2002/06/24

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枝野議員、情報公開制度への認識欠如を指弾 (民主党ニュース)

 民主党の枝野幸男議員は、24日の衆議院武力攻撃事態特別委員会での防衛庁情報公開請求者リスト問題集中審議で、防衛庁・自衛隊の組織全体を通じた情報公開制度の趣旨についての認識の欠如、指示や情報の伝達面でのまずさなどを指摘した。

 枝野議員はまず、今回のリスト問題で、防衛庁がなぜ国民に批判されていると考えるかを小泉首相に質した。首相は「必要でない情報はとるべきでない。個人情報保護などの視点がきちんとあったのかどうか、反省しなくてはならない」と答弁。これに対して枝野議員は、個人情報保護の視点だけでなく、情報公開制度の本来の趣旨に照らして、開示請求をした個人について関心を持つこと自体が法の趣旨を理解していない姿勢の表れだとし、リストを作成した三等海佐のみならず、このような者を任命した者も含め、防衛庁・自衛隊の組織を挙げての認識の欠如を厳しく指摘した。

 続いて枝野議員は、防衛庁の報告書が事実どおりだとすれば、三等海佐個人の勝手な行動がまかり通ったことになり、物理的な有形力を行使する組織として最もあってはならないことだと指摘。問題発覚直後に中谷防衛庁長官に正確な報告がきちんと伝わらなかったことも含め、組織のあり方・体質を厳しく批判した。中谷防衛庁長官は、「組織として甘かったことは認めざるを得ない」としながらも、あくまでも三等海佐個人の行為という筋書きを繰り返すにとどまった。

 枝野議員はまた、40ページにわたる報告書が与党幹事長らの指示で隠蔽された疑惑について、「『意見を言っただけ』などという無責任なことでいいのか」と自民党の山崎幹事長の態度を厳しく批判し、同幹事長を参考人として委員会に招致することを求めた。


平成十四年六月二十四日(月曜日)

瓦委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。
 今の細野さんの質問に続きまして、リスト問題についてお尋ねをしていきたいと思うんですが、少し整理をしたいと思います。

 この問題、いろいろな問題点があるんですが、まず出発点になった、特に、海幕が一番最初にわかったわけですけれども、リストをつくっていたという問題。これは、何がよくないことなのか、なぜ問題なのかということについての御認識が十分にあるのか。法律のどこに違反をしましたとかしませんとかということは報告書に書いてあります。しかし、実質論、本質論として、なぜ法律で規制をされているのか、なぜ今回国民的な批判を浴びているのか、どこが問題であったのか、まず総理にその見解をお尋ねいたします。

小泉内閣総理大臣 必要でない情報はとる必要はない、これをやはり趣旨徹底されていたのかどうか、そして情報公開と個人情報保護という認識を各職員がしっかりと持っていたかどうか、そういう点について甘い点もあったのではないかと反省すべきは反省して、このような不安や混乱を起こさないように今後対処しなきゃならぬと思っております。

枝野委員 まだ抽象的なんですよ。
 情報公開法というのはどういう法律なのか。何人も情報公開請求できるという法律です。そして、情報公開法の手続は、開示請求をする者の氏名や住所、そして何を公開してほしいのかということさえ申し出れば、あとは公開できない秘密に属する事項なのかどうかという判断だけで、どんな人が請求したものであっても公表されるという法律なんです。その情報公開法に基づいて請求をした人の個人について関心を持つこと自体が、情報公開法の趣旨を理解していないということじゃないですか。
 これは防衛庁長官。

中谷国務大臣 まさにそのとおりでございまして、情報公開法の趣旨に沿って業務を行っていかなければならない、これは反省点として謙虚にそして重大に受けとめて、反省をさせていただきたいと思います。

枝野委員 時々、一部の新聞にも出ておりましたし、新聞に載っていた与党内部の会議、報道ですから正確かどうかはわかりませんけれども、中には、情報公開で防衛庁の情報に関心を持つような請求をした人のリストをつくるのはある意味当たり前じゃないか、つくっていたのがばれてしまったのが問題なんだという議論をする人がいますが、こういう意見について、総理、どう思いますか。

小泉内閣総理大臣 それは、どういう人が何を言っているのか、私は確認しておりませんが、今議員が指摘したような情報公開の趣旨をよく理解すべきであれば、そのような発言はなかったのではないかと思っております。

枝野委員 ぜひ、総理御自身がそういう正確な御認識をいただいているのであれば、そういったわけのわからない議論が出てこないように、政府・与党のトップとして指導力を発揮していただきたいというふうに思います。

 ちなみに、行政の情報公開法にはきちんと、公にすることにより国の安全が害されるおそれのある情報は公開しなくていいということが書いてあるわけですから、どんな人が求めてきたとしても国の安全にかかわる情報は出さなければいい、出しても問題のない情報を出すんだということですから、逆に、本当に国の秘密にかかわる、安全保障にかかわるような情報にアプローチしたいと思っている、例えば外国の情報機関のようなものが、正々堂々と表玄関から情報公開法で情報公開をしてくるはずがないわけなんで、今のような、先ほどの私が取り上げたような議論はそもそも観念論で、実態を全く見ていない議論だということを指摘しておきたいと思います。

 さてそこで、先ほど来、個人の問題なのか組織の問題なのかということが議論になっています。これは特に、この三等海佐の処分が重いのか軽いのかというようなところにもつながっていく話でありますが、今私が申し上げたとおり、これは情報公開法の趣旨というのをよく理解していなかったというところが本質的な問題点であるのだとすれば、リストをつくったのは、これは例えば、三等海佐個人が自分のパソコンに向かって、あるいは自衛隊の自分の預かっているパソコンに向かって入力をしてリストをつくっていたんでしょう。

 しかしながら、皆さんのなさった調査報告の中でも、九名ですか、この三等海佐の方は、自分でつくったリストを防衛庁・自衛隊の中にまいていらっしゃるわけです。その中には、情報公開の海幕の室長なども含まれている、情報公開の責任者も含まれているわけです。途中でどなたも、このリストをつくったとされる三等海佐を処分しようとか、まあ人間、やったことを、まずいことをばれるのは嫌ですから、少なくとも途中でやめさせる、問題にするという行動を、例えばこの海幕の問題一つとっても、だれもしていない。

 つまり、受け取った人たちも皆さんもみんな、このリストをつくったことをまずいかなとは思いながらも、まあいいやと思っていたということは明らかですね。これはお認めになりますよね。

中谷国務大臣 この点については極めて不適切でございまして、懲戒処分の対象といたしまして、各室長はその行為が非常に不適切であったという点で認めております。

枝野委員 この三等海佐、情報公開の窓口の担当ですよね。そして、海幕の情報公開室長などにも渡っていた。情報公開の担当者が情報公開法の趣旨を全く理解していなかったということになるわけですよね。だれがこんな人事をしたんですか。

中谷国務大臣 この点につきましては、情報公開や個人情報保護という観点で、防衛庁といたしまして認識が低かったことでございまして、厳に反省をいたしまして、二度とこのようなことがないように、教育を徹底し、システムを改善しまして、開示請求をしてきた方の個人情報が庁内不必要なところに漏れることがなく、またプライバシーも厳重に守られるように、そのような体制をとっていかなければならないと思っております。

枝野委員 質問にお答えをいただきたいのですが、だれがこういう人事をしたんですかとお尋ねしているんです。

宇田川政府参考人 自衛隊員に対する人事権一般につきましては、自衛隊法第三十一条の規定するように、原則として防衛庁長官あるいは施設庁長官が有しているところでありますが、隊員の階級等に応じまして、各幕僚長に人事権を委任してこれを行わせているところであります。

 今般の海幕三等海佐開示請求者リスト作成事案等において、違法行為を行った前海上幕僚監部情報公開室員の三等海佐、それと航空幕僚監部情報公開室員及び前室員の三等空佐二名の人事権につきましては、基本的にそれぞれ海幕長、空幕長であります。それからまた……(枝野委員「いいです」と呼ぶ)はい。

枝野委員 そうですね。それぞれの幕僚長が人事を行っている。
 ちなみに、では、例えば防衛庁所管法ではない、今回は情報公開法であったり個人情報保護法であったりする、いろいろな法律があります。省庁内の担当者が新しい法律をきちんと勉強して、その趣旨にかなった対応をするようにというような管理の責任はだれが負っているんですか。

宇田川政府参考人 新しい法律とか制度ができた場合の教育につきましては、大きい場合には、新しく局長クラスを頭にしたプロジェクトチームをつくりまして、そこに各幕僚監部とか内局とか各機関が入ったプロジェクトチームをつくって推進する場合もあります。

 それからまた、そうではなくて、それほどでないものにつきましては、それに関連する所管課というのがあります、関係する部局でありますが、ここが検討することになることになります。

枝野委員 それでは、今回、情報公開法というのは平成十三年四月一日の施行です。済みません、これ、きちんと通告していなかったので正確にすぐ答えられるかどうかはわかりませんが、これだけ大きな法律ですから、あるいはプロジェクトをつくったということであれば記憶があると思うんですが、いかがですか。

宇田川政府参考人 済みません、ちょっと正式名称は忘れましたが、前年度から、かなり前から全庁を挙げたプロジェクトチームをつくりまして、そこで方法とかいろいろなやり方を検討していた、検討しておるところであります。

枝野委員 そこがちゃんと教育をし、教育のできた人を責任者、担当者にしていなかったからこういう事件が起こったんじゃないんですか。防衛庁長官、これは。判断の問題ですから。

中谷国務大臣 私が就任する前でございましたけれども、聞く話によりますと、これの事業を始める前にはプロジェクトチームを設けて、そこで研修をしたり、またそれに必要な資料等を配付して、情報公開の趣旨また個人情報保護等に対する研修また教育等は行われておったというふうに聞いております。

枝野委員 ですから、そういう研修とかをきちんとしていれば、情報公開法というのは、何人もという要件で請求を認めるということでありますし、当然そういった人たちの、どういう方が請求したのかなんということについて、受験生の母みたいな、反戦自衛官みたいな、個人の属性にかかわるようなことをいろいろリストにしたりしちゃいかぬということは、当然教育できていなきゃいけなかった。それなのに、この三等海佐の方も情報室長すらもそういった意識に欠けていたということは、その準備の教育研修のところに問題があったからというのは明白じゃないですか。そうじゃありませんか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 非常に、結果としてこのような事態を招いたという点につきましては、大いに反省をしたいと思います。

枝野委員 私は、そういうところは間違いなく組織としての問題としてとらえていただかなきゃいけないんですよ。それはどんな組織だって、最後に何かの実行行為を、物理的行為を行うのは一人なんですよ。それから、どんな組織が、例えば組織ぐるみと言われるような違法行為をするときでも、ある組織の中の一部の機関の何人かの人たちが違法な行為をするんですよ。問題は、それがそれぞれの組織全体の中でのさまざまな原因に基づくものであるのか、それとも個人がちょっと特殊な、変わった、困った人だったから起こったことなのか、そこが本質的な問題なんですよ。

 この三等海佐は、この個人の方が特に変わった、困った人、遵法精神に欠ける困った人なんですか。私は、少なくとも防衛庁の調査報告を見る限りは、そうではない。むしろ、こういった程度の教育とこういう感覚のままで担当窓口にさせられたという意味では、国民に対しては加害者かもしれないけれども、防衛庁の中では被害者じゃないですか。違いますか。

中谷国務大臣 基本的には情報公開と個人情報保護法に基づいて実務を行ってきたと認識をいたしておりますが、これに逸脱した行為がその三等海佐にありまして、それは非常に国民に対して申しわけない行為でございます。また、それに気づかずに、またそのリストを受け取ってもそのまま保持をしてきた者にとりましても、やはり情報公開また個人情報保護、これの認識が必要なものでございますが、基本的には法を犯した者がよくないということでございます。

枝野委員 それは国民との関係では、それは公務員の方はどんな現場の方でも法を守って国民に迷惑をかけないようにするという責務をそれぞれ個人としては負っているわけですから、私は彼が責任がないなんと言っていません。国民との関係では、彼は法に触れることをしてしまったんだから責任はある。

 だけれども、きちんとした教育も、きちんとした情報公開についての意識を持った室長も置かないような情報公開を始めてしまったという、組織全体としてのゆがみの一種の犠牲者じゃないですか。違いますか。長官です、これは。政治問題です。

中谷国務大臣 組織として甘かった点につきましては認めざるを得ませんが、この三佐の行為が、上司の命令によって行われたものではなくて、あくまでも、この三佐が自分の仕事をしていく上において海上だけではなくてほかの幕僚やほかのデータも知りたくなった、そういうことによって行われたものでございます。

枝野委員 これは多分、この程度の処分にとどめたのは、私が申し上げたことが本音ではわかっていらっしゃるからだと思いたいんですが、逆に、個人のことだ、個人のことだということを余りにもおっしゃられ過ぎると、逆の問題が生じてくるんですよ。

 自衛隊というのはどういう組織なんですか。それはどんな組織だって公務員組織は、上司の命令、最終的には各閣僚、内閣の決定に従って役所の皆さんは仕事をしていただかなきゃならない。それは普通の、文部省とか、総務大臣来ていただいていますが総務省とか、どの役所でも一緒です。どの役所でも一緒です、同じですが、特に自衛隊という組織、しかも内局ではない、現場、いわゆる制服と言われている部局です。こういういわゆる物理的な有形力を持っている自衛隊の現場の組織というのは、上司の了承も得ずに、上司の命令も待たずに勝手に行動してもらっちゃ一番困る組織じゃないのですか。その組織で起こったことについて、そのトップである、あるいはナンバーツーである防衛庁長官が、個人でやったことだ、個人でやったことだということをそんなに強調してしまって、本当にいいんですか。

中谷国務大臣 これにつきましては、懲戒処分におきまして、違法行為また指揮系統等でどうであったかという点を勘案いたしまして、処分をいたしております。組織にとりまして、そのような個人の問題というだけではなくて、やはりこの行為についての総合的な評価に基づいた対処をしなければならないと思っております。

枝野委員 情報公開法に基づく基本的な観念に反してこんなリストをつくった。そして、今、個人情報の保護法が議論されている中で、コンピューター情報だけは幸い昔からつくってあった、この法律に明白に違反をしている。法律に明白に違反するような行為について、上司の了承も得ずに勝手にやった。それを、評価として本当にそう思っていらっしゃるんだったら、本当に、減給五分の一でしたか、そんなものでいいんですか。自衛隊の現場の人たちが法律に明白に違反をするようなことを個人の責任で勝手にやった場合でも、減給五分の一ぐらいで済んじゃうんですか。そういう組織で本当に自衛隊というのはいいんですか。

宇田川政府参考人 懲戒処分の一般論を申し上げますと、いかなる種類の処分をどの程度まで科すべきかは、非違行為時において懲戒権者が決定するわけであります。このときの要因としましては、当該非違行為の原因、動機、結果、影響等のほか、当該隊員の職務内容、改悛の程度、選択する処分が他の隊員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、規律維持の観点から相当とされる量定を選択するものであります。
 今お話の……

枝野委員 いいです。
 もちろん、やったこととの関係、どの程度重いことをやったのかということとの関係でやらなければならないのはもちろんです。しかしながら、法に明白に触れた、違反をしたということは、これは防衛庁自体もお認めになっているんですよね。

 それは、動機、意図、いろいろあるでしょう。動機、意図、いろいろあって、だけれども、別に日本だけを言うつもりはありませんが、軍事的な組織で、いろいろと後になってみたら、あれはやり過ぎだったんじゃないかとかと問題が起こったような行為があったときに、私利私欲、個人の欲で軍が暴走するだなんという歴史は果たしてどれぐらいあったんでしょう。普通は、これが国のためになるとか、平和のためになるとか、そう思ってみんなやっているんですよ。たまたまそれが、たまたまじゃない、でも、そういうことをルールに反してやると大体結果的に悪い結果になっていますねというのが歴史なんですよ。

 だから、通常時から自衛隊の皆さんには、法は破っちゃいけないんだ、法は徹底して守らなきゃいけないんだというのは、普通の役所以上に何十倍も持っていただかなきゃならない役所なのに、明白に法に触れたような今度のことで、本当にこの三等海佐の個人の行為だと言い張るんだったら、余りにも処分、軽過ぎるじゃないですか。法に触れても、この程度のことだったらこの程度で済んじゃうのねという自衛隊になっていいと思っているんですか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 処分や処罰につきましては、決して、個人のものであったという認識に立っておりません。私初め政務官また事務次官以下、それ相応の責任を持って、処罰の対象といたしておるわけでございます。

 この三等海佐に対していかなる処罰を行うかという点につきましては、法律によって罰則がないわけでありまして、懲戒による処分に基づくわけでありますが、一般的に、自衛隊の懲戒処分等を考えてみますと、免職という規定がございますが、このような重い処分にするには、この隊員が職務遂行上の特に重大な影響を及ぼす規律違反、特に悪質な刑事犯に相当する規律違反を行った場合など、社会的に許されない行為、自衛隊の信用を失墜させる行為ということで、特に飲酒運転による人身事故とか、また、悪質な刑事犯、禁錮以上の刑に処せられる場合等を基準といたしております。

 そのような基準から勘案をいたしまして、先ほど人事局長が申し上げた事情等を考慮いたしまして今回の処分を行ったものでございまして、違反行為を行った四人に対する処分は適切なものでありますし、また、組織としての管理責任等は、それぞれの者が、懲戒の対象といたして、組織としてのこの至らざる点を認めているわけでございます。

枝野委員 幾つか申し上げたいんですが、一つは、確かに、例えば飲酒運転などで業務上過失致死に該当するようなことをやった、そういう人たちを処分する、これは民間企業でも一緒ですよ。問題は、先ほど来申し上げているのは、自衛隊というのは物理的な強い有形力を行使する、できる組織なんですから、特に遵法精神が求められる。その組織で、今回、明白な法律違反だとお認めになっている。

 私は、先ほど来申し上げているとおり、この三等海佐をより重く処罰するかどうかということについては、先ほどの議論のとおり、もっと上の責任じゃないかという思いがありますから、必ずしも、彼をどうしろという話をしているわけじゃない。だけれども、事実上、事務次官が二カ月になっているとかありますが、一番重いクラスの中に入っている、でも、その一番重いクラスが減給五分の一程度である。

 今御答弁の中で、この違法行為には罰則がついていないということをおっしゃいました。ちょっと、きょうの委員会の趣旨とは直接かかわりませんが、わざわざ総務大臣に来ていただいて、この議論は、いわゆる行政機関の個人情報保護法につながっている話です。行政機関の個人情報保護法、今はコンピューター情報だけだけれどもそれを拡大するというのが、民間個人情報保護法と一緒に議論されていますが、あそこで、民間は刑罰があるのになぜ行政には刑罰がついていないんだといったら、行政には、行政の人たちについては懲戒、いろいろな処分がありますからということを御答弁になっていますよね。だけれども、罰則がついてない違法行為については軽く処罰する、そういうことだったら、全然、行政個人情報保護法での御答弁と食い違うじゃないですか、総務大臣。

片山国務大臣 懲戒処分と罰則適用の刑事処分は全然違うんですね。刑事処分の方は、公益に対する重大な侵害だとか、個人の権利利益の重大な侵害については罰則でいく。懲戒処分の方は、難しく言いますと特別権力関係、行政内部の秩序維持なんですよね。

 そこで、行政機関の個人情報保護法をやるときにいろいろ検討しまして、ただ、例えば秘密漏えい、守秘義務違反については、罰則の適用は、現在、国家公務員法でありますし、自衛隊法にもある、あるいは、職権濫用罪、公文書毀棄罪、そういうものは刑法上にある。そうすると、懲戒処分でいけば、法令遵守義務や上司の命令を守る義務が国家公務員法上ありますから懲戒処分でやれる。懲戒処分には、今、枝野委員言われたように免職ですよね、懲戒免職、停職、減給、戒告ですから。だから、そこで十分な担保ができるのではなかろうかというのが我々の考えで、罰則がないから懲戒処分を緩くするというのは、これはおかしいんですよ。考え方が全然違う。懲戒処分は独立してきっちりやってもらう、こういうことであります。

枝野委員 今の、閣内不統一じゃないですか。刑罰法規に触れたわけでもないんだから、この程度じゃないかと防衛庁長官は御答弁になった。官房長官、整理してください。どういうことなんですか。

 つまり、確かに刑罰法規と行政処分とは違います。それは片山大臣のおっしゃるとおりです。だけれども、行政上の懲戒処分をするに当たっては、それは行政処分は行政内部の特別権力関係なり秩序維持かもしれませんが、しかし、今度の件でもそうですが、明白に、国民に対する、国民と政府との信頼関係であったり、国民の広い意味でのプライバシー権という意味での権利を侵害している事案じゃないですか。

 ですから、特別権力関係の内部の問題にとどまってないんですよ。どの程度公益を害しているのか、政府の信頼を害しているのか、そういう観点から、例えば行政処分であったとしても、懲戒処分であったとしても、きちんと処分をしなければならない事案じゃないですか。官房長官は整理をする役割ですよね。

片山国務大臣 私が言いましたのは、今の防衛庁の処分がどうであるということではなくて、懲戒処分というのは独立して物を考えて決めてもらえばいいので、罰則があろうがなかろうが、それは懲戒処分そのものには関係ありません、こういうことを申し上げたので、諸般の事情を勘案して恐らく防衛庁は現在の懲戒処分をお決めになった、こういうふうに思っております。

宇田川政府参考人 私も記者ブリーフのとき、ちょっと短絡的な物の言い方をしたわけでありますが……(枝野委員「いいです、そのことは追及していませんから」と呼ぶ)懲戒処分の対象となった行為のうちには個人情報保護法違反の事実があるということでありますが、個人情報保護法を担保するものとして、自衛隊法の秘密漏えいや刑法上の規定があります。今回の懲戒処分についてもこれを勘案したところであります。

枝野委員 大事なことですから、私は、金曜日の質問取りのときに、政府参考人の方は基本的には要りませんと申し上げたんですが、前の質問者との関係とかいろいろの中で、私の方から、ではこれは局長にということでないときはお答えをしませんから、登録してくださいとちゃんと申し上げているんですから、そこは約束を守っていただきたいと思います。

 今の片山大臣のお話は、その限りではよくわかりますが、だから、行政機関の個人情報保護法においても、行政内部の懲戒処分という意味とは別に、個人情報保護法で守らなきゃならない、行政機関に情報を握られている国民、公益との関係、国民の権利との関係でちゃんと刑罰をつけなければ、防衛庁が法律違反をしても、しかもこれぐらい明白な法律違反とみずからお認めになっていることをやっても減給五分の一ですかという話では、個人情報保護の議論はとても進みませんねということを申し上げておいて本案に戻ります。

 これは、防衛庁全体としてもっともっと強い危機感を持っていただかなければいけないことをあらわしている事件で、もう一点違った視点からお尋ねをしておかなければならないことがあるんです。長官は、この事件の発覚以来、何度か会見その他で経緯をお話しになっていますが、何度も事実上の訂正を余儀なくされましたね。なぜ、そんなことになったんですか。

中谷国務大臣 大きな事実上の訂正は、六月の三日に行いました私の会見によりまして、陸空内局のLANが法律的に問題があるということでございました。その点につきましては、事実、法律に触れていないという評価になりまして、大きな事実の誤認があったということでございます。

枝野委員 防衛庁長官あるいは防衛庁の幹部の皆さんは、最初に毎日新聞にこの事件が載ったときから、これは重要な問題だと、大事な問題だと認識されてなかったんですか、されてましたよね。

中谷国務大臣 もちろん、大変重要な問題といたしまして、全力でこの真相の解明に努めてきたところでございます。

枝野委員 これまた防衛庁・自衛隊というものの特性を考えるときに、そんな重要問題について大臣が途中で訂正をしなきゃならない、確かに明白な訂正は今の一点だと思いますが、細かいことは、御自身からお認めにならないでしょうが、たくさんありましたね。そんなことで本当に、例えば今有事法制を議論されていますが、機能するんですか、この組織は。

 大事な問題で、事によったら防衛庁が国民から不信感を買うかもしれないというような大変重大な案件ですよね。それについて、防衛庁・自衛隊の内部で持っている情報すらどこかで突っかかって、大臣のところにきちんとしかるべきタイミングで届かずに、大臣は訂正発言を余儀なくされる。これが、ましてや万が一有事のようなときには、防衛庁内部の情報じゃありませんよね。日本の国外にあるさまざまな情報が、きちんと防衛庁長官、総理大臣のところに上がってこなければ正しい判断できないわけですよ、本当の有事のときには。

 防衛庁内のこんな問題で、大臣のところに正確な情報が上がってこなかった、訂正を余儀なくされるようなプロセスがあった、この組織的な問題をどう解決するんですか。

中谷国務大臣 おっしゃるように、組織としては、正しい報告また正しい指示がなされなければなりません。
 今回の件につきましては、至らない点がございましたわけでございますが、それの一つ一つを真剣に教訓として受けとめて、二度とこのようなことがないように、さらに組織として整々に活動できるように、誠心誠意、機能できる組織をつくるために万全を期したいと考えています。

枝野委員 一回目なら、そういう御答弁もまあやむを得ないのかなと思うのかもしれません。しかし、例えば施設庁の調達問題、ありましたね、あのときも同じような話だったんじゃないですか。その後、何がどう改善されたんですか。同じことを繰り返す。あのときも、きちんと正しい情報が上に上がっていかなくて、結局、防衛庁長官が辞任に追い込まれていますよ。同じことをやっているじゃないですか。

 初めてだったら、実は戦後五十年間平和の中にいたので、危機対応、しっかりとやる場がなかったので、少し穴がありましたね、一回目ならまだ酌量の余地があるかもしれない。でも、ついこの間、施設庁の調達問題などで、きちんと上に情報が上がらないという問題で、防衛庁、袋だたきに遭ったばかりじゃないですか。それから何の対応したんですか。お答えになれますか。

中谷国務大臣 組織といたしましては、全力で取り組んできたわけでありますが、その間に、意思の疎通や連絡のミス等はあろうかと思います。そういった点につきまして、至らない点と受けとめまして、このようなことがないように、精強な組織をつくるように全力を挙げてまいりたい。

 また、もう一点、今回の反省でございますが、やはり情報公開の趣旨、また個人情報保護に対する認識が少なくて、それに伴って、判断や、また分析等におきまして欠けたる面があったわけでございまして、そういった点の認識を深めるということも必要だと思います。

枝野委員 到底納得できませんが、時間がなくなってきたので、もう一点。
 先ほど細野議員もお聞きをしました。せっかく四十ページもの調査報告をまとめたのに、いつの間にか四ページの紙だけしか出てこなくて、マスコミや我々が、四十ページあるはずじゃないか、出せと相当深夜まで頑張ったらようやく出てきたというプロセスについてお尋ねしたいんです。これ、四十ページのものを含めて、防衛庁は与党三党の幹事長に御説明に行かれていますが、だれのどういう判断で、幹事長、国対委員長のところに説明に行かれたんですか。

宇田川政府参考人 与党の幹事長、国対委員長に御説明に参ったのは私でございます。私は、土曜日かのときに、事務次官から、幹事長、国対委員長に説明に行くように指示を受けたところであります。

枝野委員 それは大臣は了解してやっていたんですか。大臣の指示なんですか。

中谷国務大臣 これは私も承知をいたしておりまして、そのようにいたしました。
 与党への説明につきましては、これは議院内閣制でもございますし、従来からの慣例といたしまして、国会にお諮りする前等につきましては事前に説明を行っておりますが、それも含めまして、私の指示において説明をさせたわけでございます。

枝野委員 そこがよくわからないんですよ。防衛庁という現場の実動部隊、例えば有事のときには、与党に御説明をしてその了解を得て内閣として防衛出動命令しますだなんてことは、普通は、特に緊急事態、急に、突然何かが、有事が起こったら、できないですわね。そういった場合には、総理大臣と防衛庁長官と内閣がまさに行政の責任としてきちんと責任を負っていく組織ではないかと思わないではない。しかしその一方で、議院内閣制ですから、政府が政府だけで勝手に走ったら、国会に法案を出してきても、総務大臣の別のもう一つの法律のように、与党の反対でとまったりするような話になりかねない、だから与党にも了解をとらなきゃならない。

 しかし、まさに防衛庁・自衛隊だなんという話については、指揮権が一本化をして、そのかわり指揮官が責任をとる。おかしなことがあったら、内閣総理大臣が自衛隊の最高責任者なんですから、内閣総理大臣と防衛庁長官が責任をとるという縦系列で物が動いていかなきゃいけない組織です。

 しかし、一方で与党にも説明を事前にするということはどういうことなんですか。いや、それが悪いと言っているんじゃないんです。与党に説明をするということは、与党の御了解をいただかなければ前へ進まない話ですねと御判断しているんじゃないですか。与党としては、そこで御意見をおっしゃるということは、当然政府にその意見はかなり取り入れてもらえるだろうという前提で、与党の最高責任者の皆さんが意見をおっしゃったんじゃないですか。

 それは一参考意見にすぎないということだったら、何で事前に説明に行くんですか。我々と一緒に、世間、国民と一緒に、こうやって調査がまとまりましたと発表すればいい。事前に御説明に行くということは、そこで言われた意見に従って、何か考慮しなきゃならないことがあったら考慮しようということだから、世間に発表する前に事前に持っていったんじゃないですか。どうなんですか。

中谷国務大臣 防衛庁として最終的に意思決定、判断をするのは私でございます。また、自衛隊におきましては、最高指揮官は総理大臣でありまして、総理の指示のもと、私も行動をいたしております。

 与党に説明をするというのは、参考意見の一つとして謙虚にそういった御意見を聞くということもございますが、いろいろな意見があっても、最終的に防衛庁としてどう対応するかということを決定するのは、私の防衛庁長官としての判断でございます。

枝野委員 本当に政府としてそれでいいんですか。与党に事前に御意見を伺うのは参考意見だと。それでよろしいんですね、総理。

小泉内閣総理大臣 ケース・バイ・ケースだと思いますが、政府・与党としては、緊密な連携をとりながらいろいろな問題に対応する必要があるということも大事だと思っています。

 今回の防衛庁の問題におきまして、日ごろの与党のしかるべき人に連絡、相談するのも、これは別に否定すべきことではございませんし、しかしながら、防衛庁としてどういう判断を下すかというのは、最終的に、いろいろな方々の意見を聞きながら、防衛庁として判断を下すべき問題だと思っております。

枝野委員 非常に形式的な議論としては、今のお話は筋が通っています。

 しかし、防衛庁の局長さんが、与党の、しかも防衛庁経験者でもある三幹事長、三国対委員長がそろっているところに御説明に行って、そこで意見を言われて、それと違うことで行動できるということだとしたら、それはそれでまた困ったことですよ。議院内閣制で、政府・与党で一体となってやっているはずなのに、与党の最高責任者から意見を言われたことを、役所が勝手に、それは、じゃあ無視してやっちゃいましょう、これはこれでまた困ったことですよ。

 与党と政府とで意見がずれたときには、まさに大臣がその窓口である、あるいは総理が窓口である、そこで調整するべき話なのであって、当然、官僚の皆さんベースのところで物を解決しようと思ったら、それは与党の言うとおりに従わざるを得ない。

 それなのに、私は非常に腹が立っているのは、責任を防衛庁長官だけに押しつけて、自分たちは意見を言っただけだと。形式的にはそうでしょう。しかしながら、自分たちが言った意見で、防衛庁が従った、そのことが世間から批判されたら、意見を言っただけだ。それが、しかも防衛庁長官の経験者だ。そんな無責任な態度で防衛庁に責任転嫁をする。

 中谷大臣も、新聞には悔し涙を流したという報道もありましたけれども、お気持ちの中ではいろいろ思っていらっしゃるでしょうが、防衛庁長官は政治判断できるからいい。防衛庁の現場の、あるいは自衛隊の現場の人たちからしてみれば、そんな無責任な与党なのかと。意見だけは言うだけ言って、決めたのは防衛庁なんだからおれは知らないよ、そんな与党で本当にいいと思いますか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 これは、やはり筋論は筋論でありまして、政府の中で意思決定をする、防衛庁の中で意思決定をするのは私でございます。

 与党には、この報告書の説明に行かせたわけでありまして、説明者はこの内容について説明をし、その意見や指摘を聞いて私のところに報告に来まして、この報告に従って私なりに判断をした結果、このような決定をしたわけでありまして、筋としては、私が主張しているのが筋でございます。

枝野委員 そんなことは、中谷大臣が、山崎幹事長の意向に反して行動できる、あるいは、本当は山崎さんの方が悪いんだと言えるはずないというのは、政治的にはみんなよくわかっていますよ。

 問題は、中谷大臣はそれで納得できるかもしれないけれども、自衛隊・防衛庁の皆さんがそれで納得するのか、それで本当にいいと思うのか、そんな与党のシビリアンコントロールなんかに従えるかという気持ちに、もしもなってしまったら大変なことだ。そういう大変な話だということを三幹事長はわかっているのか。

 ぜひ国会の場できちんとお聞きをしたいので、衆議院議員山崎拓君を参考人としてお呼びをいただきたい。お願いをいたします。

瓦委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

枝野委員 時間がなくなりましたので、最後に、先ほど申しましたとおり、三等海佐が問題ではない。三等海佐がこうしたことをして、なおかつそれが放置をされるということ、個人情報保護法や情報公開法についての周知がきちっとできていなかったこと、そして、事件が起こって、発覚をした後も大臣のところにしっかりと上がってこない、これは初めてではないと申し上げた。そういう状況の中での今回の処分は、本当にこれでいいんですか。

 自衛隊、大臣も制服組の御出身でいらっしゃる。上司に責任がない場合であっても、責任はおれがとるから現場はしっかりやれというようなメンタリティーが、それはいろいろな組織で求められますが、一番求められる組織が自衛隊なんじゃないですか。

 今回のように、組織全体としてこんな空気をつくってしまって、しっかりと教育もせずに情報公開の担当にした上の方にむしろ問題がある話なのに、下の方に責任を押しつけて、しかもこの程度の軽い責任で、だれもきちんとしたけじめをつけようとしない。

 ついでに申し上げますが、私も国会で質問をした会計検査院名義の文書、明白な文書偽造行為を行ったことについてのけじめも、これまたしっかりとっていない。

 むしろ、いろいろあったけれどもおれが責任をとるから、防衛庁の現場の人たちはこれから出直して、自衛隊の人たちはしっかりやるから、今回はおれが責任をとるから勘弁してくれ、そのかわりしっかりやらせる。普通は、防衛庁長官や幕僚長がそういうしっかりとしたけじめと潔さを示すから、自衛隊はしっかりとした組織として立ち直っていくきっかけになるんじゃないか。

 そのことを申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。


2002/06/24

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