2003年12月9日

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内閣総理大臣の談話
(イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画)

 本日の閣議において、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」に基づく対応措置に関する基本計画を決定しました。この計画は、自衛隊の部隊やイラク復興支援職員により、イラクの人々を救援し被害を復旧するための医療、給水、施設の復旧整備、物資の輸送等の人道復興支援活動を行うことを定めたものです。また、安全確保支援活動も行えることとなっています。

 四半世紀にわたる圧政の下で、国土や国民生活が荒廃したイラクにおいては、今、喫緊の課題はイラク人による自由で民主的な政権を早急に樹立することです。新生イラクを立ち上げるためには、既に40ヵ国近い各国の部隊が種々の支援を行っています。10月16日には、国際社会がイラクの復興と安定の確保に一致団結して取り組むことを確認する国連安全保障理事会決議1511が全会一致で採択されました。来年6月に予定されている統治権移譲までの間は、復興と安定の道筋を作る上で極めて重要な期間となります。我が国としても、国連や国際社会がより積極的な役割を果たすべきと考えており、今後ともかかる議論に積極的に参加し、主張すべきことを主張していきます。

 第二次大戦以降、我々の先輩は厳しい耐乏生活と苦難を乗り越えて、日米同盟と国際協調の下で、現在の日本の繁栄を築いてきました。海外に多くを頼る日本にとって、国際社会全体の平和と安定が、我が国自身の安全と繁栄にとって不可欠であり、その実現に向け、積極的に寄与していかなければなりません。

 イラクを復興させることは、中東全域、ひいては国際社会の安定に極めて大きな意味があり、我が国の国益にもかなうものです。資金面での貢献に加え、イラク人に対する目に見える人的な支援を行うことが重要であると考え、累次にわたる現地調査などにより、イラク国民のニーズ、イラクの治安情勢等について調査を行った上で、今回基本計画を決定した次第です。この基本計画に従って我が国が行う人的貢献の中心は、イラクの人たちが自らの国を復興し、再建するのを支援するためのものです。

 このようなイラクの復興や、イラク人による自由で民主的な国家の樹立を望まない一部の人々がいます。イラク国内を混乱させようとする試みに対しては、国際社会が断固として対処するとともに、テロを生み出すようなイラク社会の現状や生活を改善するために必要な復興支援を行うことが極めて重要なのです。

 復興支援活動を担う自衛隊は、武力行使をするものではありません。組織の力を生かし効果的な人道復興支援を継続的に行い得るのは自己完結性を持った自衛隊をおいて他にはありません。派遣される隊員は皆、命に応え使命感に燃えて自らの意思に基づき任地に赴く決意をしている優秀な人材であり、日頃の地道な訓練の成果を発揮し、必ずや任務を達成してくれるものと信じます。また、専門家としての知識や経験、高い能力と強い意志を持った文民をイラク復興支援職員として現地に派遣する考えです。

 自衛隊や復興支援職員をイラク等に派遣し支援活動を行うにあたっては、現地の治安情勢等の関連情報を分析し、それぞれの活動に対応した十分な準備と細心の注意を払うなど万全を期してまいります。

 また、政府としては、国内外におけるテロ対策を更に徹底し、国民の安全確保にも万全を期してまいります。

 働き盛りで家族を残したまま、非道に斃れた、奥大使と井ノ上書記官の尊い犠牲を忘れることはできません。イラクの復興とイラクの人々に対する支援を、国際社会とともに進めていこうではありませんか。そのことが世界の平和と安定につながることになるのです。

 この度の政府の決断について、国民の皆様の御理解と御支援を切にお願い致します。


2003年12月9日

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