2002/05/09

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末松議員、最悪ケースへの対処マニュアルの欠落を追及(民主党ニュース)

 9日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会において、民主党の末松義規議員が質問に立ち、最悪ケースへの対処マニュアルという観点から政府の有事法制を批判した。

 末松議員は、外交官時代の湾岸戦争の体験をふまえ、「危機管理の本質は、時間・人・解決するシステムなど当然にあるべきものがなく、それでも対応しなくてはならないということ」「考えるのもいやになるような最悪の事態を想定して様々なシミュレーションを繰り返し、マニュアル化と訓練を行っておくことが重要だ」と前置きしたうえで、まず昨年9月11日の米国でのテロ事件と同種の事件を想定し、日本での対処策をハイジャック機の撃墜の可否を含めて質した。

 小泉首相は「ケースバイケースだ。今の時点でああするこうすると言える状況にない」と答えたが、末松議員は「それは、何もせずにそのままハイジャック機を突っ込ませることを容認する発言だ。政治家である首相は『マニュアルを考えてみろ。最後は私が責任を取る』と言うべきではないのか」と追及。首相は「ハイジャック機の撃墜は、事件が発生してからでなければ検討できない」と消極的な姿勢を崩さなかった。

 末松議員はまた、「北朝鮮から核や生物兵器を載せたミサイルがあと6分で飛んでくることが判明したらどうするのか」と質した。小泉首相は「そういうものは想定しておらず、一撃を受けたあとでないと対応できない。もしそのような攻撃を受ければ、自衛隊と米軍が共同して対処することになり、大きな抑止力になる」と答えた。末松議員は、「一番想定したくない危機だが、もし今そのミサイルで国会議事堂が攻撃されれば、閣僚全員と国会議員の大半が死亡することになる。そのような状況で誰が指揮をするのか」などとさらに詰め寄った。

 末松議員は、前日の山田敏雅議員の質疑を引き継ぐ形で、台湾の国家安全局の秘密資金による対日工作疑惑についても言及。橋本元首相にも「お歳暮」として1万ドルが渡ったという疑惑を指摘した上で、このような外国のロビー活動を通じて秘密資金が日本に流入し、政策決定が歪められている現状を放置すべきでないと主張した。小泉首相は「そのようなロビー活動が頻繁に行われていることは、国会議員なら皆知っていること。そのなかで情報を取りながら各自の見識や経験を高めている」と平然と言い放った。質問の最後に末松議員は、ハーバード大学への留学費用として同資金から10万ドルの提供を受けた疑惑を持たれている秋山前防衛事務次官を参考人として委員会に招致することを求めた。


平成十四年五月九日(木曜日)

瓦委員長 この際、末松義規君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。末松義規君。
末松委員 民主党の末松義規です。
 渡辺議員に引き続きまして、質問をさせていただきます。
 私は個人的に、危機管理というのは、外務省にいたときに湾岸危機というのを体験いたしまして、そのときに担当課の課長代理ということをやっておりましたので、この危機管理の危機というものがどんなものかということを、私自身、自分なりに理解をしております。
 危機とは何かというと、要は、当然にあるものが当然になくて、しかも対応しなければいけない、それが危機なんだろうと思うんです。そういった意味で、例えば時間がない、そしてその体制や人がない、さらに前例が全くない、そして解決するシステムもない、そういったことに対して早急に対応しなきゃいけない、これが危機だろうということで、ある意味では、ボトムアップの日本型システムからいうと、どちらかというと一番苦手な分野なのかもしれません。そういうときこそ、トップダウンできちんとした指導者が判断をしていかないとこの危機を乗り切れないというのが、私の感じ方であります。
 その意味で、アングロサクソンの人たちを見ておりますと、私も先日、瓦委員長、また久間筆頭理事、ほかに与野党のそうそうたる方々と一緒にアメリカに行って防衛協議をさせていただきましたけれども、アメリカという国はやはりすごいなと思ったのは、一番自分たちにとって都合が悪くて、先ほど総理も言われましたよね、もう考えることも嫌だ、忌み嫌うような、そんな事態を想定して、そして、その想定のもとに自分たちでマニュアルとか対応をつくっていかなきゃいけないんだという思いが強くて、それがために、さまざまなシミュレーション、図上演習というんですか、それを使って、きちんとした対応をつくっていっている。だからあの九月十一日の米国のテロのときも、わずか、十一日から一週間から二週間ぐらいで、どこに米国の軍隊を送って、どういう補給を行って、そしてこの作戦をやっていくか、これがもうすべて完成されていたということなんですね。それで十月の初めからもう部隊が現実に動いている。
 なぜそんなことができたのかと米側関係者に聞いたら、これは、何万枚もあるいろいろな緊急時対応計画があって、その中から必要なものをちょっと何十枚か選び出して、その場面に想定できるものを選んだ中で、そこで数日間の間にこの緊急事態に対応する計画として上に上げられるという、その積み重ねがあるからあれだけ早く対応ができるんだと思うんですね。ですから、そういった意味で、まさしく日本の有事立法をやる場合に、その想定をきちんとして審議をしていかないと、ただ単に計画倒れに終わってしまう、そういうことになるんだろうと思うんです。
 そういった意味で、私なんかも解決案として考えているのは、危機時を想定して、できるだけそれをマニュアル化して、ふだんでもできる格好にしていく。このマニュアル化というのが極めて大事だし、それが今有事立法でやっておられることですし、さらに、そのマニュアル化したものを実際に訓練していく、そして疑似体験みたいな形にしていくことがこの危機時を乗り切る一番重要なポイントだろうと思うんです。
 さあ、そこで質問でありますけれども、先ほど渡辺議員から、ある意味では究極的な質問が行われました。九月十一日の飛行機ですね、テロに乗っ取られた飛行機、あれと同じような事件が起きたら日本ではどうするのかということでございますが、私もそれに関連をいたしまして、そこから質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど官房長官の方が、これについては今後対応をするというお話がございました。確かに、民間人の乗った飛行機が武器化されて、ハイジャックされて、例えば首相官邸に突っ込むとか、そういうふうなことというのは、まああり得ないし、あり得ないと思ったからアメリカもあれだけ驚いたわけです。でも、そのときに、やはり我々としてアメリカに学ばなきゃいけないのは、アメリカはあれから、ROEというんですか、要するにその対応マニュアルというものをつくった。そこで、基本的には大統領以下、一番トップの人たちが意思決定をするんですが、それで間に合わない場合には現地の空軍司令官まで、撃ち落としてもいいというようなところまでマニュアルが詰められたということなんですね。
 日本ではまずはあり得ないと思うんですが、それで今後検討するという言い方になっていますけれども、ただ、官房長官、あの事件が起こってからもう八カ月たっているんですよ。いつまでも検討を行っているという状況はやはり厳しいと思うんですね。そこは、いつまでにやるというようなことは示せないんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、昨年九月十一日のアメリカ・テロ事件のようなことが仮に日本で起こった場合は、アメリカのような対応はできないと思いますね。個別自衛権を発動して、それはとてもアメリカみたいなことは日本はできない。しかしながら、もしあのような事件が起こったらばどうするかというのは、その時々のケースで違いますし、アメリカの事情と日本の事情も違う。あそこは、ワシントン、ホワイトハウスをねらったとか、国防省をねらったとかいろいろありますが、こういう点については、我々としても、今の時点でああするこうするという具体的なことは言える状況にないと思っております。
末松委員 総理、それは政治家の発言じゃないんですよ。
 つまり、一番厳しいと思いますよ。その決定をすることによってとんでもない批判を起こすかもしれないんですが、要は、総理がおっしゃったことは、もしやられたら、日本国として、何もせずにそのまま突っ込ませることを追認したということなんですよ。
 ただ、私たち政治家というのは、そこは政治責任をとらなきゃいけないことなんだから、そこは総理としてやはりきちんと、そこの対応のマニュアルを考えてみろ、最後はおれが決断をするからというところまで言っていいんじゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 それは最終的な責任は総理大臣にあると思っています。しかし、今あり得ないことを考えなきゃならないという想定で、それでは、民間航空機がハイジャックされてどこに向かってくるかわからない、総理大臣官邸に来るかもしれない、国会に来るかもしれないといった場合に、民間人が何十人何百人乗っているときに、総理大臣として、そういう情報が入った場合、ではそのハイジャックされた飛行機を撃ち落とせなんて言うことは想像しても、したくないけれども、した場合には、私は、実際できないと思います。事件が発生しないとできない。発生して、しばらくたって、どういう状況かということでないとできないと思います、はっきり言って。
末松委員 今ここで総理が、そこは立場上、日本国の最終責任者として、確かに、今撃ち落とすというようなことは口が裂けても言えないのかもしれません。ただ、その中で、飛行機が本当にねらっていて、確実で、しかも五分後に落ちるとか、そういった場合には、必要な対応をとるということまでは言うしかないんじゃないかと。それはつまり、一番厳しいですよ、人命がかかっている。飛行機に乗っている乗客が危険なんですからね。あとは、例えばここに落ちたら、皆さん含め、国会あるいは霞が関の官庁、まあ飛行機だからそんなに大きなあれじゃないかもしれない。でも、対応を何もとらないという、その決断というのはないんだろうと思いますね。
 もうちょっと厳しい想定をさせていただきたいと思います。
 では、北朝鮮から核のミサイルが飛んでくる。核弾頭でなくてもいいですよ、生物兵器あるいは化学兵器、そういうことがあった場合に、アメリカなんかで聞いてみると、日本の皆さんも御存じでしたけれども、大体六分から八分ぐらいで来るんですね。そういったときに、確かに、先ほど渡辺委員も指摘されていましたけれども、この法案は非常にクラシックな戦争というか、数十年前の戦争を想定して書かれた。でも、それから始めなきゃいけない。それはわかるんですよ。わかるんですが、ただ、この近代戦を今わかっているのは、世界広しといえどもアメリカとイギリス、あとフランスが若干わかっている、そのぐらいしかないでしょう、彼らは実際に戦争をしてきたんですから。彼らがやってきたことで思うのは、そうなったときに、だからミサイルに対応しなきゃいけませんよという大きな防衛の戦略を日本国としてやっていかなきゃいけないし、やっているところだと思いますよ。その重要性は極めてわかるんですが、ただ、核が落ちてきたときに、では、この法律でどういう対応になりますか。
小泉内閣総理大臣 これは、仮定のことで、実に言いにくいことなんだけれども、今御審議いただいているこの法案について、そういうことを想定しているものではない、超えたものだ。実際、それは第一撃を受けた後でないと、対応せざるを得ないと思います。
末松委員 そうなんです。先ほどから申し上げているように、総理の気持ちはわかりますよ、ある意味では。要は、まずは一般的に世界じゅうに必要とされる有事立法をやってから、そのときにまた究極の対応を考えればいいという考え方かもしれませんけれども、ただ、本当の意味で一番怖いのはそこなんですよ。
 ミサイルとか弾頭に何かを、大きな破壊力を持ったものを使われると、正直言って一番日本国にとって甚大な損害をこうむるのは、核兵器でこの近くに飛ばされてごらんなさいよ、我々はみんな吹っ飛びますよ。今やられたらみんな吹っ飛んじゃうんですよ。そうしたら、日本のリーダーシップというのは一体どこにあるんですか。つまり、皆さん閣僚の方がここにおられますよ。ここにいること自体が、ひょっとしたらリスク管理からいったらこれは本当は問題なのかもしれないですよ。アメリカなんかは、大統領と副大統領があのときにぱっと別れたわけですよ。そういうところを含めて、一番根本じゃないですか。危機という一番想定したくないことを考える一番のものはそこであるんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは、もしもそのような攻撃を受けた場合は、日本は自衛隊と米軍といいますか、アメリカとの間で安全保障条約を結んでおりますから抑止力になっているんですよ。そのような意図が鮮明になったらば日本はアメリカと共同して対処するという、これは大いなる抑止力になっております。だからこそ日本はアメリカと日米安保条約を結んでいる。抑止力というのは大きい。どういう目に遭うかというのはわかっていると思います。
末松委員 確かに、議論が少しかみ合っていないのは、だから、こんなことを抑止するために日米の防衛協力がある、まさしくおっしゃるとおりですよ。それは私はこれまで機能してきたと思う。
 ただ、そういう事態が起こったときに、総理も死んでしまって、リーダーシップがいなくなったら、だれが日本側なんですか、そこを答えてくださいよ。
福田国務大臣 先ほど来委員から、非常に考えられないかもしれぬけれどもあるかもしれぬという、そういう事態について、いろいろな例を挙げて御質問がございますけれども、それはあらゆる事態に備えなければいけないということは当然のことでございまして、それがために今回この法案をお出ししている、こういうことでございます。
 例えば、今御質問ありましたのは、ここが攻撃をされたらと、こういったようなことかもしれませんけれども、その場合には、現小泉内閣におきましては、この内閣発足時に、内閣法第九条に基づいて内閣総理大臣の臨時代理をあらかじめ五人まで、第五順位まで指定して危機管理に備えております。万一、総理に事故があった場合には、五人のうちで残っている最も先順位の者一人が臨時代理になる、こういう仕組みになっております。
末松委員 具体的にだれですか。五人だったら言えますよね。言ってください。
福田国務大臣 これは小泉内閣として指定しているわけでございますけれども、第一順位が内閣官房長官、第二順位財務大臣、第三順位法務大臣、第四順位経済産業大臣、第五順位金融担当大臣ということになっております。
 この指定の順位の考え方ということを申し上げておきますけれども、内閣官房を統括し、総理と一心同体となって国政運営に携わる立場にある内閣官房長官を最優先の順位として、以下、閣僚の大臣歴、議員歴、所属政党等を総合的に勘案したものでございます。各閣僚においては、臨時代理指定の趣旨を体し、緊急事態が発生した場合には対応に万全を期す、こういうことをお願いいたしておるわけでございます。
末松委員 そうしますと、では、ちょっと重要なことになる。防衛庁長官、閣僚ですけれども、防衛庁長官がもし何かで亡くなった、そうしたら、臨時代理というか、代理はだれになりますか。
福田国務大臣 これは、閣僚に事故等があった場合には、総理が指定する他の国務大臣が臨時代理としてその職務を行うこととする、こういうことになっております。
末松委員 こういう場合、私の次の質問なんですけれども、防衛庁長官というのは、他の大臣がなるというのはちょっと不適だと思うんですよね。やはり、防衛族という方が自民党におられるという話もありますけれども、そういうふうな方がなるのかあるいは知りませんけれども、要するに、ほかの大臣が急に臨時代理でやれるほど防衛庁長官というのは簡単なものなんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、最高司令官は総理大臣ですから、いつでも兼任できます。
末松委員 あの法案の中に、それでは、もし事態が起こった場合に、事前であれば国会の承認、あるいは、もし間に合わない場合には、まず対応を行って、直ちに国会の承認を得るとありますよね。国会議員が例えば核攻撃あるいは化学兵器の攻撃を受けて亡くなっちゃった、今度は我々が亡くなった場合、これは、内閣総理大臣として国会の承認を得るとありますけれども、これはだれに得るんですか。
福田国務大臣 これは、国会議員の全員ですか。(末松委員「いやいや、それは例えば半分とか」と呼ぶ)半分ですね……(末松委員「つまり、定足数以下になった場合とか」と呼ぶ)これは、それを補充していただく、定足数が不足すれば補充していただくということになるんじゃないでしょうか。
 そういうような場合が生じた場合には、国会の機能が回復し次第、直ちに事後の国会承認を求める。国会承認を求めるという条件であれば、そういうことになります。
中谷国務大臣 それに加えまして、その際の規定といたしまして、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合には、対処基本方針に防衛出動を命ずる旨の記載がいたしておりますので、防衛出動をすることは、内閣総理大臣が、閣僚等存命でしたら可能でございます。
末松委員 今の指摘は非常にいいですね。そういう意識でやらないといけないんですよね。
 実は、今非常に重要なことを内閣官房長官が言われたんですよ。つまり、国会議員がかなり多数やられたら、そうしたら後は内閣でばんばん決めればいいということですよ。そういう位置づけですよ。つまり、後は選挙で選ぶ、その選挙がいつあるか知りません、できるかどうか知りませんけれども、そこをやらないと補充にならないわけですよね。
 では、それまでは内閣がずっと対応し、そして選挙があるまで、そして新しい議員がそろってから、その初日かどうか知りませんけれども、そこで事後承認を求める、こういう位置づけですね。これは確認です。
福田国務大臣 これは、恐らく憲法議論の範囲に入ってくるんじゃなかろうかと思います。ですから、そういう事態というものを想定していないのが現憲法であろうかと思います。
末松委員 確かにおっしゃるとおりなんですよ。そこは、憲法自体が緊急時を想定していないところがこの遠因なんですよ。それはわかる。国会自身で我々が決めなきゃいけない。内閣に聞く話ではないんです。それはもう重々わかった上です。
 ただ、ドイツなんかはどうやっているかというと、防衛事態というのを四十八人の合同委員会で決めちゃおうという対応をしていますし、あるいは、フランスとかオーストリアなんかは大統領がそのまま権限としてやれるという位置づけになっていますね。だから、これは将来的な議論になるのかもしれませんけれども、国会の我々も自分たちのことについては必要な危機管理をしていかなきゃいけないということがあろうと思います。
 余りこれにかかずらわっていると時間がなくなりますので次に行きますけれども、これは一番またあり得る想定なんですけれども、私が今聞いているのは、逐次、リーダーシップと言われる人たち、あるいは国の幹部、あるいは役所、これが機能しなくなったときにどうするんだと、そのまさしく有事のときの緊急事態を聞いているわけですけれども、これは防衛庁長官に聞きましょう。防衛庁が、あの市谷ですか、あそこのところが一番ねらわれやすいですね。一番最初にたたいた方が仕返しが来なくていいだろうと。あそこをやられて、中谷防衛庁長官があそこに入っておられるかどうか知りませんけれども、大半の方が亡くなられた場合、そういったときには防衛庁はどういうリスク対応を考えているんですか、あるいは全く考えていないんですか。
中谷国務大臣 防衛庁につきましては、そういう事態に備えまして地下に中央指揮所を持っておりまして、そこで指揮することになっておりますが、不幸にして大人数の損害があった場合におきましては、その欠落が生じた各レベルの意思決定者については、法律や規範に従いまして適切に職務代理を定めまして補職を行いまして、しかるべき武力攻撃に対処するよう万遺漏なきを期するようにいたしております。
末松委員 言葉ではそうなるんでしょうね。何かもっともらしい言葉ですけれどもね。
 それでは、とにかくそのコンティンジェンシープランといいますか、危機時の対応は必ず、それは省外には出ないけれども、そこは、やられた場合というのは想定していただいて、もしやられた場合にはどこの部隊が指揮をとってどうするかということは本当に遺漏なきを期していただきたいと思います。
 次に、では地方の政治との関係で申し上げます。
 例えば、知事とかあるいは市長が国の方針に反対をしたという場合はこの法律で代執行という形が書かれておりますが、では、知事とか市長がやはり戦時下で亡くなった場合、これについてはどういうことで、地方自治法ですか、書いていますでしょうか。
片山国務大臣 今お話しのように知事や市町村長がいなくなったときは、副知事や助役が代行するんです。知事や市町村長がいないとき、あるいは事故があるときは、地方自治法の規定で副知事、助役がやる、こういうことであります。
末松委員 総理の場合は五人でしたよね、代理は。では、副知事が二人とかいるところはあるのかもしれませんけれども、これは副知事なんかもみんな序列で、五人なら五人とか、そういうふうに、あるいは副知事が亡くなったらどうだというふうなマニュアル的なものはつくられているんでしょうか。
片山国務大臣 副知事や助役が複数のときは順番がついています。今三人が一番多いですけれども。
 そこでまた副知事や助役もみんないなくなる、そういう御質問になると思いますので、そのときは、あらかじめ指定した職員が、国の場合と同じように、その順番でつく。それもないときは、これは規則でそれを指定するようになっておりまして、大体総務部長がやるケースが多いと思います。
末松委員 そうしたら、では、そこはリーダーシップの体制はきちんととられていると。
 では、地方議会との関係はどうでしょう。例えば、知事とか市長が反対と言ったのは、それは国の方でやりますと言えばやっちゃうんですね。ただ、その中で議会が、ふざけるな、おれたちはそれをやらないということを議決で決めたとしましょう。これは仮定の話です。そうしたときに、国はそれを、意思をねじ込んでやるんですか。それとも、地方議会というものを尊重してそこは何か対応するというのは、この法律の中に書かれているんですか。
片山国務大臣 地方議会の権限は法律上決まっているんですね。それ以上の権限はございませんので、この件について、地方議会がそれに反対するとかなんとかということはありません。
 ただ、地方議会としての意思の表示はできますよ、決議はできます。しかし、決議はできても、それは法的な効果はありません。制限的な、限定的な権限なんです、地方議会の場合には。
末松委員 例えば、地方では、この法律では、国民の生活を守る義務があると書かれていますけれども、もし地方議会で、これはちょっと想定しにくいかもしれません。ただ、地方議会の意思として、おかしいと思って、そこで必要なことをやらないというふうになったらどうするんですか。
片山国務大臣 先ほども御答弁しましたように、地方議会が、やらないということの、それを権限として決める法律上の根拠はありませんから、法的な効果はないんです。ただ、議会として反対だという意思表示をしたときは、法律上の議論でなくて、政治上のいろいろな議論は出てくるかもしれませんね、政治上の議論は。しかし、それは法律上のあれではありませんので。
 かつてもそういう例が一、二ありましたよ。そういう場合には、事実上、話し合って調整した、こういうことでございます。
末松委員 もうちょっと、では具体的に言いましょう。例えば、神戸市が非核都市宣言、これは、全国自治体の三千数百のうち約七五%が、非核都市宣言というのですか、それをやっているということなんですけれども、そこで神戸市は、核を積んだ艦船、こういったものに対して寄港を拒否するんだということで宣言をしていて、それで実際に米艦がそこを寄港したことがないということなんですね。
 そういった場合に、米側から神戸港を使いたいと言った場合には、今の総務大臣の言い方であれば、これはもう関係ないんだ、米艦が寄港すると言えば、政府が決定すればさせるんだ、ごちゃごちゃ言うな、こういう位置づけになるわけですね、位置づけとしては。
片山国務大臣 港湾施設を使うか使わないかは港湾管理者の権限ですね。港湾管理者の権限、神戸市の権限ですよ。だから、その場合に、神戸市議会は、法的な根拠はありませんけれども、寄港させるな、こういう決議をしましたね。そこで、実際は神戸市は、アメリカの領事館ですか大使館ですか忘れましたけれども、非核の証明書をとりまして、それで市議会と話し合って、市議会も了承したわけであります。
 だから、市議会の決議は法的な効果はないんです。ただ、市議会がそういう一致した意思を示したことを市は尊重して、事実上、非核証明書をとって市議会を説得したわけであります。
末松委員 なるほど、わかりました。
 そうしたら、これはちょっと横並びの議論なので、ここまで追及するのは余り妥当じゃないかもしれませんけれども、地方の議会、例えば東京都議会が核兵器でやられた、議会の、国会と同じような、議員が多数やられた、そういった場合というのは、議会の活動、方針決定、あるいは条例の決定機構について、そういったものは、何か緊急事態法みたいなものは考えておられるんですか。あるいは、あるんですか、ないんですか。
片山国務大臣 今御指摘の点は、内閣官房の方から、我々、相談といいますか、それは受けておりませんけれども、いろいろなケースを想定して、今後、地方議会というものの役割、位置づけをどうするかは個別法制の中で検討いたしたい、こういうふうに思っております。
末松委員 こればかりやっていても時間がなくなりますので、次のトピックに移ります。
 ちょっとホットなニュースになりますけれども、直接には関係が薄いと言われたら薄いところではあるかもしれませんけれども、大きな意味で、国家の危機管理という観点から、あるいは防衛庁の信頼問題というところからお聞きをしてみたいと思います。
 実は、最近、私どもはアメリカへ行き、そして東アジアの関係で台湾の近くの国にも行ってきたわけなんですけれども、日本との関係で今台湾の方で大きな問題となっているのが、台湾のCIAとも言われるような国家安全局、これの秘密が暴露された。官邸の機密費の使い道が暴露されたというのと同じような事件なんですけれども、そこで、非常に向こうは大変な報道がなされている。
 これはどんな事件かといいますと、国民の皆さんは御存じないから簡単に申し上げますと、最近よく週刊誌とか新聞にも出始めましたけれども、李登輝前総統時代に、国家安全局に巨額の秘密資金、これが大体百三十億円ぐらいあったんですが、これがつくられて、議会の監視を経ないで、さまざまな対外的な工作を含む秘密工作資金に使われてきたというのが明らかになったんですね。
 これは、なぜこれが明らかになったかというと、そのうちの、国家安全局の出納課長というのが横領事件を起こしまして、それで海外逃亡をして、その秘密文書を持ち出した。それが今いろいろなマスコミに渡って、この事件が発覚したわけであります。これを明徳プロジェクトというんだそうですけれども、ここで、李登輝元総統、これがさまざまな国にロビー活動をして、非常にさまざまな対外工作を行ったというのが書いてあるんです。
 それで、例えばこれはシンガポールのザ・ストレーツ・タイムズというんですけれども、ここにこういう写真がでかく載っているのが、これは橋本総理とそれから秋山元防衛事務次官、これがきのうも審議されていますし、山田議員が、外務委員会、そしてきのうの審議になってきているわけなんですけれども、これによって、私も実際のものを、この証拠というのが、私も某国に行ってとってきまして、実際に国家安全局がこれだけのお金をこういうふうに使ったというふうなことが出ています。
 そこで、実際にここに今証拠で載っているのは、この秋山元防衛事務次官に対してハーバード大学の留学費用ということで十万ドル、約一千数百万を渡した、そして、彼が日米の防衛ガイドラインのときの防衛局長として非常に台湾との関係で情報収集とか協力をしてくれた、その恩義に報いるんだという位置づけをして、そして秋山さんは、それに対してハーバードの留学費用で、お礼を言って、そして実際に留学をしたということが書かれておりますし、橋本元総理大臣に対しては、一万ドルといいますから百数十万ですかが、お歳暮という形で手渡ったというようなことが書かれているわけです。
 そこで、私の方で問題にしたいのは、この事件の解明ということについてよりも、まず、ここでこれのどんな効果があったかというのが書いてあって、そのときに、書いてあるのが、九五年の李登輝さんの訪米、これに対して非常にビザをおろすために効果があったと書いてあるんですね。それから、これはわかりませんけれども、書いてあるのをそのまま読めば、九六年春、中国のミサイル演習の後、橋本首相を通じ米政府に艦隊派遣を働きかけて、そして米艦隊が出動した、これは台湾の国家安全局の見解なんですよ。実際に金が行ったかどうかは、そこまではわかりません、正直言ってこの橋本さんについては。ですから、そこは御本人が違うという場合には大変な迷惑だろうとは思うんですけれども、私、実はこれの問題意識もあったので、いろいろと調べてもみたんです。
 そこで、米国の関係者とも実は話をし、そして、香港関係の情報筋なんかにもさまざまな情報をとっていろいろと調べていったら、彼らが言うには、台湾ロビーというのが非常にこれは強いものがあって、それで、アメリカの議会なんかでもユダヤロビーの次に台湾ロビーが非常に強いと。そして、台湾ロビーの工作の中心はアメリカで、これはここがポイントなんですけれども、アメリカを動かすことによって日本を動かすんだ、そういう位置づけをしていたというんですね。
 そこで、特に彼らが言っていたのが、日米安保と特に日米のガイドラインですか、あのことは、あれはもう台湾有事のときに、アメリカと日本の防衛関係をきちっと築いて、そして、逆に一言で言えば日本も引き込む、そういう戦略であったんだと。そのためにまず台湾ロビーがやったのは、李登輝元総統が、彼は、インタビューの記事に、このお金は国家の生存のために使ったんだというふうにはっきり言っています。確かに、彼は、台湾という国をどうやって生存空間というものを確保していくかということに一生懸命になっていたんだと思います。その意味ではすごい人だなと思うんですけれども。
 それをお金を使ってまずやったのが、九五年の五月にアメリカに自分が訪米するんだ、そこに台湾ロビーの大変な力を使ったんだということが言われているんですよ。事実、この李登輝の訪米でビザを支給するに当たって、アメリカの国務省は反対したんです。でも、議会が、九五年の米国の議会でビザ支給について決定を行ったんですけれども、これが、米国の下院が、何と賛成が三百九十六、反対がゼロです。そして上院が、九十七が賛成で、反対が一、一人だけ。それだけ大きな、これは台湾ロビーの大成功だと言われているんです。
 そこでどうなったかといいますと、そこで、この李登輝さんがアメリカに行ったことに対して一番腹を立てたのが中国なんですよ。何だという話ですよ。そこで中国はどういう行動をとったかといいますと、その二、三カ月後、台湾の海域で軍事演習を行い始めるわけですよ。そこで二回、台湾北方公海上でミサイル、火砲の実弾射撃訓練を行った後、今度はその翌年、九六年の三月に、三回にわたって台湾近海でミサイル発射訓練を行って、海空軍の実弾演習あるいは陸海空の統合演習を行っているわけなんですね。
 そうなりますと、これが何を導いてきたかというと、アメリカが、これはいかぬというので、空母二隻を、機動部隊が行って台湾海域に入ってくる、そこで台湾海峡の危機というのが出てくるわけなんですね。
 そこで、現地の常識という話で言っていたのが、そこから、今度は、米側が日本に対して、今までの研究の成果を生かした上で日米防衛のガイドラインをここで仕上げてしまおうという話になってくる。そこで、日本側の方に対しても台湾ロビーが非常に働きかけをして、台湾側の認識では、今出ている資料の中で言うと、そこの中心人物が秋山元防衛局長だった、その彼がこの防衛ガイドラインをきちんと仕上げた一番重要な人物だった、それのお礼だということを言うわけです。事実、それから今度は、九六年の四月に日米首脳による日米安保共同宣言、そして、九七年九月の日米安保協議委員会という中での日米防衛協力のための指針というものができて、そして九九年ですか、それが国内法として周辺事態法ということで、日本が何かあった場合にアメリカの後方支援を行っていくということにつながっていくわけです。
 事実関係を見ていくと、そういう、日本がだんだん巻き込まれて、要するに、中台の紛争が起こったときにはやはり日本としては多分何か後方支援をやらなきゃいけないんだろうなという体制が着々とできていっているわけです。それで、九七年、橋本政権の時代に、梶山官房長官が、中台紛争というのは周辺事態に入るのかと言われて、入ると言って中国から猛烈な反発を受けて以来、日本政府は特定地域を想定しないんだということを強調するに至るわけなんですね。
 それで、そういったときに、あと一点だけ申し上げれば、李登輝さんという方は、九九年、台湾新幹線というものが、実は二兆円の総事業費、これが、もとはフランスとドイツ、ヨーロッパ勢が優先的に交渉権を与えられていたのが急にひっくり返りまして、そこで日本連合がとることになるんですけれども、このときは、これは日経ビジネスによればですけれども、直前に台湾の地震があって、耐震構造を持った日本の新幹線の方がいいとか、あるいはヨーロッパで、ドイツで鉄道事故があったりしてちょっとこれはまずいよという話もあったんですが、この日経ビジネスの見る見方の一番の決定打は、李登輝総統が日本の新幹線を支持するという強い意向があって、それが決定打になったと書いてあるんです。
 そういった意味で、要は、私は何が言いたいかというと、台湾ロビーというものがアメリカや日本に対してどんどんやられていく中で、私たちの、国民の、民族の運命がそちらの方に引っ張られてきたような感じがするわけです。それについて、現地で話し、そしてアメリカ側とも話して、アメリカの関係者の中には、賛成する人、いや、そうじゃないんじゃないかと言う人、半々いましたけれども、こういう見方があるんですけれども、外務大臣、どうですか、この見方について、できるところのあなたの考えを教えてください。
川口国務大臣 委員のお話を大変興味深く聞きほれておりましたものですから、感想はと言われても、とっさに何も申し上げることがないんですけれども。
 一番最初におっしゃいました、台湾からの資金と言われることでございますけれども、これは私は報道等では承知をいたしておりますけれども、外務省、我が国は台湾とは委員御案内のように外交関係はございませんので、交流協会等から情報を収集するということでございますけれども、それが事実であるという情報には接していないということを申し上げさせていただきたいと思います。
末松委員 それでは、ちょっと私の方で組織的な、体制的なものを聞きますけれども、私が実は本当に懸念しているのは、こういったロビー活動ということに対して、日本は、正直言って、正面切っては何ら真っ正面から見据えていないんですね。
 アメリカは、これはロビー活動規制法というのがあって、このロビー活動に対して、正式に位置づけもしていますけれども、その金額とかあるいはだれにどうやったとか報告をしろ、ガラス張りにしろという形の法律があるやに聞いていますけれども、これは法務大臣に聞けばいいのかしら、この海外の事例について教えていただけますか、ほかの国ではどうやっているかということを。
森山国務大臣 お尋ねのことにつきましては、政治活動のあり方にかかわる問題だと思いますが、御指摘のようなことについて、法務省として……(末松委員「公務員の」と呼ぶ)公務員についてですか。ロビー活動というお話だったものですから政治活動であるかと思いましたのですが、法務省といたしまして、そのようなことを調査したことはございませんので、把握いたしておりません。
末松委員 ということは、調査もしていないということだし、済みません、私の不勉強で恐縮なんですけれども、私の調べた限りでは、日本にはそういったものを取り締まる法律がないと思うんですけれども、その辺については、個々の収賄とか、そういうことで取り締まっているんでしょうか。
森山国務大臣 そのような法律は、特に外国のロビー活動とか、ロビー活動というようなものを取り締まるという、それ自体の取り締まりをする法律はございませんが、ただ、国内法に違反をした場合、例えば、刑法の贈収賄罪とかあっせん利得処罰法の違反とか政治資金規正法違反などに該当するものがあれば、これらの法律によって適切に対処されるということになっております。
片山国務大臣 政治資金規正法の二十二条の五に、何人も、外国人あるいは外国法人あるいは外国人が中心で組織する団体やグループから、政治活動に関する寄附を受けてはならない、こういう規定がございます。(末松委員「もう一回言ってください、済みません」と呼ぶ)
 政治資金規正法二十二条の五に、何人も、外国人あるいは外国法人あるいは外国人が中心で組織する団体等その他の団体から、政治活動に関する寄附を受けてはならないと。
末松委員 ここでちょっと立ちどまって、別に皆さんだけに質問しているわけじゃなくて、国民の皆さんにも、ロビー活動って一体何だろうというお話があるかもしれませんので、簡単にちょっとだけ説明させていただきます。
 ロビー活動というのが、アメリカの方での定義によりますけれども、昔はアメリカで、依頼者が、立法とかあるいは規制とか補助金とか政策立案について要望を政治家に伝えて、見返りとして金品の提供を行う、もらうということが一般的だったんですが、今はこれが政治腐敗の温床になるということで、現在のロビーイングは、依頼者の利益と合致する可能性の高い議員の政策立案を支援する、これは、情報とかあるいはほかに出てくればあとは金品になるんですけれども、ということによって影響力を行使する、見返りとして、一般的なのが、議員とかスタッフが、日本と同じなんですね、パーティー券の購入とか政治献金を依頼するのが頻繁に行われているということなんです。
 だから、今、総務大臣が言われたように、政治活動に対してそういうことを行っちゃいけないんだよということなんですが、一般の公務員、これはどうなんですか。
片山国務大臣 私が申し上げたのは、政治資金規正法ですね、政治家というんでしょうか、その関係でございまして、少なくとも国家公務員法や地方公務員法に、寄附を受けてはならないというような規定はなかったような気がいたします。確認いたしておりませんが。
末松委員 そうしますと、例えば、今話題として出ている秋山元防衛庁事務次官が、外国から、つまり台湾の国家安全局から、CIAみたいなものですね、ここから金品をもらって、日本政府にとって、要するに、情報を漏らしたりしていたら、その者がそれはスパイということになって日本の国益を害するということになるんでしょうけれども、これは、今の総務大臣の見解でいけば、特に政治活動には当たらないから公務員というのは問題ない、こういうことなんですか。あるいは法務大臣、そこはどうなんですか。
森山国務大臣 公務員の場合は、その権限のあることについて贈賄を受ければ、それは贈収賄に係りますので、それは刑法違反になると思います。(末松委員「海外でも一緒ですか、それは海外からでも」と呼ぶ)海外も同じだと思います。私の感じでそう思いますが。
末松委員 それじゃ、秋山元防衛事務次官について、もう少しお話をさせていただきたいと思います。
 きのう、山田議員の方で、法務省の刑事局長から、事後収賄の要件という形でこの定義があって、事後的にそういう利益供与を受けても、これは事後収賄に当たるんだということだったんですね。
 そこで、山田議員の方で、この秋山元事務次官が退職後、ハーバードに行って研修をするのに、この台湾の国家安全局の十万ドルの資金、これはもう渡ったということは確認されていて、そしてハーバード側もそれをもらったということは確認して、そしてそれに対して、この秘密資料が暴露された記事に、記事というか現物によれば、秋山さんはそれに対してお礼を言ったということになっているんですね。
 その場合は、秋山さんの、ポイントは、それがもともと、彼の言い分は、防衛庁の官房長によれば、それはそんなお金だとは知らなかった、自分はハーバードからフェローシップをもらったのであるという形に今言っているわけですよ。でも、きのうの山田議員との質疑を聞いていたときに、これは防衛庁の官房長に聞いた方がいいんでしょうね、秋山さんは国家安全局に連絡をして、そして自分がハーバードに行くということについてお礼を述べたと。そして、さらにちょっと問題なのは、台湾の在日工作の友人になります、そしてさらに、引き続き秋山さんは国家安全局とも連絡をとり続けます、そして、二〇〇〇年の四月に台湾を訪問しますということが中国のこの記事に書かれているわけですよ、記事じゃなくてこの文に。
 そこで、防衛庁の官房長は、二〇〇〇年の四月にハーバードの旅費負担で台湾を訪問しておられますがということを言った後で、ちょうど二月ごろでございますので、その台湾旅行のアレンジのための電話を、これは国家安全局だと思いますけれども、このお礼の電話を入れたことがあるかもしれませんというのをここで言っているわけですよ。
 私は、ちょっとそこでひっかかったのは、ちょうど台湾側が今度、二〇〇〇年の四月に台湾に来ると国家安全局の文書が言い、そして本人がそのときに実際に行っている。しかも、何でハーバードの旅費負担で、そこで行かなきゃいけないんですかということを、そこはちょっと、防衛庁の官房長、本人じゃないからそんなことは知りませんと言われるかもしれませんが、事情を聞いた範囲内でそこは教えていただきたいと思います。
柳澤政府参考人 ちょっと昨日と重なるところもございますが、全体として申し上げますと、秋山元次官は、御承知のように、平成十年の十一月に退職をされておりまして、退職後、十一年の四月からハーバードに留学をされております。これは、ハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授ですとか、ジョセフ・ナイ教授とかねてから親交を秋山さんはお持ちでございまして、その方々と御相談をし、フェローシップということで受け入れてもらうということになったということで、その際ハーバード側から供与を受けたものは研究室と、住まいといいましょうかアパートメントの提供を受け、約八千ドル弱の研究費でございますが、トータルでそれぐらいはいただいた、それから、研究活動の旅費のようなものはハーバードに出していただいていたと。しかしながら、本人は、そのハーバードの財源がどんな形で出ていたかということは全く承知をしなかったし、また、直接台湾側から金品を受け取ったということは全くない、こういうことでございました。
 そして、今の台湾訪問でございますが、私もその点も聞きましたけれども、秋山さんの大変大きな問題意識は、やはり中国、中台の問題を平和的に解決すること、そして東アジアの安全保障の枠組みを考えていくことというのがテーマでございまして、当然、台湾だけでなくて北京の方も、多分台湾よりもたくさん訪問されていたと思いますが、そういう研究過程の一環として、先ほど申し上げました、平成十一年からハーバードへ行っておりますが、十二年の四月に台湾行きをしたわけでございまして、たしかその報道で、二〇〇〇年の二月ごろに台湾の当局と電話でコンタクトをしサンキューと言ったという報道があるとすれば、四月に行ったのであるから、二月ごろのアレンジメント……(末松委員「四月に行ったんですね」と呼ぶ)はい、行っております。ですから、仮に二月にそういうサンキューの電話があったとすれば、そのための、アポイントメントをとってもらったりすることのお礼の電話をしたはずだというのが御本人のお話でございます。
末松委員 私の方としてもうちょっと聞きたいのは、四月に行ったときに何を話し合ったとか、そういうことは彼は言っていられませんか。
柳澤政府参考人 当時は主に、お立場がお立場ですから、国防当局者と相当多くお会いになった、そして当然李登輝さんともアポイントをとってもらって、相当多くの人と会って、いわゆる中国、台湾の将来の問題についていろいろ意見交換をしたということでございます。
末松委員 まあ私も、そういった、ここで捜査機関をどうこうやる気はありません。個人の名誉もあるでしょう。私が知っているこの内部資料ではそういうふうに書かれてあるということです。ただ、そこは、やはり国家の機密情報であるので、私、その信憑性についてはかなり信頼度は高いだろうと。ただ、これは、台湾側がそう認識し、そう工作をしてきたというのは、台湾側にとっては事実であろうと思います。
 ですから、私が本当にやや怖いと思うのは、やはり事実関係は、これは防衛庁がやるのは正直言うと酷なところがあると思います。防衛庁長官がきのう最後に、そんなに言うんだったら司直の手でやればいいじゃないかと。それは多分そうでしょう。ただ、私が思うのは、実際に海外に司直の人が行って、これは本当に事実ですかどうですかと台湾の国家安全局に聞いたって、そんなものはありませんよの一言で終わるんですね。だから、では事実関係というのはこれでお蔵入りになるんですか、結局こういうことなんですかと。
 それで、実際に秋山さんが、だからといって、この方が台湾から何も金品をもらっていないというのは、御本人の自己申告なんであって、それを全然裏づけるものはないんですよ。だから、そういった方が防衛関係の中枢にいて、そこで台湾との連絡を大きくとりながらやっていくということは、やはり非常にロビー関係の大きな問題点が浮き彫りになったと私は思っています。
 というのは、例えば有事の関係でも、有事で、やばいと思って態勢をとろうとしたら、もう至るところで、海外からの、いろいろな人が何か敵のスパイなりいろいろな外国の機関の手先となっている人だったようなケースがあれば、有事態勢といっても、これは全くもう日本の防衛のていをなさないということは、私たち政治家として、そこは一度真剣に考えていかなきゃいけない問題だと思うんです。
 同じく、ちょっと私は法務大臣に聞きたいんですけれども、こういった問題があることで、法務省として、秋山さんあるいは橋本元総理、まあ御病気の回復後なんでちょっと酷かもしれませんが、こういうことで事情をお聞きするというようなことは一切ございませんか。そこをちょっと意思を確認したいと思います。
森山国務大臣 おっしゃいますお話は、非常に個別的な具体的な話でございますが、捜査の活動にかかわる事柄でございますので、法務大臣としてここで何か申し上げるということは控えさせていただきたいと思いますが、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、告発のあるなしにかかわらず、法と証拠に基づいて適正に対処すると思っております。
末松委員 ちょっと小泉総理にもお聞きしたいんですけれども、こういう問題が実はいろいろと報道されて、東アジアでこういう話題が結構持ち切りになっているんですよ。そういったときに、これは刑事当局が必要と認めればやるし、そうじゃなければやらないよ、そういう考えは総理としていかが思いますか。
小泉内閣総理大臣 ただいま森山法務大臣が答弁されたとおりでありますが、こういう個人の人権にかかわる問題、しかも御本人が否定されている問題について、国会の場で、一方的な一部の記事に基づいてされるというのは、慎重であるべきだと思います。
末松委員 私も、一部の記事に基づいてだけこんな質問をするんだったら私自身もそれは軽率だろうと思ったから、だから海外、その現地の近くに飛んで、実際にそんな資料があるのかということを探して、とってきて、そして私は言っているんです。そんなに私は無責任にやっているわけじゃない。
 いいですか。それで、では小泉さん、私は総理に申し上げたいんですけれども、こういうことで、確かに個人ということでいえば、これはどうかわからない、私もはっきり申し上げますよ。そこを、私自身もそんなところを証拠を握っているわけじゃありませんよ。ただ、台湾の国家安全局の事実はそうでしょう、その資料だったんですから。
 ですから、それはそういうことがあるかもしれませんけれども、ただ、このロビー活動とかいうこと、これに対して何ら問題意識を持たずに、何かそういうふうな情報が入っても全く、これは個人にかかわるから実はプライバシーの問題もあって、全然調べる必要はないねというふうに何か非常に割り切るということ自体が、それは、同僚の方をおもんぱかる、あるいは政府の一員をおもんぱかる立場としては、気持ちとしてはわからぬでもないけれども、それはあれとして、やはりこういうことをきちんと規制をする、あるいは政府として問題意識を持つことは重要じゃないかと思うんですけれども、それに対して、このロビー活動について、総理、どう思われますか。
小泉内閣総理大臣 そのようなロビー活動が頻繁に行われているということは、国会議員だったらみんな知っているんじゃないでしょうか、政治家だったら。当たり前だと。そういう中で情報をとりながら、交渉しながら、みずからの見識と国益のために動いているのが政治家だと思います。
末松委員 ということであれば、まあ、そんな不機嫌な顔をなさらないでくださいよ。いいですか。それは確かに私もそう思いますよ。李登輝さんなんかは、国家の生存をかけて、その秘密の金をロビー活動で国家の生存のために使っている。これは指導者として当然のことでしょう。ただ、いろいろな外国のロビー活動が来ることに対して、金品がどんどん入ってくるというようなことである、このことに対して、それはしようがないでしょう、それは個人の見識でやるんですからという話というのは、私はちょっと納得がいかないと思うんですよね。
 では、もうちょっと現在のシステムについてもお聞きをしましょう。
 例えば、今、橋本元総理が一万ドルもらったという話になっています。これは国家安全局の話ですよ。私はそこは証拠はない。例えばこういうふうなことで明らかになった、その場合、国税局というのは動くんですか。要するに、所得税法で違反か何か、そういう形にはなるんですか、あるいはならないんですか。
塩川国務大臣 突然のお話でございましてちょっと予測しておりませんでしたが、さっきおっしゃっているように、私も確認したことはないとおっしゃる話でございますから、架空の話に対して私ども答えられないと思っております。(末松委員「一般論で結構です」と呼ぶ)
 しかし、一般論で申したら、これは雑所得で申告しなきゃならぬものだろうと思いますけれども、これはあくまでも一般論でございまして、そういうことを想定して今お答えしているものではないということを御承知いただきたい。
末松委員 そうしたら、では、政治資金を担当している総務大臣の方にお聞きします。
 これは政治資金規正法か何かで、では、これは一般論として聞きましょう。仮にそういうものが外国から手渡った場合、これはどうなんですか、報告との関係でいけば。
片山国務大臣 それは、先ほども言いましたように、規定は、何人も受けてはならない、こうなっているわけでありまして、お話の件は、やはり具体的な事実をきっちり確認した上での話でございまして、私どもの方にはそういうことは全く何も報告も来ておりませんし、それ以上のことは申し上げられないということでございます。
末松委員 ここの話は具体論ではないということで、確かに私も、別にここでそういったことを、こういう情報があるということは当然紹介させていただいていますけれども、それが本当にどうかということは、私自身はそれは確かにわかっていない。ただ、そうはいっても、これだけ国家安全局のところがここまで情報として流れてきているんですから、やはりこれは国民の皆さんもそれ相応の関心を持つ問題だろうと思いますし、そこで、いや関係ないよということで、この場で私は皆さんからそう言われたとしても、それはおかしいと思いますね。
 だから、むしろそうであるならば、逆に橋本総理なんかは中国側から何と言われているかというと、とんでもないじゃないかと。表では中国の友人として振る舞っておきながら、裏では台湾の国家安全局とつるんで、そして、中台間の対立というかそういうふうなことで問題視をしているという事実が、そこは、私が聞いた人はそういうふうに言っていましたよ。
 だから、そういった意味では、彼の、逆に言えば名誉を守るためにも、私は、そこはきちんと本当に事情を聞いて、そして、まずければ、それは違う、おかしいよということを言う機会をやはり与えるべきではないかと思いますが、その辺についてはどう思われますか。
小泉内閣総理大臣 御本人がいない場で個人の名誉にかかわることを一方的な情報で言うのも、私は慎重であるべきだと思っております。
末松委員 思うんですけれども、あと時間もあれなんで、またちょっと別な話題にもしますけれども、ただ、まさしく外国のロビー活動、これはやはり、ひとつきちんとここで審議をする。民主党の中でも、そういったことに対して、事情と世界の状況等を見ながら立法もしていきたいと思いますけれども、そういう疑われることのないように、我々厳に身を対処していかなきゃいけないと思います。
 それでは最後にちょっと、時間が若干ありますので、別の問題について話をしていきますけれども、自衛隊のことについてなんですけれども、この法律では、軍事法廷的なものというのは、ここは一切ないというふうに考えてよろしいんでしょうか。実際ないんですけれども、その辺について防衛庁長官の見解を問いたいと思います。
中谷国務大臣 我が国は、憲法におきまして、最高裁判所が司法の唯一の最終機関であるというふうに定められていると思いますが、自衛隊員の犯罪につきましては、刑事訴訟法令に従いまして、通常、裁判所において裁判を受けることになっておりまして、旧軍の軍法会議のようなものを設けておりませんが、これは、旧軍の軍法会議のように通常の裁判体系と切り離されたものは、憲法第七十六条によって禁止される特別裁判所に当たると考えられるものなどからでございます。
末松委員 これは私の選挙民の方からも聞かれたんですけれども、これもちょっとあり得ない想定なのかもしれませんけれども、自衛隊の方が、例えば敵前逃亡する。各国の軍隊では、敵前逃亡というのは死罪に当たるというようなことがよく言われておりますけれども、自衛隊の場合、敵前逃亡、これは国民の皆さんのセンスからいけば、それはおかしいよという話になるんだと思うんですね。
 今まで、こんな有事の場合には、こういう言い方をしたらちょっと失礼かもしれませんけれども、一番最初に死ぬ、そして死んでいく覚悟のある方々が自衛隊という方々ですから、そして、国民のために戦ってもらう方々なんで、そういう方々が敵前逃亡するとか、そういうことはないと思いますけれども、これは規則上的には何か特別の規則になっておりますでしょうか。これは選挙区の方が、それはないですよねということを私の方に確認を求めたものですから、あえてお聞きをいたします。
中谷国務大臣 自衛隊法によりますと、正当な理由なくして職場を離れ三日を過ぎた者、または職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由なくして三日を過ぎてもなお職務の場所につかない者及び警戒勤務中、正当な理由がなくて勤務の場所を離れて職務を怠った者に対しましては、自衛隊法第百二十三条一項によりまして、「七年以下の懲役又は禁こに処する。」というふうにされております。
 なお、この規定等につきましては、旧軍は敵前逃亡は、死刑、無期もしくは五年以上の懲役、禁錮とされておりましたけれども、自衛隊法におきましては、反社会性を有して、刑罰をもって制裁を加えることの合理性のある隊員の規律違反につきましては、他の国家公務員との刑罰の関係、また、自衛隊が規律を保持して、国民の負託にこたえる任務ができるようにという趣旨から、この自衛隊法独自の罰則規定で、最高刑が七年というふうになっております。
 自衛隊内につきましては、職務の遂行等につきましては、自衛官の心構えを持って、いざ事に臨んでは危険を顧みず職務を遂行するというような精神を旨といたしておりまして、常に厳正に規律を持って勤務をいたしておりますので、このようなことがなく任務を達成できるように、日々精神教育等にも努めてまいりたいというふうに思っております。
 なお、我が国の場合は志願制でございます。
末松委員 それでは、私の質問を終わりますけれども、最後に、私は、先ほどのこの議論の過程の中で、橋本元総理に対しては、まだ私自身もそこら辺はよくわからないところですけれども、秋山元防衛事務次官に対しては、やはりそこは非常に具体的な証拠と、彼がそういうふうに対応しているような事実関係がありますので、御本人がもし違うというのであれば、違うということできちんと身の潔白を証明していただければいいという意味も含めて、山田議員がきのう求めたように、委員長に対しまして、秋山氏の参考人の招致をぜひお願いしたいと思います。今、理事会でお話しになっておられると思いますけれども、そこは重ねてリクエストをさせていただきたいと思います。
瓦委員長 ただいまのお申し出につきましては、委員長としてこれをお預かりして、後ほど理事会でまた御相談をいたします。
末松委員 では、よろしく御審議をお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。


2002/05/09

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