2003/01/23

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156 衆院・予算委員会 


仙谷議員、政府のデフレ対策失敗を明快に追及 (民主党ニュース)

 民主党の経済財政担当ネクスト大臣の仙谷由人衆議院議員は23日の予算委員会で、政府のデフレ対策の失敗を追及し、インフレターゲット論に釘をさすとともに、中小企業対策として民主党が提案している地域金融円滑化法の制定を求めた。

 仙谷議員は冒頭、小泉首相に「総理は野党第一党とは責任の重さが違うのだから、そこをわきまえて答弁を」と注文し、言い逃れ、はぐらかしが目立つ首相の答弁姿勢を正した。その上で、昨年から3回にわたって実施された政府・与党のデフレ対策の結果を踏まえ「現状をどう認識しているか」と質問。竹中平蔵経済財政担当相は「実物経済は予想より良くなっているが、物価の下落は予測より上回っている」と対策が効果を挙げていないことを認めた。さらに仙谷議員は「深刻な危機がわれわれの目の前にある」との認識が首相にあるのかどうかを質した。首相は「認識は変わらない。倒産企業も、失業者も出た。これは危機。仙谷議員と共通では」と答え、間接的ながら対策の失敗を認めた。

 また、大銀行の貸しはがしが01年9月から02年9月までで7兆5000億円にも上り、優良な中小企業を倒産に追い込んでいる実態を示し、政府系金融機関の活用、さらには民主党提案の地域金融円滑化法の制定を求め「銀行の貸し出し基準を担保ではなく、事業にすべき。また、評価機関、中小企業の駆込み先を設けるべき」と迫った。竹中金融担当相は「ゼロベースで議論する」と答えた。

 仙谷議員は質問の最後に、自民党長崎県連幹事長の公職選挙法違反による逮捕事件に関連して、債務放棄、債務免除を受けているゼネコン7社が同県連に裏金で献金していることを明らかにし、各社支店長の参考人招致を要求。理事会で協議することとなった。


平成十五年一月二十三日(木曜日)

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。
 先ほど来の我が菅代表と小泉首相の応答を拝聴いたしておりまして、やはり総理、あの種の御発言、態度ではまずいんじゃないかという気がしてならないわけであります。

 若造の私がこんな生意気なことを申し上げるのもなんなんですが、先般地元でテレビに出たときに、おふろ屋さんには失礼だけれども、小泉さんはおふろ屋さんの息子さんのようだ、ただユウだけだ、こういう発言をしましたら、大衆的には大変受けました。

 つまり、今、普通の中小企業者を中心とする方々は、いろいろな意味で塗炭の苦しみを味わっているような感じがしているのですね。仕事といいましょうか職が保障されている方々は、それはそれなりの、他の諸外国に比べればまだ豊かな生活を続けていらっしゃるのだろうと思いますが、大変な不安感を持って生活をしておるわけでございます。

 その中で、つまり、結果がといいましょうか実態がこの悲惨な状況であるだけに特に、首相も地元にこの間お帰りになったということでありますが、東京以外のところで、ちょっとお歩きになっていただいて、どこに例えば建設のつち音が聞こえるのか、どこに人の行列する商店があるのか、こういう観点からでも物を見ていただければ、さっきのような自信にあふれた、堂々と居直った態度はおとりになれないのではないか。国民の現在の悲哀感というか、閉塞感というか、うっくつ感といいましょうか、それと先ほどの態度は相当落差があるな、ギャップがあるなというふうに感じたわけでございます。

 つまり、これだけのことをやるんだ、手を上げて髪を振り乱しておっしゃったことが現在どうなっているのかということについての真摯な認識は、私は必要だと思うのです。なぜ現在こうなっているのかということを国民の前にちゃんと説明して、謝るべきところは謝る、この率直な態度が、言動が首相の持ち味であったはずでございます。

 それを、物事をひっくり返して、民主党はけしからぬみたいな話ばかり幾らやっても、政権与党、この国の運営の責任者の立場と、たかだか野党第一党の代表ですから、それは対等にもいかないし、責任も違います。重さが違います。重さが違う。そのことをちゃんとわきまえて御答弁をいただきたい。

 そこで、資料としてお配りしてあるかどうか、お配りしていなかったら配ってください。この「小泉内閣のデフレ対策」というのを持ってきました。

 私がちょっと国会を離れていたこともございまして、こんなに昨年来デフレ対策をやられているということは余り頭の中に入っていなかったんですね。質問のために改めてトレースしますと、点検し直しますと、三回にもわたるデフレ対策をお考えになっている。結果はどうですか。総理でもどなたでも結構ですが、今このデフレ傾向というものはどういうふうになっているんでしょうか。

竹中国務大臣 デフレについては、先ほどからも少し議論が出ておりますが、物価の下落という側面からいきますと、年度を通しては予想を上回るような物価の下落になったということは事実でございます。しかしこれも、短期的に見れば、これは、為替レートの変動、国際的な商品市況の影響も受けますが、短期的に見ると少し違った動きも見られる。

 デフレという言葉が、そこで書いておりますのは、物価の下落ということでは必ずしもなくて、いわゆる経済活性化策をデフレ対策というふうに呼ぶ傾向もあるようでございますが、その中にはそれも含まれておりますが、そういう観点からいうならば、まさに先ほど申し上げましたように、実物経済そのものはむしろ予想を上回る成果になっている。もちろん、絶対的な水準そのものは大変厳しいわけでありますけれども、経済全体の状況からいいますと、予想を少しだけではあるけれども実物経済は上回るような状況になった、しかし、金融面の状況を反映して物価下落は予想より少し厳しい状況になっている、これが今年度の経済であるというふうに思っています。

仙谷委員 そのとおりだと思いますね。

 消費者物価が、特に生鮮食料品を除く物価の下落率を見ますと、〇・九とか〇・八ということになっておるわけであります。どのぐらい厳しいかは別にしまして、名目が全く上がってこないという意味では、特に中小企業、営業をなさっている人には事ほどさようにこたえてくるということなんだろうと思います。

 そこで、ここにごらんいただいております、今のこの第三次にわたるデフレ対策、何かうまくいかなかったことがあるんですか。全部大体うまくいっているけれども、しかし何かほかの要因で、つまり、政府の責めに帰し得ないような天災とかそういうことが起こってこういうことになっておるんでしょうか。こんな程度のことは、現在のグローバライズした経済をお読みになって、日本が直面している産業構造の転換というのはもう十年も前からわかっている話ですから、賢明な竹中大臣であれば、この程度のことは読んで経済見通しをつくるということをできたと思うんですけれども、何でこんなことになったんですか。

竹中国務大臣 経済を活性化するための構造改革でありますから、構造改革にはそれなりにやはり時間がかかるということであります。そこにお示しになっている政策そのものは、まさにその政策がうまくいったかいかなかったかということではなくて、今着実に実行中のものであります。例えば、活性化のための税制改革、活性化を進めるための規制改革の切り札としての特区、これは着実に実行しているわけで、それは間もなくまた成果としてあらわれるだろうというふうに思っております。

 ただ、一点、予想を上回った外的要因というのがあったと思っております。それは、資産デフレを加速する世界的な株安であります。小泉内閣ができてから株価が三〇%以上下がっているというような御指摘がけさもありましたが、アメリカのナスダックは同じ間に五〇%下がりました。ドイツの株価は六〇%下がりました。世界的な株価安の中に我々は置かれている、この点は大変厳しく受けとめて対応していきたいというふうに思っています。

仙谷委員 竹中大臣にお伺いしますが、これ、十年間、日経平均の動きと例えばナスダックと、十年ずらしてぽんと重ねたら、ナスダックのバブル崩壊というのは、もうほとんど同じなんですね。その前に、DAXの、いわゆる株価のグラフですね、あれはちょうど日本のバブルが崩壊した後六年ぐらい、七年ぐらいがてっぺんになりましたか。つまり、日本のバブルが崩壊した後、ドイツのDAX市場に移って、その後、ナスダックに行って、ナスダックが二〇〇〇年の五月に崩壊した。これは事情を読む人は大体わかっていたんじゃないですか、ああ、大体こうなるだろうと。つまり、今の経済が、毎日毎日四兆ドルにも上るようなお金が実体経済とは関係なしに世界じゅうを動き回る、こんな話は十年も前から聞かされているじゃないですか。それがどこへ行くのか。

 だから、今の日銀の金融緩和にしても、後から聞きますけれども、実体経済の方にお金がおりないで、国債にばかり流れているじゃないですか。けさの新聞見ましたら、百四十二円六十銭ですよ、先物が。これを国債のバブルと言わずして何と言うんだというのが常識のある評論家の立場ですね。

 だから、金余り現象の中でバブルがどんどんどんどん移っていっているだけだ。バブルというのはしょせんバブルですから、どこかで泡と消えるという話は当たり前じゃないですか。そんなことはわかっていらっしゃったんじゃないですか。どうですか。

竹中国務大臣 多額のお金がよりよい資産を求めて非常に不安定な形で動き回っているという仙谷委員の指摘は、そのとおりだと思います。

 ただ、やはり日本の経済を考える場合に少し注意しなければいけないのは、八〇年代に起きた日本のバブルというのは、例えば土地等々に対する期待上昇率が非常に高かったということ、ナスダックの最近の株価の低下というのは、むしろITの技術評価に対する非常な過大な期待があったということ、今の国債、国債がバブルであるかどうかというのは必ずしもいろいろな専門家の意見が一致しているわけではありませんが、現実問題として、国債に非常に大きなお金が流れている。これはむしろ、銀行等々で多分にリスクをとれなくなっていることによって、超安全な資産に向かっている。それぞれやはり違う形で、違う要因で、マネーの移動が起こっているということではないかと思います。

 国債に対して、特に銀行等々がたくさん持っているということ等々の問題、これはこれとして議論をすべきであろうかというふうに思いますが、単純に、同じ要因でバブルがこう三段階で動きを変えて続いているということでは決してないというふうに思います。

仙谷委員 いやいや、あなたが資産デフレとおっしゃるから、資産デフレと言うんだったら、世界的な資産デフレはそういうふうにお金の動きとともに移っているという、その説明をしてあげただけですよ。だからそれほど、事ほどさように、そのことによって日本のデフレ傾向や経済見通しが食い違ったから、私に責任ないんだみたいな議論をしてもナンセンスだということを申し上げているだけの話です。

 時間があったらもう少し竹中さんに質問したいところでありますが、ちょっと時間の関係がありますから、小泉首相にお伺いします。

 昨年の党首討論なんかで、だれが危機と言っているんだ、三月危機、五月危機と言ったけれども、何もないじゃないかと、堂々と言っていらっしゃった。いやいや、そうじゃないんですよと申し上げていた。

 それで、この間、一月六日の記者会見で、デフレ退治に積極的な方が望ましい、あらゆる政策手段を動員して、デフレ抑制に向けて、日銀と一体となって金融政策などに取り組んでいかなければならないということをおっしゃっています。

 小泉内閣のデフレ対策を先ほどから三回にわたって見せましたし、今回また、加速プログラムということですか、おつくりになって、それを今度の予算とともに実行なさるということをおっしゃっていますけれども、現在は、特にこの三回、デフレ対策の中にすべて書いた「金融システムの安定」とか「金融システムの確立」とか「不良債権処理の加速策」、こういう項目、つまり、私がおととしの予算委員会で指摘して、当時、柳澤大臣でありましたけれども。アメリカにこんなにばかにされていいのかと言ったら、いやいや、ばかにされる理由があるんですと総理、言ったじゃないですか。当局が信頼されていないんですと。

 依然として金融問題が根っこになって、日本のデフレの危機なのか、金融の危機なのか、経済の危機なのか、財政の危機なのか知らぬけれども、僕は、非常に深刻な危機が我々の前にあるというふうに感じているんですね。総理が、この間、デフレ退治とかデフレ抑制とか日銀と一体となってとかいう話をされるところまでいよいよ来たかと思っているわけですよ。

 何かその辺、その危機感について、総理の基本的な認識というのはお変わりになったのですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 いや、私は、総理就任以来、認識は変わっておりません。改革が必要だ、改革なくして成長なしということで、改革をしないとこのデフレ抑制もできない、多少の痛みが出てきているというのも認識しております。

 そういう中で、いかに改革を積み重ねていくかということでありますし、財政的にも、これは危機的な状況であります。そして、その都度、就任以来、危機、危機、危機だと今にも恐慌が起こるような言い方をされましたから、金融危機は起こさせないということで現実にいろいろな手を打ってきたわけであります。

 確かに、金融の不良債権、この処理を進める過程で、企業におきましても、危機的状況に陥って倒産した企業も出てきたでしょう。失業者もそれに連なって出てくる。これはまさに企業にとっても失業者にとっても危機であります。日本経済全体、これが立ち上がるためには不良債権処理を進めていかなければならないというのも、私は仙谷さんとはある面においては共有しているのではないかと思っております。

 そういう中で、デフレ抑制につきましても、まず金融改革、不良債権処理を進めていく、そして税制改革もする、規制改革もしていく、歳出改革もしていく、そういう積み重ねが必要だ。危機的状況には変わりないけれども、余り悲観論に陥るのは好ましくない。危機だから、今にも恐慌が起こる、だめだ、だめだと。日本人がそんな気でどうなるのか、もっと自信を持つべきだということで、勇を鼓して改革に突き進んでいるんでありまして、余り悲観論ばかり取り上げるのは好ましくないと思っております。

仙谷委員 私も危機意識は人後に落ちないほど深いと思っていますし、私は基本的に楽観論でございます。

 だけれども、危機の深さや広さを糊塗するといいましょうか、あいまいにして先送りするということであっては、いつまでたっても、何というんですか、総低落化みたいな話になっていく。それが実は、小泉さんが総理になって二年間、国民が大いに期待した改革がそれほど進まない。時々マーケットに手を入れてとんちんかんなことをなさる。

 これは小泉さんの責任なのかどうかわかりませんけれども、昨年の二月二十七日に、市場対策、空売り規制強化というのをやられました。三月は、株式の空売りを規制したことによって確かにクリアできました。ところが、その後、株式市場は空売りを規制することによって出来高がどんどんどんどん減ってくる。非常に東京証券取引所の株の売買が弱くなってくるというふうな事態になっているんです。

 あるいは、日銀の金融緩和だってそうです。緩和をすればするほどコールマーケットが死につつある。だれも、百億円貸して、一晩貸したことで二百三十八円の金利をもうけても、手数料で全部損するから、コールで取引しようとしない。そういうことが出てきているんですよ。

 さらに、かてて加えて、二〇〇二年二月二十七日の早急に取り組むべきデフレ対策の中で、「貸し渋り対策等(中小企業融資向け金融検査マニュアル)」がございますが、この貸し渋りというのは、これはどうなっているんですか、ここから対策を打たれて。

 これは、二枚目をごらんください。二枚目の一番右端の欄、「都市銀行貸出残高計」というのがございます。二〇〇一年の九月、もう小泉さんは総理になられておりましたが、ここから二〇〇二年の九月までとっても、中小企業への貸しはがしが七兆五千億あるんですよ、この期間だけで。大企業へは一兆六千億貸し増ししているんですよ。追い貸ししているんですよ。貸し渋り対策をとっても、この表をごらんいただきましたら、メガバンクの中小企業向け貸しはがしはどんどん進んでいるということがわかります。

 次のページを見ていただきますと、これは、私どもは賛成しませんでしたけれども、金融健全化法によって公的資金の注入を受けたメガバンクが経営健全計画を出して、その中で、中小企業にはこれだけの貸し出しを二〇〇三年の三月期には達成すると言ったわけですよ、貸し出し増額を。実績はどうですか。特に、五兆円も貸しはがした銀行があるじゃないですか。次の銀行は二兆円貸しはがしていますよ、中小企業から。

 金融庁、何かこういうことについては、改善命令か何かお出しになるとかなんとかという報道がありますが、一体全体、中小企業に対するメガバンクの貸しはがし、これについては今までどんな手をお打ちになったんですか。

竹中国務大臣 中小企業に対する金融の重要性というのは、私自身も就任当初からそのことに非常に重きを置いて、であるからこそ、リレーションシップバンキングという新しい概念でこれを打ち立てようというふうに考えているところでございます。ただ、やはりマクロ的な、非常に大きな状況変化があるということも考慮に入れなければいけないと思います。

 銀行の貸し出し、全額、バブルの時代に異常に膨らみました。その膨らんだ中身、実は主に中小企業に対する貸し付けであったということになります。それが今、九〇年代以降、特に九〇年代の後半から収縮して調整しているわけですけれども、その調整が中小企業に、ふえたのが中小企業であった分、減るのも中小企業であるという形になっているものであるというふうに認識しております。

 重要な点は、収益力が高くてきちっとした中小企業に対してお金が回らないような状況になっているとすれば、それは困るわけであります。この点については、大企業の生産性の低い、収益率の低下しているところに銀行は確かに貸し込んだという事実がありまして、それを是正するためにも、不良債権の処理、資産査定の厳格化、ガバナンスの強化が必要であるということで、金融再生プログラムの中にもさまざまな措置を織り込んでおります。

 今仙谷委員が御指摘になった昨年九月期の時点での経営健全化の計画、当初お約束したことに対する未達分につきましては、午前中も答弁しましたように、報告徴求を今行っております。報告が来たところでありますので、それに対しては厳正に対処をしたいと思っております。

 いずれにしても、世界的な競争をするグローバルな銀行と、地域、中小企業に根差した金融とは、これは違う側面がたくさんあると思っておりますので、それに関して今、金融審の中にワーキンググループを設けて、新たなルールづくり等々を検討しているところであります。

仙谷委員 この問題も、メガバンクに関して言えば、彼らが八%の自己資本比率にこだわる限り、あなたがおっしゃったオーバーバンキング的な要素もあったかもわからない、だけれども、大企業に対して、特にマーケットから退出を求められているような大企業に対しては、彼らがマーケットの原理によって行動することについて、私はとやかく言わない。つまり、上場企業であればほかに資金調達の手段があり得るという前提になるわけですね、これは、間接金融を借りなくても。そのために上場したわけだ。

 ところが、中小企業は、まさに借金が資本金のようになっているわけじゃないですか、日本の場合には。それを、担保価値が下がったとおっしゃって、今までであれば金利プラスアルファの元金をきちっと払う会社であればむちゃなことは言わなかった、ところが、担保価値が下がったから、さあ耳をそろえて持ってこいみたいな話が、特にメガバンクの支店、地方の支店、徳島においても全く同じです。三十代の若い支店長が、本店の方しか顔を向けないで、何十年も顧客としてつき合ってきた地方のしにせとか企業に対して、耳そろえて持ってこい。倒産に追い込まれるか自殺に追い込まれるかするしかないじゃないですか。そんなことばっかりが地元へ帰ったら聞こえてくるでしょう、自民党の先生方も。こういう点について、私は、これは昨年の二月、つまり一年前にそのことがわかっておるとすれば、何か打つ手はあったはずだと思えてならないんですよ。

 さらに、かてて加えて、この質問の準備のために日本銀行の高松支店に、このごろ貸出DI、そういうのをとっているらしいけれどもどうだ、ファクスで送ってくれと言ったら、送ってきましたよ。何と、九月期がゼロだったんですね、「緩い」から「厳しい」をマイナスすると。これは、金融機関の貸し出し態度。ところが、十二月にはマイナス九になっているんですよ。あるいは、資金繰り判断でいいましても、マイナス三がマイナス三のまま。香川県はマイナス九がマイナス一四。香川県の金融機関の貸し出し態度判断DI、これはプラス二がマイナス七。四国は、マイナス一がマイナス六。次の予測、三月の予測になってくると、我が徳島県はマイナスの一五なんですよ。どんどん悪くなるだろう、こういうふうに日銀だって調べて報告してくれたんです。

 メガバンクの貸しはがしがかなりのところまでいっている、厳しい状況になっていますけれども、かてて加えて、この間、地銀、第二地銀レベルが相当厳しい貸しはがしに入らざるを得ない、こういう局面になっているんですね。この点については、金融庁はどういうふうにお考えですか。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、昨年九月三十日に金融担当になって以来、中小企業に対する金融の円滑化ということで現実的にとれる方法は何かということで、関係閣僚とも相談しながらさまざまな手をとらせていただいているつもりであります。

 我々にできることとしましては、例の検査マニュアルについて中小企業編を作成した、それを今周知徹底しているということであります。その徹底のプロセスが大変重要であると思っております。

 さらには、今回の措置もそうでありますけれども、セーフティーネットの保証を中小企業等々に対して手当てをするということを措置しております。さらに、私自身が一番期待するのは、一刻も早くもっと多様な新規参入、銀行分野に対する新規参入を期待しているわけでございます。これは幾つか現実の話も進んでおりまして、私はそれに期待をしているところであります。

 金融再生プログラムの中には、中小企業に対するデット・エクイティー・スワップも措置できるようにしよう、そういうような措置も盛り込んでおります。

 何よりも、当面、政府系機関の活用が大変重要であるということで、昨年十二月の経済財政諮問会議での政府系金融機関の改革においても、当面、政府系機関は中小を中心に活用する。

 今申し上げたような現実的なさまざまな手段を通じて、銀行部門が傷んでいる中で、可能な限りで中小企業に対する金融を確保するように努力をしているところであります。

仙谷委員 政府系金融を駆使するんだというお話ですよね。私も基本的には、政府系金融、中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫、住宅金融公庫、これを、小泉さんがやろうとしたように、民営化なり民業の圧迫をさせないような業態に変えるとかということは必要だと思ってきたんですよ。だけれども、ここまで民間の銀行がお行儀が悪く、何か、貸しはがしするのが楽しみであったり、それが出世競争につながるようなことをやられたんではいかんともしがたい。当面、二、三年間は、政府系金融機関をフルに動員して中小企業の金融を行う、こういう方針をとらざるを得ないと思い出しました。

 つまり、非上場企業に対する銀行の貸し付けが約三百二十兆円ありますよね。これは全体の貸し付けに対して六八%ぐらいあります。そういう中小企業、非上場企業に働く人々は二千七百万、二千八百万人ぐらいおりました。七五%ぐらいの人は中小企業で働く人であります。ところが、やはり彼らの営業の利益率、有利子負債に対する営業の利益率というのは三・九%、上場企業の一二・三に比べると三分の一あるかないか、こういう状況です。そしてまたこのデフレですから、極めて厳しい状況です。先ほど申し上げましたように、政府系金融を動員するしかないな、こう思っております。

 余り前回の、いわゆる信用保証制度の枠を、特別保証、無担保特別保証をやって、どこかの都議会議員が走り回ってこれを金もうけの種に使ったなんて、こんなばかなことが起こらないようにしなきゃいけませんけれども、政府系金融機関の中で審査をしながら不動産担保ではなくて事業に貸していく、このことを政府系金融にやっていただく。いかがですか、平沼大臣。

平沼国務大臣 仙谷委員御指摘のように、大変中小企業に対する金融というのは厳しいわけでございます。先ほど、日銀からのDI、この数字をお出しになられましたけれども、大変そこも厳しくなっているわけであります。

 政府系金融機関についてのお話がございました。これに関しては、私は、最終的には日本の経済が回復すれば民に任せることは民、こういう形は正しい方向だと思いますが、現状の状況ではとてもそういう状況じゃない。そういうことで、私は実は経済財政諮問会議等でもそういう意見を出させていただきました。

 そこで、特別保証制度のお話になりましたけれども、ここは、三年やりまして、そして百七十二万社に利用していただいて、そして保証額も二十八兆九千億だったわけで、これはこれで非常に効果が上がりました。そういう意味で、三年、異例特例の措置、こういうことで打ち切りましたけれども、しかし、昨年の臨時国会の中で新たに中小企業信用保険法、これを改正させていただいて、非常に大幅なセーフティーネットの拡充をさせていただきましたし、また、今こういう厳しい中で、このいわゆるお願いしている補正予算の中で借りかえを容易にして支払いを楽にする、そういう形で、私どもとしては、現状厳しい中小企業への金融に対してはでき得る限りいろいろな政策手段で対応していきたい、こういうふうに思っております。

 いわゆる本人保証、事業計画に着目するということは、新しいこれからの創業に対してそういう法律もつくらせていただいて、これはスタートしました。そういった形をまた利用してはどうか、こういうことでございますけれども、現状、私どもは、今の政策手段でできる限りやっていきたい、こういうふうに思っているところであります。

仙谷委員 時間があれば産業再生機構のところでも私の方から意見を申し上げたいと思っておったんですが、つまり、今保証の話が出ました。中小企業の方々は個人保証をとられておりまして、何か事あると本当に骨の髄までやられるという恐怖感がある。だから、死んで、生命保険でも掛けておいて、これで何とか払おうかみたいな気になってくるという、悲惨な状況にあります。

 それに比べますと、メガバンクも銀行の経営者も大企業も、会社がつぶれようと何しようと自分の身には及んでこないみたいなのんきなところにおるというのが、日本の非常に、何とも言えない、二重構造というか格差だ、このことを我々は認識の基本に置かなければいけないんじゃないかと改めて思っておるところでございます。

 そこで、現実的な補正予算の話に一点だけ入りますが、中小企業への金融について、何か金融庁さんが、中小企業金融等に関するモニタリング体制の整備、八億七千九百万という予算が補正予算についたんですか。何をするんですか、これは。あるいは、今まで何か、やっていなかったからこんなものをこれから頑張ってやろうということなんですか。いかがでしょう。

竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の補正予算案で、中小企業等に対する安定した資金供給を図る上で、その供給源となる金融機関の健全性の確保が前提にあるということですので、金融機関の収益性、流動性等の状況をタイムリーに把握するためのモニタリングを整備する、これはモニタリングシステムの機能拡充ですけれども、予算をお願いしております。

 これは何かということですけれども、まさに金融機関の市場リスク、信用リスク、経営リスク、そういうのをしっかりと把握していこうということに尽きます。

 こういうのは前からやっていたのかいなかったのか。これは、平成十一年度から、こういった状況について報告を求めるなど、これは現場ではなくて、いわゆるオフサイトのモニタリングというふうにいいますけれども、そういうのはやっておりました。今回、状況をさらにつぶさに把握して強化するために継続的かつ定量的な把握をしたい、そのためのシステムをつくりたいということで予算をお願いしている次第でございます。

 繰り返しますが、金融機関の市場リスク、信用リスク、それと流動性リスク、そういうのをしっかりと把握していくことが、中小企業に対する金融を、これは中長期的な観点からでありますけれども、円滑化し奉仕をする大変重要なポイントであるというふうに考えているわけであります。

仙谷委員 何か英語も横文字も出てくるのでよくわからないんですが、金融機関に対するモニタリング体制を強化すると金融庁のペーパーに書いてあります。

 だれが金融機関のお行儀をモニター、監視するのかということを聞いておるんです。どういう体制が金融機関を監視するんですか。何を監視するんですか。そして、例えば、私がさっきから申し上げておりますように、中小企業の方々が、ある意味で常識的に見れば不当な貸しはがしやあるいは取り立て、追い込みみたいなものに遭ったときには、何か訴え出ることがそのモニタリングの体制の中にできるんですかどうなんですか、それを聞いているんですよ。

竹中国務大臣 今回お願いしていますのは、モニタリングのためのデータベース、そのシステムをつくるためのお金ということになります。

 金融庁としては、監督行政そのものの中に既にこういうシステムを、こういう制度を持っているわけです。もちろん、何かありましたら早期是正のための措置をとる。それ以前の段階として、我々ここ数年ずっと研究しておりますのは、いわゆる早期警戒というか、流動性とか信用性とか、いろいろなシグナルを常に得ていて、何かあった場合に、何か改善命令とかそういうことをする前に、早期の警戒をするような、そういう制度をつくろうというふうにずっと考えているわけです。

 そのためのシステムの部分を今回予算にお願いしているわけで、それはまさしく監督行政全般の中に位置づけられているもので、それを、早期警戒の部分を強化するための予算のお願いであるというふうにお考えいただきたいと思います。

仙谷委員 民主党は、中小企業の経営者、特にまじめに働いている経営者の団体の方々から、参議院議員の櫻井さんが中心になって協議をして、地域金融の円滑化に関する法律案をつくっております。国会にも前通常国会で提出をしております。

 どういうものかといいますと、こういう、地域における金融機関のお行儀といいますかビヘービアをちゃんと評価する機関を国でつくろうではないかということを、評価委員会をつくるということを基本にしているわけでございます。そして、国会にも報告をさせるとか、あるいはそういう検査を委員会が直接銀行等に対して行うことができるというふうな法案を出しております。

 私は、今おっしゃられたような、何かコンピューターの上でマクロ的な数字を、信用性か流通性か何かわかりませんけれども、そういうものを見るんだとおっしゃるんだけれども、現実に生身の経済の中で、つまり銀行取引をされている事業者の方々が欲しいのは、やはりこういうむちゃくちゃなことを言われたりむちゃくちゃなことをされて、どこへ言っていけばいいんだ、こういうことだと思うんですね。

 今ほど、銀行業に携わる方々が、襟を正していただくというよりも、もっと前向きに、リスクをとって、事業に貸す、事業を評価するんだという基本的な方針のもとに金融業に取り組んでいただかなければならないことはないと思っておるわけでありますが、どうもそうなっていない。何か怨嗟の的になっている。いつ地元へ帰っても、とにかく、金融機関のああだこうだということを私のところへ訴え出てくる方が多いんですよ。それはそれで私もよく聞きますけれども、お伺いしなきゃいかぬと思っているけれども、しかし、これはどうなっているんだ、この銀行業界はという気持ちが絶えないわけであります。

 自民党の方々にもお願いしたいんですが、我々金融アセスメント法案と呼んでいますけれども、こういう地域金融の円滑化に資するための法律を今からつくる、独立の行政委員会で、つくる、第三者的に金融機関のビヘービアをちゃんとモニターする、評価するという機関をつくって、そしてそこから適宜勧告なりなんなりを出していくというふうな制度をつくったらどうかと思うんですが、総理か竹中大臣か、いかがですか。

竹中国務大臣 これは、かなり以前、実は仙谷委員と御議論させていただいたことがあるんでありますが、私自身も、金融機関の評価の基準というのは多様でなければいけないと思います。金融庁として一義的にまずやらなければいけないのは、信用リスクとか流動性のリスク、そういうことをまずきちっとチェックして市場全体に混乱が起きないようにする、これは金融当局としてはまずやらなければいけない議論なわけでございますけれども、今問題になりつつあるのは、そういった問題を超えた、むしろ社会的な評価というような問題だと思います。

 この金融アセスメント法案等々については、その手法等々について、私なりにこれは少し難しいのではないかと思うところがあるんでありますが、例えばアメリカにあるような、地域に対して、地域で、地元で集めたお金は再投資できるような、そういった社会的な枠組みが必要なのではないか。そういう多様な評価の側面は、今私は日本においても必要になっていると思っております。であるから、片仮名だと怒られるかもしれませんが、いわゆる大手の世界的な銀行ではなくて、地域に根差したリレーションシップバンキングの問題を別途考えようということにしているわけでありまして、その中で今、問題意識としては、その意味では、委員がおっしゃった社会的な評価のようなものをどのように生かしていくかということは、このワーキンググループの中でもゼロベースでぜひ議論をしてもらいたいというふうに思っているところであります。

仙谷委員 先送りみたいな話になりますから、ひとつ自民党の皆さん方にこの金融アセスメント法案に賛成していただいて、竹中大臣がおっしゃられるような立派なものができるのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、早急に、金融機関を本格的にモニターし、評価する制度をつくっていきたい、こういうふうに考えております。

 時間の関係で、今度は塩川大臣に、円安問題についてお伺いします。

 財務大臣、七月の二十二日に私が、要するに、日本は経常黒字がたまり過ぎている、それも、貯蓄として公的部門にいっぱい入り過ぎている、動かない、そのことが分不相応な円高の原因である、こういうお話をさせていただきました。そのときに、財務大臣としてはどうお考えですかと申し上げましたら、各国の財務担当者間におきましては激しく情報の交換をしておりますし、介入の問題につきましても、みずからの一存でやるということをやりました場合に、世界のそういう自由な秩序を崩してしまうこともございますので、その間は十分な両方の情報の交換をやっての上でしておるということは御了解いただきたいと思います、国際機関を通じまして、話し合いによって徐々にいい方向に誘導していきたいと思っておりますので、努力はひとつ続けてまいります、こういう、わかったようなわからないような答弁をされたわけであります。

 ところが、十二月になるや塩川さんが、円安容認の発言を記者会見でもするわ、日本経済新聞に寄稿をして、購買力平価のところまで円レートを持っていくべきである、そういう円高を是正すべきであるという発言を堂々とされたので、私は、ついにその気になっていただいたかと思っておるわけでありますが、お考えを変えられた、あるいは、日本の通貨政策として購買力平価のところにまで為替レートを近づける、そういう政策をとって、いわゆる金融、経済面における外交交渉も行う、こういうことなんでしょうか。

塩川国務大臣 私が昨年の夏申しておりましたことは、ずっと一貫して、為替相場には政府が積極的にその時々の場面に応じて介入して、これを自分の思っておる相場に誘導していくということはやるべきではないということを何遍も申しております。できるだけ市場で、マーケットで決めるのが正しいと思っておりますが、しかし、急激に変動しました場合にはいろいろ経済に悪影響を及ぼしますので、急激な変化に対しては適当に介入したり、あるいはその動向を監視したりするということをやるということをやっておりました。

 ところで、最近の状況を見まして、日本の輸出入の状況を見ました場合、やはり円高の傾向になってきておるということは、日本の産業界にとって私は余りいいことではないと思っております。そうであるならば、これは購買力平価にできるだけ近づけてくれる方が本当は真正の評価に、レートになるのではないかということを考えておるのでございまして、アジア諸国を見ました場合に、為替のレートが全く変動制でやっておる国もございますし、そうではなくしてある程度固定化しておる国もございますし、いろいろございますが、それらの国もできるだけ購買力平価に合わせた実勢にするような、そういう市場が構成されることが望ましい、そういう希望を述べたということでございます。

仙谷委員 いやいや、割と決意を持ってこういう投稿をされたんじゃなかったんですか。私は、よほど決意を持ってされて、例えばこの二月の、当初一日だというふうに言われておったようでありますが、いわゆるG7、ここで塩川財務大臣あるいは速水総裁がこの問題を提起して、我が党から新保守党というのをつくられた熊谷さんが言っておるんですか、逆プラザ合意、つまり、プラザ合意のときの反対の、為替レートについて、政府がちゃんと国際会議の場で円高是正をすることについての諸外国の同意を取りつけるという、つまり、購買力平価のところまでだったらいいんだよという同意を取りつける、こういうお気持ちになられたのかなと思って聞いておるんですが、そうではないんですか。いかがですか。

塩川国務大臣 基本的にはそうなるべきであるということは、私は今でも思っておりますし、ずっと以前からそう思っておりますが、それをもって、その事実で、現在のレートとの相違があるからといって直ちに介入をする、そういう姿勢で言っておるものではないということであります。

仙谷委員 いやいや、手段は介入だけではないと思いますよ、それは。それは、国際的にこの議論をして、今原口君が言いましたけれども、合意を取りつける方向で努力をするのかということですよ。

 つまり、すぐそんなことにオーケーが出るとかなんとかという甘い考えを持つべきじゃないということは私もわかりますよ、それは。アメリカがむにゃむにゃ言うかもわからない、特に今の経済の状況で。あるいはドイツが、さあどういう態度に出るのかということもわからない。それは我々が外国情報で入ってくる情報から見ましても、そうそう簡単ではないと思います。思いますけれども、この問題は、先般も申し上げましたように、そしてこのお渡ししました資料の三枚目、「国債保有高と銀行貸出」という表を見ていただければわかりますけれども、日本の国債と金融の関係というのが余りにも官的、つまり官のところへお金が集まって、硬直し過ぎているんですよ。まだ外国債券でも買われる方がましだ。

 つまり、どのぐらいこれは硬直しているかといいますと、ことしの予算案を組まれたこの資料で見ますと、平成十四年度末、つまりことしの三月までに発行される普通国債が四百二十八兆円ですよね。そのうち、日本銀行、国内銀行国債保有額、郵便貯金、簡易保険、生命保険、それから公的年金、ここまででどのぐらいあると思いますか、これ。三百十三兆円ありますよ、大体。三百二、三十兆はいつも雲の上で国債が泳いでいるということです。その分お金がどんどん事業化の世界に入ってくればいいけれども、入っていない。

 ちなみに、日銀にお伺いしますけれども、これからインフレターゲットの話を聞くわけですが、その前に私は、先般の、日本銀行が銀行から二兆円の株式を買い取るという決定をしたというのは、日銀法三十三条から見てもいかがなものかと思っております。今、お伺いしますと、二千五百億円ぐらいの株式を買い取られているんですか。それで、日本銀行としては、日本銀行から払ったお金、メガバンクなり地銀が受け取ったお金は一体どこへ行っているんでしょうかということについて、わかりますか。

速水参考人 お答えいたします。
 九月の十八日に発表いたしまして、約一月余り前から実施いたしておりますが、日本銀行の銀行保有株式を買い入れるやり方につきましては、これは金融システムの安定確保と不良債権問題の克服に向けた環境整備を図るために行ったものでございまして、株価を下支えするといったようなことをねらったものではございません。一切ございません。

 一月二十日現在で、今おっしゃいましたように、累計で二千八百億円余りの株式を買い入れておりますが、これは私どもが直接買うんじゃなくて、信託銀行を通じてやってもらうことにしております。これらの資金は、まず株式を売却した金融機関の日銀当座預金に入ります。その後、その資金がどのように用いられていくか、これは各金融機関の資金の運用調達方針などに依存して、一概には何とも申せません。ただ、確かに申し上げられますことは、日本銀行の株式買い入れによって、金融機関の保有株式に係るリスクはその分軽減されたということは言えると思います。

 このことによって、銀行の自己資本の圧縮がとまっていくということは、不良貸し出しの整理などにも必ずいい効果が出てくると私どもは願っております。各金融機関は、不良債権問題の克服とか貸し出しの増加に向けて、先ほどからおっしゃっておられます、一段と取り組みやすくなるものと考えております。

仙谷委員 今のお話だったら、銀行を助けたという以外のことは何にもおっしゃっていないような気がするんですけれども。

 つまり、このお金がちゃんと貸し出しの方に回るんであればまだ救いもあるということを言いたいわけですよ。ところが、これが回らないで、国債を買ったり、どこかに、準備預金か何かに積み上げられてそのまま、豚積みというらしいですけれども、ほっておかれたりするんであれば全く意味がない。それは、株式の価格が低落することによって自己資本が毀損されることについては、そのリスクは少なくなるかもわかりませんけれども、それだけだったら銀行を救ったということにしかならないじゃないですか。そんなことは、それは日銀の責務かもわからぬけれども、非常手段をとってやるような話では私はないと思うんですね。

 そこで、その非常手段の非常手段のインフレターゲットの話をお伺いします。

 先ほどからお伺いしていますと、きのう、山崎幹事長と神崎党首ですか、代表ですか、公明党の、皆さん、インフレターゲットをやるべきだ、三%ぐらいのターゲットをやるべきだと。インフレターゲットと言うと生々しいから、物価何とかとおっしゃっていましたな、さっき。物価安定化目標とおっしゃったんですか、物価安定目標政策を導入したらどうかとおっしゃいました。

 これは速水総裁、テレビをごらんの日本のかなりの方々は、インフレターゲットというのは何かわからぬと思うんですよ。何かええことするのかなと思っていると思うんです。いやいや、本当ですよ、これは。何か私も新聞だけ見ていたら、今からいいことが始まって、日本が緩やかなインフレになっていって、気持ちのいい成長路線に返れるのかなと思ったりします。そういう新聞もあります。それに加勢する学者も評論家もいっぱいいらっしゃいます。ワッショイワッショイの大合唱みたいに聞こえてくる。果たして日本銀行に何をせいと言っておるんですか、このインフレターゲット論者というのは。

 つまり、今どのぐらいの金融緩和がされているんですかということをまず聞きたい。つまり、バブルのときの緩和された金融、過剰流動性でバブルが起こったと言われたときのこれに比べてどのぐらいの金融が緩和されているのか、オイルショックのときと比べてどうなのか、アメリカと比べてどうなのか、どのぐらいじゃぶじゃぶの金が、日本銀行がお札を刷って、少なくとも銀行まではまき散らかしているのか、そのことを教えてください。

速水参考人 日本銀行の量的緩和がどれぐらいになっているかということでございますが、ちょっと数字を日本銀行のバランスシートでごらんいただけば一目わかるんです。

 総資産、総負債、今百二十五兆円。九月末は百四十兆ぐらいまでいっておりましたけれども、百二十五兆円ということは、これはGDPの二六、七%ですね。ヨーロッパの中央銀行にしても兆に換算して百兆まではいっておりませんし、アメリカのFRBももっと少ないんです、八、九十兆。日本は、一九九八年度末に八十兆ぐらいでしたのが、今は百二十五兆円になっているんです。これはGDPの二七、八%。世界全体でこれだけ大きな国はございません。

 この資産は、我々が買った資産、国債を買ったり手形を買ったりしたものを流動性として市場に出して、負債の方は、それで銀行券や銀行の当座預金がふえていくという形でバランスがとれているわけですけれども、それだけの金が市場に流動性として出ているということは、今の日銀の総資産、総負債を見ていただくだけで一目瞭然、おわかりいただけることかと思います。

 それから、先ほどおっしゃったインフレターゲットについて民間はどう思っているかということは、私もこれはよくわかりません。国民の皆さんがどう思っているかということは、私は、決してみんながそう思ってはいないんじゃないかというふうに思っております。

仙谷委員 総理、時間の関係で簡単にいたしますが、まず、一月九日に竹中さんに、麻生政調会長と相沢税調会長が出向いて、日銀による株価指数連動型上場投資信託、ETFの購入や、それからインフレ目標を導入せよということを告げた。竹中さんは、一月十五日に、それを受けてオーストラリアへ行って、オーストラリアというのはインフレだったからインフレターゲットを導入したんですよね、ところが、一つの可能性のある選択だ、デフレの日本にその経験を生かしたい、こうおっしゃって、何かあたかも秋波を送った。一月十五日には、溝口さんという今度財務官になられた方が、インフレ目標を含めて実効ある金融緩和の方策を追求していくことが非常に大事だ、こう言っておる。

 それで、まあ日銀と一体になって、デフレに対する強力な政策が必要だ、こうおっしゃっておって、総理もインフレターゲティング政策にくみして、速水さんの後の総裁については、デフレ退治、デフレと戦う人がいいんだ、こうおっしゃっていますから、そういうお考えに少々心が動いていらっしゃるんですか。このインフレターゲットをやったときの弊害というのも何か頭に入っていらっしゃいますか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、インフレターゲットという言葉を使ったことはありません。現に、かなり前からインフレターゲットを導入すべしという議論が我が党内から出ていることも承知しております。また、私に対しても、このインフレターゲットを導入しないために私を厳しく批判している方もたくさんおられることも承知しております。

 しかし、速水総裁自身、デフレファイターなんですよ。そういう中で、インフレターゲットに対しては速水さんも申し上げておりませんが、このデフレを退治しなきゃならないということについてはそのような認識を持っておられると思います。だからこそゼロ%以上を目標にしていると。インフレターゲットという言葉を使っていません。

 今でこそ、小泉内閣がインフレターゲットを採用しないから、採用しろ採用しろという評論家なりエコノミストなり議員が出ています。いざ、本格的に小泉内閣がインフレターゲットを導入したら、もうマイナス、批判の合唱だということは私よくわかっています。だから、インフレターゲット論は私は一言も使っていないんです。

 しかし、このまま物価上昇がマイナスというのはよくない。そういう意味において、やはりデフレ退治に積極的にならなきゃならないということを話しているわけでございます。

仙谷委員 それならば、総理、私がこの間から言っているように、公的資金、郵貯、簡保の資金、これが国債をこれだけ買っているんですよ、さっき示したように。今、それで、外債、外国債券のポートフォリオ五%なんですよね。上下幅五%ありますから、あと五%ぐらい買い増しするように総務大臣とよく話して、外国債券を買うと。円安いきますよ、少々は。御期待のデフレ傾向が少々是正されるかもわかりませんよ。そういうふうに私の方からも提案しておきます。

 時間がなくなりましたけれども、これだけは聞いておかなければなりません。菅代表からもお伺いしたわけでありますが、長崎県連事件、えらいことでございます、これは。

 新聞報道によりますと、こんな当たり前のことをしていて何で悪いんだという声が自民党内ではあるというふうに聞きます。あるいは新聞報道を見ますと、長崎県連方式、長崎方式として十年も定着しているという説もあるし、いいですか、二十年、三十年前からこれを行っているという説もある。さらに、県レベルでは、長崎県の土木技監という公職があっせんをしているという説もある。つまり、奉加帳を持って回りなさいということを技監がやっているという説もある。どうも私の調査でもその辺までいっておるようであります。ゼネコン行脚の献金要求。

 そこで、先ほど問題になりましたのは、時間がないから結論からいきますが、公職選挙法百九十九条の特定寄附の禁止。これは、選挙のときに、知事さんや県会議員さんは県の工事を受けている人から寄附をもらってはならない、国会議員は国の工事の受注を受けている企業から選挙運動費用として寄附をもらってはならない、これが中心になります。この違反。実質的に知事選挙についてゼネコン行脚をしてお金をもらった。地元の業者と、いわゆる東京や大阪に本店のあるゼネコンの支店を回って、ちゃんとだれかが割りつけをしてくれた、受注額に応じて多分何%ということでしょうね、やった、寄附をもらったというのが一つ。

 もう一つは、何と、事もあろうに、政治資金規正法の二十二条の四、三事業年度にわたり継続して政令で定める欠損を生じている会社は、当該欠損が埋められるまでの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。毎年やるものですから、ゼネコンさんでも、このごろ株価が十一円になったり十円を切ろうとしたりする会社もありますし、この間、債務免除、債権放棄を受けてきたゼネコンさんというのは相当多いわけであります。このゼネコンさんのところへも回るものだから、ゼネコンさんは表で献金できない、裏金で献金した。名前出してもいいんですが、こういう二つの事件が絡まっているというのがこの長崎県連事件でございます。

 一つは、委員長、これね、ひとつ、九州の福岡支店だと思いますが、ゼネコンの名前わかっておりますから、各支店長を参考人としてお呼びいただいて、この種のゼネコン行脚で、長崎方式で何年もお金集めを受注業者からしてしまった、表あり裏あり、こんなやり方をそろそろやめましょうよ。

 ひとつ、いかがですか。参考人としてお呼びする。七社です。私がつかんでいるのは七社の支店長。いかがですか。

藤井委員長 理事会で協議いたします。

仙谷委員 ぜひ呼んでいただきますように。

 というのは、総理、総理が去年の三月におっしゃったじゃないですか。公共事業受注企業から政党への献金に対しては規制強化をせいと。こんなことはやめようということをおっしゃったじゃないですか。このことをやめるためにも事実調査をして――まだこんなことを平気で、慣行か何か、得意そうにやっている、当たり前だという感覚でやっている。公共事業がこれだけ問題になって、財政がこれだけ逼迫する、そして債権放棄まで受けた企業が、大ゼネコンが赤字になりながら裏金を出す。もうやめましょう、こういうことは。だから、やめるために、総理もちゃんと指示したとおり法律をつくってやめる、調査も尽くす、このことについての御決意をおっしゃっていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 長崎県連の問題につきましては、これは大変我々も深刻に受けとめなきゃならないと思っております。あっせん利得処罰法あるいは官製談合防止法、成立、改正強化いたしましたけれども、さらに、今仙谷委員が言われたような政治改革に向けた一つ一つの改革、どういうものがいいか検討していかなきゃならない問題だと思っております。

仙谷委員 終わります。


2003/01/23

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