2002/05/09

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枝野議員、実効性なき有事法案を鋭く批判 (民主党ニュース)

 民主党の枝野幸男政調会長代理は、9日の衆議院武力攻撃事態特別委員会で質問に立ち、有事関連法案について中身が伴っていないと厳しく批判した。 

 まず枝野議員は、自衛隊法の改正で「工事する場合、道路管理者や、港湾管理者に事前通知が必要となっているが、有事の際にそんな余裕があるのか。そもそも管理者を探している間に殺されてしまう」と指摘した。中谷防衛庁長官は「携帯電話などを利用し速やかに連絡、通知できるようにする」と答弁。枝野議員は納得せず、「但し書きで、事後通知を認めるべきだ」と修正を迫った。中谷長官は「乱暴な提案。どうぞ対案を出してください」と開き直った。 

 さらに枝野議員は自衛隊法88条を取り上げ、「違法阻却の規定がある。88条は不十分ながら有事法制なのではないか。88条を具体化させ、戦争犯罪が起きないようにするのが有事立法ではないか」と指摘し、具体的に「橋やビルをあらかじめ軍事上の作戦で壊す場合の根拠は何か」と質した。中谷長官も「88条」と回答。枝野議員は「それなら88条で、今回の法案が通らなくても何でもできることになる」と法案の不必要性を指摘した。 

 また枝野議員は、今回の改正によって、対処方針を閣議で決定しないと首相の防衛出動命令が出せなくなることを取り上げ、「1分1秒でも早く防衛出動命令を出せるようにするのが、有事法制ではないか」と質した。中谷長官は「速やかにできるようマニュアルをつくる」と有事を全く理解していないかのような答弁。枝野議員は「総理も1大臣という行政法規になっている。トップリーダーの判断でできるようにしないと有事法制にならない」と厳しく欠陥を指摘した。 

 さらに枝野議員は、防衛庁職員による会計検査院の公文書偽造・同行使を取り上げ「公務員には告発義務がある。どうして告発しないのか。処分しないのか」と迫った。中谷長官は「お詫びする。職員は厳しく注意した」などと述べ、告発は考えないとの答弁に終始した。枝野議員は「このような順法精神の持ち主が責任者では有事法制は任せられない」と長官の罷免を要求した。


平成十四年五月九日(木曜日)

瓦委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。
枝野委員 一昨日から始まりましたいわゆる総括的審議の最後は私になりますが、どうもここまで話を伺ってまいりますと、今回の法律案、成立したとしても具体的に何が起こるんですかという問いには、すべて、これから二年間でつくる法律でということで先送りをされておられる。何か、外側だけはつくったけれども中身が伴っていないという、ほかの政策でもこの一年間よく見るパターンをまた繰り返し聞かされているなというふうに思わざるを得ません。
 ただ、ほんの一部分、今回の法律が成立することで具体的な法律効果が出てくる部分、それは自衛隊法の改正であります。この部分を中心にまず私はお尋ねをしていきたいというふうに考えておりますが、今回、自衛隊法の改正で、防衛出動を命じられたときなどに幾つかの法律の適用除外あるいは特例ということを規定しております。
 例えば道路法で、防衛出動を命ぜられた自衛隊の部隊等が道路工事をする、道路に穴ぼこがあいていたりするので、移動するのに穴ぼこがあいていて困る。道路工事をする際には、道路法の原則では道路管理者に承認を求めなければならない、しかし、防衛出動を命ぜられた部隊がやる場合には事後通知でいい、例えばこういう規定がございます。
 一昨日の岡田委員からの質問の中でも触れておりますが、実際に武力攻撃を受けていわば戦争状態になっている自衛隊の部隊が、例えば事後であっても通知をする余裕があるのか。
 さらに言えば、この道路法はまだ事後通知だから、まあそういうこともあるかなとは思いますが、一方、道路交通法では、道路工事のために道路を使用する際の警察署長に対する許可制度というのがありますが、防衛出動を命ぜられた部隊については事前通知で足りるという法改正をわざわざ置いています。
 戦争をしている、武力攻撃を受けて、それに対して武力を行使している自衛隊が、何かするのに警察署長に事前に通知をしろだなんて余りにもナンセンスだということは当然御理解をされていると思いますが、この法改正はどういうふうに読めばいいのか、改めて確認のためお尋ねします。
中谷国務大臣 まず、防衛出動後の対応でございますけれども、この場合には、総理から行動できる範囲を与えるわけでございますけれども、完全に行政機関がもうストップしているかということを問われれば、戦闘が行われている地域であれば皆さん避難をしてだれもいない地域かもしれませんが、それに至る前の地域におきましては、まだ行政機関も、また一般の国民の皆さんも生活をしている部分がございます。ですから、そういう地域における行動等につきましては従来の行政の手続に従うということも必要でございますが、緊急の場合でございますので、事後承認等の手続、それから、それぞれの省庁とも相談をいたしまして、速やかに目的が達成できる手続にいたしているわけでございます。
枝野委員 よくわからないんですが、防衛出動が命じられてもまだ各行政機関がちゃんと動いているケースは当然あり得ます。だけれども、防衛出動が命ぜられた状況では、例えば道路を管轄している警察署も全部逃げちゃったというケースとか、全部残念ながら亡くなられたというケースとか、いろいろあり得るわけですし、そもそも、戦争をやっている現場の部隊が一々警察署長に届けに行くだなんてばかな話は、戦争をやっているときにあり得るとは思いません。そういう場合については、この法律改正ではどうなるんですか。
中谷国務大臣 わかりやすく説明をいたしますと、武力攻撃があった場合に、その武力の行使が行われている、いわゆる戦闘が行われている地域があります。その地域の周りにはやや戦闘状況が近い地域があって、その外には平穏な地域があります。その戦闘が行われている地域からは、もちろん真っ先に国民の皆さんが離脱をして被害が及ばないようにしていただきたいと思いますし、またその周りの、後方支援がやれるような地域においても、国民の皆さん方は避難を始めて、速やかに逃げていただきたいわけですけれども、我々がこの法律で想定しておりますのは、第八十八条がございまして、これは、国際法規及び慣例を遵守し、かつ事態に応じて合理的に必要と判断される限度内において必要な武力を行使するという規定があります。これはまさに戦闘が行われている地域でありまして、相手も日本の法令を無視して相当なことをやってくるわけでございますので、それを防ぎ得るために、いわゆる正当行為として、この八十八条の規定によりまして、その外部からの侵略行為を行う者を排除するのに努めるわけでございます。
 この八十八条の適用以外の地域におきましては、防衛出動の規定に従って、それぞれ、行政がまだ生きている地域もあればもう行政も離脱をしている地域もございますので、その戦闘が行われていない地域におきましては、今回の改正の所要の規定におきまして速やかに自衛隊の行動ができるというふうな考えに基づいて改正を行うものでございます。
枝野委員 今の話、二つ困ったことがあるんです。
 まず、戦闘が行われている地域については、今回の自衛隊法をわざわざ改正して、防衛出動のときには事前の許可とかじゃなくて通知でいいよとわざわざ法改正するのに、だけれども、戦闘地域ではそれも適用になりません。何のための法改正なんですか。一番、戦争をやっているときの、有事が起こって、まさに命と国をかけてやっている場面のところについて法整備が不十分だからと有事法制をやっているんじゃないんですか。
 その部分のところは、自衛隊法の八十八条という、何か何が書いてあるんだかよくわからない規定でやります、これは戦闘状態に入っていないところです、全然わけのわからない話ですよ。何のための有事法制なんですか。戦争状態に入って一番ドンパチやっているときに何ができるのかできないのか、もちろん細かく決めることはできませんよ、平時と違って。だけれども、そこのところをきちんと決めるための法改正なのに、それはその部分は関係ありません、もう全然法適用されなくなるんです、それじゃ何のための有事立法だかよくわからないですね。
中谷国務大臣 この自衛隊法というのは昭和二十九年にできた法律でありまして、当時の我々の先輩方が非常に苦労をしてよく考えてつくられた法律でございまして、いわゆる日本に対する侵略行為というのは、日本の法律または世界の戦争法規を無視してやってくるわけでございます。それに対応するということは、こちらももう命がけで相当な態勢をとる必要がありますし、また、一般の国民の方はそういう地域からは真っ先に出ていただかなければならないわけでありまして、そういう意味でこの八十八条規定を設けたわけでありますが、それじゃどこでもできるかといいますとそういうわけにはいかず、これは国際法規そして慣例を遵守し、事態に応じ合理的に必要と判断される限度内にとどめております。
 それ以外に、総理から自衛隊が活動してもいいよという地域があるわけですけれども、この戦闘行為が行われていない地域におきましては、まだ行政法規等法令が生きておりまして、そういう行政法規等の法令を遵守するのは当然でございますが、このような場合に、自衛隊の行動の円滑化を確保するという観点から、いろいろな適用除外等につきまして今回の法改正によりまして、それが実現されていない部分がかなりございます、そういう点におきまして、自衛隊法の百三条を初め、各省庁にまたがる部分におきましては各省庁とも調整をいたしまして、総理から示された地域の中の行動においては、現在の法律の適用除外等を設けまして、速やかに戦闘のための準備行為というか態勢がとれるように定めているわけでございます。
枝野委員 八十八条の適用範囲とかについてもまた後で聞きますが、今のお答えで大事なことは、要するに、自衛隊法ができたときから、武力行使をして、要するに戦争、武力と武力がぶつかり合っている状況についての法律は八十八条で存在していたと。
 つまり、今まで皆さんは、日本には有事法制がない、だから早くつくらなきゃならない。少なくともこれは事実誤認ですね。自衛隊法八十八条という有事法制はあったけれども、それでは不十分なところがあったから今回有事法制の議論をして法案を出した。有事法制がなかったというのは今まで間違いでしたね。長官、そうですね。
中谷国務大臣 この八十八条ですべてできるわけではございませんし、極力、必要最小限にとどめるべきでございまして、戦闘が行われている地域におきましてはもう国民の皆さんは安全なところに逃げていかなければなりませんので、そういう意味で限定をしておりますが、そこで自衛隊が活動できるわけじゃなくて、それ以外のところがありまして、やはりそれ以外のところでは後方支援等をして準備をするわけでありまして、その部分において法の整備がされていない部分が多々ございましたので、今回その改正を行わせていただく次第でございます。
枝野委員 あるんだからほかのはやらなくていいと言っているんじゃないんですから。もちろん、これだけでは全然不十分だということはよくわかっているんですが、国民の皆さんを含めて多くの方が、日本には自衛隊はあるけれども有事法制がないというふうに世間ではずっと言われ続けてきていたわけで、それはやはり違う。不十分なものだけれどもあったんです。その不十分なところを今直さなきゃならない。だけれども、それにしては直す中身が不十分ですねというのが我々の議論なんです。
 その八十八条の中身の前に、今回の自衛隊法改正の、逆に法律の読み方なんですが、何もない、防衛出動事態のときにはどうしますとかという例外規定を、初めから特例とか例外をつくっていない行政法規なんかたくさんあった。あるいは、刑法とか民法のように、初めから正当業務行為という特別な例外規定が置いてあるというところについては、はい、これは八十八条がありますからそこのところでは正当業務行為だから手続要りませんねというのは、いい悪いは別として、法の理屈としてはあり得るかもしれない。
 しかし、今回わざわざあえて自衛隊法を改正しています。自衛隊法を改正して、通常の事態では承認が必要なことについて、防衛出動したときには通知で足りますよとわざわざ書いているのです。普通は反対解釈で、防衛出動したときでいろいろ大変でも通知だけはしなさいと読むのが法律の普通の読み方です。違いますか。
中谷国務大臣 戦闘行為以外の場面また地域におきましては、行政法規等の法令を遵守するのは当然でございまして、このような場合に自衛隊の行動の円滑化を確保するという観点から、今回の自衛隊法の改正案におきましては、従来から一部設けられておりました、しかし、不十分でございまして、昭和五十一年の福田内閣以来、どういうものがあるだろうかということを研究いたしまして、各種の行政法規に係る所要の特例措置を設けることによりまして自衛隊の活動が円滑に行われるということで、今回可能な部分につきましては改正をお願いしているところでございます。
枝野委員 戦闘行為は八十八条で手続は何も要りません。だけれども、先ほど、二、三回前の防衛庁長官の御発言で、戦闘行為をしている場面、そのそばで住民の皆さんも皆ほとんど逃げちゃっているけれどもというふうな場面もある、そこは、この自衛隊法の改正したいろいろな道路法なんとかの手続が適用されて通知とかが要る。
 だけれども、戦闘地域のすぐそばだなんというのは、警察署長さんもいなくなっちゃっているんじゃないですか、道路管理者もいなくなっちゃっているんじゃないですか。でも、そういうところも、今回の法改正を通したらかえって、通知が必要になっちゃうんじゃないですか。そんなナンセンスなことをやるんですか。戦闘地域のすぐそばで、住民も警察署長も知事さんもみんな逃げちゃっているところで通知をする。どうなんですか。逃げているところは全部、戦闘地域なんですか。それとも、戦闘地域ではないけれども、皆さんが逃げちゃっていて行政的機能がストップしちゃっている地域が間にあるんですか。どっちなんですか。
中谷国務大臣 実際、外敵がいるところにおきましては相当な危険が及ぶわけでございます。したがいまして、そういった、武力攻撃が行われる場合には相手方は全く自由な、また凶悪な作戦行動をいたしまして、国民の生命財産を脅かすものでありまして、自衛隊は、国民の生命財産を守るために敵を排除するという、戦闘行動を行うという観点で行動するわけでございます。
 ですから、その避難等につきましてはそれぞれの、今後、法的整備をいたしますけれども、あらゆる手段を講じて、国民の皆様方が速やかに避難をしていただくことが考えられるわけでありますが、我々といたしましては、最大限、敵を早期に駆逐をして、安心な状態にしていくということであります。
 なお、行政等の連絡手段等につきましては、最近は携帯電話も普及いたしておりまして、あらかじめ事前に、その際の手続等につきましては、簡便な手続等をもってとり行うことができることも考えられ得るわけでございます。
枝野委員 最後のところの御発言、大変問題なんですが、その前に、尋ねていることにきちんと正確に答えてください。
 八十八条が適用されてしまって、行政手続はもう全く要りませんよという地域と、それから、手続が全部できるように行政機関が生きている地域の二つしかないのか。それとも、その中間的な部分はあるのかないのか。つまり、住民がみんな逃げちゃう、役所もみんな逃げちゃった、自衛隊以外のところは避難しました、そういうところは全部、八十八条の適用される範囲なんですか、どうなんですか。防衛庁長官、逃げちゃったところは全部、八十八条の範囲で、何でもできることになるんですか。
中谷国務大臣 基本的には、戦闘行動に際しまして、行政の法規等の国内法令に従えない場合があるとしても、自衛隊法八十八条の要件を満たしている限りにおいては、それは同条に基づく正当な行為として許されるものと考えておりまして、法的には今言ったとおりでございますが、現実的には、速やかに国民の皆さん、他の公務員の皆さんも安全なところに行っておく必要がございますので、そういった戦闘が行われる地域におきましては、もう人がいないというようになっておくというのが理想でございます。
枝野委員 逆ですよ。戦闘は行われていないけれども、住民はみんな避難しちゃいましたという地域はあり得るんじゃないですか。
 例えば、この地域のどこか海岸線に上陸してきましたと。そもそも僕は、こういう上陸戦ということがまさに五五年体制的というか、古い戦争なんだと思うんだけれども、どこかに上陸してきました、そこから、危なそうな地域、みんな逃げましたと。だけれども、実際に戦闘が行われているのはその中の一部の地域です。だけれども、みんな逃げちゃったところに部隊を展開させて、陣地をつくったりとか、道路を補修したりとか、そういうことがあり得るんでしょう。あり得ますね。そのあり得る部隊は通知するんですか、この新しい自衛隊法の手続で。どっちなんですか。
中谷国務大臣 戦闘行為が行われている場合は通知はいたしませんけれども、人がいないからといって通知しないわけではございません。何らかの手段でその行政の手続をとることになります。
枝野委員 だから、こんな法律をつくったら、かえって有事のときに動けなくなりますよ。
 本当に行政機関がみんな逃げ出しちゃったような、戦闘はその場では行われていないけれども、部隊を展開させていて、住民もみんな逃げているような地域で、道路工事をします、そこに陣地をつくりますと、わざわざ、携帯電話だろうと何だろうと、その担当者、例えば警察署長とかをつかまえて、逃げるときですから混乱して、まあ警察署長ぐらいはちゃんと頑張って最後まで残るかもしれないけれども、役所の人たちはみんな逃げちゃっている、そんなところでどこに通知していいのかわかりませんという状況になるのは当たり前じゃないですか。そんなところで自衛隊の部隊は一々通知しないと道路工事もできない、そんなばかな法律をつくっちゃったらかえって有事に身動きがとれなくなりますよ。
中谷国務大臣 基本的には、一番激しく危険なところから人がいなくなるわけでありまして、戦闘地域には人がいませんが、その周辺のところでは、様子を見るというか、人がいるところもあるわけでございまして、なぜ事前の情報を入手したいかといいますと、自衛隊というのは、全国からいろいろなところへ移動して、基本的には駐屯地から所定の場所に行くわけでありますが、初めて行く土地などにおいては、やはり地元の人また行政の管理者に、ここはこうですよというような情報を聞いてから対応したら、さらに行動におきましても効果的な部分がございます。
 こういう点につきましては、今回の省庁等との話し合いにおきまして、支障がないように実施できるということで取りまとめた次第でございます。
枝野委員 通知しなければならないという行政法上の義務規定を置いているのと、地元の事情をわかっている人に意見を聞くのと、全然意味が違いますよ。
 それはそうでしょう。全然知らない土地については、その地域に住んでいた警察署長さんとかそういう人たちに話を聞いた方がいい。聞けるんだったら聞いて、ここをどうした方がいいとか、いろいろな手続をしたらいいですよ。だけれども、それは任意ですよ。
 まさに、戦闘地域ではないけれども、そのそばで部隊が展開しています、大変ですなんというときに、これは、例えば港とか工事するところがありますね、港を工事しちゃってここは大丈夫かなとか、いろいろあるかもしれないけれども、だけれども、そこで関係者をつかまえてやるのがいいか、それとも、このままえいやでやっちゃった方がいいか、それこそ部隊の現場の指揮官の判断に任せなきゃいけないことじゃないですか。
 だけれども、今回の法改正は、事前に通知しなければならない、わざわざそういう規定を置いているんですよ。これでは現場の指揮官は、もうえいやでやっちゃわないと間に合わない、敵が攻めてきちゃうかもしれないといったって、一生懸命担当者を見つけて通知しなきゃならない。そんなことをやっている間に殺されちゃいますよ。そんな法律を出しているんですよ、今回。
村井国務大臣 たまたま道路交通法の関係を委員が御指摘になられましたので、ちょっと私から。
 委員は、戦闘が行われている状況と、それから行われていない状況と二つに分けられて、そのまた中間的な事態というような三つの設例をお出しになりました。
 私どもが今この法律で考えておりますことは、要するに、現在は警察署長の許可とかいうことにかかわらしめている問題を、一たん防衛出動が下令されました場合の自衛隊に対しては、例えば道路の修復でありますとか、あるいは道路の使用といいましても、例えばバリケードを築くために道路を使用するというような用途もありましょうし、物資の集積のために道路を使用するなんという状況もありましょうし、そういうことに使用することについて、これは警察署長に対する通知のみで足るということに変えるという御提案を申し上げているにすぎないわけでありまして、まさに戦闘が行われているというような場面におけるお話というのはちょっと別でありまして、そもそも、道路交通法を一つの例にとって考えてみますと、道路交通法によるさまざまな規制が必要なのは、そこが道路として通常の市民によって使われる状況であるから道路交通法に基づく規制が必要なんであります。
 そういう意味では、そういう状況の中における特例措置を防衛出動が下令された場合において認める、そういう措置をこの場合には設定した。他の法令においても恐らく同じだろうと存じます。
枝野委員 いや、大臣がおっしゃられたことはよくわかっているんです。ですから、防衛出動が出されたような時点では、事前の承認なんか要らなくて通知にしましょうと。その意図はよくわかるんです。その意図はわかりますし、それから、後で八十八条のことをやりますが、八十八条の書き方はよくないけれども、ここはもうちょっときちんと書かなきゃいけないけれども、まさに戦闘状況の現場においては、普通の法令を普通に適用しちゃいかぬ、それもよくわかるんです。
 だけれども、まさに戦闘地域なのか、それとも後方で日常生活を送れる地域なのか、間なのかという三分割じゃなくて、その間は、もう段階的というか千差万別なわけですね。わざわざこういう法改正をしてしまったら、通知は義務になるわけですよ。その八十八条の適用される、武力行使をしている戦闘行為の現場以外でも義務になってしまう改正をわざわざしているんですよ。
 だから、一条全部くっつければいいんですよ。ただし、防衛の目的のために必要やむを得ない場合には、例えば通知は事後で足りるとか、そういう規定を何で置かないのか。どうですか、防衛庁長官。
中谷国務大臣 自衛隊法、昭和二十九年にできましたけれども、この骨格はそのような考え方にはなっておりません。これは、戦闘行為が行われている地域におきましては、相手の武力行使にはこちらも武力行使で対応をすると。そして、それ以外の地域におきましては、国民の権利を保護し、また、行政の法的な手続のプロセスまた連絡を重視するということで、これは各種の特例措置を設けて通知をするということでございまして、この通知をする際に連絡が確実にとれるかという心配もありますけれども、これは通知をするということでございまして、こちらからその旨を言うということでございます。
 したがいまして、その基本的考え方としては、武力の行使につきましては全力で行うけれども、それ以外のところでは国民の権利義務、また、行政の法規を重視するという考え方でございます。
枝野委員 ということは、まさに武力行使をしていて八十八条の適用をされている場面の外側のところで、もしかすると、間もなく、早くここに陣地をつくっちゃわないとドンパチ撃たれて殺されるかもしれないというところで、例えば港に陣地を構築しましょうということがあったとしても、その港の港湾管理者に通知をするための努力をしている間に手おくれになる、それでもやむを得ない、そういう法律ですよ、これは。
中谷国務大臣 許可をとっていたら手おくれになる場合もございます。そういう意味で、許可ではなくて通知といたしている次第でございます。
枝野委員 だから、要するに形だけつくっているという話なんです。
 確かに許可じゃ、許可なんかとっている間がない、当たり前です。許可をとっている間もないようなときというのは、通知をしている間もないようなことでもあることの方が普通じゃないですか。
 だから、例えば、通知しなければならない、ただし通知先等が見つからない場合は云々とかという規定をちゃんと置けば済むだけの話じゃないですか。何でそういう、きちんと丁寧に、実際に使える法律を出さないんですか。
中谷国務大臣 それはいい提案かもしれませんが、大変乱暴な提案でありまして、自衛隊法というのはそういう法律になっているわけではございません。
枝野委員 ではどうするんですか。本当に、先ほど私が言ったような例のケースですよ。つまり、戦闘地域ではない、そのすぐそばのところでまさに陣地構築とかをするということは、すぐに戦闘地域になるかもしれないという危機があるところですよ。そこで陣地をつくるのに、例えば港だったら港湾管理者に通知する、道路だったら警察署長に通知をする、そういう義務が課せられているからといって、通知しなきゃといって、どこにいるんだろうと捜している間に、どうするんですか、それは。
 それはしようがない、今の自衛隊法の建前、筋立てからは仕方がない、そういうことでは困るから、だから結局何をやるかといったら超法規でしょう、そのときは。そのときは、それは殺されちゃたまらないから、通知と法律に書いてあるけれども、戦闘地域じゃないから八十八条は適用にならないけれども、だけれども、通知したら殺されちゃうから通知しないでやりましょうと、結局、超法規をやるんでしょう。
 だったら、何のために有事法制をつくっているんですか。超法規にしないために、あらゆる事態においても、きちんと法に従った対応で、しかも現実的な対応ができますというものをつくりましょうというのが有事法制の議論なんですよ。全然使い物にならない法律を出してきて、何なんですか。
中谷国務大臣 そういう考え方で自衛隊法というものはできているわけでありまして、これにまだ不十分だということでございましたら、ぜひどうぞ対案を出していただきたいというふうに思います。
枝野委員 不十分なものを出してきて、はい、対案を出してくださいと。確かに野党も、我々、議員立法をたくさん出してきていますよ。だけれども、まさに行政手続の非常に細かい具体的なところを一個一個全部ピックアップしてだなんて、霞が関の皆さんを抱えていたって二年かかると言っているんじゃないですか。我々に霞が関の皆さんを使わせてもらえば、ちゃんと一年ぐらいで出しますよ。霞が関を抱えていてそんないいかげんなものしか出せなくて、何を言って、責任逃れをしないでください。
 今の話でも、この規定自体が全然使い物にならないということを申し上げましたが、先ほどから言っている自衛隊法八十八条、防衛出動をした自衛隊は、我が国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。これによって、一昨日の岡田政調会長との議論の中で、例えば殺人罪なんかについて違法性阻却される、民法上の損害を与えても違法阻却されるということをおっしゃいました。これは、どういう範囲でこの八十八条が適用されて違法性が阻却されるんですか。もう一回、念のため確認したいと思います。
津野政府特別補佐人 先日、岡田政調会長ですか、私の方から、民法上の関係と、それから刑法の関係と御答弁をさせていただきました。
 それで、刑法の方は、刑法第三十五条で、法令または正当な業務による行為は罰せられないという規定がございます。
 それから、民法関係では、これは武力の行使に関係しますから、必ずしも直接民法が適用になるわけではございませんで、公権力の行使に係る行為ですから、これは国家賠償法の適用になります。
 その第一条は、要するに、違法に他人の権利を……(枝野委員「それは阻却されるから、だから範囲はどこですか」と呼ぶ)それは、要するにそういう場合には阻却されるということになっております。適用がないことになっております。
 したがいまして、武力の行使をする場合には、これは八十八条の規定に従いまして武力の行使をする。その場合には、これは法令による行為でございますし、違法ではない行為でございますから、それは責任を問われるということはないということでございます。
枝野委員 三十秒で答えられる。必要な武力を行使したときには違法阻却されるということはいいんですよ。そう答えてくれればいいんです。
 では、必要な武力を行使することができる要件は何ですか。時間がかかってしようがないのでこちらから言いますが、我が国を防衛するために必要がある、「合理的に必要と判断される限度」において武力行使できる。今申し上げたのが要件、これでいいですね、法制局長官。
津野政府特別補佐人 この八十八条は、正確に言いますと、その前段の、国際の法規及び慣例に従ってというのがございますし、それから、事態に応じ合理的に……(枝野委員「要件じゃないでしょう」と呼ぶ)いやいや、当然要件になると思いますけれども、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」、こういう限度の範囲内において行うことが、当然法律の規定上は要件として規定されているわけでございます。
枝野委員 戦闘行為の現場では、例えば橋がかかっている。橋の向こう側、谷の向こう側に敵軍がいる。橋を落とさなきゃいけませんね。爆弾を仕掛けたりとか橋を落としたりしますね。それから、相手が占領している民家はともかくとして、このままいくと相手に占領されて、占領されると、それが盾になったりして、こちらが防衛するのに困ってしまうようなビルがある、今空き家になっている。こういうビル、武力行使のときには、戦闘行為の現場では、その橋を壊したり、それからその民家を壊したりする必要が当然出てきますね。これはどういう法的根拠に基づいて合法化されるんですか。
中谷国務大臣 八十八条によりまして、事態に応じ合理的に必要と判断される範囲におきまして適用されるわけでございます。
枝野委員 そうですね、八十八条以外ないんですよね。今回、自衛隊法を改正して、立木はどけることができるとかいろいろ書いてありますが、家屋は壊したりできないですよね。それから、国有財産である橋とかを壊せるとかという規定は全くないです、道路を壊せるという話は。だから八十八条でやるしかないんですよ。
 ところで、あらかじめこの橋を落としておく、戦略上、軍事オペレーション上、この橋を落としておかないといけないとかということは当然ありますね。戦闘の現場でなくても、今後戦闘の現場になるかもしれないところにある橋、あるいはそこの民家をあらかじめ壊しておくということは、軍事オペレーション上、当然必要なことですね。これはどういう法的根拠に基づいてやりますか。
中谷国務大臣 事態に応じ合理的に必要と判断される場合におきましては、八十八条で実施をいたします。
枝野委員 つまり、先ほど来、先ほどの道路法とかの議論のところでは、戦闘行為の現場では八十八条と言っていましたけれども、違いますね。現に戦闘行為が行われていない場所にあっても、八十八条を行使して武力の行使ができる。そうですね。
中谷国務大臣 それも戦闘行為の現場ではないかというふうに思います。というのは、外部からの武力攻撃が行われる際には、相手方は全く自由な作戦行動をとりまして、国民の生命財産を脅かすものでございまして、自衛隊の使命は、国を守り、国民の生命財産を守るというために敵を排除するという戦闘行動を行うわけでございますので、そういった外部からの侵入者がいなくなるように全力を尽くすわけでございます。
枝野委員 ということは、さっきも言ったとおり、今回の有事法制のいろいろな法案が通ろうと通るまいと、この八十八条、もともと有事法制があった。この八十八条があれば、防衛出動がされたときに敵を排除するために必要、条文をきちんと読むと、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」では何でもできますということですよね。そうですね。
中谷国務大臣 実施することはできますが、この法律によりまして自衛隊が行動できる範囲というものは総理大臣によって指定をされるわけでございますし、また、その限度というものは「合理的に必要と判断される限度」でもありますし、また、国際法規というのがありまして、これは傷病者や文民保護のためのジュネーブ条約、民間人や民間施設を保護する観点等から戦闘手段を規制したヘーグ陸戦法規、毒ガスの禁止に関する議定書、対人地雷禁止条約等がございます。これらの国際条約のもとに国際的に適切に行動を行うわけでございます。
枝野委員 その条約は今でもあります。だから、今でも我が国は遵守義務がありますから、有事法制があろうとなかろうと、八十八条があろうとなかろうと、国際条約ですから、我が国は遵守する義務が今でもあります。そして、八十八条で、とにかく防衛出動の対象範囲とされたところだったら事実上何でもできますと。それだったら、こんな大騒ぎして、有事法制がなきゃ国が守れませんだなんていう議論をやめてください。
 我々は、確かに八十八条はあるけれども、こんな抽象的なあいまいな規定だけで武力を行使することになってしまったときには、いろいろと行き過ぎがあったり、あるいは、逆に抑制的に働くことによって、本来の役割を果たさないこともある。だからきちんと、もちろん、さっきも言いましたとおり、有事においてですから、どんな事態が起こるかわからないですから、すべてのことを細かく、平時と同じように手続を規定しておけだなんということを言うつもりはありません。
 しかしながら、もうちょっと八十八条より具体的に、どういう範囲で、あるいはどういう原則に基づいて、どういうことを大事にしながら、あるいはせめてこれとこれとこれだけは絶対やっちゃいけませんということについてきちんと有事法制としてつくることで、例えば自衛官の皆さんも安心して、これは違法じゃないんだ、法律に基づいて、正当業務行為なんだと自信を持ってできる。それから、国民の側も、いざというとき自衛隊がいろいろ動くけれども、戦争のときには必ず行き過ぎが起こるわけですから、その行き過ぎが起こらないように我が国はきちんと法整備をしてもらえているという安心感ができる。だから必要なんだと我々は思っているんですよ。
 ところが、八十八条で、いざドンパチ始まったその現場では、単に国際法令と慣習を守る、そして合理的に必要と判断されるという基準だけで何でもできちゃいますというんだったら、有事法制の必要は逆に言ったらないという話じゃないですか。ここの八十八条をどうやって具体化するかということが、有事法制の整備として一番大事なことじゃないですか。
中谷国務大臣 正当行為でもいろいろなケースがあって決め切れませんし、世界じゅうどんな国でも、先生のおっしゃるような、八十八条がどこでも使えるという国家は恐らくなく、やはり、これは適切に戦闘行為が行われる地域のみの規定でありますし、それ以外の地域におきましては、国民の人権や、また法規を尊重して、できるだけ国民に要らぬ迷惑をかけないように速やかに敵に対峙するというのがこの自衛隊法でございます。
枝野委員 ルールをきちんと守る、原則をきちんと守るということで本当に全部現場が守られるんだったら、戦争犯罪だなんて問題なんか起こらないし、有事法制きちんとやらなきゃなりませんねなんという話は出てこないんですよ。
 万が一の、まさにこういう抽象的な規定は、どこまで適用されるのかよくわからない、どういう現場で適用されるのかよくわからない。あそこの橋とかあなたの家をぶっ壊します、敵はずっと何百キロも向こうにいますね、だけれども、戦略上この橋を壊さなきゃならないとかこのビルを壊さなきゃならないとか、あり得るわけですよ。当然、住民の方は、冗談じゃない、やめてくださいということがあるかもしれないですよ。そういうところでトラブルが起こるわけです。
 それから、オペレーション上、どうしてもやむを得ず自衛隊が先に逃げちゃうなんということがあるのかもしれない。過去の戦争でいろいろ起こっているわけです。いや、我が国はかかわっていないけれども、最近の戦争でもいろいろと、戦争状態のときには行き過ぎがある、問題が起こることもある。
 もちろん、すべてをきちんと細かく決められないのはよくわかっているけれども、八十八条のような抽象的な規定だけではなくて、できるだけその範囲、具体化をさせるための努力をするというのが有事法制をつくっていくことの意味だというふうに私たちは思って、そのための努力をしているんだから。確かに大変ですよ、これを具体化していく作業というのは。だけれども、ここの部分をすっぽり抜いて、有事のときは、本当の有事は八十八条、今までどおりです、それ以外のところをやります、これが有事法制です。有事法制なんて言わないでください、有事準備法制ですよ、これは。そうですね、総理。
中谷国務大臣 これは、自衛隊だけで侵略に対処できることは毛頭考えておりませんで、まさしく国を挙げて、内閣を挙げて取り組む必要がございます。そういう観点で、今回、対処基本方針をつくって、対策本部を設けて、各省庁並びに地方自治体やほかの機関と連携をしてやるわけでございますので、自衛隊のオペレーションはオペレーションといたしまして、また、内閣全体の対応としましては、対策本部でよく協議をいたしまして、国民の生活に関するもの、また事前の調整が必要なもの等につきましては、対策本部で調整をして、国民の皆様方に協力をお願いしながら実施できるということでございます。
枝野委員 全く水かけ論なんで先へ行きますが、政府を挙げてこういった武力攻撃事態には対処しなきゃならない、大事なことです。先ほど、我が党の前の質問の中にもありましたが、そのとき、だれがきちんとこの国の進路、行動をクリップして進めていくかというのは、物すごく大事なことですし、今回の法改正は、まさにどこかから大挙して船から上陸してくるということを想定した一時代前の戦争だけを想定しているようですが、むしろ、やはり一番リスクとしてあり得るのは、突然ミサイルが飛んでくるとか、そういうことの方が、少なくとも同じようなリスクがあるわけですね。
 そこで、防衛出動命令に関する自衛隊法七十六条の一項という規定があって、こういうのはきちんと説明しないとテレビを見ている人がわからないと怒られているので、防衛出動をするためには、今まで、今もそうですが、「内閣総理大臣は、」という主語で、云々かんぬんのときは防衛出動を「命ずることができる。」という規定になっているんですね。ところが、今度事態対処法で、対処基本方針をつくって云々ということが新たに法律でできるんで、その自衛隊法も一部改正されて、それを引用しているわけです。それで、対処基本方針に基づいて防衛出動命令を出します、こういう手続になっているわけですね。
 つまり、どういうことかというと、対処基本方針は閣議決定が必要なんです、最低でも。緊急の場合は国会承認は事後でもいい。だけれども、閣議決定をして対処基本方針は決めるとなっています。そうすると、自衛隊法の主語は、「内閣総理大臣は、」防衛出動を「命ずることができる。」となっていますが、今回の改正で、明文上、閣議決定がないと内閣総理大臣は防衛出動を命じられないということになります。こんなので本当に緊急事態のとき足りるんですか。
中谷国務大臣 自衛隊の最高指揮官は総理大臣でございますが、一国の防衛出動に際して行動する際につきましては、総理大臣並びに閣議の決定が必要でございます。これは、従来の自衛隊法の法文にも書かれているわけでございます。
枝野委員 少なくとも法文には書かれていませんでしょう。法文上は「内閣総理大臣は、」「命ずることができる。」しか書いてなくて、なぜか知らないけれども、解釈上、「内閣総理大臣は、」と書いてあるけれども閣議決定が必要だというわけのわからない解釈をしていたんじゃないですか、違いますか。
津野政府特別補佐人 自衛隊法の七十六条、防衛出動を下命することができるこの「内閣総理大臣」は、内閣の首長たる内閣総理大臣を意味しておりまして、それは自衛隊法のたしか七条で、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」というところから、ここの七十六条の「内閣総理大臣」は内閣の首長たる内閣総理大臣であると。
 これは、防衛出動というこういった大変重要な事項、マターを決定することからかんがみまして、そういう考え方で来ているわけでございます。
枝野委員 ですから、まさに、それでいいんだということで本当に有事法制我々やっていますと皆さんおっしゃるんですかという話ですよ。
 有事が起こるのは、国際緊張が高まって、あそこが攻めてくるかもしれない、何とかしなきゃならないという段階をじわじわ踏んで、それで本当に攻めてきましたとやってくれるなら、こんなありがたいことないですよ。それは閣議決定をやって丁寧にやってください、大事なことです。だから、原則は閣議決定を踏み、国会承認を踏む、当然です。我々は、文民統制だなんていうと官僚の統制になっちゃいますから、民主的な統制が必要だ、大事だと思っていますから、当然やってください。やるべきです。だけれども、そういう事態で有事が起こるとは必ずしも限らない。
 この間の九・一一を、あれを自衛権発動できる事態と解釈するかどうかは別問題として、あんなことが突然起こったりすることがあるわけですよ。かつてのイラクのクウェート侵攻は、ある程度予兆があったかもしれないけれども、ある意味では国際的には突然起こったりするわけですよ。そのときに、例えばたまたま閣議をやっているときにミサイルが飛んできてどこかに落ちましたというときだったら、それは幸いかもしれない。あるいは国会でこうやってみんないるところだったら幸いかもしれない。だけれども、全国に散らばっています、閣議ですとみんなに電話かけて何分かかるんですか。その間にミサイルは次から次へと撃ってこられるんですよ。
 防衛出動だなんというのは、とにかく我が国は専守防衛だからまず一発撃たれてからじゃないと撃てないと先ほど総理おっしゃっていましたけれども、二発目、三発目、すぐ来るかもしれない。あるいは爆撃機が日本に爆弾を現に落として、上空を飛んで回っている。一分一秒でも早く自衛隊に出動の命令を出すのが有事法制なんじゃないですか。
 そういうときには、緊急やむを得ない場合には、総理大臣の命令によってまず初動させるということが当然じゃないですか。
中谷国務大臣 この点につきましては、先ほど末松委員からも、危機管理の要諦ということで、事前にマニュアルをつくり、そして訓練をして、検討をして対処しろということでございます。
 この法案等につきましては、安全保障会議の下にその事態の検討委員会のような委員会ができます。そこでこの事態に速やかに対処できるようなルールをつくって、速やかに所要の手続が行われるようにすることが大切なことでございます。
枝野委員 マニュアルをつくれば確かに、日本じゅうに閣僚の皆さんが飛んでいても、それは一時間かかるのが三十分に短縮できるかもしれない。だけれども、法律で閣議ということになっているんだから、その三十分で何人人が死ぬかもしれないじゃないですか。それが有事法制なんじゃないですか。
 そもそも、先ほどの道路法とか港湾法とかの手続の話もそうだし、ここのところもそうだけれども、結局、霞が関秩序とか今の内閣法体系、総理大臣も横並びの一大臣にすぎません、総理大臣には各閣僚に対する指揮命令権はありません、各役所の縦割りの行政法規を大事に守ります、そちらの方が前に出てこの法律をつくっているから、こんな非現実的な話が出てくるんですよ。そこのところを取っ払うべきなんです。
 我々は、有事においても基本的人権はしっかり守らなきゃならない。国民の人権との関係では、有事であろうともきちんと守らなきゃならない。だけれども、まさに有事なんだから、まさに霞が関の縦割りの、役所の何とかかんとかとか、そういったことは飛び越してでもやれることはたくさんある。だけれども、その役所の縦割りのところは一生懸命残して、役所に通知が必要だ、届け出が必要だ、総理大臣一人では、内閣の首長たる総理大臣なんだから閣議をやらないとできません、こういう発想ではやはり今までと変わらないんですよ。
 物事の発想を変えて、有事においては、その役所の縦割りをぶっ壊していく、内閣総理大臣を中心として、どうしても間に合わないときはですよ。もちろん、事後的にはすぐ閣議決定する、事後的にすぐ国会承認する。だけれども、まずはトップリーダーの責任と判断で物事を動かせるようにする。でなければ、安心して、ミサイルが飛んできたらどうしようかとかということに対応したことにはならないということを申し上げておきます。
 もう一点だけ、大事なところを聞いておかなければなりません。
 指定公共機関について、何度も出てきています。事態対処法の二条五号で指定公共機関というのが書かれていますが、指定公共機関は政令で定めるものをいうと言っています。しかし、政令で定められる指定公共機関には、事態対処法の六条で、必要な措置を実施する責務を有するという義務規定が置いてあるんです。法律上の義務を課せられるんです。政令で指定した機関に、しかも中身についてはよくわからない義務を六条で課せられる。こんな規定の仕方をして本当にいいんですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態対処法六条におきまして、指定公共機関は、武力攻撃事態への対処に関し必要な措置を実施する責務を有する旨を規定いたしております。
 本条は、特定の措置の実施について、指定公共機関に具体的な義務を課すものではございません。この必要な措置として指定公共機関が実施する対処措置につきましては、今後整備する個別法律の中で具体的に定めるということにいたしておるわけでございます。
枝野委員 確かに、その指定公共機関に対して内閣総理大臣が総合調整をしたり指示を出したりするという規定のところには、別に定める法律に基づきという規定があります。だから、指示や総合調整などは別に法律がなければ行使できない。だから、空文ですよ。今こんな法律をつくったって、何の意味もない。二年後に一緒につくればいいだけの話のことを何で先につくって意味があるんだという、意味のない規定ですよ。六条にも、やはり別に法律の規定がないと何の法的効果もないんですね、今の御発言ですと。
福田国務大臣 今の件は、この対処措置というものが、そもそも法律の規定に基づいて実施する措置、こういうことになっておりますから、この法律に基づいて、その後のいろいろな法整備を行っていく、こういうことになるわけです。
枝野委員 だから、確認させてください。わざわざこの武力攻撃事態対処法の六条には、指定公共機関は「武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」と、責任があるんだと、義務があるんだと書いているんですが、別に法律を定めない限りこの六条は法的効力がない、これでいいんですか。
福田国務大臣 この法律というふうに先ほど私、申しましたかもしれません。これは、別に定める法律に基づく、こういうことでございます。
枝野委員 要するに、私は、総理大臣の指示とかということは、別に法律で定めると書いてありますから、こういうところは全く法律的に意味がないですねと。だけれども、せめて六条ぐらいは、別に法律で定めると書いてないですから、こういうところぐらいは何らかの法的効果はあるのかなと思ったら、ここすらない。この法律、何にも意味がないですよね、二年後まで。施行する必要は全然ないですね、二年後まで。ということを申し上げておきたいんです。
 それに関連して、十六条で、指定公共機関などが総合調整や指示に基づいて措置を実施したときに損失を受けたら、それについて必要な財政措置を講ずるものとするという規定が書いてあります。
 ところが、この規定は、指定公共機関の損失に関してという規定です。指定公共機関の職員、従業員とは書いていないんですね。職員、従業員に対して損失を補償するための、補償とは正確に言っていないですね、全額穴埋めできるかどうかわからないから。損失に関し必要な財政上の措置を講ずるのはもう当然のことじゃないんですか。どうしてこれは機関に対してだけなんですか。
福田国務大臣 この法案におきましては、組織としての指定公共機関に対処措置の実施を求めるということになっているのでございまして、職員個人に対して具体的な行為を求めるものではないということであります。したがいまして、指定公共機関に対する財政上の措置について定めたものでございます。
枝野委員 しかし、指定公共機関だといったって、その機関が勝手に物をできるんじゃなくて、そこで働いている人がいるから指示された行動をとれるわけですよ。例えば、具体的に挙がっているNHKだって、NHKで働いている職員の人がいるから放送電波を流せるんであって、それは、機関に指示を出した、機関にお願いをしたって、実際に行動するのはそこで働いている職員の皆さんですよ。実際には、組織も損害を受けるかもしれないけれども、そこで働いている人たちも損害を受けるかもしれないです。そこのところはどうするんですか。
福田国務大臣 職員というのは、要するに組織に属しているわけですね。ですから、職員の問題については、機関が、組織が責任を持つべきものだというように考えます。したがいまして、もし、職員ということに対して、職員個人に対して何か具体的な行為、こういうことになった場合には、組織が責任を持つということによって、組織に対する、指定公共機関等に対する財政上の措置、こういうふうに決めておるわけでございます。
 個人というものを国民というふうに考えるのであれば、国民の被害、こういうものにつきましては、さまざまなケースがあるというように考えられますので、個別具体的な判断が必要だというふうに考えられます。そうした場合の対応につきましては、これは武力攻撃事態終了後の復興施策のあり方の一環として政府全体で検討すべきものと考えております。
枝野委員 指定公共機関を政令指定にしてしまっているから、今みたいな話では説得力がないのですよ。
 つまり、ここに書いてある、例えば独立行政法人や日本銀行や日本赤十字社や日本放送協会、これは倒産することはないでしょう、破産することはないでしょう、事実上。だけれども、その他公益的事業を営む法人一般を政令指定できるのですよ。当然、一般の株式会社もあり得るでしょう。一般の公益法人もあり得るでしょう。そういうところは、戦争なんか起こっているときですから、いろいろな諸般の事情で倒産をしたり破産をしたりして、従業員の人たちがその内部の問題での求償関係だといったって、それを請求したくても支払い能力がなくなることはあり得るわけです。
 しかも、国は確かに損失を補償して、その分お金がいくからいいじゃないですかと。でも、破産手続に乗っていたら優先的な権利を行使できるかどうかわかりませんよ。
 こうやって機関に義務を課すのだから、義務を課す以上は、当然のことながらそれについて財政上の措置をとりますと規定を置くんだったら、その機関や、必要に応じてそこの職員、従業員に対してという規定を置くのがむしろ当然の感覚じゃないですか。
福田国務大臣 指定公共機関が破壊されたり、つぶれたり、破産というか、そういうような状況になった場合のその職員を救済するかどうかということになれば、この指定公共機関の損失に含まれるようなものについては、その機関が破壊、つぶれたような場合にも、法的に継承するものに対して財産上の措置を講ずることになるということでございまして、あとは先ほど申し上げたとおりでございます。
枝野委員 ここで会社更生法や破産法の話をそんなにしてもしようがないんですけれども、継承するところに損失を国が補償しても、例えばそこで働いて実際にけがをしたとかなんとかという人が優先的にその金を取れるというような法的な裏づけは全くないんですよ。一般の債権者と平等なんですよ。配当が五%だったらその中の五%しか取れないんですよ。だから直接に、もちろん例外的な場合だけれども、例外的に直接に国との関係での規定も置いておくべきじゃないですかということを申し上げているのです。
 同じような視点から、もう一点だけ。
 防衛出動をしたときに、医療関係者、土木建築工事関係者、輸送を業とする人たち、こういう人たちが、従来の法律でもそうですが、都道府県知事が要請することによって、そうした業務に従事しなきゃならないという規定が自衛隊法にあります。それはお手伝いくださいということでしょうね。つまり、自衛隊が防衛出動するようなときには、お医者さんとか、それから土木工事をする人とか、それから輸送をする人は協力してくださいという規定で、それはそれでもっともだなというふうには思います。
 だが、今回、いろいろなこういった規定のところに、罰則をつけたものと、罰則をつけなかったものがあります。ここには罰則をつけませんでした。なぜですか。
中谷国務大臣 枝野先生おっしゃるとおり、この百三条二項におきまして、医療、土木建築工事、輸送を業とする者に対して、業務従事命令を発することができるわけでございますけれども、この業務は、専門的な知識と経験、能力を用いて、能動的かつ主体的に行っていただくことが必要なものでありまして、業務の従事命令は、通常行っている業務をそのまま行っていただくことを基本といたしてございます。
 そういうことですから、我が国が武力攻撃を受けているような事態におきましては、自発的かつ積極的に協力していただけるものであるというふうに期待をいたしておりまして、この命令というものは、防衛庁長官の要請に基づいて都道府県知事がこれらの方々に公用令書をもって命ずるものであることから、仮に、業務命令を受けた事業者の雇用する従業員さんもございますけれども、この業務に従事することを拒否したといたしましても、それは事業者と従業員との間の労使の関係の問題でございまして、こういう問題については、こちらから申し上げる立場ではございません。
 罰則をつけなかったというものにつきましては、やはり自発的、積極的に協力していただけるものと期待をいたしておりますし、また、本来やはり愛国心といいますか、こういう事態に国のことを考えていただくというのは当然のことでございまして、そういうものに期待をしているからでございます。
枝野委員 そこが自発的だということは物すごく大事なことなので、そこは私も全く同感なんですが、この規定で、その業務の命令の名あて人、だれに対して命令を出すんですか。つまり、病院なのかお医者さんなのか、あるいは鉄道会社なのか鉄道会社に働いている人なのか、土建屋さんなのか土建屋さんで働いている人なのか、どっちですか。簡単でしょう。
中谷国務大臣 これは都道府県知事から事業者でございまして、例えば社長さんとか院長さんとか、そういう責任者でございます。
枝野委員 そこで、先ほどちらっとおっしゃったんですが、自発的に協力していただくものだ、だから罰則をつけなかったと。だけれども、それぞれの組織、例えば土建屋さんで働いている作業員の方、鉄道会社で働いている運転手さん、あるいは病院で働いている看護婦さん、いや、自発的と言われても、ちょっと危ないから、うちはおじいちゃん一人だから連れて逃げなきゃいけないから勘弁してくださいということでその人が拒否をした。罰則はない、だけれども雇用契約上の不利益処分を受けるんだとしたら、事実上の強制ですよね。どうするんですか、それはやはり認めるんですか。
中谷国務大臣 従業員の方とか組合の方がそれを拒否するというケースが出てきた場合におきましては、これはやはり、事業者と従業員や加盟されている方々との間の労使の関係の問題でございまして、この問題につきましては特に申し上げる立場にはございません。
枝野委員 自発的協力と言っておきながら、それは、その法人、組織の代表者は自発的に拒否したり受けたりできるかもしれないけれども、そこで働いている人は、労使の関係だとはいいながらも、雇用契約に基づく関係だといいながらも、拒否をしたら雇用契約上不利益処分を受けると思ったら、嫌だけれども、首にされちゃたまらぬからやらざるを得ませんねという話で、事実上強制されるんじゃないですか。
 どうしても、いざというときには国民の皆さんに義務を課して協力してもらわなきゃならないことが全くないとは僕は思いません。だけれども、どうしてもやっていただくことがあるときは、要件をきちっとして、しかもそれに対する対応措置もきちっとしてやるべきであって、こういうふうに、自発的と言いながら、実は雇用関係に基づいて事実上強制をさせられる人が出てくるだなんということはやはりやっちゃいけないんじゃないですか。
中谷国務大臣 それは、何度も申し上げますけれども、事業者と従業員の方々との問題で、労使の問題でありまして、会社の中の問題といたしまして、このような問題に私があれこれ申し上げる立場にはございません。
枝野委員 結局、戦争なんかのときに人権侵害が起こるというのはいろいろなパターンがありまして、一つは、確かに、法律、公権力によって直接人権侵害が起こり得るケースというのももちろん過去にもたくさんある。だけれども、社会的プレッシャーによって、嫌々ながら自発的という名目でやらされるケースもある。
 本当にそれが法的義務を課してやってもらわなきゃならないことだったら、法律できちんと書いて義務を課すかどうかということを国民的な議論をすればいい。だけれども、自発的ですと言いながら、実際には雇用関係に基づいて事実上社会的強制をされるというやり方は一番アンフェアだ。どうしても、こういう業務に従事している人たちはいざというときは自衛隊に協力してくださいと本当に思うのだったら、そういう法律を出して、それで国民的議論に付すのが筋ということで、私は、ごまかしだというふうに言わざるを得ません。
 もう一点聞きたいことがあります。基本理念のところです。
 武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、一項から五項までいろいろ書いています。でも、書いてあることは、当たり前のことを改めて確認をしていることではあります。例えば、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を守れ、当たり前のことで、書いてなくたって守らなかったら違憲になるわけですから、当たり前のことを書いているわけです。
 ところが、ここに、当たり前のことで大事なことなのに書かれていないことがある。国際人道法を遵守して武力攻撃事態に対処しなければならない。ほかの法律に書いてあるからいいじゃないかとかと言わないでくださいね。だって、人権を守れだなんて憲法にちゃんと書いてあるんですから。
 確かに、国際人道法なんかを守るというのは、さっき議論した自衛隊法にも書いてあります。ほかの法律に書いてあっても、わざわざ基本理念ということでほかのことは改めてここに書いているのに、国際人道法の遵守ということを含まなかったのはなぜなんですか。ケアレスミスですよね。
福田国務大臣 本法の三条五項でもって、武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、「国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。」旨定めておりますけれども、ジュネーブ諸条約等の国際人道法を含む国際法を遵守することは、このような国際社会の理解等を得る前提であります。したがいまして、本法案におきましては、武力攻撃事態への対処に関する基本理念としては国際人道法の遵守をあえて規定する必要はないと考えたところでございます。いずれにしても、武力攻撃事態への対処に関して、国際人道法を含む関連の国際法を誠実に遵守することは言うまでもありません。
 なお、事態対処法制の整備に当たりましては、本法案第二十一条第二項の規定に基づいて国際人道法の的確な実施が確保されているところであります。
枝野委員 せっかくわざわざ憲法に書いてあることを改めて書いたりとか、基本理念として一番大事なことですと書くのだから、きちんと国際人道法を守りますと明示的になぜ書かないのかという感覚を私は疑うんです。
 残念ながら日本は、一番直近に行った戦争の処理に当たって、いろいろと戦争の途中で国際人道法違反ではないかということで戦後さまざまな国際的な問題になったりしてきましたし、今もその余韻というかその処理が終わっていないという声が世界の幾つかのところでくすぶっていますよね、外務大臣。
川口国務大臣 捕虜の問題につきましては、さきの大戦後、サンフランシスコの平和条約の義務を誠実に履行してきたわけではございますけれども、委員おっしゃるように、現実問題として、捕虜の問題がくすぶり続けているという事実は存在すると思います。
 しかしながら、今官房長官がお話しになられましたように、国際人道法につきましては、二十一条のたしか二項におきまして、今後、事態対処法制を決めていく場合に、この国際人道法の的確な実施が確保をされるということが必要であるということの規定が置かれていますので、そういうことで検討を進めたいと考えております。
枝野委員 さっきからわざわざ申し上げている、ほかのところに書いてあるからいいじゃないかだったら、この基本理念自体が実は全部要らないのですよね。だけれども、大事なことだから、ほかのところに書いてあることでも基本理念として書いてあるわけです。
 これは、戦後といってもむしろ最近にずっと近い戦後ですから、まさに過去の歴史の話なので、ぜひ私自身もいろいろ勉強してみたいと思いますが、ある本で読んだ話ですので、裏づけがもし必要があれば皆さん御勉強をいただいたらいいと思うし、私も勉強したいのですが、日清、日露戦争のときの開戦の詔勅には、きちんと、国際人道法を守りますということをわざわざ開戦の詔勅に書いてあった。ところが、なぜか第二次世界大戦になったらそういうのは落ちていた。それはたまたまなのかもしれないけれども、でもそういうところへの問題意識がきちんと常に向いているかどうか。日清、日露あるいは第一次世界大戦ぐらいまでは日本軍の国際法遵守というのは非常に世界で高く評価されていたのに、なぜか第二次世界大戦では、結果的に、負けたこともあるんだろうけれども、いろいろな問題が指摘されていた。やはり、この問題については国際社会の一員として我が国が信頼されてやっていくためには、常に国際人道法ということを最優先ぐらいのテーマに意識をしておかないと、残念ながらさきの大戦の話の、まだいろいろなことが世界各地で残っていることもあるわけですから、十分な配慮をしなければならないということを申し上げておきたいと思います。
 さて、昨日の石井紘基議員もここで質問させていただきましたが、いずれにしろ、こういうあいまいで抽象的な法律を今回つくろうとしておられる。それを使っていく中心は防衛庁である。抽象的であいまいというのは有事法制の性質上やむを得ないところがあるけれども、それにしても抽象的であいまい過ぎる。その分だけ、防衛庁に対してはより一層の高い信頼がなければ、到底こんな法律任せられない。
 それなのに、昨日石井紘基議員がここで議論をさせていただきましたが、ここに「防衛庁の新初等練習機の調達についての会計検査報告のポイント(会計検査院作成)」つまり、会計検査院が防衛庁のことについて会計検査をした報告のポイント(会計検査院作成)という文書があります。ところが、この文書をつくったのは会計検査院ではなくて防衛庁である。間違いありませんね。きのう、そう答弁していますね。
中谷国務大臣 そのとおりであります。
枝野委員 法務大臣、個別案件については法務大臣お答えにならないのはよくわかっていますから、一般的に聞きます。公文書偽造罪、偽造公文書行使罪、どういう場合に犯罪が成立しますか。
森山国務大臣 公文書偽造罪は、行使の目的で公務所や公務員の作成すべき文書を無権限で作成した場合に成立し、偽造公文書行使罪は、偽造公文書を行使した場合に成立するものと承知しております。
 これらの罪の法定刑についてですが、公務所や公務員の印章や署名があるいわゆる有印公文書の偽造罪の法定刑は一年以上十年以下の懲役であり、その他の公文書の偽造罪の法定刑は三年以下の懲役または二十万円以下の罰金であり、偽造公文書行使罪の法定刑は、これらの公文書偽造罪と同一の刑であると承知しております。
枝野委員 防衛庁には会計検査院の権限はありませんから、当然この文書の作成は公文書偽造罪に当たりますね。ついでに、これは何か、スイス政府か何かに送った。行使罪に当たりますね、防衛庁長官。
中谷国務大臣 この件につきましては、経緯がございますのでお話をさせていただきたいわけですけれども、私の就任の前でありますが、平成十二年の九月の二十五日に、航空自衛隊の初等練習機の後継機であります新初等練習機の調達の入札がございました。これは総合評価落札方式によって行うことといたしたものでありまして、会計法令に基づいて、大蔵大臣に協議の上、入札を実施したところでございます。
 そこで、その後、国会でも本件について御質問がありまして、昨年の一月以降、会計検査院が検査を行っていただきまして、昨年の十一月三十日にこの会計検査報告書が内閣に提出をされまして、この問題に関心を寄せておりましたスイス政府が、この本文を送っていただきたいというような御要望がありまして、新初等練習機の調達に係る会計検査院報告の本文を送ろうとしたところでございます。
 ところが、この会計検査院の本文が非常に専門的で詳細な報告書でございまして、約七千字、十三ページでございますが、平易な、わかりやすい要約をつけるべきであるというふうに当局が考えまして、この結果、ポイントとなる指摘をいただいた主な事項二点と、そのほかにもございますけれども、大きく概要の二点と、そして、この検査の結果でありますけれども、会計検査院は五段階の検査があるそうでございますが、いわゆる指摘事項につきましては一、二、三、四の段階ですが、五段階目は、国会からの検査要請事項及び特定検査対象にかかわる調査状況の五つに分かれておりまして、このことは、会計検査院のパンフレットを見ましても、この五項目は、違法または不当な事態であるとの指摘をしたり改善処置をとることを求めたりするものではなくて、国民の関心の高い問題について会計検査院の検査状況を明らかにしたものであるという点、そのことをスイス政府に伝える必要があると思いまして、それを書いたわけでございます。
 この作成につきましては、会計検査院に、この検査は、結果はどういう内容ですかということを事務的に確認して、それに間違いないということで確認をした上で書いたものでございます。そのポイントを、会計検査院報告の本文と一緒に、昨年の十二月十九日に外交ルートを通じてスイスに送付をいたしました。
 そして、この問題につきまして国会で再び御指摘がありまして、これは防衛庁と同じ認識かという点につきまして、会計検査院からも、「新初等練習機の調達につきましては、検査いたしました結果、法令、予算に違反し、または不当と認めた事項として取り上げるような事態は見受けられなかった」と御答弁をいただいたわけでございます。
 それで、その文書を送ったいきさつでございまして、この点につきましては、会計検査院の本文にない文言を記載いたしました。また、会計検査院に断らずに「会計検査院作成」と記述をいたしましてスイス政府に送付したことにつきましては、防衛庁といたしましても遺憾でありまして、反省をいたしているところでございますし、また、外交ルートを通じまして、スイス政府に対してその旨を連絡して、おわびを申し上げたところでございます。
 こういったことにつきましては、事務的には全く私の監督不行き届きの点がございまして、非常に反省をいたしておりますが、今後、このようなことがないように、庁内を厳しく監督してまいりたいというふうに思っております。
枝野委員 今大臣がおっしゃられたことは、情状面としての主張としてはあるかもしれない。だけれども、公文書偽造、行使という犯罪を犯しているんですよ、これは。犯罪を犯しているのを、ごめんなさいで済むんですか。そんなので済むんですか。犯罪見つけたら、公務員には告発義務があるんですよ。これはだれが主犯なのか告発しなきゃいけないんです。あなた、義務があるんです。
中谷国務大臣 この点につきましては、事務当局が認識が甘いし、私も監督不行き届きであった点はお認めをいたします。この問題につきましては、刑法上の問題ということになりましたら司法の御判断をいただくことになりまして、防衛庁といたしましてはお答えをする立場にはございません。
枝野委員 公務員の告発義務についてどう考えるんですか。告発義務があるんですよ。大臣、告発義務を無視するんですか。同罪ですよ、そうしたら。
中谷国務大臣 この点につきましては何度も委員会でお答えをいたしておりますが、内容的には、会計検査院に事務的に確認をして、こういう性格の検査でしたということをそのまま書いておりますし、その文言も会計検査院の作成したパンフレットに書かれておりまして、国会の会計検査院の方の御答弁も、その認識は同じであるという答弁をいただきまして、内容的には一緒であるというふうに私は思っております。
 ただ、名前を「会計検査院作成」と書いたことにつきましては全く事務的なミスでございまして、スイス政府に対しましても大変申しわけないというふうに考えておりまして、国会の場でもおわびをいたしましたし、スイス政府に対しましておわびの手紙を書いたところでございます。
枝野委員 文書の作成名義を事務的なミスで間違えるんですか。防衛庁の職員は、自分が会計検査院だと思ったりするんですか。そういうことがあるんだったら、事務的なミスだということになりますよ。だけれども、防衛庁の職員だとわかっている人間が「会計検査院作成」だなんていう文書をつくるだなんというのは、意図的にやる以外にあり得ないじゃないですか。
 中身が云々という話は関係ないですよ、文書偽造罪は。中身に書いてあることは仮に正しくても、文書の作成名義を偽ったら、つまり勝手に外務大臣が例えば日本銀行券をつくったら、やはり――これは通貨か。別の大臣のところの文書を別の大臣が勝手につくったら、中身が政府の見解と一致したってやはりだめなんですよ。財務大臣が例えば外務大臣の名前で勝手に外交文書をつくったらやはりだめなんですよ、中身が合っていようが合ってなかろうが。まさに防衛庁が、会計検査院作成と、しかもチェックをされる側がチェックした側の文書を作成しちゃった。明白な犯罪なんですよ。こんな犯罪を、違法行為を放置している大臣のもとで、どうしてその答弁とか出してきた法案を信用しろといって議論させることができるんですか。
中谷国務大臣 このポイントは、国会で質問があったときにお答えできるように、会計検査院の方にこの内容でいいかということに基づいて作成しまして、そのとき国会答弁で、プリントもあると思いますけれども、ここに会計検査院作成と。防衛庁の内部資料でつくった原案をもとにいたしております。
 そして、それを送る際には、事務方として会計検査院に、向こうに送るということを連絡したわけでありますが、事務的な連絡ミスでその旨が上の方に伝わっておりませんで、こちらはもう勝手に、今となっては、その本文にない文言を挿入し、またお名前を書いてしまった点につきましては、全く申しわけないことで、おわびをいたしておりまして、担当職員に対しては、適切でなかったという点があるということで、厳に、厳しく注意をしたところでございます。
枝野委員 今のお話は全部情状なんですよ。確かに、公文書を偽造したから全部必ず実刑で刑務所に入ってくださいなんて思いませんよ。いろいろな情状があって、それは起訴猶予になるかもしれない。
 しかし、いやしくも、きょうまでずっと議論してきているように、こういうアバウトな、非常に抽象的な法律しか書けない、出てきていない。有事においてその法律の運用をする防衛庁が、こんな遵法精神で、こんな抽象的な法律を使わせたら、明示的な公文書偽造のようなことすらいろいろ言いわけをして告発もしない。抽象的な条文の法律をこんな人たちにどうやって使わせるんですかという話になりますよ。現場の人たちは頑張っているかもしれない。でも、まさに大臣がしっかりとした遵法精神を持って、きちんと刑事告発し、きちんと省内処分をし、大臣もきちんと責任をとる。こういうことがなければ、とてもじゃないけれども、こんな法案、対応できないですよ。
 総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 いろいろ今までの御議論を伺いまして、不備な点を御指摘いただいたり、あるいは建設的な議論もいただいておりますし、これからこういう議論が重ねられていくうちに、有事という法整備が議員の中にも必要だということが広がっていくことを私は期待しておりますし、また今後、今言った会計検査院の文書の問題につきましても、これはあってはならないことであり、防衛庁としても厳しく反省しなきゃいけないと思います。
 御指摘の点も踏まえて、より信頼を高めるような努力をしていかなきゃならぬと思っております。
枝野委員 違法行為をやっているんですよ。犯罪に当たる行為をやっているんですよ、役所が。少なくとも構成要件には該当しますよ。そういうことについて、きちんとした遵法精神も持たずに、いや大臣がきちんと、それは確かに泣いて馬謖を切る話かもしれないけれども、省内処分をして、刑事告発する。刑事告発したら起訴猶予かもしれませんよ、確かにこれは。だけれども、犯罪であることについては厳しく対応するという役所であってもらわなければ、先ほど来申し上げているように、アバウトな規定ぶりの法律で国民の人権とか生命とかそういうことにかかわる大事な権能を、防衛庁のもとで自衛隊を動かすんですから、そこのトップの人がその程度の遵法精神で、こんな法律とてもできるわけない。
 どうしても省内処分とかあるいは刑事告発とかしませんか、大臣。
中谷国務大臣 この文書等につきましては、会計検査院と連絡や打ち合わせをしながらつくった文書でございますが、これを送付するときに勝手に会計検査院の名前をつけて書いたということは、事務的に不適切であろうかと思いますので、この職員等に対しまして厳重に注意をすると同時に、今後このようなことが二度と起こらないように、信頼の確保に努め、より的確に事務処理が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。
枝野委員 役所は、法律に違反をしても御注意を受けるだけで守られる。お上はそうやって守られる。そんなもとで、本当に有事のときに国民は守ってもらえるんですかという話です。
 防衛庁長官がそういう感覚だったら、とてもじゃないけれどもこんな法律――しっかりと議論しなきゃいけないと思っていますよ。まず防衛庁長官をかえてください、総理。こんな大臣のもとで、とてもこんな法律を議論できるとは思えない。きちんと防衛庁長官として遵法精神をしっかり持っているんだという姿勢を大臣が示さない限り、大臣にはおやめをいただきたい、そのことを申し上げる。総理、いかがですか。
中谷国務大臣 もう一点弁解をさせていただきたいんですが、この会計検査院の結果である本文は丸々送っておりまして、こちらは好意をもってその要約版というかポイントをつけさせていただいたわけでございますが、このポイントの表に会計検査院と書いたということは非常に重大な、不適切な事務的なミスでございました。
 この点につきましては心からおわびを申し上げたいと思いますが、この本文は丸々すべて送っているということにつきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 中谷防衛庁長官時代の話ではないにしても、中谷防衛庁長官も、こういうことはあってはならないことだと厳しく反省していると思います。防衛庁職員も、このようなことが起こらないように今後さらに注意をし、信頼を得られるような対応をしなきゃならないと思っておりますので、私自身としては、中谷防衛庁長官も、最高責任者として、自分の在任中ではない出来事でありますが、我が事のように感じて厳しく反省しておりますので、今後二度と起こらないような対応をしっかりしていただきたい、そういうことで責任を果たしていただきたいと思っております。
枝野委員 私の議論をちゃんと聞いていただければ、文書偽造を起こしたときの大臣だ、そのことについての責任をとるべきだなんて私は申し上げていません。こうやって文書偽造の事実が出てきたことについて、それにきちんと対応しない、その程度の遵法精神の防衛庁長官では困るということを申し上げているんです。
 とばっちりのようで気の毒かもしれませんが、この内閣、この間いろいろな問題が出てきた。BSEの問題も出てきた、やはり責任をとらない。外務省、田中外務大臣はやめたけれども、その後もいろいろな話が出てくるけれども、大臣がかわったら、さっぱり具体的な事実関係を表に出さなくなってきた。
 そして、こうやって明々白々な防衛庁の違法行為が出てきても、情状面はいろいろ配慮すべきことはありますよ。だけれども、まさに、いやしくもこれだけ強い公権力を、自衛隊という強い公権力を動かす防衛庁は、だれよりも遵法精神が強くなければならない。ましてや、刑事犯罪に触れるような疑いを持たれるようなことがあっては絶対にいけない役所なんだ。
 そんなところの、対応が具体的に出てきても、部下をかばい、それは美しいですよ、部下をかばうのは。だけれども、部下をかばう前に、国民に対してきちんと、違法行為についてはどんな小さなことでも、やはりこれだけ強い公権力を持っているんだから、しっかりと対応しますという姿勢をまずお見せになるべきだ。
 この内閣全体として、こういったけじめとか責任とかという問題について余りにも甘過ぎる。そういうところからこういうアバウトな法律が出てきて、そして、きょう議論したとおり、中身はほとんどない。中身のある部分については逆行するのではないかという部分も含まれている。
 こうしたいいかげんなものしか出てこないということに対しては強い不満を申し上げて、重ねて、中谷大臣がきちんと省内の処分や告発、さらには、こうやって対応がずるずる延びたことに対する責任をきちんと果たされる、果たされないんだったら、きちんとその責任を総理として、内閣として問う、そのことを求めて、質問を終わります。
瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。


2002/05/09

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