2001年5月25日 人権救済制度の在り方について(答申) 戻る答申目次情報目次

調査手続・権限の整備

第6

 調査手続・権限の整備

<1> 法務省の人権擁護機関による現行の人権侵犯事件の調査処理制度においては,専ら任意調査により事実関係の解明が図られているが,関係者等から協力が得られない場合は調査に支障を来し,事実関係の解明が困難になる。積極的救済を図るべき人権侵害については,救済手法を実効性あるものとするだけでなく,その前提となる事実関係の解明を的確に行えるようにすべきであり,実効的な調査権限を整備する必要がある。もっとも,人権救済制度の性格上,裁判所の令状を要するような直接的な強制を含む強い調査権限まで認めるべきでないと考える。

<2> 調査権限の内容や実効性担保の程度については,他の裁判外紛争処理制度(ADR)における調査権限の整備状況等も踏まえながら,例えば,過料又は罰金で担保された質問調査権,文書提出命令権,立入調査権など,救済の対象や救済手法の内容との対応関係において真に必要な調査権限の整備を図るべきである。また,人権救済機関の調査に対する公的機関の協力義務を確保する必要がある。

<3> 調査の範囲,対象は,相手方の人権への配慮からも過度に広範であってはならない。行き過ぎた調査により,相手方の内心の問題やプライバシー等に必要以上に踏み込むことにならないよう,十分留意する必要がある。

<4> マスメディアによる一定の人権侵害に対しては,積極的救済を図るべきである(第4,4(1)イ(イ))が,その場合においても,表現の自由,報道の自由の重要性に配慮し,また,マスメディアがその有する責任にかんがみ,自主規制の取組を進展させることを期待して,任意的な調査によって対処すべきものと考える。その際,人権救済機関としては,調査への協力を真摯に求め,調査過程の公表等を通じて,事実関係の解明や被害者の救済を図るべきである。


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