2002/06/05-1

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仙台公聴会で政府への不信が噴出  (民主党ニュース)

 衆議院武力攻撃事態特別委員会は5日、審議中の有事関連法案に関する初めての地方公聴会を仙台市と鳥取市で開催した。仙台公聴会では、民主党から伊藤英成ネクスト外務・安全保障相、首藤信彦議員が出席し、8名の意見陳述者と意見を交換した。

 仙台公聴会に招かれた陳述者は、宮城県議会議員の村井嘉浩氏、木材会社社長の守屋長光氏、東北学院大学教授の遠藤恵子氏、日本郷友会宮城支部長の佐久間博信氏、会社役員の横田匡人氏、東北大学名誉教授の小田中聡樹氏、宮城県護憲平和センター理事の菅原傳氏、宮城大学教授の山本真千子氏の8名。意見陳述では、政府法案に対する賛否は分かれたが、国民への説明の不足や国民保護の規定の欠如に懸念を表明する意見が多く出された。

 民主党が推薦した遠藤氏は、(1)国民の権利をどう保障するかを抜きに「手続き論」だけが先に立っている、(2)地域住民にとって基本的権利を侵害する事態は戦争だけではない、(3)「武力攻撃のおそれ」と「予測しうる事態」の客観性をいかに担保するかが不明、(4)有事対処より日常的予防方策の検討が重要、(5)「国民の協力」の内容が不明確、などの点を挙げ、政府法案を批判した。

 陳述者への質疑では、伊藤議員が福田官房長官の非核三原則見直し発言について感想を求めたのに対し、菅原氏は「こういうことがあるから信用できない。国民の基本的人権をどう保障するのかの法律がないうちに法案を通すのは本末転倒」と語った。

 首藤議員は、ジェンダーの視点を有事法制にどのように盛り込むかについて質問。遠藤氏は、政府法案にはジェンダーの視点が「まったく入っていない」と指摘した上で、性被害からの保護や自衛隊の女性隊員の正当な処遇などをしっかり明記すべきことを主張した。


   派遣委員の宮城県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月五日(水)
二、場所
   江陽グランドホテル
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 久間 章生君
         金子 一義君   熊谷 市雄君
         伊藤 英成君   首藤 信彦君
         赤松 正雄君   中塚 一宏君
         木島日出夫君   山口わか子君
         井上 喜一君
 (2) 現地参加議員
         萩野 浩基君   鎌田さゆり君
 (3)意見陳述者
     宮城県議会議員             村井 嘉浩君
     守屋木材株式会社代表取締役社長 守屋 長光君
     東北学院大学教養学部教授      遠藤 恵子君
     日本郷友会宮城支部長         佐久間博信君
     会社役員                  横田 匡人君
     東北大学名誉教授
     専修大学法学部教授           小田中聡樹君
     宮城県護憲平和センター理事
     黒川郡護憲平和センター理事長     菅原  傳君
     宮城大学看護学部教授          山本真千子君
 (4)その他の出席者
     内閣官房内閣審議官   村田 保史君
     内閣官房内閣参事官   徳地 秀士君
     防衛庁長官官房審議官  横山 文博君
     外務省総合外交政策局安全保障政策課長     冨田 浩司君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
久間座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会派遣委員団団長の久間章生でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の金子一義君、熊谷市雄君、民主党・無所属クラブの伊藤英成君、首藤信彦君、公明党の赤松正雄君、自由党の中塚一宏君、日本共産党の木島日出夫君、社会民主党・市民連合の山口わか子君、保守党の井上喜一君、以上でございます。
 なお、現地参加議員といたしまして、自由民主党の萩野浩基君、民主党・無所属クラブの鎌田さゆり君が出席をされております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 宮城県議会議員村井嘉浩君、守屋木材株式会社代表取締役社長守屋長光君、東北学院大学教養学部教授遠藤恵子君、日本郷友会宮城支部長佐久間博信君、会社役員横田匡人君、東北大学名誉教授・専修大学法学部教授小田中聡樹君、宮城県護憲平和センター理事・黒川郡護憲平和センター理事長菅原傳君、宮城大学看護学部教授山本真千子君、以上八名の方々でございます。
 それでは、村井嘉浩君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
村井嘉浩君 村井と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、有事法制関連三法案に関する意見陳述の機会をお与えいただきましたことに、心から感謝を申し上げます。
 私は、この法案をぜひ今国会会期中に成立させていただきたいという立場で意見を述べさせていただきます。十分間という大変短い時間しか与えられておりませんので、細かい点には触れず、大きな視点で論じたいと思います。
 私は、現在地方議員ですが、その前は自衛官として一等陸尉まで国防の任についておりました。自衛隊を退職するきっかけになりましたのは、PKO法案の制定の際に、国会で極めて瑣末な議論をしていたことに大変強い憤りを感じたからでありました。政治に不満があるなら、堂々と政治を訴えることのできる立場に立ちたい、そういう思いで政治家を志したのであります。
 幸いなことに、私が自衛隊を退職してから社会情勢の変化があり、テロ特措法や周辺事態安全確保法に代表されるような法律の整備がきちっとできる環境が整ってまいりました。しかし、こうした法律は、その時点の国際情勢等の求めに応じてつくられたものであり、常に後手後手の法整備になった感は否めません。最も重大で深刻な事態である有事についての対応が、そのような後手に回った対応でよいと考える人はいないでしょう。
 幾ら情報化が進んで国と国との際が低くなり、ボーダーレス化が進んだとしても、また、EUのように通貨が統合されてほぼ自由に国をまたいで行き来できるようになったとしても、それぞれの国家が消滅しないのは、国家の最大の役割が国民の生命と財産を守るところにあり、それぞれの国民が自身の国を必要としているからであります。
 ところが、日本人は平和になれてしまい、この国によってどのように自分が守られているのかといった点に気がついていないのが現状であります。中には、今回の法律の審議を通して、一体どこの国が攻めてくるのかといった意見や、今なぜ有事法制なのかといった疑問を露呈する方までいると伺っております。
 かのクラウゼビッツは、戦争とは他の手段をもってする政治的交渉の遂行とその著書の中に書いております。つまり、話し合いで行う交渉もあれば、武力で行う交渉もまた一つの政治的手段であると論じているのです。人間が国家を形成し、運営している以上、武力で国家間の交渉を行おうとする国が将来あらわれることも十分視野に入れておかなければなりません。これは、イスラエルとパレスチナの紛争を見ても明らかでしょう。
 このように、国家の最大の役割が国民の生命と財産を守ることにあるなら、常に最悪のシナリオを想定しておくことが国家として当然の姿であり、このようなことは議論する以前の問題であります。実際、日本以外のどの先進国も、必ず国家緊急事態の条項はあります。なぜ今なのかではなく、むしろ、なぜ今までなかったのかを問題にすべきだと思います。
 今回の有事法制関連三法案、つまり、武力攻撃事態対処法案、安全保障会議設置法の改正案、自衛隊法等の改正案は、平たく言えば、戦争や危機になったとき、国民と地方公共団体、警察、消防、自衛隊など国家全体がどう連携していくかをあらかじめ定めたチームワークのルールであります。
 有事に際しては、その対応について自衛隊が中心的な役割を果たすことから、有事法制は自衛隊の行動に関する法制だけだというように受け取られがちであります。しかし、ほかにも、日米安保体制の関係から日本を防衛する米軍の行動の円滑化を確保することや、国民の生命財産を保護するための法制も有事の際には必要であり、これらの法制が相まって我が国の独立と安全を守ることができるわけであります。こうした法整備が未整備だと、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、国民の生命や財産保護などの規定がないために、国民の基本的人権がむしろ侵されることになりはしないかと私は考えております。
 有事法制は、人権と平和を守るためのものであり、それを国家が個人の人権や権利を制限したり抑圧するといった対立概念でとらえるべきではないでしょう。事実、武力攻撃事態対処法案の第三条、基本理念の中で、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記までされております。
 また、周辺諸国に対しても、日本は有事の際にはこういうプロセスでこのように武力を行使するということを明示することによって、逆にそういうとき以外は武力を使わないということを内外に宣言することになり、シビリアンコントロールのもとでの武力行使を明言している今回の法案は、周辺諸国に安心感を与えるものになると考えられます。
 最後に、地方議会に身を置く者として、有事法制における地方自治体への対応に関する私見を述べておきたいと思います。
 マスコミ等でこの点に関してはいろいろな意見が出されております。中には、武力攻撃事態対処法が、「国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要と認める場合」、地方公共団体の長等に対する内閣総理大臣の指示権を認め、これに地方公共団体が従わず実施できないときは、内閣総理大臣みずから、または関係大臣を指揮して所要の措置を実施させることができるという点に言及し、これが地方自治体が主体的に判断し対応するという地方自治の基本的な仕組みそのものを否定するものだと強く非難しております。
 しかし、三法案のうち、自衛隊法等の改正を詳しく読んでみますと、自衛隊法の改正ですが、この中には、防衛出動時、自衛隊の任務遂行上特に必要だと認められる業務、例えば医療、土木建築工事、輸送などに都道府県知事が従わなかった場合でも、都道府県知事に対し罰則は与えられないことになっておりました。武力攻撃事態対処法案における地方公共団体の長等に対する内閣総理大臣の指示権や所要の措置は、国民の生命、身体、財産の保護に特に必要がある場合で、かつ地方公共団体が従わない場合、つまり常識では考えられないような場合に限定した極めてまれなケースだと考えるべきであります。
 今後二年間で具体的な権限の行使についての法律の整備がなされるようでありますが、宮城県民の生命財産を守るためにも、具体的な拘束力のある法律を整備していただきたいと強く願うものであります。
 以上、かいつまんで私の意見を述べさせていただきました。
 こうした重要な法律が継続審議になったり廃案になれば、それこそ世界の笑い物になってしまいます。国会議員の皆様は、日本の代表だという認識を持っていただき、三法案の早期制定に取り組んでいただきたいと強くお願いを申し上げ、私の意見陳述といたします。
 御清聴ありがとうございました。
久間座長 どうもありがとうございました。
 次に、守屋長光君にお願いをいたします。
守屋長光君 ただいま御紹介いただきました守屋と申します。いわゆる有事関連法制に関して意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 三十年近い前の話でございますが、ちょうど私が学生のとき、東ヨーロッパを当時の大学教授と一緒に旅をする機会がございました。あるとき、突然バスがとめられ、今思えばですが、ワルシャワ機構軍の演習にちょうどぶつかったことがございました。見渡す限り数百台の戦車が地平線のかなたから走ってきて、道路をとめられ、大変驚いたことがあります。生まれて初めて軍事力というものを目の前に見せつけられ、力というのはこういうものであるかということを初めてまざまざと感じさせられました。今思いますと、私が防衛、軍事力というものに関していろいろ考えたという原点であったなというふうに思っております。
 先ほど御紹介いただきましたとおり、私は木材会社を経営しております。皆様からいたしますと大変奇異に感じられるかもしれませんが、今、日本の木材会社は国内よりも海外の調達の割合が大変高くなっております。私どもは物の仕入れのために多くを海外に依存し、私自身も、八万キロ以上の飛行機の旅をすることが毎年あります。
 先進国の大都会へ行くこともございます。それから、いろいろへんぴな地域の国境地帯に行くことが多い。例えば、北朝鮮そして中国の国境、カンボジア、ラオスの国境、インドネシア、ボルネオの国境、そういったところに行くことがございます。また、以前、青年会議所の活動の一環として、多くの場所にNPOとして行ったことも多々ございました。そして、そのようなときに、先ほどの力というものをひしひしと感じさせられる場面が多々ありました。
 そのような中で、日本の自衛力、防衛ということを考えさせられたことがあり、また、多くの国民が国家に期待し求めることの一つに自分たちを守ってもらうということがあり、今回はこの機会に再度自分なりに、現在の防衛が有事の際にどのように自分たち国民を守ってくれるのかということを考えますと、何かが起きる前に、ぜひこの際過去に定めた法令の見直しをし、有事に現実的に対応でき、私どもを守っていただける法整備をしていただきたいというふうに思い、今回の有事関連三法案に対しては賛成の意見を表明させていただきます。
 私は、日本は法治国家であり、そのためには、自衛隊という国家機関を法の下に動く整備をしていただきたいというふうに思います。そのための関連法案というふうに思っております。
 最後になりますが、きょうお聞きいただいております国会議員の先生方にお願いでございます。
 もし、この法案が今国会で可決されれば、その後二年間の中でいわゆる第三分類の法整備をされるそうですが、十数年前に、沖縄にあります自衛隊の資料館で沖縄の戦史についてパノラマで説明をいただいたことがありました。生まれて初めて沖縄戦というものを深く理解したつもりでおります。その際に、どうしてこんなに沖縄の皆さんが自衛隊といったものに対してアレルギーを示すのかがよくわかりました。
 批判するわけではなくて、これはお願いなんですが、武力攻撃事態の予測、おそれの違いに対する言及だけではなく、国家権力そのものがこういう軍事力につながるものだというふうに思います。この力を持った機関のコントロールをしていただけるのは国会の先生だというふうに私は思っております。この機関のコントロールを我々の代表として考えていただき、旧軍の過ちの部分を繰り返さないような法の整備を国権の最高機関として考えて施行していただくことを国民の一人としてお願いし、意見陳述とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、遠藤恵子君にお願いをいたします。
遠藤恵子君 遠藤でございます。よろしくお願いいたします。
 きょう意見を陳述させていただきますのは、一応東北学院大学教授ということでございますが、それよりは、一般の地方の住民、女性の住民として、幾つか気がついたこと、あるいは気になることを申し上げさせていただきたいと思っております。
 時間もございませんので、五点ほど意見を申し上げたいと思うんですが、その前に、まず前提として、私、今回このお役目をお引き受けしたのはつい最近なんですけれども、その際に、周りの人たちに、どうでしょうかと、気がつく限り多くの皆さんに聞いてみました。そうしたところ、ほとんど知らない人ばかりでございました。学生なんか、全然聞いたこともないというような人が大部分でございました。
 ということは、内閣の皆さんも国会議員の皆さんも、これを地域の人たちに知らせる努力を果たしてどのぐらいなさったのか。この法案を整備する意味、あるいは本当に必要なのかどうかということも含めて、その意味ですとか、それからどういう内容にしたらいいかという議論を国民の間に広く喚起してほしい、議論を喚起する努力をまずしていただきたいというふうに私は思っております。
 何となく、何か有事というのに関する法案が国会で議論されているようだけれどもどうなるんだろう、心配だ、不安だというようなのが大体の反応でございました。こういうことを前提にした上で、以下五点ほど申し上げたいと思います。
 一つは、まず、法律の整備の順序が逆じゃないのというのが第一印象でございました。
 というのは、これまでお二人の陳述人の方が申されましたとおり、私もこの点は賛成なんですけれども、国というものが持っている最も重要な機能、役割というのは、国民の基本的な人権を保障するということ、それから、その生命とか身体とか自由とか財産を保護するということ、これが最も重要な機能だということですね。それを緊急事態においてどう具体的に保護するのかということが、今回の法案で私が読ませていただいた範囲では見えておりません。
 どういうふうに保障するかという法をまず整備して、その手段としての法律がこちらになると思うんです。だから、発想が逆転しているなというのが印象なんですね。そういう方法論をまず議論しちゃって、それに縛られた形で、その範囲内で何かを考えるということではなくて、具体的な人権の保障、そういうことをまずどういうふうにやっていくかということを検討していただきたい。これは本末転倒の議論だなという感じがいたしております。
 とりわけ、緊急時において混乱が予想されるわけですけれども、そういうところで、子供の保護ですとか、それを具体的にどういうふうに方法として保護していくのかということ。それから、一応女性の立場として、こういう混乱のときに女性の基本的人権を確保するということ。この中には、性暴力の被害から保護するということも含まれております。そういうことも明確でないままに当該法案を検討するのは、考え方、発想が逆だなというふうに思っております。これが第一点です。
 第二点としましては、地域住民にとって、緊急事態というか大変な事態、あるいは人権が保障されないような事態というのは、必ずしも武力攻撃事態だけじゃないだろうというふうに思います。生命、身体、それから幸福追求の権利というのも憲法では保障されていますけれども、それが侵害されるのは、外部からの武力攻撃以外にもさまざまございます。テロですとか自然災害ですとか、多様なものがございます。
 どういうものがあるのかなということもあわせて十分議論していく必要があるだろう。それぞれによって対応の仕方や具体的な方法、避難の方法ですとか保護の方法ですとかが多少違ってくるわけですから、それらを検討するということも大きな課題だろう、こういうことを議論する前の段階の課題だろうというふうに思います。
 それから三点目としまして、これはマスコミなんかでも随分取り上げられておりますけれども、幾つか政府というか内閣の見解が示されたようですが、予測とおそれの違いがいまだにわかりにくいということ。
 予測の方が、「客観的に判断される云々」とあります。それから、おそれの方については「客観的に認められる」云々とあるのですが、客観的というのは一体だれが見て客観的か、客観性の担保をどうやってするのかということが余り問われていないように思います。
 どういう機関がこれは客観的であると判断するんでしょうか。地震予知連絡会議みたいなところが、そういう科学的な根拠をもってこれは客観的にこうですよということが、武力攻撃事態ということで果たして可能なのかどうか。内閣総理大臣が判断するのだったら、危なっかしくてしようがないというのが私の印象です。
 それから四番目としまして、緊急時に対応する日常的な予防方策を検討することの方がもっと重要だし、先決じゃないかというふうに思います。
 例えば、感染症対策。もしかしたら、武力攻撃事態というその武力で、生物化学兵器を使うという可能性もないわけではございませんね。感染症対策で、ワクチンなんかちゃんと本当に日ごろ備蓄しているんでしょうか。この間新聞報道で見ましたけれども、はしかに感染して亡くなる人数の方が副作用で亡くなる人数よりも多いというようなことがありましたし、どういう感染症があって、どういう対策、どういう備蓄がちゃんとあるのか。天然痘なんかも、もうWHOでは撲滅したという宣言がされていますけれども、そういうものが使われた場合どうするのか。その備蓄をしておくというようなこと、そういう感染症対策をするというようなことの方がよっぽど大事なんじゃないか。
 それから、避難場所を確保する。こちらの法案に避難誘導のようなことが書いてありますが、どこに避難するのか。避難の場所も確保しないで何を言っているんでしょうねというのが印象なんですね。
 それから、緊急時のインフラは通常時のインフラと違うでしょうから、そういうものも整備しておくとか、あるいは高齢者や病人の安全の確保をどうするかとか、検討すべきことは本当に山のようにあるんじゃないか。それらを検討する前に、ただ手続論みたいなことを先にやってしまうというのでは、本当に本末転倒だなという気がいたします。
 それから五番目、最後なんですが、私が一番不安に思っていることは、「国民の協力」という項目がございます。どういう協力なのか、非常に抽象的で、どの程度の協力なのか不明なために、地域住民としては非常に不安です。際限のない協力にずるずるいくというおそれはないのか。
 ここにいらっしゃる先生方あるいは今の方々は、もしかしたら冷静に判断してこういう程度ですよと思っているかもしれない。でも、法律ができちゃえば、ここにいらっしゃる先生方ですとか今の内閣がかわっても法律は生きるわけですから、今後どういう判断でその協力が際限のないものになるかということがわからない。それでは大変困るわけですから、ここまでですよ、例えば避難勧告が出たときに、それに従わないのではなくて一応避難はしましょうという程度の協力なのか、もっと深刻な協力なのか、そこら辺の線引きもきちっとしていただかないと、国民の協力と言われても困りますねというのが実感なんですね。
 それから、もし協力ができない、あるいは何らかの理由で協力しないという場合、一体国民はどういうふうになるんでしょうか。そこら辺は明記されておりません。この辺についても、非常に不安といいますか危惧を感じる次第です。
 以上のようなことで、私は、全くこの問題の専門家ではございませんで、一般の地域の住民の意見が大体こんなところだろう、私の考え方に近いんじゃないかということで意見を申し上げさせていただきました。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、佐久間博信君にお願いいたします。
佐久間博信君 佐久間でございます。
 私は、有事法制に賛成、促進を願う立場で意見を述べさせていただきます。
 委員の先生のところにこういうふうなものが行っていると思います。(図面を示す)これを机の上に出されまして、お話を聞いていただきたいと思います。
 私は、前大戦に陸軍の将校として中国大陸と南方の前線に勤務、戦後、復員しまして、戦災の甚だしい日本の復興に機械関係に勤めてまいりました。現在、戦没者を弔うため、かつて日本の領土であった太平洋の島々、サイパン、テニアン島、樺太と沖縄における軍と国民の防衛戦闘、避難、相互協力などを研究しております。
 私は、大正十一年生まれで、現在八十歳です。当時は、第一次大戦後に国際連盟が発足、日本国民の中には、もう戦争はなくなったとの風潮がありました。現在も、その当時と同じような状況でございます。このため、日本は軍隊を大きく縮小し、兵器の近代化を延期、国民の安全対策も考えられなくなりました。
 この状態で昭和の大戦に突入いたしました。兵器のおくれは精神論で、準備の不足は神に祈りまして、私たちは祖国のために戦い、多くの友が倒れました。日本は島国、他国の侵略が少なく、国土防衛の経験が官民ともになく、危機感に欠け、防衛の陣地の構築も民間の安全対策もおくれました。
 昭和十九年七月、サイパン島の防衛は崩壊し玉砕、ここで初めて政府は国民の避難を法令化し、予算を組むことになりました。このとき、沖縄も、米軍の来襲が近いとして、沖縄の第三二軍が県知事に県民の避難を要望しました。
 県は、まず小学生と六十歳以上の人々を、軍を送ってきて帰る船で本土と台湾に避難させ、さらに、沖縄北部へ避難家屋の建設のため、本省に予算を申請しました。予算がつきましたのがその年の十二月、家ができましたのが二十年の一月から三月末で、米軍上陸の直前でした。このため、多くの住民が避難できず、軍と行動をともにし、無惨な結果となりました。沖縄戦戦没者は十八万八千百三十六名、このうち県民は、ひめゆり部隊等の軍属を含め十二万二千人、全戦没者の六一・五%、軍人よりも多かったわけでございます。
 当時も今も、有事における国民の安全維持の法規、法令が少なく、官公庁に権限移譲の規定と習慣が余りありません。
 昭和二十年五月、ドイツが降伏、日本政府は満州と樺太に、ソ連侵攻の予告と避難の必要を文書で通告しました。しかし、具体的な対策に欠け、いずれも一般国民が大きな被害を受けたのであります。
 大戦後、世界は、民間の戦争被害を防ぐため、一九四九年、昭和二十四年八月、ジュネーブ条約をつくり、日本も昭和二十八年加入、同年七月国会で承認されております。
 今ごらんいただいておりますのは条約で制定された国際記章で、避難所の標示や民間防衛職員の記章に使用しております。この記章は、追加議定書六十六条にあります。日本は、この一九七七年、昭和五十二年の協定にまだ参加しておりません。いわゆる戦争におきますときの避難所の標識、これは、日本語で書いても、来た方はわかりません。
 今審議されております有事法制は、日本と国民を守る入り口であります。早急に成立を進めていただき、国際的におくれている防衛の諸法規、特に民間防衛と言われる国民の安全に関する法規と組織を進めるようにお願いを申し上げ、私の説明といたします。
 この標識の参考のための民間防衛の資料は、先生方のお手元に行っております。お忙しいと思いますので、多分、重要なところには赤い線が引いてあります。先ほども申し上げましたように、万一の場合、果たしてこういう標識が日本にあるのか。実は、この標識はきのうつくりました。私がつくったわけでございます。ぜひ、万が一、本当に万が一のときのために、国民の安全を守れるように、有事法制の促進を心からお願いします。
 以上でございます。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、横田匡人君にお願いをいたします。
横田匡人君 本日、こうした機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。新しい時代の責任世代の一人として、大変未熟ながら、このたびのいわゆる有事関連三法案並びに自由党提案の安全保障基本法案、同じく非常事態対処基本法案などについて、今国会で現在審議をされております国の危機管理、非常事態への対処について、私なりの意見を述べさせていただきます。
 まず、基本的な認識として、国の最も重要な責務は国民の生活の安全の確保であり、国民の生命と財産、自由と人権を守ることにあることは言うまでもなく、有事法制は、我が国の安全をどのように確保していくかを具体的に整備をする意味で当然必要な法制であると考えます。
 しかし、残念なことに、今までの国会では、長い間、いわゆる五五年体制のもと、戦争か平和か、また自衛隊は違憲か合憲かなどといった議論ばかりが延々と繰り返され、その結果、日本の安全保障はいつもあいまいな憲法解釈により、現在もなおその原則というものが確立されておりません。
 私は、まず初めに、今回国の有事を法制する場合、その最も基本として、今までどこかうやむやにしてきた憲法解釈を政府としてはっきり確定をし、安全保障の原則を確立させた上で有事法制の議論を行っていただきたいと切に願っております。
 昨年のアメリカでのテロ事件の際にも、後方支援だからいいんだという議論から、アメリカの自衛権に対して無原則に自衛隊を海外まで派遣してしまいました。この行動は、まさに集団的自衛権の行使であり、重大な誤りであったと考えます。
 そうした意味からも、自由党から提案がありました安全保障基本法案は、有事法制の大前提として大変重要な理念であり、安全保障の原則や自衛隊の行動原則を明確に表示することで、日本政府への理解と信頼を国内はもとより国際社会からもいただけるものと思います。
 何をおいても、国民からの信頼なしには成り立たないものと考えます。ここで、仮に今回もそうした議論をなおざりにしたまま、なし崩し的に有事法制をしいても、国民からは、政府や自衛隊の行動などが無原則に拡大することへのおそれを招き、法制に対する理解も、また協力もいただきにくくなるものと思います。
 次に、有事の概念のあり方、とらえ方として、政府が示した案では戦闘機や艦船を使っての武力攻撃事態を想定しておりますが、昨年九・一一、アメリカでの民間航空機を使用した大規模テロ攻撃など、今後予想される国の非常事態は、いかなる手段をもって引き起こされるか、考え得るすべての事態を想定しなければいけないと思います。
 さらに、戦闘行為や国家テロ以外にも、国民生活に大きな打撃を与え得る大規模自然災害、また、食糧・エネルギー危機、ネット機能を悪用した大規模なサイバーテロなどによる騒乱など、通常の既存の危機管理体制では対処できない事態をもこの際非常事態と認定するよう、有事の概念を再度、時間をかけてあらゆる角度から十分に検討をいただきたいと思います。
 また、そのようなさまざまな形で起こり得る非常事態時に、この法制の最大の目的である国民保護のためどのような具体的な対処が行われるか、明記されなければならないと考えます。
 国民保護のため、限定をする形で一時的に国民生活の一部を統制することが必要かと思われます。そうした項目が示されないままでは、むしろ、万が一起きてしまった非常事態に加え、連鎖的に国内に大パニックが発生しないとも言えないと考えるからです。
 また、非常事態によっては緊急対応を要することが予想されますが、政府案では、武力攻撃事態に至ったとき、基本方針を決定し対策本部を設置するとだけなっておりますが、どうか、有事が発生してから方針をつくり、決定をし、そのまた後に対策本部を設置といったぐあいに不要な時間をかけずに対処ができるよう、例えば、自由党案のように、内閣にあらかじめ常設の非常事態対処会議なるものを設置しておくことが望ましいと考えます。
 私たち一般の国民は、日々の生活や仕事に追われる毎日の中、国家の非常事態を考えることは大変重要なこととはどこかで認識しながらも、なかなか深く考え、かつまた話し合うといったところまでには至らない現状があろうかと思います。それゆえ、何とぞ国政を担う皆様に、真の国民の立場に立った国民保護のため、慎重な議論としっかりとした有事法制の整備を期待するものでございます。
 残念ながら、最近の報道を聞きますと、この法案を所管する省庁でもある防衛庁においての例の問題を初め、国民の不信を招く内容のものが政府には多過ぎると思います。一体どこを向いて政治をしているのかと言わざるを得ません。現在の内閣が発足の際、国民が与えた八割を超えた異常とも言えるあの高い支持率は、実は真に国民のための政治をやってくれという悲鳴だったのではないかと考えております。
 最後になりますが、国家国民にとって最も重要な課題とも言えるこの有事法制だけに、具体的で現実に即したしっかりとした法案をつくっていただき、一日も早く整備されることを心から念願をして、私の意見といたします。
 ありがとうございました。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、小田中聡樹君にお願いをいたします。
小田中聡樹君 お配りいたしました意見陳述項目に沿って意見を述べたいと思います。
 現在、有事法案は、継続審議ないし廃案の方向に向かっているとも伝えられています。この重大な局面に当たって地方公聴会において意見陳述をすることが一定の意味を持つためには、委員の皆さんが法案及びその審議を白紙の状態に戻し、有事立法の要否、当否、その憲法適合性について根本的に検討し直す姿勢を持たれることが大前提として存在しなければなりません。この点を強く期待しながら、憲法、歴史、現実の三つの視点から、今回の有事立法についての意見を陳述したいと思います。
 まず、憲法の視点から指摘すべきことは、有事法案が武力主義的発想と本質とを持っているということであります。
 単なるおそれや予測の段階をも含む武力攻撃事態なるものを設定し、武力行使でもってこれに対応すべく挙国一致の体制づくりを図る有事法案は、武力攻撃には武力攻撃をという武力主義的発想と本質で貫かれていると思います。
 しかし、憲法は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」して、戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力不保持と交戦権否認とを定め、武力主義的な対応をはっきりと否定しています。この点で、有事法案は既に違憲との批判を免れません。
 第二に指摘すべきは、有事法案が周辺事態法と相まって攻撃的な日米共同武力行使システムをつくり上げている点であります。
 有事法案は、単に我が国の領域内の一般国民に対し武力攻撃が現実に加えられ、被害が発生した場合だけではなくて、公海や他国の領域内で周辺事態法に基づき後方支援活動を展開する自衛隊に対して、武力攻撃が実行ないし予測される場合をも武力攻撃事態としてとらえ、これに日米が共同で武力対処するシステムを用意しているからであります。
 このシステムは、憲法が採用する集団的自衛権否認の法理、原則に反するものでありますが、それに加えて指摘すべきは、その攻撃的な性格であります。予測の段階で武力行使の態勢を組み、相手方の攻撃着手と同時に武力行使に移るのを認めることは、自衛隊に先制攻撃に出ることすら認めることに事実上は限りなく近づくからであります。
 しかも、おそれや予測についての客観的な判断基準は用意されていません。一方的な軍事情報に基づき、恣意的な判断が行われる危険が極めて大であります。
 第三に指摘すべきは、有事法案は首相に非常権限を集中して独裁的なシステムをつくり上げており、これによって議会制民主主義が形骸化することであります。
 特に問題なのは、有事法案により防衛出動の国会事前承認の原則性が崩され、首相が緊急の必要ありと認めさえすれば、国会の承認なしに自由に防衛出動できることであります。
 また、地方公共団体に対し、首相は指示権や直接的な実施権を持ちますが、これは地方自治の原則を無視するものであります。
 第四に指摘すべきは、有事法案の反人権性であります。
 自衛隊及び在日米軍の行動の円滑化、効率化、自由化のために、国民生活に関連する広い分野で市民的自由や権利を制限し、物資保管命令違反などに対する刑罰さえも用意し、国民に協力を強制しているのであります。
 しかも、法案は、今後この制限を拡大強化することをうたっております。そして、社会秩序の維持のための取り締まり強化さえももくろんでおります。その反人権性は明らかだと私は思います。
 次に、歴史の観点から述べたいと思います。
 私たちは、近い過去に、自衛の名のもとにアジア諸国に対する侵略戦争を行い、多数の民衆に対して大きな被害を与えると同時に、みずからも核兵器の被害をこうむるなど、大変悲惨、苛烈な戦争体験を持っております。
 この体験を通じて私たちが学んだ歴史の教訓の第一は、自衛戦争なるものの虚構性であります。第二は、挙国一致体制の凶暴なファシズム性と人権抑圧性であります。
 この歴史の教訓に立脚し、日本国憲法は、前に述べましたように、戦争放棄を定めました。そして、それとともに、国家緊急権に関する規定を置くことを拒むことによって、有事立法否定の原則と思想を表明したのであります。
 このような戦争体験と歴史の教訓、そして憲法の有事立法否定の原則と思想に深く学ぶとき、今回の有事法案の持つ危険な本質と実体は明らかであります。あしき歴史を絶対に繰り返してはなりません。
 次に、現実的観点から有事法案の問題点を考えてみたいと思います。
 第一に指摘すべきは、有事立法の前提となるべき武力攻撃発生の現実的リアリティーが欠如していることであります。
 その証拠に、一体どこの国がどのような意図、目的で我が国に武力攻撃を加えようとしているというのか、その蓋然性が果たしてどれほどあるのか、貴委員会の議事録をつぶさに読んでみても一向に明らかではありません。
 それと同時に、武力攻撃事態、とりわけ予測事態が日米の軍事戦略に基づいて意図的、作為的につくり出される現実的危険が大きいこと、有事立法は国民をこの危険に積極的に巻き込んでいくという恐るべき役割を果たすことを強く指摘したいと思います。
 第二に指摘すべきは、有事立法が、日本の軍事戦略や軍事行動に対する世界各国、とりわけアジア、中近東諸国の警戒心を高め、国際緊張を激化させる危険があるということであります。
 第三に指摘すべきは、常に有事に備える平時の有事化、非常時化で、これは、政治、外交のみならず、経済、労働、教育、文化を初めとするあらゆる生活分野に軍事の論理の浸透と横行を許して、国民を警戒、監視、統制、動員するシステムを拡大強化し、人権制限を日常的レベルでも体制化、システム化していくことであります。
 この状況は、人権と民主主義の危機というべきものであります。この危機的状況の一端をかいま見させているのが、昨今問題化している防衛庁個人情報リスト作成事件であります。
 このようにして有事立法がつくり出すのは、戦争の危険であり、人権と民主主義の危機であります。決して国民生活の平和と安全ではありません。そうだとすれば、私たちが選択すべきは有事立法ではありません。平和、民主、人権、福祉の憲法的理念に立脚する積極的な平和保障政策にこそ、現実的有効性と有用性があると私は考えるものであります。
 有事三法案は違憲であり、不要、有害であります。有事立法か憲法か、この歴史的な岐路に立ち、国会が大局的な見地に立って賢明に対処し、この有事法案を廃案とするよう強く望むものであります。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、菅原傳君にお願いをいたします。
菅原傳君 私は、国会での有事法制をめぐる論戦を聞きながら、かつて五十数年前の戦争中のことを思い出し、嫌な時代がやってきたなと思っている一人であります。
 当時、私は国民学校の教師でありました。国策に沿って子供たちに忠君愛国を教え、日本の勝利を信じて頑張ろうと説きました。しかし、一九四五年八月十五日、日本政府はポツダム宣言を受諾して戦いに敗れました。何年かぶりでの明るい電灯の下での暮らし、日夜を問わず鳴り響くサイレンの警報もなく、静かな世界が戻り、ほっとした安堵感に浸ったことを覚えております。平和のありがたさを感じたことでありました。
 二学期が始まり登校してきた子供たちに、教師たちは敗戦を説明し、教えたことの矛盾を恥じ入り、わびなければなりませんでした。子供たちの心にはどう響いたのでしょうか。
 敗戦の結果残ったものは、広島、長崎の惨禍であり、B29の爆撃で瓦れきと化した多くの都市であり、親を失ったたくさんの孤児であり、餓死寸前の食糧難でありました。この状況は、現在のアフガンの爆撃で町を破壊され茫然としている人々の姿と二重写しに見えてまいります。戦争はすべてを破壊し、得るものは何一つありません。
 私たち教師は、敗戦の虚脱状態から立ち上がり、教育の中心に平和を据えて戦後の教育復興に取り組んでまいりました。教え子を再び戦場に送るまいと誓った教育でありました。時あたかも日本国憲法と教育基本法が相次いで制定され、新生日本の道しるべとして、大きな光と勇気を与えてくれました。
 今、有事法制の論議を聞きながら、時代の逆流を思わせる動きに、戦争はもう真っ平御免という気持ちと平和こそ宝という思いがますます強まっております。
 新しい日本国憲法のもと、日本は、戦後一度も戦争に巻き込まれることなく現在まで参りました。これはまさしく、憲法九条が大きな抑止力となってきたことを明らかにしております。
 私は、有事法制三法案に一通り目を通しましたが、疑問点がいっぱいあります。有事とは自衛隊用語では戦争のことを指しているそうですが、なぜ今戦争の三法案なのか、理解がなかなかできません。冷戦時代は当時のソ連が仮想敵国とされていましたが、ソ連崩壊後はそのようなものは存在しておりません。
 近隣諸国で、日本に武力攻撃をかけてくる国は一体あるのでしょうか。もしこのような事態が起こるとすれば、それは、アメリカが日本の周辺で軍事介入戦争を起こし、その反撃が出てくる場合が考えられます。これはアメリカとその国の有事事態であって、自衛隊が支援行動をすることは憲法で禁じている集団自衛権の発動となり、違反となります。国会の論議では、自衛隊とアメリカ軍との軍事共同行動が不明確であるというふうに思います。
 仮に日本国土内の戦闘となった場合、沖縄の地上戦のように、狭い国土での被害は甚大なものになると思います。私は米軍実弾演習場の王城寺原の近くに住んでおりますが、付近の住民の皆さんと話をしますと、やがて有事法制の関係で戦場になるのではないかというふうな心配の声も出始めております。
 今、米国の一国主義的突出が批判されております。各国は、米国の対テロ戦にこれ以上つき合うと大変なことになると気づき始めて、慎重になってきております。ところが、日本は一周おくれで世界を追いかけており、その感覚が問われております。米国に追随することなく、主権国家としてしっかりした是非の対応を示す必要があるのではないでしょうか。
 自衛隊法改正の百三条は、病院、土地、家屋の管理、医療、土木、輸送の協力と命令を打ち出しておりますけれども、憲法で保障されている国民の権利を奪うものであり、従わない場合に懲役や罰金を科すやり方は、戦前の国民精神総動員法を思わせる悪法と思います。
 このような国民に余りなじまない法案についての世論調査では、朝日の五月二十一日調査で、法案の内容を「あまり知らない」五一%、「全く知らない」一三%、合わせて六四%であります。共同通信五月一日調査で、今国会で「成立させるべきだ」は三九%、「成立させるべきではない」が四七%で、否定派が上回っております。さらに、共同通信社が行った各県知事のアンケートでも、半数以上の三十四人の知事が賛否を保留し、審議を慎重にと求めております。国会の審議時間も少なく、法案では国民の生命財産の保護については何ら触れられておりません。
 しかも、最近、防衛庁・自衛隊で、情報公開請求者の思想などを調べる組織ぐるみの事件が発覚をいたしました。加えて、福田官房長官が、憲法上は核兵器も保有できるとして、国是である非核三原則の見直しを言明し、広島、長崎を初め国内外から強い反発と批判が沸き起こっております。
 この二つの出来事は底流で有事法制と結びついているのではないかと国民の不安が深まっております。小泉首相は、備えあれば憂いなしと力説をされておりますけれども、軍事のための備えは、近隣諸国に脅威を与え、警戒感を募らせるばかりであります。
 二十世紀は戦争の時代でしたが、二十一世紀は人類平和の時代にしたいものであります。戦争のための有事法案を考えるよりも、いかにして戦争を起こさないかを考えることが二十一世紀の私たちの知恵ではないでしょうか。そのためには、まず、アジア近隣諸国と平和保障機構をつくり、平和、経済、文化などの交流を一層深めるとともに、国連の機能を強化して紛争解決を図るよう、日本政府もその役割を積極的に進めるべきだと考えます。
 政府は、改めて憲法九条の高い理念を大切にし、戦前の誤りを繰り返すことなく、世界に向けて勇気ある行動を展開してほしいと考えます。したがいまして、有事法制法案は速やかに撤回されるよう要望しまして、私の発言を終わります。
久間座長 ありがとうございました。
 次に、山本真千子君にお願いをいたします。
山本真千子君 私は、今回の三法案につきまして、一国民として、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
 まず初めに申し上げたいのは、一九九五年の阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、九九年の茨城県の東海村の原子力臨界事故などさまざまな災害に対しまして自衛隊が大きな役割を果たしてきたことにより、国民の自衛隊に対する期待はますます大きくなっていると感じております。
 特に、九五年の地下鉄サリン事件では、この事件の被害者の初期治療を担当いたしました病院で実際の治療に当たった私の友人から聞いた話でありますが、国として強力なリーダーシップが欠如していた中で病院自身があれほどの対応ができたことは奇跡であり、偶然とも言えるとのことでした。あのような事態には、国としての強力なリーダーシップのもと、事に当たることが重要であると痛感したということでした。
 今回提出されております法律案は、災害よりもさらに悲惨な状況が考えられる有事におきまして、国の存亡をかけて、国の強いリーダーシップのもと、対応をとるための態勢を整えるものであります。このような仕組みがあって初めて、有事という事態に際して国全体としてきちんとした対応がとれるのだと考えております。したがいまして、私といたしましては、これらの法律案の整備は当然必要であると考えております。
 新聞などの報道によりますと、現在は、冷戦も終わって、世界的な規模の戦争が起こる可能性はないのではないかと言われています。しかし、一方で、昨年九月十一日には、私たちのだれもが想像もしなかったような事態が米国で発生し、たくさんのとうとい犠牲が払われました。また、新聞などでは、インド、パキスタンの領土問題など連日のように報道がなされており、冷戦が終わったといっても決して安心できるものではないと感じております。日本の周辺においても、たびたび出没する不審船のニュースなどを聞きますと、我々の周りにも危険はあるのだなということを感じております。
 まず、武力攻撃事態対処法案についてですが、まさに有事における我が国の対応に関する基本的なことを定めたものであり、これにより我が国の有事対応はしっかりとしたものになると考えられます。また、この法律は、有事への対処に関して、国民を保護するために必要となる法律などを二年以内を目標に整備することを定めております。細部にわたっては国民的な議論を十分に経てつくり上げていかなければならないことであり、全体像を示す今回の法律案を早急に成立させることが肝要かと思います。
 次に、自衛隊法などの改正法案についてですが、これは有事において国民の生命財産を守る自衛隊の行動を円滑にするためのものです。やはり、有事において私たちの生命財産を直接的に守ってくれるのはほかならぬ自衛隊なのでありますから、これが円滑に動けないようでは論外と言えます。ただし、自衛隊を円滑に動かすための法律についてもまだ今後整備する部分があると言われておりますので、この部分は滞りなく二年以内に整備し、国民の安全確保をより十分なものとしていただくこととし、法律案を早急に成立させることを望みます。
 最後に、安全保障会議設置法改正案についてですが、これは有事の安全保障会議の役割を明確化し強化するものであり、特に問題であるというふうには私は考えておりません。
 以上が今回国会に提出されております三つの法律案に対する私の意見であり、速やかな成立を望んでおります。
 私ども国民の生命と財産を守ることは政治の最低限の責務であり、有事や大地震などの自然災害から国民を守る危機管理に強い政府は、私どもの理想と言えます。敗戦以来、私自身は戦争を知らない子供たちの一人でありますが、我が国には有事法制が整備されておりませんので、有事に至った場合、国民の生命財産を守るためには超法規的な行動を余儀なくされる状態にあります。したがって、今回、武力攻撃事態対処法案等の法案が提出され、法治国家として当然の民主的手続を経て有事に対応できる態勢を築くに至ったことは喜ぶべきこととも思っております。
 多くの国民は、このような事態への対応に関する法制の必要性を認識しております。今後、国民の安全確保のための法制など個別法制の整備に当たっては、国民に十分な情報提供を行い、国民一人一人がみずから国を守るという意識を持てるよう配慮しながら法律の整備を行っていただくよう強く要望いたします。
 以上です。
久間座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
久間座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。
金子(一)委員 自民党の金子一義でございます。
 きょうは、意見陳述人の皆様方、決して防衛関係専門家だとは思いませんけれども、にもかかわらず本当によく勉強されたと言ったら失礼でございますけれども、御理解をいただいて、そして、一方で幅広い皆様方からの御意見も伺っていただいた上できょうこうしていろいろな御意見をお述べいただいた、本当に頭が下がる思いでございます。
 自民党の中にも国防族という防衛をずうっとやっているグループもあるのでありますけれども、私は、こういう防衛を長くやっているわけでは決してありません。しかし、今回皆様方の御意見をお伺いして、本当に高いレベルでの御意見を伺わせていただくことができたと思って感謝しております。
 さて、村井さんからお話が出ました、なぜ今こういう有事法制かということでは、そんなことを言っているのじゃなくて、どうして今までこれができなかったんだということを問うべきだという御意見がまずありましたけれども、村井さんは自衛隊にもおられた経験がある。この点について、なぜできなかったのか。三矢研究等々、ずっと長い歴史がありましたね。何かちょっとポイントを一言おっしゃってください。
村井嘉浩君 やはり、五五年体制の政治体制がずっと続いてきた、それでこの問題がずっとタブー視されてきたというのが最大の理由だというふうに思います。
金子(一)委員 私たちも、政治家の責任として、これまでに議論ができなかった、しかし昨年のニューヨークのテロ、不審船、また東南アジア、アジアにおけるいろいろな事象、状況、こういうところからようやく議論ができるようになってきたという意味で、今法案を通させていただこうという状況になってきたと思っております。
 さっき、小田中さんだったでしょうか、廃案を前提にしてこの公聴会にあなた方は臨んでいるんだろうとちょっとおっしゃられたかと思うんですけれども、全くそうではありませんで、必ずこの法案を通していきたいという気持ちで公聴会に臨ませていただいておりますし、そのために皆様方からもいろいろな御意見を伺いたいし、そして私たちの思いも地方で、全国各地で伝えさせていただきたい、そういう気持ちで改めて私たちの姿勢を述べさせていただいたところであります。
 そこで、もう一つどうしても議論が出てきますのは、この法案は骨格である、したがって、遠藤さんからも御意見が出ました、国会でも出ております、国民の生命と財産を守るのが先ではないか、順序が逆ではないかと。
 これについて、いわば国の役割は防衛、地方自治体の役割というのは、今度は責務として、国民の生命財産を守っていく、避難をさせる、警報を鳴らすとかその他いっぱいありますけれども、この役割を担っていただく。このことというのが、ひょっとすると国民、住民の権利と自由というのをあるいは抑制する部分が出てくるかもしれない。しかしそこは、今遠藤さんは、そういうのがすべてわからないと、協力しろといったってできないとおっしゃられたんですが、これから具体的に法律の中で議論していくんです。
 つまり、避難が出てきます、そのときも法律をつくるんです。一つ一つ法律を丁寧につくっていって、そして、この場合にはあるいは協力、あるいは自由が制限される可能性がありますという部分が法律になってくるので、そのときに議論になってくると思うんですけれども、村井さんは今県議会の立場でもあるものですから、こういう部分がないと今度の法律は通すべきでないという御意見に対しての意見をぜひ伺わせてください。
村井嘉浩君 今の御質問に対するお答えですけれども、この武力攻撃事態対処法案につきましては、前半が基本法で、その後がプログラム法になっております。自由党の方から出ている法案も読ませていただきましたけれども、基本的には基本法の前半に非常に似たような内容でございました。
 法律というのは、まず最初に骨格をしっかりつくって、そこから枝葉をつけていくというのが大前提であります。いろいろな防衛関連の法律も、最初から制定されていたわけではなくて、逐次修正、改正を加えて成り立ってきたわけでありますので、まず骨格法をつくるというのはやはり何よりも最優先で、大前提だというふうに思います。時期的に三原防衛庁長官がこの問題の研究を始めてからもう二十五年以上たっているわけでございますので、この法律をこの国会で通すというのは全く理にかなったことだというふうに考えております。
 したがって、まず基本法を先に通して、その後二年ぐらいかけてしっかりとその他の法律を整備する、それが一番ベストだというふうに思います。
金子(一)委員 遠藤さんにも聞かないとフェアではないものですから、この点に関してぜひお願いいたします。
遠藤恵子君 今回の法律は、基本法とそれからプログラム法とおっしゃいましたけれども、どうもプログラムの方に非常に偏っているというふうに私には思えます。
 プログラムがあるのは、目的があるからプログラムがあるのであって、その目的が定まっていないのに、率直に言いますと、どんなふうに国民の権利を守るかということが決まっていないのに自衛隊員の給料の話が出てくるというのは、大変奇異な感じがいたします。
金子(一)委員 この法案で一番大事なのは、いかにシビリアンコントロールを守っていくか、ここがやはり一番大事な点だと思うんです。
 守屋さん、ポーランドの戦車、非常に膨大な軍備で、いかに国家権力の行使というのが怖いかというお話をされた中で、したがって武力の予測とかおそれとかの解釈をいかに客観的に容認していくかという仕組みが大事だよということをさっきお述べになられました。これについてもう少し何か御主張されたいことがあるのかなと思ってお伺いしていたんですが、いかがでしょうか。
守屋長光君 ちょっと生意気な言い方かもしれませんが、私は一経済人でして、余り上手な表現はできませんが、例えば、今いろいろな経済的な危機が言われている。この会社と取引をしたらどうなるかなというふうに思うことが多々あります。そのときに、私自身の考えですが、今同じような予測、おそれという分類をもししながらいくとしたら、それは私らの方がよくわかっています。これをほかの人たちがもし言ったとしても、どういう仕組みでそのところが崩壊していくのかなというところはやはりよくわかるのです。
 今回、勉強するために、いろいろ国会の方にお願いしたりして、資料をちょうだいしたり新聞の切り抜きとかいろいろなものを見させていただきました。討議されている中で、予測とおそれということに関しては随分言われています。
 ただ、僕も遠藤先生と同じで、周りの友人たちたくさんに聞いてみました。みんなが一番聞きたいのは、そのときにどうやって僕たちを守ってくれるのかということを一番論議してほしいんだ、それから、過去の過ちみたいに、要するに一部の暴走をどうやってとめるのかというところを一番聞いておきたいねというふうな話で、論議の中でぜひそういうことを僕ら国民にもわかるように示していただければなと、私自身もそのように思うということで、そういうふうな表現をさせていただきました。
 ありがとうございました。
金子(一)委員 重ねてちょっと。
 今まさに御指摘されたとおり、どうやって守ってくれるんだ、それから後段で、だれがそこを決断してくれるんだとおっしゃいましたね。つまり、武力攻撃という、守りに入るときの仕組みの問題と決定権者の問題なんですね。これを今この法案の中ではいわば事前承認という仕組みでやっているのでありますけれども、これについて、もし意見があればおっしゃっていただけませんか。
守屋長光君 第三分類というところが今後二年間の中で決められるというふうになりました。その決定権者、それ以降の第三分類にかかわる部分で、どのように保護していただけるかというところも実はやはりみんなが関心があるところでして、そこがどういうふうに決まっていくのかな、今からだと言われていますので、そこを今後の中でよく示していただきたい。
 それで、今の一番の御質問ですが、いわゆる制服組だけじゃなく、シビリアンコントロールとは言われます。昔も、天皇が最高権を持っていたはずです。しかし、結果的にはあのようになりました。そこを、コントロールできない形ではなく、本当にコントロールできる、そのようなところを決めていただけたらなというふうな、これは我々のお願いです。
金子(一)委員 わかりました。
 山本さん、ちょっと飛んで恐縮でございますけれども、今の点なんです。シビリアンコントロールの件なんですが、先ほどちょっと遠藤さんから、そういう客観性の担保、つまり、武力攻撃された、したがってそれに反撃しなければいけないという客観性の根拠が担保されていないじゃないか、だれが担保するんだ、地震予知会みたいなのが決めるのかというお話があった。内閣が決めるんじゃ危ういというお話があった。
 これは、私たちにとりましては、やはり国会というのは信頼されていないな、内閣というのも信頼されていないなという厳しい御意見としてあえて受けとめさせていただきますけれども、内閣が決めて、そしてそれを国会が承認をしていく。したがって、あくまでも制服、軍人さんがこうだと決めるのではなくて、国民の代表である我々が決めさせていただくという仕組みに今なっているのでありますが、これについて、今のシビリアンコントロールという観点との関係で、御意見がありましたらぜひ伺わせてください。
山本真千子君 私も専門家ではございませんので、明確な答えになるかどうかわかりませんが、遠藤先生のおっしゃられた担保というのが、こういった際には一体何であればいいのかということが今の私にとっては不明な点でございます。そして、その決定という段で、国会及び内閣の判断というものがもし信頼できなければ、では何をもってそれを遂行すればいいのかということは、ほかに探すすべがございませんので、そういった意味で、私自身は、基本理念というものを先にとにかく決めていただいて、そこから具体的な細部にわたる細則について検討していただきたいというふうに思っている次第です。
金子(一)委員 遠藤先生からも、この点についてのみちょっとお願いいたします。
遠藤恵子君 先ほど申し上げましたのは、これについての議論が非常に不足だという意味で申し上げました。ですから、小田中先生もおっしゃいましたように、場合によっては内閣に非常に権限が集中して暴走しないという保証はない、それをどういうふうに国会の方できちっとやっていくかということももっともっと議論が必要だ、そういうことでございます。
金子(一)委員 わかりました。
 横田さん、先ほど御意見を伺っておりましたけれども、横田さんの御意見でいきますと、集団的自衛権を認めるという前提での案になるということをサジェストしているように聞こえるんですよ。今、憲法九条の解釈は、自衛権の解釈で集団的自衛権は認めていない。自由党の案というのは、集団的自衛権を認めるという前提に立っているんです。
 私自身は、時の内閣がこういう大事なことを解釈でもって運用していくというのはかえって危険だ、国民の信頼を必ず失うと思っているんです。やるとすれば、憲法改正でやるべきだと思っているんです。
 したがいまして、今提起いただいているように、この問題とは別にして、こういう集団的自衛権まで認めていこうという議論が行われるようになったということは、今までは有事と同じようになかなか議論すらできなかった問題が、ようやく国民の間で議論する、国会でも議論することがタブーでなくなってきたという意味で、私自身は、賛成、反対は別といたしまして、大変いいことであると思っているのでありますが、その点について御意見をいただきたいと思います。
横田匡人君 私も、考え方としては、やはり憲法をきちんと変えて、そういった部分をきちんと明文化するのがいいと思います。
 ただ、今現在そういった状態にありませんので、全部の法案を見させていただいたときに、自由党が示した案は、具体的に自衛隊の行動をこういうふうにしましょう、こういう動き方をさせましょう、あるいは安全保障についてもこういう考え方でやりましょうというのをたしか三原則ぐらい項目を切って記してあったんですが、こういったきちんとした認識を有事法制を行う場合に同時に話し合いをしないと、結果的には、法律はできたけれども、本当に万が一の事態が起こったときにはまた憲法の解釈だ云々だということで、非常に我々国民にはわかりづらい形になってしまうような気がします。
金子(一)委員 冒頭に申し上げましたように、国民の皆様方に少しでも理解をいただいて、そして、今回のこの骨格法あるいは理念法でありますけれども、今国会中に何とか通していきたい、御理解をそのためにも少しでも得られるようにしていきたいということが我々の立場であります。
 最後に、村井陳述人、この法案が通らないと海外から非常にいろいろ疑問視されるよというお話がありました。それを含めて、今度の法案に対していろいろな意見が出ておりますけれども、もう一度ポイント、おっしゃりたいことをどうぞおっしゃってください。
村井嘉浩君 これだけ重要な法案で、かつ諸外国、先進国ですべて憲法等で規定をされているこの法律が、唯一日本だけがないわけです。これだけの重要な法案が、これだけ時間をかけて研究され、そして国会で議論されていて、それで廃案なりあるいは継続審議ということになれば、日本はやはりその程度の国なのだというふうに恐らく周りの諸外国は思うのではないかというふうに私は大変危惧しております。ぜひとも、何としてもこの国会内に通していただけるように、金子先生、よろしくお願いを申し上げます。
 以上です。
金子(一)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 本日は、意見陳述者の皆さん方には、本当にお忙しいところ、しかも貴重な意見をそれぞれいただきまして、ありがとうございました。民主党からは、きょう、私とそれから向こうに座っております首藤委員と二人で質問させていただきますが、最初に私から少しお伺いしたいと思うのです。
 まず、守屋さんにお伺いしましょうか。
 先ほど、隣の遠藤さんから五点言われて、その前提としてと言われたことなんですが、いろいろな方に今回の法案について聞いてくださったそうですが、ほとんどの人が知らない、したがって、中身もほとんどの人がよくわからないというお話がありました。
 これは実は大変なことで、実は、今回の法案そのものも非常に難しい、複雑なつくり方をしていると私は思うんですね。多分、自衛隊法を物すごくしっかりとわかっている人でないとほとんどわからないという法律じゃないかと思うんですよ。だから、余計に、もしもこの法律案のことについて若干存在がわかったとしても、なかなか中身もよくわからない、こういうことだと思うのです。
 それで、守屋さんにお伺いするのですけれども、こういういわゆる有事法制を日本でちゃんとやるとしても、国民みんながよく理解したものでないと、コンセンサスの得られたものでないと本当に生きないわけですよね。そんな意味で、今の状況の中で、しっかり審議はしなきゃいけないんだけれども早くつくらなきゃいけない、そういうことはあるかもしれないんだけれども、急ぎ過ぎてはいけない。しっかりとそれなりの時間をかけて審議をしていかないと国民の理解を得られない、こういうふうに私なんかは思うのですが、守屋さんはどういうふうに思われるでしょうかということをお伺いしたいと思います。
守屋長光君 まず、たまたま私の周りは、有事法案という話をしたところ、わかるというメンバーがほとんどでした。
 ただ、今お聞きになられましたように、中身に関して詳しく知っているかというと、いろいろな法律が常に国会で審議され流されていきますが、例えば、ダイオキシンのときでさえも、ダイオキシンというのはみんな知っています。ですが、法案にかかわるもっと詳しいこととなると、みんなわかりません。いつも国民が国会で審議されていることを深く理解しているかというと、そこに興味がたくさんある方は自分で法案の中身に関してきっと勉強されるんだと思いますが、そうでなければうんとよくわかっているわけではないというふうに思います。
 それで、今お尋ねの一番のところで論議ということなんですが、大変難しいところがあります。ただ、一つ言えるのは、よく論議したことは後でみんな守る、だけれども、論議しないことは、えっ、そんなことがあったのということで通り過ぎてしまうところが確かにあります。
 私は、周りが知っていましたので、結構の人は有事法案というのが今あることは知っているんじゃないかなというふうに理解しています。ただ、法案の中身に関しては、いつもみんなが深くわかっているわけではなくて、理解は、どちらかというと、新聞に書かれたこと、テレビで報道されたことで、僕らにわかりやすく解釈されて流されることでもって初めてこれがどういうことなのかということを理解する方が多いのかなというふうに思います。
 今回の出てきているものは、私個人としては、一番の骨格で、まずこれが決まって、自衛隊というものが有事の際にどのようになるのかというのが決まって、その後いろいろな細かいところが決まっていくというふうに解釈しておりますので、私としては、ぜひ今決めた方がいいのではないかというふうに思っております。
 以上です。
伊藤(英)委員 遠藤さんと佐久間さんにちょっとお伺いしたいのですが、先ほど何人かの方から、今回の官房長官が非核三原則の見直しをするかのように報道されている問題が出たり、それから防衛庁の情報公開請求者のリストの問題が出たりしておりますね。
 実は、官房長官も防衛庁も今回のこの法案の提出の責任者なんです。そういう意味では非常に重大な問題だと私は思っているのですが、遠藤さん、佐久間さんは、本件についてはどういうふうに感じていらっしゃるでしょうか。御意見があれば伺いたいと思います。
遠藤恵子君 今回のこの法案ではなくて、これまでの二つの問題についてどう思うかという御質問ですよね。
 そういうことがあるから、今回のこの法案は本当に国民の基本的な人権を保障するのかどうか、それをきちっと保障するんだよということを決めないうちにこういうことを決めては本末転倒だということで御意見を申し上げました。ですから、いかに国民の基本的人権をきちっと保障していくかという議論、その法律を整備した上で、その上で必要ならばこういう法案も検討するということが順序だというふうに思います。
佐久間博信君 今回の場合は、二つの問題があると思います。一つは、確かに情報公開で問題があった、二つは、防衛庁内、いわゆる国を守る、ある程度の秘密を保たなきゃならぬ中のものが簡単に外に漏れている、この二つがやはり問題であると思うのです。
 でございますので、この二つをあわせて今後の対策を立てていくべきだ、こう思います。
伊藤(英)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 今回は、武力攻撃事態への対処に関する特別委員会の地方公聴会で、仙台で皆さんの御意見をお伺いしているのですが、こうした公聴会は、今回は四カ所でやることになっていますが、私は、全県でやってほしい、なかんずく離島などの島嶼部でやってほしいと思っております。
 というのは、前回の大戦の悲劇を見ると、島嶼部でこそ本当に深刻な被害が発生しているわけでありまして、そういう意味で、地方の意見をきっちり吸収するという意味でも、ぜひ日本全国でこの問題を取り上げていろいろな意見を吸収していきたいな、そういうふうに個人的には考えております。
 とは申せ、現実には時間が大変限られておりますので、私は、基本的には四人の方に御質問をさせていただいて、その後もし時間がありましたら、また次の方に質問させていただきたいと思っています。
 まず、村井陳述人に、自衛隊の体験がおありだということなので、自衛隊法あるいは自衛隊としての行動との関係というのを後でお聞きしたいと思います。
 そして、遠藤陳述人には、緊急事態法制におけるジェンダーの視点という点で御質問させていただきたいと思います。
 佐久間陳述人には、ジュネーブ協定の第一議定書の資料もつけていただきましたので、この最初のところにあります、非武装地帯、無防備都市宣言という言葉がございますが、その点について御質問させていただきたいと思っています。
 そして、小田中陳述人には、御専門の法律の分野だと思いますが、憲法との関係について質問させていただきたいと思っております。
 まず最初に、村井陳述人に御質問したいのですが、一部ちょっと事実認識という点でコメントがあるのですけれども、先ほどから、すべての国が国家緊急権とかそういう条項を持っておるというふうにおっしゃっているのですが、それは決してそうではございませんで、国によっては、もうそれは当たり前だからといって書いていない国もあれば、あるいは明確に書こうという国もあって、必ずしもすべての国が憲法、基本法の中にそれを明記しているわけではございません。中には憲法の書いていない国もございますので、その辺ちょっと誤解がないようにと思っております。
 村井陳述人は、自衛隊が自由にその力を発揮できるようにこうした法律が必要だという御意見を述べられていると思うのですが、しかし、これは国会でも議論になりましたが、自衛隊法の八十八条で、戦時においては自衛隊はその能力を十分に発揮できるような形になっております。
 したがって、なぜさらに有事法制というものが自衛隊の視点から必要となってくるのか。もちろん、自衛隊が緊急時に出動するときには追加的な報酬を払うとか、あるいは部隊移動中に免許が切れたらそれを自動延長できるとか、そういうような話はもちろんございますけれども、なぜ今自衛隊が総合的な有事法制を必要とするのか、その視点がございましたら、ぜひ御意見をいただきたいと思います。
村井嘉浩君 まず、御質問に答える前に、私、先ほどちょっと説明が足らなかったと思うのですが、必ずしも各国の憲法、基本法、そういうところに書いてあると言ったつもりはございませんで、そういうのがもちろん憲法にない国もありますが、そういうときには法律等でそういうのをちゃんと補足しているという意味で、先進国ではあると言わせていただきました。
 それで、御質問にお答えしますが、私はちょっと誤解を招いたかなと思うのですが、必ずしも自衛隊のためにとか自衛官が働きやすいようにするためにとかそういうつもりではありませんで、あくまでもこれは国家国民のために必要であるというような観点から私はお話をしたつもりであります。
 ただ、私が自衛隊にいたときに、よく言われますけれども、本当にここで敵が攻めてきたときに、果たして自分たちはどこで防御をすればいいんだろうかと。私は陸上自衛官だったものですから、どこで防御をすればいいんだろうか。実際、有事の際に、演習場の中と駐屯地と基地でなければ防御できないのではないか。民間のおうちを借りるにしても、一軒一軒承諾書をもらわなければできない、車が走っていて、敵の戦車はどんどんこちらに向かっているのに、こちらの戦車は赤信号になったらとまらなければいけない、このような国の状態で果たして我々は仕事ができるのだろうかというのは常々感じておりました。
 ちょっと時間もないのでこれ以上言えませんけれども、そのようなことを考えましても、このような法律は必要だというふうに思います。先生、よろしくお願いします。
首藤委員 それでは、遠藤陳述人にお聞きしたいと思うのですが、安全保障の分野では、諸国民は自分たちが体験した最後の戦争をもとに新しい戦争に備える、こういうふうによく言われるんですね。ですから、我々の知っている戦争は、すなわち太平洋戦争であり、沖縄戦であるわけなんですが、その視点から、最近起こっている民族紛争、例えばコソボ紛争とかさまざまな新しい紛争が起こっています。そうすると、そういうところで起こっている、例えば人道的介入とか、そういう戦争の中では今当たり前になっている概念が、実は我々は全然知らない概念なんですね。
 同じように、ジェンダーの視点もそうだと思うのですね。例えば、兵士の捕虜に関してはヘーグ陸戦協定というのがあって、兵士の捕虜はどう扱うか、それから四九年のジュネーブ協定、七七年の追加議定書などで、文民や一般市民の被害ということがもう既に対象となってきているわけですね。しかし、最近、例えば兵士の中においても女性もふえてきているとか、それから子供が少年兵などで紛争に巻き込まれていく、いろいろな視点が出てきていると思うのですね。
 特に、今の社会においては、ジェンダーの視点をどうやって緊急事態法制に盛り込むかだと思うのですが、今回の法制にはほとんど入っていないという御意見だと思うのですが、そういう認識でいいのか。また、どういう形でジェンダーの視点を緊急事態法制に盛り込んでいけばいいのか、ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。
遠藤恵子君 今回の法制には、どう見てもジェンダーの視点は全く入っておりませんね。
 それで、単に生命、身体、財産――自由というのも書いてなかったように思うのですが、を保護するというふうになっているのですけれども、大体、一般論で聞くと、生命とか身体の中に含まれるんだというふうなことでくくられてしまうんですが、やはり、そうですときちんと守られていないというのはこれまでのほかの法律についても同じです。
 ですから、きちっとその辺は明記していく。性被害に対する保護ですとか、あるいは、例えば自衛隊の中で女性がどういう役割を果たして、男性とどういうふうに同等に扱われるべきかなんということも考えていくと、とても今回の国会でこの法律が成立するなんというのは無謀な話だと思うのですね。
 その辺は、私自身も、きちっとこういう問題とジェンダーとをどういうふうに絡めて検討していったらいいかというのはまだ十分に勉強しておりませんので、これは今後私どもの勉強の大きな課題にさせていただきたいと思います。
 それから、国会議員の先生方も、この法案に限らず、ジェンダーの視点からもいろいろな法案を検討していくということをぜひしていただきたいなというふうにお願いしたいと思います。
首藤委員 それでは、佐久間陳述人にお聞きしたいと思うのですが、先ほどこのマークを見せていただきまして、ありがとうございました。
 現在、実はこういうものは結構学生さんとか皆さんがインターネットに載せたりしていて、インターネットでダウンロードしてカラープリンターでコピーをとればいいのかななんて思ったりもするのですが、ここで佐久間陳述人がお示しになったジュネーブの追加議定書、これは、御存じのとおり、多くの先進国が入っております。実は北朝鮮も入っているんですが、我が国はまだ入っていないということで、この点に関しましては、国会での論議の中で福田官房長官が、早い時期に日本も加入するということを考えているということを明言されておられます。
 しかし、この追加議定書は、第二議定書もあるのですが、いろいろ新しい視点をたくさん含んでおりまして、現在のような、文民や市民が非常に被害を受けるというところから、自治体の非武装宣言、無防備都市宣言ということがジュネーブの追加議定書で規定されているわけですね。
 例えば、仙台が無防備都市を宣言するとか、そういうことも可能性としてはあると思うのですが、佐久間陳述人は、非武装とか無防備都市宣言とかいうものに関してはどのような御意見をお持ちでしょうか。
佐久間博信君 現在、国際法上の言葉では非武装地帯というのはありません。中立地帯と申します。
 中立地帯というのはジュネーブ条約で定められておりまして、それに基づいて中立地帯をつくって、それを相手国それからジュネーブのあれに連絡する、あらかじめやる場合はそういうふうになっております。そのときの標識が、これも決められていますように、先ほどお示ししました標識であり、また、避難所の標識もこれであります。
 と同時に、中立地帯でも避難所でも、万一避難した人たちに対して難民やその他が乱暴したりしないように、武装した兵隊を置くことになっております。ですから、自衛隊の人間もそのことができるようになっておりますし、現在のジュネーブ条約では、軍隊にもこのことを教えるように言われています。ですけれども、日本はジュネーブの追加協定をやっておりませんので、今、多分この標識は日本の避難所のどこにもないと思います。
 以上です。
首藤委員 最後に、ちょっと時間がなくなって申しわけございませんが、小田中陳述人にお聞きしたいのです。
 小田中陳述人は憲法との関係を言っておられるわけですが、憲法は、当然のことながら、緊急事態に関しては何も書いておりません。しかし、それは、国家緊急権を否定している、そのように陳述されましたけれども、否定しているのではなくて、ある意味で憲法外的な存在である。憲法にその箇条がない、したがって、緊急事態というのは憲法外的存在として考えて、新たな法論理を考える必要があるという意見がございますが、憲法との関係でどのようにお考えでしょうか。
小田中聡樹君 私は、国家緊急権というものは憲法が規定して初めて認められるというふうに理論的には考えております。
 そして、日本国憲法は、今御指摘のように、参議院の緊急集会以外の国家緊急についての規定を一切置いておりません。これは、単に規定していないという消極的な意味を持つのではなくて、日本国憲法は、第九条と相まって、あるいは前文とも相まって、緊急権というものをいわば積極的に否定したという考え方でつくられているのではないかという考え方でございます。
首藤委員 ありがとうございました。終わります。
久間座長 これにて首藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 本日は、八人の陳述人の皆さん、大変に貴重な御意見ありがとうございました。
 いわゆる有事法制、今、関連三法案の国会での審議が約四十二時間ほど行われてまいりましたけれども、私は、昭和二十年、一九四五年生まれの人間として、戦後、文字どおりこの憲法の中で生きてきた人間として、非常に感慨深いものがあります。
 今、八人の皆さんがそれぞれのお立場から独自の見解を述べられて、思いをさまざまにいたすところがあるんです。
 一つは、日本の憲法が、戦争放棄を憲法第九条第一項でうたい、第二項で戦力不保持、国の交戦権の否定ということを掲げているわけでありますけれども、この憲法九条をめぐって、いわゆる個別的な自衛権の存在まで否定していると見る方々と、そうじゃない、その部分は否定されていないんだという、いわば百八十度ある意味で違うような、そういう見解の違いを生んできた歴史がこの戦後の歴史だろうと思うんです。
 この法律をつくるということは、その分かれてきた見解に、個別的な自衛権をこの国の憲法が持っているということを認める、そういう流れであろう、私はそう思うんですね。そういう意味で、非常に画期的な意味を持つ法整備だろうと思うんです。
 そこで、私たちの立場は、要するに、いかにして戦争を防ぐか。これは、文字どおり、万が九千九百九十九までここに力が注がれるべきだろう、いかにして戦争を防ぐか。
 もう一つは、戦争が起こったときにいかにしてそれに対応するのか。ちょっと戯画化的な言い方をしておりますけれども、万が九千九百九十九の努力、当然これはするんだ、しかし、万が一起こったときにどう対応するのかということを常に用意しておかなきゃいけないだろうということで、実は、公明党もその辺のところの観点に立って、今回の有事法制三法案をじっくりとしっかりと議論した上で成立させたい、そんなふうに思っております。
 そんな中で、先ほど佐久間さんからお話がありました、今も首藤さんからもお話がありましたけれども、まず第一点、佐久間さんにお聞きしたいのは、国際人道法に基づく昭和二十四年、一九四九年のジュネーブ四条約、日本はこれには加盟したわけですが、その後、追加議定書には入っていない。
 いわばこれは、戦争をなくすというんじゃなくて、戦争を前提にして、起こったときの被害に対してどう対応するかということであろうと思うんですが、日本の国の中では全くこれについての議論が、国会でも、あるいは世の中全般でもこのことに関して、ごく一部には強い関心を持っておられる方はいらっしゃると思いますけれども、全体的にはほとんど関心が持たれていない。
 一方で、先ほどもお話がありましたけれども、世界全体を見渡すと、第一次大戦ですか、民間の人々が戦争に巻き込まれて、一般住民が亡くなっちゃうというケースは大体八%ぐらいだった。ところが、今、一九九〇年代になって、八五%ぐらい一般の住民が巻き込まれて亡くなるというケースがある、こういう指摘もあります。
 日本における国際人道法をめぐる議論というものが、全く人口に膾炙しないというか人々の口に上らない、その理由、原因というものをどう考えられますか。
佐久間博信君 私は、かつてアメリカに駐在していました。昨年の九月、あの事件がありました貿易センタービルにおったんですが、アメリカで貿易をやっておりますと、いわゆる信用調査、その国の信用あるいはそこの国の会社の信用というのを調べます。日本の大きな貿易会社もそうですが、戦争があった場合にその国の会社はどのぐらいの影響を受けるかということを必ず調べます。日本が戦争に巻き込まれるというアメリカのそのときの調査は、会社によって違いますが、三%から七%であったと思います。
 要するに、日本人は自分のところは戦がないと思っていますけれども、周りの国は、やはり日本では戦がある、あるいはそれに巻き込まれると。巻き込まれるというのも、一番大きいのはいわゆる通り抜ける戦争、日本は戦争をしなくても日本が戦場になるということはやはりアメリカでは言っておりました。やはりそういうことを考えれば、日本は、あらゆる場面を考えて、日本と日本国民の安全対策を考えるべきである、こう思います。
 以上です。
赤松(正)委員 小田中先生、それから菅原さんにお伺いいたします。
 お二人の御意見はまことに明快で、よくわかりました。その上で端的に、では、小田中先生は、先ほど私が申し上げました、万が一の可能性として戦争が起こったときに、どうこの国を守ると思われるのか、その点についてお聞きしたい。
 菅原陳述人に対しましては、先ほど申し上げましたように、おっしゃる意見には全く賛成です。つまり、ありとあらゆる手だてを尽くして平和外交を展開する、そのとおりなんです。そのとおりなんですが、その流れの中で、万が一起こったときへの対応というのはどう考えておられますか。簡単にお願いいたします。
小田中聡樹君 考えられる事態という万が一の事態がはっきりしなければ、どう対応するかということについての答えは出てこないんですね。
 ただ、基本的にとおっしゃるので私も基本的にお答えしますけれども、それはやはり非武装抵抗だと思います。それしかないと思います。基本ですよ。
菅原傳君 やはりいかにして戦争を起こさないかというのが最大の努力点だと思いますけれども、しかし、そういう中で、万が一の事態が起きた場合にどうするかという問題については、まず一つは、そういったような事態の発生する周りの状況があるのかどうかですね。この点を考えてみますと、まずは考えられないということが現在の周りの状況ではないかというふうに思います。
 そういう点で、今、自衛隊の存在がありますけれども、専守防衛ということで憲法上の解釈も出ているわけですが、やはりそういったような中でどのように国土を守るかということは考えていくべきではないかというふうに思いまして、新しい立法は特には必要はないのではないかというのが私の個人の意見です。
赤松(正)委員 終わります。
久間座長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 本日は、貴重な御意見をどうもありがとうございます。
 私は、政府提案が三つあって、それと、私どもも実は安全保障基本法と非常事態対処基本法という法律をつくっておりまして、私自身、我が党案の提案者という立場なんですけれども、この議論をするときに、やはり日本国憲法の議論というものは避けて通れないというふうに思うんですね。日本国憲法の三原則として、私は、国民主権と基本的人権の尊重と、あと国際協調主義、平和主義というものがあるんだろうというふうに考えておりまして、有事であろうがそうでない場合であろうが、これは政府の責務として最大限に尊重をしなきゃいかぬというふうに考えております。
 そういった観点から、政府案と、また、加えまして私どもが提案をしている安全保障基本法案、非常事態対処基本法案ということについてお伺いしたいというふうに思うんですが、政府の最大の責務が、今申し上げましたとおり、基本的人権を守るということで、特に生命、自由、財産に対する権利というのは、何があっても守らなきゃいかぬということだと思うんです。
 そういう意味で、政府案は武力攻撃事態ということだけを扱うための法律になっているわけですが、私は、非常事態というのは武力攻撃事態だけではないというふうに考えておりまして、例えば大規模災害とかテロ、あと例えば急性感染症みたいなのが急激に蔓延をするような事態であるとか、また、地球の裏側ですが、アルゼンチンで突発的な金融危機が起こったといったときにも、これはもう非常事態だというふうに思うんですね。
 そういう事態において基本的人権を守るということがやはり政府の最大の責務なんだろう。通常の危機管理体制であっては対応できないときに限って非常事態に対応する、そういう趣旨をもって実は私どもの案をつくり、今、政府の武力攻撃事態対処法の対案として審議をしているところであります。
 それで、日本国憲法の国民主権の原則ということから考えたときに、やはり国会の関与というものは絶対に外せないだろうというふうに思うんですね。
 遠藤陳述人にお伺いをいたしますが、先ほど来、武力攻撃事態、予測事態、おそれ事態というようなことで、どういうところが判断するんだというふうなお話がありました。私は、国権の最高機関として国民主権に基づいて全国民を代表して国会議員が国会を構成しているわけですから、もちろん今、政治への信頼が著しく低下をしておりますので、なかなかそこのところ、私どもも襟を正さなきゃいかぬとは思いますけれども、やはり国会の事前承認というのは絶対に原則だと思うんですね。
 それに加えまして、私どもは、総理が非常事態の布告というものを発することができるようにしておるんですが、ただ、これは、六十日ごとに国会へ報告して、国会で不承認の議決があったときには当該布告は廃止しなければならないというふうにしているわけです。
 先ほど、第三者機関というお話がございましたけれども、その第三者機関というものが国会をおいてかえ得るものかどうかということについて御意見はいかがでございましょうか。
遠藤恵子君 先ほど、類似の御質問がどなたかからございましてお返事したと思うんですが、第三者機関ということを私は申し上げなかったと思います。ただ、今の状況の中で簡単に決めてしまうということに非常に危惧を感じるから、これをもっと慎重に検討してほしいということでお答え申し上げたと思います。
 それから、このことについて、多分これは前段のところで申し上げたとおりなんですけれども、それから守屋さんの、周りの人は知っている、でもやはり中身は知らないというお話のとおり、大多数の国民が余りわからない。ですから、もっと国民の間に議論を喚起する努力を国会の皆さんもしていただきたいし、それから、こういう法案というのは非常に幅広くすべての国民に影響を及ぼすわけですから、国民の理解がないと実効性を持たないと思うんですね。そういう意味でも、ぜひ議論をもっと深めていただきたいということでお答えしたと思います。
中塚委員 次に、日本国憲法の平和主義という観点からちょっと伺いたいんですが、先ほど来、いわゆる有事法制というのができると戦争に巻き込まれるんじゃないかというふうな御懸念がありまして、そんなことがあってはいけないんですけれども、ただ私は、そういう意見が出るのもしようがないかなと思う部分があるんですね。
 というのも、やはり我が国は安全保障の基本原則というものをしっかりと確立しておりません。安全保障というのは、日本が攻撃をされたという場合だけではなく、国際貢献、国際協調ということも含むわけですけれども、その原則が確立をしていないということが、日本国内はもとより、周辺諸国あるいは全世界に向かって、日本というのは何をするのかわからぬ、えたいの知れないというふうな思いを抱かせることにつながっているんじゃないかというふうに考えておりまして、そういう意味からも、ここでひとつ安全保障の基本方針というものをきっちりと定める必要があるだろうというふうに考えております。
 原則というのは二つありまして、やはり急迫不正の侵害を受けた場合にはそれは排除しなければいけないということ、それはもう決めておくべきだというふうに思うんですが、それに加えて、国際貢献ということについても御意見を伺いたいというふうに思います。
 菅原陳述人にお伺いをしたいんですが、国際貢献ということについて、昨年、テロ対応の特別措置法が成立をいたしまして、国連の武力行使容認決議というのがなくても米軍の後方支援ができるというふうな法律が成立したわけですね。
 それで、十年前の湾岸戦争のときにはできないというふうに言っていたことが、十年間たって、何にも変わっていないにもかかわらず、急にできるようになった。また、いずれも後方支援だということで武力行使ではないという、世界標準から見ても到底理解ができないような理屈でもって今自衛隊が海外で活動をしているということで、今の政府・自民党のやっていることは私は支離滅裂だというふうに思っているんです。
 先ほど、国連機能の強化で紛争解決をするということを言われていたわけですが、国際協調主義、平和主義という考えにのっとって、私は、国際連合の決議をもって行われる活動には、軍事的なオペレーションであれそうでないであれ、積極的に参加するべきであるというふうに考えているんですけれども、そういったことを踏まえて、先ほどの国連機能強化ということについて、補足の御意見があればお聞かせいただけますか。
菅原傳君 現在の国連の機能というのはかなり形骸化している状況がありまして、国連がやろうと思うようなこともなかなか思うようにできない。これは、一つはやはりアメリカが非協力だということもありますし、それから、ある意味では、国連の動きをとめてしまうとか無視をするとか、結局アメリカの全く独自な戦略で進めているというところに大きな障害点と問題点があると思います。
 したがって、国連は各国の方々が集まって、いかに平和を守るかということで議論する場でもありますから、そういう意味では、やはり国連がもっとしっかりして、アメリカのそういったようなごり押しといいますか、そういうような問題もちょいちょい出ておりますけれども、そういうのもある程度抑えて、そして本当に国連が世界の各地の紛争などをみずからの力でとめるというふうな力を発揮しないと、一国主義的な状況がごり押しされて、要らざる紛争も起きてくるということもあると思います。
 そういう意味では、国連の機能を平和的にもっと機能できるように、日本政府も発言をどんどんやって、そして国際的な立場で国連の力が大きく各国に影響するというふうな状況をつくっていく必要があるのではないかというふうに思います。
中塚委員 ありがとうございます。
 最後に、横田陳述人に伺いますが、私どもは、国際協調の場合、日本の国権の発動たる戦争ではない、それを強調するために、自衛隊とは別組織の国際連合平和協力隊というものを創設するべきだということを考えておりまして、この基本法にも盛り込んであるんですが、御意見はいかがでしょうか。
横田匡人君 全く私も同感の考えを持っております。やはり国際社会で信頼を得るためには、まず日本の行動の原則がはっきりしていなければいけませんし、先ほど中塚先生が触れられましたように、国連の平和のための活動をきちんとやるんだということをそういった部隊を通じてきっちりとすることが大事かと思います。
久間座長 これにて中塚一宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 八人の陳述人の皆さんには、大変貴重な御意見、ありがとうございました。私に与えられた時間はわずか十分ですから、全員の皆さんから御意見を聞く時間はありません。小田中先生からお話を聞きたいと思います。
 先ほど八人の皆さんから御意見を伺いまして、有事法制制定に賛成される皆さんには共通の前提がつくられているんではないか。それは、国内有事というのを想定していらっしゃる。万々が一に日本が攻められた場合、どう国民の命と財産を守るのか、一つの例では、第二次世界大戦の東京大空襲とか沖縄の地上戦、ああいう事態を想定して、ああいう事態が万々が一起きたらどうするのかという発想に立っておると思うんです。
 小田中陳述人は、有事立法と現実という御意見の中で、その根本のところに大きな疑義を呈されておるのではないか。武力攻撃発生の現実的リアリティーの欠如という言葉で表現されたと思うんです。単に現実的リアリティーが欠如しているだけではなくて、この法体制がつくられることによって、むしろ逆に、先生の言葉で言うと武力攻撃予測事態を作出する、むしろ戦争事態をつくり出すという現実的危険、二つ目には、国際緊張激化の危険、そして三つ目には、平時の有事化、国民監視統制動員システムの拡大強化と人権危機の深刻化というこの三つの危険性をリアリティーのあるものとして述べられたと思うんです。
 恐らく、先生のこの御意見は、最近つくられたPKO協力法とか周辺事態法とかそういう現行法体制、そして日本とアジアと世界の国際情勢に対する深い洞察、そしてもう一つは戦争と平和に対する基本的な認識、こういういろいろな視野から先生は洞察されているのではないかと思います。
 もう一問質問したい点がありますので、四、五分かけて、そういう認識に至っている背景、先生の御意見をもう少し詳しくお述べいただきたい。
小田中聡樹君 私は、今回陳述を命ぜられて、こんなに厚い議事録をつぶさに拝見いたしました。非常に奇異に思ったのは、まさに武力攻撃発生の現実的リアリティーというものについて、この委員会あるいはその背後にある政府の認識というものが一向に明らかでないという点ですね。これは本当に、つぶさに読んでみればみるほど、はっきりと私には浮かび上がってくるように見えたのです。
 先ほどの御質問にもありましたが、万が一のときどうするのだというお話からこの有事立法の話が始まるわけですが、しかし、万が一というその万が一が、本当に我々の人権を制限して、そして中央集権的なシステムをつくり上げて、いろいろなことを犠牲にしながら、つまり日本国憲法のもとで戦後五十何年間か日本国民が築き上げてきたものを一挙にいわば制限してでもそういうシステムをつくらなければならない、そういうリアリティーを感じることが私は全くできませんでした。
 しかし、他方、確かに国際紛争は各地域で発生しており、そしてまたアメリカにおいては同時テロといったような事件も起きている。その中で日本がどういう役割を果たすべきかという場合に、そういう紛争というものに対して、日本国憲法というものの持っている基本的な思想と政策、これは、私はこのレジュメでははっきりと書きませんでしたけれども、言ってみれば、平和を保障するという積極的な政策を政府に要求する、そういうものだと私は理解するんです。そういうものを踏まえてどう対処するかということを議論すべきではないかというふうに考えた次第であります。
 ところが、この委員会の議論を拝聴しておりますと、万が一というそこのところから出発し、現実にこの法案が成立した場合に起きてくる危険、それは何かといえば、先ほどちょっと私も陳述の中で申しましたように、周辺事態法に基づいて出動している自衛隊というものが紛争に巻き込まれ、そしてまた国際緊張の激化が生じていく、ますます激化していく。
 そういう中で日本が有事立法をつくるということは、むしろ日本を積極的にそういう紛争に巻き込んでいく。いわば周辺事態法と有事立法とがベルトがかけられて、二つのものが回転し出しますと、まさに日本の国民に平和と安全を保障するどころか、逆に危険に積極的に巻き込んでいく、そういう役割を有事立法は果たすのではないか。
 これはまさに現実的な危険なのです。万が一の議論ではないのですね。そこのところをやはり委員会の審議でも中心に据えられて、そしてまた私たち市民の側でも、そこのところの認識をきちんと持って、この法案を批判的に見ていくべきだろうというふうに考える次第です。
木島委員 それでは、もう一点。
 先生のレジュメでは、「平時の有事化」、それと「人権危機の深刻化」という言葉が使われております。これが何を言わんとしているのか、あと残された時間は三分足らずでありますが、わかりやすく御説明願います。
小田中聡樹君 備えあれば憂いなしというふうに今の首相もおっしゃっているわけですが、いわば平時から有事を考えるということだろうと思います。
 そのシステムをつくり上げていけばいくほど、実は平時が有事そのものになっていくのです。有事といいますのは、つまり有事に備えた体制というものが常に平時を支配する。ですから、例えばあらゆる事柄を、戦争事態といいますか非常事態というものを想定して組み立てていく。例えば、教育にせよあるいは文化にせよ、そういう一見戦争に関係のないような事柄でも、有事といいますか、そういう非常事態に備えたものをつぎ込んでいく。
 私自身も、実は国民学校で軍国少年教育を受けているわけですが、ああいうことがまさに有事の論理なんですね。それは、文化、教育を初めとして、さまざまなところにこれから用意されていくことになるでしょう。
 現に、例えば今回の法案の中にも、「社会秩序の維持」という項目を挙げております。これは、一たん有事があった場合には、例えば有事に対して批判的なデモとか言論といったようなものが非常に制限されていく、そういう事態を法案自体が考えているということになるわけです。
 しかし、それは単に有事のときだけというのではなくて、常にそういう動きというものが、あるいはその動きの芽を持った人たちの動きが監視され警戒されていくというシステム、これが実は有事立法の思想、基本、メカニズムなのです。それを端的にあらわしたのが、まさに今回の防衛庁による個人情報リスト、いわば防衛庁によって思想調査まがいのものが行われている、こういう事件ではないかというふうに思います。これがまさに平時の有事化ということの端的なあらわれではないかというふうに思います。
木島委員 ありがとうございます。
 ほかの皆さんに質問できなかったことをおわび申し上げまして、私の質問を終わります。
久間座長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 きょうは、本当に長い時間、陳述人の皆様にはたくさんの御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。
 私の方からは、二、三御質問させていただきたいと思いますが、まず菅原さんにお聞きしたいと思います。先ほど大変すばらしい御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。
 今回の有事関連三法案ですが、有事ということを考えた場合に、これはテロとかそれから災害、そういうものでは決してない、つまり、これは戦争のできる国に日本を仕立て上げるという法案としか理解できないわけです。日本が国として武力による防衛の立場をとるということを世界じゅうに表明したことになるというふうに私は思っているわけです。例えば、日本がアメリカに追従してアメリカの軍事行動を後方支援するために国民が総動員される法律だろうと。
 なぜかといいますと、武力攻撃を受けたときだけでなくて、おそれとか予測ということが加わっていますから、このおそれとか予測をどこが判断するかといった場合に、私たち国民には全く見えない状況の中でこういうことが起こってくるだろうというふうに思っています。
 そんな中で、民間あるいは会社、いろいろな方が動員されていくだろうというふうに思うわけですが、菅原先生は戦争の体験がございますのでお聞きしたいと思いますけれども、今まで戦争が本当に国民を守ったのかどうか、防衛したのかどうかということが私は非常に心配になるわけです。
 例えば、第二次大戦のときには、確かに軍人や軍属は補償されました。いまだに年金をもらっていると思いますが、あのときに被害を受けた女性や子供やお年寄りは何の補償もございません。多くの皆さんが殺されましたけれども、それは当然国民として受忍するべきだという考えのもとに、一切補償はございませんでした。
 そして、今こんな平和なときにと思いますが、沖縄は今、日本の七五%を占めるという米軍基地が存在します。果たしてこの米軍基地が沖縄の県民を守ったかどうかということになるわけですが、調査によりますと、一九七二年、本土への復帰以来、沖縄で米兵たちが起こした事件、犯罪は五千件にも上ります。そのうち、凶悪犯が五百二十七件、粗暴犯が九百四十九件もあったわけです。米軍が本当に沖縄の国民を守ったということには決してならない。
 沖縄の皆さんは大変いろいろな事件で苦しめられているわけで、米軍基地があるから守る、例えば、日本には自衛隊の基地があるから守るということに本当になるのかどうか。特に、仙台には二つの自衛隊の基地がございます。有事になったときに、仙台にいる県民の皆さんは、本当に自衛隊の基地があるから守られるんだろうか。そのことを含めて、戦争中の体験を踏まえながらお答えをいただきたいと思います。
菅原傳君 おっしゃるとおり、戦争になって、軍隊と保護されるべき国民の状況、いわゆる地域住民の状況ですけれども、これは沖縄戦の中で明確に答えが出ているわけですね。沖縄戦の場合には、住民が入っているごうの中に日本軍が入っていって、そこから出ていけということで鉄砲玉の飛んでくるところに全部追い出されて、かなり多くの方々が犠牲になって亡くなったわけです。したがって、今でもそうですが、軍隊は住民を守らない、あるいは国民を守らない、沖縄でかつて戦争を経験した方々からは一様にその話が出てきております。
 今は近代戦ですから、戦争の被害は沖縄どころの被害ではないというふうに思います。しかも、非常に発達した兵器ですから、相手の兵隊さんが近くに攻めてくるということよりも、むしろミサイルのようなどこから飛んでくるかわからないような爆撃で重大な被害をこうむるというふうなことなども考えられるわけです。
 私は、戦時中、宮城県の北の方の栗原郡の細倉という鉱山におりまして、そこが爆撃をされました。鉛、亜鉛をつくる工場でありましたけれども、中心部に爆弾を落とされまして、全く機能停止になったわけです。その際に、子供たちを誘導して防空ごうに入れたり、いろいろさんざんな目に遭いました。もちろん軍隊は鉱山には来ませんでしたが、私たち自体が子供の生命を守るというふうなことを役割としてやらされたわけでございます。そういう意味では、戦争になればとにかく軍が守るというのは全く迷信のようなものでありまして、みずからの命はみずから守らなくてはいけないというふうな状態に追い込まれるわけでございます。
 私は、川崎に学徒動員で軍事の兵器をつくるために動員をされましたけれども、頭の上をアメリカのグラマン戦闘機が、敵の飛行士、パイロットの顔が見えるような状況まで低空飛行で飛んできまして、実弾を浴びたこともございます。
 そういうふうな状況だって、万が一こういったようなことが起きてくれば再現されないとは限らないわけでありまして、やはり全く予測のつかない状況に住民は追いやられるということでありますので、住民の生命とか財産の保護というようなことも先ほどから出ておりますけれども、実際に戦闘状況になったならば、果たしてどれほど保障されるのかということは全く頼りにならないという状況が起きてくるんではないかというふうなことで、私の経験から、それらの状況が余り当てにならないというふうな感じで聞いております。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 もう時間が余りないので山本さんにお伺いしたいと思いますが、お聞きするところ、看護大学にいらっしゃるということで、命を守る立場にあるお方だというふうに思うんですが、私は、戦争という行為は人の精神をおかしくしてしまう行為だというふうに思っています。
 私も実は看護職なものですからよくわかるのですが、ちょうど終戦の後、戦争から帰られた皆さんが随分精神状態が異常に陥って、最後は自殺なさる方が非常に多かったんですね。ですから、人間というのは、人を殺す場合も殺される場合も、その状態になったときは決して精神は正常ではいられないというふうに思うんですね。そのくらいやはり人間を痛めつけるものだというふうに思っています。
 今回の自衛隊法の百三条の改正では、医療法の適用除外ということが起こってまいります。つまり、私たちの自治体立病院ですとか日赤病院なんかは自衛隊が使うために野戦病院となってしまう、そこで医療を受けていた県民の皆さんは医療が受けられなくなるという、県民にとっては医療が保障されない事態も起こってくるというふうに思うんです。
 そういう意味から、この法案について看護職という立場から、もちろん看護職として野戦病院に動員されるということもございます、私たちがやりたくないこともさせられるという危険性も出てまいります。そうなったときに、この有事法制に対してどういうふうにお考えになりますか。
山本真千子君 今のお話は、実際に国内の、例えばこの地域が戦場と化するというような前提がまずおありになったかと思うんです。
 もしそういう状況になったりした場合に、例えば看護職、医師もそうですが、そういった医療職における人間が職務を強要されるというような表現を今お示しになられましたけれども、それを拒絶する権利はもちろんございますけれども、では、それを否定できるこの職種の人間が果たしているのだろうかという逆の考え方も私の方にはございます。そして、この法案が今の段階で承認された場合も、本当にそこまでの強制力があるのかというのは、私が読ませていただいた限りでは、ないと思っております。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
久間座長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 意見陳述者の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
 時間に限りがありますので、私は、まず最初に四人の意見陳述者の方に同じ質問をいたしますので、お答えいただきたいのです。その四人は、村井、遠藤、佐久間、山本の各陳述者の皆さんでございます。その後、横田陳述者に対しましては別の質問をいたしたいと思います。
 有事というのは、通常は起こらないことでありますけれども、一たん起こればこれは本当に大変なことになりますので、それはそれなりの対応をしないといけない事態だと思うのであります。
 私は、有事が起こった場合に、国としまして、憲法、法律その他の制度の中で、できる限りの対応をしていくというのは当然のことだろうと思うんです。片や、国民の方も、有事に対してできるだけの協力をしていくというのは、これまた当然のことじゃないかと思うんですよね。つまり、国と国民との共同の関係といいますか、協力があって初めて有事の事態に有効に対処できるのではないかと思います。
 ところが、国民は片方にあって、片や国家と、対立したぐあいにとらえまして、守るのは国の当然の責任だ、国民はそれに対していろいろな意見を言う立場なんだ、こういうことで本当に有事に対応できるのか、私は本当に疑問に思うのです。
 したがいまして、有事の法制、今回の法律案、あるいはこれから二年以内につくられるであろう法律案につきましても、そういう国家と国民とができるだけ協力をして有事に対応するというような制度につくり上げていかないといけないんじゃないか、私はそう思うのです。こういう考え方につきまして、最初の四人の陳述者の方の御意見をお伺いいたしたいのです。
村井嘉浩君 先ほど、私の陳述の中で同じようなことをお話しいたしました。
 今回の有事法制関連三法案は、平たく言えば、戦争や危機になったとき、国民と地方公共団体、警察、消防、自衛隊など国家全体がどう連携していくのかをあらかじめ定めたチームワークのルールだ、私はそのように認識しております。
 したがって、国が、自衛隊がというのではなくて、国家みんなで力を合わせてこの国の危機を何とか救おうというふうに立ち上がるためのチームワークのルールづくりだというふうに思っておりますので、そういう意味では、この法律は非常に重要な法律だというふうに思っております。
 以上です。
遠藤恵子君 危機ですとか有事ですとか、それは一体何なのかというと、国民の生命とか自由とかが侵されるかもしれないということが有事だとか危機だとすれば、それが何らかの形で制限されるのでしたら、あるいは、何らかの形で制限ということがあり得るとしても、それが犠牲になるのでしたら、一体何なんでしょうか。
 有事というのは、あるいは危機というのは、何度も繰り返しますけれども、国民の安全、人権が保障されないという事態を有事というふうに私はとらえております。そうすると、もちろん国民自身も政府自身もそのために全力を挙げるということで協力するのは当然ですから、それは同時に、公共の福祉というのと意味が同じというふうに考えることもできるかと思います。
佐久間博信君 私の生まれた大正十一年から昭和の初めは本当に平和で、まさか戦が起こるとは思わなかった。ところが、我々が知らないところで、既に朝鮮の独立軍の方々がテロをやっておった。それが現在の満州事変の遠因の一つ。
 我々が平和だ、平和だと思っても、どこかここかで火が燃えていることがあります。それがもし来たときに、私は八十ですが、子供だの孫が安心して暮らせる日本、独立が守れる日本であるためには、やはり万一の準備はしておくべきだろうと。
 先ほど申しましたように、アメリカの信用調査は、三ないし八%、日本は何らか巻き込まれる可能性があると言っているわけでございます。我々がこの平和な空と緑を見て何もないんだということは、よそから見れば、あるかもしれぬと言われると思います。やはり有事ということは勉強しておくべきだ、準備をするべきだ、こう思います。
 以上です。
山本真千子君 今までいろいろなお話を伺っていて、有事というものの定義、それから武力攻撃発生の現実的リアリティーの欠如ということになりますと、今私が考えてきた論点とは何か少しずれてしまっているかなと私自身は感じています。
 それで、私自身は、最初から申し上げましたとおり、村井陳述人のおっしゃったように、ルールづくりというところが今論点の一番中心にございまして、そしてそれは、当然ながら、私たちの考える有事を想定したときには必要であるというふうに思っている次第です。
 そして、そのルールづくりは、国家というものもそうですけれども、人が集まる組織の中には必ずルールが必要で、ですから法もあるわけですけれども、その一番大切な基本的な理念部分をとりあえずまずつくらないとそれから先が動かないという部分を一番最優先して、私はきょうの意見を述べさせていただきました。
井上(喜)委員 ありがとうございました。
 それでは、横田陳述者、自由党の案があるのですが、私は詳しく検討したわけではありませんで、ざっと目を通した印象でありますが、幅広いいろいろなことが書いてあります。
 事有事、今の政府の提案いたしました法律案では武力攻撃事態ということでありますが、そういう事態の認識とか、その事態に対処する場合の手続等については、基本的に余り大きな差はないと私は思っています。
 ただ、一点非常に大きな違いがありますのは、自由党の案では、内閣総理大臣が布告をするとなっているんですね。布告というのは法律じゃありません、命令ですね、どういう形になるのか知りませんけれども。これで、ああせいこうせいと命令ができる、こういうことになっているんだけれども、かつてはこれは戒厳令と言ったものですよ。
 あなたのような若い世代にそういうようなことが受け入れられるのか。そういう意見があることは私はよく承知します。そういう対応の仕方があることもよく承知しますが、皆さん方のような若い世代に、布告というようなことで対応できるというようにお考えですか。その点、これは党の立場というのじゃなしに、皆さん方の世代を代表してお答えいただきたいと思うのです。
横田匡人君 これからの時代は、いろいろな議論があるときに、みんなで意見を出し合って、そしてよりよい意見をみんなで決めて、採択をして守っていくということが、当然コンセンサスを得るということで大事だと思います。
 しかし、こういった非常事態を想定した場合には、やはり事前に非常事態の基本法といいますか理念をきちんとつくっておいて、国のリーダーのもとに国民が、先ほどどなたかのお話にありましたが、チームワークでやることというのは、我々、世代を問わずに受け入れられると私は思います。
久間座長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 以上で委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝申し上げ、御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会


2002/06/05

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