2002/05/16

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岡田議員、武力攻撃事態の定義で政府見解を批判 (民主党ニュース)

 16日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会が開かれ、政府の武力攻撃事態対処法案における武力攻撃事態の定義および指定公共機関の範囲に関する政府統一見解に対して、民主党の岡田克也議員が質問を行った。

 委員会の冒頭、前回の審議における岡田議員の要求に応えて、福田官房長官が政府見解を発表した。

 政府見解は、武力攻撃事態の定義をめぐって、武力攻撃を「わが国に対する外部からの組織的・計画的な武力の行使」と規定し、その主体については「国だけでなく国に準ずるもの」とした。また、武力攻撃事態に含まれる「武力攻撃が予測されるに至った事態」については、「武力攻撃のおそれのある場合」には至らないものの、ある国がわが国を攻撃するために予備役召集や軍事施設の構築を行っているなど「武力攻撃を行う可能性が高いと客観的に判断される場合」が該当すると説明。「武力攻撃のおそれのある場合」については、ある国がわが国に武力攻撃を行う意図を明示し、多数の艦船あるいは航空機を集結させているなど「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる場合」が該当する、とした。

 法案の第2条5項にいう指定公共機関の範囲については、具体的には個別の政令で指定するものとしたが、放送事業者については警報等の緊急情報の伝達のため指定することを考えているとし、日本放送協会(NHK)を主に想定していると言及。また新聞社については一般には考えにくいとし、報道機関に対して報道を規制するなど言論の自由を制限することは考えていないとした。

 岡田議員はまず、政府見解における武力攻撃事態の定義を法案の条文にも書き込むべきではないか、と質した。福田官房長官は、「厳密な定義はむずかしい」などと難色を示したが、岡田議員は「政府見解程度の定義は入っていないとあいまいすぎる。法律に書くのと書かないのとでは全然違う」と反論した。

 次に岡田議員は、政府見解における武力攻撃の定義が、国外からの組織的・計画的な攻撃を規模の大小にかかわらず対象にしていることを指摘し、「小規模なテロなどでも必ずこの法律で対応するというのは過大すぎる」と批判した。福田官房長官は、「武力攻撃事態の認定とそれへの対応は別の判断」とし、認定された場合に必ず防衛出動がなされるわけではないと説明したが、岡田議員は、対処基本方針をつくり、私権制限まで可能になる形で対応することになると指摘し、武力攻撃の定義の幅広さ・あいまいさの危険性を浮き彫りにした。

 岡田議員はまた、指定公共機関が実施する対処措置の規定(第2条6項ロ)について、「『その他の措置』という一語が入っていることによって、何でもできる形になっている」と指摘し、その内容を質した。福田官房長官は、生活関連物資等の生産・輸入等に関する指示などを想定しているとし、具体的には国民生活・権利関係の法律において定める、とした。

 関連して岡田議員は、「一番問題なのは、メディアに対する規制だ」とし、報道規制など言論の自由の制限は行わないことを法律の中に書き込むよう要求。しかし福田官房長官は、「書いてはいないが、制限は考えていない」と答えるにとどまった。

 最後に岡田議員は、対処基本方針の国会承認の問題を取り上げ、いきなり攻撃を受けた場合の防衛出動については原則的に事前承認なのに、「武力攻撃が予測されるに至った事態」の場合は、より時間的な余裕があるにもかかわらず事後承認になっていることについて、「よくわからない」と批判。「予測されるに至った事態」についても事前承認にすべきだと指摘した。


平成十四年五月十六日(木曜日)

瓦委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 先日の委員会で岡田委員からお求めのありました武力攻撃事態の定義等及び指定公共機関の範囲について御説明申し上げます。
 まず、「武力攻撃事態対処法案にいう「武力攻撃事態」について」、
 一 武力攻撃事態について
  (1)武力攻撃事態とは、
   1「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」と、
   2「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む。)が発生した事態」を指すものである。
  (2)ここで、武力攻撃とは、我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力の行使をいうものである。また、武力攻撃を加えてくる主体としては、国だけでなく、国に準ずる者もあり、攻撃の規模の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の態様等も様々であり、武力攻撃の態様は一概に言えないものである。
    武力攻撃事態対処法案において、現実に武力攻撃が発生した事態に加えて、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」及び「武力攻撃のおそれのある場合」を含めて武力攻撃事態としているのは、国民の生命、身体及び財産を守るため、武力攻撃に対して時機を失することなく効果的に対処し得るようにするとの考え方に基づくものである。
  (3)また、武力攻撃事態対処法案においては、武力攻撃事態の認定は、対処基本方針に定める事項とされている。さらに、この対処基本方針は、閣議で決定された後、直ちに国会の承認を求めることとされている。
 二 「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」について
  (1)「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」とは、自衛隊法第七十七条の防衛出動待機命令等を下令し得る事態である。
    これは、その時点における国際情勢や相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測されることなどからみて、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態である。
  (2)「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」とはどのような事態であるかについては、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切でないと考える。
    その上であえて申し上げれば、例えば、「武力攻撃のおそれのある場合」には至っていないが、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張が高まっている状況下で、ある国が我が国への攻撃のため部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられることや、我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っていることなどからみて、我が国への武力攻撃の意図が推測され、我が国に対して武力攻撃を行う可能性が高いと客観的に判断される場合は、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測される事態」に該当すると考えられる。
 三 「武力攻撃のおそれのある場合」について
  (1)「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む。)が発生した事態」は、自衛隊法第七十六条の防衛出動を下令し得る事態である。
    ここで、「武力攻撃のおそれのある場合」とは、同条の規定する防衛出動下令の要件の一つである「武力攻撃のおそれのある場合」と同じである。
    これは、その時点における国際情勢や相手国の軍事的行動、我が国への武力攻撃の意図が明示されていることなどからみて、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものである。
  (2)武力攻撃のおそれのある場合とはどのような場合であるかについては、上記二(2)と同様、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切でないと考える。
    その上であえて申し上げれば、例えば、ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させていることなどからみて、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると客観的に認められる場合は、「武力攻撃のおそれのある場合」に該当すると考えられる。
以上であります。
 次に、指定公共機関について申し上げます。
 一 武力攻撃事態対処法案(以下「法案」という。)第二条第五号において、指定公共機関は、「独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの」と定義されている。
 二 ここでいう「公共的機関」とはその業務自体が公共的活動を目的とする機関をいい、「公益的事業を営む法人」とはその業務目的は営利目的等であるが、その業務が公衆の日常生活に密接な関係を有する法人をいうものと解している。
 三 法案第六条において、「指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する」ものと定められている。また、指定公共機関が実施する対処措置については、法案第二条第六号において、「法律の規定に基づいて実施する」ものと定められている。
 四 実際にいかなる機関を指定公共機関として政令で指定するかについては、今後、まず、個別の法制において、指定公共機関に実施を求めることが必要となる対処措置の内容を具体的に定めた上で、個別の法制が定める事項ごとに当該機関の業務の公益性の度合いや、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえ、当該機関の意見も聴きつつ、総合的に判断することとなる。
 五 したがって、今後整備される個別の法制においては、指定公共機関に実施を求めることが必要となる対処措置の具体的な内容が法定されることから、指定の対象となる公共機関の範囲も明らかになるものと考えている。
 六 放送事業者については、警報等の緊急情報の伝達のために指定公共機関として指定することを考えている。民間放送事業者が指定される可能性はあるが、現時点では、日本放送協会(NHK)を主として考えている。また、新聞については、警報等の緊急情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくい。
   なお、テレビや新聞等の報道機関に対し、報道の規制など言論の自由を制限するようなことは全く考えていない。
 七 自然災害の場合と武力攻撃事態とでは、講ずべき措置の内容は異なるが、災害対策基本法の指定公共機関を参考にしつつ、指定の対象とする公共機関について検討する考えである。
   なお、災害対策基本法の規定に基づき、現在六十の指定公共機関が指定されている(別紙)。
別紙につきましては、お手元に配付した資料にかえさせていただきますので、御了承願います。
 以上であります。

瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
岡田委員 民主党の岡田克也です。
 今の官房長官の御答弁、政府の見解だというふうに理解をしておりますが、それを中心に少し議論をさせていただきたいと思っております。
 まず、確認なんですけれども、この法案の中に、九条の二項の一号に「武力攻撃事態の認定」という言葉が出てまいります。この武力攻撃事態そのものと武力攻撃事態の認定ということの間にどういう違いがあるのかということをまず確認しておきたいと思います。
 今の御説明でも、例えば、予測される事態ということに対して、「武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態」という御説明でありました。それから、おそれがある場合については、「我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態」、こういう御説明でありました。
 「判断される」とか「認められる」という言葉が入っておりますので、そこに一つの政府としてのまさしく判断が加わるということだろうと思うんです。したがって、この九条二項一号に言う「武力攻撃事態の認定」というのは、そういう判断をした結果としてこういう表現に、判断の要素が入るからこういう表現になっているんだ、こういうふうにまず理解をいたしますが、そういう考え方でよろしいんでしょうか。
中谷国務大臣 武力攻撃事態の認定につきましては、政府としての事態の認識を明確にして、国民の理解と協力を得た上で実施していく観点から、認定に当たっての情勢認識等を記載することを考えております。
 武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針については、この基本理念を踏まえつつ、事態に即した統一的指針を具体的な形で示すために記述をいたしますけれども、この認定の記述等につきましては、どの程度の分量等になるかにつきましては、武力攻撃事態の態様によりさまざまであると考えられまして、一般論として申し上げれば、当初の段階においては簡単なものにならざるを得ないわけでございます。
岡田委員 ちょっと私の聞いた趣旨が違うわけですが、ここで武力攻撃事態を認定するということ、そういう一つの政府としての判断をするわけですね。それは、先ほど言われた予測される事態とかおそれがある事態というのが、それぞれ、客観的に判断される、あるいは認められる事態であるという今の御説明でありますので、まさしくそれを認めたということで、ここに「認定」という言葉が使われているんですねという確認をしたいわけです。
福田国務大臣 認定ということの内容ということになろうかと思いますけれども、要するに、そういうようないろいろな客観情勢等々を総合勘案して、そしてそれを、「認定」というんですけれども、それを認める、それを認識するというか、そういうことになるわけで、これは、それを認定する主体の判断ということになろうかと思います。
岡田委員 そこで、聞きたいのは、予測される事態とかあるいはおそれがある事態ではなくて、武力攻撃、外部からの武力攻撃そのものが現実にあったときには、これは即武力攻撃事態というふうになるんじゃないか、そこに判断の要素というのはないんじゃないかというふうに思うんですが、ここはいかがでしょうか。
福田国務大臣 それは、まさに武力攻撃があったということを認識するという事態を指していらっしゃるんじゃないかと思います。
 いずれにしても、そのことを政府として認識するということだと思います。
岡田委員 ちょっと、以上の議論を前提にしてお聞きしていきたいと思いますが、中谷長官はかつて、大規模テロというのは武力攻撃事態になる可能性がある、こう言われたんですが、そういう御認識でいいんでしょうか。
中谷国務大臣 これは事態の認定になると思いますけれども、それにつきましては、自衛権の定義がありまして、三要件ですね、急迫不正、必要最小限、または他に手段がないというような原則に基づきまして武力攻撃事態というふうに認定をされる場合には、なり得るということでございます。
岡田委員 今のは自衛権発動の要件でありまして、それは結果ですよね。武力攻撃事態であるということになると自衛隊の防衛出動ということになるわけで、順序が逆だと思うんですね。
 ですから、大規模テロの場合、どういう場合に武力攻撃事態になり、どういう場合はならないのか。現実に大規模テロが起きたときに、武力攻撃事態でない事態というのはどういう場合なんでしょうか。
中谷国務大臣 それは、我が国に対して外部からの武力攻撃が発生した場合でございまして、一国に対する組織的、または計画的な武力行使というものでございます。
岡田委員 つまり、外部から武力攻撃があったときには、その大規模テロというのは、現実にあったときには武力攻撃事態になる、こういうことですね。
中谷国務大臣 今御説明をした原則に基づいて、組織的、計画的、またその他継続性とかございますけれども、それらの認定等につきましては、それぞれいろいろな状況がございますけれども、いわゆる武力攻撃事態に認定するものにつきましては、武力攻撃ということで対応するものでございます。
岡田委員 確認しておきますが、今おっしゃったのは、まず、武力攻撃の定義の問題で、先ほど官房長官が言われた政府の見解の中にあるように、「我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力の行使」であるということですから、まずこれに当たる必要があるということは大前提ですね。
 その上で、主体としては、国だけでなく、国に準ずる者もある、それから攻撃の規模の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の態様等もさまざまであり、武力攻撃の態様は一概に言えないものである、先ほどそういうふうに言われたわけですね。
 そうすると、しかし、後段、私が言ったことは、武力攻撃の態様にはいろいろあるということであって、武力攻撃であることは前提にして、その態様にはいろいろあるというふうに述べておられると思うわけですけれども、そうすると、小規模な外部からの組織的なテロがあった場合には、これは武力攻撃になるんですか、ならないんですか。ならないなら、その根拠は何ですか。
福田国務大臣 結局、テロなのか武力攻撃なのかということ、テロでも武力攻撃であることはあり得る、そういう前提でお聞きだと。
 ただ、それが、武力攻撃が短期間とか一過性とかいったようなことということなのかとも思いますけれども、しかし、これはその状況次第ということもあろうかと思います。テロか武力攻撃かと、こういうふうに言ったときには、先ほど防衛庁長官がお答えしたように、組織性とか継続性とか、それが国なのか、国に準ずるような、そういうような組織、そういったようなものの攻撃とかいったようなことでもって判断するということになりますけれども、今のお話のように、一過性的な攻撃、テロ攻撃もしくは武力攻撃といったときにどうするか、これはまさにそのときの判断ということになろうかと思います。
 攻撃を受けた、そしてそれが客観的に見て、それだけで、一回で済むことが確認されるというようなことがあれば、それはそこでもって自衛権の発動というような行使をするのか、もしくは、平和的にと申しますか、外交交渉によって解決するという手段に頼るか、それはそのときの判断ということになろうかと思います。
岡田委員 私が申し上げたいのは、武力攻撃の定義として「外部からの組織的、計画的な」という要件がありますから、ここは規模の大小を言っていないんですね。ですから、小規模テロであろうと大規模テロであろうと、外部からの組織的、計画的な武力の行使であれば、これは武力攻撃になるというふうに法律上考えるべきだと思うんです。
 その上で、武力攻撃の態様にはいろいろあると先ほど官房長官は述べられたわけで、攻撃の規模の大小というのもその態様の一つに入っているということですから、大規模であれ小規模であれ、武力攻撃ではある、しかし、その態様の中に大きなもの、小さなものがあるということですから、それはいわば武力攻撃であることを前提にしておっしゃったわけですね。
 したがって、論理的に詰めていくと、組織的、計画的なものであれば、大規模であれ小規模であれ、これは武力攻撃事態になるというのが論理的な結論じゃないでしょうか。
福田国務大臣 そのとおりだと思います。
 武力攻撃、例えばミサイルが一発飛んできても、武力攻撃というように言うことはできるわけですね。ですから、これはまさに武力攻撃であります。ミサイルが十発飛んできたら武力攻撃か、もしくはミサイルが一発飛んできたら武力攻撃でないのか、こういうふうなことになれば、やはり一発でも十発でも同じことであるというように考えるべきだと思います。規模の大小に関係ないというように思います。
岡田委員 自衛隊法上は、防衛出動というのは、前回も述べたんですが、我が国を防衛する必要があると認めるときに防衛出動をするということで、それよりも小さな場合には、場合によっては命令による治安出動で対応するということもこれはあるんだと思うんですね。そういうふうになっている。
 しかし、この法律では、常に、外部から武力攻撃があれば、この法律には乗っかる、しかし、武力攻撃を、防衛出動するかどうかは、それは自衛隊法の要件ですから、必要がないと認めれば、自衛隊の出動をしないこと、防衛出動をしないことはある、こういう理解でよろしいですか。
福田国務大臣 武力攻撃の認定ということは、これはできますね、認定をする。しかし、それでもってどういう対応をするかということは、これはまたその状況において判断をすべきことであるというように思います。
岡田委員 どういう対応をするかと言いますが、この新しい今議論している法律上は、外部からの組織的な武力攻撃があれば、規模の大小を問わず、この法律に基づいて対処基本方針をつくり、そして必要な措置をとるという、その必要な措置の中に自衛隊法による防衛出動が入るかどうかは、これはそのときの判断ということになりますが、基本的にはこの法律に全部乗っかるというのがこの法律の建前じゃないでしょうか。
福田国務大臣 武力攻撃があった、そしてその武力攻撃が、継続性とかいろいろな要素を考えて、これは例えば短期間で終わらないというように判断すれば、当然ながら、武力攻撃事態ということで、自衛隊の発動等々も含めた措置を講じなければいけない。
 武力攻撃事態であるけれども、しかし、相手が、攻撃の意図は明確でない、そしてある情報によれば、それはどういう事態になるかわかりませんけれども、その最初の攻撃だけでとどまる、そういう可能性があるといったときに、外交的な交渉によって、自衛隊の行動をしないで、発動によらないで解決するということが可能であるということがあれば、それはそれで自衛隊行動というものを伴わなくてもいいのはこれは当然でありまして、それはあくまでもそのときの状況判断によるものと考えております。
岡田委員 今官房長官がおっしゃったケースでも、今議論しているこの法律に基づいて対処基本方針を定めるということはやるわけですね、法律上、やらなくてもいいという規定はどこにもないわけですから。
福田国務大臣 その事態が、例えば予測をされるというようなことがあった場合には、当然ながら、予測される段階でもって安全保障会議を開いて必要な措置を講ずるということはあるかと思います。
 しかし、その予測の段階において外交交渉が可能だというような状況があった場合には、これはその状況に応じてその後の措置は決めていくということになるわけでございますから、その辺は状況次第ということはあろうかと思っております。
岡田委員 議論の大前提として、私、予測される事態やおそれがある事態を除いた議論をしているわけです。そういう場合は、判断の要素が入りますから、判断の結果、この法律に乗っけないこともそれはあるんです。しかし現実に、一度そういう外部からの武力攻撃が行われたときは基本的に、この法律の書き方だと、全部この法律に乗っけてやっていく、外部からの武力攻撃が現実にあればそういうことですねということを確認しているわけです。
福田国務大臣 予測をされる段階であれば、予測の事態から対処措置というものは安全保障会議を開いてこれは決めなければいけないということになります。その後、外交交渉をしようが、武力の発動をしようが、自衛隊の行動をしようが、それは対処措置に基づいて行うということになるわけです。外交交渉も、もちろん含むわけです。
岡田委員 ちょっと私の質問に答えていただいていないというふうに思います。
 私が申し上げているのは、予測とかおそれの事態じゃなくて、現実に外部からの武力攻撃があった、その武力攻撃の定義というのは、先ほど官房長官が述べられたように、「我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力の行使」、そういうものが現実にあったときに、この法律の立て方によれば、必ずこの法律上の対処基本方針を定めるということになりますね、しかし、その中にはもちろん防衛出動が入るかどうかはそれは状況によって変わりますよ、そういう理解でいいですねと確認しているんです。
福田国務大臣 そのとおりでございまして、対処措置を講ずるということによって、自衛隊の行動また外交交渉、こういうものがそこに含まれてくるわけであります。
岡田委員 そのとおりというお答えをいただいたんですが、そうだとすると、武力攻撃という定義に当てはまれば、それが小規模であっても必ずこの法律に乗っかるということになって、私はちょっとそれは過大過ぎるんじゃないかというふうに思うんですね。
 そこを常に、この法律でわざわざ対処基本方針をつくり、そして場合によってはいろいろな私権の制限まで入るような全体としての傘がかぶってしまうということは、私はちょっとそれはやり過ぎじゃないかという気がするんですね。そこにもう一つ、そうであっても、外部からの武力行使があっても、この対処基本方針をつくらなくていいケースというのは、そういう余地をとっておくべきじゃないか、そういうふうに思っております。
 時間も限られておりますので、次に参ります。
 それから、先ほど言われた、予測される事態それからおそれのある事態の定義をおっしゃったわけですが、これを今の政府見解ではなくて法律にちゃんと書く、そういうお気持ちはありませんか。
福田国務大臣 この武力攻撃事態というのは、これはもうさまざまな態様があると思うんです。この法律は、法律が成立すればその日から使えるということになるわけでありますけれども、しかし、この法律によれば、十年先ということになるかもしれぬし、またもっと先になるかもしれぬ、そういう事態がないことが望ましいわけでありますけれども、今の世界情勢、国際情勢、そしてまた軍事力がどうなっているか、それが将来またどう変化していくか、予測しがたいところも随分あるかと思いますので、その辺は、厳密な定義というのはなかなか難しいのではないかというように思います。
 そのことだけでなくて、本当に、武力攻撃というのは、あるかないかという予測をするというようなことにつきましても非常に難しい問題があろうかと思いますので、個別具体的に一つ一つを定義するというのは、今回、先ほど御説明を申し上げました例示などを見て御判断をいただくということにとどまるのではないかと考えております。
岡田委員 官房長官は、定義は難しいとおっしゃるが、先ほど政府の定義を述べられたのですよね。だから、難しいというのは、今の定義というのは、これはいいかげんだということですか。そうじゃないと思うのですけれども、どうですか。
福田国務大臣 それは、先ほど申し上げました定義以上の定義は難しい、こういう意味で申し上げたわけでございます。
岡田委員 予測される事態というのは「我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態」ですね、その前にも「国際情勢や相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測されることなどからみて、」というのが入っていますが。それから、おそれのある場合というのは「我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態」と。こういうのは、法律に私は十分書き込める話だというふうに思っております。
 また、そのぐらいのことがないと、非常にあいまいで、またおそれと予測ということで政府見解でも述べられましたが、やはり法律に書くと書かないでは非常に違う。基本的な、一番この法律の核心の部分ですから、おそれがある事態、予測される事態というのは。そういうのはちゃんと法律に書いておくべきではないかというふうに私は思っております。
 それから、後段いろいろ言われた件で少し質問したいと思うのですが、この法律の二条六号で「対処措置」というのが書いてあって、そして、「法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。」ということでございます。そして、例えばロの(1)のところですが、「警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置」というふうに書いてあります。(2)は、「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」。
 この「その他の措置」というのは一体何なんでしょうか。非常にこれは一般的な書き方で、その前に例示がいろいろ書いてありますが、結局「その他の措置」というのが入っていることによって、何でもできると。もちろん別に法律が要るということでしょうが、しかし、この法律上は何でもできるという形になっているのはなぜなのかということをお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 この二条六号ロの(1)、(2)の「その他の措置」についてお尋ねがございましたけれども、これは、例えば現行の国民生活安定緊急措置法に基づく生活関連物資等の生産、輸入等に関する指示、また生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づく売り渡しに関する指示及び命令、また石油需給適正化法に基づく使用制限、そのようなものを想定しておるところでございます。
岡田委員 私がお聞きしたのは、なぜ、法律にもうちょっとちゃんと書いておかないのか、「その他の措置」という一般条項をここに入れたのかということなんです。
 というのは、二十二条で「事態対処法制の整備」ということで、その一号にイからヘまで具体的に書いてあるのですね。ここには、その他の措置なんて基本的に書いてないわけですよ。こういうことについて、同じようなことが先ほど読み上げたロの(1)のところに書いてあるにもかかわらず、ここは「その他の措置」という一般条項を入れて、二十二条の方は個別に列挙しているのかということなんですが。
福田国務大臣 二十二条の一にイからヘまでいろいろな措置の内容が書いてございますけれども、この二十二条一に「次に掲げる措置その他の武力攻撃から国民の生命」云々、こういうふうにございまして、この「その他」ということで、二十二条にも規定してない、厳密にそこのところは書いてないわけでございます。
 この辺につきましては、国民生活等との関係において今後審議いただきます国民生活、権利等々の関係の法律において記述しなければいけない、そういう項目だと考えております。
岡田委員 ここで一番問題になるのは、メディアの問題なんですね。それは、別に法律で定めるから、そのときに考えればいいということかもしれませんが、やはり一般的な条項としてここに責務ということになっております。
 「指定公共機関の責務」ということで六条が入っておりますので、これがメディア規制につながるのではないかと。将来法律でちゃんと決めるので、限定的に決めるのでいいのではないか、そういうお考えだと思いますが、しかし、一たん法律にこういう一般規定が入ってしまうということは、やはり非常に不安感を招くというふうに思うわけです。
 先ほどの官房長官の御答弁の中で、「報道の規制など言論の自由を制限するようなことは全く考えていない」、こうおっしゃったわけですが、他方で、「民間放送事業者が指定される可能性はある」、それから新聞についても、「一般には考えにくい」という言い方で、何らかの規制がかかる。その規制の中身というのは、警報等の緊急情報の伝達だと言われるかもしれませんが、しかし、何らかのそういう規制がかかるということは否定されなかったわけであります。
 将来法律を制定していくためのその一つの基準という意味でも、先ほどおっしゃった言論の自由あるいは報道規制、報道規制などはこういう緊急事態においてもやらないんだということをやはり法律の中にしっかり書いておくということが、今後法制を整備していく中で、一つの判断基準になるんじゃないか、そういうものを明文として入れるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 確かに、法律に書いてございません。書いていないけれども、言論の自由、これを制限するというようなことは考えているわけでないということは、この国会答弁におきまして何度もお答えしているところでございます。
 また、新聞については、印刷媒体という意味におきましては、これは緊急性という意味においてはテレビ等々にはかなわない、放送にはかなわないということであります。しかしながら、新聞ということでなくて新聞社ということになりますと、例えばインターネットを使って即刻その報道を通知できる、そういうことが今可能であり、現実に行われており、また、将来それがさらに一般的になるというようなことを考えますと、新聞社にも御協力をいただくという可能性というのは、ないわけではない、こういうことを、可能性を申し上げているわけです。
岡田委員 ですから、そういう可能性はあるということは言っておられるわけですから、それが一般的な報道規制、表現の自由の規制にならないようにきちっと法律に書いておくべきじゃないかと。六条、指定公共機関の責務だけが書いてあるということは、非常に不安感を及ぼすし、将来立法するときに間違った判断の基準になってしまうかもしれない、そういうことを申し上げているわけであります。
 最後にもう一つだけ。対処基本方針をつくる際に、国会は事後承認ということになっているわけでありますが、基本的に、対処基本方針をつくるのは予測される事態というような場合につくられることが多いと思うのです。いきなりぼかんとやられた場合もあるかもしれませんが。
 したがって、時間的余裕という意味では、私はかなりあるんじゃないかと。それがなぜ事後承認なのか。やはり、ここは基本的に事前承認にすべきじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 例えば、予測がされるというような段階において、至急、例えば予備役の招集をするとか、そういったようなことを考えますと、これは即刻手をつけた方がいいだろうという判断でまずその行動をさせていただいて、直ちに国会承認をいただく、そういう形になっております。
 ただ、武力攻撃ということになりますと、武力攻撃と申しますか、自衛隊の行動ということを下令するというようなことになりますと、これはまた自衛隊そのものを動かすという、また武力攻撃そのものを容認するということでありますから、これは全く事態が違うんだろうというように考えまして、これは事前の国会承認というふうにさせていただいたわけでございます。
岡田委員 防衛出動は、おっしゃるように原則事前承認ですね。緊急度からいうと、多分、防衛出動のような事態の方が、予測される事態よりもはるかに緊急度は高いわけですね。それが原則事前承認で、なぜ今回の場合に事後承認になっているのか、そこもよくわからないということを申し上げて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。


2002/05/16

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