2003年7月9日

戻るホームイラク目次


156 参議院・外交防衛委員会、内閣委員会連合審査会−(1)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=阿部正俊(自民)、河本英典(自民)、亀井郁夫(自民)


平成十五年七月九日(水曜日)   午前十時一分開会

○委員長(松村龍二君) これより外交防衛委員会、内閣委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私、外交防衛委員長が連合審査会の会議を主宰いたします。
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は、既にお配りいたしました資料により御了承願い、その聴取は省略いたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○阿部正俊君 自民党、保守党を代表してといいましょうか、代表質問じゃありませんので、そういった立場でお話を、御質問をさせていただきたいと思います。
 今日は幸いにもといいましょうか、テレビが入っているということでございますので、むしろ、私どもの言葉と同時に、これは大事な国の進路にかかわる問題でございます。衆議院を通過した段階で何となく事が終わりかなというような感じがありますので、これは慎重に慎重を期して、これからの日本の進路を決める一つの政策だと思いますので、これは参議院の、事改めてもう一度検証して、誤りなきを期し、かつ、国際政治の中での日本の在り方ということでの総理の決断ということを受けた、それに引き続く支援策ということになると思いますので、そういう意味で少し、余り袋小路に入るようなことなく、基本的な国民の理解を得られるようなことを総理の方からお話しいただくということを中心にして、その理解を深めていきたいなと、こんなふうなことでお話をさせていただきたいと思います。
 まず、百聞は一見にしかずということがありますので、私も、この任務を引き受けるに当たりまして、二十日から二十五日までバグダッド、イラクを訪問し、バグダッド、バスラを、行ってまいりました。大変厳しい状況下での極めて限られた日程でのことでございますので、私どもの体験してきたことは、まあ、葦の髄から天井をのぞくという話はちょっと極端にしましても、ほんの一部かもしれませんけれども、その百聞は一見にしかずということの気持ちはひとつ大事にしてお聞きいただきたいものだなと、こんなふうに思います。
 ともかく、とかくこの外交・安全保障論議といいますのは、頭の中の体操のような論議がどうも余りにも、私の、素人からしますと横行しているように思いますので、そうではなくて、国際国家日本の中でどういうふうな進路を私どもは取るべきなのか、取った以上はそれに対する我が国民としての責任がある、こんなふうな立場をもっとしっかり踏まえて論議してほしいものだなと、こんなふうに改めて思った次第でございます。
 行って、わずか五日間の旅でございましたけれども、ヨルダンのアンマンから入りまして、八百キロ余りの立派な道路を、砂漠の真ん中を百キロ以上の直線距離をつなぎ合わせたような道路でございますが、片道三車線の道路を通りましてバクダッドに入りました。後で触れますが、この道路はどうも一九八〇年代、いろんな日本の経済協力の中で日本の企業が造った道路だというふうに聞いておりますので、その辺の事情は後ほど外務大臣等から御説明いただければ有り難いというふうに思いますが、砂漠の中の道路を通りましてバクダッドへ入りました。
 砂漠といいますと、いわゆる月の砂漠という童謡がありますが、それに歌われるような、何となくロマンチックな風景を思い浮かべるのが私ども日本人の通性かと思いますけれども、どうも様相が違うと。本当に荒れ荒れた荒地というふうに言った方がいいというふうに思います。乾燥し切った荒地、茫漠たる荒地、しかも遠くには蜃気楼が全部立っているというふうな灼熱五十度の大地というふうな中での国土でございます。
 やはり我が緑あふるる、今、梅雨でございますけれども、雨が降りますと、どうも、あいにく今日は雨でと、こういう言葉が日本でははやりでございますが、主流でございますが、帰ってきて翌々日、私、結婚式の仲人だったんです。雨が降りました。大抵の方々の御祝辞は、あいにく今日は雨でして、悪路にもかかわらずと、こういうことがまくら言葉でございましたけれども、どうもバクダッドからの帰りになりますと、あいにくじゃなくて、雨こそ幸せのもとだと、こんなふうな印象が、深くして帰ったわけでございますが、我が国土の、ある意味での水の有り難さ、緑の景観の見事さというのを改めて思った次第でございます。
 そんなふうな感想はともかく、具体的な話へ入りますが、やはり私の受けた一言で言うと印象は、バクダッドの二日間の滞在、それからバスラの、移行してのいろんな話を聞いた中で、様々な市街地を見るにつけ、どうも、戦火による荒廃というのもあります、もちろんピンポイント爆撃でやられた政府関係のビルというのは散在いたしますが、同時にそれと同じ程度にありますのは放火されたビルあるいは略奪に遭ったビルというのが物すごく多いわけですね。これはちょっと意外でした。これはやはり敵、味方ということでの戦火による被害というよりも、国全体の、何というか、疲弊といいましょうか惨状といいましょうか、というものであって、端的に、短絡すれば四半世紀にわたるフセイン政権の圧政といいましょうか、あるいは政治の悪さが今日を招いたイラクの惨状なんじゃないかということを痛感いたしました。
 ある国立病院に私ども参ったんでございますが、その前に大きな戦車が置いてありまして、依然として、一体何で爆撃とか何とかないのに戦車が置いてあるんだと言いましたら、むしろ略奪を恐れていると言うんですね。病院ですら略奪、今ですらあり得るという話でございまして、これは非常に悲しいことですけれども、現実でございます。
 そういうときに、むしろ、小銃を持った隊員を置いておけばそれは十分なのかもしれませんけれども、そのとき、撃ち合いが始まってしまったら困るんで、むしろ、何というかな、十あればいいところを百の防備をすることによって全体の事故の発生を防止するという意味での戦車の配置というふうなことで置いていたわけですね、そんなふうなことでございました。
 やはり、これは後でお尋ねいたしますが、全体のことで、戦争について、何か大量破壊兵器あるいは生物化学兵器があるかないかというのがいかにも何か一番の水戸黄門の印籠のような形に位置付けられておりますけれども、逆かな、位置付けられておりますけれども、それだけじゃなくて、その背景には、そういうこと言っちゃちょっと総理、お困りになると思いますけれども、私どもがそういったふうなアメリカの武力攻撃、米英の武力攻撃を支持し、かつ総理の決断でそうしたふうな立場を取ったということについての背景には、フセイン政権の存在というのはあったろうと思うんです。この政権がイラクの国民のためにも果たしてなるのかなというふうな思いがあってのいろんな武力攻撃への容認ではなかったかなと思います。
 そんなことも含めて、次の、これからの質問に入っていきたいと思います。
 したがって、あらかじめ言っておきますが、そういう中での米英の武力攻撃への支持でございますので、その復興についても、自衛隊のできる範囲をもちろんのこと、それを超えても日本としては、国際国家日本としては、その復興のために相当な覚悟で取り組んでいかないといけないと改めて思った次第でございます。それは、イラク国民のためにも、世界平和のためにも、もっと別の意味からすると、我が国の国益といいましょうか、我が国にとって、人から言われてやるんではなくて、我が国にとっても主体的にこういうふうなことで復興に協力していくことが必要なんだということをもっと国民に訴えていかなきゃならぬなというようなことを私自身思ってまいりました。
 既に十三か国が派遣し、米英を入れると十五か国ですか、イラクに支援を行う体制を整え、かつ十四、五か国が既に派遣を決定しているというふうな状況でございます。国際的な国挙げてそれに協力するという体制ができ上がりつつありますが。
 それで、まず最初に総理にお聞きをしたいんでございますが、そういうことで、イラク復興支援をなぜ今私どもが急ぎこれだけの急遽立法をしながらやるのかということをもう一度御説明いただきたいんです。
 と申しますのは、私も、言わばよく政治家は地元に帰ってこういう話をするわけでございますが、話をしますとみんな驚くんです。阿部さん、よくイラクに行ってきたなと、こう言うんですけれども、でも一方で、でもよう阿部さん、イラク復興よりも景気回復を早くしてくれよなと、こういう話が率直に国民の中から出るわけでございますね。そうすると、やはり私どもの国民性かもしれませんけれども、どうしても身内のことに、考えがそこから出ませんで、今や日本というのは国際国家日本になっているんだということをもう少し理解した上でのイラク支援の位置付けなんじゃないのかなと、こう思うんでございますけれども。
 そんなことも含めて、総理にどうかひとつ、イラク支援というのは、例えば今G7、G8とかG7なんかに総理も出席されておりますけれども、正に世界の大国でございます、言わばいろんな意味での、というようなことでの国際国家日本としてのイラク支援だというようなことを明確にし、かつそれが我が国の国益に沿うことなんだということをおっしゃっていただきたい。何かよそから頼まれてやるんだというような発想ではなくて、我が国の選択としてそういうことをやるんだということを是非お願いしたい、こう思います。
 それから、国際的な常識からしましても、もし仮に米英軍の攻撃を支持した日本が手をこまねいて何もしないで見ていると、傍観していたということになるならば、私は国際常識からして果たしてどうなのかなという感じがいたします。どうかそういう視点で、国民のそうしたふうな素朴な感情、一方での国際国家日本としての責務というようなところのずれといいますのは、そう生易しいものではないんじゃないかなという気もするわけでございますので、どうかひとつその辺について、まず最初に総理から我が国のためだということを基本にした考え方を率直にお答えいただきたいというふうに思います。お願いします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 非常に厳しい環境の中、暑さやあるいは散発的に戦闘も行われている、そういうイラクの地域、バグダッド等に実際に足を運ばれて見てこられた。そして、この実際の視察を今後の復興支援に生かされようと努力されている御意見は、先日もじかに会ってお話を伺いまして、そのような積極的な活躍に敬意を表したいと思います。
 私は、このイラク戦争が始まる前から、日本はたとえ国際社会とイラクとの間に戦争が始まったとしても戦闘行為には参加しませんと、武力行使はいたしませんということをはっきり申し上げておりました。しかし、戦争が終わった後、イラク国民のための人道支援、復興支援等については、日本としてできるだけのことをやっていきたいというふうに申し上げてきたわけでございます。
 今、主要な戦闘が終わり、米英軍等多くの国々が、できるだけ早くイラク人のイラク人によるイラク人のための政府を作るための機構も設け、復興支援に当たっている。そういう中で、今や国連の安保理におきましても、当時の米英軍等の武力行使を支持しなかった国さえもイラク復興支援には賛成し、安保理決議におきましては、シリアは棄権をいたしました、欠席いたしましたが、出席国全会一致賛成の下で、このイラクに対する復興支援活動をしようという国連決議が採択されたわけであります。
 そういう中にあって、日本としては今何ができるかということを考えた場合、世界で最も経済的にも豊かな国である日本としては、それにふさわしい役割があるのではないか。また、人道支援にしても、復興支援についても、今までの経験踏まえた活動ができるのではないかということで、私は、今後一日も早くイラク国民が自らの力で自らの国の再建に立ち上がることができるような支援をしていくのが日本としての役割だと思っております。
 いろいろ事情、阿部議員からも聞いてみますと、戦争によって橋とか道路とか主要施設が大分破壊されていると思ったところが、道路もかなりきれいに整備されて、爆撃の跡はないと。むしろ、戦後の略奪者の無謀な動きによって破壊された施設がかなり目立つというような話を聞いております。
 私は、そういう意味において治安が万全でないということは承知しておりますが、それでも大きな戦闘は終わっていると。また、十分な配慮をすれば非戦闘地域という場所の認定も可能だろうと思います。そういう中で、日本としては、自衛隊であれ、政府職員であれ、民間人であれ、それぞれの能力に応じて、またイラク国民の、どういう支援を期待しているのか、そういう状況を把握しながら、日本として国力にふさわしい支援活動をしていかなきゃならないと。
 よく、人から言われたのかとか、アメリカから言われたからやるのかという議論が衆議院でも行われました。そうではない。かつて、ケネディ大統領が就任演説のとき、国民に向かって、諸君は国家が何をしてくれるかを問いたもうな、諸君が国家のために何をできるかを問いたまえと言いました。今、日本としては、私は、日本として主体的に、独自に、イラクの国民の復興支援のために何ができるのかということを考えるときではないかと思っております。

○阿部正俊君 そのとおりだと思います。
 正に今のイラクの惨状は、私は、一言で言いますと、言わば無政府状態に近いんじゃないかなというふうに思います。例えば米軍の活動も、もちろん武力を行使する場面もございますけれども、どっちかといいますと秩序維持のために当たっていると。例えばガソリンスタンドの配給も、今は全然体制が壊れていますのでだれもやる人いませんで、わあっと駆け付ける。それを秩序立てて、待つ人は待って、順序よくやるようなことまで米英軍もやっているわけですよね。
 というふうなことなんで、そうしたふうな状況からどうやって、総理がおっしゃったイラク人によるイラク人のためのイラクの政府というのを作るかというのは、本当にこれは壮大な事業だろうというふうに思いますし、そうした意味でのかかわりを我が日本は持たなきゃいかぬのだということを相当な覚悟でお願いしたいというふうに思います。
 それで、これは外務大臣にお伺いしたいんですが、私は、これはもちろん実際的な一般支援なんか、自衛隊はともかく、一般支援の隊員、隊員といいましょうか、支援者は多分、内閣官房所属というようなことになるんだと思いますけれども、具体的には外交政策としての主導権というのはやはり是非外務省さんが僕は取っていただきたいと思うのでございます。広い意味での支援方策というのも外交だと思います。何か外交の一面というよりも重要なファクターだと思います、これからの日本にとって。復興を支援し、かつ平和を維持するために、言わば、別に血を流すとかいう意味じゃありませんけれども、人もお金も、あるいはいろんな意味での戦略的なことを持ってやらなきゃいかぬ。我が国の国益を実現すると。
 国益といいますと、何か例えば借款の経済協力して企業が、我が国の日本の企業が行ってその事業をやって金をもらうんだとか、そういう意味での利的なこと、お金もありましょうけれども、それを超えて、もっと平和の利、利益、あるいは国際影響力のいろんな意味での力を付けるという意味での利益という意味での国益ということをやはり考えてやっていただきたいと思うし、それを考え、かつリードするのが私は外務省ではないかと、こんなふうに思います。
 どうかそういう意味で、川口大臣、少しスタイルがいいものですから線が弱いんじゃないかと、こんなふうに言われることもおありかと思いますけれども、どうかひとつ、それとこれとは別でございますので、堂々と大声でおっしゃっていただきたいというふうに思います。お願いします。

○国務大臣(川口順子君) 外務省及び私に対する激励をいただきまして、ありがとうございます。
 委員がおっしゃいますように、中東地域に対して我が国がどのような基本的な戦略を持ち、やっていくか、そのための外交努力をやっていくかということは、このイラクの問題も含めて非常に重要であると考えています。
 中東地域における我が国の国益、これは大変に大きなものがございます。
 先ほど委員が一番最初の御質問の中で、選挙区の皆さんは国内できちんとやってほしいという御意見を持っていらっしゃるということをおっしゃられましたけれども、中東地域が平和で安定をしているということは、日本の国内、特に経済面でこれが安定して繁栄をするということと決して無縁ではない。基本的に非常に大きな関係がございます。
 なぜかといいますと、日本は原油の九割を中東地域に依存をしているわけでして、中東地域が平和でなければ、安定をしていなければ原油の価格にも影響を与えますし、それはもろに我が国の経済の安定と繁栄に影響を与えるわけでございます。そういう意味で、我が国として、中東地域の平和と安定にイラクの平和、安定が非常に大きな影響を持ちますので、国益という点からいってもこれは非常に大事だと思っております。
 それから、もちろん我が国として、中東地域との関係でいえば、アラブの世界と対話を持ってアラブの世界を、日本としては非常に距離的にも遠いですし、考え方の上でも遠いという意味で、なかなか身近には感じる人が少ない地域かもしれませんけれども、相互に理解をし合うという関係を作っていくことが大事であると思います。
 そういったことを踏まえまして、我が国としては、イラク及びイラクの周辺国の支援にかなりのコミットメントを既にいたしております。イラクの関係でいえば、NGOの支援も含めて八千六百万ドルほどを既に支出をしておりますし、それからその周辺国に対しましても、たしか既に三億を超えるお金を支出を決定をいたしております。
 そういったことを行いながら、基本的に中東に対して持っている戦略を踏まえて、外務省として、政府の他の関係部署と、内閣官房ももちろんのことですが、御相談をしながら、イラクの復興について貢献をしていきたいと考えております。

○阿部正俊君 ありがとうございました。
 その中で、ちょっとこれは事務方でも結構ですが、既に、私は、四半世紀のイラクのフセイン政権下での日本との外交関係というのは、少し長い目で見ればほんのいっときだったんじゃないかなという感じもするわけでございます。もっとやはり過去との連続性ということをどうやって復興支援で回復していくのかと、より積極的な中東外交の柱として対イラク外交というのは考えてほしいなと、こんなふうに思うわけでございますので、思い出す意味で、一九八〇年代ごろまではフセイン政権じゃなかったわけでございますので、その間までに外交、イラクと日本との外交関係の中でどんなふうな経済関係が行われ、されてきたのかということをちょっと御説明いただければ、先ほど言いましたように、例えば道路の整備だとか、あと私、聞くところですと、何か十三の都市に四百床の病院を整備したというふうに聞いておりますが、これはどうなっているのか。その辺の実績とこれからの展望、是非お伺いできれば有り難いと思いますが、よろしくお願いします。

○国務大臣(川口順子君) 御指摘のように、我が国はイラクとの間では非常に親しい友好関係を持ってきております。外交関係を樹立しましてから、八〇年代初めにはイラクにいる日本の邦人は五千人を超えるというような水準までの関係を持ってきております。ただ、その後、イラク・イラン戦争がございまして、安全等の観点から影響がございましたので、九〇年には約五百名と、十分の一ぐらいに邦人の数は減っております。また、湾岸戦争に際しましては、実はイラクにおける邦人が百四十名ほど拘束をされるといったこともございました。
 元々、イラクがお金を持っている、石油資源がありましてお金を持っている国でございますので、我が国とのイラクの関係は必ずしも全部ODAによったということではむしろなかったわけでございまして、民間ベースで、貿易保険とかそういうことはございましたけれども、支援を、我が国の民間企業がイラクに対して協力を行ってきたというところでございます。
 先ほどおっしゃった高速道路でございますが、これは我が国の企業が造ったもの、全部かどうか分かりませんが、ものもございますが、それは基本的に民間の案件として行われております。それからその病院も、病院の中の器材、これについては我が国として支援をやっております。円借ということで言えば、肥料工場あるいは発電所といったものをやっておりますが、かなりの部分が民民ベースということで行われております。
 いずれにいたしましても、潜在的にイラクというのはそういった民度あるいは経済面でも力を持った国であるわけでございますから、我が国として一日も早くイラクにおいてイラク人の手でイラク人の政府を作る段階にまで、早くそこまで行くように支援をしながら、またそういった暁には日本人とイラク人の長い伝統的な関係、友好的な関係をベースに、以前あったような友好関係を築き、日本として中東地域の安定に日本としても貢献ができたという形を取るということが非常にいいことであると、国益にもかなっているというふうに思います。

○阿部正俊君 どうかひとつ長い歴史的なスパンを見て、やはり復興支援とその後のイラクと日本との関係の友好な強いきずなを構築するというふうな視点でひとつ取り組んでいただきたいと。自衛隊を派遣するのかしないのかというふうなこと、どうしてもそこに議論が集中しがちですけれども、ちょっと待てよということで、もっと長いスパンで政策的な外交政策と考えていただきたい、こんなふうに要望しておきます。
 さて、言わば今度の米英の攻撃のある種の大義になりましたのは、いわゆる大量破壊兵器並びに化学兵器、生物化学兵器の存在云々でございます。これは警察の証拠調べみたいな意味では見付かっていないのかもしれません。だけれども、それがないからどうだということなのかなという、それはそう大切なことですけれども、だからそれが攻撃の大義になったことは確かでございますが、私はそれの背景に、それが大義、にしきの御旗になったんだろうと思いますが、ただ、それがあればすべてどうなんだという決め手には果たしてなるのかなという気がいたします。その背景にはやはり、先ほど申しましたように、四半世紀に及ぶフセイン政権の圧制という中でのイラクの再生というのが私どもの気持ちの中ではやはりなければいけませんし、現に拝見するとそんな気持ちを持ちます。したがって、大量破壊兵器が見付からなければ支援する大義もなくなるのかということをまず総理にお伺いします。
 と同時に、次のイラクの再生というものを、少なくとも武力攻撃、どんな大義があろうが、なかろうがじゃないけれども、ともかくとして、それを攻撃をしたわけでしょう。支持したんです。それならその復興について、イラク国民のためにも、対内的にも対外的にも、フセイン政権は非常に平和のためにも国内的にもまずい存在だというふうなことが私は背景にあるからこそ許容されたんではないかなというふうに思います。しかも、そんなふうなことで多分総理は決断されたんだろうというふうに思います。それを決断された以上は、やはりイラク政権なき後のイラクの再生、復興ということについて、我が国は支持したればこそ、なお大きな責務があるんじゃないか、こんなふうに思いますけれども、大義の問題とその後の復興への責務の問題について総理から御答弁をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 大義の問題については何回も衆議院でも質問が出ました。
 この点については私は、国連の六七八、六八七、一四四一、これは査察団も含めて国連安保理の参加国が一様にイラクに対する大量破壊兵器等の疑惑を持っていたわけであります。ないということを証明するのはイラクの責任だったんです。このないということに対して、いや、まだあるんじゃないかと査察団が入る、査察団を追い返す。そういうことから、どのようにこの大量破壊兵器、化学兵器、生物兵器等の疑惑にイラクがこたえるかということで何回も国連で議論が重ねられた。だから、そういう疑念を払拭するために、どうぞ査察団来てください、どこでも調べてくださいとイラクが言っていればこの戦争は起こらなかったんです。ところが、言わないために、一四四一、最後の機会を与えるということを昨年十一月、一四四一で決議した。最後の機会をイラクが有効に活用しなかった、これが私はイラクにとって大失敗だったと思います。
 そういう点から、国連は、まあ、もう少し時間を与えようか、いや、もうこれで十分だろうと意見の対立ありました。結果的に戦争に入ったわけでありますが、私はこの国連決議で正当性はあると思って米英等の武力行使を支持いたしました。その後、主要な戦闘が終わった後は、この戦争に突入する前の意見に対してはそれぞれ見解の相違があると思いますが、イラクの復興に対しましては全会一致の国連決議が採択されました。
 日本としては、先ほど申し上げましたように、戦闘前から、武力行使はしません、戦闘行為には参加しませんと言いつつも、戦後の復興には支援をいたしますということを表明していましたから、今そのときが来たなということで、これからこの法案の審議をお願いして、自衛隊であれ、政府職員であれ、民間であれ、できるだけのことをイラク復興支援、人道支援のためにやっていこうというのが考えでありまして、私は、既にこの武力行使を支持になった国の軍隊も今イラク復興支援のためにイラクで活躍されている国もあるわけでありますから、日本としてはできるだけ早く、国際社会の責任ある一員として、イラク復興支援、国連決議の要請にこたえてできるだけのことをやっていきたいと、これがまた日本の責務だろうと思っております。

○阿部正俊君 ありがとうございました。
 それで、具体的な法案の中身は後で、後ほど触れますが、やはり事にはタイミングがあろうと思います。やはりタイミングを失しますと、日本語で夏炉冬扇という言葉がございますよね、夏のいろりと冬のうちわと、こういうことですけれども、そういうふうになったんではやはり国際的な常識から外れて、かえって日本を、信用を落とすということになりかねない面も国際環境の中ではやはり考えておかなきゃいかぬ問題じゃないかなと思うんですね。
 そして、私どもが行ってきた感じとしては、今のある種の治安が、軍事という意味じゃ、戦闘という意味じゃありませんけれども、例えば外出禁止令が出ているとか、夜の自動車でも、独り歩きはともかく、もちろんのこと、自動車でも時々止められて銃で襲われるとかいうこともあり得ます。私どもの泊まったバグダッドでも、夜は停電だし水は出ないし、出ても赤水だとか、あるいは何というかな、下水道は、特に下町はもう荒れ放題で路上に下水が流れているという状況があるとかいうような意味での様々な不安といいましょうか、いうものが存在します。そういう中での支援というのは、やはり独立、自活ができること、あるいはそれなりの防護能力を備えること、これがやはり活動の原点だと思うんですね。そうなると、今のタイミングでむしろ私は自衛隊が一番適当かなと、こう思うんです。
 何も自衛隊がすべてだとは言いません。むしろそこのところをむしろ逆に強調したいんですがね、そこから先が大事なんだよと。だけれども、タイミングを失しますと、例えば一年先、二年先に、さあ自衛隊でございますと行っても、果たしてどうなのかなというふうになるわけでございまして、そのタイミングで、むしろその、例えば、言葉じりとらえるようであれですけれども、CPOのブレーマーさんという言わば一番のリーダーなんでございますけれども、聞いても、日本はどういうことできるんでしょうかと、こう聞くわけですね、例えば。聞くとします。そうしますと、それはもうどうぞ日本が決めてください、時期もそれから業務も日本がやることを自主的にお決めください、それに私どもはできるだけ協力します、日本の自衛隊の、何というかな、全体の、性格として一定の範囲になるということはよく分かっています、その中でやれることを十分やってください、あれこれ、あれしてくれこれしてくれということを決めることは差し出がましいことでと私は思いますと、こうおっしゃるわけです。
 でも、裏を返して言えば、非常に俗っぽく答えますと、いや、それは来てから言ってくれよ、まず来てくれることじゃないか、その上で自分で決めてくれよと、こういうのが、言わば私どもの庶民的な感覚からすると、まあそうかなと思うんです。ブレーマーさんは紳士ですからそういう言い方はしませんけれども、本当はそういうことじゃないかな、それが庶民の感覚というものじゃないかな。できることはともかくタイミングを失せずにともかく駆け付けるというのが、まず、気持ちがあってこそのやはり自衛隊であり、役目なんじゃないかと、感じがします。
 むしろ本当の意味でのもっと重い課題は、インフラの整備だとかあるいは民政への移管だとかいうところでどういう協力できるかの方がもっと重い課題だと思うんでございますけれども、それはまた別のタイミングと、こうなるんではないかと思うんですね。
 そういう意味で、タイミングがあるんだということでありますし、そうすると、今のタイミングでできるだけ早く送って活動できるのは、独立、自活であり、かつ一定の防護能力を持つ自衛隊というのが適切なんじゃないかなと、改めてそんな思いをしたんです。それを早くやらなきゃということを思いますので、その辺のタイミングの問題について総理から一言、どんなふうな感覚でおられるかお聞かせいただきたいと思います。法律が通るかどうかとか、そんなものとちょっと別にいたしまして、本来の在り方としてどうなのかということを少しお答えいただきたいなと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、現在でも活動されている各国の軍隊やら、あるいは民間人、NGO、NPO、政府職員、たくさんおられるわけです、イラクに入って。こういう状況を見て、確かに人によっては、完全に戦闘は終わっていないんだから危険だ、どこでも危険だと言う方もおられます。にもかかわらず、民間人も含めて世界各国の方が活動しているわけでありますね。
 その点も含めながら、私は、この法案が成立し次第、既に政府調査団も派遣しておりますが、今後とも、民間人が行く場合にはどういう地域がいいのか、政府職員が行く場合にはどういうところがいいのか、またどういう部署がいいか、また自衛隊が行くためにはどういう地域がいいか、また自衛隊だったら何ができるかということを、この法案が成立した後できるだけ早く、自らの日本としての調査と、それから外国等からの得た情報を総合的に勘案しながら、日本としてできることをやっていかなきゃならないと。そのためには、まずイラク国民がやってほしい、またイラク国民にとって必要だと、自らの日本の活動が評価されるようなそういう協力をしていかなきゃならないと思っております。
 今、こういう地点に何をということを言うのは時期尚早だと思っております。

○阿部正俊君 総論的の最後に一つだけ取り上げますが、タイミングの問題と絡む話でございますけれども、やはり我が国の国際活動の中で、自衛隊の海外派遣ということが本来業務と言えるかどうか、ちょっと、言うべきなのかどうなのかは検討を要すると思いますが、恒常的に派遣するということ、恒常的にといいましょうか、随時、弾力的に派遣できる体制を整えておくということは大切なことじゃないかなという気がします。
 ただ、せんだって、これは事前に配付の予定もしていませんのであれですけれども、事態法のときに使った資料でございますが、これは、石破防衛庁長官は御存じだと思いますが、自衛隊員の心構えというのはすべての隊員に配付してある冊子なんですね。身に付けて日ごろよく理解しなさいということの教育に使っているんでございますが、これを見ますと、国際活動について、率直に言って、触れているところ余りないんですよね。
 というようなことで、これの改訂も含めての話もお聞かせいただけると思いますけれども、もっと大きな意味で考えますと、そうした意味での自衛隊の海外での活動ということを弾力的に運用できる基本的な法制度といいましょうか、というようなことを考えておかなきゃいかぬ時期に来ているのではないかなというような気がしますけれども、様々な議論を今まで重ねられましたけれども、人によっては、あるいは考え方によっては、附則の中に検討規定を置くようにしたらどうかというような議論もございましたことを記憶しておりますけれども、今回の法律を見ますと、ちょっと痕跡がございませんので、その辺の事情、これからの検討の方向なりについてお聞かせいただければ有り難いと思います。
 よろしくお願いします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 自衛隊の主要な任務は、我が国の平和と独立、安全を確保するため、これが主要な任務であります。
 しかし、現在、PKO活動あるいは災害活動、そして、今でも東ティモールやゴラン高原やら等で各国の協力の下に自衛隊としての役割を果たしている、そういう経験もございます。
 そういうことから、それぞれの特定の地域に絞って法案を出す、あるいは何か事が起きたときにそれに対応できるような法案をその都度出すということよりも、国際貢献といいますか、国際社会の中で戦闘行為、武力行使以外に自衛隊はどのような役割があるのか、また活動ができるのかということについてはいろいろ御意見があるのは私も承知しております。いわゆる恒久法を作れという御意見もあります。
 その点につきましては、私は、今回の審議はイラク支援のための審議なんです。議論としては分かりますが、これは、今後、イラク支援関係のこの法案が成立して、そしてイラクでの実績を積んで、経験もできた、さてこれから国際社会で自衛隊というのは果たして国内だけの活動でいいのか、あるいは、PKO活動、その経験を踏まえて更に国際社会の中で自衛隊は活躍の余地があるのではないかという議論というもの、当然今でも出てきておりますが、この点については、国会での審議の状況、また国民的な議論、よく見極めながら将来の課題として検討していいのではないかと思っております。

○阿部正俊君 それじゃ、全体的なことについて一応切り上げさせていただきまして、時間もありませんけれども、法律案に沿った幾つかの論点について御質疑させていただきたいと思います。
 一つは、これは感覚の問題なのかもしれませんけれども、法律案全体の構成でいろんな活動の目的の動機付けが、例えば目的規定の中に書いていますが、イラク国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和と安全を確保することが目的だと、こう書いてあるわけです。確保することが目的だということと、私はもう少し、我が国にとってどうなのかというふうな目的が明記されてもらうべきじゃないのかなと。よく分からないところがある、表現、どう表現すりゃいいか分からないんですけれどもね。イラク国家の再建と国際社会の平和と安全、これが目的だと、こういうこと、何となく余りにも抽象的過ぎて、大き過ぎて、もっと日本の、先ほど言った国益という、広い意味での国益でございますが、というようなことからとってどうなのかとというようなことを、視点を持ってもらうべきじゃないのかと。
 少なくとも、今回の法律はともかくとして、将来、総理が今検討課題だとおっしゃられました将来の自衛隊の海外活動についての一般法の中では、もう少しやはり表現が検討されてしかるべきじゃないかと思いますけれども、この点につきまして、はしょって申し訳ないんですが、外務大臣の御見解なりをお聞きできれば有り難いなというふうに思います。
 広い意味での、もう一度言いますけれども、防衛も広い意味での私は外交だと思います、海外活動である限りですね、いうふうなことで、外務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 「目的」一条に、「もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。」というふうにございまして、もう少し国益との関係でストレートに書けないだろうかという御趣旨かと思いますけれども、まず、国際社会の平和と安全というのは、これは我が国の国益であると思います。
 我が国が外交をやっていくときの目的としてよく申し上げていますのが、我が国の平和と繁栄である、安全と繁栄であるということを申し上げておりますけれども、我が国のような島国であって、資源を国際的に外国に依存をし、その資源を輸入するための外貨を輸出をすることによって稼がなければいけないということでずっと戦後やってきた国において、国際社会が、世界が平和であって安定的に繁栄をしているということは非常に重要であります。したがいまして、それも含めて我が国の国益であるということであるかと思います。
 我が国としては、そういう観点から今まで国際社会の取組にも寄与をいろいろな形で申し上げてきたわけでございまして、イラクにおいて、まずイラクが復興をして国家として再建をするということは、先ほど来委員が御議論なさっていらっしゃるように重要であるということ、それから、国際社会がイラクの復興に対して取り組んでいるそのときに、我が国が国際社会の取組に対して貢献をしていくということは、非常にこれも我が国の国益につながっていくという意味で非常に重要なことであるので、二つがやはりそれぞれ重要であるということを申し上げたいと思います。

○阿部正俊君 総理の答弁に、何というか、口が上手なんであれですけれども、もう一つやはり一般国民には理解できないんです、正直申しまして。今、大臣が答弁の中で言われた、例えば島国たる日本として、国際国家の関係を良好を保つことによってしか日本の存立はないんだということを具体的に、ストレートにむしろ法律に書いてほしいんです。それだと分かるんです。そこがないんですね。何か平和というのが非常に抽象的な概念ですから、それに協力するのなぜ悪いんだみたいな感じに受け取られるわけです。国際的な平和というのは、日本の経済なり国の存在なり、友好な関係を構築するということがどれだけ大事なのかということをもっと具体的に言ってほしいわけです。
 そこのところがないものだから、先ほどの非常に素朴な疑問として、阿部先生、イラクよりも景気回復をどうしてくれるんだと、こういう話になっちゃうんですね。そういうことがないと景気回復もできないと。非常に迂遠な道かもしれませんけれども、そういうふうな、言える日本であってほしいと。どうしてもやっぱり、何か人に頼まれて事をする、あるいは何か抽象的な概念たる平和に貢献するんだからいいんじゃないかというふうな空気が私はあるんじゃないかというふうに思うんですね。
 やはり我々の、イラクを、派遣するのも、イラクを復興支援するのも我々の税金でやるんです、ですね。それはやはり国民の何がしかの犠牲を払ってやるわけですから、その覚悟と、先ほど総理がケネディの話を持ち出して、国民が国際社会のために、国のために何ができるかということを問われなきゃならぬときもあるんだというような話をされましたけれども、正にそういうことだと思うんです。
 単なる平和のためにということだって、私はその気にならないと思うんです。日本を作り上げる、これからの二十一世紀の日本を、国際国家日本として、平和愛好国家日本としてやるためには是非必要なんだということを具体的におっしゃっていただくと有り難いし、かつまた、そうした意味での日ごろの努力というのをお願いしたいし、法文上の書き方としてもできたらそう願いたいなというふうに思います。要望でございます。
 それからもう一つは、いわゆる、これは防衛庁長官にお聞きしたいんですが、戦闘区域とか非戦闘区域というような区分がございます。それから、自衛隊の行動について様々な制限があります。一般の支援活動と違って、治安維持活動その他への、まあ言えば自衛隊の行動について様々な制限がございます。
 これは、誤解がされるおそれがあるんで慎重に言葉を選びながら、選ばなきゃいかぬと、選びながら話しないといけないと思うんですけれども、これは極言すれば、様々なそういった制限があるのは、平和国家日本としての自衛隊の本来の性格からしてそうなんだと。言わば戦闘区域、非戦闘区域あるとしても、非戦闘区域にしか行きませんということは、隊員の安全確保ということはもちろん背景に、結果として出てまいりますけれども、そうではなくて、戦闘地域に行くことは日本の自衛隊の言わば、何というかな、基本原則としてあり得ないことであり、外国における武力行使ということは日本の我が自衛隊として取るべき道ではないというようなことから、より慎重を期してそうしたふうな区分を設けて、非戦闘区域にしか行きませんよということを言い、かつまた、実施区域なんかについても更に指定していますね。
 それについてもより慎重を期すというようなことも、隊員の安全ももちろんですけれども、それより加えて、それより以前の問題として、日本の自衛隊の本来の性格、まあ端的に言えば外国における武力による威嚇又は行使ということにブレーキを掛ける、またそういうふうなことをすることが日本の在り方として必要だからそうしたふうな制限を設けているんだというふうに私は理解しておりますけれども、基本的にですね。
 よりもっと具体的な例として、何か、重箱の隅とは言いませんけれども、様々論議がありますけれども、そういうことで済む問題じゃなくて、基本原則のところをやっぱりはっきりさしてもらいたいなと思うんですけれども、それはおまえ、そんなことは当たり前だよということを言われるかもしれませんけれども、私は確認しておきたいと思うんです。
 安全の問題、一人一人の命の問題、あるいはけががあるかないかというようなこと等の問題とは別な問題なんだということを考えますけれども、防衛庁長官のその辺の総論的な意味での考え方をお示ししていただきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) お答え申し上げます。
 基本的に先生の御理解のとおりでございます。
 これは衆議院でも何度か御議論がありました。非戦闘地域という概念は、まさしく先生おっしゃいますように、憲法上の要請からくるものでございます。日本は海外において武力の行使はしない、これは憲法九条から出てくる要請でございます。我々が今回海外に出ると、こういうような法律になっておりますが、それは非戦闘地域で活動を行わなければいけないのだということをきちんと法的に担保をしておかねばいけないということでございます。
 これは誤解をされる向きもございますが、イラクという国を、はい、ここが戦闘地域、はい、ここは非戦闘地域というふうに分けるという作業をするということがこの法律に書いてあるわけではございません。この法律に書いてありますのは、自衛隊の活動は非戦闘地域で行わなければいけないということが定められておるわけでございます。それは当然、憲法上の要請から出てくるものでございまして、これと安全か安全でないかというお話は相当に重複をいたしますが、ぴったりと重なるものではございません。
 それは、この法案の中に、防衛庁長官の自衛隊員の行動に対する安全確保義務というものがございます。そして、実施区域というものを定めることになります。それは、相手が、国又は国に準ずる者が戦闘行為をやっているようなところでは元々行けないわけでございますけれども、たとえ泥棒であれ強盗であれ、そういうような自分が身を守るための必要な権限、必要な武器を持っていっても危険な地域というものはございます。なるべくそういう場所を回避してその地区を選ぶことになりますので、先生御指摘のように、戦闘地域、非戦闘地域という概念は憲法上の要請から出てくるものでございます。そして、我々の行動は非戦闘地域で行わねばならない、この憲法上の要請をきちんと法的に担保をする、そういう概念でございます。

○阿部正俊君 分かりました。
 様々な制限がありますが、言わば、もっと前に進みたいんだけれどもできないんだ、憲法上制約があるというふうな考え方よりも、私はむしろ、できるんだけれどもやらないんだというふうな物の考え方といいましょうか、やりたいけれどもできないんだじゃなくて、何というかな、できるんだがやらないというのが国の在り方ではないかと、防衛隊の性格からして、防衛庁、隊員の、防衛隊という、そういう武力組織から見てそうなんだということに御理解いただきたいと思うし、私はそう理解したいと思います。
 ただ、あと自衛隊員の武器使用についてちょっと申し上げたいと思うんですが、私は、あらかじめ小銃までがいいんだ、機関銃までがいいんだ悪いんだ、あるいは無反動砲みたいなことはいいんだ悪いんだというような議論が様々ありますけれども、私は、先ほどの基本精神さえはっきりしておれば、私は防護というのは相手次第のところがあるんじゃないかと思うんですね。それは相手の様子によって、あるいはその場所によって、任務によって様々な、違ってくるというのは当たり前じゃないかと。したがって、あらかじめ小銃までがよくて、ピストルまでがよくて機関銃は駄目だとか、あるいは無反動砲も、機関銃までよくて無反動砲は駄目だとか、あるいは装甲車が駄目だとか戦車が駄目だとかいうことでは必ずしもないんじゃないかと、論理的に言えばですね、というふうに思うんです。相手次第の出方次第によるところがあるんじゃないかと。
 ただ、基本精神として、そもそも武力の行使というのがかなりの程度に想定されるということならば、そこは避けるというのが、勇気を持って撤退するというのも必要なことなんじゃないかなと、こんなふうに思うんです。そこのところを私は、何というのかな、何かいろんな仮定を置いていろんな議論をされますけれども、そこのところの精神が一番大事なんじゃないかなということを国民向けにおっしゃっていただければ有り難いなと思います。いずれにしても、自衛隊の最高指揮官として、まあ総理でございますが、具体的には防衛庁長官なりが判断をするわけでございますが、自衛隊員が不用意に危険にさらされるようなことがないように、十分な装備と態勢を取るということを私は明言してもらいたいなと、こんなふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。

○国務大臣(石破茂君) 先生の御指摘のとおりでございます。この後いろんな御議論があろうかと思いますので、もう一度言葉を整理をさせていただきたいと思います。
 私どもが用います武力の行使とは何かと申しますと、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、これが政府が定めております武力の行使の定義でございます。では、戦闘行為とは何かと申しますと、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」、これが政府が維持しておる解釈、考え方でございます。それで、今、先生御指摘の武器の使用とは何かということでございますが、火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をその物の本来の用法に従って用いること。このような定義に従いまして議論をさせていただきたいと思っております。
 その中で、先生御指摘の、何を持っていくのかということでございます。それは、自分の身を守るために必要な武器を持っていくということでございます。したがいまして、法に明示的に、ここまでならいい、ここから先は駄目ということが書いておるわけではございません。ですから、昔、機関銃一丁とか二丁とか、そういうお話がございましたが、何を持っていっていいかということになりますと、自己を守るために必要なものを持っていくという、おのずからそういう制限はございます。したがいまして、戦闘機でありますとか戦車でありますとか、そういうことになってまいりますと、確かに相手によって定まるものではございますが、自己を守るために必要な武器というふうに言えるか。あるいは、戦車や戦闘機というものが登場するような場面は、それはむしろもう戦闘行為が行われておって、私どもが活動してはいけない地域ということになるのではないだろうかと思っております。
 したがいまして、何を持っていってもいいということではなくて、おのずから自己を守るために必要なという制限がございます。
 大事なことは、私どもが憲法に定められております海外における武力の行使、そのように評価されないようにということで、先生おっしゃいますように、この法案では随所にそのような配慮をいたしております。同時に、自衛隊員が自己を守るために必要なものはきちんと持っていく、必要な権限はきちんと与える。権限も武器も与えないで自衛官をそういう危険な地域にほうり出す、そのような法案では一切ございません。

○阿部正俊君 では最後に、総理に全体のまとめのようなことをお尋ねして終わりにしたいと思うんでございますが。
 ちょっと最後に、全くの私事でございますが、実は私の娘が今ホンジュラスに行っております。青年海外協力隊の隊員で一年前から行っておるんでございますが、この年末に多分帰るんじゃないかと思いますけれども、昨年の年の暮れから年明けにかけまして夫婦で全くプライベートに娘の様子を見に行ってまいりました。女だてらにと言われるかもしれませんけれども、本当に自己のことは自己で守るということを徹底してやらざるを得ない国でございまして、難儀な中で、ある意味じゃ、我が子ながら辛抱強くやっているなということを思ってきましたけれども。
 それで、たまたま、別に頼んだわけじゃありませんけれども、総理が施政方針演説で我が国は国際国家になるんだよというようなことをおっしゃいました。その中で、一つの例として青年海外協力隊員のことを例示されました。覚えておられましょうか。二千四百人が行っておるんだということを言われました。私は、総理がこういうことを言ったよということをメールで娘に送りました。みんなで回覧して喜んだそうでございます。
 今の青年は、私は、我々が経験した時代とはまた違った国際国家日本の担い手になると思います。どうかひとつ、そういったふうなこともありますし、今度のイラク支援も私は、アメリカの武力攻撃を支援したから、支持したからその後の復興支援ということもありますけれども、もっと広い意味で、国際国家日本への発展といいましょうか、新しい二十一世紀のありようを踏み出すんだというふうな心意気でどうか取り組んでもらいたいなと、こんなふうに思います。そういう意味で、そういう位置付けで今回のイラク支援法というのはあるんではないかというふうに思います。
 もちろんその前には、目の前には、もっと幅広い、例えば医療、日本の医療支援を待っている子供たちもいるでしょうし、様々な食糧難に苦しむ人たちもいるでしょう。そういう意味で、自衛隊の派遣にとどまらず、もっともっと広い、深い責務があると思いますが、さらに、より広い世界全体を見渡せば、様々な国々があり、日本は言わば、株価も一万円台を超したというんで、大変総理、良かったと思いますけれども、相対的にやはり日本は豊かな国なんだと思うんです、国全体を考えますと、いや、世界全体を考えますとね。
 そういう意味での日本の役目というのを考えまして、国際協力、国際支援と、それから大きな、主要な国としての役目というものの自覚を持って取り組んでいただきたいことを総理に申し上げ、かつ総理も御決意を披瀝いただければ有り難いと思いますし、それをもって私の質問を終わりにしたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) ホンジュラスにお嬢様が行かれているというお話でありますが、私は、日本にいても海外青年協力隊の話はよく聞いて、いつも感心しております。また、アフリカ等発展途上国に行った場合には、機会があれば実際に活動されている青年男女諸君と懇談をして、こういう、日本とは違う厳しい環境、常に病気の恐怖、あるいは食物の足りない、あるいは習慣、言葉の違いの中で、その国の国民のために自分たちが何をできるか、活躍している青年諸君を見まして本当に偉いなと感心しております。
 先日、今ホンジュラスの話が出ましたけれども、ホンジュラスでは米百俵の話が非常にいいと思い掛けない話を聞きました。宇宙飛行士の向井さんからお話がありまして、日本の米百俵の話、これに感動したホンジュラスの文化大臣が、是非ともホンジュラスでこれを公演したいと。そこで日本の実際に演劇をされている方も指導され、現地人の方がその米百俵の演劇の役者になって各地であの米百俵をホンジュラスでやっているそうです。
 これはやはり、私が発展途上国へ行きますと、貧困の解決も大事だと、しかし貧困解決よりももっと大事なことは教育なんだと。日本の明治以来、江戸時代からの米百俵の話をすることがあるんです。そして、あれはドナルド・キーンが英訳していますから、この英訳の本を渡す。そういうことによって、やはり自らの足で自らの国を作ろうと。人から援助してもらって貧困を解消するのではなくて、自分たちの努力によって貧困を解消しなきゃならないということで、非常に関心を持ってくれるんです。
 その一つの表れが、ホンジュラスで、各地でそういう米百俵の演劇を見て、国民の自らの力で自らの国を立ち上げなきゃならないと。文盲をなくさなきゃならないと。やはり教育というものは、職を手に付ける上においても、字を読むことができるためにも大事だということで、貧困解消と同時に大きな啓発活動ということで活用していただいていることはすばらしいことだなと。日本としても、私に一万円寄附してくれないかという話ですけれども、一万円よりも、日本として支援できることは支援しますからということで、できるだけの支援をして、その発展途上国が自らの国によって、教育を重視して、貧困を解消して、そして日本と同じように豊かな国になってみたいという意欲を持って自国の国づくりに励んでくれればいいなというふうに考えております。
 これからも日本としては、何で日本の財政状況が厳しいのに外国を援助するのかということでありますが、日本も苦しいときに各国からの援助を得て今日まで発展してまいりました。そして、今や発展途上国同士の中にも格差があります。一段発展段階上の国が経験を踏まえてもう一段発展しない国に援助するのも大事なんです。外国から援助を受けているから、国がまた援助、よその国に援助しているからおかしいじゃないかという議論も聞きますが、そうじゃなくて、やっぱり日本とは違った、その国の周辺だったらその国のことを知っている国もありますから、外国から援助を受けていても、さらにその国が若干より恵まれないところに援助をするという、いわゆる南南協力、これも大事だと思って、そういう考え方が今各国で進んでおりますので、日本としてもできるだけの支援をしていかなきゃならない。それはお金だけじゃありません、人の支援もあります、あるいは物資の支援もあると思います。人の支援においては、ある面においては、日本よりも経済的に進んでいない国が、お金は出せないけれども人の協力を出そうといってやっている国もあります。
 だから、そういう点も考えながら、日本は資金においてもあるいは物資においても人的貢献においても、多くの国が自力で発展できるような支援体制を今後とも日本の国力にふさわしい形でやっていかなきゃならない。それがひいては、日本が世界各国から、貿易、輸出にしても輸入にしてももう世界各国とのつながり深いわけでありますから、国際協調、それで世界が戦争なく平和なうちにこそ福祉の向上がなされるんだという観点からも、私は、今後とも国際協調、国際協力の在り方というのは大事であり、日本としてもふさわしい役割は何かということを自問自答しながら、世界の中で責任ある一員としての役割を果たしていかなきゃならないと思っております。
○阿部正俊君 終わりますが、最後に、そのホンジュラスから既にイラクに三百人余りの国民が支援に行っておりますことを申し添えて、次の質問を、私の、河本先生にお譲りしたいと思います。
 ありがとうございました。

○委員長(松村龍二君) 関連質疑を許します。河本英典君。

○河本英典君 外交防衛委員会所属の河本でございます。
 阿部議員に引き続きまして、今日はこのイラクの人道復興支援法案が連合審査会の形で、今日、総理来ていただいて審議スタートしたわけでございますけれども、せっかく総理来ていただきましたので、総理から直接いろいろお話を伺いたいというふうに思うわけでございます。
 参議院、今日から審議したところでございますけれども、先ほど阿部議員のお話もございましたように、衆議院終わったら何かもうほかに話が行ってしまったような感じもないこともないんですけれども、それじゃ困るわけでございまして、参議院は夏休みちょっと、延長しまして、飛ばしまして、こうして汗をかいてこの大事な法案の審議に取り組みたいという意欲でございますので、ひとつよろしくお願いしたいというふうに思うわけでございます。
 まず、このイラク人道復興支援法案の審議に当たりまして、一番大切なことであると思うんですけれども、この法案が単に自衛隊を海外に派遣するかどうかという視点からだけで検討されるべきじゃないということ、我が国の長期的な国益の視点から、またイラクという国、これは先ほどもお話ございましたけれども、我が国にとって死活的な重要な地域、つまり大変、石油産出国として依存している大変重要な地域の大国の安定化にどうかかわっていくべきかという外交戦略に基づいて考えていかなければならないということであります。自衛隊派遣が先にありきでは駄目なわけでありまして、自衛隊派遣だと言った途端に反対先にありというのもおかしいわけであります。
 政府は、このような視点から、なぜこの法案を制定する必要があるのか、なぜ自衛隊の派遣が必要なのかを、テレビが入っておるわけでございますので、総理から、総理の口から国民に語り掛けていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。このような考え方から、政府に対しまして幾つか質問させていただきたいというふうに思うわけでございます。
 過去の、カンボジア、ゴラン高原、東ティモールにおける自衛隊のPKO活動は平和維持、アフガンへの自衛隊派遣にはテロ撲滅という名目があったわけでありますが、今回の三月の米英軍によるイラク軍事行動の際には、米英とフランス、ドイツ、ロシアの先進国間での対立があったわけで、安保理での意見の一致が見られないまま武力行使となったわけでございます。イラクの大量破壊兵器の拡散を阻止するという名目での紛争ではあり、やむを得ないと考えており、理解しておるわけでありますけれども、今回のイラク紛争の意味、結果を総理はどのように認識されているかという誠に基本的な部分でありますけれども、改めてお聞きしたいというふうに思うわけでございます。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 戦闘が始まる前は、確かにこのイラクの問題をめぐりまして国連安保理の中でも意見の相違はございました。いざ始まってみますと、長くて半年掛かるんじゃないかという見方もありましたけれども、予想の中で一番早く主要な戦闘が終わったと。そして今、主要な戦闘が終わった段階で、戦争前の意見の対立を超えて国連安保理においては一致したイラク復興支援の決議がなされたということで、日本としてもイラクのための支援策を国際社会の一員としてやらなきゃならない時期が来たなと思っております。
 できるだけ戦争が始まった場合も被害を最小限にということを期待しておりましたが、既にもう復興支援の段階に入ったという段階でありますので、これからは、一日も早くイラク人が自らの力で立ち上がるような政府を作って、イラク人自身が自らの国づくりに立ち上がるような形に早く持っていければなと思っております。
 そういう中で、いまだイラク政府が形成されていない段階におきましては、今の暫定的な施政機関というんでしょうか、CPAといいますか、英語で、この施政機関が国連安保理で認められたわけでありますので、この暫定施政機関と協力しながら日本としてできることをやっていかなきゃならない。
 今回は、日本としてできることは自衛隊以外でもできることあるわけであります。しかし、一般の方々ができなくても自衛隊だったらできることもあると思うんであります。自衛隊も重要な国力であります。国力にふさわしい、自衛隊でできることは戦闘行為ではない、武力行使ではない、そうであるならば、イラク国民が必要とされるような支援活動も自衛隊がなされてしかるべきではないかと。当然、政府職員もやれるでしょうし、民間人も既に活動しておられる方もあるわけでありますので、私は、民間人、自衛隊員問わず、日本として復興支援活動にできることはできるだけのことをするという形で今後の支援活動を考えていきたいと思っております。

○河本英典君 九月十一日、九・一一の米国同時多発テロ以来、イラク紛争等世界情勢は大きく変わってきたわけでございます。日本の身近な問題としても北朝鮮という大変な問題があるわけでありますけれども、日本に対する脅威が高まっており、日本の安全保障に対する国民の意識も大きく変化してきているというふうに思うわけでありますけれども、最近の日本人の安全保障観といいますか、国民の安全保障観の変化について総理はどのように感じておられるかということをお尋ねしたいと思います。
 随分、自衛隊の意義も変わったわけでありますけれども、日本人の、国民の安全保障観というのは随分変化があったというふうに思います。総理はいかがお考えでしょうか。どういうふうに感じておられるでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 第二次世界大戦で日本は手痛い被害を受け、二度と戦争をしてはいけないと、そういう反省に立って、国際社会から孤立してはいけない、国際協調体制を取っていこうと、そして日本の独立と安全を図るためにはアメリカと安全保障条約を締結して、日本の平和と安全を確保していこうという方針を取ってまいりました。
 そういう中で考えてみますと、軍隊があるから戦争を起こしたんだという考えが一方にあります。自分がもう戦争を起こさない、軍隊を持たなければ日本を侵害しようとする国なんかないんだと、だから一切日本は軍隊を持たない、そういう考えが一方にありますが、考えてみますと、第二次世界大戦後、日本に軍隊が存在しない期間は今まで一度もなかったんですね。自衛隊がなかったときはありました。しかし、戦争終わった直後から米軍が存在したんです、占領軍が。日本に軍隊の空白期間が生まれた時点は戦争中も戦後もなかった。
 そういう中で、やはり自国を守るためには、他国に依存して本当にできるのかなと。自国さえ決して他国を侵害しませんということを表明すればよその国は侵害しないのかというと、そうでもないだろうというのがだんだん最近の北朝鮮の武装工作船やらスパイ船やら拉致の問題で明らかになってまいりました。世界は善意と好意だけでは成り立っていないなと。各地の紛争を見てもそうであります。
 ということから、やはり自衛力が必要じゃないかということで、日本は自衛隊というものを創設して、米軍と協力しながら、アメリカと協力しながら日本の平和と安全を確保してきたわけであります。
 これからも、いつ紛争が起こるか分かりません。ソ連とアメリカの冷戦構造が終わって、ああ、これから平和の時代が来ると思ったところが、各地では紛争が頻発しております。そういう点を考えますと、やっぱり日本の国の独立と安全、平和を守るためには、まず自らが自らの手で日本の国は守るんだという決意を日本国民が持つことと同時に、諸外国に分かってもらわなければならない。日本の国はだれかに守ってもらおうという、そのような気持ちで一体どこの国が援助の手を差し伸ばすかと。そんなことないと思います。まず、日本の国は日本の国で守る、そういう決意を示しているのが私は今自衛隊だと思います。
 だから、非武装中立論ほど私は無責任な議論はないと思うんです。なぜならば、日ごろ、侵略者に対してどういう抵抗をするか、訓練をだれも受けなくていいというんですから。訓練を受けていない人に、もし起こった場合、あなた戦いなさいって言えますか。非武装というのは、非武装中立論者というのはそういうことだと思うんです。正に、泳げない人に泳ぎの訓練もしないのに飛び込めと言うようなものですよ。おぼれるに決まっているんです。
 だから私は、一国にとって、自らの国は自らの国で守るという組織は必要だと思っております。それが日本は自衛隊であります。しかし、自衛隊だけでは不十分だ。だからこそ、日本は世界最強の軍隊を持っているアメリカと同盟を結んで、もし日本に侵害しようとする、侵略する国があったらば、アメリカは日本の攻撃とは受け止めない、アメリカの攻撃と受け止めますと言って、今、日米安保条約を持っているから、これが大きな抑止力になっている。日本を侵略しようとする勢力はアメリカと戦わざるを得ない。日本と戦うだけじゃない。だからこそ日本は、これは戦後一貫してこの五十八年間、平和のうちに日本の国内の整備を図ることができた。私は、今後もこの日米安保条約の重要性は変わらないと思います。
 そういう面において、日米友好関係を発展させ日米同盟を強化していく、そういう中で世界の中の日米同盟の中で国際社会と協調していく。おかげさまで、世界各国の支援、援助によって日本は戦後廃墟の中から今日まで立ち上がってきた。今や世界第二位の経済力を誇る先進国サミットの主要なメンバーでもあります。日本の国のことだけ考えておけばいいんじゃないと。やっぱりこれだけ日本も発展してきたんだから、今発展のために努力している国に対してはその国力にふさわしい支援をしようじゃないかという、この考えは常に持っておかなけりゃならない。
 やはり、いかなる福祉も、いかなる生活基盤の整備も平和のうちにでないと達成できないと。一たび戦争起こった後の復興よりも、戦争をさせないための努力がいかに重要かと。
 そのためには、私は非武装中立論は取りません。日本国民が常に、この日本の国は日本自身のための国なんだと、日本自身が守るんだという、そういう組織は、国会の監視と協力の下に、国民自身が自らの力を、自らの力で立つんだという強い決意を持つことによって相手の侵略の気持ちを砕くということができるんだと思いますので、私はそういう点において、日本国民は、日ごろから、日本国民一般ができない、暑いときにも寒いときにも厳しい想像し得ないことに備えて訓練している自衛隊諸君に対してもう敬意を持って接する必要があると。また、そういう体制を整えていくのが政治として大事ではないかと思っております。

○河本英典君 今、総理がおっしゃいましたように、状況も変わったわけでありますけれども、安全保障観というのは本当に変わりつつあるというふうに思うわけであります。
 本国会でも有事法案が、長らくこの空白になっていた部分を埋め切れたかどうかはともかくとしまして、埋める形で有事法案が、与党のみならず大多数の野党の賛成を得て成立したわけであります。そういう意味では、日本の政治史上画期的な私は国会になる、残るんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
 防衛についての今、総理からお話聞いたわけでありますけれども、だれも平和を宣言したことによってのみ日本がここまで戦争に巻き込まれずに来たということを本気で思っている人はいないわけでありまして、米軍がいて自衛隊がいたからこそこうした日本があったわけでありますから。しかし、その辺は観念的な思想的な、もちろん憲法の制約はあるにしましても、この際、防衛、安全保障の考え方をこの際よく国民の皆さん方とともに私は議論をするいい機会だというふうに思うわけであります。それに乗じてこういう法案を通せという、そういう意味に取られたら困るわけでありますけれども、これは非常に私、大事な時期だというふうに認識しておるわけでございます。
 昔の話になって申し訳ないんですけれども、一つの都市国家という考え方をすれば、京都の平安京というのは、昔、平和宣言をした非武装都市であったというふうに聞いております。日本人のどこか心の底に、私どもは攻めないんだと、平和を宣言すれば攻められない、戦争が起こらないというふうに、そういった思い込みがどこかで潜在的にあるんじゃないかなという気がするわけでありますけれども、今回、イラクの紛争にしましてもアフガンの問題にしましても、よく見てみますと、国際政治の怖さといいますか、その辺をもう少し正確に私は国民の皆さん方に分かっていただくような努力をこれは政府としてするべきじゃないかなということをつくづく思うわけでございます。
 だから、今回の問題も、今回は人道復興支援で自衛隊を出すという話でありますけれども、決して自衛隊が、出す出さぬだけの議論で終わっては駄目だということはその辺にあるわけでございまして、一つ大変大事なところだというふうに思うわけであります。
 いろんな経過の中で、先ほどからもお話ございましたように、いろんな経過の中でイラクへの軍事行動を日本は支持したわけでありますけれども、その辺を、今となって、これ総理から見られて、国民の理解が得られたかどうかということについてはどのようにお考えでしょうか。武力行使の前にいち早くタイミングよく総理は米英の武力行使を支持されたわけでありますけれども、今となって、これここまで来たわけでありますけれども、国民の支持が、理解が得られたかどうかということをどのようにお考えか、お伺いいたしたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 戦争がいいか平和がいいか、武力行使がいいか悪いかと聞けば、平和がいい、武力行使嫌だというのは共通していると思います。
 しかし、私は、そういう中でも今回の米英軍の行動を、イラクの問題に対して支持した。支持前は相当支持するなという声が強かったということは承知しておりますが、いざ支持して、今日のような状況に立ち至って、復興支援活動が始まっているということから見れば、もちろん賛否両論がありますが、大方の日本の立場として支持したことは正しかったのではないかというふうに私は認識しておりますし、これからも国民の理解と協力を得られるように努力をしていきたいと思います。

○河本英典君 我が国と中東諸国は長年にわたって良好な関係を維持してきたわけでありまして、今後も引き続いてこうした信頼関係を維持することはもちろん、イラク復興や中東和平問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと思いますし、この地域の平和と安定に寄与することがこの地域に石油供給の大部分を依存する我が国として重要と考えますが、総理はこの中東地域の外交上の重要性についてどのような御認識をお持ちか、お聞かせ願いたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中東地域は、我が国のエネルギー事情を考えますと極めて重要な地域だと認識しております。九〇%以上、中東地域に油のエネルギー等を依存している。なおかつ、昭和四十八年の第四次中東戦争の際には、日本からはるか離れたイスラエルとアラブとの戦争によって、当時、油の値段が一バレル当たり二ドル前後だったのが十ドル前後に跳ね上がったわけですね。そして、狂乱物価を経験した。
 あのとき私はちょうど国会議員の当選したてで、もう連日、一年生でしたから、トイレットペーパーがない、洗剤がない、どこかで売り惜しみしているんじゃないか、買い惜しみしているんじゃないかという選挙区からの問い合わせ、今でも昨日のように思い出します。いかに中東、遠く離れた動きが日本の国民生活に密接に響いているのか。当時はイスラエル、パレスチナ、ガザ地区とか、どこにあるのかと分からなかったですよ。それから地図を見出して、中東、ああ、バグダッドなんというと、見ると、あれはもう子供の絵本しか知っていませんでしたから、月の砂漠でね。そういう話だったのが、恐ろしい、非常に日本とはこんな戦争が起こるとこんなひどい影響を受けるのかというようなことを思い出しながら、いかにこの狂乱物価を早く収めなきゃならないかということで選挙区と国会を行ったり来たり、説明、理解を求めるための活動をしたころを思い出しております。
 いかに世界から遠く離れても日本の生活には影響があるんだと。特にエネルギーにおきましては、日本はもうほとんど外国に依存しておりますので、こういう中東地域が安定的に発展するということは日本にとっても非常に重要だと思っております。世界の物資、安定的に日本に供給されなきゃならないし、日本も、中東地域が安定して発展してくれれば日本の製品も買ってくれるでしょうし、世界の安定につながる。言わば、前から中東は世界の火薬庫と言われるぐらい紛争の絶えない地域でありますけれども、それだけに今国際社会が、イラクの復興支援のみならず、イスラエル、パレスチナ、中東和平に大きく関与しようと踏み出した、こういう点におきましては、日本もイラク復興支援、中東和平に、日本のふさわしい役割は何かと、日本としてできる貢献策は何かということを考えながら、日本としてもできるだけのことをやっていかなきゃならないと思っております。

○河本英典君 今は、ただいまは中東地域の外交上の重要性ということを伺ったわけでありますけれども、今度のイラクの復興支援についての外交的な必要性ということについて少しお伺いしたいわけでありますけれども、イラクの国民はフセインという独裁者の下で二十年以上という長い間抑圧と恐怖と窮乏生活に耐えてきたわけであります。フセイン政権が崩壊した今、一日も早くイラクを再建し、イラクの人々の生活を正常化することをイラクの国民は強く望んでいるはずでございます。このため、我が国が主体的にイラク復興に取り組むことは、中東の大変な大国であるわけでありますから、イラクとの国民レベルからの友好関係の増進に資することとなり、日本の国益につながると考えております。
 この辺で、そのイラク復興が日本外交において有している必要性ということについて、少しお話、認識をお聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今お話ししたとおりでありますが、日本としては、中東諸国とどのように友好関係、協力関係を維持発展させていくかということに対しまして、このイラク戦後も含めまして、注意深く動向を見ながら考えていかなきゃならないと思います。
 特に、ようやくイスラエルとパレスチナの和平交渉も始まろうとしておりますし、日本としては、イラクだけでなくて、私も五月にはエジプト、サウジアラビアを訪問しまして、日本がアラブ諸国とどのような対話、交流、友好を深めていくかということについて、エジプトのムバラク大統領あるいはサウジアラビアのアブドラ皇太子等とも会談してまいりまして、既に、日本が独自にイラクに対して復興支援できることと、日本がエジプトと協力してイラク復興支援できることの計画は進めていこうということで合意しております。
 そのほか、イラクの周辺国、トルコはイスラム国ではございませんが、アラブ国ではございませんが、周辺国ですね。トルコとかヨルダンとか、あるいはクウェート、いろいろなアラブの周辺国ありますので、イラクのみならず、イラクとの、周辺諸国との対話、交流も今後深めていく必要があると思います。
 とかく文化、習慣が大きく我々と違う点もありますので、そういう点もよくお互いの違いを認識しながら、多様性を生かしていくという形でアラブ諸国、イスラム諸国との対話、交流を深めていくことが日本にとっても今後必要ではないかと思っておりますので、そういう点につきましては、イラク復興支援、イラクのことのみならず、アラブ諸国とともにイラク支援を考えていく、また今の米英を中心としたCPA、暫定的な施政機関とも協力していく、そして日本独自としてもやることがあるんじゃないかと、そういう多角的な見方をしながら、日本として中東の問題、イラクの問題にどうかかわりを持っていくかということを考えていく必要があると思います。

○河本英典君 総理にばかりお聞きして申し訳なかったんですけれども、外務大臣も少しその点、外交上の重要性ということで、中東地域での重要性、それからイラク復興の外交的な重要性ということについてお話ございましたら、伺いたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今、総理からお話がありましたように、中東地域が平和で安定をしているということは、我が国の資源確保という観点からも、それから広く国際社会全体が石油資源については中東地域に依存をしていますので、そういった世界の経済全体の安全、繁栄が我が国に影響を持ち得るという意味でも重要であると思います。
 それで、今、中東地域で考えている外交政策の柱、三つございまして、一つが正にこのイラクの復興ということでございます。我が国として、総理おっしゃいましたように、いろいろな手段を組み合わせて、それぞれ補完的な関係を持っていますので、これをできるだけ早くやっていかなければいけない。イラクの人たちの生活を考えますと、できるだけ早くあるレベルまで立ち上がるということが大事だというふうに考えています。
 それからもう一つ、これと密接に関係があります二番目の柱と申し上げていいと思いますけれども、中東和平でございます。この中東和平というのは、むしろ中東全体の平和と安定ということから考えますと、かぎといいますか、コアの部分であると思います。イラクができるだけ早く復興していくことが中東和平にもいい影響を与えますし、また中東和平が、今起こっていますように前進をしていくということがイラクの復興にもいい影響を与えていくという相互に関連し合う関係を持っていると思います。
 それから三つ目に、総理もお触れになっていらっしゃいましたけれども、日本人とそれからイスラム社会といいますか、中東地域との長い友好関係を築いていくことが長期的に両方のメリットであるということから考えますと、やはり相互理解が大事でございまして、我が国はやはり中東地域から遠いわけですし、イスラム文化からも遠いところにございますので、できるだけ我が国がイスラム世界の物の考え方を理解をし、そしてまた我が国の考え方についてもイスラム世界の方に、あるいは中東地域の方に理解をしていただくということが重要であって、これはいろいろな対話の枠組みを作って、時間は掛かるかもしれませんけれども、じわじわと、だけれども幅広くこの理解を深めていくということが大事だと思います。
 それで、その援助、イラク復興の支援ということからいいますと、これは我が国として、政府もやりますし、もちろん自衛隊が自己完結的な組織として大きく力を発揮する部分もありますし、NGOの方、そして、少し時間的には先に行くかもしれませんが、企業の方にやっていただくと。いろいろな総合的に力を発揮をしながらやっていくということで、特にこの法案の、オールジャパンで復興に貢献をしていこうというそのアプローチといいますか、そういう部分というのは我が国のイラクへの復興への貢献として非常に大事であるというふうに考えております。

○河本英典君 今、外務大臣がおっしゃいましたように、イラクの問題が我々にとったら目に見える当面の問題であるとよく認識するわけでありますけれども、中東問題とこの二つ、相互、相関的な関係にあるということは私も思っていた以上だなということを改めて認識しております。
 日本人から見れば、イラクはイラクであり、中東は中東で別の問題のように考えがちでありますけれども、非常に絡まった問題であるなということを痛感するわけであります。ただ、日本にとってはイラクの問題の方が近い問題であり、アメリカなんかから見れば中東の問題の方が重点があるのかなというような気はいたしますけれども、しかし日本とイスラムの文化の差ということは、これはまた予想以上に違いがありますので、我々も言われてみれば何も理解していないわけでありますので、これはこれから、これだけ国際化と言われる中で割と近いところだけ見ておるわけでありまして、イスラムというこの別の社会をもう少し理解する必要があるんじゃないかなということを本当に思うわけでございます。
 そんな意味で、NGOの皆さん方がまた違った活躍、活動をされておるということについては非常に心強いというふうに思うわけでございますけれども、日本人、国全体でそういったイスラムの社会ということをもう少し理解する必要があるかなということを改めて今回の問題について感ずる次第でございます。
 今、オールジャパンの取組ということを外務大臣おっしゃいましたんですけれども、これ、もう少し突っ込んでお話聞きたいわけでありますけれども、自衛隊を通じた貢献以外のイラクとの、イラク復興への取組ということで、落ち着いた後はオールジャパンの取組をやらないかぬということであります。
 本格復興にはかなりの時間が掛かるというふうに思いますけれども、同時にまた、ある程度治安状況が安定し、基礎生活、インフラが改善された後は幅広い復興ニーズが発生するということが想定されるわけでありますけれども、この観点から、イラクの本格的な復興のためにこの本法案による自衛隊等を通じた貢献以外にもオールジャパンでの取組が必要になると考えられますので、イラク復興への取組というのはどういうこと、どういう考え方、どういうことを準備されておるかということをお話しいただければ、お話しいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) まず、支援、人道復興支援ということで、これは国際機関経由で我が国としてやっておりますもの、あるいはNGO経由でやっておりますものございますけれども、国際機関経由のものとしては、例えばユネスコを経由をして文化遺産の保存、修復をやったり、あるいは教育の支援をやったり、それから、一つ、国際的にもう一つ大きく評価をされていますのが南部のウンムカスル港のしゅんせつを我が国として国際機関経由でやりまして、これがないと正に荷物を荷揚げするということが難しかったわけですけれども、こういったこともやっております。イラクの人たちのためには、配電所、中央配電所で電力の、あちこちで発電をしたものをちゃんと行き渡るようにするというようなこともやっております。いずれまた、今後この分野では、水についても、その他病院等についてもやっていくことになると思います。
 NGOの経由、NGO経由の支援というのも非常に大事でございます。緊急医療活動支援ということで、ジャパン・プラットフォームその他に対しまして合計、合わせまして七億円ぐらいをコミットをいたしておりまして、その中で水、NGOの支援等々でいろいろやっております。総理が行かれましたときに、エジプトあるいはヨルダンのNGOの人たちと一緒にこれをやっていきましょうというお話もしていただいて、それも今動いているわけでございます。日本として今いろいろ調査団を出したり専門家を出したりいたしまして、今後の、どういったことをやったらいいかという、どういうやり方をしたらいいかということについても子細に調査を始めております。
 それから、イラク、直接ということではありませんけれども、周辺国に対しての支援というのも中東地域全体という意味では非常に重要な支援でして、これについてもヨルダン等に対しまして既に支援を行っております。当面、今申し上げたように、教育、保健、電力といった生活基盤の再建を優先をするということでございます。
 そして、これはオールジャパンの取組というふうに申しましたけれども、オールジャパンだけではなくて、オールワールドといいますか、世界の全体、国々が全部が一緒になって取り組むという体制を作っていくことも大事でして、これについては日本は早くからこの体制作りについては働き掛けを行っております。
 それで、その結果といいますか、日本がかなり大きなイニシアチブを取ってできましたのが、この間、六月に行われました支援国会合でございまして、日本はこれのコアグループの一つになっているわけです。そして、これの続きとして十月に支援国会合が予定をされております。日本は共同議長国の一つということになると思いますけれども、現在のところコアグループの一つとしてやっておりますが、これのために世銀ですとか、それからいろいろな国際機関がニーズアセスメントのミッションを送り始めております。
 そういったことを通じて、これが国連で決議ができて、それに基づいて世界全体の国がイラクのために支援をしていくという体制をこの復興会議を通じて作っていくということについての我が国の取組、それから、それが具体的に、今後更に努力をしていかなければいけませんけれども、そういった面も重要であると考えております。

○河本英典君 引き続いて外務大臣にお伺いしたいんですけれども、現在、イラクにおいてフセイン政権が崩壊して、言わば権力の空白が生じておりまして、米英当局が占領地域の民生や秩序を回復、維持するために今暫定的な統治を行っているというふうに承知しておりますが、米英当局は占領軍と位置付けられるのか、また関連の安保理決議との関係ではどのような権限が付与されているかについてお伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 今、委員がおっしゃられましたように、イラクに対する武力行使の結果、サダム・フセイン政権が崩壊をいたしまして、イラクにおいて権力の空白が生じたということになりました。それで、その空白がございましたので、米英はその支配下にある地域の民生、秩序を回復をして維持をするという義務を国際法上持っておりますので、そのために必要な措置を取るという一環で暫定的な施政を行ってまいりました。そして、そこで国連の決議の一四八三ができたわけでございます。
 この国連の決議一四八三は、統合された司令部、当局ですけれども、の下にある占領国としての米英両国の関係国際法の下での特定の権限、責任及び義務を確認をしているわけでございまして、米英はこれによりまして占領国であるということは明らかにされているわけでございます。
 同時に、この決議は、占領国としての権限、これに加えて、それ以上のものを米英に付与をいたしております。それは、例えば、実効的な施政を通じたイラク国民の福祉の増進に関する権限、イラク開発基金やオイル・フォー・フード計画に関する一定の権限、イラクにおける政治プロセスへの一定の関与などの権限ということでございまして、この一般的に占領国が有する権限、これを越える幅広い権限を国連の決議は当局に対して付与をしたということでございます。
 ということで、現在、米英等は決議の一四八三に従って、国際法に認められた形でイラクにおいて暫定的な施政を行っているということでございます。

○河本英典君 もう時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、参議院の審議、今日スタートでございますけれども、十分に時間を掛けて、国民の理解を少しでも得られるように、また、先ほど申しましたように、安全保障に対する考え方に慣れていただくというと失礼、いけない、適切な言葉じゃないかもしれませんけれども、しっかりそういった議論を聞いていただくことが大事だというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。
 終わります。

○委員長(松村龍二君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十三分休憩

   午後一時一分開会
   〔外交防衛委員長松村龍二君委員長席に着く〕
○委員長(松村龍二君) ただいまから外交防衛委員会、内閣委員会連合審査会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
 阿部正俊君の関連質疑を許します。亀井郁夫君。

○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。
 今日は内閣委員会の皆さんの特別な御配慮によりまして、自由民主党・保守新党を代表して関連質問をさせていただき、今日初めて小泉総理に直接お伺いできる機会をいただきましたことを心からお礼申し上げたいと思うわけであります。
 既にこの法案につきましては、衆議院において、また参議院におきましては今朝から審議が始まり、慎重に行われているわけでございますけれども、特にイラクの問題につきましては、今朝ほどからも議論がありましたように、日本の大事な石油資源を供給している地域だということで非常に大事な問題でございます。そういう意味では、小泉総理は、構造改革なくして成長なしという言葉の代わりにイラクなくして日本なしと、いかにも正にそういった気持ちでこの問題に一生懸命取り組んでおられるように思うわけでございます。
 しかしながら、国民の理解は必ずしもこの問題については十分ではないように思いますので、今日はせっかくのテレビ放映でございますので、私が質問してそれに答えてもらうということではなしに、国民の皆さん方に総理の口から直接訴えてもらうということにした方がいいのではないかと思いますので、できるだけ簡単な質問をお願いいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。
 特に、総論的な質問は今朝から阿部委員並びに河本委員の方からやられましたので、私はできるだけ具体的な問題から入っていきたいと思いますので、よろしく総理お願いしたいと思います。
 まず最初に、総理にお願いしたいのは、総理のイラクの現状についての感覚でございます。
 イラクは米英を中心とした攻撃により大変な打撃を受けたわけでございますけれども、そういう意味ではイラク国民の生活の改善、国土の回復というのは大きな課題でありますが、しかし考えてみますと、私たちも五十八年前の敗戦という厳しい経験をしました。主な都市はみんな空襲でやられてしまったということでございますし、そういう状況の中で敗戦を迎えたわけでございます。そして、私も小学校六年生でございましたけれども、しかし思い出しますと、電車にぶら下がると電車の外には駐留軍の命によりできないとはっきり書いてあったことを思い出すわけでございますし、また学校給食も粉ミルク、これが好きな人、嫌いな人おりましたけれども、給食のための粉ミルクの支給も行われたわけでございます。しかし、そういう中から我々日本人は団結して今日の繁栄を築いたというのが実態でございます。
 そういう意味では、これからもイラクの再興につきましては手を差し伸べていかなきゃいけない、そのとおりでございますけれども、しかしイラクの国民たちが本当に喜んでくれる形でやっていかなきゃならないと私は思うんですが、そういう意味では、戦後の日本に比べまして今どういう状況なのか。いろんな方が言います。テレビでは厳しいことばかり報道されますし、また国会議員の方々の報告も、与党の方の報告と野党の方の報告ではかなり違うように思います。
 いろんな方からの報告が総理には行っていると思いますけれども、総理は、日本の当時に比べてどのような状況にイラクが置かれているのだと認識されているか、非常に素直な質問でございますけれども、是非お答え願いたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日本の戦後の当時と比べて今イラク状況をどうかと言われても、私は、終戦時三歳でしたから余り記憶にないんですね。もちろん小学校に入ったころの記憶はありますが、占領当時、確かに物に乏しかった。学校の授業も、生徒数が多くて、午前、午後と分けられた。週ごとに、今日は午前組、今日は午後組、翌週は逆に午後組が午前組になると。そういう授業の覚えは今でもあります。
 しかし、今のイラクの状況というのは、確かに言われたとおり、危険だ危険だといった目で見ると危険な面も多いでしょう。しかし、今の非戦闘地域というところに限られないんじゃないかという議論がありますが、現在でも多くの文民がイラクに入って支援活動をしている、そして米英軍だけでなく数十か国の国が軍隊を派遣されて復興活動にいそしんでいるということを見れば、客観的に、日本独自の調査団、そして外国等との協力を得れば、おのずから、ここは比較的危険でないな、戦闘が行われていないなという地域は、私はあると思います。
 そういう中で、文民や政府職員のみならず、自衛隊の諸君がイラク国民のために何ができるかということをこれから考えていかなきゃならないんであって、私は、可能性を考えれば切りがありません。一%の可能性があればどこが危険かと、一〇〇%の安全性を考えればどこが安全かと、そういうのはなかなか難しいんでありますが、ごく常識的に考えれば、私は、今後、様々な機関、国独自の調査によって、非戦闘地域に限って日本の自衛隊なり職員なり民間人が活躍できる地域は指定することができると思います。そういう地域で、民間人ができない活動でも自衛隊だったらばよその国の支援、援助を受けないで自己の日ごろの訓練なり装備なりの中で独自の支援活動ができると。そういう点において、日本としては、幅広い情報を得ながら、自衛隊が戦闘行為でない、武力行使をしない復興支援活動に取り組む地域を指定して、それにふさわしい装備を持って活動していかなきゃならないと。
 今後、そういう指定すべき地域はどこかということはよく慎重に考えて、派遣する際にはしっかりとした対応ができるような体制を持って派遣したいと思っております。

○亀井郁夫君 総理が終戦のときに三歳だったということでございますので、申し訳ございませんでしたが、総理も何か、しかし小学校に行き中学校に行かれる過程で、進まれる課程でいろいろと御苦労もあったかと思いますけれども、日本人もそれぞれの年代に応じてこの戦後を乗り越えてきたわけでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思いますが。
 今の総理のお言葉にもございましたけれども、このイラク法案が通ることによって、日本として具体的に自衛隊以外にも一般職員の派遣もしますし、NGOもありますけれども、そういう問題について、トータルとして総理はどのようなことを重点的に応援してやろうと考えておられるのか、一言で結構ですけれども、お話しいただければと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 重点的にというのは、今後検討すべき課題だと思いますが、現在、自衛隊の輸送機がイタリアとヨルダンの間を往復して医薬品等の援助物資を輸送しております。現行法では自衛隊の輸送機はイラク国内にはいれませんから、まずイタリア国内にある基地、そしてイラクの近いヨルダン、そこに物資を輸送して、あとはその物資はイラクにはいれる部隊にイラク国内に届けてもらうということでありますが、このイラク法が成立すれば直接自衛隊機もイラク国内にはいれるわけですね。
 その際には、まずどういう物資が必要かと。当然、今言われているのは、医薬品等は足りなくてしようがない。あるいは、水の補給。水があればあるほどいいということでありますので、その水を確保するためにはどういう装備が必要かと。物資にしても、日ごろどういうものをイラク国民は欲しているのかということをよく調べて、私は、自衛隊機が入る際にはどの地域の空港が安全かということも確認を含めて、物資の輸送あるいは給水活動あるいは浄水、汚い水も日本にはきれいに飲めるような水にする設備が整っている部隊が、自衛隊は持っているといいますので、そういうこともできるのではないか。さらに、現地の暫定的な施政機関とも相談して、またNGO等の活躍されている方々等の意見も聞きながら、政府職員、民間人ができなくて自衛隊ができることもあろうと思いますので、総合的に判断して、何が必要かということを決めていかなきゃならぬと。
 今の時点では、これとこれをやりますということはまだ言えない段階だということを御了解いただきたいと思います。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 総理のお話ですと、今はヨルダンまでしか運べないのが、これが通ればイラクの国内にも必要な物資を送ることができるようになると。そしてまた、水を作ったり水を運んだりできるわけでありますし、特に物資では、今言われました医薬品等についてやっていきたい、また、これからもいろんな問題については現地の話を聞きながらやっていきたいというふうなお答えだったと思いますけれども、そう理解させていただきたいと思います。
 それでは次に、総理のお話にもございましたが、これから非戦闘地域における自衛隊の派遣ということになりますので、あの地域で、ここは非戦闘地域だということをある程度指定しなきゃいけない、非常に大事な問題でありますし、派遣されました阿部先生を始めとして、お聞きしますと、南の方は比較的いいけれども、北の方は危ないとか、いろんな話があります。そうした中で線引きをしていかなきゃならないという非常に大きな問題が残されるわけでございますけれども、よその国にそういうことを、線、それを引くというのはなかなか大変だろうと私は思うんですけれども、そうした大変な仕事も乗り越えていかなきゃならないわけでありますが、これについてはどういう手続で、どういう手順でやっていくのか。やはり国民の皆さん方、心配しておられますので、防衛庁長官の方、この辺、担当される大臣としてお話しいただければ有り難いと思います。

○国務大臣(石破茂君) お答え申し上げます。
 午前中、阿部議員の御質問にもお答えをしたことでございますが、非戦闘地域で活動は行わなければいけないということが法案第二条にございます。それは、我々がやる活動は憲法上の要請に従って、当然、非戦闘地域でなければいけないということを法的に担保しますためにそのような条文を設けました。それは、今、委員が線引きというふうにおっしゃいましたが、こうイラクの地図を広げまして、ここは非戦闘地域というふうに定めるという作業を行うわけではございません。それは、我々がやる活動は、当然、憲法の要請に従って非戦闘地域でなければいけない、そのことをきちんと法的に担保する、そういう意味で設けたものでございます。
 条文の仕組みの御説明をお尋ねでございますので、させていただきたいと思います。
 基本計画というものを作ります。これは閣議決定をいたします。この基本計画で何が決まるかと申しますと、法案第四条でございますが、対応措置を実施する区域の範囲といたしまして、自衛隊の部隊等やイラク復興支援職員が本法案に基づいて活動する区域を含みます大まかな区域の範囲をまず定めます。それはどういうところかと申しますと、その際にはイラクやイラク周辺国だけではございませんで、我が国の領域や我が国の領域からこうした地域に至る経路を含めまして示します。ですから、まず範囲というものを閣議決定で基本計画で決めますが、それは我が国の領域も含む非常に大まかな地域をまず設定をいたします。
 次に、防衛庁長官が総理大臣の承認を得て実施要項というものを定めます。ここにおきましては区域の範囲、先ほど申しました非常に大ざっぱな区域の範囲の中で実施する活動の内容や治安状況を十分に考慮をいたしまして、自衛隊の部隊等が対応措置を実施する区域、まさしく実施する区域でございます、これを具体的に指定をすることになります。この行為は防衛庁長官が総理の承認を得て行うものでございます。
 この実施区域をどうやって定めるかと申しますと、一つはニーズがあるのかないのか、実際に自衛隊がそこで活動しなければいけないのかということが一点。それから、第二点といたしまして、先ほど第二条のお話をいたしましたが、そこは非戦闘地域なのか、すなわち、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで行われる活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない地域という両方の要件を満たすことに加えまして、加えまして、活動の安全性を十分に考慮するということが求められるわけでございます。
 したがいまして、非戦闘地域の要件の充足につきましては、イラクを、ここは非戦闘地域です、戦闘地域です、非戦闘地域ですと色分けすることが求められるものではございませんで、実際に活動の見込まれる地域が非戦闘地域でなければいけないということであります。ですから、非戦闘地域と戦闘地域と分けられるのかいという御質問がございますが、はっきりしておりますのは、我々は非戦闘地域でなければ活動してはいけないということなのです。色分けができるできないという問題ではなくて、我々は非戦闘地域で行動するということが憲法上求められており、このことをきちんと法的に担保をする、そういう意味で非戦闘地域という概念を御説明しておるわけでございます。

○亀井郁夫君 なかなか分かったような分からぬような、何なんだ、その辺が非常に困るところでありますけれども、しかし、要は、大きく基本計画ではこの地域だと決められて、そこの中で対応措置を講ずる地域というのは防衛庁長官が総理の許可を得て決められるということになるわけですね。そこでもし戦闘状態が起こったら、そこは戦闘地域になるということですよね。戦闘地域は非戦闘地域というのと若干違うというお話でございますから、前もってこうじゃないよ、ここは大丈夫だよといって決めるんじゃなしに、決めたところでも何か起こればそれは戦闘地域に変わってくる可能性があって、自衛隊はそこから要するに行かなきゃいけないということが起こるわけですね。そういうふうに理解してよろしいわけですね。
 この辺がやっぱり国民が一番分からないところなんですね。だから、量的に決めておっても質的に判断するんだというお話がございましたから、そうすると、その辺が難しいんですよね。ですから、その判断は現地の司令官が決めるのか、その都度また、例えば防衛庁長官に伺いを立てて決めるのか、その辺がよく分からないんですけれども、その辺はどうなんですか。済みません。

○国務大臣(石破茂君) 先ほど申しましたような形で我々の活動は非戦闘地域で行います。そして、まずそこにおいては必要性、そしてまた安全性というものも考慮して行われます。しかしながら、そこが場合によりましては戦闘行為が行われている地域、戦闘行為って何だってこういうふうに申しますと、ドンパチと、簡単な言葉で言えばそういうことが戦闘行為なのかと、こういうふうに言われますが、私どもは、戦闘行為とは何かと申しますと、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為、これが戦闘行為でございます。それじゃ、国際的な武力紛争って何だと、こういうふうになりますと、国又は国に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いということになるわけです。
 これは分かりにくいではないかと、こういうふうに言われますが、すべて憲法上の要請をきちんと満たして行動するということは、我々当然のことでございます。したがいまして、このような定義をきちんきちんと設けさせていただいて御説明をしておるわけでございます。
 私どもが活動しておりまして、そういうような地域を設定をしてやったといたしましても、二つの危険があると思います。一つは、国又は国に準ずる組織、例えばバース党の残党でありますとか、お家再興みたいなものですね、そういうものが組織的、計画的に攻撃を仕掛けてきたということもあれば、非常に日々の食べ物にも困って、強盗や泥棒のたぐいとして攻撃を仕掛けてきた、両方あると思います。その場合に、これが、国又は国に準ずる組織が攻撃を仕掛けてきた場合には、これは戦闘行為になる可能性がございます。そこにおいて、実際に活動します自衛官が、きちんとそれがそうなのかそうでないのか判断するということは極めて難しいことがございます。
 こういう場合にどういうふうになるかといいますと、そういう場合には活動を一時中断する、休止する、そして危険を回避する、そして防衛庁長官の判断を待つということになります。
 そこで、私どもは、国際的な武力紛争の一環としての武力行使、それの可能性というようなことは絶対に回避をしなければならないことでございます。したがいまして、現場の自衛官にそういうような判断を全部負わせるというような過重なことは考えておりません。その場合に、基準を示すということは必要でございますが、いずれにいたしましても、そういう場合には活動を休止し、回避し、そして防衛庁長官の判断を仰ぐということに相なります。
 ただ、相手が泥棒のたぐいであれ強盗のたぐいであれ、国あるいは国に準ずる者であれ、自己を守るために必要な武器の使用ができるということは同じでございます。自分に危険が迫っているということであれば、たとえそれが国又は国に準ずる者であったとしても、正当防衛、緊急避難の範囲において武器が使える。ということは、それは強盗のたぐいであれ、国又は国に準ずる者であれ、違いはございません。国又は国に準ずる者である場合に違いますのは、活動を休止し、回避し、そして中断するかどうか、そういう指示を仰ぐという行為が付け加わるわけでございます。

○亀井郁夫君 少し分かってきましたけれども、要は戦争行為と、その中に戦闘行為が含まれるということですね。そして、その戦闘行為というのは、今言われたように国又はそういった国に準ずる団体がやる組織的な戦いだということになりますから、あるいはゲリラとかそういうのが起こってきても、それがどうかということを現地の司令官が判断しなければならないということですから、なかなか難しい判断を現地の司令官はやらなきゃ、やはり安全の問題がありますから大変だろうと思いますので、それについては、防衛庁長官の方からよく司令官に対する教育なりそういうのをやっていただきたいと私は思うわけでありますけれども。
 これに絡みまして、自衛隊の人はまだ鉄砲持っているからいいですが、そうじゃなしに、政府の職員やらNGOの人たちがやはり行ってやっているわけでありますけれども、そういう意味では、官房長官にお尋ねしたいんですが、政府職員、いわゆるイラク復興支援職員と言われる人たち、これは政府の職員として行くわけですが、地方公務員や一般の人から採用して行くわけでありますし、同時にまたNGOの人たちもおるわけでありますから、そういう人たちが具体的にどんなことを今しているのか、どんなことをしようとしているのか、国民の皆さん方に分かるように官房長官並びに外務大臣に御説明いただければ有り難いと思います。

○国務大臣(川口順子君) 政府の職員、現状で行っております、六名行っております。それから、NGOも現状で行っております。
 それで、政府の職員につきましては、これは外務大臣の、外務省の職員として外務大臣の命により行っております。そして、CPA等と連携をしながら様々な活動をしております。政府の職員という意味では、また同時に大使館も、イラクにあります我が国の大使館も再開をいたしておりますので、そこで大使館員が活動をしております。
 NGOでございますけれども、NGOは現在、イラクではジャパン・プラットフォーム、これが既に活動中でございます。それから、そのほかに五つのNGOの団体が活動を行っていると承知をしております。NGOが何をしているかということですけれども、国内の避難民の支援、これは生活の必需品を配ったりということですが、それから病院や学校の修復を行っております。
 こういった人による、このほかに我が国は国際機関等を通じて支援を様々行っておりますけれども、人が実際に行って行う支援といいますのは、やはり顔が見えるということでもございますし、きめの細かいところに手が届く、あるいはやりながらまた新たなニーズが発掘できる等々のメリットがあるわけでございまして、NGOに対して今後、支援をますます深める、それからNGOとの連携、これも行ってまいりたいと考えております。
 現状を取りあえず御説明をさせていただきました。

○国務大臣(福田康夫君) ただいま外務大臣から現在やっております民間の方々の活躍ということで御説明申し上げましたけれども、これからのことについて若干説明をさせていただきます。
 自衛隊以外にも、民間の方々にも今回の法案の枠組みの中で参加をしていただこうと、こういう考え方でございます。どういう方に行っていただくのかと、何をするのかと、こういうことになりますけれども、それを説明させていただきますけれども、例えば被災民に対する診療とか、それから公衆衛生に関する指導を行うというようなことでも一つ仕事になります。これは国立病院、地方公共団体の病院、それから民間の病院の医師、看護婦というような方々にイラク復興支援職員として、になっていただいて、それでこの仕事に参加をしていただくと、こういうようなことでございます。
 また、被災民に対する食料とか医薬品などの生活関連物資の配給とか輸送、そういう分配ですね、分配などにつきましては、これは民間のボランティアの、これも経験のある方々に参加をいただくと、同じく復興支援職員としてこれは採用して、そして参加をしていただくと、こういうことですね。
 それから行政事務、これは政府の仕事でございますけれども、行政事務に関する助言、指導を、そういう知見を有する方々に参加をしていただく、これは関係省庁の専門家、これを復興支援職員として採用して行っていただくと、こんなようなことを考えております。
 これは今現在いろいろ考えている最中でございます。実際のニーズとかそういうことについての具体的な調査をした上で、どういう、そのニーズがどういうタイミングでどのぐらいの規模で必要かといったようなことも検討してこれは決定をすると、こういうことになります。
 また、この待遇等について御説明申し上げましょうか、こういう民間の方々のね、復興支援職員と。簡単に申し上げますと、これは待遇については、まず安全が確保されなきゃいけませんね。自衛隊職員の場合には、やはりそういうことに訓練して、十分な訓練をして今までも国際平和協力活動をしてきているという観点から、非常に組織的に効果的にいろんなことができるだろうというふうに思いますけれども、今言いました民間の方々については、これは丸腰ですから、これは安全については十分な配慮をしなければいけないと、こういう考え方をいたしております。
 この処遇とか補償、補償も大事でございます。もし何らかの問題があった、が生じたときには適当な補償をしなければいけないと、こういうこともございます。そういうようなことから、手当は、手当も支給しなければいけない。これは公務員の災害補償にかかわる平均給与額の基礎とできるように措置をするといったようなこと、それからまた警察官とかのバランスなんかもございまして、国家公務員と地方公務員との間で制度が異なるというために、一概に比較は困難でありますけれども、そういうふうな差はなるべく埋めていくとかいったようないろいろな配慮をして待遇をしていこうというように考えております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 現実には、政府の職員やら、今六人とおっしゃいましたけれども、そうした復興支援職員やら、そしてまたNGOの方々の活動に期待するところが大きいわけでありますけれども、もちろん自衛隊に頑張っていただかなきゃいけないんですけれどもね。しかし、具体的に、今何人ぐらいの規模であり、今、政府職員六人とおっしゃったんですが、これから何人ぐらいになることが可能性として、今、この法律が通ったときの話ですから仮定の話になりますけれども、どの程度の規模の人がこれにお手伝いすることになるのか。もし分かれば、考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) これはなかなか難しい質問でございまして、今、端的にお答えしにくい。それはやはりニーズによるわけでございます。仕事の中身によって、人数がたくさん必要なものか、それとも、いろんな指導、行政上の指導をするとか、それからまた専門的な知見でもって指導するとかいったようなことであれば少人数ということになりますけれども、しかし、一般の民間の方々にも、これはイラクの治安が更に改善されるというような状況になれば相当程度の方々に行っていただくというような機会は生まれるんではなかろうかと思っております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 総理にちょっとお尋ねするんですが、これまでの議論でやはり非戦闘地域をどうするかとか、いろいろ厳しい問題があるわけでありますけれども、総理も近くまで行かれたんですけれども、やはり総理がちょっとでも現地に行かれて、現地の状況を直接見られた上でこうだよと言っていただきますと国民が納得する面が非常に強いという声もあるんですけれども、総理はそういう機会を、もちろん外交問題等でお忙しいのはよく分かっておりますから時間的には難しいと思いますけれども、このイラク法が通れば、その後、基本法作るまでにちょっとでも行ってこられるお気持ちがあるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は専門家でありませんから、行って、今私がいるときは安全だから果たして安全かとも言えないしね。その辺はよく専門家の、よく調査と各国の情報を収集して分析する必要があると思います。
 私が行くところは常に大変な警備で、皆さん安全に気を配っていただいております。私が行って迷惑を掛けてもいけませんし、迷惑を掛けない状況だったら、いずれイラクも訪問したいと思っております。

○亀井郁夫君 分かりました。
 総理がおっしゃるように、総理が行かれるとなったら安全なところしか連れていかないということになるかもしれませんから、総理の判断が間違うかもしれませんから、総理の方に本当の生の情報が全部入るようにひとつよろしくお願いしたいと思います。
 それから、先ほど官房長官からもお話ございましたけれども、派遣される人の処遇の問題でございますけれども、いろいろ現在既に法律上決められたことがありますけれども、今度はある意味では非常に危険ではないかと、危険な地域に行くんだという思いで国民みんな心配しておるわけでございます。そういう意味では、行く人たちの名誉と誇りに懸けてもこれについては十分配慮していただきたいと思います。
 そういう意味では、自衛隊の場合は警察官等と同じように賞じゅつ金というのがあって、亡くなりますと、聞くところによりますと最高六千万ということになっておるようでありますけれども、しかし警察官や消防関係その他いろいろありまして、調べてみますと随分金額が違うようでございますので、その辺を十分考慮しながら、官房長官言われたように、これに対する、行かれる人の対応をしっかり考えていただきたいと思いますし、同時に、外務大臣にお願いしたいのは、何と申しましても、NGOで行っている人が命懸けでやってくれているんですが、この方がもしも、いいことじゃありませんけれども、犠牲になられたという場合の取扱いはどうなっているのか。それからまた、今、随分外務省からも資金的に援助をしているというようにお聞きするんですけれども、どの程度の活動について資金を援助しているのか。これについて、外務大臣にお願いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) NGOの方々につきましては、これは正にその災害発生地ですとか危険な地域で活動をしていただいているわけでございまして、私は昨年アフガニスタンに行きましたときにも、アフガニスタンの各地で活動をしている日本のNGOの方々とお話をして、いかに安全に関する情報が手に入りにくいか、あるいはどのようにして手に入れているか等々のお話を直接に伺いました。イラクについても、NGOの方々は元々そういう地域で活動をなさるのには経験を積んでいらっしゃる方々ではありますけれども、やはり万全の体制を政府として組まなければいけないと考えております。
 それで、現在は何をしているかということですけれども、これは通常の業務で政府として行っている邦人保護ということは当然でありますが、国際人道機関、国際機関も現地で活動をしていますので、そういったところと密接な連携体制を作るということが一つございます。
 それから、在外公館とも連携体制を作って情報が緊密に伝わるようにしておく。例えばアフガニスタンですと、NGO担当の人を一人置いてございます。そして、その人をポイントにしていろいろな連携を行っているということをやっております。それから、もちろん最新の安全保障、安全情報を提供する。
 そして、これは余り役に立つようなことがあってほしくありませんけれども、海外旅行傷害保険、これについても政府としてのNGOに対する支援の対象にいたしておりまして、戦争の特約も含む最高額の保険を掛けてくださいと、その支援を、その分の費用を政府で見させていただいております。
 そういったことを行いながら、政府としてできるだけの支援をNGOの方に対してしていきたいと思います。
 現在、ジャパン・プラットフォーム参加のNGOに対しまして、そこが行っている緊急人道支援活動に対し総額約七億円の支援を行っております。それから、そこに対しましては事前に一定額の政府資金をプールとして供与をいたしまして、それを使う段階では評議会というのが、外務省や経団連や学識経験者の方々から成る評議会というのができておりまして、そこの評議会で個別のプロジェクトや内容について評価をしまして、そこでその具体的な支援額を決めるという方式を取っております。
 それから、その他のNGOの方、五つ既に活動をしていますし、近々あと二つのNGOの方が活動を考えていらっしゃるということのようでございますけれども、この方々に対しましては日本NGO支援無償資金協力ということで協力を検討をするということになります。そういったことについては、プロジェクトの内容ですとかNGOの方々のそういったプロジェクトを実施する能力、それから現地の治安状況等を勘案をいたしまして具体的な支援額を考えていくことになります。
 いずれにいたしましても、NGOの方々の活動が安全に行われることが、NGOの方々にとっても、そしてそのイラクの復興という観点からも大事でございますので、政府として万全の支援を行いたいと考えています。

○亀井郁夫君 大臣、ありがとうございました。
 NGOの活動というのが非常に大事なこともよく分かりましたので、これについてはよろしくお願いしたいと思います。亡くなったときのことについては御答弁ありませんでしたけれども、分からないんだと思いますので、これについても十分御配慮いただきたいと思います。
 今回、一番中心になるのは何といいましても自衛隊ですので、自衛隊の派遣される人たちに対するそうした処遇というもの、自衛隊の人たちが本当に名誉と誇りを持ってしっかり頑張れるように考えてほしいと思いますけれども、それについて防衛庁長官の決意のほどを、考えのほどをお聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 先ほど来申し述べておりますように、隊員の安全ということには十分配慮をしてまいりたいと思います。
 しかしながら、世の中には絶対ということはない、不測の事態があり得ないということはない。幾ら万全を期したとしても、不測の事態が全く排除されるわけではございません。そういう場合に、まさしく委員が御指摘のように、事に臨んでは身の危険を顧みず身を挺して国民の負託にこたえる。阿部委員が有事法制のときにも御指摘をいただきました。そういう宣誓をして、日本の国益のために、また日本の責任を果たすためにそういう地に赴いて、万が一の場合に遭遇したときに、それはやはり名誉と誇りということはきちんと考えなければいけないと思っています。それは政府もそうです。国民全体もそうなのかもしれません。
 したがいまして、補償あるいは委員御指摘の賞じゅつ金あるいは手当、そういうもので、本当に後顧の憂いなく、そして同時にそういう人たちの気持ちにこたえる、それは国として万全を期すのは当然のことだと考えております。
 委員の御指摘を踏まえまして、今後更にきちんとした対応ができますように万全を尽くしてまいりたいと存じます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 是非とも派遣される自衛隊員が、喜んでと言うかどうか分かりませんが、誇りを持って参画できるような体制を是非考えていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、一つお願い、お聞きしたいのは、防衛庁の省昇格の問題であります。
 現実に、議員の中にも防衛庁を防衛省にしようという議員連盟もできまして、明日はその会合もあるわけでございますし、一般の人たちも、なぜ防衛庁があれだけの組織でありながらいまだに庁なんだと。国を守り、こうした国際的な平和維持のために頑張ってくれている、命を懸けて頑張ってくれている自衛隊員のためにも、いつまでも防衛庁にするのはおかしいんではないかと。この際やはり、防衛省に昇格してあげることが、あげると言っちゃおかしいですが、昇格させることが必要ではないかということをよく聞くわけでありますけれども、これに対する総理のお考えをお聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) この庁から省への昇格の問題はよく議論されるところであり、私も今までの議論、関心を持って見守っておりました。
 現在、なぜ防衛庁を防衛省にしないのか、あるいは国防省にしないのかということでありますが、この問題につきましては、元々自衛隊というものに対してどのような配慮をすべきかと、あるいはよその国の軍隊とどう違うのかという議論もあります。自衛隊を軍隊と認めるということ自体に対してさえも根強い反対がある今の日本、外国へ行くと軍隊同様の扱いをされますが、日本では軍隊と呼んではいけないということになっております。そういう戦後の生い立ちですね、こういうこともやっぱり考えなきゃいかぬと。自衛隊の諸君がこうして今までいろんな分野に活躍の場を広げてきて、高い評価を受けている。しかるべき待遇をしなきゃならないというのは当然でありますが、庁を省にするというのと、それでは憲法を改正して自衛隊をはっきり軍隊と認めた方がいいのじゃないかと、それから省にしてもいいのではないかという議論もあります。いろいろあります。
 だから、そういうのを見極めながら、今、国会での議論も、憲法調査会あるいはこういう場で、省昇格の問題ありますが、今までのいろいろな議論も踏まえながら、国民の動向を見ながら、庁から省にしなくても自衛隊の諸君の活動に対して敬意を持って接することができるような環境の整備することが政治の場、国会の役割ではないかと思いますので、いろいろ今後も議論を見極めながら、今後の問題として検討しなきゃならない問題だと思っております。

○亀井郁夫君 総理、ありがとうございました。
 この問題は憲法の問題にも絡む大事なものでございますので、大変だと思いますけれども、ひとつよろしく御検討のほどお願いしたいと思います。
 最後になりますけれども、総理は先ほども、今朝も話されましたように、米百俵の問題、あるいはまた改革なくして成長なしというような形で、こうした短い言葉で国民に納得させるすべには非常にたけておられるわけでありますから、このイラクの問題についても、イラクが日本のためにいかに大事なことなのかというふうな言葉を、簡単な言葉で結構ですけれども、是非とも考え出してもらって、そうしてこの問題に取り組んでいただけるよう心からお願い申し上げまして、私の質問に代えさせていただきます。
 どうもありがとうございました。


2003/07/09

戻るホームイラク目次