2003年12月15日

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158 衆議院イラク支援特別委員会−(6)

質問者=穀田恵二(共産)、照屋寛徳(社民)、中川正春(民主)


平成十五年十二月十五日(月曜日)

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、総理に質問いたします。
 戦後初めて、自衛隊がイラクという戦争が継続している戦地に派兵される重大な事態です。私は、自衛隊のイラク派兵に反対し、派兵を決めた閣議決定の撤回を求めるものです。
 イラク問題の解決は、米英軍主導の支配をやめ、そして国連中心の枠組みによる人道復興支援に切りかえること、その枠組みのもとでイラク国民に主権を返還し、米英軍を撤退させることだ、これが私たち日本共産党の基本的立場です。
 自衛隊のイラク派兵は、アメリカが始めた国連憲章違反のイラクへの無法な侵略戦争、それに続く不法な占領と現に戦闘が続いている米英占領軍を支援するもので、それはイラク国民の自主的な国の再建を助けるどころか、テロと暴力を拡大し、一層の泥沼化をつくり出すことになります。
 また、戦争状態にあるイラクに自衛隊を派兵し、米英の軍事占領を支援することは、海外での武力行使に道を開くことに結果としてなります。日本は、あの侵略戦争の痛苦の経験から、戦争はしない、軍隊は持たない、国際紛争解決のために軍事力を使わない、このことを決めた国です。この日本国憲法を真っ向から踏みにじり、日本の進路を誤った危険な方向に導く歴史的汚点となるものです。多くの国民がこの点を危惧しています。
 きょうは、具体的に、総理が記者会見で行った活動内容について質問をいたします。
 総理は、先ほどもありましたけれども、今度の基本計画に基づいてアメリカ軍の物資、そして兵員を輸送する、このことは先ほどもそれらしきことを述べましたが、それは認めますね。
    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 米英軍に物資の協力ができれば、物資の協力はいたします。(穀田委員「兵員」と呼ぶ)兵員とかそれは、日本の活動に対して協力してくれる、場所によって私は違ってくると思いますが、ともかく戦闘行為には参加しない。アメリカ、イギリスができるようなことを日本ではできない場合もある。日本が行くのはあくまでも復興支援、人道支援だ。兵員の輸送の場合も、日本の自衛隊の活動に協力してくれる場合、現地の状況で、それは絶対ない、可能性を言えばね、これからどのような協力をしてくれるかわかりませんけれども、アメリカ軍の方針が、全部兵員だ、一人も輸送しちゃいけないということにはならないと思っております。
穀田委員 総理の答弁で明らかなように、いずれにしても物資も輸送する、兵員も輸送する。問題は、そのアメリカ軍が現地でどんな活動をしているかということなんです。
 なぜ私が自衛隊による米軍の物資や兵員輸送を問題にするかというと、米軍の活動が余りにもひど過ぎるからです。例えば、イラク占領米軍は、五月のブッシュ大統領の大規模戦闘終結宣言から半年余りを経て、空爆を再開しています。そして、具体的には、抵抗勢力の掃討作戦と称してアイアンハンマー作戦を展開しています。低空飛行しながら集中砲火を浴びせる、AC130、さらに戦車の装甲も貫く機関砲を搭載したA10攻撃機、最大一トンにもなる大型爆弾、誘導ミサイルなどの飛行機による攻撃もやっています。
 こういう作戦が一体何をもたらしているかなんです。
 この間、新聞にも報道されていましたように、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチというのが次のような報告を出しています。米軍が旧フセイン政権幹部をねらって行った空爆は、結果として民間人だけを殺傷した、精密誘導爆弾などで、標的の周辺住民ら数十人が死亡し、事実上無差別攻撃となっている事態を指摘しています。
 また、この間、雑誌に載っていますが、総理も御承知かと思うんです。シジャル村で起こったということはとても悲惨な事態でした。米軍の武装ヘリコプターが一軒の農家に六発のミサイルをぶち込む。そして、農民が二人死亡し、子供二人を含む三人が負傷し、大変なことになっている。これは、引き金となったのは、実は、夜中に犬がほえ、泥棒と思って空に二発撃った、これをきっかけにしてこんな攻撃がやられている。こういう実態です。
 だから、米英軍が、人を人とも思わない乱暴な行為による住民被害が至るところで起こっておる、こういうことが枚挙にいとまがないということなんです。
 問題は、こういう掃討作戦を展開している米軍の物資と米兵を自衛隊が輸送する、そういう活動もやることになるんだなということをお聞きしたいんです、総理。
小泉内閣総理大臣 無辜の市民を犠牲にするということは、これは大変悲惨なことであると私も思っております。こういうことはあってはならない。
 しかし、米軍以上に無謀な、悪逆非道なことを行っているのはテロリストなんです。日本人の外交官、あのように武装集団が殺害する、民間人も殺害する、国連職員も殺害する、赤十字も攻撃する。戦争が起こる前から、ニューヨークのテロでは、何にも関係ない人が三千人近く、テロ活動によって亡くなっているんです。日本人も二十四名の犠牲者を出しているんです。これはイラク戦争の前からですよ。むしろ悪逆非道なのはテロリストじゃないですか。
 このテロをいかに抑止する、そういうことから、イラクをテロリストの温床にしちゃいかぬ。フセイン政権も、今までイラク国民にどのような残虐なことをしていたか、その前にクウェートを侵略してどのような行為をしたか、みずからの国民にどれほどむごい仕打ちをしたか、そういうことをなくそうということで、今、国際社会が協力しているんだと私は思っております。
穀田委員 総理は、そういう米軍の輸送を行うのかということに対する質問に答えていない。
 大体、テロの問題でいうならば、まさにテロを導き寄せているというのは、今日のアメリカやイギリスの占領軍の、無辜の人たちを含めた多くの住民を傷つけているところにあるということは世界も承知しているじゃありませんか。
 問題は、今私が言っているのは、その意味でいえば、テロリストを孤立させる、またテロの土壌を絶つ、そのためにこそ、私は、先ほど基本的な考え方を述べたように、米英占領軍のそういう支配、占領をやめるべきだ、このことを言っているんです。
 問題は、私が問うたのは、そういう掃討作戦、ひどいことをやっている、こういう事態の物資についても米兵についても送るんだな、輸送するんだなということを聞いているんですよ。それについて答えてください。
小泉内閣総理大臣 日本は、そういう戦闘行為には参加いたしません。しかし、日本の物資が米軍兵士に使われる場合もあるでしょう、食糧なり水なり。
 そして、今までの活動に対して、米軍撤退しろと言われますが、国連も米軍撤退しろなんて言っていませんよ、今。フランスもドイツも、米軍にイラクから撤退しろなんて言っていませんよ。共産党は、米軍に撤退しろと言うんですか。撤退した後、イラクはどうなっちゃうんですか。今よりももっと惨たんたる悲惨な状況になるのはイラク国民ですよ。その辺、共産党はどう思っているんですか。
穀田委員 それは、先ほど基本的立場で言いましたように、早期に撤退すべきだ、明らかじゃないですか。そのことを国連も、フランスやドイツ、そして中国やロシアも、早期に移譲すべきだ、そのために早期に撤退すべきだ、そんなことを言っているじゃありませんか。
 問題は、そうじゃなくて、今あなたは、掃討作戦に参加していない、それを言っているんじゃないんですよ。そういう掃討作戦は米軍が行っているんですよ、それを支援する活動になるじゃないかと言っているんですよ。そこをはっきりと答えてください。
 実は、この間の安全確保支援活動、つまり今、総理がいつもおっしゃっている人道支援、一方では安全確保支援活動、これはやっているんですよ。その中に、実は、例えばフセイン残党の掃討作戦をやった場合、それから武装解除のための襲撃や、敵の部隊を打ち破る攻撃や、さらにはイラク人の米占領軍への抗議や抵抗運動に対する鎮圧、これも安全確保支援活動の事例になるということを政府は答弁しているんですよ。だから、私はそれを聞いているんですよ。
小泉内閣総理大臣 それは、安全確保の後方支援活動は物資の支援もあり得ます。しかし、今、米軍撤退しろなんというのを国際社会で言っているというのは私は初めて聞きましたね。今、米軍撤退してどうなるんですか、イラク。もうますます混乱状態になりますよ。そういう前提で話をするというんだったら、合わないのは当たり前ですよ。今、このイラク復興支援、イラク国民が努力している、ここを米英軍撤退して、私はますます混乱すると思いますよ。こういう状況で共産党と話を合わせろというのはとても無理な話ですよ。
穀田委員 それは総理大臣、この間アナン氏が国連安保理に行った報告書を見ていますか。あの中にもちゃんと入っているんですよ。
 高まる治安問題は軍事的手段だけでは解決できない、そういう認識に立って行動することだ。必要なのは政治的解決である。真の権限をイラクの、イラク人の機構に持たせることを意味する。こうした政治的措置は、外国によるイラク占領が短期でなければならない。このとおりちゃんと言っているんですよ。
 ですから、私の質問にちゃんと答えてください。問題は、そういういわば安全確保支援活動という名目で実際にはアメリカが行っている。総理は何か言うと、戦争はしないんです、それから武力行使は行わないんです、こう言うんだが、実際には戦争を行うアメリカを支援するんだということは明確にしてほしいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 それは明確にできるわけないじゃないですか、考えが違うんだから。米軍は復興支援に努力しているんですよ。早くイラク人の政府をつくるために努力しているんですよ。占領するために努力しているんじゃないんです。国連も、アメリカすぐ撤退しろなんか言っていませんよ。アメリカの軍の存在は必要だと国際社会は認めているんですよ。これをどうやって国際社会が協力しながら、イラクのイラク人によるイラク人のための政府をつくるかということで今全世界が協力しているんです。
 米軍撤退しろなんという声は今初めて聞いたよ。共産党の議論は議論としていいけれども。共産党がそういう考えはいいですよ、悪いとは言わぬ。共産党独自のお考えだから。しかし、今国連も米英軍の存在を認めている。できるだけ早くイラク人の政府をつくるために国際社会が協力していくということです。だからといって、米軍に手を引けとは全然言っていないんです。私は、今米軍が手を引いて、来年の六月にイラクの暫定政府をつくろうというときに米英軍が撤退したら、混乱はおさまるどころかますますテロリストの思うつぼです。こういうテロリストの温床にイラクをしてはならないからこそ、国際社会は今協力しようと言っているんでしょう。そういうための支援です、日本は。
穀田委員 それは明らかに意見の違いはあるでしょう。しかし先ほど申し上げたように、アナン国連事務総長も、少なくも短期に撤収すべきだ、このことが、今の米英占領軍のこの不当なやり方がテロの温床になっている、これは世界の共通のあれじゃないですか。問題は、そういう武装活動や、また米軍が行う戦闘活動、それに協力するんだということなんです。
 ではもう一つ、人道支援を聞いてみましょう。
 総理は何かというとそういう話をしますが、今行おうとしている人道支援活動について言っても、例えばマイヤーズ米統合参謀本部長は、自衛隊のイラク派兵については、日本も連合軍に参加した、連合軍の一員と明確に言っていますよね。そういうもとで行う活動が、今、幾ら人道復興支援活動と言っても、占領軍が、また軍隊が行う限り、占領軍と一体となって見られて、日本の自衛隊が行けばそのこと自体がイラクの人々の反感を呼ぶ、これは明らかではありませんか。
 自衛隊がそのような標的にされるという認識を総理は持っていますか。
小泉内閣総理大臣 自衛隊であろうと、民間人であろうと、外交官であろうと、テロリストの組織は、ともかくイラクを混乱させよう、安定した民主的な政権をつくらせちゃならないという意図を持って、無差別に、国連だろうが、民間人だろうが、米軍だろうが攻撃しているんだと思います。
 自衛隊が行けば戦争に行くんだ、そういう極端な解釈はしないでほしい。自衛隊は復興支援活動、人道支援活動に行くんです。自衛隊が行けば戦争に行くんだと。そうじゃないんですよ。現にイラクの国民も、自衛隊、歓迎する、復興支援、人道支援だったら歓迎する、どの人であろうが歓迎すると。だから、日本は、自衛隊が行く場合でも、イラク国民が希望する、そういう復興支援活動をしなきゃならない。また、イラク人から評価されるような復興支援はどうあるべきかということを考えながら自衛隊を派遣するんです。自衛隊が行くから戦争に行くんだ、そういう極端な考えはとっていただきたくない。
 現に、今まで十年間のPKO活動、これは既に、カンボジアのみならず、東ティモールにおいても、ゴラン高原においても、あるいはペルシャ湾の掃海艇におきましても、いろいろ評価されているんです。自衛隊が行くから戦争に行く、そうじゃないんです。PKO活動等、そういういろいろ、戦争ではない、戦闘行為でない活動に自衛隊は今まで経験を積んできて、評価されているんです。自衛隊が行けば戦争に行くという状況じゃなくなっている。そのための訓練も装備も、そして決意も持っている。そういう中で、イラクの人たちが歓迎するような、希望するような活動をどうするかということで自衛隊が行くんだということをぜひとも御理解いただきたいと思います。
    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
穀田委員 私が言ったのは、自衛隊が、アメリカ軍が行うそういう掃討作戦、それに支援することになるんだ、戦争に行かないと言うけれども戦争を支援することになるんだということを言ったんです。それが一つです。
 それと、もう一つ。今、私が述べたのは、国連と占領、占領と人道支援、これは両立しないんだということを言っているんですよ。あなたはわかっていないな。それが問題なんですよ。
 つまり、人道援助という目的によっても、あなたがお会いしたイラクのリカービ氏もこう言っているじゃありませんか。あらゆる外国軍隊のイラクへの派遣と駐留、占領は受け入れられない、今の状況下では、自衛隊を送れば、人道援助という目的によっても、占領軍の一部となる本質を変えることはできない、こう語っているじゃないですか。ここが大事なんです。
 だから、私は、自衛隊と人道復興、これも両立しない、このことを述べて私の質問を終わります。
斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。
照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。
 冒頭、私は、亡くなられた奥、井ノ上両外交官の御冥福を祈り、御遺族に心からの哀悼の念を表します。
 さて、小泉内閣は、イラク特措法に基づいて、イラクに自衛隊を派遣するための基本計画を決定し、年内にも航空自衛隊を送り出す準備を進めておるようであります。
 社会民主党は、一昨日、第八回定期全国大会を開き、大会の名において、自衛隊のイラク派兵に反対する決議を採択いたしました。社会民主党は、現下の情勢で自衛隊のイラク派兵には反対であります。
 そもそも、イラク特措法は、大義なきアメリカの戦争に協力するためのものにすぎません。イラクへの自衛隊派兵は、憲法第九条が禁ずる国の交戦権の行使につながる暴挙であると考えます。現下のイラクは、戦争状態が拡大、拡散し、もはやイラク特措法による非戦闘地域など見当たらず、その概念は虚構にすぎないと言わざるを得ません。
 私は、十一月二十五日の予算委員会で、イラクへ自衛隊を派遣すると反米武装勢力やテロの攻撃の標的にされるのではないかと小泉総理にただしました。残念ながら、その危惧は現実となり、外交官二名が殺害されるという痛ましい現実となりました。
 そこで、小泉総理にお尋ねいたしますが、総理は、外交官二名に対する銃撃事件は組織的、計画的なテロであったというふうにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、あの襲撃の状況、写真等を拝見しましたが、あの写真が事実であれば、かなり準備された計画的な犯行であったなと思っております。
 今後、まだわからない点もありますのでよく調査をしなきゃならない点もありますが、少なくともあの写真が事実であり、今言われている、報道されることが事実であるのならば、かなり準備された犯行ではないかなと思っております。
照屋委員 イラク暫定内閣のジバリ外相が、この事件について、旧フセイン政権の情報機関が米軍の統治に協力する日本の外交官をねらい撃ちしたものであるという見解を表明しております。私は、イラクのどこにいても、組織的、計画的攻撃に遭うという懸念をぬぐい去ることはできません。
 小泉総理は、このイラク特措法成立後、現在のイラクの情勢というのは次第に組織的、計画的な色合いを増してきている、こういう御認識はお持ちでしょうか。
小泉内閣総理大臣 テロリストはかなり計画的にこのイラクを混乱させようという準備をしているなというふうに思っております。
照屋委員 総理、この外交官二名の銃撃事件については、日本政府独自の調査、真相究明というのは十分行われているんでしょうか。
川口国務大臣 バグダッドにある大使館におきまして、この事件についての通報があった後、イラクの専門家を現地に派遣して調査を行っております。
照屋委員 私は、二次災害云々の話もありましたけれども、この事実関係の真相究明をアメリカの情報だけに頼らないで日本独自でしっかりやらないと、派遣される自衛隊の生命、身体の安全の確保というのは非常に困難だというふうに思っております。
 ところで、自衛隊派遣の基本計画は、私は、憲法九条を踏みにじるものであって、米国の戦争政策に追従するものであるというふうに考えます。
 総理は、記者会見で、憲法前文の一部を引用して自衛隊のイラク派遣の意義を強調いたしました。一体、小泉総理は、憲法前文と憲法九条の武力行使の禁止、そして交戦権の否認ということをどのように考えておられるんでしょうか、お聞かせください。
小泉内閣総理大臣 憲法前文は、個々の条文の指針といいますか、理念をあらわしているものだと思っております。
 そういう中で、憲法九条、武力行使をしない、前文の国際社会の中で名誉ある地位を占めたいと思うようなあの理念、これをどうやって両立させていくか、それが今、日本国に課された使命だとも思っております。両方、憲法九条と憲法の理念をあらわした前文、よく考えて、この際、国際社会の一員として責任を果たそうということから、私は自衛隊派遣を決断したわけでございます。
照屋委員 基本計画では、派遣される自衛隊員の携行武器が、あるいは装備が定められました。これらの装備あるいは携行武器は、憲法が禁ずる武力行使あるいは戦闘行為の発生を予想したものではありませんか、総理。
小泉内閣総理大臣 これは、奥氏、井ノ上氏が残虐な犯行で命を落とされましたけれども、あの通りで殺害されたのは日本人だけじゃありません。ほかの国の方々もあのような犯行の被害に遭っている。そして、そういう状況から、私は、自衛隊のみならず、今どの国も、民間人を問わず、あるいは政府職員を問わず、国連職員を問わず、場合によっては危険な目に遭うかもしれないという準備はしなきゃならない状況だと思っております。自衛隊が行く場合には、そういう安全面に十分配慮しなきゃならない。
 かといって、武力行使をする、戦闘行為に参加するということと混同していただきたくないんです。みずからを守る、あるいはみずからの安全を確保するという装備が、武力行使を前提にしているんだ、戦闘行為に参加することを前提にしているんだというのとは違うんだと思っております。
照屋委員 総理、私が言いたいのは、現下のイラクの情勢を見た場合に、どんなに装備を強化しても、危険の抑止の効果にはなり得ないんじゃないか。日本の自衛隊は無反動砲などを持参するようでありますが、重装備をしたアメリカだって今ねらわれているんですよ。本当に戦争をしない、それはいいですよ。やっちゃいかない。武力の行使もやっちゃいかない。しかし、危険の抑止力になり得ないということを私は言っておきたいと思います。
 同時に、あらかじめ正当防衛行為を予想して携行武器を決めるというのは、私は正当防衛行為論の論理矛盾だと思いますが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 それは、アメリカと日本と行う行動が違います。そうすれば、遭遇する場面もおのずから異なるのであって、アメリカでも防げないから、日本がそれだけを持っていって何になるんだという御議論は、私はそれは全く当たらないものだろうというふうに思っております。
 それから、持っていくものによってどうなのかというお話ですが、それは、相手が大きな破壊力を持っているとするならば、やはりそれを持っていかなければ抑止力にならないでしょう。あるいは、抑止がきかないで、自爆テロなどの場合に、真っすぐ突っ込んできた、あらゆる努力にもかかわらず真っすぐ突っ込んできた場合に、どの武器を使ってみずからの生命、身体を守るかということです。何を持っていくかということではなくて、どのような危険に対してどのように使うかということが問題なのであり、武器の種類によってそれは決せられるものではございません。
照屋委員 総理、それから外務大臣、防衛庁長官、去る六月、イラクで、バグダッド付近で、日系米兵のポール・T・ナカムラ伍長が戦死をいたしました。日系の米兵としては、イラクにおける最初の犠牲者であります。
 彼のお父さんはハワイ出身の日系二世でございます。お母さんはウチナーンチュだった。そして、カリフォルニアのデービス知事は、彼は名誉の戦死をした英雄だと言って、三日間、州関連の施設の旗を半旗にした。そのときに、英雄だ英雄だと地域で騒がれた、奉られた。お母さんが何と言ったかというと、息子は死んで英雄になる必要はなかった、結婚して子供をつくって私たちと一緒に生きていてほしかった、こういうふうに言っているんですね。
 私は、そういうポール、ヨーコさん御夫妻のこの悲劇がイラクの民衆にとっても自衛隊にとっても起こらないようにするために、自衛隊のイラク派兵を直ちに中止するよう求めて、私の質問を終わります。
斉藤委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 総理を相手にやりたかったのでありますが、残念なことに、行かれました。
 まず冒頭、私からも、奥大使、そして井ノ上一等書記官の御冥福を心からお祈りしたいというふうに思っております。
 同時に、その犠牲の上に立って、我々の国が過ちないよう、改めてきょうは、方向転換をすべきだ、今すぐの自衛隊の派遣というのは見送るべきだということ、このことを一つの私自身の、あるいはまたうちの党の方向性としてしっかりと持ちながら質問をしていきたいというふうに思っております。
 先ほどもお話が出ていましたが、今回の二人の犠牲者を出したこの状況というのは、自衛隊を派遣すべきかどうかという判断の上に非常に大きな一つの判断のポイントというか、大事な点が含まれていると思うんです。
 それは、先ほども出ていましたが、現地の警察あるいは治安当局の報道官からは、この事件が地域の、地域のというより旧フセイン体制の情報機関による、米国と歩みをともにする、あるいは米国の支援に入っていこうとする日本に対してあるいは日本人に対して意図的に行われたテロであった、攻撃であったという発表をしています。これは、調査中であるというふうな、そんなあいまいな判断で見過ごされていく話ではないというふうに思うんです。
 あれから日にちもたちました。外務省あるいは官房長官自身の、このテロの意図、確かに日本人がねらわれたのかということ、ここについての見解ですね、今の思い。調べているからどうのこうのとごまかさないで、今どういう判断をされているのか、そこのところを改めてお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 テロの可能性が高いということは、先ほど別な委員の方の御質問で申し上げました。
 そのテロが日本の大使館員をねらったものであったかどうかということでございますけれども、これは、当日、ほかの外国人も対象になった同じような事件もあったということもございまして、そうであったかそうでなかったか、これをどちらか判断をするに十分な情報は持っていないわけです。その上で、そういったことについての報道、イラクの政府の方の御発言もあるようでございます。
 我々としては、大使館独自の調査、そして米軍とも最初の段階から密接に情報を交換しながらやっておりますが、この調査を引き続き続けていきたいというふうに考えております。はっきりわかっていないことについてこうであるということを判断するということは、今の時点では時期が尚早であると考えております。
中川(正)委員 十月の十八日に、ビンラディンが、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラを通じて、アメリカに協力する国への報復を宣告しています。その中に、イギリス、スペイン、オーストラリア、ポーランド、日本、イタリア、これが名指しで入っておるということ。
 その後、その翌日に、国連の現地本部事務所で、トラック爆破でデメロ事務総長特別代表以下二十人が死亡しました。その後、十月二十七日、これが赤十字の国際委員会。十一月十二日、ナシリヤで、これはイタリア人十九人を含む二十八人が軍の警察本部で自爆テロに遭っています。それから、十一月二十九日、これが我々の外交官二人と、それからスペインの情報機関七人が死亡をしております。そして、続く三十日、ティクリートで、韓国人が二人、技師でありますがやられた。こういうことですね。
 これは、一連の流れを見ていますと、この中にやはり意図がある、そんなふうに解釈をできますし、また、現地の情報、公安部の広報担当者というのははっきりと、日本がターゲットになっていますということ、これを発表している。
 石破長官、このことを踏まえて、今回の自衛隊派遣はこのターゲットになっている可能性があるということを前提に派遣を決断したのか、それとも、いや、これは大丈夫ですよ、このようなテロに意図はありませんという前提で決断をしていくのか、どちらの前提になっていますか。
石破国務大臣 それは、可能性はいろいろございます。そして、いろいろな国を名指しし、今委員がおっしゃったように、いろいろな国の人々がそういうようなテロの犠牲になってきたということもございます。それを覚悟の上で決めたのかというふうにおっしゃいますが、それは、本当にそれがそのとおり行われたのかどうか、知る由もございません。しかし、テロ攻撃に対して、それに対処可能なような権限、能力、装備を与えて、それで出し、テロを抑止し、回避するということは、何度も申し上げておることでございます。
 ですから、そういうようなテロに遭う、それが嫌だ、だから行かないということをすべての国が言い出したならば、これはテロとの闘いなどというのはそもそも成り立たない、委員とも何度も議論をさせていただいたことだと思っております。
中川(正)委員 それは、仮に、外務省がこれから調査していく中で、これが日本の外交官ということを意図して、それを目的にしてテロがなされたということがはっきりしても、やはりこの決断、自衛隊を派遣するという決断は変わらない、そういう意味ですか。
福田国務大臣 東京でテロを起こすとかいうようなこと、これはもう、今防衛庁長官も答えられたように、全く根拠はわかりません。調べてもわからない、そういうことであります。単なるおどかしということもあるかもしれぬし、それ以下のこともあるかもしれぬというようなことでございまして、そういうことで我が国の今回の法律に基づく自衛隊並びに文民の活動が阻害されるということはないものというふうに考えております。
 この間の外交官二名の殺害された、こういうことについて、これが背景がはっきりしたら、それで行動をとめるんだ、これは参考にしますが、そのことによって行動が変わるということはないんではなかろうかというように思います。あくまでもこの法律に基づいて、法律要件にかなう形でもって復興支援活動を行うんだ、こういうことでありますので、この外交官の殺害事件とそこがどういうふうに絡み合うのか、そういう問題だと思っております。
中川(正)委員 先ほど、戦闘地域と非戦闘地域の議論がありましたけれども、そのこと以上に、確実にテロに遭うという可能性というのが、こうして現地の警察の方も日本に対して、それは標的になっていますよという警告を発しているわけです。そのことがはっきりしていて、確実にテロに遭うという可能性がここまで高まっている中で、ただそれを参考にしていく。外務省は、わからない、調べてみないとわからない、その結果が出てこない。その判断だけで派遣をするということ、これは、武力闘争、武力で攻撃をされる、テロ攻撃をされるというその可能性の中で考えていけば、これは武力を前提にした派遣になるわけです。
 防衛庁長官、もう一回言いますけれども、これは外務省の見解をはっきりさせるべきだと思います。外務省自体が、今回のテロの取り組み、テロの意図、その中で我々が持っているリスクの可能性、これをはっきりした上でないと、それは、危険を回避する義務、この規定に防衛庁長官自身が違反をすることになる。
 そこのところを改めてもう一回聞きますが、これは外務省の責任ですよ。外務省、そこは本当に大丈夫ですか。この日本に対するテロというのは意図されたものでない、可能性としては漠然として薄いものだ、ただわからない、それだけでいいんですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国として独自の調査もしましたし、いろいろな関連の情報も得ましたけれども、その日にほかの国の人たちも攻撃をされている、あるいは犯行声明も何も出ていないといったようなことがありまして、これがテロであると断定をする、日本をターゲットにしたテロであると断定をするということは今の時点ではできない、はっきりわからないということでございます。
中川(正)委員 防衛庁長官、これはわからないということであるとすれば、これはわかるまでこの自衛隊の派遣というのは延期をすべきだというふうに思うのですよ。
石破国務大臣 そうすると、おどかされたということで延期をしますということでありとせば、それじゃおどかしゃやめるんだという話になって……(中川(正)委員「おどかしじゃない」と呼ぶ)じゃ、仮におどかしじゃないといたしましょう。いや、私がおどかしじゃないといたしましょうと申し上げておるのは、そのことが本当にいかなる組織、いかなるものからの警告なのか、予告なのかということが不分明であるからということで申し上げておるわけでございます。はっきりしていないということがございますね、まず。
 もう一つは、それに対する抑止力を持っているのか、それを回避し得る能力、権限、装備を持っているのか。私どもが本当に今このときも営々と訓練をやっている、そしてROEの習得を一生懸命やっている、そして装備の可能な限りの品ぞろえというものをやっている。それは何のためだ。国民の税金を使わせていただいて、そして隊員が黙々と努力しているのは何のためだ。それは、そのようなテロのおどしに屈しないだけの抑止力を持ち、そしてまた回避する能力を持ち、それにもかかわらず、なお向かってきたときにみずからを守るための最低限の武器の使用を行う、そのためにやっておるのではないですか。それをやっていて、なおかつそのような予告、おどしというものに屈するという選択は、少なくとも私は持っておりません。
中川(正)委員 お話を聞いていますと、戦いますよという宣言だと思うんですね。戦いますよと。だから、あの危険を避けていくという条項というのは、戦いを避ける、そういう意味なんですよ。戦いのないところへ向いて自衛隊は入りますよという意味なんですよ。それが、そこで戦われるということがまさにはっきりしているところへ向いて、自衛隊を持っていって戦いますよというのは、これは義務違反であるし、憲法違反でもあります。
 そこで、改めて言います。改めてもう一回言う。これは見解としてはっきりさせなきゃいけない。確実にねらわれているということがはっきりしているところには出しちゃいけないんですよ、これは。そうだとすれば、出すんだとすれば、外務省の見解、わからないではやはり済まない。そういうことだと思うんです。はっきりさせてください。
石破国務大臣 私の理解能力が多分足りないのだろうと思いますが、確実にねらわれることがはっきりしている地域というのは、これはどういう地域なのでしょうか。例えば、A県B市というのがあって、そこに自衛隊が来たならば確実にテロをしかけるということがどのような組織からどのような形で言われればそういう前提が成り立つのだろうかということが、私にはよく理解しかねるところでございます。
 仮にそういうことがあったといたしましょう、仮にそういうことがあったといたしましょう。その場合にそれを避けるための装備、権限、能力を持つということは、それは、武器使用権限というもの、そして危害許容要件というものと、戦いをやるということは全く別個の概念でございます。戦いをやるということが仮に武力行使ということでおっしゃっておられるのであれば、まず違う。そして、武器の使用というものがごく限定をされたものであり、かつ、危害許容要件が、正当防衛とそして緊急避難、要件が厳格に決められているということから考えましても、委員の御指摘は当たらないのではないかと私は思っているわけでございます。
中川(正)委員 防衛庁長官は地域にこだわりますけれども、大体、戦闘地域、非戦闘地域という概念をここに持ち出して規定しようという、その法律の枠組みそのものがこれは現実離れしているというのは、もう我々の最初からの議論なんです。そうじゃない。今標的にされているのはアメリカなんです。アメリカが先制攻撃をやって、それでそのまま占領統治に入った。そのアメリカの統治を助ける日本あるいは諸外国、その連携というのが今標的になっているんですよ。それがはっきりこのメッセージの中で含まれているし、それが現実の問題として日本の外交官二人に起きた。
 だから、これは行ったら確実にねらわれるという蓋然性、可能性がこれだけ高まっているじゃないか。高まっていないとすれば、それは外務省がそれなりの見解をしっかり持って説明をする必要がある。それにもかかわらず、わからない、わからないというままに派遣をするということは何事だということですよ。
石破国務大臣 委員は決してそんなおつもりがないことをよく存じております。しかし、それを聞く者が聞くと、まさしくそれがテロリストの思うつぼなのだろうと。おどかせば行かないということになるとするならば、それはまさしく、そのテロリストの言うことが功を奏し、日本も来ない、あるいは、日本が引くんだったらば韓国もやめましょう、モンゴルもやめましょう、タイもやめましょう、シンガポールもやめましょう、世界のいろんな国が引いていく、そしてアメリカやイギリスだけが残っていく。それがまさしく彼らの思惑ではないのでしょうか。
 私たちは、そういうようなテロリストのおどしというものに屈してはいけないというのは、何も勇ましい精神論を申し上げておるわけではないのです。それに屈しないだけの権限、能力、装備というものを我々の自衛隊であれば持ち得るし、そのことをきちんと実現できる地域、それが非戦闘地域という概念でしょう。
 委員はフィクションというふうにおっしゃいますが、委員もこれはよく御案内のとおり、日本国憲法の、武力による威嚇、武力の行使は行わない、それは法律にちゃんと書いてあるわけですね。だから、そのことだけをやらないのであれば、その条文だけでいいのです。にもかかわらず、なぜ、非戦闘地域、それは現に戦闘が行われておらず、活動の期間を通じて行われることが予測されない地域というものを入れたか。そして、そういうような地域になった場合には一時休止するなどして指示を待つという条文を入れたか。
 それは、そういうようなことと一体にならないようにということを入れたわけであって、それはフィクションでも何でもございません。自衛隊が憲法に反するような行為をしたという評価を受けないためにわざわざそういう条文を入れておるわけであって、そのことはフィクションでも何でもない。何のためにこの条文を入れたということは、中川委員よく御案内のとおりでございます。
中川(正)委員 大分論点はっきりしてきたと思うのですね。
 テロに屈しないということは、まさに意図するところ、いわゆる政府が意図するところは、テロと戦う、こういう意味ですね。さっきのお話を聞いていると、まさにそうじゃないですか。それだけの装備を持って、負けないように戦うというのが。単純な話でしょう。ところが、総理大臣は、戦争をしに行くんじゃないんだ、人道支援をしに行くんだ、こう言っているんですよ。だから、そこに論理矛盾がある。
 ということは、もともとが、自衛隊あるいは軍隊を派遣するということは、治安維持を想定している。どこの国でもそうです、やっているところは。治安維持を想定して、そうしたさまざまな武力行使もあり得るという想定の中で役に立つ話なんですよ、軍隊というのは。ところが、日本の場合は、それを無理して、いろいろなへ理屈をつけて、人道支援でないとというその憲法の限界の中で、今すれすれの道を探そうとしている。それはなぜかといったら、国際貢献と言っていますが、違いますよ。ブッシュと、それから日本の総理大臣が約束してしまったから。逆に言えば、この小泉政権の維持をしていくためにはアメリカの言うことも聞いていかなきゃいけないという、その強迫観念の中で自衛隊にこだわっている。だから、そのところで、自衛隊、自衛隊、こういうふうになる。
 そういう構図の中で、無理をして派遣される自衛隊の皆さんが、私は、これは悲劇だと。これをやるんであれば、さっきの、もう一回もとに戻りますが、外務省の見解、わからないから何とかしてくださいというような、そんな無責任な話で行けるものじゃない。既に現地の警察官は、これは日本をねらったものだと発表しているんですよ。行ったら必ずねらわれますよと言っているんですよ。そういう想定の中で、この中途半端な派遣をどうしてこだわるんですかと、これが我々のそもそもの問いなんです。
 その中で、例えば国連はどうしているか。国連は、はっきりと割り切り始めています。国連がねらわれたから全部撤退したわけでしょう。その後何を言っているかといったら、国連の役割をはっきりしてくださいよと。アメリカがCPAを運営して、アメリカの占領統治である間は、行ったら行くだけテロを加熱するだけだ、テロを防ぎに行くんじゃなくて、その中でテロがどんどんどんどん増殖してくると。そういう経過の中で入っていくという、この入り方が間違いですねというのが国連の答えじゃないですか。
 日本はなぜそこまでしてこのアメリカの肩を持って、アメリカと同一視されて、テロの標的になって、それが国際貢献だと言えるのか、ここが私は最大の論点だというふうに思います。
 その上で改めて聞きますが、国連は撤退したんですね。外務省の、それこそ大使館そのものも、さっきの想定でいけば、自衛隊だけじゃなくて、さらに確実にねらわれる可能性がある、現地の警察官の発表では。これについては、どのように外務大臣、判断されていますか。
川口国務大臣 外務省の大使館につきましては、これは、二度とそういうことが起こらないように最善を尽くさなければいけないと思っております。あれ以来、イラクにあります我が方の大使館につきましては、さまざまな対応を講じております。
 これは、どういうことをしているかということをここで申し上げること自体が、さらにテロリストの攻撃にある示唆を与えることになってもいけませんので、細かいことを申し上げるということは差し控えさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、例えばコンクリートブロックを設置するとか、そういったさまざまな対応をしておりまして、今後引き続き、人的にも物的にもなし得る最大限の警備をしていきたいというふうに考えております。
 それからもう一つ、国連につきましては、この間の事務総長の報告書の中で、今後どのようなやり方で活動を広げていくかという端緒、一度引き揚げた後の新たな出発の端緒に今立ったわけでございまして、我が国としてもこれをできるだけ慫慂していきたいというふうに思います。
 それから、先ほど来委員がおっしゃっていらっしゃる外務省にあった、二人の職員についてあった不幸な事件、これが日本を対象にしたものかどうかはっきりすることについて、それができない限りは次のステップをとるべきではないという趣旨の御議論をなさっていらっしゃるように私には聞こえますけれども、これはこれで、できるだけ早くいろいろな情報を得て、事実関係を解明していかなければいけないというふうに思っております。それの努力をしていきたいというふうに考えております。
 もう一つあの事件が明らかにしたことといたしましては、今文民が復興人道支援に素手で行くということが非常に難しいということをあらわした、証明をしたということであります。
 これは、イラクについて人道復興支援を、まさにけさどなたかの御質問の中にもありましたけれども、時間が重要で、今しなければ国際社会はイラクをもう一つのフェールドステートにしてしまう、そのはざま、その境目にあるわけでして、それをいかにやっていくか、いかに日本としてその国際的な責任を果たしていくかということがかぎである。
 ここで文民でできないということになった場合に、安全に対する対応策を十分に行って、先ほど防衛庁長官もおっしゃったように、自衛隊であればできることということがあるわけですから、そういうことを行って、そして人道復興支援を行うということを考えているわけでして、先ほど委員がおっしゃったように、人道復興支援を自衛隊が行うということとテロの対策を十分にするということとの関係の二つの間に矛盾が全くない、矛盾があるということはないということを申し上げたいと思います。
中川(正)委員 この間、私もイラクにこの委員会から派遣されて行ってきました。ちょうど、これから日本が取り組もうとする水の浄化施設、これを、たまたまアメリカ軍の駐留をしておった昔の宮殿跡、そこで給水施設を稼働している状況を見てきました。
 自衛隊でなければできないという仕事じゃないですよ、あれは。機器さえ持っていけば、それは地元の人たちも含めて自主運営ができるような、確実にいわゆる民生化できるような事業です。必ずしも日本人が行かなくても、ああいうものはどんどんやれるものであります。あるいはライフライン、電気の復興であるとか、あるいは下水道そのものの復興であるとか、まさかこれを見て自衛隊が直接入っていくわけじゃないんだろうと思うんです。
 そういうことじゃなくて、恐らくアメリカが今、物議を醸し出していますが、民間企業に発注をして、その中で新しいライフラインの建設をしていくということ、その中で、地元がやはり一番求めているのは、雇用を生み出す。その意味で、先ほど話が出ていましたが、奥大使が私たちを連れていってくれた、いわゆる日本が主導になった失業対策事業、ごみ集めであるとか、あるいは学校の修理であるとかというふうな、そういう事業化というのがあります。
 これはすべて、自衛隊でなければ、あるいは自衛隊が一番という、そんな話じゃないんです。人道支援というのは、民間の活用の中で、仮に日本人の文民が行かなくても、あの地域の中でもっともっと効果的に、もっと波及効果をさらに大きくして、雇用の創出も含みながら生み出していける事業があるというよりも、それなんですよ。それを自衛隊が逆に分捕ってしまって、私のところでやるというような形態になってしまっている。それはなぜかといったら、そこに無理があるんです。本来は、軍というのは治安にそのまま行ったら、ここが一番素直なんですよ。ところが、治安にそのまま行けないから、そうした人道支援という枠組みを無理やりつくっている、そこに。
 だから、もっと言えば、前にも申し上げましたけれども、既にアフガニスタンで入っているC130の輸送、アンマンからイタリア、何を運んでいるといったら、ずだ袋、食料品を運ぶずだ袋とパレットを運んで、あれにいっぱいにして行き来しているんですよ。そういうものが自衛隊が担わなければならない任務であるとすれば、余りにも中途半端で、余りにもこれは情けない、そういうことだと思うんです。
 だから、そんな派遣のさせ方をして、逆にテロ集団からは確実に、日本とアメリカが組んでいる、同一視されてターゲットにされる。これは何のための復興支援なんですか。そういう図柄がきれいにできているじゃないですか、今。そういう形の派遣というのは、すべてがはっきりするまでは見定めるべきだということと、それからもう一つ。もう一つは、アフガニスタンと比べてみると、これも象徴的にあるんですね。
 アフガニスタンの場合は、さっきも出ていましたが、NATOもそれに協力をして世界の枠組みが決まっている。にもかかわらず、日本の自衛隊は、陸自は行っていないんです。みんな周辺からやっている。ところが、イラクの場合は国際的な枠組みができていない。アメリカ、CPA、これが主体になって占領統治をやっている。にもかかわらず陸自がそれの中に入っていくというのは、これはどういうことを意味しているか。これはやはりアメリカでしょう。アメリカの意向が断り切れないから日本がそれにつき合う。そのために、もっと言えば、小泉政権の持続をするために、その利益のために、日本の国民と国益と、それからアラブに対する中立性というのが毀損されている、日本の国家が犠牲になっている、そういう図式になってきています。
 そのことを改めて指摘しておきたいと思うんですが、さっきのアフガニスタンと今回のイラクと比べて、なぜ向こうは陸自を派遣することをしなかったか、今回なぜイラクはそれをするのか、その比較の上で説明してください。
福田国務大臣 熱弁を振るわれていらっしゃいますが、いろいろお伺いしていますと、何か、いかにしたらイラクの復興支援をしないで済ますか、そういう理屈を一生懸命述べられているようなそういう印象を受けました、はっきり申し上げまして。そういうことでいいのかなということなんですが、アメリカのためにやっているわけじゃないんですよ、これは。我が国の国益でやっているんだということ、これはもう小泉総理もはっきり言っているわけですね。ですから、そういうふうにおっしゃるのは、これはやはり誤解に近いんだろうと思います。
 ただ、国際協調もあるということもあります。日米関係というのは大事であります。ですから、意見は聞きますよ。意見を聞いて、やはり協力する国々が賛同するようなやり方というのは、これは当然あるわけですから、その中で我が国としてできることをするんだ、こういう考え方でやっておるんであって、我が国のその考え方に基づいた復興支援活動、その復興支援活動も、先ほどお話の冒頭のころに、文民がなぜ行かないのかというお話がございましたけれども、文民がそれでは本当に行けるのかどうかということはあります。そういう状況ではないんだ。ですから、自衛隊が行って、そして安全にも配慮しながら活動するということ。自衛隊はそういう活動についてはほかでいろいろ経験しております。
 東ティモールでも七百人行って、延べでいえば千人超えたと思いますけれども、それだけ行って何をしていたのか。それはやはり向こうの、東ティモールの民生の向上ということ、これを考えて活動してきたわけですよ。それは大変な評価を得、感謝をされ、やはり日本の自衛隊がしっかりやっているということは、これは平和的な活動においてしっかりやっているということは、これは世界に示せたというように思っております。
 今回もそれと同じことなんですよ。ただ、治安上の問題があるということで、自衛隊はそっちの面においても十分な配慮をしていくということで、場所も選ぶし、それからそれに必要な装備もする。しかし、装備といったって、これでもって戦争できるような装備はしませんからね、そういうものは持っていきません。戦争なんかとてもできるようなことではない。これはあくまでも自衛の武器でありますのでね。そういう配慮もしていくということ。あくまでも日本の国益を考えてこの活動はすべきであるという判断から実行しようというふうに考えているところであります。
中川(正)委員 これまでのPKOとイラクとは確実に違うんです。それは何が違うかというと、PKOが評価をされた、成功した、うまくいったというのは、中立性があるからです。日本としてあの中に入っていった、日本の中立性が守られて、その中で、PKOという枠組みの中の貢献をしたからです。
 今回のイラクは、問われているのはその中立性なんですよね。アラブ諸国からも、あるいはNGO、あそこに入っている、地域に入っているNGOの声もまさにそうでありますが、今回のこのイラク攻撃の正当性が世界でしっかりと認められていないために、それがテロに大義を与えてしまって、その中で、これはアメリカ自身もそう言っていますが、テロじゃなくて、これはインサージェンス、これは体制に対する群民の蜂起が起こっている、人民の蜂起が起こっている、そういう表現をアメリカ自体がしているんですよ。そういう中で、その中立性が守られないから、日本が、自衛隊が、あるいは文民が攻撃をされるその対象になっているということです。これが基本的な違いであります。
 その上で、もう一つ言えば、どんなことが起こっているかというと、この十一月の二十二日のロサンゼルス・タイムズでありますが、ここで何を取り上げているかというと、今アメリカの軍隊が掃討戦略、掃討作戦をやっていますね。そのいわゆるノウハウ、それから、それをバックアップしている力というのは何かというと、イスラエル軍なんですね。イスラエル軍がパレスチナでの戦い、あのノウハウをそのままイラクに持ってきて、アメリカがやっていること、さらにこれ検証していったら、全くそのとおりなんです。ブルドーザーで都市部の標的を確実に破壊しながら、周りに憎悪を生み出していって、戦い自体が泥沼化していく、そのプロセスをアメリカ軍自体がそのまま取り入れていますよというのがこのロサンゼルス・タイムズの中身なんですが、そういう段階にこの戦いというのはなってきている。
 それだけに、さすがにアメリカも、そうした批判に対して何らかの形で答えを出すということで、六月には、CPAからその権力を、土着のというか、かいらい政権でもつくってその中に移すよ、こういう作戦に出てきましたけれども、そうしたものであるにもかかわらず、中身はどんどんどんどん泥沼化していくということは、これは見えています。
 それに対する日本の自衛隊の派遣、それに対して、まだ向こうのテロの意識もはっきりさせることができない状況、それが非常に、私としては、今回の自衛隊派遣を改めて見送って、さらなる状況がはっきりしてきた上での対応というのをすべきだということだと思っています。
 その上で、さっきもお話が出ていましたが、国連というものに対して、アナンさんは、今、自分の役割がわからない、自分の、自分というのは、いわゆる国連がアメリカに対してどういう位置づけになっていくのかというのを早く議論してください、はっきりさせてください、その上でないと、我々が絶えずアメリカと同一視されてテロの標的になりますよ、裏返せばそういう意味なんですね。ここについて、日本としても、はっきりとした国連に対する役割、こうした形で政権を担っていくべきだという、それを国家の意思としてはっきり出すべきときに来ています。
 そこのことについて、どうした形の表明をしていこうとしているのか。国連にはっきりとした応援をしていくべしというのが私の見解でありますが、そこのところを改めて聞きたいと思います。
川口国務大臣 我が国は、国際社会が協調してイラクの問題に対応するということが重要であるというふうに考えております。これは、武力行使以前の三月以前の段階から、ずうっとそういうことで働きかけを行ってきております。
 今回も、中山太郎先生を初め大勢の方々に、国際社会の協調をイラクの人道復興支援に向けてつくるために、そういった動きをやっております。私も、ついこの前アナン事務総長ともお話をして、国連が早くデメロ特別代表の後任を任命することが重要であるということもお話をいたしました。その後、代行を任命され、また、年が明けて特別代表を任命されるというような方向に国連は考えているようでございますけれども、一例を挙げれば、そのような働きかけをいろいろ行っております。
 それからもう一つ、先ほど委員が、PKOは中立であるからいい、今回は中立的ではないというふうにおっしゃられましたけれども、何をもって中立だというふうに御判断なさっていらっしゃるのか、私にはちょっとよくわからない部分もございますけれども、PKOについても、それから今回の、各国がイラクに対して人道復興支援を行う、あるいは民主主義を定着させるためのさまざまな努力を行うということについても、国連の決議一四八三、一五一一、これできちんとオーソライズをされたことであるわけです。みんな一致をしてそういうことになっているわけで、我が国として、それにのっとって支援を行うということであるわけでして、それがなぜ中立性を欠くのかということについては、私としては十分に、理屈のそこに飛躍があるのではないかという気がいたしております。
中川(正)委員 いつも日本政府の答弁というのは、アメリカの情報、アメリカの見解、それをもとにしてこうして出てくるわけであります。
 中立的でないというのは、既にイラクで起こっていることを見たらわかるでしょう。確実にアメリカの政府と日本の支援というのは同一視されつつある。それが、自衛隊が派遣されるということ自体がそのようにイラク国民からもアラブ諸国からも見られる。しかも、アメリカ軍というのが、イスラエル軍と同調した形でその戦略をつくりながら、あの地域に占領統治を行おうとしている。しかも、アフガニスタンで改めて確認をしたんですが、アメリカ軍のベースというのが、戦乱が終わった後もそのまま引き続いてそこに居続けるという前提の中での統治ですよ、そういう方向性まで出ています。
 そういうことから、流れが確実に相手からは見えているんです。その見えているということが実際の戦いになるんですよ。こっちが幾ら中立ですよ、中立ですよと言っていても、やっていることがブッシュの言うことを聞いているだけだったら、相手から確実に見えていて、それはもう一緒ですねという話になる。戦争というのはそういうものだと思うんです。そういうことをどういう感覚で白々しく答弁をされているのか、そんなむなしい気持ちになります。
 だから、ここまでアメリカの傘下に入って、そのシステムの一部になって、アメリカを弁護して、それで日本の国益を守ると言っている、その辺の感覚ですね。これを改めて、そんな政権ではだめなんだということ、それを指摘しておきたいというふうに思います。
石破国務大臣 先生の言わんとすることが何なのかは大体わかりました。
 ただ、アメリカの言いなり言いなりとか、中立とかいう話ですが、私どもは、アメリカとテロリストの間に立って中立なんということは夢にも思っておりません。要は、テロリストの側につくというようなことは全く考えておらないのでありまして、PKOというのはその活動そのものが国連の活動ですから、当然、中立性というのが出てきますね。そして、アフガンの場合には、アメリカも自衛権を行使しているわけですね。
 今回の場合には、国連による活動でもなければ、自衛権を行使しておるわけでもないのであって、PKOとアフガンとイラクは全く局面が違うわけです。そのときに、中立性というのを持ち出して御議論になるというのは、必ずしも事の本質を見ていないのではないかと私は思っておるところでございます。
 そして、私たちがやらなきゃいけないことは、先ほど委員がおっしゃいました、水の浄化なんかだれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくてもいいだろう、医療の支援なんかだれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくたっていいだろう、あるいは、学校の補修、だれだってできるじゃないか、自衛隊がやらなくてもいいじゃないか。私どもはそうは思っておりません。
 やはり浄化という仕事、それは、きっかけは自衛隊がやらなきゃいかぬのでしょう。そして、それが本当にその地域の人たちによって混乱もなく行われる。今まで、社会資本をどんなに整備してもその日のうちに略奪に遭っちゃう、それでちっともよくならないという例が山ほどあった。では、その人たちが本当に、サマワの人たちで浄水、給水ができるというふうになれば、いつまでも自衛隊が抱えるつもりはありません、お渡ししましょう。そしてまた医療も、それによってきちんと病院が動くようになれば、もちろん自衛隊がいつまでもいる必要はないのです。そしてまた、それは学校の補修についても同じです。
 私たちが申し上げたいのは、自衛隊のやることがすべてじゃありません。本当に大きな大きなグランドデザインがあって、その中の端緒の一部として、自衛隊がまず今の状況であれば行くということを申し上げておるだけのことであって、それは、ブッシュさんと約束をした、そういうようなものではございません。コアリションというのはそういうものではないというのは、アメリカについて御造詣の深い委員であればよく御案内のことでございます。
 それが湾岸戦争時と今において違ったということであり、委員のような御主張がアメリカの一部にあることはよく存じています。しかし、それがすべてアメリカの姿だとは私は思っておりません。
中川(正)委員 基本は、自衛隊にこだわり過ぎるということなんですよ。日本の貢献の幅というのはいっぱいある。その中で、なぜ自衛隊、自衛隊とこだわるか。
 これは、アメリカとの同盟、この言葉であらわしていますけれども、違うんです。これは小泉政権とブッシュ政権のできレースなんです。ブッシュ政権が小泉政権を認知するということによって成り立っているから言うことを聞かなきゃいけないんだ、そういうことをどうしても維持していかなければならないから自衛隊にこだわるんじゃないですか。自衛隊が中立でない形でこのままアメリカと同盟を組んでいけば、これは戦いなんですよ、戦いがはっきりしているところへ向いて派遣をしちゃだめだ、そういうことなんです。中立性が出てくるまではこれは待たなければいけない。中立性をつくろうと思ったら、国連を中心にしてもう一回世界の枠組みを立て直して、日本ができること、自衛隊にこだわらずにその中に入り込んでいくということだと思います。
斉藤委員長 中川委員に申し上げます。質問時間が終わっています。
中川(正)委員 以上、ありがとうございました。私の質問を終わります。
斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。
照屋委員 それでは、外務大臣と防衛庁長官にお伺いいたしますが、私は、イラク特措法が立法された、成立をしたその時点と、現在のイラクの情勢というのは大きく変わっているんではないかというふうに思っております。
 イラクで今、国連の機関や日本の大使館に対する攻撃、あるいはまた日本の外交官二名が殺害をされるというふうな事態、これはまさにイラクでの攻撃が次第に組織的、計画的な色合いを増してきている、濃くしている、こういうふうな認識は両大臣はお持ちなんでしょうか。
川口国務大臣 イラク特措法が成立して以来、イラクの中の情勢については、変わった部分もあれば変わらない部分もあるというふうに思います。
 地域でいえば、おっしゃったように、テロが激しくなった地域もあれば、南部のように、例えばムサンナ県のようにほとんど変わらないところもある、これは地域によって差があると思います。
 また、ごく最近あったように、例えばフセイン元大統領が拘束をされるとか、あるいはイラクの政治プロセスについて来年の六月というようなスケジュールがはっきりするといったような、そういう変化もあるわけで、したがいまして、まとめて申し上げれば、変わった部分もあれば変わらない部分もあるということであると思います。
照屋委員 私は、外務大臣の現下のイラク情勢の認識が、イラク特措法ができた時点と今日比べて変わったところもあれば変わらないところもあるなんという認識では、これは困ったものだなというふうに率直に思いますよ。
 外務大臣、イラク特措法が成立をした時点より、反米武装勢力というかテロというべきか、この攻撃は無差別に標的を定めて激化している、しかも、それは私たちが知り得る情報の限りでも、かなり組織性、計画性を帯びてきたな、こういうふうな認識は外務省は全然持っておらないんですか。
川口国務大臣 何をもって組織的、何をもって計画的とおっしゃっていらっしゃるのかよくわかりませんけれども、先ほど申しましたように、一部の地域では、確かにテロが激化しているというところもございます。また、ほとんどそういうふうになっていない、変化をしていない地域もあるということは、先ほど申し上げたとおりのことです。
 イラク全土が変わってきているということではない。それから、旧サダム勢力及び外国の勢力が一緒に、二つそういったテロをやっているであろうという推測はできますけれども、どの程度それが計画的であって組織的な動きになっているかということについては必ずしもはっきりしない。そういうことが影響を持っている地域もあれば、そうでないところもあるということは、先ほど申し上げたとおりです。
照屋委員 それは、大臣、攻撃の態様だとか攻撃発生の場所、あるいは攻撃発生の回数、あるいは使用された武器等々から私は十分に判断し得るものだと思うんですよ。
 さて、先ほどから外務大臣の話を聞いておりますと、私は、外交官二名のあの痛ましい銃撃死亡事件について、本当に真摯に向き合っていらっしゃるのかなというふうに思わざるを得ないんです。先ほども言いましたが、イラク暫定内閣のジバリ外相が、今度の事件は、旧フセイン政権の情報機関が米軍の統治に協力する日本の外交官をねらい撃ちしたという見解を示しておるんです。
 だから、単刀直入にお伺いいたしますが、外務大臣は、今度のこの痛ましい事件というのは、要するに、日本の外交官がねらわれて起こった事件だ、こういうふうに認識をしておられますか。
川口国務大臣 今回の事件は、私たちにとっては大変に残念なことであって、痛恨のきわみであるとしか申し上げようがないことでございます。したがいまして、そういうことが再び起こらないように、安全については十分に注意をして、警備には警備を重ね、やっていかなければいけないというふうに思っております。これは外務省の職員全員がそう思っております。
 その上で、おっしゃられた、これが日本の外交官をねらったものであるかどうかということについては、先ほど別な委員の御質問に対してお答えをしましたけれども、テロである可能性というのは高いと思います。高いと思いますが、日本の外交官をねらったかどうかということについて、はっきり申し上げられるだけの資料といいますか、証拠は持ち合わせていないということです。
 例えば、そのときに、その日、近くで何人かの外国人がねらわれた、韓国人等ございます、というようなことがありました。それから、これについて、何々組織のだれだれがこういう目的でやったという犯行声明は出ていないということでございます。
 したがって、これが日本の外交官をねらいとしたテロであるということを結論づけるには、十分なその証拠はないというふうに考えております。
照屋委員 外務大臣、私は、この背後関係を含めて事案の真相を徹底的に究明することが、このような痛ましい事件の再発を防ぐことにつながると思うんですよ。では、外務省はどういう独自の調査、真相究明をやられたんですか。
川口国務大臣 これは先ほどの委員の御質問に対してお答えを既にしたと思いますけれども、事件の後、現地にある大使館が、イラクのその道の専門家を派遣いたしまして、現地で聞き込みあるいは警察からの情報の聴取、それから、現地にいる米軍と話し合う等々の調査活動を行っております。
照屋委員 全然具体性がないですね。これで、この程度で、私は、日本政府独自の調査、真相究明というふうにはとても思えない。
 そこで、時間がありませんので、防衛庁長官あるいは外務大臣に一点だけお伺いいたしますが、今度、陸上自衛隊、無反動砲などを持っていきますね。これは一体、派遣をされた自衛隊員に対してどういう急迫不正の侵害を予想しておるんですか。それをまずお答えください。
石破国務大臣 無反動砲の使い方はいろいろございます。別にりゅう弾のみを積むわけではございません。ただ、私どもが想定をしておりますのは、これは自爆テロのようなもの、そしてまたそれが対戦車弾をもってしては対処できないような場面、その場合に、抑止的に、あるいは自分を守るという自己保存的に限定して使うということを想定しておるものでございます。
照屋委員 実定法上の正当防衛論というのは、まさに、あらかじめ予想するんじゃなくして、その時点において、自分の生命、身体に対する急迫不正の侵害が起こった、こういうことでなければ、自分の命を守るために、安全を守るために正当防衛権は行使できないんですよ。それを、あらかじめ予想して、それに備える武器を持っていくなんというのは、私は、論理矛盾だというふうに思います。
 派遣された集団の自衛隊に、組織としての正当防衛という、そういうふうな権利、概念が適用されるんですか。
石破国務大臣 それは正当防衛に対するお考え、認識の違いだろうと思っております。
 先ほどもお答えをいたしましたが、何を持っていくかということではなくて、それをどのように使うかということに私は力点を置いて考えておるわけでございます。このことは、急迫不正の認定に何ら支障を及ぼすものだとは考えておりません。
 それから、集団で正当防衛権を使うことはあるのかというお尋ねでございますが、武器の使用の場合には、それは個人でございます。しかしながら、その場に上官がありますときは、それぞれ個々がばらばらに勝手な判断で撃つということになりますと、かえって不測の事態を招きかねないわけでございまして、上官が現場にあるときは上官の指揮に従う、しかし、それは個人が行うというような法的性質を何ら変更するものではございません。
照屋委員 今の大臣の答弁ですと、それがまさに武力の行使であり、戦闘行為なんですよ。
 そういうことを申し上げて、時間ですので、終わります。
斉藤委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十三分散会


2003/12/15

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