二分の一にするということが附則で決まっております。これに対する財源について、山崎自民党幹事長は消費税というようなことも触れておられました。

 総理は、自分の在任中消費税は上げないということを明言されています。ということは、これは、消費税以外でやるという意味なのか、自分のときは赤字国債か何かで穴埋めをして、自分がやめた後消費税を上げてくれという意味なのか、いや、消費税を上げなきゃいけなくなったら自分が総理をやめるという意味なのか、いずれか、お答えください。

小泉内閣総理大臣 まず、年金の財源が足りないから消費税を上げようということじゃないでしょう。私は、消費税は引き上げないで、安定した財源を確保しつつ、この年金制度を持続可能な安定した制度にしていくかというための議論は、消費税を上げる以外にたくさんあります、やるべきことが。給付はどのぐらいにするか、保険料はどのぐらいにするか、そして税金、安定した財源は消費税以外にどういうものがあるか、いろいろあります。そういう点もじっくり議論する必要があるのじゃないか。

 まず消費税を上げて、財源があるから給付を上げよう、負担を少なくしようといったら、これだけ高齢少子化が進んでいるのに、若い人はもうたまりませんよ。若い世代のことも考えなきゃいかぬ。高齢者は多くもらえればもらえるほどいいというのはわかりますよ、給付は多ければ多いほどというのは。こういうバランスも考えてやるためには、いろいろな議論が要る。それを最初に、消費税がある、まだ五%だから、低いから、欧米はもう二〇%ぐらいあるんだから余裕があるんだという議論は逆さじゃないか。

 私は、徹底的な行財政改革を進めるのが先だ。そういう中で、この程度の給付がもらいたい、年金がもらいたいんだったらこの程度の負担はやむを得ないな。そして、給付と保険料だけじゃ無理だから税金をどれだけ投入しようか。安定した税金は、ではどこがあるか。消費税以外にまだ、消費とかいろいろありますよ、ほかの消費も間接税も所得税もいろいろあります。あるいは行財政改革、どこを削るかというのがあるでしょう。そういう点の議論が先だということであります。

菅(直)委員 総理は厚生大臣を二度やられているわけですから、私の質問の中身はわかっていると思うんですね。別に、私が消費税を上げろと言ったんじゃありません。財界の方からいろいろと皆さんの方に言っているので、山崎幹事長がそういうこともあり得るということを言われたので、あなたが最も頼りにしている人ですから、それでどうですかと聞いたんです。

 それともう一つは、給付とかいろいろ言われました。ただ、国庫負担の三分の一から二分の一というのは法律の附則に決まっていて、制度を大きく変えない限り相当の財源が必要になることは現実の問題ですから、十年先、二十年先の問題ではありません。それも一般論で何かかわされてしまったようですが、私は、この年金のあり方については我が党もいろいろ議論をしなきゃいけないと思っています。昨年、我々の同僚の今井澄参議院議員が亡くなられましたけれども、今井さんはスウェーデン方式というものを検討してみてくれというふうに、ある意味では私などにも言われておりました。

 いろいろな問題があります。特に、これから高齢化が進む中で、その高齢化のピークを安心して越えられると同時に、若い皆さんも、その世代が全部食っちゃった、後は何も残ってないということにならないためにはどういう仕組みをとるのか、いろいろな議論があります。ですから、余り矮小に、自分の都合のいいところだけに持っていって、私はいろいろなことを考えています、私だって考えていますから。だから、そういうことじゃありません。山崎さんが言っているから聞いたんです。

 そこで、ちょっと話を移します。

 今の年金の運用ですが、坂口厚労大臣、私もちょうど切りかえの直前でした、たしか切りかえの法案が出たのは小泉厚生大臣のときじゃないでしょうかね。つまりは、だれが百五十兆もの積立金を運用する最後の責任者なのか。現在の法律では厚生労働大臣になっているんじゃないですか。

 そして、十四年度の前半だけで、マーケットで運用した百五十兆のごく一部であって、二兆円の穴があいていますね。もちろん、今非常に株の状況が悪いからそれもあり得るという言い方もあるかもしれません。しかし、厚生労働大臣の責任という形でこういう巨額の資金運用というものを任せて、そしてその穴があいたときには一体だれが責任をとるのか。結局ツケは被保険者にかかってくることだけははっきりしている。しかし、それを……(発言する者あり)ちょっと津島さん、また後ろから言わないでください。

 そういう考え方に立ったときに、これは私も率直に言ってまだ結論はありませんが、結論はありませんが、大臣が最終的な形式上の責任者というのはわかりますが、一体だれの責任なのか、私、聞いてみました。形式は大臣です、いや審議会があります、何とか基金があります、いやそれぞれの運用会社に任せています、いや成績が悪いところは変えています。結局、平成十四年度、二兆円欠損が出た。

 それは、プラスになるときもマイナスになるときもあるという言い方もあるけれども、少なくともこの間相当マイナスが積み上がっていますから、そういうものに対して何らかの責任をとらせる仕組みというのはあるんですか。あるいは大臣がやるべきだと坂口さんは思われますか、そういう責任を。

坂口国務大臣 これは、どういう運用をするかということになるわけでございますが、年金資金の運用基金法というのがございまして、その中に一応書いてあることは書いてある。理事なり理事長なりがそれなりの責任をとることになる、これはしかし、最終的にはやはり厚生労働大臣の責任になるんだろうと私、思っています。

 この間、上田先生からも御指摘をいただきまして、それは最終的にはやはり厚生労働大臣の責任になるというふうに私も思いますが、しかし、さりとて一兆円損したから責任とれと言われても、これはなかなかとりようがないわけでありまして、そこをどうするかということについては、株式にゆだねるかどうかというところが一番大事なところなんですね。株式にゆだねるということになれば、それは時に下がることもあり、上がることもありますから、その断面断面でどの責任をとるかということはなかなか言いにくい。

 ただ、本当の専門家として見た場合に、その運用の仕方が余りにも間違っているというときには責任をとることになっておりますけれども。だから、ただ単に上がった下がったでの責任ではないというふうに思っております。

 しかし、私は、この問題はもう一度考え直さなきゃいけないというので、昨年の十月から審議会も立ち上げて、議論もやり直してもらっている。私自身もこれは勉強をし直しているんです。今、いろいろな人から御意見を聞いて、そして、これをどうしていくかということを考えております。

 一つは、これはやはり国民から預かりました大事な年金資金でありますから、堅実な運用をしていくということが一つの原則。もう一つは、日本の経済にとってプラスになっていく立場というものをやはりとっていかなければならない、そうした立場の中で、これをどう運用をしていくべきかということを考えていかなければならないというふうに思っておりまして、そういう意味で、間もなくこの審議会の議論の結論も今月の末ぐらいには出ますので、それらを踏まえて私も結論を出したいというふうに思っているところでございます。

菅(直)委員 坂口さんは大変人柄のいい方ですから、率直なお話を聞かせていただいたと思っています。

 まさにこれだけの巨額のお金、一方ではPKOに使われているんじゃないか、プライス・キーピング・オペレーションに使われているんじゃないかという疑惑を常に持たれ、そういう最後のツケはすべて被保険者、国民にかかるという仕組みの中で、だれもが責任を持たないで済んでいるというのが現実です。

 二兆円損した、それまでの自主運用で三兆幾つ損した、だれが悪かったとも、今初めて悪かったかなと言われましたが、それは個人の責任だと言われても困るみたいなことも言われました。率直な気持ちでしょう。結局、だれの責任かわからない仕組みの中で、年金に対する信頼だけが崩れていることだけははっきりしています。

 もう一つ、ハンセン病の熊本地裁の判決の控訴を総理が断念をされるということが、ある意味で総理の人気の一端になったことは、ちょっと古い話ですが、思い出されるところです。

 その総理談話の中で生まれたハンセン病問題対策協議会が続いているわけですが、二つの問題が議論されております。

 一つは、早い時期の退所者について一時金の検討、一つは、その後のさらなる熊本地裁の和解によって、非入所者に対しての生活支援金等を含む恒久対策についての議論、それが、副大臣が中心のようですが、決裂をしたというふうに聞いております。

 中身はいろいろありますが、少なくとも、総理があれだけの意欲を込めて提案をしてつくられた中で議論されているものが、結局、平成十四年度中の実現に最大限努めると言っていた、その早い時期の退所者については、平成十四年度の補正予算にも出ない、平成十五年度の本予算にも出ていない。あるいは、非入所者の問題はいわばゼロ回答、何も中身のある回答が出ていない。一体いつになったらどうなるのかわからないという状況にあります。

 これは、やはり総理がちゃんと指導力を発揮されるべきじゃないですか。いかがですか、総理。

小泉内閣総理大臣 後ほど坂口大臣にも答弁いたさせますが、この問題について、入所者と非入所者の問題でいまだ解決がついていないという話を伺いましたので、できるだけ早期に話し合い決着できるように督促したところでございます。その督促に従って、今、坂口大臣が御苦労いただいております。

 その点については、坂口大臣から答弁をいたさせます。

坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、一つは、平成八年四月の以前に入所しておみえになりました皆さんで、退所された皆さん方の問題でございます。もう一つは、入所されずに、いわゆる社会の中でそのまま活動しておみえになった皆さん方の問題でございます。

 そのほかの問題は、おかげをもちましてハンセン病の問題、解決をしてきたわけでございますが、最後に残りましたのがこの両者でございまして、ここに対してどうするかという問題で、今、議論を重ねているところでございます。

 それぞれ御主張はございますけれども、その御主張は御主張としながらも、やはり我々の言い分というものも聞いていただきたいと思っているところでございます。

 既にお支払いをすべきものはお支払いをいたした後でございますし、そして八年の四月以前に退所をされました皆さん方の問題につきましては、これはその後の方は二百五十万円ずつお支払いをしているわけでございまして、そうしたことを踏まえて、その以前の方にどうするかといった問題でございます。

 非入所者の問題は、これは入所しておみえになったがゆえに、隔離されておみえになったがゆえにお出しをしたものでございますから、入所しておみえにならなかった皆さんも同じようにというわけにはいかない、そこは御理解をいただかなければならないというふうに思っておりますが、しかし、これは鋭意努力をいたしまして、そして早く解決をするようにしたいと思っているところでございます。

菅(直)委員 これは督促をしていただいているようですから、前進を期待したいと思います。

 もう一点、公共事業受注企業からの献金に対して、野党四党は法案を出していますが、総理は当然賛成していただけますね。

小泉内閣総理大臣 今、どういう制限が必要か、どういう対応が必要かということで検討しているところでございます。野党の案も十分検討いたします。そして、お互い話し合いの上で、一歩でも前進できるような措置を講じていきたいと思っております。

菅(直)委員 これは言うまでもないことですが、税金の使い道ということを我が党も一番重要視しておりますし、総理も先ほどそういう言葉も使われました。やはり、税金を使っている先から多くの政治献金をもらっていれば、国民はそれの使い道がその献金によって左右されているのではないかという疑いを持つのは当然でありますから、それについては、いろいろ前向きな発言はされていますが、ほかの方が果たして賛成されるのか心配なので、ぜひ進めていただきたい。

 最後に、きょうは我が党の予算案を一つの背景にして議論をさせていただきました。私は、議論そのものは議論そのものとして、残念ながら、総理が変わってきたなという感じを、この間、感じております。

 総理は、二〇〇一年の就任直後には、小泉改革に反することをしたら私が自民党をぶち壊す、何度もこの言葉をいろいろなところで言われました。そして、先日の我が党の岡田幹事長の質問に対しては、若干の意訳はありますが、つまりは、抵抗する野党よりも協力してくれる与党の皆さんの話を聞くのは当たり前じゃないですか、こういうふうに言われました。

 この格差が、私は、小泉総理のまさに政治姿勢の変化になっている、今や、小泉総理は改革のための総理ではなくて総理大臣にあり続けるための総理になってしまったのではないか、こう思いますが、総理、反論があれば最後にお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 最初から、小泉改革に協力してくれるために、私はいろいろな方々に対応しているんです。そして、自民党も当初は、郵政改革にも、あるいは道路公団民営化にも反対しておりました。しかし、今は、快くではないかもしれませんが、協力してくれております。そして、これを一歩一歩法案に仕上げていくわけであります。そういう点から見て、私は、自民党を変えると言って登場してきた、自民党が変わらないんならつぶすという考えに、全く変わっていないんですよ。民主党も賛成してくれれば、私はもっといろいろな改革もできると思います。

 自由民主党は、最終的には、いろいろな意見があったとしても、小泉内閣の進める構造改革に協力してくれると期待しつつ、今粘り強く話し合いをしながら進めているということも御理解いただきたいと思います。

菅(直)委員 変節をした小泉総理に協力をすることはできませんのであしからずということを申し上げて、私の質問を終わります。


2003/02/06

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