2003年7月22日

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156 参議院・外交防衛委員会−(1)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=佐藤道夫(民主)、榛葉賀津也(民主)


平成十五年七月二十五日(金曜日)  午前十時開会

○委員長(松村龍二君) イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
 前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○佐藤道夫君 それでは私から、主として官房長官と防衛庁長官にお尋ねしたいと思います。いつも最初に言うことでありまするけれども、基本的な問題でございますので、どうぞ高い地位の方からきちっとした御説明をいただければ有り難いと、こういうわけであります。
 そこで、つい二、三日前に党首討論がありまして、この委員会を打ち切って、それを私も傍聴をして、テレビを通じましたけれども傍聴しておりました。その中で、あれあれと私思わず叫んでしまったことがございます。
 これは、民主党の菅代表が小泉首相に対しまして、実はこのことは前にも取り上げられているんですけれども、大量破壊兵器がいまだ発見されていない、もう何か月も掛かっていると、一体どうなっているんだ、本当にイラクに大量破壊兵器が隠されていたのか、それすら疑問であると。こういう発言に対しまして、小泉総理が満面笑みを浮かべまして、来た来たと。もう恐らく想定問答に入っていたんでしょう。何をおっしゃるかと、あのフセイン大統領、所在不明、どこへ行ったか分からないと、じゃ彼はイラクに存在していなかったのか、それと同じことではないかと、こういうことを、声を高めまして、しかし顔はにこにこ笑いながら答弁されました。
 これ、実は二、三週間前の当委員会でも私これを取り上げまして、たしか予算委員会で同じような質疑があって同じような回答がある、これは明らかにおかしいから、どうか防衛庁長官あるいは川口外務大臣、きちっと総理に対して、あれは間違っているんじゃないでしょうか、適当じゃないんじゃないでしょうかという意見を上申しておいてほしいと、こう申しましたけれども、恐らくそれはそういうことはなかった。聞き流されたんでありましょうね。小泉さんがまたそういう答弁をしまして、どうだ、参ったかと言わんばかりで菅代表をにらみ付けておりました。
 この前も私はっきり申し上げましたけれども、全然これ、問題の違うことを取り上げて、どうだと比較して言っているわけで、明らかに間違いです。いいですか。フセイン大統領がイラクにいたということを疑う人はこの世界じゅう、ただの一人もいないわけです。何ら、既定の事実と言ってもいい。今更それを疑問にして、どうだこうだ、やっぱりいなかったのかなんという、そんなばかげたことを言う人はだれもいません。
 ところが、大量破壊兵器につきましては、今まではっきりした確証は世界の人間の、人民の前に示されたことはないわけで、一方的に、一方的にアメリカがあったということを言っているだけでありまして、国連の査察でもそのことは、はっきりしたことは言っていないわけですよ。査察の、かつてって、十年前ぐらいにあったことは別ですよ。それで、国連の査察も入って厳格な調査を実施中にアメリカが査察団を追い出して、そうして軍隊を投入したと。これはもう間違いなく存在するんだと、こういうことを前提にして入っていったと。しかし、軍隊が入るという以上は流血を覚悟ですから、本当に確証といいますか確実な証拠があって、そしてイラクは大量破壊兵器を保有していたし、今も保有していると、これこれこれこれの証拠があって、それを摘発するために流血覚悟で軍隊が入っていくんだということを当然のことのようにして言っていたわけであります。
 それがさっぱり発見されないから、一体どうしたんだ、最初からなかったんじゃないかと、こういう疑問を抱くのは世界じゅうのほとんど大部分の人だと、こう言ってもいいわけで、イラクにフセイン大統領が存在した、それがいない、だから大量破壊兵器も同じことで、大量破壊兵器が最初からなかった、そんなことを言うものではないと、これが小泉さんの発言なんです。一国の総理として、私大変おかしいと思う。こんな論旨矛盾なことを言って、声を荒げてどうだと。
 私の友人、知人に弁護士あるいは大学教授、法律家、結構おりますけれども、何人かがすぐ電話を掛けてきまして、君、法律家としてああいう答弁どう思うんだと聞かれました。やっぱり論旨ということを重要視して考えていけば、これは絶対におかしいと、子供でもこんなことは言わないと思いますよ。だから私、最初はふざけて言っているんだと思ったんですよ。一国の総理とあろう者が、予算委員会その他でふざけてこんなことを言っていいのかなと思って、どうもしかし何回も繰り返すところを見ると、心底からこういう理屈が正しいんだと思っているとしか思えないわけですよ。
 そして、防衛庁長官、川口外務大臣、やっぱりこれは総理には忠告をしなかった。少なくとも議論をすべきじゃないのかと、私のような考えもあるから総理いかがですかということで、閣議でもいいしどこでもいいですから議論をして、やっぱりおれの考え間違いだったのかなということになるのが結論だろうとは思いますけれども、提案、提議しなかったんですね、お二方はね。
 そこで、官房長官にお尋ねいたします。
 この小泉総理の今の発言、大量破壊兵器は存在するのかしないのか、そういうことについて、フセイン大統領の不在を一つの例として、同じ問題じゃないかと、だからフセインがいなくなったからといって大量破壊兵器がなかったことにはならないんだぞと、こういう考え方、どう思われますか。何か大学生に対して質問しているようで大変申し訳ないんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) 小泉総理の発言はともかくといたしまして、イラクに多くの大量破壊兵器に関する疑惑があると、そしてまたイラクは国連の安保理決議に重大な違反を犯しているということにつきましては、これはもう国際社会の一致した認識でございます。イラク自身も自己申告をしているわけであります。例えばマスタード、サリン、タブンというような化学剤、そういうものについてこういう生産をいたしたという、そういう数字も挙げて自国申告をしているんです。ところが、それがどこに行ったかということについての説明が最後までなかったと、こういうこともございます。また、VXガスもそういうようなこともございます。ほかにいろいろございますけれども、そういう事実存在したというのはイラク自身が認めていたことなんです。それを検証しようと、どのぐらい残っているか検証しようと思ったけれども、そのことについてイラクが協力をしてこなかったということでございまして、これは国連の査察によってそういうような疑惑は明らかになっているというように考えておるわけでございます。
 そのことから前提にいたしまして、総理がフセイン大統領と、一つの例えとして説明に使ったということはございます。これは私は、例えとしては、御意見違うかもしれませんけれども、非常に分かりやすい例えだなというふうには思いました。この例えの、大量破壊兵器があったかないかということと同時に、大量破壊兵器がこれを見付け出すのは大変難しいことなんだと。今、米英軍を始めとしていろいろ捜索をしているわけでございますけれども、いまだに発見されていない。それは、それほど大量破壊兵器を見付け出すことが難しいんだと。それも、意図的に隠すようなことをしているようなことについては、これは非常に難しいこと。それより、それに比べればフセイン大統領の方は、これは見付けやすいんだろうというふうに思います。
 そういうふうな意味において、フセイン大統領を例え話として出したと。これは非常に理解しやすいテーマだというふうに思っています。

○佐藤道夫君 私の聞いたことに全然お答えになっていない。
 私は、大量破壊兵器があるのかないのか、そんなことを議論しているんじゃなくて、一国の指導者である総理大臣が、こんな茶番としか言いようのないような例え話を持ち出して、どうだと。これを聞いておって小学生たちは、なるほどなとあるいは思ったかもしれませんよ、こういう言い方もあるんだなと。人をごまかす、たぶらかすには、多少知能の進んだ者はそういう思いを持って聞いていたかもしれません。
 しかし、少なくとも総理大臣ですよ。それが国会の場でこういう、率直に言うとらちもないような例え話をして、フセインがいなかったとしたら一体どうなるんだ、それと同じ問題じゃないかと。例え話にも何もならないでしょう、フセインの存在を疑っている人はだれも、だれ一人いないわけですからね。
 しかし、大量破壊兵器は、幾ら期間を掛けてアメリカが頑張ったって発見されない。だれだって、さて本当にあったのかと、これは少し考えてみるべきではないかと、こう思うでしょう。そのことを私言っているわけで、フセインの所在不明等、一つの例えとして説明しているなんということは、一国の総理大臣のやることじゃないと思いますよ。
 それについて、官房長官は総理大臣の補佐官として総理と議論なさいましたか。

○国務大臣(福田康夫君) 議論ということかどうかは別として、話はしたことはございます。
 しかし、結局は、委員がおっしゃるように、大量破壊兵器の存在の問題かどうかということじゃないとおっしゃるけれども、それに尽きるんですよ。今、捜索が継続されているわけでございますから、この捜索がどうなるか、その行方を見守りたい、そういうふうに思っております。

○佐藤道夫君 次に、自衛隊の派遣予定地として戦闘の行われていない地域ということが法律でも取り上げておりますので、それをめぐっていろんな議論が闘わされていることであります。
 私、これについても、前に防衛庁長官と外務大臣に申し上げたんですけれども、法律を作っている段階で、一体、戦闘行為の行われている地域とはどういう概念なのか、行われていない地域とはどういうことなのか、これをはっきりさせるべきではないかと。それをはっきりさせるのが、言うならば法律の使命でもあるわけですよ。作ってしまってから解釈でごちゃごちゃと、あそこに行けるのか行けないのか、いやそれは議論してみようとか、そんな問題じゃないんであって、法律を作るときにはっきりと、将来解釈の違いが出てこないように、戦闘行為とは何なのか、それからイラクで現に行われている相当多人数のテロ、ゲリラ、そしてアメリカ軍の中で若干の、あるいは相当数の戦死者が出たりもしている、ああいうことが行われる地域は戦闘行為に入るのか入らないのか。それを、国民が法律を見て、あ、なるほど、これは入らないんだと、だから自衛隊が行くのも当然だと、逆にまた、あ、これは入るじゃないかと、それを、政府は何で自衛隊を送り込んでいるんだと。こういう疑問を持ってお互いに議論をし、あるいは国会に尋ねて質問をしてくると、これが国民の権利でもあるわけですからね。
 それを、戦闘行為が何なのかということを一切はっきりした説明をしようとしないでしょう。起きてみなきゃ分からぬとでも言うんでしょうか。そして、現地に自衛隊員を率いていく指導者、指揮官たちに、おまえら、現場に臨んで考えてみろ、そこで判断しろと、こういう考えだろうかとも思いたくなるわけで、もしそうならば、指揮官の一人一人によって判断が違うことだってあるわけで、これは行かない方がいい、いや、おれは断固行くと、こういう指揮官だって出てくるわけで、それを統括するのは一体だれなのか。防衛庁に問い合わせてみても、さあ、そこはやっぱり国会で答弁があったように、法律を読み上げ、ということだから、君ら考えたまえと、これに終始してしまうんじゃないかと。
 法律を作っているのが今の段階なんですよ。疑問があれば、その疑問、国民の疑問にこたえてこうだと、戦闘行為とはこういう、戦闘行為じゃなくて、行われている区域とはこういうことを言って、今現在、例えば二十人あるいは五十人のテロリストたちが暴れ回っているような地域、あれは国対国の戦争とは思えないから戦闘行為に入らないんだとか、いやそれは入るんだとか、これ法律の上でもし事細かに明らかにすることが困難ならば、そのために政令というものがありまして、政令を作って、その中できちっと区別をして、それを見る自衛隊の指揮官あるいは防衛庁の指導者が間違うことのないように作り上げるのが法律というもので、それが国会議員の最大の使命だと言ってもいいんですよ。何か難しいから適当に書いておいたと、おまえら現場に行ってよくよく考えてみろと、おまえらに任せると、こんないい加減な法律の作り方はないわけですよ。
 何かこの辺を今までもうさんざん議論されてきました。だれも、だれ一人納得していない、野党の人たちはですね。そういう立場の人は三割か四割日本人にいるわけですから、その人たちにこれで分かるように、考え直してほしいということを政令の形にしてこの場に持ち出してきて、そしてこれで議論しましょうよというのが本当の意味での法律の作り方なんですよ。こんなことは私がお説教するまでもなくお三方とも御承知と思いますけれどもね。
 そこで、官房長官、いかがでしょうか。官房長官の国会での説明もどうもはっきりしない。分かりやすく我々に、国民を代表する我々に説明していただければ有り難いと、こう思います。──だって、こっちの説明は前に聞いているから。

○委員長(松村龍二君) もう防衛庁長官の答えは分かっていますので。福田内閣官房長官。

○国務大臣(福田康夫君) 要するに、今回の対応措置を実施するという、その際に戦闘行為が行われていない、そしてまた、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと、そういうふうに認められた地域において対応措置を実施するということでございまして、これはいわゆる非戦闘地域ということでございます。これは、要するに非戦闘地域ということは、これは憲法の枠内で実施するということで、憲法との関係において設けた考え方でございます。
 この非戦闘地域というものは、これは防衛庁長官が実施区域を指定するときに決定をするわけでございますけれども、この指定については総理が承諾する、承認するという際に判断を最終的にはするということになっておりますし、またこれをどうやって決めるかということは、我が国が独自に収集した情報、又は諸外国等から得た情報を総合的に分析しまして、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて合理的に判断をすると、こういう考え方になっているわけであります。

○佐藤道夫君 実はこの問題も党首討論で取り上げられまして、分かりやすく一か所ぐらい説明してくださいよと菅代表が言ったのに対して、総理は、答弁聞いておられたでしょう、私、悪くいえばにやにやしながら、そんなことおれが分かるわけないだろうと、何か威張って答えていましたよね。分からないのが当然なんだと言わんばかりの言い方でした。
 総理大臣というのは一国の本当の最高のリーダーですから、その人が分からなければ国民のだれも分からないと、こう考えてもいいんであって、これから国民、自衛隊員だって国民ですから、をそういう危険な地域に派遣する、一体どこまで、どこで仕事をしたらいいのかだれもはっきりした結論を持っていない。総理大臣に聞いても、そんなことおれ知るかと言われ、どなり付けられるだけですよ。じゃ、だれに聞けばいいんだと、おまえらで考えろと。何かそれらしいことも言っていましたね、あなたどう思うんですかとかってね。(「いい質問だ」と呼ぶ者あり)いいか悪いかは別としまして、一体どういうふうになっているんですか。
 そして、この前も私ちょっと言ったんですけれども、イラクに行ってゲリラかテロに遭いまして、自衛隊員が何人か、戦死かどうか分かりません、事故死かなんか分かりませんけれども、死んだとすると遺族が黙っていないですよ、これ。安全だと言うから我々は拍手をして送り出してやったと、子供たちもそう言って、頑張ってくると言って出掛けていった、それが危険な地帯に入り込んで殺されちゃったと。そこにはやらないと言っていたじゃないですかということを理由に損害賠償の、今は高いですからね、何億という金ですよ、若者一人の命を奪いますと。損害賠償の請求が出てくると。一体どうなっているんですか。裁判所だって、法律を読んでみるとはっきりしたこと書いていない。一体、入り込んでいって、テロがあって、殺されてしまった、三人か五人か隊員が殺されたと、これが戦闘行為の行われている区域なのかどうなのかと。
 裁判官によって違うかもしれませんよ。自衛隊員が亡くなったということを大変重く評価する裁判官は、これは国が悪い、防衛庁が悪い、国が悪い、当然、賠償しろといって何億円という賠償を命ずるかもしれません。しかし一方、防衛庁の立場を重く重く考える裁判官は、そんなことはしようがないことだ、まあだれも予想していなかった、いきなりゲリラがやってきてばんばん撃って隊員が死んじゃったと、昔で言えば名誉の戦死だと、まあここで我慢してくださいよといって請求を認めないかもしれません。
 裁判、とにかく法律がはっきりしないんですから、裁判官だって自信を持てませんよ。どうすればいいんですかねという気になりますよ。何か防衛庁長官を証人に呼び出して、どうだと証人尋問をするかもしれませんよ、そうなってくると。恐らく、私は分からないと、じゃ最高責任者はだれだと、小泉総理だと、小泉総理を証人に呼んできて、ちょっと、あなた答えてくださいよと。うるさいと言って、彼は答える、おれがそんなことを知っていると思うかと。そんなことかもしれませんよ。いや、大事なことなんです、これ。
 たとえ一人でも自衛隊員に戦死が出たら、事故死が出たら、その場合に一体国の責任があるのかないのか、どうなのかということを、またここで同じような議論が繰り返されて、まあしようがないかといい、みんなあきらめようというようなことになるのが落ちだろうとは思いますけれどもね。
 官房長官、どうなんでしょうか。こういう大問題について、私、閣議で本当に徹底して議論してほしいと思うんですよ。いろんな意見があるでしょう。いろんな意見が出るようなのは法律が悪いんですよ。昔から悪法と、悪い法律と言いまして、作っている最中から何しろ議論しているくらいですからね。これからだっていろんな意見が出てくると思う。何でそのことをはっきり書かなかったのかと、国民はそう思いますよ。いかがですか。

○国務大臣(福田康夫君) これは、先ほど私が申し上げましたことに尽きているんです、実はね。
 先ほども、我が国が独自に収集した情報、それから諸外国等から得た情報を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて合理的に判断をするということでございまして、対応措置を実施する場合に、活動地域、実施区域、これを決めるときにはそのような手続を踏んで決めるわけでございます。ですから、小泉総理が昨日、党首討論で、言えるわけがないじゃないですかというふうに申し上げたのは、菅代表はこの法律を読んでいらっしゃるという前提に立って恐らく言われたんじゃないかと思いますけれども。
 そういうことで、今現在決めることはできない。あしたから自衛隊が出るとかそういう話じゃありません。これは、これから十分なる調査をした上で、その上で活動地域それから活動内容を決めるわけでございますから、これはまだちょっと時間が掛かるわけでございます。
 そういうことで、総理は、今そんなことを決められる段階じゃないでしょうと、こういうことを申し上げたんだというように私は理解をいたしたわけでございます。

○委員長(松村龍二君) 佐藤道夫君、時間が参っておりますが、おまとめいただきたいと思います。

○佐藤道夫君 法律、さっきから何度も言っていますけれども、法律を作っている、法律というのは国民のものなんですよね。国民が議論して、ああ、これならいいと、派遣してもよろしいと。それを何かの、まだ何にも決まっていないんだ、三か月か何か月かたたなきゃ何とも答えすらできないんだと、最高責任者がそんなことを言っているわけで、さあどうだと言われたって国民も困るでしょう、賛成していいのか反対していいのか。どんな状況下で自衛隊員が事故死をしたら国が補償をするのか、責任を負うのか、全然明らかじゃないんですよ。こんなことを議論して、さあ結論を出してくれ、多分賛成多数で通るんでしょうとか言われたってね、責任のある採決には加わることはできないんですよ。
 そういうことを、ちゅうちょなく、疑問なく国民に答えるのが内閣の仕事、総理大臣の仕事。しかも将来、自衛隊を率いて、指揮官の最高責任者は総理大臣ですからね、あそこにおまえら行ってこい、ああ、絶対安全だからと。ああそうですか、本当ですか、そうだと、それだけの責任があるんです、総理大臣。それが、作ったときだってはっきり議論していないし、よく分からなかった、今だって状況は変わっていないんです。これから三か月たったってね。
 そういう状況下において、どの地域まで行けるのか、どういう地域に行けるのか、それを政令で書けないというのは、よほど防衛庁というのは立法能力がないんですな。いや、本当ですよ。これは歴史に残る悪法だと言われますよ、自衛隊員がイラクに出向いていって十人、二十人あるいは五十人も死んだりしたら。それは政府の誤りだったろうと、法律はどうか、何にも書いていないじゃないかと、よくまあこんな法律を作ってとみんなあきれますよ。まじめな話です、これ冗談言っているわけじゃないんです。少し真剣に考えていただきたいと。
 最後に答弁を求めまして、終わりに、私の質問は終わりにいたします。

○国務大臣(石破茂君) 先ほど来官房長官から答弁があるとおりでございますが、非戦闘地域という概念と安全か危険かという概念は、これは重なるものではないということは累次答弁を申し上げているとおりです。
 非戦闘地域でなければいけないというのは、憲法上の要請をきちんと確保し担保するために設けておる規定であって、そういうところでなければそもそも自衛隊をやってはいけないということを書いておるわけで、非戦闘地域イコール安全な地域であるということを私は答弁を申し上げたことはございませんし、政府としてもそれを答弁したことはございません。それを混同して議論をされますと、これ本当に国民に議論が分かりにくくなるのだろうというふうに思っております。
 そして、総理がお答えになりましたように、今この時点で、この地域が実施区域としてふさわしいと、この地域が非戦闘地域である、この地域が安全な地域である、政府として調査団も出していない段階でそのような無責任なことがお答えできる立場に政府はございません。そのことをきちんと、官房長官から御答弁ありましたように、きちんと確認をして出す、その趣旨はこの法律にきちんと書かれておるとおりでございます。
 以上です。

○榛葉賀津也君 民主党・新緑風会の榛葉でございます。
 私の時間も限られていますので、是非簡潔な答弁をよろしくお願いいたしたいと思います。
 質問通告をしたのが数日前でございまして、様々な政局の変化もありますので多少通告外の質問をさせていただくこともあろうかと思いますけれども、御容赦願いたいと思います。
 先ほど佐藤委員から、先日のQTの話がございました。私は、正に佐藤委員のおっしゃったように、あの総理の答弁、そしてQTに対する答弁の姿勢として、大変私は総理の姿勢に遺憾な思いをいたしました。これは冒頭コメントをしておきたいというふうに思います。
 一昨日、モスルで、サダム・フセインの二人の息子と言われているウデイ、クセイ、二人が殺されたと、死体となって発見をされたという報道があり、今日、昨日の報道であっても、恐らくこれが本物であろうという報道が流されました。外務省、防衛庁はそれぞれ外交ルートを通じて情報を聞いていると思いますけれども、恐らくこれは本物だろうというのが現在までの情報であります。
 ただ、このウデイ、クセイの死体発見によって、私は三つのことを我々が忘れてはいけないと思います。
 まず一点は、発見された直後、バグダッド若しくはイラク各地で市民が祝砲によってこれを祝ったという現実であります。祝ったことが注意する点ではなくて、あのように市民の、至る所でいまだに市民が銃を持っているという現実が改めてブラウン管を通じて明らかになっているということだと思います。
 二つ目が、一昨日の祝砲のムードから昨日のイラクの雰囲気はがらっと変わっていると、サダム・フセインを守るという一部のゲリラ組織がリベンジの犯行をほのめかしていると、予告をほのめかしているという現実だと思います。
 そして三点目。あの二人が見付かったモスルというのは、言うまでもなく、あのイラクの状況を知っている者であれば、今まで日本の言う、フィクションであろうが何であろうが、非戦闘地域とカテゴライズされる典型的な地域であった、報道でしか分かりませんが、アメリカから日本が行ってくれと要請のあったとされているバラドなんかよりもよほど安全な地域なんですね。このモスル、正に灯台下暗し、町もそんなに破壊されていないあのモスルに、日本の政治家も行ったことのあるあのモスルにサダム・フセインの二人の息子が実は隠れていた。ということは、多くのイラク人がそれをかばう組織的なゲリラ若しくはサダム・フセインたちをかくまおうとする組織があちこちに存在するという現実なんだろうと思います。
 官房長官、この現実をどう受け止めますか。すなわち、これはあなたたちが非戦闘地域と定義しようとしている地域が、実はいつ非戦闘地域になってもおかしくない、ゲリラがたくさんいるという現実なんですよ。官房長官、どうですか。

○国務大臣(福田康夫君) 私、申し上げる前に、事実どういうふうになっているか、それ、外務大臣から説明をしてもらいたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 事実関係、今、榛葉委員がおっしゃられた、基本的に、とおりであります。
 その理解をどうするかという、その祝砲については、私はやはり祝砲という意味があったと思いますし、それから、そのリベンジということについていえば、今後これが我々としては事態の、その治安が良くなっていくことにつながっていくということを期待をしていますけれども、一進一退、いろいろな展開はあるであろうということだと思います。
 それから、そのモスル、これは確かに今までそういう三角地帯と言われたところよりも更に北にあるところであります。これについては、基本的に非戦闘地域かどうか、派遣する地域かどうかというのは、先ほど来官房長官あるいは石破長官がおっしゃっていらっしゃるように、これから事態の展開はいろいろあるわけでして、きちんと調査をしていくということであるかと思っています。

○国務大臣(福田康夫君) 確かに、今、外務大臣から話ございましたように、イラクの情勢というのは、現状もございますが、将来どうなっていくのかというところは、これはよく見極めなければいけないところだと思います。
 ですから、そういういろいろな問題はらんでいるというそういう地域であるからこそ、この法律で自衛隊の活動についてもいろんな制限を加えているという、そういうこともあるわけでございます。
 いずれにしましても、今後の情勢よく見極める、それは、そのためにはしかるべき調査もしなければいけない、しかるべきというか、十分な調査をしなければいけない、その調査は、状況の調査とそれから我が国自衛隊又は民間の方がどういう活動ができるのかといったようなこと、そういうことを含めた具体的な調査をしていかなければいけない、そのことが前提でございまして、今の情勢がすべて安全だというふうに言っているわけではもちろんないわけでございますし、むしろ、いろいろな問題があるんだということは認めた上で、今後、慎重にこの問題を取り扱っていきたいと思っております。

○榛葉賀津也君 状態を見極めなければいけない、しかるべき調査もやらなければいけないとおっしゃいますが、もう現実じゃないですか。安全と言われていた、町も破壊されていない、そして安全だから米兵も余りいなかった、このモスルにウダイ、クサイが隠れている。そしてこれをかくまう多くの組織の人間がこの町にいるということですよ。そしてだれも今まで気が付かなかった。これは火を見るよりも明らか、非戦闘地域もしくはあなたたちが非戦闘地域と定義しようとしている地域が簡単に戦闘地域やゲリラ戦の戦場になるということ、明らかなんですよね。もう現実なんですよ。それを、見極めるであるとか、こういう言葉でこの委員会の場を逃れてほしくないと思います。我々は政治家ですから、政局によって様々な発言をしなければならないときもあります。しかし、私は、少なくとも中東を少しでもやってきた人間として、このようなことは許されないと思うんですよ。
 それではお伺いします。
 今、佐藤委員の、一つの町でもいいから非戦闘地域にカテゴライズされる町を挙げてくださいとおっしゃったら、いや、これから調査するんだというふうにおっしゃった。しかし、仮定の話としても、そして今の現状から認識しても、私は、例えば今の現状ではこういう町は非戦闘地域に定義されるかもしれませんよという具体的な説明、私、必要なんだろうと思います。
 どうですか。一つでもいいから町を挙げてくれませんか。

○国務大臣(石破茂君) 私、その必要性があるというふうに認識をしていません。
 それはなぜなのかといえば、実際に日本政府として、確かに調査団は参りました。しかし、イラク全土にわたって独自の調査をしたわけではありません。やはりここがそういう地域であるということを言うためにはそれなりの調査というものがなければ無責任な答弁になるだろうと思っています。

○榛葉賀津也君 いや、そうではないと思います。
 例えば、今この町がある、この町の現状はこうこうこうこうこういう状況だから、今の現状においてはこの地域は非戦闘地域と言ってもいいんではないですかという国民に対する分かりやすい説明、提案、例えばこういう町は今後非戦闘地域にカテゴライズされる可能性があります、無論、更に調査をしていってその現実が変わればこの地域が非戦闘地域でなくなるかもしれない。しかし、今このような重大な法案を通そうとしているんですから、具体的な分かりやすい例を挙げて説明するという説明責任はあなたたちにあるはずです。
 官房長官、若しくは防衛庁長官、具体的に都市の名前を挙げてください。

○国務大臣(石破茂君) 都市の名前は今無責任に挙げられないのは申し上げたとおりの理由によります。
 委員もこの法律をよく御承知の上で御質問いただいていると思いますが、私たちはそういう地域では活動しない、そしてもう一つは、近傍でそういう戦闘行為が行われ、あるいは予測される事態に至った場合には、活動を休止し、危険を回避し、実施区域の変更等の措置を待つというふうに条文で定めておるわけでございます。
 それは、佐藤委員がおっしゃいますように、そんなときに指揮官が分かるのかいというふうにございますが、それは行動というのは努めて極めて抑制的になされるということになってまいります。したがいまして、日本国の自衛隊がどうやったらば戦闘行為というものにならないようにするかという歯止め、これは掛けておるわけでございまして、分からないという御指摘に対しましては、行動は抑制的になるということを申し上げることになります。

○榛葉賀津也君 外務大臣にお伺いします。
 今、バグダッドの大使館に何人いらっしゃって、CPAに日本人は何人いるのですか。

○政府参考人(安藤裕康君) お答え申し上げます。
 在イラクの日本大使館でございますけれども、現在、上村臨時代理大使以下、八名の職員が勤務をしております。
 それから、CPAでございますけれども、CPAを通じた日本政府の人的協力ということで、現在、政府職員八名を派遣しているところでございまして、これはそれぞれバグダッドとバスラにおります。

○榛葉賀津也君 計十八名ですね。

○政府参考人(安藤裕康君) 十六名です。

○榛葉賀津也君 十六名ですね。合計十六名の方が、日本人が現地にいらっしゃると。
 当然、この現地の日本人とは外務省として連携を取っていると思うんですけれども、これらの方々の情報から、少なくとも現在でどの町若しくはどの地域が非戦闘地域として想定をされる可能性があるかということは、これ無論言えるはずだと思うんです。
 外務大臣、お答えください。

○国務大臣(川口順子君) 先ほど来防衛庁長官がお答えのように、これについてはきちんとした準備をした上で申し上げるべき話であって、私の立場でこれについて今の時点で無責任にここはそうであろうと言うことは差し控えたいと思います。

○榛葉賀津也君 全くもって無責任だと思います。
 我々政治家は戦場に行くことはありません。戦場に行って汗を流すのは自衛官であります。我々は、あの五十度の灼熱の中で命の危険にもさらされながら人道復興支援に汗を流す、ひょっとして血も流すかもしれない、相手に血を流させるかもしれない可能性のある自衛官に対して、もっと緊張感と誠意を持ってこの議論をするべきだと思うんです。
 防衛庁長官、この法律における安全な場所という概念は一体何でしょうか。安全な場所の定義をどうしてこの法案に盛り込まないのですか。

○国務大臣(石破茂君) これも何度か答弁申し上げましたが、一般人、すなわち訓練も何も積んでいない、権限も与えられていない、自己を守るために必要な権限、そしてまた武器も与えられていない、そういう一般人にとっての安全な地域と、訓練を積み、そして自己を守るための権限を与えられ、そのための装備を携行していく自衛官にとっての安全な地、これは当然概念が異なるものでございます。
 これも累次答弁申し上げておりますように、どんな地域であるのか、そのためには、権限は定められておりますけれども、何を携行していくべきなのかということをきちんと詰めました上で、どこがそういう地域なのかということを決することになります。したがいまして、自衛官にとって安全な地域ということは申し上げておきます。
 しかし、何を持っていくのか、まさか機関銃一丁とか二丁とかそんな議論ではございませんが、どこまで持っていくのか、それはおのずと、何でも持っていいという話ではなくて、自己を守るためにという一つの定めがあります。そして、持っていく武器は、何を持っていくかということは二つの概念があって、それはどれだけの装甲に耐えるものなのかということもあります。そういう地域、そういうものを持っていって、自衛官が権限の下に安全に行動ができる地域、今の法律の中でお答えができますのはそこまでです。

○榛葉賀津也君 安全な場所の法的概念をここにきっちり盛り込まないと、この法律を背中にしょって現地に行く自衛官はたまったものではありません。この安全な場所の法的概念は一体何なんですか。

○国務大臣(石破茂君) 法的概念というのは、防衛庁長官に与えられております隊員の安全に配慮しなければならない、こういうものが法的な根拠になります。それは、あえてこの法律に書いておる、新しい、新しいといいますか、当然のことでございますけれども、改めてここの法律に書かせていただきました。
 委員は法的な概念というふうにおっしゃいますが、例えて言うと何を持っていくんだということはこの場で決められるものではありません。逆に言えば、これしか持っていけないということになった場合、法律は天下周知の事実となりますので、そうすれば相手から何を思われるかということを考えるのは、これは当然のことでございます。
 どうすれば自衛官が安全に任務を遂行できるかということにつきまして、政府としては今までも真剣に考えてまいりましたし、これからも万全を期します。

○榛葉賀津也君 戦闘地域、非戦闘地域の区分けの問題、そしてこの安全な場所という概念の問題、今の答弁を聞いて、私はますますこの法案は絶対に通しちゃいけないという意を強くいたしております。
 長官は十五日の防衛庁長官記者会見で、大臣自ら現地視察を考えているというコメントを述べておられますが、大臣いつ、長官いつ行かれるお考えですか。

○国務大臣(石破茂君) これはまだ法律が御審議中の現在、それはいつということは申し上げるわけにはまいりません。

○榛葉賀津也君 法律が通過したと仮定して、そのどれくらい後に行かれるお考えですか。

○国務大臣(石破茂君) 具体的にそれは決定をいたしておりません。法律がまだお認めをいただいていない、真剣な議論が行われている段階でそういうことを申し上げるのは不謹慎かと存じます。

○榛葉賀津也君 それでは、長官が行く場所は、安全な地域に行かれるんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、どこが安全な地域かは今この時点で申し上げられないということを申し上げたとおりでございます。

○榛葉賀津也君 私はどこに行くんですかなんて聞いていませんよ。安全な地域に行くんですかと聞いているんです。

○国務大臣(石破茂君) それは御案内の上で御質問かと思いますが、自衛官にとって安全な地域とは何かというのは、一般人にとって安全な地域というのとは違います。しかし、私は防衛庁長官ではございますが自衛官ではございません。そうしますと、本当にじゃどこの地域に、仮に私が法律をお認めいただいて行くとして、これは本当に本当に安全な地域で、何も飛んでこず、エアコンも利いておって、そういうところで単に行ってきてアリバイを作りましたというようなことを申し上げてはいけないのだろうというふうに私は思いますが、今、委員が安全な地域に行くのかというふうに御質問になって、はいそうですとも、いいえ違いますと、どちらをお答えをいたしましても正確を欠く答弁になると思いますので、これでお許しをいただきたいと存じます。

○榛葉賀津也君 大変上手な答弁ですけれども、私の答えには、余り答えていないというのが現実だと思いますけれども。
 長官、昨日の私の本会議場での討論の中でも述べさせていただいたんですけれども、今イラクには三つの地域があるんです。一つが戦闘地域、もう一つが戦闘地域の中で危険な地域、そして非戦闘地域で安全な地域、この三つがあると思うんですけれども、長官、この様々な三つの地域、このすべて、全部足を運んでいただいて、長官自ら現場をしっかり見ていただきたいと思うんです。
 加えて、順番が逆だと思うんですよ。調査団や、今月末にも日本の調査団が現地へ行くという報道もありました。調査団がまず行く、若しくは長官自らが防衛庁のトップとして現地に足を運ぶ、そして現地の状況を見極めてからこの法案を審議してこの法案を作っていくというのが当然の我々政治家としての責務であり、正当なプロセスだというふうに私は強く主張したいと思います。
 防衛庁長官、自衛隊法第三条には国の防衛という役割、自衛官の役割について書いてあります。実際に汗を流し、先ほども言いましたが、血を流すかもしれない自衛官に、この自衛隊法第三条は、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」というふうに書いてあります。
 この自衛隊法第三条の趣旨に合致をしない今回のイラク派遣、あなたは自衛隊のトップとして現地に行く自衛官にどう説明をするのですか。

○国務大臣(石破茂君) まず、冒頭の委員の御指摘ですが、これも累次答弁を申し上げておりますように、この法律は枠組み法でございます。基本計画は内閣の、閣議の決定により内閣が決めるものでございますし、そしてまた実施区域というものは総理大臣の承認をいただくものでございます。そして、実施の可否は国会の御承認に、これは事後でございますが、掛けておるわけでございまして、きちんとした調査をしてというのは、その後に、いろいろな閣議でありますとか、総理の承認でありますとか、国会の御承認を経るものでございます。
 そしてまた、今のお尋ねでございますが、それは自衛隊法全体の御理解の問題であろうというふうに思っております。
 確かに、委員御指摘のように、自衛隊法第三条は、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」。これが三条でございます。
 この三条の仕組みの中で本来任務があります。本来任務と付随的任務というふうに分かれまして、本来任務は主たる任務と従たる任務に分かれるということになっております。付随的任務の中には、例えて言えばPKOみたいなものもございます。これは、自衛隊法の中で何をどう読んでいくのだということになりますが、委員御指摘のように、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、」ということから読めば、これはおかしいのではないかという御指摘かもしれません。しかし、我々は、例えばPKOというものに出し、あるいは国賓等の輸送を行い、在外邦人の輸送を行っております。そういうような形でいろいろな任務を行っておることが自衛隊法の体系の中で整合が取れていないとは考えておりません。

○榛葉賀津也君 今の防衛庁長官の説明で自衛官が納得をしてイラクに行ってくださるというふうには私は思えません。
 外務大臣にお伺いします。
 バクダッドの南方約八十キロにヒッラという町があるんですけれども、ここでICRCのマークの入った車が銃撃をされ、赤十字の職員が殺されました。その事実は御承知だと思います。赤十字のマークの入った車でさえ銃撃をされ、ゲリラによって職員が殺された。そしてその前日、IOM、国際移住機関、IOMの職員もこれまた国連のマークの入った車に乗っていながらゲリラに銃撃をされ殺されたというのが報道で明らかになっています。
 現在までに、国際機関プラスNGO等で働く方々の死者数を外務省は把握されていますか。

○政府参考人(安藤裕康君) まず、国際機関の職員が襲撃により死亡したケースでございますけれども、これまでに三名が死亡したというふうに私ども承知しております。先ほどお話のありましたIOMの職員、それからICRC、国際赤十字の職員の例でございまして、それに加えまして、同じようにICRCの職員が四月に殺害された事件がございます。
 それから、NGOでございますけれども、これは独自の判断で支援活動に従事しているということでございますので、私どもの方としてその活動の全容を把握するということはなかなか難しいわけでございますけれども、私どもの承知しております限りでは、これまでにNGO職員に死傷者が出たというふうには承知しておりません。

○榛葉賀津也君 外務大臣、三人がこれまでに殺されている。そして、そのうち二人がこの一週間以内に殺されている。これは正にゲリラの攻撃が過激化をし、いら立ち、米英兵だけではなくて国際機関、いわゆる民間の方々や中立公正を保つこういった方々にまで攻撃の手が及んでいる。この現実を外務大臣はどのようにお考えですか。

○国務大臣(川口順子君) 先ほど一進一退と申しましたけれども、榛葉委員おっしゃるように、イラク人の中にいろいろな不満があるということは事実そうだろうと思います。
 それで、じゃどうすればいいのか。これは、事態は、一刻も早く支援の手を大量に差し伸べて、イラクの社会に平和と安定をもたらす努力を国際社会が全体としてするということしかないわけです。それぞれ派遣されている人の安全というのは非常に大事であります。その安全を図りながら、それでいて同時に、できるだけのことを日本としても国際社会の一員としてやっていかなければいけない、そういう思いを強くしております。
 二人のフセイン大統領の息子が殺害をされたということ自体、これはいろいろな意味を持つと思いますけれども、私は、このようなみんなにかくまわれる立場の人間ですらそういう状況でなくなったということであって、フセイン大統領あるいはその他のかつての政権のリーダー、そういう人たちにとって安全な場所は少なくなってきたということであろうかと私は思っております。

○榛葉賀津也君 昨日、一昨日ですね、国連安保理決議でイラク現状における報告書というものが提出をされ、報告がありました。全体的に米英に批判的なトーンでこの報告書は書かれていたということなんですけれども、この報告書の中で、国連のイラク支援団、これウンナミと言うんでしょうか、UNAMI、この創立を、ウンナミですね、創設の必要性を説いているんですけれども、外務省としてこれを積極的に支援していくお考えですか。

○国務大臣(川口順子君) 我が国の前から申し上げている立場というのは、イラクにおける復興には国連の十分な関与を得ながら国際社会が一致をして当たるということが重要であるということであります。このUNAMIの設立について、今後安保理でどのような議論があるかということを注視をしてまいりたい。そして、それを見ながら、我が国としてどのような形でこれに関与をしていくということ、あるいは支援をしていくということが可能かということの検討をいたしたいと思います。

○榛葉賀津也君 私は、やっぱり日本はそういった支援をしていくことに全力を傾けた方がいいと思いますよ。
 これ、通告してなくて大変申し訳ないんですけれども、今日の新聞、朝日新聞で、「NGO、資金難で撤退へ」ということで、イラク、ヨルダンの国境の難民キャンプの医療支援に当たっているNGOが外務省の追加支援がなくて、資金難によって今月末でその活動を打ち切ると。キャンプでは毎日八十人の患者が出ているんですけれども、この後引継ぎ手がなくて困っているという状況だという報道がありました。川口大臣は、ずっと、人道的支援で様々なルートを使ってイラク復興をしていくということを常々おっしゃっております。これは通告してありませんので大臣でなくても結構ですけれども、この外務省の矛盾した姿勢をどのように説明するんですか。

○政府参考人(安藤裕康君) 本日の新聞に委員御指摘のような記事があることは承知しております。必ずしも私の直接の所管ではございませんけれども、今朝ちょっと様子を聞きましたら、必ずしも外務省の追加援助がないためにこういう活動ができなくなって撤退したということではないようでございまして、このジャパン・プラットフォーム自身の中の検討によってこういうふうな結果になったというふうに聞いておりますし、必要があれば、また御申請があれば、外務省としてその追加援助の可能性を検討することにやぶさかでないというふうに承知しております。

○榛葉賀津也君 局長、駄目ですよ。ジャパン・プラットフォームは極めて日本政府、外務省と関係の強いNGOの受皿であります。そして、このジャパン・プラットフォームが活躍すると、外務省は連携を取ってやっているんだと、そして資金難で撤退すると、直接我々の関与している組織ではありませんと、こういう二枚舌を使ってはいけないと思います。
 資金がなくて撤退して、我々の関与するところでなかったら、このような事実があったら、人道支援を我々は正に自衛隊を送ってまでやろうとしているんですから、こういった支援を積極的にフォローしていくのが当然外務省の責務だと思うんですよ。
 私は、防衛庁長官や官房長官がかねがねおっしゃっております国際性、継続性、組織性、計画性を持った国又は国に準ずるもの、今各地で起こっているゲリラ、これは正にこの国又は国に準ずるものに当てはまると防衛庁長官も私の質問に答えていらっしゃいます。そして、赤十字や国連のマークの入った車でさえも襲われる現状。安全なモスルでさえもゲリラが暗躍し、サダム・フセインの側近中の側近、正に息子たちが潜伏し、それをかくまっている組織があるという現実。そして、安全な地域があっという間に、瞬間にして、戦闘地域が瞬時にして非戦闘地域に変わっていくこの現状。この戦地に今我々は自衛隊を送ろうとしている。
 私は、一人の政治家としてこの法律に到底賛成することはできないことを強く主張いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。


2003/07/25

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