2003年7月10日

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156 参議院・外交防衛委員会−(5)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=広野ただし(自由)、田英夫(社民)


平成十五年七月十日(木曜日) 

○広野ただし君 自由党・無所属の会、国会改革連絡会の広野ただしです。
 昨日の総理の答弁等を聞いておりまして、やはり非常に問題だなと思いましたのは、こういう自衛隊を海外に派遣をするということは極めてやはり慎重に抑制的に考えなきゃいけない。実力部隊を海外に派遣するというのは、やはり国家主権の究極の行為、行使というようなことでありますから、そういうふうに思っておるんですが、総理が言われますのは、その時々のものを積み上げていって、その経験を積み上げていくことによって国民の皆さんの思いが出てきて、そして基本法といいますか、そういうものを作っていくんだと、こういう考え方を言われるんですが、私はこれは、かえってこういう考え方は国を誤るというふうに思います。
 やはり実力部隊を海外に派遣をするというのは極めて重い判断でありまして、そのときの原理原則あるいは基本理念、そしてまた考え方というものがしっかりしていて、そういう中で個別のものを判断をしていくということでありませんと、これは歴史に学んで、どの今までの海外派遣、海外派兵というものでも、自衛権の発動あるいは自国民を守る、そしてまた国益を守る、人道主義、民主主義を守るという大義の下に出ていって、それがある意味で泥沼化をしていくということにつながるわけでありまして、そこが特措法といいますか個別法の積み上げでやっていくということは、やはり私は極めて日本の進路を誤る危険が非常に強いと。
 私たち自由党は、元々、根本的な安全保障基本法というものをきちっと作って、そういう下に、どうしても出すという場合はきちんと理念に沿って、そしてまた役目もしっかりと与えて、そしてまたきちんとした装備の下に派遣をしていく、またしかも、これは国連の下に派遣をしていくという考え方を持って、もう既に安全保障基本法を衆議院に提出をいたしておりますけれども。
 そういう中で、一つ確かめさせていただきたいと思うんですが、アフガンの国連のPKO、官房長官にお伺いしますが、アフガンでは国連のPKOに日本は参加をしなかった。これは陸上自衛隊を派遣をするということについていろんな判断があったんだろうと思いますが、それが今度は、どうして今度、正にまだ戦争状態がある意味では続いている、私はスティル・アト・ウオーだと思っておりますが、そういうところに陸上自衛隊を今度は派遣するのか、ここのところの見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) アフガンとイラクとどう違うかと、こういうことだと思います。
 アフガンは、これも局地的に戦闘状態というものは継続されております。また、もう一つは、今御指摘のPKO、これは実施されていないんです、アフガンでは。イラクもこれは実施されておりませんけれどもね。日本の軍隊、軍隊というか自衛隊がアフガンに行くことは、これは今困難な状況にある、不可能な状況にある、こういうことであります。
 イラクの場合には、これは全体的な戦闘状態、これはもう終わったという認識、ただし、部分的に戦闘行動、戦闘というか衝突が散発しておる、こういう状況であると。そしてまた、国連決議一四八三というものが出たということによりまして、自衛隊が国際的には出ていく、あの地域で活動する、もちろん一四八三の範囲の中でございますけれども、活動するという根拠はできたわけですね。その根拠に基づいて、今御審議をいただいておりますこの法案で国内的な根拠を生むことができると、こういうことでございます。
 アフガニスタンは戦闘状態が各所で起こっているという現状からして、まだ我が国が出ていけるというような状況にないと、こういう判断でございます。

○広野ただし君 アフガンも非常な危険な状態である。しかし、私はイラクも、昨日も申し上げたんですが、タイムが言うようにポストウオー・ウオーということで、戦後の戦争、そして、ザ・ウオー・ザット・ネバー・エンズ、終わりのない戦争、こういうことが、やっぱりそういう状態にあるということが言われているわけですね。
 そういうところへ、アフガンの場合は暫定統治機構がまだありますね、発足をしている。今度は、イラクの場合は暫定行政機関がまだない状況ですね。連合占領軍、CPAが、暫定統治機構、暫定、何といいますか、占領軍といいますか、それがある、そのCPAがあるということで、まだイラク国民による暫定行政機構がない状況の中で言わば占領軍が治安を見る、その状況の中に何で今度は陸上自衛隊を出していくのかと、何のために出していくのかという原点をもう一度伺いたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) イラクに出すと、こういうことですね。
 これは、イラクの復興を支援するということは、これはイラクの、何というんですか、復興、安定ということ、そしてイラクがその復興、安定を果たした結果あの地域が安定化するということ、これが極めて大事なことだろうと思います。
 まずはイラクが今非常に悲惨な状況になっているというその状況を回復するということ、そのために我が国としてどういうような貢献ができるのかということであります。言ってみれば、我が国のそういう貢献はイラクの安定化に向けて取り組む問題である。そのことが中東地域全体の安定につながるということを期待をいたしておるわけであります。

○広野ただし君 この安全確保の支援活動、あるいは治安についての支援活動という、言わばまだ治安状態がしっかりしていないところへ、しかも国連が必ずしもはっきりと要請をしているわけではないんですね。人道支援についてはすべての参加国に対してコール・アポン、要請をしている。しかし、治安活動については、これは占領軍が、CPAがまずやると。それに対する協力をウエルカムするということの要請なんですね、国連決議一四八三というのは。
 ですから、何も前のめりになってこの治安活動、安全確保の活動の支援のために出ていく必要がどうしてあるのか、ここのところをちょっと明確にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) そういうような人道復興支援活動、ひいてはイラクの復興そして安定化というようなことについて我が国が何もしないでいいんだというんであればしなくていいんです。
 しかし、国際社会において、これは明らかにそのことを願い、諸外国が貢献をもう既に始めているということでありますし、なおかつ、その前提として、この安保理決議一四八三において、これはイラクにおける安定と安全の確保に貢献するよう我が国を含む国連加盟国が明確に要請を受けていると、こういうように認識をいたしておりますから、当然我が国もその対象であり、かつまたその復興支援活動に協力をするということであります。その目的、何かといいましたら、先ほども申し上げたことであります。

○広野ただし君 官房長官、そこが、人道支援、経済復興支援、ここのところについてはしっかりやればいいんだと思うんですね。しかし、この安全確保あるいは治安活動の支援については必ずしも全加盟国にコール・アポン、要請をしているわけじゃないんですよ、この決議は。そうですから、そこのところを何で前のめりになってやっていくのかということを。

○国務大臣(川口順子君) 英語で動詞が違うというのは、これはおっしゃるとおり、英語の文章は違うわけですけれども、我が国の政府の理解としては、その動詞の違いということはそれに対して要請をしているということに対して影響を与えていない、動詞が違うからといって片方は要請をし、片方は要請していないというふうに理解すべきではないというふうに考えています。両方とも、アピールもそれからコール・アポンも、文脈からずっと読んでいただくと、両方とも我が国に対して要請をしているという理解をしているということです。こういう理解をしているのは我が国だけではないわけです。

○広野ただし君 そこはちょっと間違っていると思いますね。人道復興支援、ここのところはすべてのオールメンバーズに対してきちんと要請をしているんです。ところが、安全確保、治安活動、安全、安定の分野については、これはそういう意思をウエルカムすると、歓迎をするという、しかもオールメンバーじゃないんですよ。そういう表現になっているわけで、同じ、同列になっているとは私は解釈しておりませんが、そこの点、官房長官、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 英文見ていないので、外務大臣から答弁します。

○国務大臣(川口順子君) このオールというのが入っているかどうかというのは、これは主文ではオールメンバーズにコールズ・アポンとなっているということはおっしゃるとおりですけれども、そういった要請を受けて我々としてどのように対応するか、正に主体性の問題であるわけですね。我が国だけではなくて、例えば幾つかのほかの国、例えばホンジュラスですとかウクライナですとかオランダですとか、そういった国は一四八三を根拠として治安維持活動を説明をしているということでありまして、我が国だけが独特の理解をしているということではございません。

○広野ただし君 これも総理が言っておられるんですが、海外のたくさんの国々が出すから私たちも応分のことをやるんだと。海外の国々はそれは海外の国々でいいと思いますよ。ですけれども、日本は日本としての考え方でやっていけばいいんで、日本は例えば人道支援と復興支援のところにしっかりとやっていくんだと、それはそれとしての識見であり、もう一つ、例えば暫定行政機関、イラク国民による暫定行政機関ができて、そして国連が例えばPKOの要請があれば、それはちゃんとしたPKO法に基づいて、国連平和協力法に基づいてそのときには出せばいいわけで、今何で前のめりになってこの治安の支援のために出していかなきゃならないのか、その点、官房長官にもう一度伺いたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) これは国連平和協力、PKOが国連でもって実施するということが決定をする前にこの決議が出ております。この決議が出れば、国連PKOでやる分も同じことができるわけでございますから、この決議で十分であるというように考えます。
 今、見通しとしてPKO実施するという、そういう見通しはございません。

○広野ただし君 やはり非常な混乱状態にある中に、今度は、日本が主体的な責任、判断でもって陸上自衛隊を出すというのはこれは初めての行為だと思うんですね。PKO法じゃなくてですね。
 ですから、私は、今度の場合にしっかりとした大義、そしてしっかりとした明確な役割、また出すからはしっかりとした、きちんとした国際標準に基づく装備で出ていくという堂々としたものにしなければ、何かすき間を縫ったようなそういう形で出ていって、今度、万が一自衛隊に被害があったりあるいは犠牲者が出たり、また逆にイラク国民に思わぬ被害を及ぼしたり犠牲者を出したりと、こういうことがやっぱり大いにあり得るんじゃないかと思うんです。
 そういうときの責任について、官房長官、どうお思いですか。

○国務大臣(福田康夫君) そういうことがございますから、ですからこの法案の中では厳格なる規定を設けて、その範囲で自衛隊が活動できるようにするということが、これが大事なことだと思います。十分なる調査、また情報収集、そういうことも必要でございます。
 そういうことを基にして所期の目的が達せられるように政府として全力を挙げてまいりたいと思っております。

○広野ただし君 これは国内の有事法、この場合は我が国民の、国内における我が国民の生命、身体、財産にかかわる、あるいは人権にかかわる問題です。
 しかし、海外に出ていきますと、先ほどからいろんな議論がありますように、海外に出ていったときに、それぞれの国の歴史、習慣あるいは民族、宗教、また文化も違いますし、それこそ正に言語が違うと、こういうことです。
 ですから、よく言われるように、ヒンズー教であれば牛は食べちゃいけない、そしてまたイスラムであれば豚は食べないと、そういうようなこともありますし、実際例えば、じゃ日本が明治維新を迎えたときに西洋人が入ってきた。そのときに、肉をばんばん食べると。これは江戸時代だったかもしれませんけれども、日本では肉を食しないのにがんがん食べると。何て残酷な人間だと、こういうふうな受け止め方があるわけですね。
 そしてまた、イスラムでは公開処刑、こういうことだってあるわけです。誠に日本からいえば残酷じゃないかと。こういう言わば習慣の違いということによっていろんな受け止め方があると思うんですね。
 だから、日本の中だって、地方によってはイエスと言っているのかノーと言っているのか分からない表現が一杯あります。京都に行って、じゃお上がりやすと言われて、さっと上がっちゃいますと、これは何とまあぶしつけな人間なんだと、こういうふうにやはり受け止められることだってあるわけですね。
 これは、海外においてはそんなことが山ほどあるわけで、それによって、先ほど防衛庁長官もおっしゃいましたけれども、誤解とかそういう誤認とか、そういうことがいろいろと起こるからこそ、海外に自衛隊、陸上自衛隊が出ていった場合にいろんな問題が起こるということだと思うんですよ。
 ですから、やはりそれが基になってどんどん、例えば、だれも元々戦闘行為を、あるいは武力行使をしたいと思っているわけじゃないんですよ。ところが、我が例えば同僚が、先ほどからありました、拉致された、それを助けなきゃならない。これは当たり前の感情なわけですね。そういう中でやっぱりのめり込んでいくということだってあるわけですよ。それが今までの歴史でしょう。そういう歴史を踏まえて、私たちは歴史に学んでしっかりとした体系の下にやっていかなきゃいけない、こういうことだと思うんですよ。
 ですから、先ほど言っておりますように原理原則、あるいは明確な役割、そしてちゃんとした装備というものを踏まえて出すなら出すということでありませんと、大変なことに、結局ずるずると泥沼化にしてしまうということがあるんじゃないかと私は思うわけです。
 ですから、実際問題として、本当に自衛隊職員あるいは自衛隊隊員、あるいは自衛隊に対する被害、あるいはイラク国民に対するそういう思わぬ被害、あるいは犠牲者が出たというときの責任、これは本当に私は官房長官、総理に大きな責任が出てくると、こう思いますが、もう一度、そこのところを伺いたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 特に、安全面についていろいろと御懸念をおっしゃったものと思います。
 その面につきましては、これはやはり事前の調査、それから情報収集、また現地に参りましては、CPAはもとより、他国との情報交換、また国際機関との連携といったような様々な情報交換等によりまして、より安全な業務が実施できるように、これは政府として全力を挙げなきゃいけないということであります。
 そういう意味で、この法案においても、その分については十分な配慮をするというような規定も設けておりますし、非常に重要な点でございまして、この点は、防衛庁においてもその必要性をもう十分認識しながらこの職務を遂行すると、こういうことになろうかと思っております。

○広野ただし君 もう一度伺いますが、それが大規模に起こった場合、これはどういう責任を取られますか。

○国務大臣(福田康夫君) そもそも、そういう例えば戦闘行為とか、そういったような必然性のあるようなところには行かないということでございます。現在も非戦闘地域、また将来にわたっても非戦闘地域であると、そういう見通しを立ててこの派遣を行うと、こういうことになっておりますので、そういうことは絶対起こらないというような考え方をして、大規模なということであれば、そういうことは絶対に起こらないということを前提に考えていかなければいけないと思っております。

○広野ただし君 それが絶対起こらない、起こるかもしれない、そのことを考えるのが危機管理の最たることだと思うんですね。やはり、何も迷路に入っていくような、そのことを私は言うわけじゃなくて、やはり万全の策を講じておかないと大変なことになるんだということだと思います。
 そしてもう一つ、実際、例えば、このイラクを現在三分割をして治安維持をしております。アメリカ軍ですね、そしてイギリス軍、そしてもう一つ、ポーランド軍が指揮をしていると。これは、ポーランド軍の指揮の下に約二十か国、これはバグダッドの南、ヒッラに本部を置いて、これ大体総勢九千人ぐらい、まあ各国があれしておりますから、ということであります。そういう、ポーランドは米軍と協力をする、またいざというときには米軍に協力を仰いで、そしてそこで守ってもらうと、こういうやはり協力関係を持っているわけです。
 そしてまた、スペイン・グループというのもあると。これは総勢四千三百人出る。それとウクライナ単独軍、これは千六百人出ている。それと英国軍の下に、オランダですとかチェコですとかデンマークですとかイタリア、九か国。これは南の方を治安を担当をすると。こういう中でオランダも、緊急時、緊急事態に備えて特別協定をイギリスとの間で結んでいると、こういうことであります。
 じゃ、日本が出ていって何か起こった場合はどうされるのか。私は、こういう特別協定というのが場合によっては必要なんじゃないのかと、私が言うことではないんですが、思いますが、いかがでしょうか、官房長官。

○国務大臣(石破茂君) 先ほど来、官房長官から御答弁がございますように、非戦闘地域で活動する、そしてその中でも我々が与えられた権限あるいは武器持って安全に任務が遂行できる地域を実施地域として指定するということでございますが、それでも万が一ということは不可避でございます。全く排除するわけにはまいりません。
 それに対してどうするかということでございますが、一つは、先生がおっしゃいましたような前のめりということはございません。そうならないようにこのような法律が作ってございます。戦前の盧溝橋のようなことをおっしゃる方もございますが、戦前の天皇陛下の軍隊であった旧日本陸軍と、そしてまた現在の民主主義的なシビリアンコントロールの下にあります我々自衛隊とはそこが違うところだと思っております。
 この法案も、そういうことにならないように、ならないように、例えば近傍において戦闘が発生した場合とか予想される場合には、それは回避し、指示を待つ、そこまで規定をしてございますのは、そういうことにならないようにどうするかということをまさしく民主主義的な文民統制の下に法律で書いておるということでございます。
 先生お尋ねの協定等々どうするかでございますが、これは具体的に我々がどういう活動をするか、そして現地において治安を担当しておりますところの当局、英米軍、それがどのような治安という形を取っておるか、そういうことを全部勘案いたしまして具体的に検討することになります。今の時点で、このような形として協定を結ぶということが具体的にお答えできる段階にはございません。

○広野ただし君 私はこういう形で出すことに反対ですから、何もそこで深入りして言う立場にはないんですが、そういうことはちょっとお話をしておきます。
 ところで、もう一つは国連の問題です。今度のイラク戦争に当たって、国連安保理あるいは国連が十分な機能を発揮しなかったと、こういうことであります。実際、私たちも、安保理に何か余り聞いたことのない国が入っておって、そういう国にこの世界の運命を託していいんだろうかと、日本も全く安保理にも入っていなくて、そういう感じを実際強く受けたわけであります。
 国連に対してあんな役に立たないところはもうほっておけと、また二〇%も、二〇%近くも日本は出しながら何にも役に立たないんだからというような議論がありますが、私はそれにはくみしません。やはりしっかりと、いざというときに、この長年の、二十世紀の、戦争の世紀の中から出てきた国連であります。やはり国連を、もう不十分ながらそれを何とか改革をしていいものにしていくと、そして国連の下に世界の国際平和あるいは安定というものを保っていくということが根本だと思うんですね。ですから、安保理改革、そして国連改革というものについてしっかりと取り組んでもらいたいと思うんです。
 安保理改革については、九三年以来もう十年間、ワーキンググループ、作業部会が作られて、この大体十月、今年の十月ぐらいに十年の一区切りになりますから、何らかの方向付けというものを出すような時期に来ているんだと、こういうふうに思うわけですが、まずその安保理改革の問題と、もう一つ、日本、ドイツ、イタリアですね、このかつての枢軸国といいますか、ここの敵国条項というのが相変わらず残っておる。国連憲章のこの敵国条項を早く、これだけ五十年、日本は一生懸命国連にも協力をし、世界の平和のために貢献をする、世界の発展のために貢献をしようということでやってきているわけですから、ここのところは、まず最初に国連憲章敵国条項の削除をしっかりとやっていただきたいと思いますが、官房長官、どうでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 国連が重要であり、それから国連の改革が重要であるというのは私は委員と全く同じ意見を持っております。
 考えてみますと、今回の一連のイラクをめぐる問題をめぐって、なかなか国連でまとまりが付くのに時間が掛かったりいろいろあった過程で、日本が何で安保理の理事国になっていないんだろうかということを思った日本人というのは、私も含め非常に多かったと思います。
 考えてみますと、国連の仕組みからいって、常任理事国の五か国が意見がまとまらないような状況、あるいは逆に言えばまとまる状況において国連の機能というのは今まで最もよく発揮をされてきたわけですし、逆にまとまらないような状況ではなかなか国連として難しかったというのは、冷戦期を考えてみればこれは自明であるかと思います。それで、ということですけれども、全体として今回の決議の一四四一あるいは一四八三ということを見ても、国連はいろいろな中でその機能を発揮すべきだと考えた国が多く、またそのための努力をしてきたということだと思います。
 それで、安保理の改革について言えば、おっしゃるように二つの問題、十年を経てまだ安保理の改革、それから敵国条項、これについてはまだ解決を見ていない。
 敵国条項について言いますと、これを削除されるべきであるということを賛成をしている国は多いですし、現にそういった決議もございます、通っています。ただ、実際にそれを実行に移そうといたしますと、若干パンドラの箱に近いところがありまして、いろいろ、この際ほかの問題を持ってきて一緒に国連の憲章を変えようという動きがあるので、なかなかこれだけを取り出して削除をするというふうに現実の政治が動いていないという部分がありますが、我が国として、敵国条項の問題、それから安保理の改革、今までに増してもっともっとやっていかなければいけないと思っております。
 総理からもこの間、ブッシュ大統領との会談のときにおっしゃっていただいて、アメリカとしても理解をし、一緒にフォローしていこうということになっておりますので、今後、引き続き努力をしていきたいと思っています。できることからやっていくということが大事だと思います。

○広野ただし君 私は、安保理の改革についても、これはどこの委員会でしたか、話もしたことがあるんですが、日本は安保理改革、今現在十五か国ですが、二十四か国案というのを持っている。アメリカは二十一か国案ですね。私は、十八か国という私の私案を持っております。
 実際、常任理事国五か国にプラスの旧枢軸国三か国を加える、そして印パももう既に核兵器を持っているわけですから印パも加える、またサミットのカナダも加える、また大国のブラジルあるいはオーストラリアも加える。この十三か国を常任理事国にし、そして非常任を五大陸から出てもらうと。これは選出ということで、例えばアメリカの方であれば、メキシコが出たいと言えば出てくればいいでしょうし、アフリカからであれば、エジプトが出たいと言えば出たいといい。アジアからは、インドネシアが出たいと言えばインドネシアが出る。あるいは東欧の方から、ヨーロッパからも、スペインが出たいと言えばスペイン。あるいは、東欧あるいは中近東の方からもう一つというような考え方を持っております。
 そして、もう一つ、何といってもビートー、拒否権でありますけれども、この拒否権を五大国に任すのではなくて、どうしても拒否権は三か国以上で、常任理事国三か国以上でないと拒否権は発動されないというふうに、三か国だったら引っ張ってこれるというふうに皆さんお思いじゃないかと思うんです。また、それぐらいでないと、五大国の拒否権だけですべてが覆る。
 ですから、五か国が何とかのむような案でないと、すべて安保理決議にはならない、こういうような実態であるわけですから、そういうところから拒否権も、三か国以上が集まったときに拒否権が発動できるというような考え方で安保理改革というものをやっていったらいいんじゃないかというふうに思っておりますが、二十四か国というその案が何かもう独り歩きしているかのごとくに私は思いますが、それは何か政府決定に基づいてやっておられるのかどうか。ここの点について外務大臣に伺いたいと思います。

○政府参考人(西田恒夫君) 今の御指摘の二十四という数字でございますけれども、背景としてちょっと御説明させていただきますれば、御案内のように、いわゆる安保理改革のメンバーについて増やすということについては、多くの加盟国、意見の方向性については一致があろうかと思いますけれども、その数の幅につきましては相当程度開きがあるというような実態でございます。
 多くの場合、今、百九十ぐらいの国がございますけれども、ほとんどはいわゆる開発途上国でございますので、彼らからすれば、やはりしかるべき安保理のメンバーにおいては相当数の開発途上国が言わば参加を得られてしかるべきだと考えておりますので、また日本が仮に言っております、日本が言っております二十四という数字でも、これは少ないという意見もこれは多々あるというのが現状でございますので。
 他方、憲章の改正につきましては、これも御案内のように、百八条でございますけれども、総会の構成国の三分の二の多数でもって採択され、かつ安保理の常任理事国を含む国連加盟国、すべての安保理の常任理事国を含む国連加盟国の三分の二によって批准されなければ、改正というものは発効しないというのが実態でございますので、そのような意味におきましては、やはり現在のメンバーの多数を占めます開発途上地域の方々の御理解を得ないと、実際問題として話は進まないというような状況がございます。

○広野ただし君 総理もこの安保理改革あるいは国連改革に熱心だと。しかし、私はこれを心底やってもらいたいと思うんです。単なる格好で、パフォーマンスでやってもらっているんでは駄目なんで、しかも見た目はパッケージなのはいいでしょうけれども、私、ちょっとパッケージでというのはなかなか難しいんではないかと。まず、敵国条項から外すというふうに割り切ってやっていく、そういう順序の方がいいんではないかと、こう思っておるわけなんですが、官房長官、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) まず、合意できるところから合意をして進めていくというふうに考えております。
 ということは、例えば安保理の改革の問題であれば、国の数、拒否権の数、合意できるところからしていきましょうということでございますし、それから敵国条項のことについて言えば、これを削除しましょうということについて決議も通っているわけですので、それ自体には問題はないわけでして、実際にそのチャーターを変えるという段階で、先ほど申しましたように、他の問題が一緒に付いてくるということをどうやってそれを処理するかということであるわけですけれども、いずれにしても、そういったことも含めて、できることからやっていくという委員の御意見には賛成でございます。

○国務大臣(福田康夫君) 今、川口大臣からも答弁したとおりでございますが、総理も、例えば敵国条項についても、先般の日米首脳会談でブッシュ大統領とその話をするといったようなこともございますし、積極的な取組をする、その意欲を十分に持っておりますので、また委員の御意向も十分総理の方に伝えたいと思っております。

○広野ただし君 日本はやはり国連中心主義ということを言ってきて、また、確かに欠陥はあるんですけれども、国連に代わるものを、もし国連が全くワークしなくなったらば、これはまた世界にとって大変な財産を失うということだと思うんですね。ですから、これは本当に真剣になってやってもらいたい。
 このイラク特措法をやる以前にこちらの方にもっと力を入れてもらいたいと、こういうふうに思っておりますので、申し述べまして、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○田英夫君 一九五四年の六月二日、参議院、正にここ参議院の本会議場で、防衛庁設置法それから自衛隊法、この二つが可決、成立しております。つまり、自衛隊がここで発足をしたと。
 その同じ本会議の後で、本会議の中で、自衛隊の海外出動をなさざることの決議というものが可決されております。これは、鶴見祐輔さんが、この方は緑風会のメンバーですが、当時、緑風会が参議院の第一党であったわけですけれども、その緑風会を中心にして議員から発議された決議でありますが、その冒頭に、鶴見祐輔さんが提案者を代表して趣旨説明をされております。
 決議そのものは、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」と、こういう決議であります。
 さらに、鶴見さんは、提案理由の説明の中で、陸上自衛隊は、その名称のいかんにかかわらず、その数量と装備、武器に至っては、軍隊の内容に近づきつつあることは否めないと。「すでに憲法第九条の明文に違反するとの議論が生じております。」、「我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険すら全然ないとは申せない」、こういう警告を発しながら、海外出動はしてはならないという提案をされ、それを受けて、社会党の羽生三七さんが賛成討論をしておられるんですが、その中で、羽生さんは、「自衛隊の海外出動を認めないという一点で各派の意思が、最大公約数でまとまつたことは、参議院の良識として、誠に欣快に存ずる次第であります。」と、こういうことを述べておられます。
 私も、正に参議院、良識の府としての参議院の在り方、つまり、衆議院は自衛隊を発足させるということだけで参議院にそれを送ってきた、それを受けて、自衛隊の創設を可決すると同時に、このような海外出動をなさざることの決議というのをしたということは、本当に二院制の参議院の役割をこれほどはっきりとさせたことはないと言ってもいいと思いますが。
 そして、それを受けて、木村篤太郎、初代防衛庁長官ですね、国務大臣木村篤太郎氏が政府としての態度を表明しておりますが、「申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持つていないのであります。」と、こういうことを政府として答えておられます。
 これが自衛隊発足の原点ですよ。このことを、防衛庁長官、どのように受け止められますか。

○国務大臣(石破茂君) お答え申し上げます。
 憲法九条をどのように考えるかということに帰着をする問題だと私は思っております。憲法九条は、海外における我が国の武力の行使というものを禁じたものでございます。要は、この憲法九条の趣旨に合致したものなのかどうなのかということを我々は憲法に立ち返って考える必要がございます。
 もちろん、自衛隊創設時にいろいろな思いがあってそのような参議院の決議ができた、今もそれは生きておると私は思っております。しかし、それは憲法九条を考えますときに、今申し述べましたような、これは政府として確定した解釈でございますし、そしてまたこの法案の中にも、もうずっとこの法案を審議いたしますときに議論になりますのは、非戦闘地域なぞというものはあるのか、そんな概念が設定できるのかというような御議論が随分ございます。しかし、なぜ非戦闘地域というものを作ったかといえば、それは憲法上の要請をきちんと担保するための措置としてこういう条文を設けておるわけでございます。
 私どもは、海外において武力行使をしない、その憲法の趣旨というものをきちんと守っていく、その方針は参議院の決議に何ら反するものだと私は考えておりません。同時に、憲法ができましたとき、そしてまた、自衛隊というものができましたときと現在と、それはやはり国際的な環境というものは大きく変わっております。
 日本の国が武力の行使をしない、その憲法の趣旨をきちんと守りながら、国際社会のためにいかなる責務を履行し得るか、自分の国のことだけを考えないで、どうやって国際社会の要請にこたえ、国際的な有力な国家としての責任を果たし得るか、それは憲法の前文とも関連することでございますが、私は、その辺りをきちんと考えながら、参議院の決議の御趣旨を守っていく、それが必要なことだと考えております。

○田英夫君 ちょうど、私事ですが、当時、新聞記者として参議院のクラブをたまたま持っていたものですから、私はこの本会議を鮮明に覚えておりますが、その当時の本当に空気は、憲法ができてまだ十年たっておりませんし、敗戦から九年ですか、そういう状況の中で、正に鶴見祐輔さんが言われたような、そういう気持ちが多数を占めていた。ところが、ここ、今日からさかのぼって十年ぐらいの間に、そうしたものが極めて意識的に崩されてきたんじゃないかという気がしてなりません。
 今、改めて、やはり原点に返って、自衛隊は海外には出さないんだということを私はあえて警告をしたいと思って取り上げたのですが、今回、イラクに自衛隊、特に陸上自衛隊が初めてPKO以外で戦場と言えるような、そういう状況の中に行くということ。そのことは大変問題が多いわけで、今日も同僚委員がいろいろ意見を言われたとおりなのでありますが、私は、やはりどうして今あのような状態のところに、しかも陸上自衛隊のかなりの数の人が行く、海上自衛隊で船の中にいて、インド洋ですね、あそこでいるのとはちょっと訳が違うと。現地の人に直接接触するというようなことを含めて、その現地の人たちは、元々イラクの人は、私も何度かイラクへ行ったことがありますが、日本人に対して好感を持っている。しかし、自衛隊という形のものがあそこに行くとどういう影響が、どういう受け止め方をされるだろうかということは本当に心配になります。これは本当に、アメリカ、イギリス軍を支援するということも、後方支援するということもはっきり任務の一つとして持っているわけでありますし、そのことは、イラクの人たちからすれば敵ですね、そういう感情になってしまう。
 イラクの現状についていろいろ話が出ましたが、私どもの仲間も最近行ってきた。その報告を聞くと、本当に自衛隊でいいのかという感じが強くいたします。むしろ、既にNGOの人たちが活躍、活動をしておられますね。日本ボランティアセンターとか、そういう人たちが主として医療とかイラクの国民の皆さんの生活のために活動をしておられますが。
 そういう報告も含めて、実はこれも私個人ですが、アフガニスタン戦争をきっかけに子ども平和基金というものを作って、私は責任者をしているものですからそうしたNGOの人たちとの接触もありますけれども、そういう人たちの中には、自衛隊に来てもらいたくないんだと、自衛隊という軍隊のような形のものが来れば、せっかくイラクの皆さんの気持ち、日本人が助けに来てくれているという気持ちが自衛隊という姿で消されてしまうんじゃないかという、率直なところ、そういう話をしている人が多いのです。
 本当にイラクの国民の多数に自衛隊が支持されると思われますか。どうぞ、どなたでも結構です。

○国務大臣(石破茂君) 一点、これ、用語の問題でございますが、戦場というものの定義というものは別に私どもできちんとしておるわけではございませんが、これが戦闘行為が行われている場所というふうにもし先生が定義しておっしゃっておられるのであれば、私どもはそういう地域では活動はいたしません。戦闘行為が行われている場所を戦場というのであれば、そういう地区で行動するということは憲法の予定せざるところでございます。したがいまして、非戦闘地域で行うということでございます。
 なお、その中において、私どもは、先ほどの広野議員との御議論にもございましたが、やはり国連の要請に従って我々は法律を作り、そしてまた一四八三の要請に従って行くということでございます。そういうような活動である。そしてまた、先生もイラクに何度も行っていらっしゃいますので、御案内のとおり、非常に過酷な環境であると。そして、水も出ない、電気も来ない、病院は満杯、下水もあふれている、そういうような状況で活動ができるという組織は自衛隊しかございません。確かに、NGOの方々が非常に尊いお仕事をなさっておられることはよく存じております。しかし、本当に医療も住居も水も電気も、そういうものが自己完結的に組織としてできる、面的に活動ができる、そして法律に従って国際的な国家としての責務の履行としてできるという組織は私は自衛隊だけだというふうに今でも考えております。
 国民の負担、そしてまた自衛官の挺身、これによって実現される行為というものは、先生がおっしゃいますように、イラク国民の方々の支持を得るものでなければいけません。先ほど遠山委員からも、きちんとした広報をするようにという御指摘がございました。もちろん、NGOの方の中に、私ども与党の調査団でもそういうような意見を聞いて帰ってきた人もおります。私もその報告は受けました。しかし、自衛隊に来てもらいたいと言っている人もいることもまた事実でございます。
 我々は憲法に従って、そして国際社会の要請に従ってイラクの国民の方々に本当に喜んでいただけるようなことを国家としてやるべく自衛隊を派遣いたしたいと思っております。そのために、国民の方々、イラクの国民の方々に御理解いただけるような最大限の努力をしてまいりたいと存じます。

○田英夫君 防衛庁あるいは自衛隊の皆さんには言いにくい話なんですが、例えば自衛隊が初めて海外に出ましたのはカンボジアのPKOだったわけですね。当時、私もその法案にかかわりましたが、その後、結局、自衛隊は主な仕事は道路補修をやられたんですね。私は、日本カンボジア友好協会という、余り御存じないかもしれませんが、小さな組織、佐々木更三さんがシアヌーク国王との間で作られて、両方にできておりますが、現在私はその理事長というのをやっておりますので、カンボジアへ何回も行っております。
 残念ながら、自衛隊が行かれたタケオというところの、ここは比較的安全ということもあって場所を選ばれたんだと思いますが、道路補修したその道路は一年後には完全に元のもくあみになってしまったんですよ。というのは、カンボジアの調査、これはもう外務省も大使館があったわけですから知っているはずなんですけれども、五月から十一月までほぼ半年間、雨季にはもう連日バケツをひっくり返したような豪雨が降ります。その結果、川幅が全く変わってしまって、あるいはトンレサップ湖という大きな湖がありますが、そこももう景色が変わってしまう。空から飛行機で見ると全く別の国じゃないかと思うぐらい雨季と乾季では景色が違う。道路が雨季にはもう川のようになってしまう。そのことをよく調べてあれば、ああいう舗装をしないでもっと別の仕事があったのではないかと思いますけれども、残念ながら、自衛隊の補修された道路は翌年にはもうほとんど元のもくあみになっていました。
 そういうことを見て感ずることは、本当に今度イラクに行って米英軍の後方支援というのは私はやるべきでないと、まず、もし仮に行くことを認めたとしても。日本が今やるべきことは、あの戦争で悲惨な目に遭ったイラクの国民の皆さんの生活を立て直すために、復興のために貢献するということだと思います。したがって、日本が貢献するということについては全く賛成なんですけれども、それはなぜ自衛隊なのかということに疑問を持ちますね。
 率直に言って、例えば防衛庁長官も先ほどから言っておられる水の問題、これは今本当に現地調査の報告を聞いても非常に大きなイラク国民の困っている状態の一つですね。自衛隊が浄水器を持っておられるということも承知していますが、民間の中にもある意味でいえば非常に、テレビでもコマーシャルをやっている会社もありますけれども、海水を水に変える、普通の水に変えるということを含めて、そういう進んだ機械を開発している会社もあります。
 それで、それを送って、むしろイラクの人たちの力をかりて水を作る。つまり、先ほどもありましたように、就職の問題、仕事がないという問題の解決にも役立てると。万事そういう発想をすべきではないか、水の問題に限らずね。
 そういうふうに思いますけれども、これは官房長官、防衛庁長官でもいいですが、どうぞ。

○国務大臣(石破茂君) そのことは私ども内部でも議論をいたしております。
 昨日も委員会で答弁申し上げましたが、例えば国連の緊急アピールというのが出ておって、水道というものが回復するまでに最初九月という期限が切ってあったのが、これが十二月ということになって、そして何十億という、邦貨にして、それぐらいのものが必要であるというふうになっております。
 私どもは、本当に緊急に必要な水、今、水は出るけれども、出る時間はあるけれども、それは飲めないということでございます。それでは本当にインフラとしての上水道が回復するまでの間、そういう能力を本当に何万人分と持っておるのは、確かに民間にもそういう能力あるところはございます。しかし、何万人分というものがきちんとできる、そして泊まるところもお医者さんも、あるいは薬も全部イラクの方々に迷惑も掛けない、よその国にも迷惑を掛けない、そういう形でできるのは自衛隊だということを申し上げておるわけでございます。
 民間の方でもできるようなことがあれば、それは民間の方々にお任せすべきでありましょう、治安の問題も含めての話でございますが。そして同時に、本当にイラクにも水道が出るようになったと、それで雇用というものが生まれ、そこで治安も回復し、上水道等が復旧するようになった、そうすれば、もちろん自衛隊がそこで浄水活動をやることもないわけでございます。
 この治安が回復するまでの間、混乱した状況、暑い中にあって、あるいは私どもが活動しますのはもっと後になるかもしれませんけれども、そこにおいて本当に必要とされるもの、そして自衛隊でなければできないもの、そういうものをこの法案によってやるべきだというふうに政府としては考えておるわけでございます。

○田英夫君 この機会に改めてお願いしたいのは、本当に各党の調査団、それぞれ何か結論が違ってしまっているところがありますが、共通にやはり冷静に見ると、医薬品とか医療ですね、これも非常に急を要する。
 例えば、私どもの仲間の報告によりますと、麻酔薬さえ非常に不足していると。今、麻酔薬はあの状態の中で非常に重要だとは思いますが、特に悲惨なのは、子供さんを産むときに帝王切開の比率が非常に多いというんです。それは、もちろん環境が悪い、食料とか水とかいろんなこと、それからストレスがあるというようなことが原因になっているんでしょうが、お産をする力すらないお母さん。そのときに、したがって帝王切開が比率からいうと多いという報告が女性議員からの報告としてありました。それは緊急を要すると思いますね。そういうことにも配慮をしていただきたい。そういう意味で、民間の力でもそれはできるわけでありますから。それから看護師が、昔の言い方では看護婦さんですね、が非常に足りない。これも緊急を要する問題として提起されております。
 こういう状況を見ておりますと、さらにもう一つ大きな問題は劣化ウラン弾の問題なんですね。劣化ウラン弾は、もう御存じのとおり、ウランから核兵器用のウラン235を取り出した残りという意味で劣化なんですが、もう堂々たる放射線物質でありますから。
 これは衆議院で参考人で意見を述べられた藤田慶応大学助教授の現地調査の結果を私も聞きましたけれども、本当にこのまま放置すると、イラクの国民生活、ほぼ未来永劫と言っていい、劣化ウランの半減期は四十二億年と、四十二億年という専門家の話ですからほぼ未来永劫ですが、それがイラクの各地に不発弾として地中に刺さっていたり、あるいは戦車が撃たれて焼けて、それがそのまま放置されている。その中には強烈な放射能がまだ残っているという状況の中で暮らしていかなければならない。それは、生まれてくる子供さんの影響は計り知れないものがあるというのが専門家の報告であります。
 特にそれが実証されるのは、実は劣化ウラン弾は、御存じのとおり湾岸戦争のときに非常に多用された。その結果、ちょうど十年くらいたっているんで、その湾岸戦争の直後に生まれたような、今十歳になるかならないという子供さんの間に奇形とかあるいはがん、小児がんが多発しているということです。
 ですから、私どもの仲間の報告、現地調査の報告によると、小児がんセンターのようなものを日本が費用を出して早急に作るべきではないかということが言われております。
 そういう劣化ウラン弾が今度また使われました、大量に使われました。それで、藤田助教授の報告によるとイギリス軍も使っているんですね。イギリス軍の守備範囲のところで戦車が水平射撃で焼けてしまっていると。中に乗っていた兵士は、イギリス軍兵士は、人間の炭になっていると。そういう、炭化してしまっていると、体が。そういう形で、悲惨な姿で戦車の中に残っていたということですが、それはまた放射能を持っているわけですね。
 それから、先ほど申し上げたように、道路に、戦車を撃ったのが外れて道路に突き刺さっているという状況が間々、そのまま放置されているわけです。これは地下水の中に放射能が沈殿していくという、そういうことになって、本当に未来ほとんど永劫と言っていい状態で放射能が残ってくると。これも何とか日本の力で助けてあげることができないだろうか。
 自衛隊もこれは、劣化ウラン弾を処理するということはちょっと不可能でしょう、長官。

○国務大臣(石破茂君) 御指摘のとおり、私どもは劣化ウラン弾というのを保有をいたしておりません。保有をいたしておりませんので、これを処理する知見というもの、能力というものを有しておりません。

○田英夫君 この問題は、日本政府として、全体として自衛隊にはその能力は保持していないということでありますし、対応をお考えいただきたいと思うんですね。
 もちろん、藤田助教授というのは物理学者、放射能専門の物理学者ですから、そういう知識を基にして、まず発見をするということも一番技術的なものを伴っていかなければなりませんから、大切なことです。ほぼ全土、特にバグダッドの市内は非常に多いと言われています。この劣化ウラン弾の問題も政府全体として対応をお考えいただきたいと思いますが。
 もう一つは、戦争が終わると必ず今、最近も、アフガニスタンもそうですし、カンボジアでもそうですが、地雷の処理ということが問題になりますね。この問題も、政府全体としてお考えいただきたい。
 これは、先ほど防衛庁長官が言われたように、自衛隊もそうですし、各国の軍隊も、軍隊的な組織の地雷処理というのは線をやればいいんで、しかし平和になったときは面をきれいにしなければいけないのであります。
 現在、私がちょっと、仲間が作ったもので仲立ちをしましたが、カンボジアでは日本の四台の地雷除去機が今ODAで活動をしているということがありますが、これは国によって地形が違いますし、性質が違いますから、やり方も変えなければいけないかもしれませんが、カンボジアは、もう高温多湿ですから、灌木などが生い茂っている中に地雷が入ってしまって、それを除去するために今道路工事用のシャベルカーのようなものを改良して作ったのが行っているんですが、イラクの場合、恐らく地形上そうはいかないだろうと思いますが、この地雷処理の問題もイラクの人たちにとっての一つの平和への大きな条件だと思いますが、この点、何か計画があるかどうか。防衛庁長官ですか、どなたでも結構です。

○国務大臣(石破茂君) 計画につきましては外務大臣からお答えがまたあろうかと思いますが、先生御指摘のように、線でしかできません。私ども、九二式地雷原処理車でありますとか九二式地雷原処理ローラーでありますとか、そういうものを持っております。
 私も、対人地雷の問題を議論いたしましたときに、そういうことができないのかというのは政府部内でもさんざん議論をいたしました。これ、私の記憶に間違いがなければ、文部科学省の予算であったと思いますが、千葉大学でしょうかどこでしょうか、無人で地雷の処理ができるような、捜索ができるような、そういうようなロボットのようなものを開発を政府も援助をしてやっております。
 そういう形でどういうものができるかでございますが、現在、自衛隊としては、先生御指摘のように、面で処理をする能力は有しておりません。

○国務大臣(川口順子君) 地雷の処理については、日本は今までいろんなところで、特に日本のNGOを中心にして貢献をしています。私自身、スリランカで、アンゴラで、アフガニスタンで、地雷処理の現場を見ました。みんな日本のNGOがかなりそこに出て一生懸命やっているわけです。
 それで、イランについていろいろな、例えば、今NGOの人たちが行って地雷処理ができるような状況になっているかどうかという問題もあります。それから、国際的なNGOあるいは国際機関の取組がどうかというような問題もあります。ほかにどういった重要な急がなければいけない課題があるかどうかということもあります。
 そういったことをいろいろ勘案をしながら、我が国としてどの分野でどういう取組ができるかということを考えていきたいと思います。

○田英夫君 全く問題が違うんですけれども、今回のイラク特措法を見るにつけても、ここ十年来の日本政府の安全保障問題についてのやり方、考え方、これが段階的に私は非常に変わってきている、危なくなってきているというふうに思えて仕方がないんですが、ちょうどいわゆる日米ガイドラインの問題辺りから顕著になってきたと思います。結果は、日米ガイドラインというものができて、これは政府間の、日米の政府間の取決め、それを裏付ける日本側の法律はできましたけれども、条約でも何でもないわけですね。しかし、その結果、日米安保条約というものが変質してしまったんじゃないかなというふうに感じています。
 今度、イラクの戦争に在日米軍が日本から出動していると思いますが、外務省、どういうものが行っているのか、キティーホーク、空母を始め、詳細に報道はされていませんから分かりませんが、外務省はどういうふうに把握しておられますか。

○政府参考人(海老原紳君) ただいまの御質問で、在日米軍のどのような例えば艦艇あるいは航空機というようなものがイラクにおける作戦に参加したのかというお尋ねでございますけれども、これは結論から申し上げれば、我々、これはもう軍の運用に関する問題でございますのでその一々については承知はいたしておりません。ただ、今、田委員がおっしゃいましたような、例えばキティーホークなどが現地に赴いていたことは事実でございます。
 ただ、これは日米安保条約との関係で申せば、これはもう田先生よく御存じのとおりでございますけれども、日米安保条約の運用として現地に行ったということではなくて、これはあくまでも軍隊の特性にかかわる移動ということで日本の施設・区域から現地に赴いたというふうに考えております。

○田英夫君 それは、日米安保条約の原点に返ってみると、違うんじゃないですか。やはり事前協議という制度がありますね。本来なら、陸上だと、陸軍だと師団クラスということになりますけれども、空母が移動するというような形になると、これは日本政府に連絡をする、事前協議をするというのが本来の姿じゃないかと思うんですけれども、最近は全くそういうことを、事前協議の問題などというのは全く出てまいりませんね。そして、アフガニスタン、イラクと、在日米軍が、日本の国民が、我々が全く知らないうちに行っていると。
 本来、安保条約の条文からすれば、在日米軍の活動の範囲は極東とはっきり明記されているんですね。極東の範囲ということで、私もやりましたけれども、随分与野党で議論をしました。佐藤内閣のときに政府の統一見解ができて、フィリピン以北、日本の周辺、韓国、台湾を含むという統一見解が出されたと、こういうこともやはり先輩たちが議論をした、そしてはっきりと国民の前にそれを示したことですから、改めて大切にその後を守っていただきたい。
 この問題はとても五分や十分で議論できることではありません。残念ながら時間が来ましたので深く議論することができませんでしたけれども、注意を喚起しておくということにとどめたいと思います。
 ありがとうございました。

○委員長(松村龍二君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十分散会


2003/07/10

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