2001/04/05

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「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」設立総会報告

神谷誠人

日時: 2001年4月5日午前11時〜12時
場所: 参議院会館第3・4会議室
原告参加者: 星塚敬愛園1名,大島青松園1名,長島愛生園1名,
邑久光明園1名,多磨全生園1名,栗生楽泉園2名
司会: 川内博史議員(民主党)

1 江田五月代表世話人あいさつ

20世紀の深刻な人権侵害問題を21世紀に持ち越してしまった。是非解決しなければならない。訴訟を支援しながら,最終解決に向けて政治も努力していかなければならない。

超党派,しかも各党の幹事長クラス,実務を動かす地位の方々が参加しており,感無量である。複雑かつ深刻な問題であるが,力を結集して解決していきたい。

2 規約案・役員案等について

1) 規約
(1) 本会は「ハンセン病問題の最終解決を進める議員懇談会」と称する。
(2) 本会は,ハンセン病問題の最終解決を実現することを目的とする。
(3) 本会は,役員として,会長・事務局長を各1名及び副会長を若干名置くこととする。
(4) 本会は顧問を置くことができる。
 その他省略

2) 役員
【顧 問】 野中広務,菅直人,白保台一,藤井裕久,市田忠義,渕上貞雄,野田毅
【会 長】 江田五月
【副会長】 熊代昭彦,金田誠一,福本潤一,武山百合子,瀬古由起子,
中川智子,二階俊博
【事務局長】 川内博史

3 顧問挨拶

(菅直人議員)自分の厚生大臣時代に,各方面の方々の努力により,予防法を廃止することができたが,40年廃止が早ければ,患者の方々の被害がここまで苦しい,厳しいものにならなかったはずである,という忸怩たる思いがある。皆さんの力をあわせて頑張って行きたい。

(市田忠義議員)遅すぎた廃止であった。世界に類例を見ない酷い人権侵害である。強制隔離,子孫を残させないという政策の誤りを追及したい。今も4500名の方が,帰る故郷も,頼る家族もない状況である。国の責任で解決しなければならない。

4 川内博史事務局長行動提起

現在101名の議員が登録している。

31日,武山議員が,邑久光明園を視察し,胎児のホルマリン標本を見て,戦慄を覚えたと話してくれた。各議員は,是非,療養所を視察して,自己の体験としてこの事件の深刻さを感じとって欲しい。また,5月11日熊本地裁判決に向けての行動を考えていきたい。

5 全療協・神美知宏事務局長挨拶

本日,超党派の議員懇談会が発足し,ようやく100万の味方を得ることができたという実感。

全療協が発足した1951年には在園者は11000名いた。50年後の2001年2月1日時点で4400名に減り,平均年齢も74歳になっている。10年後にはさらに1/2,15年後には1/3以下になるという状況。

1907年の予防法制定以降,2万3700名が,隔離の壁の中で無念の死を遂げた。

残された4400名が,今やるべきことは,完全な人権の回復であり,裁判において人権侵害の実態・責任について検証することを期待し,全療協としてはその存在意義をかけて,基本的に訴訟に参加する方針である。

ハンセン病政策の人権侵害の歴史を検証することは,ハンセン病のみならず,日本の 医療・福祉・人権の方向性を決定付けることになる。官僚にはもはや解決を期待できな い。日本の将来のために,国会で責任の所在を明らかにしてもらいたい。私の言葉は,全入所者の気持ちを代表したものと理解して欲しい。

また,不自由者棟における夜間の当直は2名という状況。平均年齢75歳にもなると夜間の脳血管障害,心臓障害が起きる。職員の増員を要望しているが,国は実現しない。

我々は元気な時は患者作業,患者付添い,そして療友の火葬まで強制された。しかし年をとったら,放置されている状況である。看護婦の増員による三交替制勤務を実現して欲しい。

6 曽我野一美・原告団代表挨拶

今年で,全療協の闘いは,50年を迎える。昭和42年にハンセン病議員懇談会が結成され,大きな力を貸してもらった。我々の生活が成り立っているのは,議員懇談会のおかげである。

我々は,予防法を何とかしてもらわないと,死んでも死にきれないという思いで闘ってきた。

菅元厚生大臣が,予防法を廃止し,陳謝してくれた時は,自分としてはこの問題は終わったと思っていた。

しかし,訴訟における国が「責任はない」と強弁する答弁を見て,「これは黙っているべきではない。放置すべきではない。」と感じ,国に過ちを認めてもらわないといけないという気持ちから原告に加わった。

5月11日の熊本地裁判決は,弁護団の必死の頑張りもあり,よもや負けることはないと確信している。しかし,どのような判決が出ようとも,そこから難しい問題が始まる。

国を動かすために,議員の方々の力を是非,お貸しいただきたい。

7 徳田靖之・弁護団代表挨拶

本日は,熊本,東京,岡山の3地裁の訴訟の弁護団,南は鹿児島の鹿屋,北は群馬の栗生から原告が参加している。

議懇の趣意書を見て,感激をしている。

1つは,ハンセン病問題の最終解決を目指していること。最終解決は4400名の在園者,死んでも故郷に帰れない23700名の遺骨の悲願である。

2つは,訴訟を側面から支援することを掲げている。

3つ目は,国会自体の責任の検証をすることである。

このような懇談会の発足に,心から感謝したい。

現在3訴訟で723名の原告が参加している。5月11日の判決後は,2000名に増加することが予想される。

この訴訟は,人間を返せ,故郷を返せということを目標にしている。予防法が廃止された今もなお,故郷に帰れない者が4400名。原告の中には,70年という気の遠くなる長期間の隔離生活を余儀なくされている。23700名の遺骨は,死しても,故郷の墓に安置されることはない。この人達を故郷に帰すこと,遺骨を故郷に安置することがこの訴訟の目的。予防法廃止後も,「責任は無い」という厚生労働省の基本姿勢を打ち破ることが必要。5月11日の判決を梃子に,年内の解決を目指さなければならない。

判決で勝訴しても,国が控訴し,訴訟が長引けば,平均年齢75歳という原告にとって,解決したとしても何の意味も無い。さらに,「全面解決」を目指す。国の責任を明確にし,賠償が得られるだけではだめである。療養所における生活・医療の保障,遺骨を故郷に安置すること,身を潜めるように生活している退所者の生活保障,これを実現するには,政治による解決が不可欠である。

8 質疑応答・意見

(中川議員)第1に皆さんに療養所に行って欲しい。第2に隠された資料の発掘をお願いしたい。

(岡崎議員)近いうちに東北新生園に行く。原告の参加者がいないということだが,どういう点に留意したらいいのか。

(神事務局長)皆,関心を寄せている。しかし,家族に迷惑がかかるのではないか,自分が死ぬことで片がつくという気持ちが強い。差別偏見により,被害を訴えることが水面下に押し込められている。

(曽我野)(1)外で治療を受けられないために,自ら療養所に入った者は,「自分には原告になる資格がない」と錯覚している。(2)訴訟に参加することで名前が出て,家族に迷惑がかかるのではないか,という懸念がある。しかし原告番号でよい,という説明が必要。(3)高齢化で耳が遠い。耳元で怒鳴るように説明することも必要。

9 江田会長・閉会挨拶

自民党が参加してくれたことは,極めて重要である。与野党一致して,原告,在園者の方々の思いを実現するよう努力したい。


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