2002/05/09

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渡辺議員、 有事の判断基準のあいまいさを追及(民主党ニュース)

 9日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会において、民主党の渡辺周議員は「武力攻撃のおそれのある場合」と「予測されるに至った事態」とがわかりにくいと指摘。98年に起きた北朝鮮のテポドン発射を例に、「この客観的事実をもってすれば『予測』なのか『おそれ』なのか」と、具体的内容の説明を求めた。

 中谷防衛庁長官は「そのときの国際情勢と具体的事象をふまえて判断する。一概に今の時点では言えない」などと、抽象的な答弁に終始。さらに「当時の政府は、当事国がわが国を武力攻撃する意志と能力はあるか、日本を直接の標的にしたかどうかを総合的に判断し、武力攻撃の予測される事態ではないと判断したものと思われる」などとした。

 渡辺議員は当事国の意図がわからず、日本にミサイルが向かっているという場合は「予測」か「おそれ」かと重ねて質したが、中谷長官は「仮定の話には応えられない」とし、客観的な情勢に基づいて判断するとの答弁にとどまった。渡辺議員は「予測」「おそれ」の明示の必要性を指摘し、理事会での対応を委員長に求めた。

 続いて渡辺議員は、「武力」の定義を質し、米国同時多発テロで使われた旅客機は武力か、と質問。中谷長官は「武力となり得る」とし、同様の事態が日本で起きた場合は武力攻撃事態に該当することもあり得ると説明した。渡辺議員はさらに踏み込んで、テロリストに乗っ取られた航空機が自爆目的で飛行しているとき、突入直前に撃墜するか否かの判断を、誰がどのような情報をもとに下すのか、と質問。福田官房長官は「法律の範囲内でできる限りの措置をとる。仮定の話なので判断するのはむずかしい」とするにとどまった。渡辺議員は「武力攻撃事態に該当することもあり得るとしたからには、撃墜することもあり得るはず」と指摘し、当然検討しておくべき事項だとクギをさした。

 また渡辺議員は、武力攻撃事態の認定後の国民への公布について質問。福田官房長官は、緊急度によって記者会見の場合もあるし、官報等で公示することもある、などと悠長な答弁。渡辺議員は「一種の非常事態であるからには、すみやかに、あらゆるメディアを使って公示しなければならないはず」と指摘し、具体的な対処内容が何ら検討されていない実状を批判した。

 さらに、地方公共団体の責務および国と地方公共団体との役割分担についても質問。片山総務相は「まだ具体的な役割が想定されていない。想定されてから予算措置や体制がどうなるか明らかになる。十分に協議していく」とするにとどまった。渡辺議員は民間防衛など具体的イメージがつかみにくいとし、言葉での定義だけではなく速やかな国民への周知を求めた。

 最後に渡辺議員は、安全保障会議の位置づけをめぐって「今まで審議機関であったが、性格が変化し、実際の指揮運用機能を有する機関となる」との見方を示した上で、その人選も討議内容も計画も知らされないのは戦前の枢密院のような存在になるおそれがあると分析。再考の必要性を指摘した。


平成十四年五月九日(木曜日)

瓦委員長 この際、渡辺周君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。民主党の持ち時間の中で質問をさせていただきます。
 今回のこの法律が提出をされました。国家緊急権のない我が国の法体系の中で、これまで自衛隊法が唯一有事の際の法律であったという中で提出をされました。この国家緊急権がないという我が国の中で今日まで来たわけでありますけれども、ある意味では、この法律を審議しなければいけないということは、これはやはりもう一つの憲法をつくるぐらいの気構えがなければできないことなんだろうと思うんです。
 つまり、この法律によって、憲法学者や法律学者の方の中には、下位法によって憲法を侵害するのではないか、違憲になるのではないかというような指摘もちまたにあるのは承知の上でありますけれども、それだからこそ、これを提出した政府側も、あるいは審議する私ども国会にいる者も、あるいはお茶の間の政治の問題として非常にわかりにくい問題ではありますけれども、この点について、やはり覚悟を決めてこれは議論しなきゃいけない。
 つまり、これは、有事ということになった時点で、武力攻撃が起きた時点で、がらりと世の中が変わるわけですね。平時から有事に変わるわけであります。ですから、これは何かつじつまが合えばいい、とにかく審議時間を積み重ねればいいという性質のものではなくて、これはやらなければいけないということが私の考えでございます。
 それだからこそ、今回の法案で、当初は四月九日に閣議決定をされる予定であった、結果、一週間延びまして、内閣あるいは防衛庁からその説明も受けたわけです。我々が党内で今回のこの法案提出に当たっての質疑、ヒアリングをいたしました、事務当局から。その時点ですら、閣議決定の数日前ですら、条文の一部は未整備だったわけであります。そのことを考えますと、まさにこの一九七七年、福田内閣以来、二十五年にわたって有事法制の整備が言われてきた現状でありながら、現在いまだに、まだ第三分類についてはこれからだというような指摘がございまして、また実際、答弁でもそういうふうに言われているわけでありますけれども、なぜ二十五年たった今になっても第三分類については何ら報告されていないんだろうと。
 我々にしてみますと、全体像が見えないままこの法案が出されたという、先行してきたことに対する不安があるわけですけれども、その点についてどういうことであったのかということはまず各論に入る前にお尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 なぜこの法案が出てこなかったのかといえば、これはやはりそういうことを国会が必要としなかったということになるのかもしれません。これは与党の責任であるかもしれませんけれども、もしくは、国民の理解がそういう事態を容認しなかったというような客観情勢もあったかもしれません。
 そういったようなことで、今回この法案を提出させていただくということは、まさに遅きに失したという見方もあるかもしれぬけれども、ここで出したわけでございますので、これはぜひ成立をさせて、そして国民の生命財産を守るためにもこの法案を有効活用させる。そしてもう一つ大事なことは、自分の国を自分で守るんだという意思を内外に示すということも極めて大事なことだろうというように私は感じております。
渡辺(周)委員 総理大臣にお尋ねしたいんですけれども、今官房長官の答弁の中に、先ほど第三分類と申しましたのは、いわゆる国民保護を中心とした、いずれの所管の省庁もまだ決まっていない、ここであえて申し上げれば、第一分類というのは防衛庁にかかわる法律、第二分類というのが他省庁にかかわる法律、まだ所管官庁がはっきりしない、しかし国民保護等大変重要な問題についてを第三分類としたわけであります。
 この点についての、今申し上げた第一分類は昭和五十六年に、昭和五十九年に他省庁にかかわる部分における第二分類の中間報告がされておるわけです。この時点ですら、我々の最も今回こだわる、あるいはどうしてもこの点だけは譲れないという第三分類については、その時点ですら検討中でありますと。そして、今日に至るまでもいまだ出てこない、見えてこない。しかも、これまでの答弁を聞いていても、これから検討する、これから法に盛り込むんだというような答弁ばかりでございます。
 これはまさに、先ほど申し上げましたけれども、何か本に例えると、上巻、中巻、下巻があって、あるいは上巻、下巻があって、上巻だけ見せられて下巻の方は全然わからない。最もそのエッセンスの部分がわからなくて、ここだけでとにかく賛成をしてくれというわけにはいかないわけでございます。
 その点についてはいろいろ議論を今後進めていくわけですけれども、今ありました国民の意識、国民の理解という点について、では今現状をどうとらえていらっしゃるのか。その点について総理大臣、どういうふうに今御認識いただいていますか。
小泉内閣総理大臣 私は、国民一般から見れば、有事を起こってほしくないと思っていると思います。嫌なことは考えたくない、だれでもそうだと思います。しかし、いざというときを考えるのが政治の責任ではないかと思っております。
 今私は、未整備なところがあるじゃないかという御指摘もありますけれども、この有事法案が出てきたからこそ初めてこういう議論ができるんではないでしょうか。できないから出すなと言ったら、全然しないんですよ。いいんでしょうか。私は、今こういう法案が出てきたからこそ初めて有事に対してどう対処しようかということが議論ができたことは、今まで手抜かりだった、怠っていた点を直さなきゃならないと。やはり嫌なことだけれども、嫌なことを考えて、嫌なことが起こったときにどう対応していこうかというのが、私は政治の責任ではないかと思っております。
渡辺(周)委員 嫌なことはそうなんです。日本というのはやはり言霊の国でございます。こういうことを考えるだけでも忌まわしい、めったなことを言うものじゃないと。日本が戦争になるとか、あるいは、またあの暗い厳しかった時代の生活をするのは嫌だ、そんなことはもう考えるだけでも忌まわしいことであると。実際そういうこともあった。ですから、こういうことを口にすることはタブーだということもございます。だからこそ、なぜ必要かということをしっかりさせなきゃいけないわけです。
 今回のは、まさに自衛隊の活動についての円滑化法の部分は大変先に出てきました。しかし、では我々の生活というのはどうなるんだという点については全然まだこれからです。ですから、嫌なことはもちろん考えたくもないけれども、そのときに、では何を国民は協力をしなきゃならない、あるいは何の制約を受けなきゃならないということについても、これはやはりあわせて考えるべきだと私は思うんですが、もうこれ以上言うと時間がまだ幾らあっても足りません。
 これだけ出てきたから議論が進むんだということではなくて、出すのであれば、ちゃんとしたやはりそこの問題を出さなきゃ……(発言する者あり)いや、だから二十五年かかってやってきたわけですから、ここの部分だけはまだもう二年待ってくれみたいな話であり……(発言する者あり)いやいや、それは二十五年もやってきたわけですから、それについてなぜ議論がされてこなかったのか、あるいは検討されてこなかったのか、その点であります。このことはまた改めてやりますけれども、この中で、国民の意識をどう、ある意味では本当にそこに向けていくか、あるいはこのことを考えていくか。
 正直言って、まあこんなことを言ってはいけませんが、マスメディアの中にも、この点について例えばどうマスメディアは考えているんだと言うと、いや、人権関連法案の方が優先していますということで、この有事法制におけることは余り考えていませんなんて言う人も実際いるわけですよね。つまり、どこか近未来的な、あり得ない話のどうせ議論をやっているんだろうという認識がまだあります。だからこそ、我々のこれからの生活はどうなっていくのか、その時点では国はどうなるのかということを本当に考えなければいけない時点、事態に今来ているわけであります。
 ここで各論にちょっと入りますけれども、おそれと予測ということについては、もう何度も質問がございました。このおそれと予測という中で、両方とも出てくる言葉の中に客観的にという言葉が出てきますね。我が国への武力攻撃の意図が推測され、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態、これが、予測される、予測の定義であります。そしてまた、おそれについても、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が差し迫っていることが客観的に認められる事態というふうに言っております。
 この客観的ということをちょっと説明していただけないでしょうか。客観的というのが出てくるんですけれども……(発言する者あり)いやいや、今、主観的だというこちらから御指摘がありますが……(発言する者あり)いや、だから、それじゃ客観的というのは何をもって客観的というか、その点について。
小泉内閣総理大臣 官房長官が答弁する前に。
 私は、今渡辺議員、非常にいいことを言われたと思うんですよ。中には、こんなことは起こり得ないんだから、起こり得ないことを今考える必要はないという議論がある。まさにそこなんですよ。これが問題だ。こんなことをやるよりもまだほかのことがあるから、有事法制なんて反対だ、審議なんかする必要はない、出す必要はない、それでは私は政治はいけないと思うんです。あり得ないことは考える必要はない、我々はあり得ないことも考えておこうというのがこの有事法制なんです。できてほしくない、嫌なことも考えておかなきゃならないというのは、各国すべてある、日本がなかった。
 しかし、あり得ないことでも、あるかもしれない、そういうことを考えるのが政治の責任ではないかということで今考えているんであって、私は、今渡辺議員が指摘された点は大変重要なことであり、国民的な議論の中で、この有事法制というものを多くの国民の理解と協力を得ながら、審議を深めて成立させていきたいと思っております。
 貴重な御意見として伺っておりました。
福田国務大臣 先ほどの御質問は、明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態の客観性の問題でございますけれども、この客観的に認められるということは、個々人の主観を離れて、何らかの事象の存在に基づいて通常の人であれば認めることとなる、そういう趣旨でございます。
渡辺(周)委員 では、一つ例を挙げますと、昨年の九月十一日、セプテンバーイレブンスと呼ばれたあの同時多発テロのときに、テロ特措法の特別委員会で、当然、あの問題が起きたときに、本当にテロの首謀者はオサマ・ビンラディンであってアルカイーダであったのか、それに対してのその証拠というのはどこにあるんだということを我々が申し入れました。そして、その後、協議を経た結果、証拠とも何とも思えない、こうであろうというようなペーパー、文書が、我々が言ったから出てきたわけです。あれが本当にそうだったかわからない、全部が出てきたのかどうかはわかりません。そういう意味で言ったんです。そのときに、これが証拠であるという、何か会話記録のようなものがたしか出てきたように記憶しておりますけれども、では、それを、もっと言えば、今おっしゃったように、一般的にと言いますけれども、これは、ほとんど情報を握っているのはある方々だけなんですね。それだから、非常にこれは難しい判断を迫られるわけです。
 このおそれと予測について、ちょっと具体的な例を挙げて申し上げたいと思うんです。
 これで、どこの時点で予測される事態なのか、どの時点がおそれなのかということをちょっとお答えいただければと思いますけれども、イマジネーションの世界で、想像の世界で言ってもなかなかわかりにくいので、実際にあった事例としては、一九九八年のあのテポドンが飛んできたときの事件。あの八月三十一日の午後零時七分、テポドンが発射されて、一段目が日本海に、そして青森県の上空の約六十キロの上を越えて太平洋側の三陸沖五百キロのあたりに着弾したとされているわけですね。
 このときの検証記事等を集めてみますと、この時点で、八月三十一日の時点以前に、もう既に日本の政府あるいはアメリカの関係者から、発射の可能性についてはかなり事前から情報が集められていたというふうにあったわけであります。例えば、申し上げますと、八月十三日には、日本の公安筋が発射準備の具体的な情報をつかんでいるというふうにあるわけです。その後は、ちょっと前後しますけれども、八月十日には、嘉手納基地のミサイル観測機RC135が三沢基地に派遣されている。そうして、その直後には、十四日というふうにされていますけれども、在日米軍から、ミサイル基地での活発な活動を示す偵察衛星の写真も添えられていたということが当時の検証記事を見ると出てくるわけであります。
 例えば偵察衛星の写真というのは客観的な事実、既にもう米軍は恐らく警戒態勢に入ってその態勢をとっている、そして公安筋なり防衛庁筋なり外務省筋にはそうした状況が既に入っている、だからこそ日本側も日本海に自衛艦を派遣して情報収集に当たっていたというふうにあるわけですけれども、例えばこういう事例を、これはイマジネーションの世界じゃないです、現実にあったこととして当てはめると、これはどういう事態になるんでしょうか。偵察衛星が写真をとらえた、そして米軍の関係者から動いてきている。
中谷国務大臣 これは、何といっても、やはりそのときの国際情勢と具体的な事象を踏まえて、それが我が国に対する組織的かつ計画的な武力の行使に当たるかどうかという点を勘案して、その前の段階としてどういう状態かということを検討して判断することでありまして、一概に今の時点で言うことはできませんが、そういう事態が武力攻撃事態になるというふうに判断されれば、自衛隊が行動することもあるわけでございます。
渡辺(周)委員 事実、このときに米軍などから、ミサイルに燃料が注入され、七十二時間以内に発射されるという情報があった。現実に、二十九日に、発射の二日前には、北京で外務省の課長級協議が開かれて、日本側は発射中止を求めたとあるわけであります。
 これは相手の意図がわからないんですね。もしかしたら、つかんでいる人たちは、それはあくまでも、当時は後になって、四日後ぐらいになってから、あれは人工衛星の打ち上げであったんだというふうに言いました。ですから、これはもしかしたら、弾頭には何もついていない、発射実験で、当初は、その数年前にありましたノドンが能登沖に発射された、あれと類似して、あくまでもこれはミサイル売り込みのための、中東の、北朝鮮にすればお客さん向けの一つのデモンストレーションじゃないかというような見方も事前にあったとは聞いていますけれども、だけれども、実際、こういうことは相手の意図がわからない。しかし、もうミサイルは発射台に載っけられて日本に向かっている、その時点で考えれば、これはやはり日本の場合、対応しなきゃいけないんですね。
 この後ちょっと申し上げようと思っていますけれども、そのときに防衛庁長官が、産経新聞の記事の中でも、「仮に今回のミサイルが地上に落ちたり、民間航空機や漁船に被害が出た場合、何をもって日本有事と断定をし、北朝鮮に抗議をし、制裁できるのか。」と、日本有事という言葉を使って、産経新聞の「私にも言わせてほしい」というところで、自民党の元国防部会長という肩書でインタビューに答えられて、あるいは寄稿されているとあるんですね。
 ですから、今の御答弁では、非常に当時のこの歯切れのいい御答弁に比べると、何か本当に納得できない。もうちょっと、もしこの場合はどうだったんだと。実際、この問題は、日本の領海にも、既に漁船なりあるいは航空機が太平洋側を七機たしか飛んでいた、日本海側には既に日本の海上自衛隊が情報収集に当たるために派遣をされていた、そして漁船もそこで操業していたということになれば、これは一つ間違えれば大変なことになっていたわけであります。
 そのときの意図というのがわからない中で考えた場合に、これはどういうふうに今だったら判断できるんでしょうか。せっかくこういうことを当時はおっしゃっているわけですから、大臣の今の御見解をお尋ねしたい。もう一度。
中谷国務大臣 当時は国会議員という立場でありまして、いろいろな情報を知り得ない立場でありまして、私なりに心配をしたことでございますが、その当時の内閣において、さまざまな状況を分析し、判断して措置をされたというふうに考えます。
 したがいまして、やはり政府として、十分に情報を的確に判断した上で、総合的に的確な判断を早期にしなければならないというふうに、私もその担当者として考えております。
渡辺(周)委員 具体的にもうちょっと、私もせっかく具体的な例を挙げてお尋ねしているわけですから。例えば、そういう場合は、ひょっとしたら予測される事態に入るのかどうか、あるいは、もう燃料注入がされているということで極めて切迫している時点で、おそれなのか、予測なのかということをやはり判断できなければ、日本側は対応できないですね。
 このときは、実は、発射されたということは知っていたけれども、発射された後に、総理大臣、当時の総理の耳元にそのことが入ったのが、発射から三時間近くたってからだったということになるんです。つまり、日本は何も当時していなかったわけですね。
 その点について、せっかくここまで歯切れよく、当時は一国会議員とおっしゃいましたけれども、与党の元国防部会長というお立場でコメントされましたけれども、せっかく防衛庁長官になられたんですから、その点、だったらどうするんだと。つまり、この記事では投げかけなんですね、投げかけばかりがされているわけなんです。
 それから、ちょっと続けて申し上げますと、「迎撃する能力がない場合、国家国民を守るため、第二段のミサイル発射を阻止するために、北朝鮮のミサイル基地を攻撃できるのだろうか。」「やられたらやり返すという抑止力が必要である。」「何から何までアメリカに依存したままで、日本は大丈夫なのであろうか。」というふうに言うわけです。この時点ではそうおっしゃっているわけですから……(発言する者あり)いやいや、これはやはり長官にぜひお答えいただきたいと思うんですね。
中谷国務大臣 そのときの気持ちは今でも同じでございます。だから防衛庁長官になれたんだというふうに思います。
 それで、平成十年のケースにつきまして、そのときはどうであったかということでありますが、問題は、やはりその当事国が我が国を武力攻撃する意思と能力があったかということでございますが、当時の、後日の当事国等の分析等によりますと、能力の検証試験であると考えるとか、米国からは通信衛星ではないかというような情報もございまして、いろいろな情報がございました。
 我が国を直接標的としたものかどうか、単発の発射であったかどうか等を総合的に考えますと、当時の政府としては、武力攻撃に予測される事態ではなかったのではないかなというふうな判断をしたのではないかというふうに思います。
渡辺(周)委員 では、ぜひこういうところはお答えいただきたいのです。予測とかおそれという部分について、これは非常にわかりにくいので、あえてこの具体的な事例を挙げたのです。この当時のことは、偵察衛星であったのではないか、だからこそ比較的当時は、緊急の態勢をとることもなく、何か着弾してから一報が入ったような話で済んだ。つまり、意図としては攻撃ではなくて衛星打ち上げじゃないか、あるいは先ほど申し上げた何らかの試射ではないか、デモンストレーションではないか。しかし、実際そういう事態として考えていただいて、日本に向けてミサイルが向かっている、この時点について、これはおそれと予測ということで考えたらどちらに当たると考えたらいいのか。もうミサイルが向かって、燃料が注入されているという時点では、どういうふうに考えておいたらいいんでしょうか。相手の意図がわからないときですね、人工衛星であるか何なのかわからないとき。
中谷国務大臣 仮定の話ですから、お答えはできないわけでございますが、今回、先ほど議員も御質問になりましたけれども、客観的に認められるかどうかという点、それからこういう防衛出動する際におきましても、国会承認という手続で対処基本計画が承認をされる、緊急の場合にはその前に対処するわけでありますが、その際も、内閣において対処基本方針を決定して閣議決定をするわけでございますので、そういう事態であるかどうかという点につきましては客観的な情勢に基づいて判断をする必要があろうかというふうに思います。
渡辺(周)委員 想定外のことを想定したこれは法律なんですよね。先ほど、最初に総理に申し上げました、日本には忌み言葉というのがあって、そんなミサイルが飛んでくるとかテロが起きるとか、我が町でゲリラが上陸してきたらどうするんだということは考えたくない。日本には忌み言葉みたいなものがありまして、そんなことは言わない方がいい。だけれども、実際これは、今回の法律は、あっては困るけれども、あったときに有事ファシズムのような形にならないためにつくる法律だというふうに我々も、ですから有事法制の制定については検討を重ねてきたわけであります。ですけれども、これはもう既にあった問題なんですね。実際あり得たことですから、想定外ではなくて、あり得た問題です。
 ただ、もう時間がありませんから、これだけちょっと、やるなら午後にまた回せればと思いますけれども、そういう意味では、先ほど申し上げた客観性、大臣も、平議員だとおっしゃる当時に、何から何までアメリカに依存したままで日本は大丈夫だろうかと。つまり、情報の入手あるいは情報の分析、客観的な判断ということについても、ほとんどこれ、アメリカの偵察衛星なり早期警戒衛星からの情報であった。その点を考えたとき、日本の客観性というのはこれからどうやって確保していったらいいのか。
 それから、今の御答弁の中では納得いかないので、このおそれということについて、もう一回ぜひ何らかの形で明示をしていただきたいと思うのですけれども。
中谷国務大臣 まず、情報収集につきましては、私も我が国独自の情報収集が必要だというふうに思っておりまして、現在、我が国独自の情報収集衛星を平成十四年打ち上げる計画で準備をいたしておりまして、これも貴重な情報収集の一つだというふうに思っておりますが、これ以外にも、さまざまなデータを分析、解析をして、早期に判断ができるようにする必要がございます。特にミサイルの防衛につきましては、まだまだ整備すべき点が多いわけでございます。
 そこで、おそれということでございますけれども、おそれという事態につきましては、まさに防衛出動が必要な事態と認定をいたしております。その際は、国際情勢、また、相手国の明示された意思ですね、日本を攻撃するというふうに明示をされた意思、また、軍事的行動、部隊の集まりぐあいがどうかとか、予備役が招集されたとか、そういうふうな軍事的行動などから判断をして、かつ我が国への武力攻撃が発生する明白な危険、これが切迫をしているということが認められる事態でございます。
渡辺(周)委員 それでは、この議論をずっとやっていてもどうにもなりません。もう同じことの繰り返しでございますので、ぜひ、おそれという事態、一昨日の岡田委員からは、予測ということについての例示をせよということでお願いいたしました。これをぜひ、おそれという点についても何らかの形で出していただきたいと思うわけですけれども、委員長にお計らいいただけますでしょうか。
瓦委員長 お預かりして、理事会でまた話をします。
渡辺(周)委員 では、また午後に引き続き質問いたします。
瓦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑を続行いたします。渡辺周君。
渡辺(周)委員 それでは、休憩前に引き続きまして質問をいたします。
 先ほど、午前中の質疑の中で、有事法制について私自身の考え方を申し上げました。一昨日だったでしょうか、自由党の藤井さんがおっしゃられました。自分は戦中を経験しているから、その経験からこういうことを申し上げると。私も、昨日議事録の速記を読みまして、感銘を受けたわけです。
 私は戦後生まれでございまして、だからこそ戦争を全く知らない世代であります。それだけに、いろいろなところへ行きますと、例えば沖縄もそうです、サイパンもそうです、あるいは中国や韓国もそうでありますけれども、行くと必ず戦禍の傷跡が残っている。そして、沖縄なんかへ行きますと、いかに非業な死を遂げたかという罪ない若い人たちのいろいろな写真等も、これは総理がよく特攻隊のことを持ち出されますけれども、私も「指揮官たちの特攻」なんというのを読みました。非常に、世が世であったらこの方々は命を落とさなくて済んだのになという方々がまさに命を落とした。
 ここにいらっしゃる方々も家族があり、私も小さい子供の父親でありますから、そういう意味では、二度とこんなことをしちゃいけない。人が人をあやめるようなことだけは、どんなことがあっても、人類の英知を本当に結集してでもこのようなことがあってはいけない。しかし、あってはいけないからではなくて、万々が一それでもあった場合にはどうするかということはやはり議論をしておかなければいけないということで、この後の質問を、また非常に考えにくい、嫌なことを考えながら質問をするわけであります。
 それで、ここで午後の質疑の最初に、ちょっと用語の定義も含めてお尋ねするわけでありますけれども、この法案の中で、武力攻撃の武力ということは何を指すのか。この武力ということについてお答えいただけますでしょうか。
中谷国務大臣 定義でございますので、いろいろなものがございますが、非常に国際的に見ますと不透明、不確実な時代になってきておりまして、世界の武力攻撃の例は千差万別であります。しかしながら、武力攻撃というのは何かといいますと、国家の主権や国民の生命財産に大きな影響を及ぼすものでありますので、我が国としてはいかなる事態にも備える必要があると思っております。
 その攻撃について、攻撃の主体は何かといいますと、国であったり、また国に準ずるものであります。また、期間は長期に及ぶものもあれば短期に及ぶものもありますし、地域は広範囲また限定であります。(渡辺(周)委員「武力とは何かと聞いているんです」と呼ぶ)
 武力といいますのは、人、物を殺傷するものであろうかと私は思っております。
渡辺(周)委員 人、物を殺傷するというのが武力であると。しかし、武力攻撃の武力は定義されていないんでしょうか。その点、もう一回お答えいただけますか。
中谷国務大臣 武力の行使といいますが、国家の物的または人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行動をいうわけでございます。
 したがいまして、この国家の物的・人的組織体による武力の行使でございますけれども、その武力につきましては、やはり人、物を殺傷する能力のあるものの行使であるというふうに考えております。
渡辺(周)委員 ちょっと、お尋ねしていないことまで答えていただいているんです。人、物を殺傷するというものが武力であるとするならば、それは武器じゃないんですか、人、物を殺傷するものは。
 では、ちょっと時間もないので進めますけれども、武力というものは、例えば我々が想像し得る兵器あるいは武器ではなく、ひょっとしたら今回の、昨年の九・一一テロのときには民間の旅客機が使われたわけであります。そうすると、この民間の旅客機が武力になるということもあり得るわけですか。
中谷国務大臣 あり得ます。
渡辺(周)委員 そうしますと、先般の答弁で、たしか、大規模テロが発生した場合も有事に、武力攻撃に含まれる事態があり得るというような趣旨の答弁をされたと思いますけれども、また具体的にお尋ねをしますが、それでは、あのニューヨークで起きた九月十一日の大規模テロ、これは国家の、あるいは国家に準ずるそのときは組織の意図があったわけであります。そうしますと、民間旅客機が武力として今度は変質をしたわけですね、民間旅客機が。
 そうなった場合に、日本でこれが起こることもあり得るわけですね。これがもし起きたときには、やはりあの事例が、先ほどはテポドンを午前中に例に挙げましたけれども、あの大規模同時多発テロが日本で起こった場合には、あれは武力攻撃に認定し得ることがあるわけですね。
中谷国務大臣 日本で起こる場合でございますので、米国と、その背景また国際情勢、若干違うわけでございますが、仮にこういう場合につきましては、まず米国自身は、これをみずからに対する武力攻撃であると認識をいたしておりますし、国連初め国際社会におきましても、これが武力攻撃に該当すること、すなわち自衛権を行使するということについては広く認められたわけでございます。
 したがいまして、米国の同時多発テロ事件についてあえて申し上げると、日本で全く同様の背景に基づいて事態が発生した場合を仮定いたしますと、本法案に言う武力攻撃事態に該当する場合もあり得るというふうに考えております。
渡辺(周)委員 そこで、そうしますと、日本の上空で、例えば日本の旅客機あるいは外国の旅客機が、国内線か国際線がハイジャックをされた。ハイジャックをされて、明確な意図を持って我が国に対する武力攻撃をする。それが、武力が想定していた兵器ではなくて民間の旅客機であったということになったときに、我が国としては、そうしますと、ここの法律の第三条で言います、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。」とあるわけですけれども、その場合は、非常にこれも酷な質問をするかもしれませんが、乗員乗客を乗せた民間機であっても、武力攻撃の排除のために撃墜するということはあり得るんでしょうか。
福田国務大臣 民間航空機が攻撃の手段として使用されるといったようなテロ攻撃が発生する、こういう場合には、法律の範囲内で、被害の局限等を含めまして、できる限りの措置をとるということになります。
 こういう場合の新しい形態の緊急事態にどういうふうに対応するか、これは今後重要な検討課題として検討していかなければいけないというふうに考えますけれども、これは今防衛庁長官からもお話ししておりますけれども、ある事態が武力攻撃事態に該当するか否かということは、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものであるというようなことでございますので、これも仮定の話でございますので、このことについて、この分だけで判断をするということは難しいということであります。
渡辺(周)委員 じゃ、武力攻撃と認定された場合には、民間旅客機も武力になるわけですね。そして、それを行使した、まさに自爆突入テロが起きた場合には、これはもう武力攻撃事態と認定することがあり得るというふうにおっしゃったわけですから、そうしますと……(発言する者あり)いや、だからそれを前提に申し上げていますが、そうしますと、これを撃墜するということは解釈上あり得るということでいいですね。
福田国務大臣 武力攻撃と認定された後の話ですね。ということになりますれば、武力攻撃ということでもって、それはすぐに適切なる対応をしなければいけないということになります。
渡辺(周)委員 そうしますと、認定されずに万が一、もう数十分の話なんですね、飛び立ってから上空でハイジャックをされた、そして、それが東京の都心なのか、あるいは横浜の都心なのかに向かって次々に起こり得るという予測がされた場合は、これはやはりその前段階はどうなるんでしょう。
 これは、「自衛隊指揮官」という本を防衛大学校出身の毎日新聞の方が書いているんですけれども、そうした本を書かれる中で、ハイジャック機に対する武器使用の法的根拠ということが防衛庁の内部で検討されたことがあるというふうに書かれています。
 私も本を読んだだけでございますので、これをそのまま聞いてそうなのかということで御質問するつもりはありませんが、そういうふうに書かれているということをもとにして考えれば、そういうこともあり得るのかな。つまり、この新しい事態を受けて、いわゆる旧ソ連が冷戦下において北海道に攻め入ってくるというような想定でつくられた法制が当てはまらない。つまり、今みたいなことが現実もう起きてきた時代において、そうなった場合には、これは検討していなければいけないと思うんですけれども、防衛庁長官、防衛庁ではこういう検討はされているんでしょうか。
中谷国務大臣 この問題につきましては、まだ研究、検討いたしておりません。
渡辺(周)委員 この問題は、本当に想定外の問題ですけれども、実際あった話であります。それだけにこれは考えておかなければいけない問題だ。もう発生から数十分以内に決断を迫られる問題であります。
 この迫られる問題を考えるというのは、これは極めて大変な決断をしなければならないわけでありまして、もう数十分間の間に、乗員乗客の数百人の命と、そしてその後このままいけば起こり得るであろう甚大な被害、これをてんびんにかけて、攻撃をすれば間違いなく乗員乗客の命は絶たれるわけでありますけれども、しかし、そのまま放置しておけば間違いなく何らかの形でさらなる被害が、あのワールド・トレード・センターにぶつかった、そして六千名を超える命が失われたということを考えれば、大変なこれは決断をしなきゃいけないわけであります。
 こういう事態が起きたときには、現状では、それでは何が考えられるんでしょうか。その点について御答弁いただけますか。
福田国務大臣 数十分というお話でございますけれども、本当に数分というミサイルの攻撃もあるかもしれぬということでありますので、これはもう本当に認定作業を緊急にやる、そういうシステムを構築しなきゃいかぬ、こういうことになろうかと思います。これはこれから考えていかなければいけない問題でありますけれども、当面は、治安を維持するという観点から警察権を発動するとかいったようなことで対応することになると思います。
渡辺(周)委員 今回の法案を審議する以前から言われているのは、テロ、不審船に対応できるかということをずっと言われてきたわけです。
 今、警察権と言いましたけれども、実際、空を飛んであと数分後に向かってくるものに対して、これは警察力ではもう対応できないんですね。もちろん、その事前の、そういうことがないような警備の強化でありますとか、あるいは航空機内の治安維持でありますとか、そういうことにおいては確かに警察力ですが、実際そういうことになった場合には、これはもう考えたくないことですけれども、瞬時に決断をしなければならないわけであります。
 ですから、この点を考えておかないと、というのは、こういうことを考えておくことがやはり有事法制だと思うんですね。これは、当たり前のことを当たり前に対応できるようなことでありますと通常の法律でいいわけですから、それだったら、まさに有事法制というものをつくる以前で済む問題です。ですから、この問題で、最も喫緊にあった問題で、最も想定し得る可能性のある問題について、やはりこれは考えておかなければいけない問題だろうと思います。
 こればかりでは時間がなくなりますので、次なる質問に移りますけれども、さてそこで、武力攻撃事態の認定ということであります。
 これは、認定をした後は、どのように手続をして国民に公布をするのか。つまり、今日本は、我が国はこういう状況に陥りました、言うなればまさに戦時下にある、あるいは戦時下と予測されるといいましょうか、準戦時下になるということについては、国民に速やかに公布する必要があると思いますけれども、この点が法には触れられていませんけれども、この点はどのような形でお考えになっているんでしょうか。
福田国務大臣 緊急事態に際しまして、政府は事態の認定、それから対処に関する基本的な方針というような重大判断を極めて限られた時間内に的確に行う、こういうことが必要になります。
 そのために、安全保障会議に対して進言を行う組織として事態対処専門委員会を設けることといたしております。この委員会は、内閣官房長官を委員長とし、内閣官房及び関係省庁の中から専門的知見を有する局長級以上の関係者を委員として任命することを想定しておりますけれども、その任命について、国会の承認その他の関与を求めることは……(渡辺(周)委員「それは後の質問の答弁です」と呼ぶ)では、そこまでで。
渡辺(周)委員 いや、私が聞いたのは、武力攻撃の認定後、どのようにして国民に今我が国はこういう状況にあるということを速やかに広めるか、例えば総理大臣が記者会見をやるのか、そういういわゆる公布ですね。いわゆる、もっと言えば有事宣言をするかどうかということなんです。
福田国務大臣 この手続につきましては、対処方針、この法律の九条の七項です。先ほど申しました安全保障会議の決定を閣議決定するわけでございますけれども、内閣総理大臣は、閣議の決定をして、「直ちに、対処基本方針を公示してその周知を図らなければならない。」こういう規定がございまして、そういう国民に対する公示をするわけでございます。
渡辺(周)委員 そうしますと、その閣議決定を受けてこういうことになったと。それは、いわゆる公示というのはどういう形で出されるんですか。その公示ということについて、もうちょっとわかりやすくお伝えいただけますでしょうか。
福田国務大臣 これはそのときの緊急度にもよりますけれども、記者会見をする、これは総理大臣がするということになると思いますけれども、それから官報でもって公布する、こういうこともございます。
渡辺(周)委員 公示ということが官報に記載されてというふうに我々も理解するわけですけれども、実際、官報というのは、つくっている方には申しわけないですけれども、まず読む方は一般国民の中にはいないだろう。正直言って、我々もどれだけ読んでいるかというと、私も余り読んだことありませんし、ましてや、速やかな対応ということを考えますと、これは何らかの形で直ちに、我が国がそういうことになったと。しかし、テレビメディアに限らず、これはありとあらゆるメディアを使って出さなければ当然いけないわけです。病気で入院していらっしゃる方もいるかもしれない。体の御不自由な方もいるかもしれない。目の御不自由な方、耳の御不自由な方もいるかもしれない。
 そうしますと、もう既に、日本全国津々浦々に至るまで、その点についてはこれは伝えなければ当然いけないわけであります。その場合は、これはどういう形になるんでしょうか。一種の非常事態、有事宣言のような形になるんでしょうか。それとも、こういう事態であるということの認定をしたという事実をお伝えになることなんですか。もう一回だけ確認しておきます。
福田国務大臣 これは、緊急事態であるということを公示することになると思います。その場合に、その周知を図るということが書いてございますけれども、その意味は、あらゆる手段を使う。総理が記者会見もしますけれども、その記者会見自身がテレビとかその他のメディアでもって伝達されるということになりますけれども、あらゆる種類の伝達手段を使って行うということを意味していると思います。
渡辺(周)委員 先ほど我が党の桑原委員からも、地方自治体、地方公共団体との点についていろいろ御指摘がありました。
 そうしますと、この有事を認定し、そして今言ったような手続が進められているということには、当然地方自治体にもそういう形で、何らかの形で通達といいましょうか通告をしなければいけないわけですね。そういうことですか。
福田国務大臣 今この法案の中では、その地方公共団体に対する通告というようなことは規定いたしておりませんけれども、これは当然のことながら、そういうことも含めて今後検討、具体的な規定を盛り込むということになるだろうと思います。
渡辺(周)委員 検討といいますけれども、もうこの法案をつくる以前から、先ほど、午前中から言っていますけれども、もう二十五年という歳月がたって、こういう事態が起きたらこうなるだろうということはある程度考えていなければいけないわけでありますが、検討するというのは、もう何か言葉の上で、本当にそれでよしとされていると思っていらっしゃるのかどうなのか。本音の部分でいえば、当然そういうことだろうというふうに思うんです。
 そうなれば、ちょっと次の質問に行きますけれども、我々の生活は、いざそうなったら、じゃ今度はどうなるかということなんです。やはり国民の大勢の方々が、この法律が通った場合に、この法律が成立をした、そして、あるいはその後二年以内とこの法律には書かれていますが、さまざまな我々の、国民の保護についての法律がつくられる。そして、そうすれば地方自治体も、これを受けた形でさまざまな条例案をつくり、あるいは組織編成をし、平時からそのときに備えなければならないのではないかとやはり思うわけですね。
 法律には「主要な役割」というふうに書いてある。国は「主要な役割」を、地方公共団体は「当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とする」というふうにあるわけであります。そうしますと、「主要な役割」というのは国防というふうにとらえていいのか。そして、そうしたときには、その有事の認定を受けた一連の手続を終えた上、今度は、地方公共団体が、まさに一番身近な地方自治体がそこに住んでいる住民の方々のために直ちに態勢をとるということで理解をしておりますけれども、法の解釈はそういうことでよろしいですね。
福田国務大臣 この法案の七条に、地方公共団体の「適切な役割」と書いてございますけれども、これは、地方公共団体の自主的な判断により必要な措置を実施することを指しておるものであります。
渡辺(周)委員 確かに、自主的な判断というふうに今おっしゃいました。それはある意味では、その地域の、よく解釈をすれば、その地域に住んでいる特性でありますとか、あるいは地形でありますとか、あるいはさまざま状況を勘案して、一番ふさわしい対応を地方自治体がするということになるわけだと思うんです。
 もっと言いますと、日本海側に面している地方公共団体とそうでないところ、あるいは、米軍基地や自衛隊基地がある地方公共団体もあれば、そういうものがないというところも当然あるわけでして、日ごろから例えば意識の持ち方なんかも違う。あるいは、その首長さんのお考えによっても、いろいろな形での対応が考えられるわけでありますけれども、ただしかし、私も今回の法律の審議の前にいろいろな地方自治体の方々ともお話を聞きました。例えばこれは、災害を、私は静岡県ですから、大規模地震を想定して、いろいろな形でもう既にいろいろなことが行われています。そういうふうに、ある程度、有事、この有事というのはこの法で言うところじゃなくて、いわゆる非常時があった場合に対応できる準備を既にしているところと、全くそうでないところも正直あるわけであります。
 そうしますと、ある程度これは平時から考えておかなければいけないところになるわけです。例えば、災害であれば、ある程度想定の図上演習ができるわけです。そして、被害予測というものもある程度、時間をかけていけばつくれるわけであります。だから、ここだと震度幾つが予想される、地震の話ですけれども、例えますと、ここだと液状化現象が起きそうだ、だからそれに合わせてどこにどうせよということをしなきゃいけないわけであります。
 そうしますと、これを武力攻撃という事態と今度は置きかえると、これはある意味では雲をつかむような話でありまして、国が国防をやって、地方は住民の生命財産を守れというけれども、ある意味では、これ、攻撃を受けたときの被害想定も地方公共団体がしておかなきゃいけないわけですが、それは、地方公共団体の責任としてやることが、ここの法律の中で出てきます「適切な役割」ということに当然入ってくるんでしょうか。
片山国務大臣 国が「主要な役割」、地方が「適切な役割」と。この「適切な役割」の中には、国と一緒にやる、国に従ってやるというものもありますし、今官房長官言いましたように、自主的にやるものも含まれていると思います。
 そこで、今からということなんですが、個別法制で地方団体の役割がきちっと法定されますから、それに従ってというのが本来なんでしょうけれども、例えば、今お話しのように、災害対策やなんかは、平時からいろいろなことをやっているわけですね。特に静岡県なんか、そういう意味ではモデル県ですよ。そういう意味で、今後、内閣官房とも相談しなければなりませんけれども、国民保護法制ができる、個別法制ができるまでに、どういうことを地方団体にお願いするか、これについても検討いたしたいと思います。
渡辺(周)委員 地方公共団体はやはりいろいろな、事前アンケート等が新聞各社なんかに記事として出ていますが、見ると、国からまだ説明がない、法案の要綱を見ただけで、これから審議を見なきゃわからないというような意見の中に、中には全面的に協力しますという東京都のようなところもあれば、反対だという長野県のようなところもございます。そうなりますと、自治体によってばらつきが出るわけですね。
 先ほども、これは我が党の委員からの質問と重なるかもしれませんけれども、そうしますと、国とともにやっていくとなれば、協力に従わないというところが、もともとおれはこんな法律反対だ、こんな法律は絶対おかしい、違憲じゃないかということで例えば首長さんが判断して、国がそういうふうに言ってきたって一切認めないというようなことになる。例えば、知事は反対だけれども議会はやるべきだという決議を出した。逆に言うと、知事は賛成だけれども議会はだめだということで、これはいろいろな状況が想定されるわけですね。
 そうした場合に、地方公共団体にどのような形で、この法案が成立をした場合に、そして二年後に個別法が出た場合には、全国本当に津々浦々三千三百近くある自治体に対してどのように、これはある意味では一律に、一律になるかどうかわかりませんが、やってもらうんですか。
片山国務大臣 現時点では地方団体の首長さんに理解度にばらつきがあるのは、私は事実だと思います。それは、熱心に勉強されている方もあるし、そんなに勉強されない方も恐らくあったに違いないので。しかし、これはよくわかってもらわないかぬと思いますね。
 基本的には、我が国が攻撃を受けて非常事態になって、そういう中で住民の生命、身体、財産を守るというのは、本来の地方団体の基礎的な一番目の仕事なんですね。それをやらないという地方団体は私はあり得ないと思いますよ。だから、そこについては十分な理解を今後とも求めていきたいと思いますし、そのことについては私はわかっていただけるんじゃなかろうか、こう思っておりますが、ただ、今の段階では、包括的な、基本的な法制を決める段階ですから、まだ事細かに説明はいたしておりませんけれども、さらに詳細な説明をする努力をいたしたいと思います。
渡辺(周)委員 それは、今後、当然そういうことを、地方自治体の方々も、一体どうなるんだろうということを、全く雲をつかむような話で、この議論の推移を見守っている方々も多いと思うんです。
 先ほど、ちょっと静岡県の地震災害に備えている例を挙げましたけれども、これも大変な時間と、そして組織編成を行い、もっと言えば、予算措置をしてここまで来たわけですね。これは当然、法に基づいてやってきたんです。
 そうしますと、いろいろな国民の保護、住民の保護ということを考えれば、国はもちろんですけれども、地方も、当然のことながら予算措置も含めて、もっと言えば、警察や消防の増員でありますとか役所の組織編成も行う、あるいは新たに新規な県民防護局みたいなものをつくらなきゃいけない。例えばそういうことも当然想定されるわけですけれども、そうした、例えば予算措置なんというのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
片山国務大臣 何度も申し上げておりますように、まだ地方団体の具体的、正確な役割が法定されていないんですね。
 今我々はやや想定で物を言っておりますけれども、そういうことになりますれば、やはり今委員が言われたような、予算措置や要員や体制をどうするか、こういう議論になってくると思いますけれども、災害その他でそういう地方団体が訓練というのか経験を経ておりますから、もしきっちりした役割が決まれば、それなりの対応は私はできる、こういうふうに思っております。
渡辺(周)委員 今そういうことになると、これは膨大な作業なんですね。
 静岡県のこの災害対策の、大規模地震に備えての法律ができてから、いろいろな形で、これは災害ですから、例えば公共機関でありますとか、総務大臣はもう御存じと思います、あるいは学校を耐震構造に全部建て直しをする、そしてさまざまなシミュレーションをやって訓練をやったり、避難路であるとか避難地であるとかといろいろな指定をして、そして一種の危機管理、FEMA的なグループをつくってやった。これもやはり時間とお金を物すごくかけてやってきたことなんです。これを自治体がやるとなると、平時からどういう準備をするかという雲をつかむような話の上に、やるとなると、これは膨大な時間と労力がかかるんですね。
 これは、やはりやるべきというか、当然やることになるわけですか、個別法ができれば。
片山国務大臣 いずれにしましても、また同じ答弁になるかもしれませんが、地方団体の役割を、都道府県はどう、市町村はどう、さらには、地域的にあるいは差があるのかもしれませんね、いろいろな状況が。そういうことのあるきちっとした想定ができれば、それに対する対応は、少々時間がかかりましても、予算がかかりましても、それはやらざるを得ない。それは、内閣官房を中心に、総務省その他関係の省庁で十分協議してまいりたいと思います。
渡辺(周)委員 それでは、官房長官にお尋ねをしますが、昨日の答弁の中にございました、市民保護のための民間防衛の組織体、これは当然、今の総務大臣の答弁で、地方自治体がその役割を担うとなれば、最も身近なコミュニティーにおきまして、そうした、例えば負傷者の保護でありますとか運搬でありますとか、そういうことを当然しなきゃいけませんし、また、いろいろな形での避難誘導等に、これは住民が全部出てこなければ成り立たないわけであります。
 その点について念頭に置かれましていわゆる民間防衛のことを御発言されたと思いますけれども、どういうイメージで考えていらっしゃるのか。例えば、消防団のような組織にその役割を担わせるのか。あるいは、いろいろな奉仕団体、日赤婦人会とかございます。こういう例えば奉仕団体の方々に、今からそういう形で意識を持っていていただくのか、そして、その点についての何らかの教育といいましょうか訓練を今からするのか。民間防衛ということについてはきのう御発言されましたけれども、その真意はいかがなものか、お尋ねしたいと思います。
福田国務大臣 いわゆる民間防衛につきましては、その定義が明確でございませんけれども、一般には、侵略や大災害等の事態において、国民の生命、身体等を守るために、主として軍事組織以外の組織が行う救助、避難誘導等の諸活動をいうものであるということであります。
 政府といたしましては、国民の保護のための法制の整備が極めて重要な課題でございます。法案に基づきまして、警報発令、救助、応急復旧等の必要な諸措置に関する法制を整備することにいたしておるわけでございまして、今後の国民の保護のための法制の整備に当たりましては、組織のあり方なども含め、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら、十分な理解を得られるような仕組みを考えてまいりたいと思います。
 民間防衛という言葉は、この法律では規定しておりません。民間防衛につきましては、国民の合意を得ながら、政府全体で広い観点から慎重に検討していくべきであるというように考えております。
渡辺(周)委員 何かイメージがわかないんですけれども、何か言葉の定義みたいなことを教えていただいたんじゃなくて、どういうふうな形で民間防衛と、これはいろいろな、例えばドイツであるとかフランスであるとかスイスであるとか、あるわけですね。そして、民間防衛は国防の一環であるというふうに、例えばもう既に法律でうたっているような国もあります。
 そこで、例えば、連邦政府からの補助金で、州単位にもう既に民間防衛局のようなセクションがあって、そこが日ごろからそういう教育訓練のようなことをしている。中には、教育訓練で学校に行かせているというところもあるわけですけれども、まさにそういうイメージでとらえていいんでしょうか。
福田国務大臣 民間防衛というように申しますと、これは民間防衛というイメージがあるんですね。言葉の定義になっちゃうけれども、民間防衛というのを辞典で引けば、「中央政府の計画指導とそれに基づく地方自治体の組織、指導のもとに主として軍以外の民間人が主体となって行う防護活動。市民防衛」、こういうふうなことなのでありますけれども。
 こういうことにつきましては、どういうことが国民の中に必要なのかということでございまして、まさに国民的議論の対象というか必要性というものが感じられるのではないかと思います。関係機関の意見も当然ございますし、そういうような国民の意見を聞きつつ、また国民の理解を十分に得られるような仕組みを考えてまいりたいと今思っておるところでございます。
渡辺(周)委員 もう時間が差し迫ってまいりましたので、これはまた個別の問題ですので、また改めての機会に質問したいと思います。
 ここで、大変重大な問題で指定公共機関の問題がございます。その中で、民放も指定公共機関に含まれる、先ほど意思伝達の部分についてはお尋ねをいたしましたけれども、まさに、正確かつ速やかな事実の国民への周知ということが非常に大事でございます。
 そうしますと、民放が、ただいろいろな避難に供するだけではなくて、ある意味では市民社会をこれ以上パニックにさせないように無用な情報、無用と言ったら怒られますが、情報が錯綜していろいろな憶測が飛び交わないようにして、マスメディアに対する協力を求めることもこれはあると思うんですね。
 つまり、もうチャンネルをみんな変えるわけですね。そうしますと、あの局ではこう言っていた、ここではこういう人が言っていた、あそこが危ない、ここに上陸したとか、いろいろな情報が入る。そうしますと、これは大変なパニックを引き起こす。これは、災害報道等でも当然何度か言われたことであります。中には、試験放送をやったことがパニックを起こしたなんという例もあるわけであります。
 そして、一つ申し上げますと、一九七八年の参議院の内閣委員会で、防衛庁が有事の研究項目を八つのグループに分けて示した。その中に、マスメディアに触れる部分がございまして、誘拐事件の自主規制を一つ例に挙げて、国益を守るために秘密保護に利用できないだろうか、つまり、協力を待つか、それとも指示するかということで、研究対象にマスコミのあり方ということがこの有事法制研究の中でもあったというふうに聞いているわけでありますけれども、民放も指定公共機関に含まれると。
 さらに、それ以外に例えば新聞社。これは、新聞社は考えにくいのではないかという答弁されましたけれども、今はもうインターネットで瞬時に配信をしているわけですよね。そうしますと、これは速報性の意味においても、もう民放と同じぐらいのスピードを持って、大変大勢のユーザーがいるわけですから、例えばインターネットというものはどうなるのかということも一つ。
 それから、新聞ということに関しても、何らかのやはり報道の自主規制のようなことを求めざるを得ないのではないかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
福田国務大臣 民間放送業者については、公益的事業を営む法人として、警報等の緊急情報の伝達のために指定される可能性はありますが、現時点では日本放送協会を主として考えております。
 また、新聞社につきましては、その性格上、警報等の緊急情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくいということなんでありますけれども、新聞社がインターネットを使って、また通信社もあるわけでございますので、そういうような新しい伝達手段については、これは、そういう手段も使って、表現の自由とか報道の規制などとかいうような言論の自由を制限するようなことのない方法でもって十分その任に当たっていただくということは、当然考えられることであると思っております。
渡辺(周)委員 これはまた別途議論したいと思います。
 それでは、残りの時間の中で、安全保障会議、先ほど官房長官から先走って御答弁をいただきました、まだ聞いていないのに御答弁をいただきましたけれども、安全保障会議が今回のいわゆる事態対処の基本方針を決めるに当たりまして大変重要な役割を担うわけであります。このことについては余り今回の質疑の中で出てきていませんけれども、その中にございます対処専門委員会、内閣官房長官が委員長を務められて組織を編成する。これは、平時のときから唯一機能する、今回の法律に基づく組織なんですね。
 そして、ここで決まったことが、さまざまな想定されるであろう事態というものに対して、当然、その中に幾つもの選択肢を持っていなきゃいけないと思うんです。つまり、もう時間の問題でありますから。そうなれば、要は、諮問をして答申を受けて、法律にありますように調査研究をして返事をするなんというそんな悠長なことは言っていられませんから、まず、対処基本方針を定めるに当たって最も重要な、いわゆるシンクタンクといいましょうか、あるいはストックとでもいいましょうか、この対処委員会、平時からどういう役割を果たすのでしょうか。そして、そのことについてどういう人員で臨まれるのか。今のお考えを聞かせていただきたいと思います。
福田国務大臣 先ほど先走ってお答えしましたけれども、この事態対処専門委員会は、平素から専門的な調査分析を行いまして、安全保障会議への進言を行うことによりまして、事態が起こったときの対処に関する会議の審議を補佐するということにしております。
 また、この委員会の委員は、内閣官房及び関係省庁の中から専門的な知見を有する局長級以上の関係者を任命することを想定しておりますが、専任とすることは考えておりません。ということは、専任でなくて、組織の代表として参加する方がより機動的に動ける、こういう判断でございます。
渡辺(周)委員 これは非常に重大な組織なんですよ。ここから、平時においていかなる調査研究をするか。「調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する。」と法案にはありますけれども、もう引き出しをいっぱい持っていて、こういう事態が起きたときにはこう対処する、こういう場合はこうするという、ありとあらゆる引き出しを持っていなければいけないわけであります。
 そうなりますと、我々の生殺与奪、あるいは国民の生命財産すべてにおいて、もっと言えば国家の存亡も含めて、ここでの判断を誤れば大変なことになるわけであります。そうしますと、日常からかなりのことをしておかなきゃいけないと思うのですね。
 そうしますと、これは単なる出身省庁の権益の調整なのではなく、先ほど防衛庁長官がおっしゃった、例えば偵察衛星のようなデータがある、こういうものをどう解析するか、そしてこれを解析できるだけの人間も当然そこに入れていかなきゃならない。まさに客観的に判断できる、そしてあらゆる事態に速やかに対処できる、その方針を幾つもつくっておくということになりますと、これは大変な心臓部というふうに思うわけですけれども、そういう認識ですね。
福田国務大臣 おっしゃるとおり、これは大事な任務を担っている機関だと思います。
 そのためには、その機関が有効に機能するためには、本当に常時からの情報収集、及び事態が起こったときの対応というものをよく考えて活動していかなければいけない、そういう組織であります。
 この委員会がどういうふうに運営されるとかそういうことについては、今後検討する課題も多いのでありますけれども、これは事柄の性格上それ以上のことを申し上げることは不適当だというふうに考えております。
渡辺(周)委員 また検討という言葉が出てきまして、これは我々の、本当に国家の存亡をかけたいろいろなプログラム、シナリオがここにあるわけでして、これがまさに一番大事な部分なんですね。
 もちろん、どういうことをやっているかというものをすべてつまびらかにせよとは私は申し上げませんが、しかし、何が研究され、何が検討されているかということをやはりちゃんとしておかないと、我々としても大変に不安なわけであります。
 だからこそ、どのような研究をしているか、あるいはどのような中間報告が出せるのかということについては、何らかでやはり国会なりにその現状を報告する義務があると思いますけれども、その点についてはどう考えますか。もう一度伺います。
福田国務大臣 なかなか難しい御質問でございまして、平時にどういうことをしているかということを、これを報告するということになりますと、平時に何を想定しているのかというようなことにもつながりますし、これはまた、仮定の議論、その委員会における議論を公表するというふうなことももしかしたらあるかもしれぬということになりますと、これはなかなか発表できないものだろうというように思います。
 問題は、こういう緊急事態が起こるような状況が生まれてきたときに、これは必要なときに何らかの形で発表する方法もいろいろ考えなければいけませんけれども、そういう状況というのはあるかもしれませんけれども、今段階においてそのような状況というものはないだろうというように考えれば、またそういう状況に応じて対応すべきものだと思います。
渡辺(周)委員 これは、対処基本方針がすべてここで決められるということになって、何もわからない。秘密事項がすべてここに盛り込まれることになって、全くの白紙委任のような形になるのですね。そうしますと、やはり国会が、何をしているかもわからない。
 もちろん、全部とは言いません。どの国を想定して、どうなったらというような図上演習のようなことをやっているかもしれませんから、それは、すべてにおいて確かに手のうちをさらすということはすべきでないかもしれませんが、ただしかし、限られた人間には何らかの形で、せめて概要だけでも知らされないと、そのときにならないとどういうシナリオが組まれているかということがわからないわけであります。
 そこはやはり白紙委任に私たちもしたくないわけでありますから、そのことに対して、それでよいと思っていらっしゃるのか、それとも、何らかのまだ考える余地がこれから生まれてくるのか。もう一回、この専門委員会の性質について、役割について、お尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 国会の承認を最後求めなければいけないということがありまして、国会の承認を求めるために、承認していただくだけの情報提供ということも必要なんだろうと思います。
 しかし、それは、そのときの状況に応じて、提供できる範囲というものがもしかしたらあるかもしれぬ。それはそのときに考えるべきことだろうというふうに思います。
 しかし、この対処委員会の重要性というものは、これは先ほど申し上げましたとおり非常に重要なもので、安全保障会議を補佐するということでございますので、最終的には安全保障会議で決定はいたしますけれども、その安全保障会議の決定が適切に行われるように万全を尽くすということでございます。
渡辺(周)委員 何か、まさにブラックボックスのような組織になってしまわないように、当然我々も重大な関心を持ってこのことについてはまた質疑を続けたいと思っております。
 時間が参りました。本日の質問のおしまいに当たりますが、先ほど来出ております昨日の日本総領事館での出来事につきまして、改めて御見解を伺いたいと思います。
 まず、ちょっと状況ですけれども、昨日から大体丸一日たちました。たしか二時だったですかね、昨日の発生が。丸一日たちましたけれども、その後、今どのようになっているのか。中国側に申し入れた結果、説明は何らかあったのか。その点について外務大臣にお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 その後の状況でございますけれども、本日の十一時から、東京におきまして、外務省の次官から、在日の中国大使に対して申し入れをいたしまして、抗議をいたしました。重大な事態であって、中国側に早急に対応してもらう必要があるということを言っております。
 今後とも、中国側に早急かつきちんとした対応を求めていきたいと考えております。
渡辺(周)委員 前も私、安全保障委員会でも申し上げました。昨日潜水調査が終了した例の不審船の問題でもそうでありましたけれども、向こうは、外務大臣なり外務次官なりが出てきて、慎重な態度を求めると日本側に向けて言ってきたわけです。ところが、日本側は、外交ルートを通じてやっている、外交ルートを通じてやっていると言う、中国に対して。結局、十二月に沈んだ不審船をいまだになって引き揚げられない。このことについては前も安全保障委員会で申し上げました。
 そして、今回また、日本の主権を侵す。これは、もちろん不審船は、たまさか中国の排他的経済水域で沈んでいるということですから、もちろん中国の主権が及ぶところは今回の問題と違いますけれども、しかし、今度は、日本の主権を侵害する大きな出来事だったわけです。門から三十メーターから四十メーターぐらいのところに入ってきている、そして、一階のビザ申請のところにいた人間を、要は向こうの公安当局者が捕まえたということであります。
 そのことにおいて、これは過って、追っかけて気がついたら中に入ったとかそういう問題じゃないですね。これは明白に、やはり毅然として抗議をしなきゃいけない。そして、返事が来ないというのは、いつまで待って来なかったら次の行動をとるかということをやはり考えておかなきゃいけないと思うんですけれども、その点は今どうお考えですか。
川口国務大臣 先方として本国に伝えるということを言っておりますので、それを踏まえて次に何をするべきか考えたいと考えております。
渡辺(周)委員 これは、我が国に対する主権への挑戦なんですよ、ある意味では。その侵害に対して、そんな、非常に言葉を、誤解を招かず、招くかもしれません、下手に出て、何かお願いしているような言い方ではだめなんですよ。
 やはり毅然としてこれは対応しなきゃいけない問題でありまして、このことに対して、確かに日本と中国の中でいろいろな分野における交流とかいろいろなことがありますよ。しかし、本当に尊敬をされる国であるんならば、やはり毅然とした対応で、国家としてのやはり主権と威信と、そしてプライドをかけてやらなきゃいけないと思うんですが、そういう覚悟があって申し入れをしているんですか。それで、いつまでに返事がなかったら次のアクションを起こすということはお考えなんですか。やはり時期を区切らないと、言いっ放しで終わる可能性がありませんか、この問題。
川口国務大臣 これは重大な事態だと認識をいたしておりまして、現在毅然とした態度で対応いたしておりまして、今後とも毅然とした態度で対応をしていくつもりでおります。
渡辺(周)委員 いや、これは重大な事態だということはもう本当に認識をされている。本当にこれは大変なことなんですね。これで日本の国が何か事なかれのような態度をとると、世界じゅうから、日本という国は領事館に相手国の、これはたまたま、言葉を選んで言えば職務に忠実の余りやってしまったのかもしれない。しかし、やはり、一つの条約があって、その中で守られるべき人間が守られなかった。ルールが守られなかったことが、世界じゅうで、日本という国はそこまでされても黙っている国なんだということを知らしめることになりますから、これについては本当に毅然とした態度を示していただきたい。もうこれは本当に日本の国として、やはりプライドをかけてやっていただきたい、やらなきゃいけないわけであります。そうしないと、そこまでしないで国が守れるのかというふうにまさに思うわけであります。
 そこで、総理にお尋ねしますが、このことを受けて、昨日、首相官邸で記者団からコメントを求められて、中国の立場、日本の立場もあるから冷静に対応をするというようなことをおっしゃいました。冷静にという発言がございましたけれども、これはどういう御意図で言われたんですか。
小泉内閣総理大臣 外交は常に冷静にしなきゃならないと思っております。
 午前中、外務次官が駐日中国大使を呼んで強く抗議したということでありますし、きのうから私は駐日中国大使と昼間会うことになっておりました。昼間、中国大使が見えましたので、強く抗議し、中国側に対し誠意ある対応を求めるということを申し渡しました。
渡辺(周)委員 実はこの事件は、新聞報道で知るところによりますと、アメリカの領事館にも別の方が逃げ込んだ。そして、もう既にきょうの新聞の一面には新聞社のカメラがその模様を撮っているわけですね。もう既に、これはあらかじめ予測されたことなんではないかというふうに考えるのが妥当だと思いますし、事実、そういうことがあるわけです。
 そうしますと、もう既に日本はそういうことがわかっていたにもかかわらず、それができなかったというふうに判断をするわけなんですけれども、最後に、もう時間もありませんから残った時間でお尋ねしますが、そういうことは事実としてどうなんですか、わかっていたんじゃないですか。
川口国務大臣 あらかじめ承知をしていたということは全くございません。
渡辺(周)委員 あらかじめ承知をしていないなら、なぜカメラマンがそこにいて、あの取り押さえられる写真を撮っていたのか。もっと言えば、なぜ警戒厳重な、身分証明書なりを見せなきゃ中に入れない我が国のまさに領域に、領事館にどうして入れたんですか。つまり、もしかしたら来るんじゃないかと思ってゲートをあけてあったんじゃないですか。
川口国務大臣 瀋陽の総領事館では、ビザを取得するために訪ねる人がいますので、門を一メートルぐらいあけてございまして、内側で、総領事館が雇い入れている警備員が身分証明書等をチェックしているということでございまして、そういう意味で門があいているということでございます。
渡辺(周)委員 しかし、外国の通信社のカメラマンがその瞬間を待って、一番いいカメラアングルのところに記者がいる。常にもうそういう情報がマスコミには伝わっているので、間違いなく日本の領事館にもあったはずだと思う。
 その点をこの問題の一つの問題としてやはり考えなきゃいけないことですし、そしてもう一つ、時間がありませんから最後に申し上げて終わりますけれども、主権を侵害されたということは、まさに先ほど、重大重大というふうにおっしゃられましたけれども、本当に世界から我が国が尊敬される国家である、主権を侵害されたとき、主権に挑戦をされたときには毅然として対応をする、それと、やはり国としての威信あるいはプライドをかけて、外国に向かって我が国はこういう国であるという姿勢を示していただきたい。
 そしてまた、この問題については、外務省がとにかくしっかりと取り組まれることをお願い申し上げまして、強く申し入れまして、私の質問を終わらせていただきます。


2002/05/09

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