2002/05/20

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首藤議員、国民にとっての有事の指針欠落を批判 (民主党ニュース)

 20日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会において、民主党の首藤信彦議員が質問に立ち、政府の武力攻撃事態対処法案が有事の基本法制として大きな欠陥を持っていることを明らかにした。 

 首藤議員は、第1に、法案が有事に対する国民の基本的な構えをどのように訴えているのか、という観点から質問。まず、法案がどのような武力攻撃を想定しているのかについて、冷戦型、上陸型、周辺事態型といった区分を示しながら質した。福田官房長官は「外部からの組織的、計画的な攻撃を対象としている。態様の限定はない」とし、中谷防衛庁長官は「(攻撃の態様は)千差万別にわたるので、武力攻撃事態の認定は個別具体的に判断する」などと答えたが、首藤議員は、それでは国民がどのような状態をイメージすればいいかわからない、と批判。また、「指定公共機関」の対象とその役割が明示されていないことも指摘し、「国民生活に関連する主要機関がどういう役割を果たすかを明確にしなければ、有事法制にならない」と指弾した。 

 首藤議員は第2に、地方自治体の無防備都市宣言への対応について質問。無防備都市宣言が国際的にも戦争下における自治体の生存技術として確立されていることを指摘し、「21世紀では、多くの宣言が上がり、それらがネットワークになるだろう。そうした状況にどう対応するか」と質した。片山総務相は、「(自治体は)希望表明はできるが、実際に無防備地域に決定するのは中央政府ないしそれが委任する者だ」と答えたが、首藤議員は「違う。(自治体による無防備都市宣言は)人道問題と同様に、国を越えた普遍的な権利なのだ」として、政府の認識を批判した。 

 また第3には、緊急事態宣言について取り上げ、法案に宣言の発令が規定されていない理由を質した。官房長官および防衛庁長官は、武力攻撃事態の認定に基づく対処基本方針を公示することを対置したが、首藤議員は「だからダメなのだ。国民一人一人のアイデンティティを問う明確な宣言がなければ、国民は動かない」と批判。首相による原子力緊急事態宣言の発令を規定した原子力災害対策特別措置法の例などを挙げながら、「法案の原典が自衛隊法にあるから、これまでの緊急事態における経験が活かされないのだ」と法案の基本性格を問題にした。 

 首藤議員は最後に、「2年後までにまともなものを出すというなら、こんなものを出す代わりに、国民や政治家で幅広い調査会をつくって2年後をめざした議論を開始すればいいではないか」と提案して、質問を締めくくった。


平成十四年五月二十日(月曜日)

首藤委員 おはようございます。民主党の首藤信彦です。

 きょうは、主として、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について質問させていただきます。

 戦争というのは人類が何度も何度も体験してきたことですが、安全保障の分野では、諸国民は、自分たちが経験した、自分たちが体験した最後の戦争をモデルとして次の戦争に備える、こういうふうによく言われております。その意味で、アメリカは昨年の九月十一日の大規模テロに対して今備えているわけでありまして、またヨーロッパ諸国は、二年前のコソボ紛争の例えば電子戦やステルス戦闘機、あるいは超高高度からのピンポイント爆撃、あるいは人道的介入という人道を理由とした軍の侵攻、こうした問題をモデルとして次の戦争に備えているわけであります。

 そして、日本を別として、湾岸戦争においては多くの国が具体的に戦場に軍を送ったわけですが、そうした世界の多くの国は、九〇年代に具体化したコンピューターネットワークの破壊とかあるいは防空網の破壊、こうしたものを前提として、次の戦争、次の紛争について備えているわけであります。

 しかし、日本は、幸か不幸か、今まで直接に大規模な戦争に巻き込まれることもなく、したがって、私たちは、半世紀前に起こった戦争を最後の私たちの体験として、そして、そのもとで次の戦争を考えるというような事態になっているわけであります。ある意味で、この法律案というものは、まさにそうした私たちの半世紀前の体験、半世紀前の戦争の実態というものに対処をしているわけでありまして、そういう意味で、ある意味、この法律というものは、過去の亡霊に対処する、そういうふうに言っても過言ではないと思います。

 まず、武力攻撃事態について政府統一見解が示されたわけですが、当然のことながら、ここにおいては、昨年の九・一一テロのような大規模同時テロやミサイル攻撃、あるいは最近問題となっている電子網の破壊、そうした近代的な攻撃に対してはほとんどカバーされていないということが指摘されているわけです。

 しかし、きょうは、とりあえずまず、武力攻撃事態の伝統的で基本的な概念について質問していきたいと思います。

 まず最初の質問ですが、この法律は一体どのような武力攻撃を想定しているかであります。私は、ここにおいて三つぐらいモデルを考えてみました。

 一つは、伝統的といいますか基本的といいますか、冷戦型のモデルであります。すなわち、最大の脅威であった旧ソ連軍というものが北海道に上陸して、ずっと南下してくる。強大な戦車軍団というのを持っておりまして、日本はほとんど対抗できない。そして、ほっておけば、あっという間に日本が占領されてしまう。これは、ある意味で、日本が体験した事例としては、満州における関東軍の崩壊と大量の満州難民の発生、こういった事態を私たちは体験しているわけであります。その結果、満州という国は、当然のことながら、なくなりました。

 次の事態というのは、敵が上陸して、例えば上陸軍と日本軍の守備隊の間で激しい戦闘が長期間継続する。その間、軍民共存の空間で、民間にも多大な損害が発生する。これは、日本が体験した武力紛争の形態としては沖縄戦のような状態が考えられるんだと思います。その結果、現在でも沖縄には大変な規模で基地が残っていて、さまざまな問題が発生しているというのは私たちのよく知っているところであります。

 その第一番目を冷戦型といいますか満州型といいまして、二番目を沖縄型、こういうふうに考えますと、三番目は周辺事態型、すなわち、何らかの理由で周辺で紛争が起こり、それが一種のはね返りの状態で日本にも小規模な武力攻撃が加わる事態、このような可能性があるのではないか。

 この三つの可能性が大きく分けると考えられるのではないかと思うんですが、この法律は一体その三つのうちのどのような状況を考えてつくられているのかを最初に答弁していただきたいわけであります。

 というのは、これは、例えば我が民主党の枝野委員からも中谷防衛庁長官に対して、この法律で一体どれだけがカバーされているのか、本当に戦争、本当に戦闘が行われるような状態では、防衛庁長官に言わせれば、それは自衛隊法八十八条の基本的な自衛権、国家としての基本的な自然権であるかもしれない自衛権で紛争が行われているような状態であって、武力攻撃に対処する、武力攻撃のおそれがある、あるいは行われるかと予想されるというのは、こういうような状態に対処する法律ではないという、質問に対してのお答えがあったわけですが、そういうことを前提に、一体この法律はどういう紛争をモデルとしてつくられているのかをお聞きしたいと思います。

福田国務大臣 それでは、まず私の方から概念的なことを申し上げますけれども、まず、委員の御指摘の今後の戦争の形態という、いろいろ例示いただきましたけれども、この法律でもって考えております武力攻撃もしくは武力攻撃事態、こういうものは、我が国が外部から組織的、計画的な武力の行使を受けるに至った事態というものを考えております。武力攻撃事態というものにつきましては、まさに委員御指摘のことでございますけれども、態様の面で特に限定はございません。およそあらゆる事態を含むものであり、ある事態が武力攻撃事態に該当するか否かについては個別具体的な状況を踏まえて判断すべきもの、このように考えておるところでございます。
 より具体的なことは、防衛庁長官の方から答弁をさせていただきます。

中谷国務大臣 ここでどのような事態が発生するかという態様でございますけれども、まず、攻撃をしかけてくる主体は、国であるかもしれないし、また国際テロ集団といった国に準ずるものもございます。期間も、長期間に及ぶものもあれば単発で終わるものもありますし、地域も、世界的なものもあれば限定されたものもございます。また、攻撃の方法も、航空機、艦船、地上部隊、ミサイルなど多岐にわたりますし、意図が明示される場合もあれば、米国の同時多発テロ等のように奇襲的に行われる場合もございまして、千差万別にわたっております。

 こうしたことから、ある事例が武力攻撃に当たるかどうかは一概に言えずに、個別具体的に判断するものでございますが、我が国に対する武力攻撃の事態である限り、およそあらゆる事態を対象とするものでございまして、日本国憲法のもとに、さまざまな規模、態様の武力攻撃に対処するよう、国として、これは基本的な体制の整備、いわゆる最悪、極限の国の存亡にかかわる事態に対する基本的な国の構えというものを規定して対処するという考え方でございます。

首藤委員 官房長官、今の防衛庁長官のお答えだと、結局無限定だということですね。どんな事態にでもともかく備えよう、そういうことでよろしいわけですね、理解としては。

中谷国務大臣 これは、日本は専守防衛でございますので、我が国に対する武力攻撃の事態である限りということでございます。

首藤委員 繰り返しますが、我が国に対する武力攻撃である限り、無限定で、ありとあらゆるものをすべて含むという解釈でよろしゅうございますね、防衛庁長官。

中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃である限り、およそあらゆる事態を対象とするものでございます。

首藤委員 官房長官、ありとあらゆる攻撃があるならば、ありとあらゆる対処をしなきゃいけない、そういうことになりますね。

 そこで、私はこの法律を読んでなかなかすっきりしないところがあるんですよ。武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案ということでございますか、独立という言葉が入っております。私は余りこの分野は、法律の専門家でもございませんし、政治の世界に長くいたわけではありませんからよくわかりませんが、官房長官は長く、先代も含めて政治にかかわっておられて法案はよく御存じだと思いますが、一体独立という言葉を冠した法律は今までに幾つぐらいございますか、大体で結構でございます。

福田国務大臣 私も不勉強でございまして、独立という名前を冠した法律はほかにあるかどうかというふうに問われると、にわかにお答えできないので。

首藤委員 質問の意図はおわかりだと思うんですね。独立が侵される事態というのは大変な事態なんですよ。例えば戦争が起こったって、国によっては、例えばヨーロッパの小国なんかは亡命政権をつくってそれを維持する。あるいは、中世に何度も、あるいは近世にわたっても何度も戦争が起こって国が消滅した、例えばオランダでも国が消滅した、そのとき長崎の出島にオランダの旗が立って、我々は独立を確保したとオランダは主張しているわけですね。ですから、そういうふうに独立というものが脅威にさらされるというのは大変な事態でございまして、それは先ほどのいろいろなお話がありましたけれども、当然のことながら、これは国家総動員令が必要になるような大変な事例となるわけですよ。

 どうして、こんな独立が侵されるかもしれないような事態に対して、この程度の法律しかできないのか。これはもう国を挙げて国民の一人一人が理解しないと、国の独立が失われるか、そんな大変なことに、こんないいかげんなことではできないではないですか。どうしてここに独立という言葉が入っているんですか。

福田国務大臣 今回は、有事という事態に対して我が国を守る、我が国の国民、国家を守る、こういうことでございます。まさに平和と、そしてこれが、例えば占領されるということになれば、独立を守るということとは違うことになりますから、そういう意味において、平和と独立を守る、こういう記述になったと思います。

 これは実は自衛隊法の中にもそういう記述がございます。平和と独立を守る、こういうことになっておりますので、そういう意味合いもあると思います。自衛隊法に書いてあるからということでなくて、この法律は、日本の国家としての権威と、そして施政権とか、そういうものも含めた独立を維持する、確保するというための最終的な場面における法律でもあるというように思っております。

首藤委員 官房長官、これは当たり前ですよ、自衛隊法に書いてあるのは。そのためにある軍隊ですからね。

 しかし、この事態法は、地方公共団体あるいは国民に広く呼びかける法律なんですよ。ですから、国民に対して、どのような形で独立が侵されるのか、私たち国民は独立が侵される事態に対してどう対応しなきゃいけないのか、それをきちっと書かなきゃいけないし、その心構えも理解していただかなきゃいけない。それがこの法律案のどこに書いてありますでしょうか。

福田国務大臣 ですから、今御説明したとおり、これは有事のときにおける対応である、対応措置であるということでありますね。
 およそ、国家が崩壊する、そして独立を維持できなくなるということは、何も有事だけでないと思います。いろいろな要素があるんだろうというふうに思いますけれども、そういう中において、その一つの大きな原因、独立を維持できないというような事態になる原因となると思われる有事というものに対して、今回の法律は、その趣旨を申し上げているわけでございます。

首藤委員 全然お答えになっていないと思いますよ。おわかりだと思いますけれども、そんな有事だったら、そういう武力攻撃がある、それに対応しなきゃいけない、それだったら、我が国の独立はまた別の問題なんですよ。

 我が国の独立が侵されるというのは、それは、本当に日本の独立が危うくなったのは、例えば明治維新のころとか、もう本当に限られたケースなわけです。それは、西欧列強がすべて日本を取り囲んで、開国かあるいは植民地か、そういういろいろな、国の独立が本当に侵される状態の中でどういうふうに対応しなきゃいけないか、これが明治維新なんですね。あるいは、第二次大戦のときに日本軍が敗戦になって、日本が占領されている。それが独立の状態です。

 そうした、独立が侵される状態というものは、どのように我々はイメージすればいいのか。いかがですか。

福田国務大臣 再三申し上げているとおり、有事という、日本の国家にとって平和と独立を維持できなくなるような事態に対するこれは対処措置でございます。

首藤委員 全然理解できないですよね。
 例えば、九・一一テロが起こっても、アメリカは別に独立が侵されているわけでもない。あるいは、いろいろなところで戦争が起こっても、アメリカの独立というのは、アメリカは独立宣言以降、独立しているわけですね。

 だから、このように、独立を維持しなきゃいけない、確保しなきゃいけない事態に備えていなきゃいけない、そうしたものはもう全く違う法律でなきゃいけないわけですね。ですから、それは、他国が攻めてくるかもしれません、そういうような法律では使う言葉ではないわけですよ。

 かといって、これだけ優秀な方がおられるのに、ただむだな言葉として、ただごろ合わせで独立という言葉を入れていると私は思わない。一体なぜ、この独立というものをこの法律に冠しなきゃいけなかったか、そこのところを正直に言っていただきたい。

福田国務大臣 なぜそういう御質問が出るか、私はなかなか理解できないんですけれども、武力によって平和を脅かされるということ、また、武力によって我が国の、主権侵害ということもございます、独立という言葉でももちろんいいわけです、独立を損なわれるというか、危うくさせられる、そういうことがあるわけですね。有事の場合にはそういうことを目的とする場合もあるわけですから、やはりそういう事態をも想定して今回は平和と独立ということになっているわけで、それは、平和だって程度の問題があるということもあるかもしれませんよ。独立というか、その前の段階ももちろんあるかもしれぬ、単なる一部的な損害というようなこともあるかもしれぬけれども、最終的には、国家の主体に対して影響力を及ぼそうという、すなわち独立を脅かそうという、そういう事態における対応策を今回この法律でもってお示しをしているところでございます。

首藤委員 これは全く明快でないわけですよ。結局、独立ということの重さ、独立が侵されるかもしれない事態があるということの想定、そしてそれに対処しなきゃならない、それはもう大変なことですよ。日本の主権が侵されていく、それに対する対応というのは、こうした緊急に出してくる法律案じゃなくて、本当に国を挙げて国民の隅々まで理解される法律をつくらなかったら、法律にならないじゃないですか。

 これは、有事だから、たまたまもしかしたら攻めてくるかもしれないというのに対処しているのであって、一国の、日本のような巨大な国の独立を侵そうという場合は、そういう国があるとしたら、それは、同じようにその国も運命をかけてくるということですよ。ですから、それは世界史における大変な事態であって、その大変な事態に日本はどう備えるかという法律案でなかったら、こういう独立という言葉が法律に冠されるのは大変おかしい、私はそういうふうに言わざるを得ないんですね。ですから、その意味を、官房長官、よく考えていただきたいと思うわけであります。

 ただ、この問題だけ話していますと、これはもう永遠に時間がなくなってしまうということですから、その点はぜひ理解していただきたいんですが、この内容に幾つか不明な点があるので、質問をさせていただきたいと思います。

 例えば、まず二条の五ですね、指定公共機関という言葉がございます。これはもう既に何度も問題になりまして、政府からも見解を出されているわけですが、指定公共機関、すなわち軍隊以外のものがどのように関係してくるかということに大変関心がございます。

 それは、例えばさきに起こった大戦、例えば半世紀前でも結構です。それでも、どのように日本のさまざまな組織が巻き込まれていったかということを考えると、いろいろなことが考えられるわけです。

 そこで、文部科学大臣にお聞きしたいわけですが、だんだんと国立大学は独立行政法人化してくる、独法化してくると言えますね。そうすると、この指定公共機関の中に独法、独立法人というものも当然入ってくるわけですけれども、そうすると、大学も、あるいは場合によってはこの中に含まれる可能性があるのか、協力機関として含まれる可能性があるのかどうか、いかがでしょうか。

遠山国務大臣 この法律案におきましては、国の責務として国土や国民の生命、身体、財産を保護するために、組織及び機能のすべてを挙げて万全の措置を講ずるよう定めておりまして、文部科学省も、国の機関としてその責務を果たしていく必要があるものと考えております。

 法律施行後二年以内を目標として整備することとされております法制におきまして、今お話しの大学等をどのように位置づけていくかということに関しましても、この法律の成立後、内閣官房等関係省庁と相談しながら、具体的な内容を検討していきたいと考えております。

首藤委員 私は、大学教師として長年奉職した体験からも、また前大戦の悲劇からも、日本の将来を支える若者が不用意な形で巻き込まれていくのは大変好ましくない、そういうふうに考えているわけですが、そうしたことを考えると、大学というものが、あるいは大学だけでなくてもさまざまな教育機関というのが、紛争時に当然のことながら真っ先に巻き込まれていくんです。

 それはなぜかといいますと、現代の危機管理において一番重要なことは、空間の確保なんです。例えば、災害が起こったら、阪神大震災のときも、空間の確保というのが重要で、まず学校の中にテント村をつくっていったりするわけですね。そういうことを考えると、日本の中において、特に都市部においては、空間を持っているのはもう本当に教育機関しかないというようなところがたくさんあるわけです。ですから、ある意味において、真っ先にその空間が使用されていくわけであります。

 また、大学の持っている空間というのは非常に緑も多くて、御存じかもしれませんが、例えば慶応義塾大学、その日吉のキャンパスというのは、戦争中は統合参謀本部の地下ごうになっていたわけですね。そして、日吉というのは、ついこの間まで局番が横浜の〇四五ではなく〇四四だった。なぜかというと、川崎から、海辺から電話線が直通になるように、川崎の電話番号になっていたわけですね。ですから、それぐらい大学のキャンパスというのは、軍事的な行動をとるときには最も貴重な存在になっていくわけです。

 こういうものに関して、この有事対応に関して、大学の存在はどのように位置づけされているのでしょうか。文部科学大臣、もう一度お答え願いたい。

遠山国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、大学を含めまして学校教育機関は、児童生徒、学生の安全というものを第一に考慮しながら、しかし、この法律の成立後に、関係省庁と相談しながら、具体的な内容については今後検討していきたいと考えます。

首藤委員 文部科学大臣、私は、今後決められていく細則、二年後の細則を聞いているのではないんです。文部科学大臣として、教育機関が有事に対してどう対応するかという理念を聞いているんですが、その点に関してはいかがでしょうか。

遠山国務大臣 教育機関は、もともと、そこに学ぶ児童生徒、学生たちがその教育の理念をきちんと身につけるために教育作用をあるいは研究作用を行うというところでございます。
 その中で、今委員が空間の利用という角度からの御指摘でございますが、もちろん社会的存在としての大学ないし学校の空間がどのように今後日本の国民の安全に資していくかというようなことも考えられるところでございますけれども、もちろんすべての法制あるいはすべてのいろいろな状況の中でこれらについては考えていくべきものと考えておりまして、今後、十分検討してまいりたいと思います。

首藤委員 文部科学大臣、教育は国のかなめですよ。
 二年後に確かに細則は決めていきます。しかし、その細則を決めていこうという方向性を示しているのがこの法律案ではないでしょうか。この法律案をやるときには、細則は結構です。どのキャンパスが何平方メーターで、どういうふうにして、どういうふうに協力して、それは結構です。あるいは、どのように学生を避難させていくのか、どのように協力を求めていくのか、それも結構です。しかし、そうではなくて、有事が起こったときに、国の独立が危うくなるような状況に対して、若者はどう行動したらいいのか、教育機関はどう行動したらいいのか、教師はどう行動したらいいのか、その理念を今伝えてください。いかがですか、文部科学大臣。

遠山国務大臣 今の御質問に対しまして、今の時点でどのようにお答えすれば議員の御質問に的確に対応できるのかということはなかなか難しい状況でございますけれども、しかし、教育の果たす役割、いずれにいたしましても大変重要でございますし、また、学校という施設の持っている社会的な存在の意義、そういうものを十分に勘案して、それぞれの時点において適切な判断をしていくというのが私どもの立場でございます。

首藤委員 それはちょっとひどいんではないですか。それはもうこの法律以前の問題ではないですか。文部教育はそれではだめじゃないですか。有事じゃなくたって、今、世界ではあるいは日本でもどんどん環境が変化している。それに対して、もう教育を変えていかなきゃいけないのにそんなことをおっしゃっていたら、それは一体どういう責任を持って文部科学大臣をやっておられるのかわからないと思うんですが、この問題は、やはり今の段階で方向性を決めなきゃいけない。

 もう戦争になれば、紛争になれば真っ先に使われる空間を考えると、そこで教育を受ける学生のことも考えていかなきゃならない、生徒のことも考えていかなきゃならない、当然のことなんですね。ですから、そうでなければこの法律自体が成り立たないんですよ。官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 指定公共機関についても、この法律でもって、その協力を求める。そして、それについては、基本理念――ちょっと今すぐ出てこないので……(首藤委員「待ちますから、ゆっくりやってください」と呼ぶ)指定公共機関の責務というのは、これは必要な業務について実施する責務を有するということになっておりますけれども、一方、そういう措置は、これは国の責務として第四条に規定がございます。

 国の、国民の安全を保つため、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、組織及び機能のすべてを挙げて、武力攻撃事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。これは国の責務でございます。そういうような基本的な考え方に基づいて、これから実はこの法律に基づくいろいろな具体的な国民の保護に関する法律をつくっていくわけでございます。

 二年以内ということでございますけれども、その中に、この指定公共機関の役割、そしてまた、それに伴いどのようなことをしていくか、これはもうまさに、いろいろな方の意見を聞きながら、国民的な理解を得ながら議論を進めて結論を出していく、そういうことを考えているわけでございまして、多少時間はかかりますけれども、そのぐらい慎重にやっていこうというように考えているところでございます。

首藤委員 官房長官、私の質問は、別に大学のことだけじゃないんですよ。この二条で定義されている公共性、公益性というものは何か。それにはどういう公共機関が含まれるのかということをお聞きしているわけですよ。

 例えば、国立大学の独法化という話をしました。では、私学はどうなんですか。いかがですか、官房長官。

中谷国務大臣 基本的な考え方でございますが、このような武力攻撃事態で自衛隊などが活動する場合に、いろいろな場所の必要性とかございますけれども、防衛庁として申し上げますと、自衛隊の行動が合理的に必要な範囲を超えて国民生活を妨げることがあってはならないということを基本的に考えておりまして、現に、教育現場の話でございますけれども、そういう教育を継続している場所などの土地を供する問題につきましては、その教育に重大な支障を与えることがないように配慮していくというのは当然でございます。

首藤委員 私は、防衛庁長官がなぜ席を立たれたかよくわかりません。越権行為じゃないですか、それ。私は、別に防衛庁のことを聞いているんじゃないんですよ。文部、大学のことを聞いているんですよ。どうしてそれを防衛庁長官がお答えになるんですか。それは、軍が教育に対して干渉していることじゃないですか。違いますか。おかしいじゃないですか、どう考えたって。

 どんなすばらしいことを言っていただけるのかと思って聞いていたら、結局、それは自衛隊が動いたときにどういうふうにやるかということで、それを聞いているんじゃないんですよ。学校教育機関の公益性についてお聞きしているわけですよ。官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 指定公共機関とはどういう範囲か、こういうようなことになろうかと思いますけれども、これから政令で指定するわけでございますけれども、まず、個別の法制におきまして、指定公共機関に実施を求めることが必要となる対処措置の内容を具体的に定めた上で、個別の法制が定める事項ごとに、当該機関の業務の公益性の度合い、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえまして、当該機関の意見も聞きながら総合的に判断するということでございます。
 指定公共機関については、そういうような考え方をいたしております。

首藤委員 今私が聞いているのは、指定公共機関が具体的に何をするかということを聞いているんじゃないんですよ。おわかりになるように、どういうものが公益性なのか、今だって私企業があり、NPOなんか、NGOもあったりする、どういうものが公益性なのかということを聞いているわけですよ。そして、有事のときにはどういうものが、それが公益性あるいは指定公共機関として協力しなきゃいけないかということを聞いているんですよ。いかがですか。

福田国務大臣 公益的な事業を営む法人ということを申し上げておりますけれども、これは、その業務目的が営利目的などでありますが、その業務が公衆の日常生活に密接な関係を有する法人ということであります。
 また、民間の非営利団体につきましては、指定公共機関としてではなく、国民の協力の一環として、それぞれの置かれた状況の中で、国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置を実施する際にできる限りの協力をいただく、こういうような考え方をしております。

首藤委員 官房長官、私は、別に揚げ足をとろうと思って言っているんじゃないんですよ。有事というものがあって、もし、おそれがあるという、そういうことが公示されたら、どうみんなが行動するかということで言っているわけですよ。そうしたら、そのときにキャンパスにたくさんいる大学生、一つのキャンパスで二万人ぐらいなのはたくさんあるんですよ、どう動かさなければいけないのか、あるいは、どういうふうに組織が対応しなきゃいけないのか。

 ですから、有事ということを言うと、二年後という、実際の細則は結構です。まず、一体何が最初に問題となってくるかということが理解されてなければ、そして法律に組み込まれてなかったら、それは二年後といったって、三年後といったってできないじゃないですか、対処は。

 では、例えば、有事という、あるいはそういう危険があるということが公表される、どうするか。福田官房長官ぐらいだったら悠然とされておられるかもしれませんが、私だったら、真っ先に銀行に走ります。銀行で現金を引き出そうと思ってしまいますよ。そうすると、では、公益的な事業を営む法人、これには銀行は入りますでしょうか。

福田国務大臣 今、指定公共機関というように考えておりますのは日本銀行ということでありまして、日本銀行以外の一般の銀行につきましては、対処措置として実施すべき業務が想定されないということから、指定公共機関として指定することは考えていないところでございます。

首藤委員 私は、最初、この冒頭に当たって、諸国民は、過去に体験した最後の戦争をモデルとして有事態勢を考えると申しました。

 まさにそうですよね、この五十年間、平和で安全な社会がありました。テレビを見てください。CNN、BBCを見て、例えば南米の国だって、ついこの間まで世界の経済の優等生と言われていたアルゼンチンとかそんな国が、もう一瞬で崩壊していく。別に他国が攻めてくるんじゃなくたって、もう銀行の取りつけ騒ぎで、商店の焼き討ちですよ。それは、もう自衛隊どころか、軍隊どころか、とめようがないというような状態になっていくわけですよね。

 ですから、当然のことながら、有事においては、国民生活に関係する主要な機関、それはどう対応するのかというのがこの基本計画の中に入っていなかったら、これは有事法制にならない。当たり前のことじゃないですか。

 武力攻撃だともっとそうですよ。武力攻撃のおそれだけで、情報だけでパニックになるんですよ、武力攻撃の場合は。当たり前じゃないですか。イスラエルがあれだけ、スカッドミサイルが飛んでくる、当たりやしないということは軍事専門家はみんな知っているんですよ。途中でばらばらになって落ちてくる、そんなもの効果がない、そんなことわかっている。しかし、それだけでも、もうイスラエル全体が湾岸戦争のときに大パニックになっていった。ですから、ミサイルが飛んでくるということだけで、やはり我々とか、一般の方々は物すごい恐怖感を持つようになるわけですね。

 先ほど、NGOに関しては、それは状況を見てという話があるわけですが、認可法人なんかはここに含まれるでしょうか。

福田国務大臣 今回お出ししている中では、認可法人としては、日本銀行、日本赤十字社ということで考えております。

首藤委員 日本銀行、日本という名前がついておりますよね。日本放送協会、日本という名前がついております。日本赤十字社、日本という名前がついております。それはそうだと思うんですね。

 しかし、皆さんよく御存じのとおり、日本赤十字社というのはIFRCの日本の支部なんですよね。ですから、言うならば、多国籍企業のジャパン・ブランチなんですよね。これは確かに認可法人でございますが、私は、定款を取り寄せてみました。国際赤十字の仕組みと日本赤十字の定款を取り寄せてみました。この定款の中においても、一体どの箇条がいざとなったときに日本政府の対応に呼応してくれる定款、その箇条が国際条約になっておりますでしょうか。いかがですか。

福田国務大臣 日本赤十字社は、日本赤十字社法及び日本赤十字社定款に基づいて、赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された人道、中立、奉仕等の諸原則にのっとり、赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的といたしております。この赤十字社法の第一章第一条「目的」もございます。それから、定款の総則の三条と、「業務及びその執行」の中において第四十七条、この条項にその該当する任務というものが記述されていると考えます。

首藤委員 今まで日本赤十字社はいろいろ日本に協力してくれました。紛争地にも行ったり、やってくれました。それは他国の災害なんですよね。しかし、日本が今度は戦争当事者となったときに、果たしてこれが今までのように機能してくれるかどうか、そこの担保はどうなっていますか。

 では、ちょっと話を変えましょう。
 日本赤十字社のそういった活動ができるのは、国際人道法に基づいているわけですね。国際人道法、一九四九年ジュネーブ四条約、それから七〇年代にできたそれの第一議定書、第二議定書。第一議定書、第二議定書も日本は批准していないじゃないですか。

 どうしてこういう状況の中において、日本赤十字社が日本の求めに応じて人道救援活動を十分にできる、そういうふうにお思いでしょうか。私の考え方、間違っていますか。法務大臣、いかがですか。

森山国務大臣 条約批准の問題は私どもの所管とはちょっと違うと思うのでございますが、御指摘の問題点はあろうかと思いますので、所管の大臣にお聞きいただいたらよろしいのではないでしょうか。

首藤委員 ちょっと恐らく質問を聞いておられなかったと思うんですが、批准の問題ではなくて、批准がなしにそういう追加議定書の一条、第一議定書、第二議定書に盛られた行為が発生した場合に、どういう基準で、例えばこの認可法人である日本赤十字社が日本政府の求めに応じて医療活動をすることになるのか、それを法務大臣としての法的な見解をお聞きしているわけです。

福田国務大臣 追加議定書のことだと思いますけれども、これは今現在入っておりません。しかし、今現在、入る方向で検討中でございます。

首藤委員 何かもう話がぐちゃぐちゃで、ちょっと私自身も混乱してよく、何を聞いていいかわからなくなってきたんですが、時間がもう半分過ぎましたので次の問題に移らせていただきます。

 次の問題は、やはり同じように大きな問題でございまして、日米安保と日米の共同対処という点について御質問させていただきたいと思います。

 これは、やはりこの法律において一番問題だと思うんですね。二年後にアメリカとのどういう協調体制、共同対処をするかということを明確化するというふうに言われておりますけれども、果たしてそんなことでいいのかということであります。もちろん二条のことは定義でありまして、具体的には二十三条に二年後に明記するというふうに書いてあるわけですが、アメリカ軍との関係ですよね。

 日米安保というものを考えると、その日米安保自体も、私たちも、ここにちゃんとありますが、この小さい字をなかなか読むことがない。しかし、読むと、ええっ本当というようなことに最初からぶち当たるわけですね。要するに、この日米安保というのは、集団的自衛権を前提として成立している条約なんですね。そして、この条約ができた前提というのは、あくまでも、冷戦が始まろうとしている、朝鮮半島が紛争になってくる、自由世界の権益や思想を……

瓦委員長 記者会見があるんですよ。

首藤委員 では、質問を変えますか。途中でいなくなるというのはちょっと早目に言っていただければ、じゃ、防衛庁長官がおられますので、防衛庁長官に言っていただくといいんですが。

 この日米安保というのは、武力攻撃事態、日本が紛争になるような状態においては、アメリカが事実上日本を統治、指導することを前提としてつくられているということがだんだんと我々もわかるようになってきました。

 例えば、それを最初にわからせてくれたのは地雷の問題ですね。日本には百万個の地雷があって、しかし、自衛隊にはどうして地雷マニュアルがないのか、地雷戦のマニュアルがないのかというと、いや、実際日本で有事になったらアメリカ軍が来て指導するということです。ああ、そうかと。日本の自衛隊法、自衛隊というのは幾つか重要なところが抜かれていて、要するにアメリカ軍とセットになって初めて行動できるということがわかってきたわけであります。

 最近、有事においてアメリカがどう行動するか、あるいは、アメリカ軍が行動したときに、その国の国民はどう対応するのかということが非常に明示的な例がございました。

 それは、最近アルカイダと、例のアルカイダグループですけれども、アルカイダと関係のあると言われているフィリピンのアブ・サヤフの掃討にフィリピン国軍が出ていく。それにアメリカ軍が参加する。これに対してフィリピン国民の大変な反発がありました。私はこれは、ああそうか、フィリピンには反米感情が強いんだな、そういうふうに思っていたわけであります。

 しかし、よく調べてみると、そうではなくて、他国の軍隊が駐留して、そこで軍事行動を自由に行動できるということは、その状態においてはその国の主権がないということがわかってきたわけです。

 では、日本ではどうなるか。日本でどういうふうになるかということを外務省に聞きました。これは、外務省から、三月二十八日付、「武力攻撃事態における米軍への国内法令の適用除外」として提出されたものです。その一に書いてある。「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特段の取決めがない限り接受国の法令は適用されない。」ということです。要するに、戦争になってしまえば、軍隊を駐留している限りは、その駐留軍は自由に行動することができる。当たり前のことが、国際法上、国際的には認められているということであります。

 もちろん、その「特段の取決め」というのは、日米地位協定などがあるわけですが、地位協定もよく読んでみますと、日米地位協定第七条、公共役務の利用ということに関しては米軍の優先権ということをきちっと書いてある。よく勉強してみると、ああ、そういうことだったのかというふうに思うわけであります。

 そうすると、そういう状況がどうなのか。そして、やはり周辺国を見てみました。例えば、日本と関係の近い韓国ではどうなるのかというふうに見てみたんですね。そうすると、韓国では、有事においては、武力攻撃が行われた事態では、韓国軍もアメリカ軍の指揮下に入るということがわかっているわけです。要するに、有事になれば、その軍隊が駐留している限り、国際法上は、その軍隊の優先権というのは認められるということであります。

 そうすると、一体、日本では、アメリカ軍との関係において、日本の憲法が何あろうが、日本の法律がどうあろうが、日本の自治体法がどうあろうが、アメリカ軍の行動が最優先されるということになるじゃないですか。中谷防衛庁長官、私の解釈は間違っていますか。

中谷国務大臣 基本的に、米軍というのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に我が国を防衛するということを主たる目的の一つとして、我が国との合意に基づいて駐留をいたしておりまして、お話ししたとおり、一般の国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されませんが、その接受国の法令を尊重しなくてはならないというのが当該軍隊を派遣している国の一般的な国際法の義務でございます。このことは我が国に駐留する米軍についても同様でございまして、このような考え方に基づいて、地位協定十六条には、我が国の法令の尊重義務が定められているところでございます。

 そこで、現実に武力攻撃がされた場合の行動につきましては、日米間で日米防衛協力のための指針が取り決めをされておりまして、攻撃された場合には、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に日本が行動し、極力早期にこれを排除する、その際、米国は日本に対して適切に協力をする、この協力のあり方につきましては、それぞれ場合によって異なりますけれども、整合のとれた共同の作戦の実施及びそのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情報交換についての協力が含まれるというようなことで調整メカニズムが設置をされておりまして、それぞれ日米間で調整をするということになっております。

首藤委員 それは、紙の上だったら、やはりそういうことも言えるかもしれない。しかし、私は、そうではないなということがつくづくわかるんですよ。

 例えば九・一一のテロが起こったときに、ひょっとしたらアメリカ軍の軍事施設が攻撃されるかもしれないということで、アメリカ軍の基地、例えば私の出身の神奈川でもそうですが、例えば相模原、正面ゲートに土のうを積み、重機関銃座をつくって重機関銃を据えているわけです。アラート状態です。引き金に手がかかりますよ。

 要するに、日本との共同、それこそ日本とのさまざまな、いろいろな協調もあるでしょう。しかし、たかだか、たかだかという表現は悪いかもしれぬかな、九・一一のテロがあって、アルカイダのがあって、あるいはテロがアメリカ軍の海外施設を襲うかもしれないという情報だけで、アメリカが土のうを積み、機関銃座を据えつけるわけですよ。機関銃座を据えつけるというのは、危ない何かがあっても、いや、これはおどかしですよ、ブラフですよというんじゃないんですよ。本当に、例えば火薬を積んだダンプカー、あるいは火薬でなくても突進してくるダンプカーがあれば、重機関銃を撃つ覚悟でそこへつくっているわけですよ。

 ですから、そんなふうに、紙の上ではそういうふうに打ち合わせするということになっても、たったこれだけのことですら、アメリカ軍は何にもやらずにどんどんやって、本当にちょっと間違いがあれば、あのときだって発砲していたわけでしょう。現実は全然違うじゃないですか。どうですか、現実との差は。

中谷国務大臣 今回の議論につきましては、武力攻撃事態等に対してでございますが、その際の枠組みとして、調整メカニズムがあって、日米合同委員会、日米政策委員会、これは局長級の代表者の構成、並びに合同調整グループ、課長級の代表者からの構成、並びに日米共同調整所、これは制服組の代表からの構成ということで、それぞれ調整メカニズムがありまして、指揮運用系統についての調整が行われているわけでございます。

 お尋ねの、テロに対する警戒につきましては、これは、安全保障上の認識の問題でありまして、米軍基地につきまして、米軍みずからがそのような認識に基づいて警戒監視を行ったということでございます。

首藤委員 中谷長官、よくぞ言ってくれました。米軍と日本の間は認識が違うんですよ。我々にとってみればこれは遠い遠い話であっても、世界各地にいろいろな基地を持っているアメリカ軍にとってみれば全然違う、もう本当に身近な問題なんですよ。

 具体例を言いますけれども、さっきのそういった機関銃座をつくることに関して、防衛庁は、あるいは政府はどの程度事前に相談を受けたでしょうか。長官、いかがですか。

中谷国務大臣 米側の警戒監視の度合い等につきましては、事前に調整を受けておりませんが、これはアメリカ軍の基地の保全並びに警戒監視の問題でございますので、その状況に応じて警戒をするというのは当然のことであるというふうに思います。

首藤委員 繰り返しますと、要するに、有事あるいは我々がおそれがないと思っていても、アメリカは、おそれがあると思ったらやるということですよ。そういうような状態の中で、どうしてこの法律が成立していくのかということは大変私は疑問に思うわけですが、そればかり言っていてもしようがないので、これはまた別な機会で質問させていただきます。

 次に、第五条、六条、七条には、地方公共団体や指定公共機関の責務が書いてあります。これは、私企業に関してと同様に、国民に対しても明確な責務が定義されておりませんが、一体、有事となって基本計画が発表されるときに国民は何をしていればいいのかということなんですね。

 例えば、先ほどの、国の独立が侵されていくようなところで自衛隊が動きます。国民は何をしていればいいんですか。テレビでワールドサッカーでも見ていればいいんですか。一体、それに関しては、地方公共団体それから指定公共機関に対して、あるいは国民の一人一人に対して、どういうメッセージを送られるんでしょうか。

中谷国務大臣 基本的な考え方でございますが、国として、そのような事態を防ぐための対処の措置並びに国民の皆様方が安全なところに避難をする措置、並びに米軍の行動の措置という大きな柱があろうかと思います。

 そこで、住民の皆様方は一刻も早く安全なところに避難をしていただきますけれども、この住民の避難のための警報の発令、避難の指示、避難の誘導等については、今後、国民の保護のための法制において具体的に定めていくということでございます。
 この避難誘導が必要な場合としてさまざまな状況が想定されることから、屋内避難や避難所への避難等の具体的な方法、また、関係機関の意見等を踏まえながら、住民の安全の確保のために万全の措置が講ぜられるように、国民の保護のための法制の整備の中で十分検討をしてまいる方針でございます。

首藤委員 私は、やはり日本という国の限界を、最近の瀋陽での総領事館の問題でつくづく察知したわけであります。童話には裸の王様という話がありますけれども、本当に日本は裸の王様だったとつくづく感じるわけです。

 私は、中谷長官、いろいろ話し合って、安全保障委員会でも話し合って、長官の持てる経験そして知識には最大の敬意を払うものであります。しかし、その中谷長官をしてもこの程度の理解しかないのかと、愕然とせざるを得ないわけですね。

 例えば、有事には避難をする、冗談じゃないですよ。有事になってごらんなさい、避難しちゃいけないんですよ。国民がみんな避難し始めたら大混乱になっていって、要するに、紛争地に行けばすぐにわかるのは、真っ先に行われるのはチェックポイントとカーフューですよ、チェックポイントとカーフュー。我々は紛争地に行くとき、チェックポイントとカーフュー、チェックポイントとカーフュー、チェックポイントとカーフュー、これだけ、これを守らなければ我々は生きて帰ってこれないんですよ。だから、真っ先にやるのは通行制限ですよ。

 例えば武力攻撃を行ったときに、真っ先に通行制限しなきゃいけない。避難じゃないんですよ。真っ先に通行制限しなきゃいけない。例えばそれは、この日本でもそう書いてあるんですよ。大規模地震対策特別措置法二十四条にもちゃんと明記があるんですよ。

 どうして、そういう知見がありながら、どうして、そういう体験がありながら、この法律にはチェックポイントが明記されてないんですか。いかがですか。

中谷国務大臣 このお話につきましては、民間防衛の部分に類することでありますし、また地方自治体の役割についてであろうかと思いますが、お話の中にあったカーフューというのは、外出制限というようなこと、また交通の規制も必要でございます。

 この方法につきましては、今後、国民の保護のための法制の整備に当たって検討すべき課題でございまして、本日首藤先生からいただきました御意見、また関係機関の御意見、国民的議論の動向を踏まえながら、政府として、住民の安全の確保のために万全の措置が講じられるように、早急に検討に着手をしてまいりたいと考えております。

首藤委員 検討は本当にしていただかなきゃいけないんですが、最初におっしゃった、これは民間防衛の話である、チェックポイントは民間防衛の話である。とんでもないことですよ。軍を通行させるためにチェックポイントを設けるんです。軍の行動を優先させるために、軍の部隊を優先して通すためにチェックポイントをつくるんですよ。全く話が逆じゃないですか。とても専門家の中谷防衛庁長官が言われる言葉とは思えませんが、何かの間違いでつい口が滑ったものだと解釈して、先に進ませていただきたい。

 しかし、そのチェックポイントがどんなに難しいかというのは、これは本当に難しいんです。それはおっしゃったように、国民との接点になるわけですね。きのうですか、十九日に山口で、警察が検問をしていたら、それを車が突破して、壁に激突して四人が死傷した。

 要するに、今の日本の社会の中で、五十年間平和な社会で、チェックポイントをつくっても守らないんですよ。我々は、何度も紛争地へ行けば、チェックポイントを越えたら、越えたら次の瞬間には後ろから弾が飛んでくるとわかっていますよ。しかし、多くの日本の国民にとっては、チェックポイントをつくったって、何だ、そんなものは不便だといって通っていってしまうわけですよ。

 ですから、一体、チェックポイントは、では長官、自衛隊が守るんですか、あるいは警察が守るんですか、どちらですか。

中谷国務大臣 具体的な方法につきましては、今後、国民の保護のための法制の整備に当たって検討をして、その中で整備する問題でございまして、検討いたしたいと思います。

首藤委員 いや、ちょっと待ってください。これは歴史を振り返ってください、歴史を。日本の軍が暴走していく、その中で警察とか内務省とかいろいろ対立があったわけじゃないですか。防衛庁長官、これはもうよく御存じでしょう。昭和八年、ゴーストップ事件。大阪の天神橋筋の交差点で、ゴーストップ事件というのがあったでしょう。警察と軍とどっちが優先するのか。交差点や交通や通行に関して、そこがはっきりしてなかったら、こんな法律ができたって、最初の日からだめじゃないですか。いかがですか。その事件の反省はどうですか。

中谷国務大臣 そういったトラブルが起こらないように、一つは、政府の武力事態対策本部で各省の調整を行いますし、具体的にどのようなやり方で、どの省庁が、またどのような団体がやるかということにつきましては、今後さまざまな御意見、過去の教訓等を生かしながら整備し、検討をしていく問題でございます。

首藤委員 私はそういうことを聞いているんではないんです。この事態法において、実際に市民の行動を規制するときに、警察権が優先するのか、あるいは軍事権が優先するのか。それを、昭和八年の寺内師団長の第八連隊の問題で、いわゆるゴーストップ事件と言われて、日本の軍の暴走が始まってくる最初のきっかけじゃないですか。今のこの時代において、警察権がチェックポイントにおいて優先するのか、あるいは軍事が優先するのか、それを明確に言っていただかなかったら、この法律は成立しないではないですか。私は権利の問題を言っているんです。

村井国務大臣 ただいま首藤委員御指摘の大阪のゴーストップ事件というのは、確かに、当時の大阪の師団長寺内寿一でございましたか、それと大阪府警察部長の粟屋仙吉との間の対立にまで至る大変有名な事件でございますが、これはある意味では大変つまらない事件でございまして、交通信号に従わなかった兵士を警察官が注意した、それに対しまして、兵隊が、陛下の兵士に対して何たる失礼なことをするかというようなやりとりになった。全く、平時における軍と警察との対立にすぎないわけであります。

 有事の場合ということで、今御議論をいろいろいただいているわけでありますが、私の理解するところでは、いわゆる有事といいましても、まだ一般国民がまあまあ通常の生活を営めるような状況というのは国土の上で十分あり得るわけでありまして、その部分につきましては、私は、警察が十分に機能できる部分があるんだと思います。

 その限りにおいて、例えば住民の移動につきまして、先ほど委員は、例えば通行の規制であるとかチェックポイントだとかいうようなお話がございましたけれども、自衛隊の機能のために必要なチェックポイントの設定、それの運用というのはこれまた別でございましょうが、例えば住民の避難のために警察がその誘導の任に当たるというような機能、そういうことも十分私は考えられることだと思っております。

 そしてまた、いわゆる有事という状態になりましても、通常の生活が営まれているような状況の場面における治安の維持というのは第一義的に警察の責任でございまして、そのあたりのところは、これはまず、ある意味では自明のことでありまして、現行の法制でも私はそのように理解できることだと思っておりますけれども、なお、いろいろ、この委員会でも累次御議論がございますような問題につきまして精査を遂げまして、二十二条、二十三条でございますか、この法律の案にお示しいたしておりますような問題点につきまして詰めまして、いずれ法制度の整備をきちんとしたい、そういう趣旨で議論が進められている、そういうプログラム法であるというふうに理解している次第でございます。

首藤委員 それは、今、確かに平時のときではありますけれども、実際に有事になってきている、有事のその境目が問題なんですよ。ですから、そこのところをきちっと決めておかないと、そこのところをきちっと明記しておかないと、この法律自体が機能しないんだ、そういうふうに思うわけです。

 先ほど、カーフューと言いましたけれども、外出禁止令ですよね。外出禁止令があるというのは、決して我々が体験しなかったことではないんですよ。例えば、東海村の核燃料の放射線漏れ事件、いわゆるジェー・シー・オーの事件というのがありました。このときには、その付近の住民が外出禁止になっているわけですね。それは、十分守って、住民の皆さんは中から出なかったんですけれども。

 ちょっと、最近、私はイスラエル、パレスチナへ入ったんですが、イスラエル、パレスチナは、カーフューは三時間です。三時間というのは、夜間の三時間が外出禁止じゃなくて、一日に三時間しか外出しちゃいけない。ちょっとした紛争状態にあるというのは、そうなんですよね。三時間以上やって、コンビニが閉まりそうだといって駆けつけて、閉まっちゃったからほかのところへ行っているうちに撃たれちゃう、本当に撃たれてしまう。それは、軍事というものは、有事というものは、本当にそういうものなんですね。

 そこで、何を言わんとしているか。なぜチェックポイントを言い、カーフューを言うかというと、外出禁止のことを言うかというと、ここに明記されている憲法を尊重し、憲法の枠内でという論議、一番最初の段階から、要するに宣言されてから、緊急事態が宣言されたと同時に、国民の自由と権利は最初の段階から最小限ではなくて最大限規制しなければいけない状況というのはあるじゃないですか。ですから、それをこの法律の中に何も書いていないわけですから、それはもうごまかしじゃないですか。

 現実に体験しないからそういうことはわからなかったという、そうかもしれないけれども、実際の紛争地、実際の戦争になれば、真っ先に、それが最初に出てくるわけですよ。ですから、そういうものに対してはどういうふうに考えておられるのか。長官、いかがですか。

中谷国務大臣 お尋ねの武力攻撃事態における外出禁止とか、また交通の統制のような規制につきましては、この必要性、具体的な方法につきましては、今後の課題といたしまして検討していかなければならないわけでございます。

 御指摘のように、安全確保という観点で、政府として国民の身を守るためにそのような規制をすることが適当であるのかどうか。これは、例えば、一般の家庭でも娘さんに対して十時までに帰ってこいとか、また女子寮等にも門限がございますが、これもその安全を守る一つの方法でございますが、どのような方法によって国民の安全を守るかということにつきまして、今後とも検討してまいりたいというふうに思います。

首藤委員 中谷長官、まじめな方ですからおもしろくない冗談を言われるんだと思いますが、不謹慎じゃないですか、こんなに。本当に、こちらは、弾を撃つか撃たないか、時間におくれたら撃つか撃たないかということを言っているわけですよ。

 ですから、それは結局、なぜこれを言っているかというと、後でやる、後でやる、後でやる。後でやることじゃないんですよ。紛争が起こったら、その最初に、一番最初に考えておかなきゃいけない。法律があったら、もう最初の一ページのところに、緊急事態には通行規制をする、市民の行動を規制すると書かないと、この法律自体が実は成り立たないんですよ。これから二年間ゆっくり研究するじゃなくて、そういうことを根本的に抜けていないというのは、だからざる法と言われるんじゃないですか。そこを指摘しているわけですよ。

 やはり一番問題となるのは、この五十年間、一応平和であったこの日本の社会において、一体住民がどう行動するかということの接点が一番重要なんですね。ですから、民主党は、ともかく最初から緊急事態ということを前提として、そこでいろいろ訓練をしながら、その特殊形態として有事を考えていこうという法体系を考えていたわけです。

 実際に、今の日本の社会あるいは国際社会において、地方公共団体やさまざまなNPOやNGOがどういう行動をとるかということですね。この第七条においては、地方公共団体が当該地方団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して最大限の努力をするということになっています。

 それでは、この私がある島に住んでいたとしましょう。これは、例えば沖縄で、前島という島だったとする。私が、たまたまそこの分校の校長だったとする。自分の生徒がたくさんいたり、そういうところの人たちを、生命や身体や財産を守ろう、そういうときにはどうするでしょうか。ひょっとしたら、そこにおいて、いや、ここは小さい島で、軍隊はおりませんから、全くおりません、どうぞ調べてくださいと。しかし、調べて、いなかったら、そのまま帰ってくださいねという、その可能性があるではないですか。

 要するに、今の国際社会においては、無防備都市宣言というのが自治体側の基本的な生存技術として確立されているわけですよ。これは、太平洋戦争じゃなくて、第二次大戦を見ればわかるように、一九四〇年のパリですか、それからローマもベネチアも、そういう文化遺産を抱えた都市はすべて無防備都市宣言をしていった、それによって侵略や破壊を免れたというのがあるわけですね。

 もちろん、この問題に関しても、第七条においては、国の方針に基づいて、こう書いてあるんです。しかし、国の方針に基づくよりも、国際的な規範や国際慣習法や理念に従えば、無防備都市宣言をしてくる自治体というのは当然あらわれてくるんだろうと思うんですね。もう既にいろいろ議会でこういうのが出ている。それは、何にもないときにそういうふうに出ているわけで、本当に脅威が迫ってきたら、多くの都市が、あるいは多くの自治体が無防備都市宣言をしてくるんだと思うんですよね。

 無防備都市宣言というのは、一九四九年のジュネーブ協定第四条約、七七年の第一議定書に国際的な根拠があるわけですが、日本もこの無防備都市宣言というものに全く直面しなかったわけではありません。一九四一年、フィリピンに侵攻した日本軍を前にしてマニラ市が無防備都市宣言をして、マッカーサー指揮下の米軍はコレヒドールへ撤退したわけですね。マニラ自身は無防備都市宣言を出した。

 それからまた、私自身はまだ確認していないんですが、先ほど言った前島という島があります。沖縄でも集団自決事件という忌まわしい記憶が伝えられている渡嘉敷島のすぐ近くの前島というところで、学校の分校長が日本軍の駐留を拒否して無防備地域を宣言して、結果的に米軍の砲撃と侵攻を免れたという事例が伝わっております。

 この二十一世紀の市民社会では、恐らく現実には多くの自治体が無防備宣言をする、あるいは無防備宣言のネットワークで新しい平和を構築しようとする動きが出てくると思うんですが、そうした状況というのは、日本の現在の自治体あるいは日本の地方行政においてどのように考えているのかということを総務大臣にお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 今委員お話しのように、ジュネーブ諸条約ですかの第一号追加議定書か何かでそういう仕組みがあるということは私も承知いたしておりますけれども、これは日本はまだ締結していないと聞いておりますし、この条約や議定書は私の所管じゃありませんから。しかも、この決定は地方団体ではできない、こういうことのようでございますので、具体的にどういうことになるのか私も定かではありませんけれども、少なくとも、事実上、そういう意思を地方団体が表明することはあり得ると思いますけれども、それは事実上の話でありまして、扱いが、これからはこういう事態が起こればこの法律でやる、こういうことになると思います。

首藤委員 ちょっと答弁が意味不明だったんですけれども。
 先ほどの中で福田官房長官が、ジュネーブ四条約議定書はもうすぐやる予定ですというお話を聞きましたけれども、この四条約の議定書、例えば第一議定書なんか、いろいろ問題になっている、話題になっている北朝鮮ですら加盟しているわけですね。ある意味では国際社会の常識になっているわけです。まあそれは日本にはいろいろな理由があると思うんですが、それはもうすぐ本当に、先ほど福田長官がおっしゃったように、ジュネーブ四条約の議定書はもうすぐ加盟することになっているのかどうか、外務大臣にお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 これにつきましては、この法律のもとで法制の整備が行われますけれども、その中で議論をして、政府全体として議論をしていくということになります。

首藤委員 いや、外務大臣、ちょっと違うじゃないですか。福田長官は、そこに座って、帰る前に、いや、もうすぐやりますとおっしゃったんです。もうすぐとおっしゃったのに、政府がそう言っているのに、どうして外務省は反対されるんですか。いかがですか。

川口国務大臣 締結をするということで、今後進めていくわけでございます。

首藤委員 ですから、総務大臣、ますます、これはもう恐らく、別に私は推測するわけじゃありませんが、これは国内法的にも確立してくるわけですから、そうすると、当然のことながら、攻撃のおそれがありましたら、おそれのあるところ、あるいは上陸してくる可能性のあるところ、あるいはミサイルの射程距離にある都市は、一斉に無防備都市宣言をします。それはたくさん理由があります。日本は文化資産、世界遺産に登録している場所だってたくさんあるんです。国宝が残っているのもたくさんあります。北陸に近い京都なんかはどうですか。

 そういうことを考えると、もう一斉に無防備都市宣言をしたときに、一体自治体は、例えばそこへ軍隊が進行してくる、そこを通らなければ、通過しなければ、そこの道しか戦車は通れない、そこの道しか戦車を載せたトレーラーは通れないというようになったら、全くこの法律が機能しないということじゃないですか。総務大臣、いかがですか。

片山国務大臣 今言いましたように、仮に条約や議定書が締結される、こういうことになりましても、無防備地域といいますか、今委員は無防備都市宣言と言われておりますけれども、この地域を条約や議定書に基づく無防備地域にするかどうか、その決定権は中央政府だ、中央政府ないしは中央政府から委任された者だ、こういう確定した解釈があるようでございますので、地方団体自身が希望を表明することはできますよ、しかし、その地域の決定は、これは中央政府ないしはそれに類する者だ、こういう意味でございます。

首藤委員 いや、それは総務大臣違うんですよ。私がなぜ前島の例を言ったか。前島は、例えば渡嘉敷島の校長に電話したか、それから沖縄県庁の県知事に電話したか、あるいは東京に電話したか、そんなことないんですよ。紛争が起こったらどんどん攻めてくる。手を挙げて、私のところは無防備でございます、どうぞ見てください、そうじゃないですか。国家の意思とかそういうのは、戦争になったらチェックしようがないんですよ。平時だからこそできるんですよ。あるいは大震災でもできるかもしれない。しかし、戦争になったらそんなのチェックできないわけですよ。

 また、すべてが国が決めることだというのは、それは違うんですよ。今のこういう考え方は、国を超えた普遍的な原理なんです。人道法もそうなんです。人道というのは、国家の範囲しかない、それを超えた考え方なんです。だからこそセルビアやコソボに対して人道的介入というのが行われたんでしょう。それは国家や政府が、あるいは虐殺が起こったルワンダ政府も、そういう国家を超えて人道の問題とか人権の問題というのはできるということなんですよ。ですから、全然お話が違うじゃないですか。そういう事態にどういうふうに対応して、それはどのようにこの法律の中で反映されているのか、総務大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 私は、法律的な点と事実上のことは違う、こう申し上げているので、当該地方団体が、委員が言われたような意思を、そういう地域になりたいという意思を表明することはあると思いますよ。ただ、その場合、その地方団体は、分校の校長さんなのか市町村長さんなのか、議会がどう関与するのか、そういうことは何にも決まっていないわけですから、ただ事実上意思を表明することはあるけれども、それを条約に基づく法的な効果のある地域にするかどうかは、中央政府ないしは中央政府に委任された者でなければできないというのが条約の考え方だ、こういうことを申し上げているわけでありまして、実際上の扱いについてはまた私は別の議論になる、それはもう大いに中でこれから議論していけばいいと考えております。

首藤委員 それで結構です。総務大臣がおっしゃるとおりだと思うのですね。ですから、私は何を問題にしているかというと、平時ではなくこういう戦時においてはそういう考えが通用しないということなんですよ。だからこそ国民一人一人が理解して、ああこういうことをやっちゃいけない、こういうことをしなきゃいけないというふうに理解しないといけない。

 そこで問題となるのが、第二章の武力攻撃事態への手続における対処基本方針なんですね。こういう攻撃事態が起こると、当然のことながら緊急事態宣言というものが出されると思っているんですが、防衛庁長官、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 この法案によりますと、武力攻撃事態が発生をしたときは、政府が対処基本方針を定めてこれを公示して周知を図るということといたしております。また、この対処基本方針には、政府としての事態としての認識を明確に示して、国民の理解と協力を得た上で対処措置を実施していく観点から、武力攻撃事態の認定について記載をすることといたしておりまして、このような方法によりまして、事態を示して、そして周知徹底を図るということにいたしております。

首藤委員 長官、だからだめだと言っているわけですよ。もうこれは私だけじゃなくて、恐らく長官もいろいろな軍事専門家に聞かれたと思いますが、対処基本方針を公示してもしようがないのですよ。緊急事態の宣言が重要なんですよ。なぜならば、なぜ私がさっきから無防備都市宣言の話をしているかというと、国民一人一人がその責務を自覚して共同行動をとらないといけないわけですよ。市町村の実際の長とすれば、自分の住民の生命財産を守ろうと思ったら、いろいろな行動をとるのではないですか。だから、国民一人一人が理解しないと意味がないわけですよ。ですから、この基本方針の公示というのは、どうしますかということの公示であって、今は国民一人一人のアイデンティティーを問う、そういう宣言が必要となるわけですよ。

 ですから、例えばアメリカでは、緊急宣言として、プレジデンシャルプロクラメーション、要するに大統領の緊急宣言が要るわけですよ。大統領みずからが国民一人一人に向かって、今はこういうときだから皆さんはこうしてくださいと、それを言わなかったら、国民の対応なんか絶対にできないんですよ。行政機関にああやれこうやれ、やらなかったら私がやりますよみたいなことでは国民は全く動きません。国民一人一人がきちっと理解しなきゃいけない、そして国民一人一人に伝えるために、ありとあらゆる手段を通じてそれをやらなければいけないんですよね。ですから、こうした緊急事態宣言が書いてないこの法律はだめだ、これは私の意見だけではなくて、多くの安全保障問題に関係する人がほとんどすべて言っていることだと私は解釈しているんですね。

 そういうことがなぜ必要かというと、例えばアメリカよりもっと難しいのは、アメリカは戦争というものを決して国家の政策として完全に排除しているわけではないわけですね。ですから、宣戦布告だってあるでしょう。しかし、我が国の憲法の中で宣戦布告ということはあり得ないわけでしょう。そのための武力は行使しないわけでしょう。ですから、そういうことになれば、我々は攻められた敵に対してどういう形で守らなきゃいけないかということをきちんと緊急事態宣言で述べなければいけないわけですね。

 では、そういう緊急事態宣言というものは日本で全然想定していないかというと、決してそうではないんですよ。この防衛実務小六法にもたくさん載っているじゃないですか、そういうケースが。例えば、原子力災害特別措置法では、内閣総理大臣は、直ちに、原子力緊急事態が発生した旨及び次に挙げる事項の公示、原子力緊急宣言すると書いてあるじゃないですか。

 私は、この法律を読んでどこがおかしいのかと思うと、これはやはり原点が自衛隊法にあるからだ、私はそう思うのですよ。非常に読みにくい。非常に古い。もし我々の社会が多少は経験してきた、阪神大震災、あるいは、小規模であったけれども、もしかしたら大事故になったかもしれない原子力事故に対応する、そうした今までに積み重ねた緊急事態、これから、この法律からつくり上げていったら、私は、この法律はもっと読みやすい、国民が理解しやすい内容のあるものになったんではないか、そういうふうに思うんですよね。

 ですから、この法律というのは自衛隊法の改正法であって、我が国の緊急事態に対する緊急事態法制ではない。だから、そこに問題があるということを指摘しているわけですよ。例えば、先ほどの原子力緊急事態の宣言では、まず第一に、緊急事態の応急対策を実施すべき地域、あなたのところは緊急だからもう気をつけてくださいよということを言うわけですよ。これこそ、いわゆる行政のディスクロージャーなんですよ。緊急事態ですよ、北海道の先から沖縄の与那国島も緊急事態ですよと言うのではなくて、ともかくここの皆さんは特に注意してくださいということをはっきり明示しなかったら、日本国全体が右往左往するだけでしょう。

 ですから、この原子力災害特別措置法で明示しているように、緊急事態対応をすべき地域というのを言わなきゃいけない、それから緊急事態の概要を言わなきゃいけない、それから区域の居住者、公私の団体に対して周知される事項、私がこの一時間を使って言っていること、そのとおりじゃないですか。違いますか。どうしてここに原子力災害特別措置法で盛られたような、私たちの社会の知見というものがこの法律に組み込まれていないんですか。官房長官、いかがですか。

瓦委員長 到着早々ですが、いいですか。(首藤委員「いやいや、防衛庁長官に」と呼ぶ)では、防衛庁長官の後に。

中谷国務大臣 地域の指定につきましては、自衛隊法でも、自衛隊法施行令で、百七条で自衛隊の行動の地域を告示することになっておりまして、指定をするわけでございます。

 国の危機管理全般的に整備する法律をつくるべきだというお話でございますけれども、もちろんおっしゃるとおりでございますが、今回整備する法律は、国家の緊急事態への対処として、いかなる事態にも対処できる安全な国づくりを進めていくということにいたしておりまして、この取り組みの一環として、武力攻撃事態という緊急、最大な事態が生じた場合、首藤先生御承知のとおり、国際的にも武力の行使というものが認められておりまして、我が国におきましては、自衛権が発動できる国際的な組織としては自衛隊がございます。こういった国家の存亡にかかわる事態が生じた場合、武力攻撃事態を中心に国全体の基本的な危機管理体制の整備を図るということで、最大級の危機に対処するということでございます。

 そのほかの危機につきましては、これまでも、警察、海保関係、自衛隊法によって体制を整えてきているところでありまして、大規模災害につきましても、災害対策基本法によりまして、災害対策本部の設置、各種の災害対応の措置、災害緊急事態の布告の措置が設けられているところでございます。

 政府といたしましても、今後とも、武力攻撃事態以外の緊急事態に対する態勢につきまして、一層改善強化のための措置を講ずることといたしておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

福田国務大臣 対処措置を宣言するかどうか、こういうふうな……(首藤委員「そうじゃなくて、今までの原子力事態の知見がどうしてこの法律に生かされていないか」と呼ぶ)原子力の災害ですか。ちょっと趣旨がわからないので、済みません。

瓦委員長 ちょっと聞いておられませんでしたね。では、よろしいですか。

首藤委員 いやいや、ちょっと済みません。ちょっと重要なことなので、ぜひお願いしたいんですが、この法律は自衛隊法の改正、だから読みにくいし、内容もわかりにくい。だから、我々が経験した大規模災害に対する対処とか、あるいは原子力災害特別措置法、はっきり言えば、原子力というところを武力攻撃とかえただけでも役に立つぐらい立派な法律があるわけなんですよ。言葉も我々が読みやすい言葉なんですよ。それがどうして、この知見が生かされていないのかということをお答え願いたい。

福田国務大臣 御質問の意味がわかりましたのでお答え申し上げますけれども、原子力災害のときの宣言、その考え方をなぜここに入れないのか、こういうことでありますけれども、この九条の七項に、対処基本方針を公示する、こういうことがございますね。この公示をしてその周知を図る、こういうこと……

首藤委員 そういう質問じゃないんです。

 じゃ、結構です、もう時間ですから。残念ながら、時間です。しかし、ぜひ覚えておいていただきたいんですが、アジアの先哲が言っているように、兵は国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。これは孫子の言葉ですよ。要するに、兵は国の大事だ、だからこそ我々がしっかり考えて、ありとあらゆることを考えていかなきゃいけない。

 だから、憲法調査会でも二年間ずっとやっているわけですよ。同じように二年後にまともなものができるというなら、本当にもう、全国民あるいは全政治家が集まって調査会をつくって、二年後を目指したらいいじゃないですか、こんなものを出すかわりに。私はそうしたことを提言いたします。
 以上で終わります。


2002/05/20

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