2002/05/09

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平成十四年五月九日(木曜日)

瓦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁長官官房長柳澤協二君、法務省刑事局長古田佑紀君、外務省アジア大洋州局長田中均君及び外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。
 総理、就任されてから一年余りがたちました。私は、小泉総理が登場されたとき、大変な人気を博されたという状況を私なりに、これは季節外れの大雪現象だと言いました。つまり、小泉さんの登場によって、すべての古い日本の政治、あえて自民党政治と言わせていただきますけれども、そういったものの悪いところを小泉さんの一つのパーソナリティーというもので全部、すべてを覆い尽くした。みんな、その美しい雪景色に感動した。しかし、私は、雪は必ず解けると言いました。今まさに解けたと思います。
 しかし、問題はこれからだと思います。私は、これから、季節外れかどうかは別にして、大水現象が起こる、大水現象を起こしてほしい、こんなふうな期待を実は持っております。小泉さんだから、大水になるかはわかりませんけれども、要するに、古いものをなくす、全部を流してしまうということを、そういう決意を持っておられる限り、私どもはしっかりと支えてまいりたい、そんなふうに思っております。
 これをまず冒頭に申し上げさせていただきまして、今なぜ有事法制なのか。これについては、きょうで実質三日目の審議が行われるわけですけれども、考え方、立場によって大きく二つの、もちろん、ほかにもあると言われるかもしれませんが、二つの立場があるように思われます。
 一つは、本来、国家が備えておくべき緊急非常事態における対応が、不幸にして今まで用意されてこなかった。ようやく今、おくればせながらその論議ができるようになった。平和なときにこそ、いざというときのために、万が一のときのための対応をしよう、これが一つであります。私の立場は、もちろんこれであります。
 もう一つは、本来、戦争を放棄し、解釈によって、自衛権すら持てない、そういう立場に立つ人はいますけれども、そういう人たちにとって、有事を想定することすらおかしいじゃないか、こういう立場があります。それを準備しようというのは、これはアメリカの要請というものも背後にあるんじゃないのか、こういうふうなことがあって、今のタイミングでそういったことを受け皿のように用意しようというのはどうも納得がいかない、こういうお立場の方が、実は私の周辺にも、地元に戻るとおります。
 したがって、きょうこれから私は前半の時間を使って、そういった万が一の、一の部分はいわゆる有事だろうと思いますけれども、残りの九千九百九十九、あとう限り、すべての力を尽くして外交展開、軍事に頼らない、非軍事の努力をし尽くすという部分に私は焦点を絞って前半のお話をしたい、そんなふうに思います。
 その中で、三つポイントがあると思います。一つは、率直に言わせていただいて、アメリカの言うなりになってはいけない、アメリカには言うべきは言えということです。二つ目は、私たちの近隣諸国、アジアに対してしっかりと配慮をすべきだという点が二つ目です。三つ目は、日本の独自性というものを生かした外交を積極的に展開していこうじゃないかという、三つのポイントであります。
 いずれも、総理は、そんなことは言われなくてもやっているよと言われるかもしれませんが、あえて、きょう、国民の皆さん、注目の的でございますので、その点についてもっともっと積極的にアピールしてほしい、こういう思いを込めて、私たちの主張も含めて三点について申し上げたいと思います。
 まず第一、今回のブッシュ大統領の悪の枢軸発言であります。総理は、一昨日も、野党委員の質問に対して、こうおっしゃいました。ラムズフェルドさんの話に関連しての部分ですけれども、事態によっては、アメリカはアメリカの立場があることを表明していると私は理解している、これはごく当然のことを言われたんだと僕は思っています。しかし、総理、先ほど言ったように、今の時代状況、今の背景ということを考えたときに、この小泉総理の発言は少しばかり丁寧さを欠いている、もっとほかで違うことをおっしゃっていると言うかもしれませんが、国民の不安をかえってあおる発言だ、こんなふうに思います。
 このことも含めて、おれはアメリカにしっかり言いたいことを言っている、こうおっしゃる、そういうところがあるなら言ってみてください。
小泉内閣総理大臣 私はごく当然のことを言っているつもりであります。どこの国についても言うべきことは言う、これを貫き通しております。
赤松(正)委員 いや、それは、今おっしゃったのは姿勢を言われたので、具体的にどの場面でどういうことを言ったのかということが、私たち、私でさえという言い方は傲慢かもしれませんが、余り伝わってこないのです。
 むしろ先ほどの発言は、言ってみればごく当然の、国にはそれぞれの行き方があるんだからということをおっしゃっていると思うんですけれども、そういうことについて、やはり、日本の立場としてはこうだよ、この場面、もう少し丁寧にこうされたらどう、誤解を生むよ、こういうふうなことを言われたのはあるか、こういうことでございます。
 例えば、この間、瓦団長あるいは久間筆頭理事等と一緒に、社民党、共産党を除く超党派の議員団でアメリカへ行ってまいりましたけれども、そのときに、アメリカは大変にこの悪の枢軸発言を気にしていました。アメリカといってもそんなたくさん会ったわけじゃありませんが、何人かの人が気にしていました。その中で私が印象に残ったのは、そういう悪の枢軸発言というものが持つ政治的意味合い、すぐに北朝鮮に攻めるとかどうこうということじゃなくて、こういう発言をすることによって、北朝鮮の側が極めて、融和路線、話し合いをするという方向に変えつつあるということを敏感に見るべきだ、こんなふうなことを言っておりましたよ。そういうたぐいのことを言われるべきだ、こういう意味であります。これ以上言っても総理は余り言わないかもしれません。
 いずれにしても、先般、ある高名なジャーナリストがこう言っていました、日本とアメリカの関係は、何だか自民党と公明党の関係に似ていると。私は褒め言葉だと思ったのですが、そうじゃなくて、言うべきことは言わないじゃないか、こういう角度の、いや、公明党はしっかりと総理に、自由民主党の皆さんに言っていると。ところが、世の中的な理解は違う。それは、大体、総理がアメリカに対してきちっと言わないということが背景にあるからだと思うのですが、さっき極めて抽象的な言い方をされましたけれども、あえてもう一回、具体的に、この場面でおれはこう言ったんだということを言ってほしいですね。
小泉内閣総理大臣 言うべきことを言うというのは当然なのであって、新聞で報道するかどうかというのは別問題ですよ。私の発言が常に正しく全部が報道されているとは限りません。あるいは一部だけ報道される場合もあります。それはまあ仕方ないんですが。
 例えば、今お話しになりました悪の枢軸発言にしても、ブッシュ大統領が日本に来られたときも、この北朝鮮に対する問題、話し合いをいたしました。ブッシュ大統領は、話し合いの道は大きくあけてある、私も、韓国の金大中大統領の太陽政策を日本としては支持しているんだ、北朝鮮を話し合いの場に引き出すということが大事なんだということをはっきり申しております。北朝鮮に対応する場合、日本としても日本の独自の立場もあるし、拉致問題の話も当然話題にいたしました。正常化交渉も、日本は真剣に取り組んでいるということもお話しいたしました。
 そういう中で、韓国の立場もある、これから北朝鮮と交渉する場合にも、日本は日本の立場を優先するのは当然だが、韓国の立場、そしてアメリカの立場もあるでしょう。よく連携しながら、北朝鮮には交渉して、何とか北朝鮮を対話の場に引き出すことが重要だ、北朝鮮に対しても、対話を国際社会と持つこと、国際協調が北朝鮮にとってプラスになること、国際社会から孤立するということは、北朝鮮にとっても、北朝鮮人民にとっても、政府にとっても、国民にとっても、決して国際社会から孤立することはプラスにならないんだということを理解するよういかに我々が努力するか、こういうことが大事だということを言っているんですよ。
 ブッシュ大統領は、対話の重要性も認識しておられます。一方では悪の枢軸ばかりが強調されていますが、アメリカはそんな単純なものではありません。アメリカにはアメリカの立場があり、あらゆる選択肢を残していくというのがアメリカの立場でありますから、それはそれぞれの国の事情があるということも理解しなきゃならないと私は思っております。
赤松(正)委員 アメリカにはアメリカの立場がある、日本には日本の立場がある、しっかりそういったことを踏まえた上で、先ほど来申し上げたようなことを留意しての外交展開、そして、それを幅広く日本じゅうに知らせていっていただきたい、そう思います。
 二番目に、アジアへの対応であります。
 去る四月二十一日、靖国神社の例大祭への参拝をめぐって、総理は所感の中で、再び内外に不安や警戒心を抱かせることは私の意に反するところ、こう言われております。ところが、中国あるいは韓国もこれに対して大変に激しい反発をしていることは事実であります。
 で、一昨日の野党の委員の質問に対して、総理はこうおっしゃっています。靖国参拝と日中友好、交流を促進しようという考えとは別物であります、靖国参拝は、私の信条からしたことです、こうおっしゃっているわけです。しかし、この別物、日中友好と別物だと言われましても、相手が友好を損なうというふうにとらえれば結局は一緒になってしまう、こういうふうに思うんですね。
 靖国神社参拝というのは、政教分離原則そして平和主義の原則からいって、やはり私は極めて問題が多い行為だと思っております。それをわかった上で、総理もわかっておられる、わかった上で執拗に参拝にこだわっておられる。執拗に参拝にこだわっておられる総理の行為は、これはやはり懲りない挑発に見える。どうしても見える。向こうも、日本の文化というものを中国も理解が足らないと私は思いますよ。私、個人的に強くそう思います。そう思うんですけれども、しかし、これはどっちもどっちじゃないのかという話になっちゃうんです。これじゃ、やはり小泉総理の本意じゃないはずですよ。
 両方とも内政に目を向けているという言い方はあるかもしれませんけれども、そうじゃなくて、結局こういう事態が続く、毎年こういう事態が起こるというのは全然好ましくない。総理、この打開をどうしようと思っておられますか。
小泉内閣総理大臣 日本には日本の立場があり、中国には中国の立場があり、この靖国の参拝は日中友好を妨げるものではない。すべての問題、すべての立場が、国と国ですから、一致するわけではありません。
 日本とアメリカでも、今鉄鋼のセーフガードをめぐって意見の対立がありますね。日本は言うべきことを言っております。平沼経済産業大臣、今交渉に当たられています。これが日米の友好を損なうか、意見が対立するから。日米の友好を損なうものではないということは、大人の対応を日本もアメリカもしているから、そのときは激しく対立しますけれども、全体のことを考えて、日米の友好は十分考えておる。
 同じように、日本と中国も、日中友好というものをよくわきまえて、これからの交流なりいろいろな分野での協力を展開していこうということでは合意しているわけであります。そこら辺は、もう中国も大人ですから、お互いの立場をわきまえながら、日中友好を阻害しないように配慮しようということで私は打開できるのではないかと思っております。
赤松(正)委員 今のは姿勢論を述べられただけで、具体的な打開、まあ、この場では言いづらいのかもしれませんが、私がここで言いたいのは、これも聞きづらい言葉かもしれませんが、私がいわゆる大学で教えを請うた学問の先輩が、学問の上における師匠筋の方が、日本は対韓謝罪外交、対中位負け外交だということを繰り返し言っていますよ。
 さっき総理は、中国は大人だと言われた。日本も負けない大人の国になってほしい、なるべきだ、こう思います。ぜひとも、今言われた姿勢の上に立って、そういうことだけを繰り返すんじゃなくて、ありとあらゆる角度で、中国と日本との関係というものをうまくするように、知恵を働かせてやっていただきたい、こんなふうに思います。
 そこで、戦没者の鎮魂ということでいえば、私たちは、国立の共同墓地をつくるということは非常に大事だ、こう考えておりますけれども、これについては官房長官中心に一つのいわばプロジェクトチームが動き出しているということを了解しておりますので、ぜひともこの事業というか試みをうまく進めていっていただきたい、こう思って、指摘するだけにとどめます。
 ところで、ちょっとこれは予定していないことだったんですが、若干のコメントをいただきたいんですが、昨日のニュースで、北朝鮮の亡命者と見られる男女五人が瀋陽の日本総領事館にいわば駆け込んだ、逃げ込んだ、それに対して中国側が取り押さえたと伝えています。
 これは明らかに在外公館の治外法権を保障した領事関係に関するウィーン条約違反に当たる、こう見られますけれども、総理は若干のコメントを既に報道機関にされていますけれども、それを繰り返されるんじゃなくて、もうちょっと突っ込んだお話を聞かせていただきたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃられますように、ウィーン条約の観点から考えますと、これには問題があるわけでございまして、直ちに中国にあります大使館から中国政府に対して申し入れをいたしておりまして、現在、その回答を待っている段階でございます。
赤松(正)委員 そういった域を出る答弁は出ないということで、これで終わります。
 三つ目につきましては、先ほども述べました日本の独自性を生かした平和外交の展開ということでありますけれども、これも、日本外交のプラス面というのは、世界で唯一の被爆国であるということ。そして、非核三原則を今日まで曲がりなりにも堅持してきているということ。それから、私は大事な点だと思うんですが、武器を輸出しないという国であるということ。また、この半世紀、唯一と言ってもいいぐらい世界で戦争をしなかった、かかわってこなかったという国であるということ。また、中東でも唯一手を汚していない国である。こういう世界に誇るべき、そういう平和主義の原理というものをしっかりと持ってきている国だと思います。そういったことを全面的に押し出さずして何のための日本外交かと、私たち公明党は強くそう思っております。
 最近、私の友人の、地元における大学の教授なんかとお話ししますと、どうも最近の公明党は、昔と違って、非軍事に力点を置かないで、軍事的な部分に偏り過ぎている傾向があるんじゃないのというようなことをおっしゃるんですが、違うということを盛んに私は言うんですけれども、なかなか理解がされづらいところがあるわけです。
 これは、この十年、PKO法を成立させて、あの周辺事態安全確保法、そしてテロ特措法、今日の有事法制というふうにつながってきた経緯の中で、私は、日本国憲法というものとそれから日米安保条約というもの両方を、憲法の中でこの安保条約というものをぎりぎりの状況の中でどう生かしていくかということについて限りなく知恵を働かせてきた結果だ、こういうふうに自負をしているわけですけれども、そういった点についての理解がなかなか得られないところがある。そういった点で、ぜひとも非軍事分野におけるところの日本外交の展開というものを全面的に打ち出していっていただきたい。
 そんな中で、幾つかの提案があるんですけれども、一つは、これは既に日本国、外務省が進めておられると思いますけれども、武器輸出に対する国際的なルールづくりなんという問題は非常に大事なテーマだろうと思います。あるいは、国際刑事訴訟法のシステムの確立とか、あるいはまたテロリストへの資金流入の制御、こういった問題についてはもう既に着手されているということはわかります。それは、もうあえてこの現状について問いません。
 ここで私は一つ強く提案をして、総理のお考えも聞いておきたいと思うことがあります。
 これは既に私どもの神崎代表等がいろいろな場面で申し上げていることなので、御理解いただいていると思いますけれども、いわば、今アジアは新冷戦、ヨーロッパと違って、アジアは新しい冷戦という状況が続いている。続いているというか、新しく起こっていると言うべきかもしれません。そういう中で、沖縄が相変わらずのアメリカの世界戦略の拠点になっている。この沖縄をむしろ平和戦略の拠点にしていくべきだ、こういう考えのもとに、私どもは、国連の機関、特に国連アジア本部というのを沖縄に誘致するべきだ。そこで、例えば北東アジアにおける関係各国の安全保障に関する会議をやるとか、さまざまな日本からの、そしてアジアからの発信を世界に出すことはできるじゃないか、こういう提案をしているんですが、残念ながら、昨年、約八百万円足らずだったと思うんですけれども、調査費を計上していただいたのはいいんですが、外部委託をした結果として、これは三つほどの理由、アジアの中でいえばタイにそういう国連の機関が既にある、あるいは沖縄がハブ空港の機能というものがない、国際空港としての機能が弱いのでアクセスとして欠点がある、あるいは言葉の点で、通訳の問題等で問題があるとか、こういうふうな理由を外部機関、調査を依頼したアメリカの機関がそういう結論を出して、だめでしたということでお茶を濁そうと外務省はしている。これはいけない。ぜひとも、もっと執拗に、熱心に、これについて継続的に取り組むべきだ、こう思うんですが、時間がないので、総理のお答えをいきなり聞きます。
小泉内閣総理大臣 この問題につきましては、かねがね公明党から提案をしていただいているということは承知しております。また、国連側におきましてもいろいろ事情を調査しているようであります。費用の点、できるだけ経費も削減しなきゃならないという国連側の事情もあると思います。あるいは、今世界にあるいろいろな国連関係機関を統合しなきゃならないという事情もあるようであります。
 そういう中での話でありますので、なかなか難しい事情もわきまえておりますが、今後とも、日本としてはこの問題、検討を重ねていく必要があるというふうに考えております。
赤松(正)委員 ぜひとも、継続的な姿勢をこの問題に対して持っていただきたい、実現の方向に向けて頑張っていただきたいと思います。
 さて、この法律に関する質問であります。
 日本が万が一外国から武力攻撃を受けたとき、憲法の枠内での対応、さらに国民を保護するための理念、枠組みを包括的に示しておこうというのがこの法案のねらいだと思います。
 そこで、まず、武力攻撃事態というものがどういうものかについては、今までも何回も聞いております。この間も与党同僚委員の質問に対して中谷防衛庁長官が、「我が国に対する武力攻撃の事態である限り、規模とか態様の面で特に限定をすることはなく、およそあらゆる事態を含むもの」、こういう言い方をされました。いろいろな言い方をされているんですが、あえて私はこのくだりをとりました。
 要するに、わかりづらい。事の性質からいって、なかなか言葉で説明するのは難しかろうとは思います。しかし、これは極めて重要な法律における概念規定であるがゆえに、やはりありとあらゆる手だてを尽くさなくちゃいけない。
 私ども、法案を提出する側として、何回かこの議論に参画をさせていただきました。それで、その流れの中で、やはり具体的に事例を出してほしい、あとう限り、考える限りの、こういったケースがあるよ、こういったケースが武力攻撃事態だよということを出してほしいと言ってきたんですが、結局今日の状態、示されないまま今日を迎えています。
 先般、野党委員の方から、このことについて、ぜひ委員会でこの武力攻撃事態に対する明確な考え方というかとらえ方というものについての統一した見解をまとめてほしい、そういう要望がありましたけれども、それをわかった上で質問しているわけですが、これについて私は、今聞いても、恐らく同じような答えが返ってくるか、あるいは、今委員会預かりになっているという答えが返ってくるかもしれませんので、ここで一つの提案というか、角度として、今これから出していただけるとするならば、いや、出さないという答えもあるんですけれども、出していただくとするならば、この武力攻撃事態の認定の基準はこうだというのを出すのか、あるいは、ずっと、幾つになるかしれませんが、先般の周辺事態安全確保法の場合は、私たちの同僚議員の執拗な提起によって六つの具体例が出されましたけれども、そういう幾つかのケースを挙げられるのか、それとも、認定の基準はこうなんだという、こういうふうな形で示そうとされるのか、どっちですか。
福田国務大臣 今委員の御質問にございます点につきましては、なかなか、表現を的確にわかりやすく、こういうことは難しい、そういうこともございまして、その点御理解をいただけていないということもあるのは十分承知をいたしております。
 そういうことで、今現在、具体的にどのような事態を武力攻撃事態というようにするかとかいうことにつきまして、認定の問題も含めまして、先般来この委員会においてもそういう御要請もございますので、どういう形でもってお示しできるかどうか、これを今検討しておるところでございますので、できるだけ早くそれを示したいというように思っております。
 ただ、認定の基準と申しまして、果たして、数値的に申し上げるわけにもいかないし、どういうような表現ができるかというところで苦慮をいたしておりますけれども、いずれにしましても、考え方をお示ししたいと思っております。
赤松(正)委員 さらに、では官房長官に続けてお聞きしたいんですが、今、苦慮している、具体的な考え方を示したい、こうおっしゃいました。では、一つ、私の考え方として、私どもは、有事法制ということを、いわゆる有事法制の議論をしたときに、これはいわゆる自衛隊の防衛出動に関する法律なんだろうから、有事法制という言葉で言うよりも、防衛出動法制というふうな言い方にした方がいいんじゃないのかなと言った時期があるんです。それで、今言った基準というのは、そういう意味で言ったんです。
 つまり、警察が出ていって対応するというのではなくて、自衛隊が対応するべきテーマ、こういう一つの基準があるのかなということを考えた。そういうことを含めて、それに対するコメントがあるならいただきたい。それも含めて今考えているんだということならいいですけれども。
 同時に、いつまで。今、国会でこの委員会が始まってきょうで三日目です。終わったころに出されても困るので早急にと思いますが、いつまでですか。
福田国務大臣 この法案そのものが、具体的な処置の細目について述べている部分もございますけれども、基本的に言えば、理念とそれから手続、それから全体的な考え方といったようなものをお示ししておるものであるということでございますので、今回の法案につきましてできるだけ全体がわかればいいのでありますけれども、まだこれは、二年という期限を区切って細目については詰めさせていただくという猶予を与えていただくわけでございます。
 しかし、今御質問の点につきましては、これはいつというふうに申し上げるわけにいかないのでありますけれども、できるだけ早くというようにただいま申し上げさせていただきます。
赤松(正)委員 そういう答えをもう本当に長く聞いてまいりましたので、どうもこれじゃ余り信用できないな、もう法案に賛成するのをやめようかという気さえ起こってまいりますけれども、そういう、いつまでは言えないなんて言わないで、早急にやっていただきたいと思います。言えますか。
福田国務大臣 できるだけ早くと申し上げたのは、この審議をしている、終わってしまっては意味がありませんから、その審議をしている中でできるだけ早くお示ししたい、こういうふうに申し上げたつもりであります。
赤松(正)委員 金、土、日とありますから、ぜひともよろしくお願いいたします。
 次に、この武力攻撃事態における予測とおそれという問題でありますが、おそれがある事態と予測されるに至った事態ということですけれども、この武力攻撃事態への対処に関する基本理念、第三条の二で、「予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」これは大事なくだりだと思います。つまり、予測されるから武力でたたけなんということでは断じてないわけであります。しかし、三では、これはある意味で当然ですが、発生した事態では、「排除しつつ」とある。
 それでは、その中間に位置する、中間といっても私は限りなく武力発生にもう紙一枚で接触していると思うのですが、それはそういう思い方でいいのかどうかも含めて、おそれの段階でどう対応するのかというのは書かれておりません。予測事態と武力発生事態については、どう対応するかが書かれていて、おそれについて書かれていないというのは、これは武力攻撃の可能性、つまり、やられちゃってから対応するというのは遅いという意味、そういう部分の極めて細かいニュアンスを残しているということでとらえていいんですか。
福田国務大臣 この第三条二項でございますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合において武力攻撃の発生を回避する、これが至上命題でございますので、そういうことをこの第三条二項で規定をしておる、こういうことでございます。
 この表現は、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」としておりますけれども、武力攻撃事態が予測されるに至った事態は認定できることから、武力攻撃事態のうち我が国に対する武力攻撃が発生していない場合を示す表現として用いたものでございます。
 武力攻撃のおそれのある事態ということにつきましては、武力攻撃がいまだ発生していない事態である点では、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」と同様でございます。基本理念の面では、第三条第二項を言うなれば準用したということになるわけでございます。
赤松(正)委員 余りよくわからないですね。
 私は、戦史をひもといて例を挙げるとわかりやすいと思っていろいろ考えてみたんですが、例えば真珠湾。これも余り例がよくないかもしれませんが、中谷防衛庁長官が出す例よりもいいんじゃないかと思うんですが、要するに、真珠湾攻撃のときに、一九四一年十一月二十六日、あの択捉島単冠湾に旧帝国日本海軍が集結をした。この状態、これは、アメリカ側から見るといわゆる武力攻撃が予測される事態。その単冠湾から船が出ていったという状況をアメリカ側から見ると、おそれ事態なのかなと。
 こういうケースとか、もう時間がありませんので、ほかにいろいろなケースを挙げてみてどうなんだと聞いてみたいところなんですけれども、それは恐らく、あらゆる国際情勢とかそのときの状況、いろいろなことを判断してやらないとわかりませんという答えしか返ってこないだろうと思いますから、もうこれ以上は触れません。
 そういったことも含めて、官房長官、総理大臣、ぜひとも早急にお願いします。先ほどの、うそがないようにお願いしたいと思います。
 次に、この法律は二年のロングランで全体像を決めていこうということですから、今ここで議論しているのは包括法ですから、ある意味で、いろいろなものが抜けているとかどうこうとかという議論が出てくるのはしようがないと思います。それはしようがないと思いますが、やはり大事なことは、国民にとって一番関心事は、国家の行き過ぎに対しての歯どめはきちっと担保されるのかどうかという点だろうと思います。
 そういう意味で、住民の避難措置などにかかわる国民保護に関する法制の内容と整備のいわば時期だろうと思うんですね。これについては、既に官房長官が、国民保護に関する個別法制の整備期間は二年以内を目標というようなことをおっしゃったりしておりますけれども、これも二年以内という言い方では遅過ぎるわけで、総理も先般、私どもの同僚議員の本会議質問に対して、国民への理解を図るための最大限の努力をする、こうおっしゃっております。あとう限り早く、具体的な担当官庁とかあるいは国民保護法制の基本検討項目の例示とか、こういったことを早くやっていただきたいと思うんですが、官房長官、いつまでにそういう法制を出されるんでしょうか。
福田国務大臣 御指摘の点は、これは多岐にわたります。そして、これは関係機関の意見もございますし、また国民的な議論の動向も踏まえるというようなこともございます。十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくるということを考えますと、多少時間がかかるのはやむを得ないのではないかと考えております。
 一応、この目標期間は二年以内といたしておりますけれども、この法案が成立した後に関係省庁と協議をいたしまして、これはもうできるだけ早くというふうに申し上げるしかないので、そういうことで法案作成作業に着手したいと思っております。
赤松(正)委員 できるだけ早くのオンパレードですけれども、できるだけ早くお願いいたします。
 最後に、総理にお伺いしたいと思います。
 このいわゆる有事法制というものについては、個別的自衛権の範囲内の話でありますから、集団的自衛権の問題はかかわってこない、これは明確に言い切れると思います。しかしながら、多少の誤解がある。
 そこで、私はぜひこの場面で総理に聞いておきたいと思うのは、総理は去年、いつか時期は忘れましたけれども、集団的自衛権をめぐるいろいろな問題で議論が伯仲したときに、集団的自衛権問題は研究してもよいのではとおっしゃいました、研究してよいのではと。このことについての中身を、どういうふうにどういう方向でそのことを言われたのか。そして、実際に研究に着手せよという指示を出されたのかどうかを聞きたいわけです。
 その前に私は、私どもの立場は、集団的自衛権問題というのはやはり憲法を改正して取り扱うべきマターである、しかし公明党は、憲法を改正したからといって集団的自衛権問題はオーケーだという立場ではありません。ありませんが、私は、集団的自衛権問題をめぐる議論の中で少し混乱がある、整理した方がいい。そういう意味では、僕は総理と同じ問題意識を持っているんじゃないかと実は思っております。ひょっとしたら違うかもしれませんけれども。
 既に現状で集団的自衛権は行使されていると言う人がいる、これは憲法を縮小解釈している人の立場だろうと思います。一方、いや、集団的自衛権はもちろんまだされていない、こういう人たちについては、拡大解釈の立場に立っているだろう。
 そこで、私は適正な解釈をすべきだと思うんですけれども、概念の整理が必要だ、こう思うんですが、総理の考えておられる集団的自衛権を研究する、そういう、いわばしてもよいんじゃないかと言われた方向性、そして、それをどうしようとされているのかについてお聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 憲法の解釈についても、人それぞれによって全く違う。集団的自衛権の解釈においても、現行憲法の中におきましても集団自衛権は認められているけれども、保有しているけれども、行使してはならない、行使できないというのが今の解釈の積み重ねでそういう議論になっているわけでございます。
 しかし、いろいろな科学技術といいますか兵器の進歩によって、どれが、どういう場合が集団的自衛権に当たるのか、個別的自衛権に当たるのかというのは、その時々の態様によって、見方によって、また人によって解釈が違ってくる。そういう点の議論というのは私は妨げないということを言っているんです。
 いろいろな議論が我が党内においても行われております。それは結構だ、さまざまな角度から研究してもいいのではないかということを言っているのであって、私は、特別に機関を設けてとか委託してとか、そういうことじゃないんです。党内でも自由に議論してくださいということを私は申し上げているつもりでございます。
赤松(正)委員 ありがとうございました。終わります。
瓦委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 まず、質問に入ります前に、ニュースで大きく取り上げております、日本の瀋陽総領事館に、北朝鮮とおぼしきといいますか、北朝鮮の人が館内から中国警察によって連れ去られるということでございますけれども、これに対しまして、事情を照会するのは当然でありますけれども、これは主権国家としてきちっとやはり抗議をして、だれも納得できるような結末をつけていかないといけないと思うんですよね。
 明確なそういう意思を持ちまして対処をされているのかどうか、これは外務大臣の答弁を求めます。
川口国務大臣 おっしゃった件につきましては、八日の夕刻で、午後三時ごろでございますけれども、北朝鮮人と見られる五名が瀋陽の総領事館に突入を試みたということでございまして、総領事館の入り口で三名が中国側武装警察によって取り押さえられ、その後、二名が総領事館内に駆け込みましたところ、これらの者がその場に駆けつけた中国側の武装警察によりまして取り押さえられたわけでございます。
 現場におりました総領事館の館員が、中国側の武装警察に対しまして、これらの者を移動させないように求めましたけれども、武装警察側はこれを聞き入れないで、結局、五名を瀋陽市の公安局に連行をしたということでございます。
 この件につきまして、我が方の中国にございます大使館から中国の外交部に対しまして、もしこの点が事実であるとすれば、中国側の対応が極めて問題である、非常に遺憾である、特に、武装警察が我が方の同意がなく総領事館に立ち入ったということについては、領事関係に関するウィーン条約の第三十一条において定められております領事機関の公館の不可侵に反するものであるということで、中国側に強く抗議をする旨伝達をいたして、抗議をいたしたわけでございます。
 現在、中国側の、申し入れについて説明を待っているところでございまして、同時に、東京におきましても、本日、同様の趣旨を中国の大使に対しまして申し入れをすべく、現在手配中でございます。
井上(喜)委員 中国の警官が日本の領事館内に、館内といいますか館内の敷地の中に入ったということ、これは事実として確認されているんだと思うんですよね。したがって、やはりそういう事実をもとにして、断固としてこれは抗議すべきはすべきだと思うのでありまして、あいまいな態度で相手方の、先方の意向をうかがうということはおかしいと思うのでありまして、この措置につきましてはきっちりとやっていただきたい、こんなふうに思います。
 時間が余りありませんので、次に、有事法制のことにつきまして質問いたしたいと思います。
 自衛隊法ができまして大方半世紀たちますし、それから、有事法制の研究というようなことが始まりまして大方四分の一世紀たつわけですね。今回やっとこの有事法制の三法ができたのでありますけれども、しかし、これは大変大きな、画期的な意味を持ちます法制だとも私は思います。確かに、法律の中にも書いてありますように、幾つかの点においてこれから整備をされていくようになっているところもありますが、今回のこの立法措置といいますか、法律案の提出ということは大変大きな意味がある、そんなふうに思います。
 そこで、一日も早く有事法制を整備していく、その体制を全体として整えていく必要があると思うのでありますけれども、こういうことにつきまして、まず総理の決意をお伺いいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 いろいろな立場があると思いますが、やはり非常時に対し、緊急事態に対し常にどういう対応をしておくかということは、非常時が起きてからでは遅いわけでありまして、平時から、平和なときから考えておく、これは当然のことだと思っております。
 何で今ごろという批判をされる方もおられると思いますが、むしろ、今まで何でしてこなかったか、そういう批判もあるわけでありまして、私は、常に平和なときから非常時のことを考えておくという当然の責務を果たさなきゃならないという観点から今回法案を提出しているわけでありまして、いろいろ議論を積み重ねて、よりよい対応をすべく、この法案を提出したということを御理解いただければと思います。
井上(喜)委員 次の点、武力攻撃事態というような概念がここに出てきておりますけれども、わかりやすく言うと、そういう武力攻撃が予測される段階、あるいはそのおそれの段階に入った状況、現実に武力攻撃がある、こんな段階にこの武力攻撃事態というのを分類されています。分類されているといいますか、そういう概念が包摂されて武力攻撃事態という言葉が使われていると思うのであります。
 これは総理の答弁にありましたが、武力攻撃を受けた場合に、我が国が武力を行使してそれを撃退するんだ、こういうお答えだったと思うのでありますが、これは聞きようによりましては、相手の攻撃を受けて、受けて立つんだ、こういうぐあいに誤解されなくもないわけでありまして、私は、それは違う、そういう場合もあるけれども、まさに攻撃が始まろうとしているようなそういう時点においては、こっちからだって反撃するといいますか、そういう向こうの勢力を排除するようなことはできるんじゃないかと思うんですよね。また、そうやるべきである、それが敵を排除する有効な方法だと私は思うのでありますが、その点について、総理の御見解を伺います。
福田国務大臣 武力攻撃が発生したとき、この意味のことだと思いますけれども、武力攻撃による現実の侵害があってから後、要するに、具体的に言えば、ミサイルが着弾したからということではなくて、武力攻撃の着手があったときである、こういうことでございます。
 これは、武力攻撃が発生し、そして自衛権発動の三要件を満たした場合、これは自衛隊法の八十八条に基づく武力行使ということになっておりまして、そういう状態であれば、この八十八条に基づく武力行使になるということでございます。着手の段階からそれは含まれるというように考えております。
井上(喜)委員 今の御答弁で私なりに理解をいたしますと、必ずしも、向こうから撃ち込まれる、そういう事態の前の段階におきましても我が国は反撃できるというように理解をいたしたいと思います。
 さて、その次に、この武力攻撃事態につきまして、対処基本方針というのをつくるようになっているんですね。その対処基本方針についての中身でありますけれども、三つの項目が分かれておりまして、一つが「武力攻撃事態の認定」ですね。これは私は何となしわかります。まだ攻撃になっていないんだけれどもそのおそれがあるとかあるいは予測されるというような、こういうことでしょう。わからないのは二番目ですね。「武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針」というのは、これはどういうことを書くんですか。これは官房長官か防衛庁長官か、御答弁を願います。
福田国務大臣 この全般的な方針でございますけれども、これは、法案に定めます基本理念を踏まえつつ、現実の事態に即して武力攻撃事態への対処に当たっての統一的な指針を示すということで考えております。
 具体的に申し上げれば、例えば外交上の基本的な方針、国の防衛に当たっての基本姿勢、国民の安全確保についての考え方などを必要に応じて記載するということになりますけれども、その中に、さらに日米共同対処の基本的な方針ということなども記載することもあり得ると考えております。
井上(喜)委員 つまり、日米の共同作戦のようなことも必要に応じてその中に入り得る、こういう御答弁だと思うのでありますが、例えば、大きなテロが発生した、それは武力攻撃の事態と、事態といいますか武力攻撃そのものと認定する、判断しまして措置をとりますね。しかも、そのテロ自身が、第三国ないしはその支配下にありますある種の機関と密接に関係がある、そういうところの指示によって動いているというような場合に、どうも日本独自で、つまり日本からいいますと先んじてたたくということは、これは自衛権の行使の範囲内であればできるわけでありますが、日本自身としてその能力がない場合に米軍の支援を求めないといけない、こういう場合もあり得ると思うのですね。そういうような場合には、そういう米軍の支援もこういう中に入るんですか、書かれるんですか、いかがですか。
福田国務大臣 ただいま委員の御指摘のことにつきましては、日米安全保障条約の第五条の規定で日米共同対処するということになると思います。
井上(喜)委員 それは条約上はそうでありますが、そういうことをこの対処基本方針の中に書くのかどうかということです。非常にこれは大事なことだと思います。
福田国務大臣 これは、先ほど対処方針、全般的な方針ということで御説明申し上げましたけれども、その中に記載されることになると思います。
井上(喜)委員 よく検討して、わかりやすくひとつこういった方針をその場合にはつくっていただきたいと思います。
 その次には、国民の協力ということにつきまして一条を起こしてあるわけですね。およそ国の防衛というのは、国民の協力とかあるいは支持というものがなければできないわけですね。だから、こういった条文があるということは当然だと思うのでありますが、それにいたしましても、国民の協力というのはいろいろな形の協力があるわけでありまして、一体どこからどういう範囲で、主たるものとしてどんなことが考えられるのか、どういうようなことを国民に対し協力を求めていこうとしておられるのか、お答えいただきたいと思います。
福田国務大臣 国民の協力の具体的な内容、範囲ということでございます。
 例えば、地域における被災者の搬送、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力といったような、そういうような内容を想定しておるわけでございます。
井上(喜)委員 ちょっと抽象的でわかりにくいのですね。もう少し具体的にきちっとした、そういうことじゃなくても、こういうこと、こういうこと、こういうことということを例示を挙げていただきたいと思うのです。
福田国務大臣 これから国民の協力の内容、範囲等につきましても法制整備をしていくわけでございますけれども、いろいろな場面が想定されると思いますので、そういうことはその検討の中で考えてまいりたいと思っております。
井上(喜)委員 よく検討していただきたいと思うのです。
 しかし、国を守るということは、国を守ることについての国民の共通の認識がないといけないと思うのですね。ですから、そういう共通認識、つまり国を守るということは非常に大切なことなんだ、基本的に大事なことだというようなことのために、一体、政府はどういうことをしようとされるのか、もし何かおありであればお考えをお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 これは、国民の協力を得るためにも国民の十分な理解を得なければいけない。それがなければ、この法案をつくる意味がないというようにも思っております。
 そういう意味で、政府といたしましても、日ごろから情報の提供など国民の広い理解を得るためのさまざまな努力を通じまして、国民の間に自然に自分の国を守る気概がわき上がる、こういうことも期待をいたしておるわけであります。
井上(喜)委員 次に、米軍の地位協定について伺いたいのですが、私は、この法律案が出まして、この地位協定なるものをよく読んでみたのでありますけれども、平時におきましては余り問題も起こらないような協定かもわからないです。
 といいますのは、米軍とかその家族は、原則的に日本の法律を尊重する義務があるわけですね。つまり、法律が適用されないわけです。尊重すればいい、こういうことでありますが、これは有事になりますといろいろな問題が起こってくるんじゃないかと思うのですね、一般の国民との間であるいは自治体との間で。
 ですから、やはり余りトラブルが起こらないような形で米軍が行動できるような、そういう法的な措置ないしはそれにかわるようなものが必要じゃないかと思うのだけれども、先日の川口外務大臣のお話を聞いておりますと、多少それらしいことをするような、するようでないような、漠とした答弁をされているのですよ。これはきちっとしておかぬと、後トラブルになったら厄介だと思うのですね。ここをどういうぐあいにしようとしておられるのか、明確にこれはお答えいただきたいと思うのです。
川口国務大臣 まず、おっしゃるように米軍が、これは我が国に対する武力攻撃が発生した場合には我が国を防衛するということを目的の一つとして、我が国との合意に基づいて駐留をしているわけでございまして、一般国際法上、外国軍隊には法令は適用されませんけれども、尊重義務があるわけでございます。
 それで、この関連で我が国が、米軍の行動が我が国に対する武力攻撃を排除する等といったような場合に、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、これは支援を検討する必要がございまして、その際は、日米安保条約の目的の枠内、それから憲法の範囲内で行うということでございまして、今後、法制についての整備を政府全体として考えていくことになるわけでございます。
井上(喜)委員 NATOの地位協定を見ますと、日本の米軍の地位協定と同じような条項もあるんですね。つまり、米国の軍隊等が国内法を尊重する義務があるとあるのだけれども、一つ違っているところがありまして、NATOの場合はその後に、またとありまして、このため必要な措置をとることは派遣国の義務である、こういう規定があるわけですよ。日本の地位協定にはこれはないんですね。だから、派遣国の軍隊等には、派遣先の国の法律のストレートの適用はないけれども尊重する義務がある、それを、派遣国が必要な措置をする、そういうことができますように必要な措置をとると義務づけているわけですよ。
 日本の場合、これがないわけでありまして、だから、これは私は、地位協定の改定というのは難しい問題があるかもわからぬけれども、これはやはりよく検討して、日本もこれに取り組むべきだと思います。
川口国務大臣 尊重義務が一般国際法上あるわけでございますので、ここに仮に書いてないとしても、尊重義務は当然にあるということでございます。
井上(喜)委員 それでは、時間ですので終わります。


2002/05/09

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