2002/05/07

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岡田政調会長、有事関連法案の基本認識質す(民主党ニュース)

 民主党の岡田克也政調会長は、7日、衆議院の武力攻撃事態への対処に関する特別委員会において質問に立ち、政府の有事関連法案における基本認識について質した。

 岡田政調会長は質問の冒頭、鈴木宗男議員の公設秘書逮捕、井上裕前参議院議長の公設秘書逮捕と井上議員の議員辞職問題を取り上げ、鈴木議員の議員辞職について小泉首相の見解を質した。首相は「進退は本人が決めるもの。しかるべき判断をされると思う」と他人事の答弁に終始した。

 続いて、有事関連法案における武力攻撃事態の想定をめぐって、岡田議員は「日本へのミサイル攻撃や、大規模テロ攻撃はあるのか」と質した。首相は「何が起きるか分からない。予測し得ないことも起こる」と答えた。これに対して岡田議員は「東アジアではミサイル、テロの攻撃があり得る。緊張感はかなり高い」として、再度答弁を求めた。首相は「備えることは必要との観点からの質問と思うが、備えあれば憂いなしは大きな政治の任務。民主党からいい提案があれば、議論していく」と答えた。

 さらに岡田議員は「必要以上に国民の権利を侵害してはいけない」とし、国と国民の関係について「国家権力と国民の関係をどう認識しているのか。時として、国家権力は国民の権利を侵害するものという認識が薄いのでは」と追及した。首相は「国家は国民のためのものであり、国民も国家あってのもの。権利を保護するものが国家」と答えた。

 さらに岡田議員は、法案における「武力攻撃のおそれがある場合」と「予測されるにいたった事態」との違いを質したが、中谷防衛長官は明確に答えず、具体的例示を含めて理事会で協議することになった。


玄葉議員、武力攻撃事態における米軍支援のあり方質す(民主党ニュース)

 7日、衆議院の武力攻撃事態への対処に関する特別委員会において、民主党の岡田議員に続いて質問に立った玄葉光一郎議員は、武力攻撃事態対処法案における「武力攻撃事態」の規定のあいまいさなどについて、政府の見解を質した。

 玄葉議員は冒頭、昨年12月に奄美大島沖で海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末に沈没した不審船事件で、首相官邸が当初、同船を「中国の密輸船」と判断していたことを例に挙げ、「内閣によって情報収集・分析が的確に行われなければ、武力攻撃事態への的確な対処も事前の予防もできないが、現状はまったくお粗末」と批判。

 また、「情報の漏洩が米国など各国との安全保障上の情報交換などの障害になっている。私は国民の『知る権利』を保障するという観点から政府の個人情報保護法案には反対の立場だし、情報公開法の機密の範囲はもっと限定すべきと考えるが、本当に限定された機密は守られなければならない。政府の情報体制のあり方について認識を改めて欲しい」と表明した。小泉首相は「いかに国内外情勢を的確に把握し人員を的確に配置していくか、限度というものはないが、できるだけの体制をとって誤りのない対応をしたい」「機密情報かどうかの線引きはなかなか難しい」などと述べるにとどまった。

 続いて玄葉議員は、武力攻撃事態対処法案の規定する「武力攻撃事態」すなわち「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」が、周辺事態法1条の定める「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」とどこまで重なり合うのか、両法の規定する事態が併存する場合があるのかと質した。

 玄葉議員は、周辺事態法に関する政府統一見解で示された(1)日本周辺地域で武力紛争の発生が差し迫っている(2)日本周辺地域で武力紛争が発生している(3)日本周辺地域での武力紛争が一応停止したが、秩序の回復・維持が達成されていない(4)ある国で内乱、内戦などの事態が発生し、純然たる国内問題にとどまらず、国際的に拡大している(5)ある国の政治体制の混乱などにより、大量の避難民が日本に流入する可能性が高まっている(6)ある国の行動が平和に対する脅威などと決定され、国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となる──の6類型のそれぞれに即して明らかにするよう求めたが、中谷防衛庁長官は、「6つのケースすべて、状況によっては武力攻撃事態に該当する可能性がある。状況の推移を注視しなければならない」との答弁に終始。玄葉議員は、「これでは、武力攻撃事態の範囲がきわめて広がってしまうのではないか」と中谷答弁を批判した。

 玄葉議員はまた、「周辺事態」と「武力攻撃事態」が併存する場合に、米軍に対する武器・弾薬の提供などの支援をどのように行うのか質した。川口外相は、武力攻撃事態における米軍支援の具体的あり方については「これから検討する」との答弁にとどまった。玄葉議員が「日本の自衛権の行使にあたる場合でも武器・弾薬の提供はこれから検討するのか」と重ねて質すと、川口外相は「自衛権行使の範囲でできると思うが、法整備はこれから」と繰り返した。

 玄葉議員が「仮に朝鮮半島で武力紛争が起きてしまい、これが周辺事態・武力攻撃事態の併存事態と認定された場合に、米軍は日本の提供する武器・弾薬を朝鮮半島で使用できるのか」と質すと、中谷防衛庁長官は「一概には言えないが、他の地域での周辺事態には使用できない。区分して支援を行う」と答弁。玄葉議員は「虚構の議論だ。オペレーション上は法律の使い分けは全くナンセンス」と切り返した。

 玄葉議員はさらに、法案5条、7条で住民の生命・身体・財産の保護に関する措置の実施についての地方自治体の責務、国との役割分担が規定されていることに関して「具体的なことは何も書かれていない。自治体は何を求められるのか」と質した。片山総務相は「今後の個別法制の整備の中で、例えば警報発令、被災者救助、避難の誘導など、地方公共団体の意向を十分に体して法整備を行いたい」と答弁したが、玄葉議員は「国民にとって最も重要な避難誘導などが今回提出された法案から抜け落ちているのは問題。最近危惧されているサイバーテロへの対応もない。本来はこれらを一緒にそろえて法案提出すべきだった」と政府の拙速な法案提出を強く批判した。

 最後に玄葉議員は、「泥沼化を防ぐため、対処措置の終了について、その判断にぜひ国会が関与できるようにすべきだ。国会が意思表示したらそれを政府は尊重するのか」と質した。福田官房長官は「事態が終了し、一連の対処を継続する必要がなくなった場合には国会に報告する。その際に国会の意思表示があれば尊重する」と答えた。玄葉議員は「国会が(対処を終了すべきと)意思表示した場合には、これを尊重するのか」と重ねて質したが、官房長官は同じ答弁を繰り返すにとどまった。玄葉議員は「米国の法律でも連邦議会が決議すれば対処をやめなければならないこととなっている。本来そうあるべきもの」と述べて質問を締めくくった。


平成十四年五月七日(火曜日)

瓦委員長 次に、岡田克也君。
岡田委員 民主党の岡田克也です。
 まず、本題に入る前に、総理に少しお聞きをしておきたいと思います。
 連休中にいろいろな事件が起きました。とりわけ、参議院の前議長の秘書が逮捕され、議長自身も議員辞職を表明するということになりました。あるいは、衆議院の前議運委員長である鈴木宗男氏の秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、こういうことも発生をいたしました。
 いずれも国会に対する国民の信頼を大きく損なうもので大変な事件だ、こういうふうに考えておりますが、総理として、この二つの事件についてどういうふうにお感じになり、そして対応しようとしているのか、御見解をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 政治の不祥事、いわゆる政治家にまつわる不祥事に対しまして、国民の信頼を大きく損なうものだと憂慮しております。
 この問題について、このような不祥事を起こさないような対応策はどういうものが必要か、また、現行法についての改善策はどういうものが必要かということにつきまして、真剣に今、自民党におきましても与党内においても協議をしているところであり、今国会において、このような不祥事を反省しつつ、再発防止のためにどういう体制がいいかということについて、今まで以上の、一段の改善策が必要であると思っております。
岡田委員 とりわけ鈴木宗男氏の件でありますけれども、公設秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、そういう事態になりました。連休中には、与党の中からも、鈴木氏は議員辞任をすべきであるという声も出ております。
 鈴木氏は、言うまでもなく自民党の議員であり、総理は自民党の総裁でもあります。(発言する者あり)今は違うと言われるかもしれませんが、事件を起こしたときは、明らかに自民党の議員として起こしております。その鈴木宗男氏に対して、この際、議員辞任を求めるそのリーダーシップを総理は発揮すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 本来、自身の出処進退については本人が決めるべき問題だと、私は今でも思っております。そういう観点から、この問題について、私も、いろいろな状況を勘案しながら、鈴木氏本人が決めるべき問題であると。
 国会でも、今後、新たな公設秘書の逮捕という問題が出てきて議論されていると思いますが、私は、そういう点についてよく議論をしていただきたいと。私自身もこの問題については大変大きな関心を持っておりますし、私は、そういう点から、御本人がしかるべき判断をされるのではないかと思っております。
岡田委員 議員の身分というのはいろいろ保護されていますから、最後は本人がやめると言わない限り、これは身分は保持されます。しかし、それに対してどう思うかという、そういう、我々同じ国会の議員として、あるいは日本国総理大臣としての考え方を示すということは、これはできるわけであります。
 今の総理の御答弁を見ていると、最後はそれは議員が決めることだと。当たり前です、そういうふうになっているんですから。しかし、総理はどうお考えかということをお聞きしたいわけであります。
小泉内閣総理大臣 私は再三再四言っているんです、国民から選ばれた議員が自分の出処進退を判断できないはずがないと。
岡田委員 判断は、それは人間ですから、どちらかにしろするでしょう。しかし、総理はこの事件についてどう考え、鈴木氏の出処進退についてどうあるべきだというふうに考えるかをお聞きしているわけです。
小泉内閣総理大臣 本人が判断すべきなんです。
岡田委員 総理がこの鈴木宗男氏の事件について深刻に受けとめていない、かばおうとしているという印象を受けたことは――もしそうでないなら、はっきり言われたらどうですか、いかがですか。そうでないというなら、はっきりおっしゃってください。
小泉内閣総理大臣 真剣に考えているから言っているんです。議員たる者、国民から選ばれたその責務を持っているなら、自分で判断すべきなんです。当たり前のことじゃないですか。
岡田委員 それじゃ、今申し上げたこの二つの事件に加えて、加藤元自民党幹事長の事件もありました。政治と金の問題が大変大きな議論になっているわけであります。このことについて、国会としてしっかり対応していかなきゃいけないという問題だと思います。
 我々野党四党は、既に、政治資金規正法の改正を初めとする法律案を、衆議院の法制局と調整が終わりまして、そして、この連休明けの国会に提出をすることにしております。
 その中には、総理御自身も問題があるとかつて言われた話、例えば、政党支部をどんどんどんどんつくって、献金の上限や下限をつくってもそれが意味のないものにしてしまう。自民党は六千の政党支部があると言われています。そういうことに対して規制をすることでありますとか、あるいは、インターネットで政治資金収支報告をきちんと出して、そしてきちんとチェックできるようにする話でありますとか、それから、公共事業を受注している企業からの献金を制限する話でありますとか、そういうことが含まれているわけであります。
 いずれも、総理がかつてそういうものが必要だということをおっしゃりかけた話でもありますし、私は、中身は極めて合理的なものだ、こういうふうに思いますが、我々がそういう法案を出したときに、総理としてはそれについて賛成をしていただけますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 そういう問題点があることは、私も認識しております。そういう点も含めて、今、自民党初め与党で協議をしてもらって、一段の改善策を講じるように指示しております。
岡田委員 私は平成二年の初当選でありますが、我々は、リクルート事件ということをきっかけにして、そして政治の改革を訴えて、当時の、私は自民党でありましたが、自民党も社会党も多くの新人議員が当選をいたしました。そして、いろいろな政治改革の議論をしてまいりましたし、政治資金規正法の改正もしてまいりましたが、今思うと、一体何をしてきたのか、一体どこにそれだけの成果が上がったのかという、残念ながらそういうことを思わざるを得ないわけであります。
 我々が出しております先ほどの政治資金規正法の改正案、それから、あっせん利得処罰法の強化法案、あるいは、今回の先ほど言った三つの事件はいずれも談合に関するもので、それに対する口ききビジネス、こういうことがもし全国で起こっているとすれば、大変な税金のむだ遣いであり、とんでもないことだと思うわけで、そういう意味で、談合をいかに防止していくかということについても我々は法案を持っておりますが、そういうことについて、今、与党の中で検討だとおっしゃいましたが、会期もありますから、早く検討していただいてしっかり国会の場で議論していく、そういうお覚悟をぜひ聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 前から申し上げていますように、今言った点も含めまして、与党、野党、いろいろな問題点を指摘されております。今国会中に、この不祥事再発防止のために一段の改善策を講じていきたいと思います。
岡田委員 これは自民党の危機であるとともに政治の危機でもある、そういうふうに思います。ぜひ国民からしっかり政治の信頼を取り戻すように自民党も危機感を持って考えていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。
 それでは、法案について幾つか聞いていきたいと思います。
 先ほど総理の方から、あるいは官房長官の方からいろいろな答弁が示されましたが、ちょっと確認をしておきたいと思います。
 まず、今、我が国を取り巻く国際情勢の問題でありますが、例えば、ミサイルによる攻撃でありますとかあるいは大規模テロということが我が国に起こり得るというふうにお考えでしょうか、それとも、そういうことはないんだというふうにお考えでしょうか、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 何が起こるかわからない。予測し得ないことが起こる。これは起きない、これは起こる、予測し得ないことが起こるということも予測しなきゃならないのが現在の状況ではないかと思っております。
岡田委員 私はもう少し危機感を持っているわけですね。そういう一般的な話ではなくて、ミサイル攻撃やテロなどはかなり、かなりと言うと言い過ぎかもしれませんが、しかし、世界的な目で見たときに、やはり東アジアはかなり緊張感が高い地域である、そういう認識は持ってないといけないんじゃないか、そういうことをまず申し上げておきたいと思います。
 その上で、今回、この法案といいますか、有事法制全般というふうにまずは申し上げておきたいと思いますが、この具体的な今回出されたものではなくて、有事法制の整備についていろいろな議論があります。例えば、具体的な危険がないからそういう整備は必要がない、こういう意見があります。それについては、私が先ほど申し上げたようなことでお答えをしたいと思いますけれども、総理は、この具体的な危険がないから法案整備がないという考え方について、基本的にどういうふうにお答えになるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、今岡田議員が質問の前に言われたことについて、やはり野党第一党として責任ある立場に立ってこの議論をしようという姿勢をうかがうことができたと思うんです。
 当然、何が起こるかわからない、それに対して備えるということは必要だという観点からの御質問だと思うんですが、私は、冷戦が終わって、もう武力攻撃は起こらないんだというような観点からこの法案を見ている方もいるのも承知しております。
 しかし、どのような時代におきましても、緊急事態あるいは一朝事があったときにどういう備えをしておくかという、いわば備えあれば憂いなしということについては政治の大きな責務ではないかと思っておりますし、その点は、むしろそういう議論をされると水かけ論になっちゃうんじゃないか。武力攻撃なんか起こらないんだ、日本は平和なんだ、日本を武力攻撃する意図を持っている国とかグループはないんだと言われちゃうと、そうじゃない、ああじゃないといって、これはもう水かけ論になっちゃうと思うんで、そういう議論は、私は本当は、政権をとろう、一国の責任を担おうという政党であれば、そういう考えはとり得ないのではないかと思っております。
 ですから、この問題については、備えあれば憂いなしという観点から、いろいろ建設的な議論を進めていきたい、民主党からもいい提案があれば、私はよく検討したいと思っております。
岡田委員 冷戦が終わって、具体的な危険が今はもうないんだ、だから、こういう有事法制、有事に備える法制というのは基本的に必要ないんだ、そういう意見がありますが、私は、そういうことを言う人が、では、冷戦期には、いや、ソ連が攻めてくることなんかあり得ないんだ、だから、そもそも日本は自衛隊も要らないし、非武装でいくんだ、そういうふうに同じ人が言っていたような気もするわけですね。
 だから、それはやや無責任じゃないか、私はそういう気はするわけであります。やはり、そこは、少しでも可能性があるんなら、そのときに備えてしっかり対応しておくということは、これは政治の基本的な責任である、そういうふうに考えております。
 我々は、同時に、なぜこの有事法制が一般的に必要だというふうに考えているか。その備えの問題と、しかし同時に、いざそういう武力行使事態があって自衛隊が動くときに、それが国民の権利の制限につながるという側面は、これは入ってきます。しかし、そのときに、それが必要以上に国民の権利を制限することになったら大変だ。そういう意味でも、あらかじめきちんとルールをつくっておくことが法治国家として当然ではないか、そういうふうに考えているわけですが、総理も、そこのところのお考えはいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、岡田議員の今の指摘、全く同感なんです。こういう議論がなされてこそ、野党としても責任ある、これから政権を担おうとする意欲を感じられる。私は、このような議論がなされることにより、できれば、有事法制というのは、本来、与党と野党第一党が対立する問題じゃない。お互い、これからの日本の独立国としての体制をどう備えをしていくかという件については、今のような議論をしていただくならば建設的な議論ができるのではないかと期待しております。
岡田委員 入り口の議論はそういうことで、今私が申し上げたとおりなんですけれども、その上で、我々民主党の基本的立場として、一般論として緊急事態に備えた法制が要るということは党としてしっかり確認をしているということをまず申し上げた上で、しかし、今回の法案についていろいろ問題があります。そういうことについて具体的にこれから議論していきたい、そういうふうに思っております。
 そこで、まず、法案の個々の中身に入る前に、総理の基本姿勢についてお伺いしたいと思うんですが、総理は、国家権力と国民あるいは個人との関係というものを一体どういうふうに認識しておられるのか。どうも、個人情報保護法もそうなんですけれども、今回の有事法制を見ても、国家権力というものが時として個人の、国民の権利を侵害する、そういう非常に危うさ、危険を持っているものだという認識がやや薄いんじゃないか、そういう印象を受けるわけですが、基本的にこの国家権力と個人、国民との緊張関係ということについてどのような認識でしょうか。
小泉内閣総理大臣 国家は国民のためのものであり、国民も国家あっての国民であるというお互いの協調関係、責任関係を持っていい国をつくり上げていこうということが大事だと思います。
 ある国家においては、国家の権力を背景に国民を苦しめている、あるいは権利を奪っている国もなきにしもあらずであります。専制と隷従、これが国家権力によって圧迫されていると感ずる国民も世界の中ではかなりいるでしょう。私は、そういう面において、国家は国民あってのものである。国民の基本的な人権というものを保護することが国家として重要である。
 また、その国民の基本的人権を破壊しようという組織なりグループに対しては、国家権力をもって排除して国民を守らなきゃならない。国民の基本的人権を守らなきゃならない。こういうことを考えますと、この国家権力の行使というものに当たっては、多くの国民の基本的人権を守るんだというこの観念を常に持たなくてはいけないと思っております。
岡田委員 総理のお考えはわかりますが、外部から、あるいは第三者が国民の権利を侵害しようとするときに、国家がそれを守る責任がある、当然のことであります。
 私が申し上げたのは、その国家自身が国民の権利を侵害するということは往々にして起こる。そもそも憲法というのは、これは国家と国民の関係を規定しているわけで、例えば基本的人権を保護する、これは国家権力が個人の基本的人権を侵害しないように憲法の規定がもともとは置かれている、そういう歴史的経緯があるわけですね。そこのところについての総理の認識をぜひお聞きしたいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 今、重複するかもしれませんが、基本的人権を守る、これは憲法にも国家としての責務として規定されているわけでありますが、同時に、国民の中には、その国民の基本的人権をじゅうりんするという勢力も一部には否定できないわけであります。そういうことに対して、国家としても、多くの国民の基本的人権を守るために国家権力を行使しなきゃならない場合もあるわけであります。その点をどう考えるか。
 いわば、日本国民としては、さまざまな基本的人権をいかに国家として守っていくか、これが重要でありまして、今回の有事法制につきましても、いわば国民の生命財産、これをいかに守るかという観点から考えているのでありまして、これを基本に考え、国家の独立と尊厳、そして武力攻撃が起こった場合には国民の基本的人権が破壊される面が多々出てくるわけでありますから、これに対してどのような国民の基本的人権、生命財産を守る体制をつくっていくかということは、まさに国家として最大の責務ではないかと思っております。
岡田委員 どうも議論がかみ合っていないように思うんですが。
 私は、やはり国家の権力行使に対する謙虚さといいますか注意深さというものをちゃんと政府は持つべきだというふうに思うんですね。例えば、あの民主主義国家であるアメリカ合衆国でも、過去にはマッカーシー旋風などというのも起こりました。やはり、個人の権利を、きちんとしたいろいろな憲法や法律を持っている民主主義国家ですら不当に侵害するということは常に起こり得ることである。そのことに対してきちんと手当てをしておかなければいけない。
 そういう視点でこの有事法制についての議論も進めていかないと、総理がおっしゃるように、攻められたときに日本の国民の生命財産を効率的に自衛隊が守っていかなきゃいけない、それはそのとおりであります。しかし、その面だけで考えていくと、私は絶対に誤ると。そういう面と、しかし、武装集団である自衛隊が、一つの国家権力の塊が個人の権利を侵害してしまう、不当に侵害してしまう、そういうことのないように両面からきちっと見てバランスをとっていかないといけない。そういう視点がないと、私はこの有事法制についての議論は間違うと思うわけですが、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 その両面の視点が大事だと思っております。
岡田委員 そういう意味で、若干最近気になることがありますので、お聞きしたいと思います。
 まず、この法案そのものとは離れるわけでありますが、不審船の問題で、これにどう対応するかという議論が行われている中で、先般の防衛庁長官の記者会見などを見ますと、不審船対応で海上保安庁が一義的に対応することに法律上はなっておりますが、自衛隊はどうするのかという議論のときに、準備行動という名のもとに自衛艦をその現場に早く派遣しておくという話が進んでいるようでありますが、これは事実なんでしょうか。記者会見の中ではそういうふうに防衛庁長官はお述べになっているようですが。そして、そのことが問題がないというふうにお考えなんでしょうか。
中谷国務大臣 昨年末の九州の南西海域における不審船の事案の事例を振り返りまして、防衛庁並びに海上保安庁等でその対処についての検討を行いました。そして、その教訓を生かして、やはり当初から、武装工作船の可能性の高い不審船については不測の事態に備えて、政府の方針として当初から自衛隊の艦艇を派遣するというふうに取り決めというか、したわけでございます。
 これは、海上警備行動の発令によって海上自衛隊の対処が行われるわけでありますけれども、九州南西海域の事案に見られるように、その地点に行くまでに半日ないし数時間かかるわけです。基地においてその海上警備行動の発令を待って出るとなりますと、もう事態が大変な事態に発展する可能性もありまして、速やかに対処に移れるためには、その近傍海域まで所要の準備をして待機し、そして、その時点においては、内閣総理大臣の命によりまして海上警備行動に移れる方が対処がより確実に行われるという観点から、この海上警備行動の発令が必要になった事態に至った場合に自衛隊が迅速かつ適切に対処できるようにあらかじめ備えるために措置をするわけでございます。
 この措置につきましては、その準備時点におきましては公権力の行使を行うものではないし、こうした準備が行われることが、海上警備行動が自衛隊法の八十二条で定められている以上、当然のことであって、この条以外の特段の法律上の規定が必要であるというふうには考えていないわけでございます。
岡田委員 その際、だれが命令をするんですか。そして、その法律的な根拠はどこにあるんですか。
中谷国務大臣 防衛庁長官がこれを命じるわけでございます。
 この例としましては邦人救出の例がございまして、かつて、インドネシア等で治安が悪化したために邦人が国の離脱をする必要の際に、やはり邦人救出の一環として近傍において自衛隊機が待機をいたしましたけれども、この際もそのような措置をとったわけでございます。
岡田委員 今、法律的な根拠についてはお話をいただけなかったわけでありますが。
 こういうふうにしてどんどん拡大をしていくわけですね。私はインドネシアのときも問題だというふうに申し上げたんです。今回は、特に問題になるのは、フル装備していくわけでしょう。不審船に対処できるように武装して出すわけですよ。そして法律の根拠がない。長官命令だとおっしゃられますけれども、長官が命令するという規定は法律上ないはずです、準備行為について。本来、海上警備行動であれば長官が総理大臣の承認を得た上で発動する。その前段階だと言いますけれども、現場にそういった武装したフル装備の自衛隊を出す、この場合船ですが、ということについて事実上ノーチェックじゃないですか。そういう形でどんどん法律を超えて拡大をしていくということが非常に問題があるというふうに私は申し上げるわけです。必要性は私も認めないわけでありません。しかし、法律の根拠がなく、解釈でやっていくというやり方には非常に違和感を感じる、そのことを申し上げておきたいと思います。
 もう一つ申し上げます。きのうの朝日新聞の一面トップであります。
 新聞をお読みでない方もいらっしゃるかもしれませんが、今のテロ特措法に基づく海上自衛隊の派遣について、今回、イージス艦の派遣、それからP3C哨戒機の派遣について、海上自衛隊の幹部が米軍に対して、そういうことをした方がいいという働きかけをした、そういう記事であります。
 これは事実なんでしょうか。
中谷国務大臣 私も昨日の朝刊を見まして、その事実を読みました。この事実につきまして、早速、在日米海軍、また海幕の担当者、本人ですけれども、に直接事情を聞きましたところ、四月十日にチャップリン在日米海軍司令官と会談をしたことは事実でありますし、これは月に数度そのような会合は行っております。報道にあるように、米側から海上自衛隊のイージス艦とかP3Cをインド洋に派遣することを要請するというふうに働きかけをしたということはないということで事実を確認いたしました。米側にも確認をいたしました。
 よって、その内容につきましては事実と反する報道でありますので、その新聞を報道した新聞社に対して抗議を行ったところでございます。
岡田委員 今、事実に反する報道だと明確に言われました。もしこれが事実であれば、長官は責任をとらなければいけませんよ。このことが事実であったとすれば、あるいはこれに近いことがあったとすれば、私は非常に大きな問題があると思うんですね。
 まず、官房長官は、イラクに対する米軍の攻撃があった場合に今のテロ特措法の中でそれができるかどうか、基本的には、今の法律の中ではできないという趣旨のことを言われていると思うんですね。それをいわば、しかし先取りする形で、イージス艦やP3Cを出すということは、これはイラク以外に考えられないわけですね。もうアフガンの話はほとんど終わりつつあるわけで、今さら新しい、そういう高性能な艦船や飛行機を出す意味はないわけですから。そういう意味で、政府が慎重に決めなければいけない政治的な問題について海上自衛隊がそれを先取りをした、あるいはこれは国会が承認をする話、それについて現場が独走した。
 ですから、もしこれが事実だとすれば、これは大変大きな問題である、これは内閣そのものを揺るがすような問題だというふうに思いますが、総理、総理もこれは事実に反するということで明言されますか。
小泉内閣総理大臣 今、新聞の記事に基づいて質問されていると思うんですが、その新聞の記事の事実はないと言っているんです。これからの問題は、状況判断しながら適切に判断したいと思います。
岡田委員 それでは、新聞の記事については事実に反する、そういうふうに総理からも述べられたと理解します。
 それでは具体的な、中の法案について入っていきたいと思いますが、まず、この法案の中で、非常にわかりにくい法案なんですが、外部からの「武力攻撃のおそれのある場合」と「予測されるに至った事態」、そういう言葉が使われているわけですが、それぞれについて、ちょっと具体的に、違いがわかるように中身を述べていただけませんか。
中谷国務大臣 この法案における武力攻撃のおそれのある場合と予測される場合の違い、これにつきましては、武力攻撃のおそれのある事態というのは、現行の自衛隊法の七十六条に防衛出動下令の規定がありますけれども、これと同じでございます。武力攻撃のおそれのある場合において防衛出動ができるという場合でございます。すなわち、この時点における国際情勢や相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものでございます。
 これに対して、事態が緊迫をして武力攻撃が予測されるに至った事態というのは、自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令等を下令し得る事態です。すなわち、その時点における我が国を取り巻く国際情勢などから防衛出動命令が発せられることが予測をされる事態と同様でございまして、この区分につきましては、現行の自衛隊法と同じ事態が書かれているというふうに御理解していただいて結構でございます。
岡田委員 今の予測されるに至った事態の御説明が非常にわかりにくかったんですね。予測される事態ということを説明されるのに予測される事態という言葉を使っておられて、いわば同義反復というか、全く定義したことになっていないと思うんですが、もう一回言っていただけませんか。
中谷国務大臣 ここで言う「武力攻撃が予測されるに至った事態」というのは、防衛出動が予測される事態と同じでございます。
岡田委員 それでは、防衛出動が予測される事態というのは一体何ですか。
中谷国務大臣 武力攻撃が発生することが予測される事態でありまして、で、その予測というのは、国の危機管理で、この内閣としても、また国会としても、自衛隊の出動、すなわち防衛出動が必要であるということを決断する前の段階です。
岡田委員 ちょっと、私もある程度何を聞くか、少しは事前にも述べていたつもりですし、余りにもお粗末な答弁じゃないですか、今のは。何も語っていないに等しいと思いますよ。こんなことじゃ、これは議論する意味ないじゃないですか。もっと明確に述べてください。
中谷国務大臣 武力攻撃というのはいろいろな事態がありまして、いわゆる着上陸の事態だとか、またテロとかゲリラとかそういう事態が国内で発生して、武力攻撃の条件に該当する場合がございます。この際は自衛隊が出動して武力行使ができるという規定がありますけれども、その事態からおそれのある事態に防衛出動をかけられるということであります。
 その防衛出動をかける前の段階に、ある程度、自衛隊の待機命令をかけて、予備自衛官の招集とか事前の陣地の構築とか、それの準備をする必要がありますけれども、いわゆるその準備に着手する際に、今回、国会承認とかの手続を設けたわけでありますけれども、いわゆる防衛出動を下令する前の準備行為を開始する時点が、予測される事態ということであります。
岡田委員 今長官が言われた、待機命令をかけるとか、あるいは予備自衛官の招集をかけるとか、陣地をつくるとか、それは、このおそれが予測される事態の中で何ができるかというその中身なんですよ。その中身を使ってこの予測される事態を説明するということは、説明したことに全くなっていないんですよね。もっときちんと説明していただけませんか。
中谷国務大臣 防衛出動をするかどうかというのは非常に大きな問題で、国家の意思が働くわけでありますけれども、その防衛出動をかける前の段階の準備の段階で、その時点で防衛出動がかかったら速やかに自衛隊が行動できるために、あらかじめ予備自衛官を招集したり、また陣地構築をしたり、また待機命令をかけたり、その準備の作業というものはどうしても必要ではあります。その準備に着手してもいいかどうか、これも国家の意思にかからしめるわけでありまして、その準備行為を始める段階でございます。
岡田委員 私は、従来の自衛隊法に言う予測される事態であれば、また、待機命令をかけたり予備自衛官の招集をするということで法律効果も限られていますから、今のような説明でも通ってきたのかもしれませんが、今回、陣地構築、外に出ていくわけです、自衛隊が。外というのは、基地の外に出ていく、一般市民と接するという意味ですね。そういう新しい効果を認めるのであれば、やはり定義はもっとかちっと客観的にしておかなければいけないんじゃないか、そういう問題意識で申し上げているんです。
 今の答弁は、全く答えになっていないじゃないですか。もう一回答弁されますか。
中谷国務大臣 現行の自衛隊法でも、防衛出動の待機命令という規定がありまして、その時点において待機命令をするわけでありますが、今回の法律は、それをより厳格、明確にして、閣議の決定や国会の承認を必要としたものであります。
 で、どういう事態かということでありますけれども、事態というものはもう千差万別でございます。いろいろと、航空攻撃の侵攻とか海上の侵攻とか陸上の侵攻、また弾道ミサイル、同時多発テロ、ゲリラ、これらの組み合わせ等がありますし、また、大規模であるのか小規模であるのか、また、国なのか国に準じるものなのか、広範囲、限定かという場合もありますし、予測される場合もあれば、予測されずにいきなりする場合もあるわけです。
 ですから、どういう事態かということを明確に言葉で言うのは難しいわけでありますが、一般的に申しますと、予測される事態というのは、自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令を下令し得る事態でありまして、事態が緊迫して防衛出動が発せられることが予想される場合と同様であります。
 すなわち、防衛出動命令より時期的には前の段階ですね。その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされ、我が国へ武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態を指すものでございます。
岡田委員 これは全く答弁になっておりません。政府としてのこの予測される事態についての定義の明確化、そして具体的な事例の例示、これをこの委員会にしっかり示されるということを委員長に求めたいと思います。
瓦委員長 後ほど、理事会におきまして協議をいたします。
中谷国務大臣 この定義というのは、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされ、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態でございます。
岡田委員 今委員長に求めましたので、理事会でぜひ協議をしていただきたいと思います。
 では、先ほど長官の答弁を聞いていてこれもよくわからなかったんですが、例えばテロとかミサイル攻撃というのは外部からの武力攻撃に当たるんですか、当たらない場合もあるんですか、どうなんでしょうか。
中谷国務大臣 世界で起きている武力攻撃の事態というのは千差万別でありまして、一概に言えないものであります。一般的に武力攻撃というのは国家の主権、国民の生命財産に大きな影響を及ぼす事態でありまして、いかなる事態にも備えることが大切でありますが、我が国としては、武力攻撃事態の認定につきましては、従来からと同じでありまして、いわゆる自衛権の発動の三要件に該当するものであるのか、すなわち、計画的、組織的なものによる武力侵攻であるかどうかというような点を勘案して認定をするわけでございます。
岡田委員 私は、自衛隊法七十六条の規定と、今回の法制の中に、基本的にこれは同じだという説明を政府の側はされていると思うんですが、違うんじゃないかというふうに思うんですね。つまり、自衛隊法七十六条は、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛する必要があると認めるときには防衛出動を命ずることができる、「わが国を防衛するため必要があると認める」ときはというのが入っているわけですね。しかし、今度の法案はそういうのは入っていないわけですよ。そこは違うと思うんですよね。同じじゃないと思うんですが、ここをどういうふうに説明されるんですか。
 今の説明でいくと、そうすると、我が国としては、我が国を防衛するために必要があるというふうに認めないときも、この新しい法案には乗っかって対処基本方針をつくったりするということになるわけでしょうか。
中谷国務大臣 委員がお話ししたとおり、自衛隊法の七十六条の一項には、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」防衛出動を命ずることができるというふうになっておりまして、この「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」との規定は、外部からの武力攻撃が発生した場合において、例えば外交努力などその他の手段を尽くしても外部からの武力攻撃を中止させることができないといったふうに、我が国を防衛するためには自衛隊の出動が必要であると内閣総理大臣が判断した場合に、必要な手続を経た上で自衛隊にその出動が命ぜられるという趣旨でございます。
岡田委員 私の質問に答えていただきたいんですが、今回の法案は、そういう必要があると認めるときという規定を入れていませんから、そうすると、外部から武力攻撃があれば自動的にこの対処基本方針というのをおつくりになる、こういうことですか。
中谷国務大臣 今度の対処法におきましては、自衛隊の出動ができるという手続を定めているものでありまして、この趣旨等につきましては、自衛隊法の中の七十六条に、岡田委員が述べられたように、「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」というその趣旨が残っているわけでございます。
岡田委員 質問に全くお答えいただいていないと思うんですが、外部からの武力攻撃がありました、そのときに、では、対処基本方針はこの法律に基づいてつくる、何も条件はつけていませんから、外部からの武力攻撃があったときにはつくるというふうに書いてあります。対処基本方針はつくるんだけれども自衛隊の防衛出動はしないことがある、こういうことですか。そういうことを想定しているわけですか。
中谷国務大臣 対処基本方針をつくっても防衛出動が行われないということはあり得るわけでございます。
岡田委員 そうしますと、しかし、自衛隊を出すということについて、やはり非常に慎重な手続も要るし、あるいは自衛隊も効率的に動かなきゃいけないということでこの法案をそもそも目指したんじゃないんですか。
 防衛出動がないということについてもこの法案が適用されるということになると、先ほどの外部からの武力攻撃についての定義も余り明確ではなかったんですけれども、非常に抽象的な状況の中でこの法案が適用される、入り口が非常に不明確だということになりませんか。
中谷国務大臣 自衛隊法の七十六条には、「必要があると認める場合」というのが残っておりまして、その場合に命令をできるということになります。そして、その認定をするかどうかということで、防衛出動を命じる時期と武力攻撃事態対処法における「おそれのある場合」の認定の時期が一致しないというのもあり得るわけでありますし、また、自衛隊の対処措置だけではなくて、武力攻撃事態の対処につきましては、武力攻撃の発生を回避するための外交上の措置、国民の被害を防止するための警報発令等の措置等が武力攻撃事態の認定とともに迅速に実施されることが重要でありまして、このため、武力攻撃事態に至ったときは、防衛出動命令等の必要性のいかんにかかわらず、これらの対処措置をとり得るようにするために、対処基本方針を定めるということにしたわけでございます。
岡田委員 ですから、そもそも、政府としては防衛出動をする必要がないというふうに認める場合でも必ずこの対処方針をつくらなければいけないというこの法律構成に、私は非常に問題があるということを申し上げているわけです。きょうはこの辺にしておきます。
 それから、終わった後の話もあるんですよね。対処措置実施の必要がなくなったと総理が認める場合に、この基本方針を廃止するということですが、総理が認めるというのも非常に抽象的なところで、私は、こういう国民の権利を制限するような、権利を制限するような法案ですから、初めと終わりがしっかりしてなきゃいけない。いつまでもだらだら続いて、相手からの武力攻撃が終わったにもかかわらずこういった特別な権利関係が続くということは、ある意味で非常に危険なことだ、そういうふうに考えるわけですが、ここはもう少し客観的に書けないんでしょうか。総理が認めるというのは、私は極めて恣意的だと思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 武力攻撃事態におきまして、その事態の態様に応じて、自衛隊の防衛出動とか、被災者の救助、被害の応急復旧などさまざまな対処措置が実施される、そういうことが想定されるわけでございます。
 したがいまして、対処措置の必要がなくなったときというのは、例えば、防衛出動の終了をもって対処措置が終了する場合とか、それから、防衛出動の必要はなくなったけれども、引き続き被災者の救助が必要であるというような場合とか、また、武力攻撃事態の態様によってさまざま考えられるわけでございます。ですから、そういう時点において個別具体的な判断をしなければいけないというように考えているわけであります。
岡田委員 私は、防衛出動の行われているそういう状況と、そして、外部からの武力攻撃が終わって、しかしまだ、今おっしゃったような、被害の復旧とかあるいは被災者の救助を続けなければいけない事態と、かなり質的に違うんだろうというふうに思うんですね。
 今、後者の場合というのは、これは災害における対応とよく似たということだと思うんですね。それはやはり、法律の中でもそういう二段階設けておかないと、ある意味では、いつまでも武装した自衛隊がずっといるとか、そういうことにもなりかねないわけで、ここはもう少し私は一工夫を要する、こういうふうに思うんですが、そういう検討はされなかったんでしょうか。
中谷国務大臣 これは自衛隊法をお読みいただきたいと思いますけれども、防衛出動の終了要件としましては、現行の自衛隊法の七十六条三項におきまして、内閣総理大臣は、国会の不承認の議決があった場合、または出動の必要がなくなった場合に、防衛出動を命じた自衛隊の撤収を命じなければならないとされております。
 一方で、今回の三法案におきまして、このような自衛隊の撤収を命じなければならない要件について、武力攻撃事態対処法第九条第十項の規定において国会の不承認の議決があった場合を、改正自衛隊法案第七十六条第二項規定において出動の必要がなくなった場合を明記したところでございます。
 こういった改正を踏まえまして、議員御指摘の出動の必要がなくなったときについて申し上げれば、改正自衛隊法第七十六条二項に規定する「出動の必要がなくなつたとき」とは、現行の第七十六条三項に規定するものと同じ意味でありまして、防衛出動の趣旨にかんがみますれば、武力攻撃が終局、発生せず、そのおそれもなくなった場合や、武力攻撃が完全に排除されるに至った場合を指すものでございます。
 このように、「出動の必要がなくなつたとき」との規定は明確な意味を有するわけでありまして、武力攻撃事態法第九条の規定と相まって、現行の自衛隊法七十六条三項と同様な、明確な撤収要件を示していることから、政府としては、これらのほかに防衛出動の終了についての規定を自衛隊法に設ける必要はないというふうに考えております。
岡田委員 もう少し整理した上で議論した方がいいと思いますが、今のお話ですと、私の理解では、自衛隊が防衛出動をやめるということになれば、新しいこの今回の法案についての対処方針ももうそこで終わるというふうに受け取れたわけでありますが、法律上はそういうふうになっていないということであります。
 それからもう一つは、国会の不承認とおっしゃいましたが、それは最初のときの話でありまして、途中で、これは終わったから、あるいは事態が変わったからということで国会が何らかの意思表示をしてやめさせるということも、やはり私はそういう規定が要るんだろうと思うんですね。そういうことについて議論が必要だということを御指摘申し上げておきたいと思います。
 時間も限られておりますので先に参りますが、メディアの問題というのがあるんですね。この法案では、指定公共機関として、公共的機関と公益的事業を営む法人というふうに言っているわけでありますが、NHKについてはこの公共的機関の中に明示的に書いてあるわけですが、その他の新聞やテレビなどのマスコミ機関、新聞社やテレビ局、こういうものは、ここで言う公共的機関あるいは公益的事業を営む法人に入らないということは断言されますか。
福田国務大臣 法案の第二条第五項において、公共的機関として、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社及び日本放送協会、こういうふうになっておりまして、また、公益的事業を営む法人としては、電気、ガス、輸送または通信を営む事業者をそれぞれ例示をいたしております。
 実際にいかなるものを指定公共機関として政令で指定するかということにつきましては、その業務の公益性の度合いによりまして、武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえて、当該機関の意見も聞きつつ総合的に判断する、こういうことになっております。
 民間放送事業者につきましては、公益的事業を営む法人として、警報等の緊急情報の伝達のために指定される可能性はございますけれども、現時点では、その機能は公共的機関である日本放送協会を主として考えております。また、新聞社等につきましては、もし新聞社ということになれば、その性格上、警報等の緊急情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくい、こういうことで整理をいたしておるところでございます。
岡田委員 この法律上、指定公共機関というのはかなりいろいろな意味で制約がかかることになっているんですね。
 まず第六条、「指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」責任が生じるわけですよ。
 そして、十五条、対処措置の実施の指示というのがあります。総理大臣、または所管大臣を通じてその実施すべき措置を、総理大臣または所管大臣は対処措置を実施できる。つまり、機関がやらないときに自分でできるということになっているんですね。これは非常に強い規定だと私は思うんですが、そういうものについて、今の御答弁で口頭で、例えば民放やあるいは新聞社は入らないと思うとかいろいろおっしゃいましたが、やはり非常にこれは私は危険なことではないか。もっときちんと限定列挙すべきだ、もし必要があるんなら。
 今おっしゃった避難通知をする、これはやはりテレビとか、やってもらった方がいいですよね、どこどこ危ないから避難しなさい。しかし、それだけのことならそのことを法律に書いておけばいいわけです、こういうことができると。こういうふうに全体に投網をかけるような規定が置いてあると、まさしく、こういう緊急事態においてマスコミ統制をやるという根拠になるわけですね。いかがですか。
福田国務大臣 警報などの緊急情報の伝達のために放送事業者が指定公共機関に指定される、そういう可能性はあるんでありますけれども、テレビや新聞などのメディアに対しまして、報道の規制などの、言論の自由を制限するとか、そういうようなことは全く考えておりません。
岡田委員 今、平時において国会で官房長官が答弁されても、いざというときに、やはり先ほど最初に申し上げたことなんですが、権力というのは恐ろしいものなんですね。だから、いざとなればそれはいろいろなことをやる、そういうことに備えてきちんとしておくということが国会あるいは法律の役割だと私は思います。
 そういう意味で、もし、おっしゃったような警報の通知ということであれば、警報の通知についての規定をきちんとこの法律上置いておけばいいんで、そのほかのことについて一般的に投網をかけるようなやり方は、これはぜひやめるべきだと思いますが、総理大臣、いかがですか。そのぐらいの御見識ありませんか。
福田国務大臣 今回の法制につきましては、いわゆる有事事態に対応する根幹的な考え方を示したということで、今後、国民の安全とか保護とかいうものにつきましてより詳細にわたる体制を整えるために二年間の猶予をいただいた、このようなことでございまして、それの中でその問題も対応すべきではないかと考えております。
岡田委員 これは、この法律の中に書いてあるから言っているんですよね。これからやる話じゃなくて、法律の中に既に規定があるから申し上げているわけであります。
 これは、委員長ぜひ、ここは非常に大事なところなんで、まず公共的機関の定義の問題、これも今はっきりしませんでした、指定公共機関の問題ですね。それから、民放や新聞社が入るのかどうか、そのことについてまず政府としてきちんと見解をまとめていただきたい。
 その上で、私は、法案を、これは変えないと無理だと思います、ここのところは。しかし、その前提として、政府としてどう考えるかということをもう一度きちんと出していただきたいと思いますが、理事会で御協議いただけませんでしょうか。
瓦委員長 理事会で協議をさせていただきます。
岡田委員 続いて、三条の関係について、時間も限られておりますが、参りたいと思います。
 かなりこの法案、私、いいかげんだと思うのは、「万全の措置」なんという言葉が出てくるんですね。万全の措置というのは災害対策基本法にあるといえばそのとおりなんですが、私は、これも随分、国は万全の措置をとらなきゃいけないということになると、何でもやるということですから、これも権利侵害の可能性という意味においては非常に危険なことだと思います。
 具体的な質問も考えておりましたが、時間の関係で省略をいたします。
 ここで、一つ基本的なことを聞きたいと思いますが、武力行使をするときの民法や刑法やあるいは行政法の関係というのは一体どうなるんでしょうか。ここが、私は、いろいろな官庁の説明を聞いても必ずしもはっきりしないわけですね。武力行使時において、相手が敵であるというときにはこれは余り議論はないのかもしれませんが、例えば国民に対してどういう関係になるんでしょうか。
 ただ、戦闘行為が行われている最中に、これは一つの例ですけれども、たまたま自分が日ごろから気に食わない市民が近くにいたからこれをやっつけた、あるいは住居を、その人の住宅を壊した、これはもちろん通常の刑法や民法の適用になるというふうに考えるわけでありますが、戦闘行為に関連して、例えば、個人の住宅の中に敵がいる、この個人の住宅を破壊しないと戦えない、こういう場合は民法、刑法の関係というのはどうなるんでしょうか。
中谷国務大臣 まず、基本の認識でありますけれども、我が国に侵攻する他国の軍隊が攻撃を行って自衛隊がそれに対して対処するような地域におきましては、民間人に対する避難誘導を適切に実施をして、民間人に被害が及ばないように措置をするというのが基本でございます。
 その上で、自衛隊による行動がございますけれども、それにつきましては、国際法規、慣例を遵守し、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」という法的な制約を課しているわけでございます。
 そこで、武力行使による敵の殺傷が、自衛隊法八十八条に基づく正当行為であるとはいえ、不可抗力による場合を超えて、仮にも故意によって民間人に危害を加えるようなことがあれば、そのような行為はもはや適法に行われた正当行為とは言えないわけでありまして、その意味で、自衛隊法八十八条は自衛隊に超法規的な権限を与えるものではございません。
 さらに、具体的に、武力の行使に当たる自衛官に対しては、こうした法的制約を担保するため、違法な命令をした場合や上官の命令に違反した場合には、他の公務員にはない厳しい罰則が科せられるところでございまして、このように行動をしてまいることでございます。
岡田委員 基本的に民法や刑法の適用はあるんですか、ないんですか、戦闘行為のときに。
中谷国務大臣 これは、正当防衛ということを考えていただきたいと思いますけれども、外国から我が国を侵略されたときに、自衛権に基づいて武力の行使ができるというのは、これは国際法、国連憲章にもございますけれども、認められている行為でございます。そこで、自衛隊法の七十六条の一項の規定がございますけれども、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、我が国を防衛するため、八十八条に基づいて、国際の法規、慣例を遵守し、かつ事態に応じて合理的に必要と判断される限度において必要な武力を行使することができる、いわば国家の正当防衛行為でございます。
 ところが、外部の侵略者はどうするかというと、こういった国内の法規とか国際法を無視して我が国の国民の生命財産を脅かすものでありまして、自衛隊は国民の生命財産を守るために敵を排除するという戦闘行為を行うことになります。このような戦闘行為に際して、この八十八条の要件を満たしている限りにおいては、行政法規等の法律、法令に従わない場合があるとしても、それはこの八十八条に基づく緊急事態における正当行為として許されるものであるというふうに考えているわけでございます。
岡田委員 私は、民法、刑法の関係はと問うたのに対して答えていただいていないと思いますので、また同僚議員が改めてこの点については厳しく質問すると思いますが、今、最後におっしゃった行政法規の関係も、そうするとこういうことですか。
 例えば、今回、自衛隊法の改正で、河川法の問題がありますね。事前に協議しなきゃいけない、河川に構築物をつくるときに。しかし、それはできないから通知でいい、こういうことにいたしました。こういう規定も、戦闘行為の最中は、常識的には、そんな、知事を捜して通知するというのは困難なことだと思いますが、しかし、では、通知しなくていいということは何を根拠に言えるんでしょうか。法律上の根拠は置かれているんでしょうか。
中谷国務大臣 繰り返しますけれども、この事態というのは異常な事態でありまして、そもそも、外部の敵の侵入者は、我が国の法律とか国際法を無視して、あらゆる手段を使ってくるわけでございます。これに対して、これを排除しなければならないわけでありまして、その行為が自衛隊法八十八条でございまして、これは正当行為として許されるものでございます。
 しかし、超法規的かどうかといいますと、やはりこの行為につきましては、不可抗力による場合を超えて故意に民間人に危害を加えるような行為や、上官の適法な命令に故意に背くような行為は、かかる行為を禁じた刑法または自衛隊の規定に違反するものでございまして、完全に超法規であるということではございません。
岡田委員 こういう基本的なことは、政府としてぜひ整理された方がいいと思うんですよね。今の話を聞いていますと、ですから、敵の武力行使があった、そしてその前後、自衛隊が陣地を構築したり、いろいろ現場に駆けつける、そこは今回の自衛隊法の改正で手当てをするんだけれども、戦闘行為になったらもうそれは関係ないんだというお話でしょう。
 その根拠は何かといえば、この八十八条の二項で、「合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」、だからその範囲ではいいんだ。しかし、それは本当の法治国家なんですか。それこそまさしく超法規じゃないですか。今回、この有事法制をつくるというのは、そういうことがないためにつくっているはずが、結局、非常に限定されたところについては法律を整備するかもしれないけれども、戦闘行為のときにどういうふうに考え方を整理するのか。
 私も、そういうときに一々知事を捜して通知するとか、それは非現実的だと思いますよ。でも、そうならそうで、どういう場合にはどういうことができるかということを法律で明確にしておくということが、これは有事法制の意味ですから、そこの肝心な部分が全部抜けているんじゃないですか、この法案は。いかがですか。
中谷国務大臣 個人にも正当防衛というものがありまして、自分の命に危険が及ぶ場合には、法を超えて自分を守るということは認められているわけでございます。国家にも、やはりそういう外国の勢力によって、日本の法律等を無視して我が国民を殺傷する場合に、その事態をいかに排除をして国民を守っていくかという行為自体が必要でございまして、その場合に際して、本当に緊急事態でございますが、自衛隊法八十八条の規定で、そういった国家の防衛行為を行えるということによって、国民を守る行為をするわけでございます。
 しかしながら、何でもやってもいいかといえば、故意に民間人に危害を加えたり、また上官の命令に背いて勝手な行動をしてはならないというように自衛隊法に規定をしておりますし、刑法や自衛隊法の規定に違反をしないように、そのようなルールを設けて、実効性の担保を図っているわけでございます。
岡田委員 私は、今の議論というのは、これは専門的な法律家の議論にたえないと思うんですね。ですから、ぜひここのところ、つまり、戦闘行為における民事法、刑事法あるいは行政法との関係をどう考えるのか、そしてその法的根拠は何かということについても、きちんと政府として検討して示していただきたい。何か、自衛権があるからとか、そういう話じゃないでしょう、これは。一番基本的なところじゃないですか。
 では、総理、総理はさっきからずっと他人事のような顔をしておられるから、官房長官でも結構ですが、いかがですか、今の議論を聞いていて。――いや、内閣法制局長官に聞くつもりはありません。いや、今聞くつもりはありませんから。
中谷国務大臣 正当防衛行為というのは、民事、刑事を超えて認められている行為でございますので、法理論的にはそのように説明ができるのではないかというふうに思います。
津野政府特別補佐人 若干、法的な、専門的な話ですが、先ほどから、刑法というお話がございました。この刑法の関係につきましては、まず、当然のことながら、刑法上、正当業務行為というものにつきましては、違法性阻却で、これは刑法上の罪責に問われるというようなことにはならないということが、これは自衛隊法八十八条の武力行使についても適用されるわけでございます。これは十分御理解できると思います。
 それから、民法の関係でございますけれども、これは、御承知のように、国家の適法行為について、先ほどいろいろ違法行為につきましての議論がございましたけれども、違法行為であれば、適法なものでなければ、当然、国家賠償法とか、そういった民法上の、国賠法上の責任が出てくる。それ以外の適法行為につきましては、事案によりましては、例えば、適正な損失補償をしなければいけないようなケースがあり得るというような関係に立とうかと思います。
 それは、あくまで国家の、国の公務としての正当行為でございますから、それに対しての規制というところでございますので、その関係では、戦闘行為、いわゆる武力行使が行われるような場面におきましては、それは正当行為としての評価を受けるわけでございますので、もちろんいろいろの、例えば憲法の二十九条のような規制を受けるような面もございますでしょうけれども、そういったところで判断をしていくということになろうかと思います。
岡田委員 今の御説明は、そうすると、刑法や民法は原則的には適用されるけれども、刑法であれば、正当業務行為ということで違法性がなくて罰せられることはない、民法あるいは国賠法上も故意過失がない限りはそういう責任を問われることはない、そういう説明だというふうに理解をしたんですが、行政法の場合、どうなんですか。
 先ほど言いました河川法、今回、自衛隊法の改正の中で河川法を変えますね、知事に対して通知するということになっていますね。こういう戦闘行為の場合も通知するんですか。しないなら、その根拠は何なんですか。
津野政府特別補佐人 これは、先ほどから防衛庁長官も行政法規等につきましてはお話をしておりましたが、例えば、先ほど言われましたような河川法上の通知の問題でございますけれども、こういったものは、これはあくまで戦闘、いわゆる武力行使を行われている場所を離れた場合における規制を、特例を設けているわけでございます。
 当然、戦闘行為が行われているような場所におきましても、そういった余裕があるかどうかという問題はございますけれども、そういう余裕があるならば、それはできる場合もあるかと思いますけれども、基本的に、事態は、戦闘という非常に緊迫した中で、しかもどういうふうに変化するかわからない。そういった状況の中でそういった行政法規を適用されるということは、これは自衛隊が正当な武力の行使をしている以上は、そういうことにもしも適用を、何といいますか、適用に対して違反したとしても、適用しなかったとしても、それは正当な業務行為として、何ら法的に問題を生ずるというようなことはございません。
岡田委員 そもそもの発想が、有事においてきちんと自衛隊の活動が法律に基づいて行われるようにということで今の有事法制の提案がされていると思いますが、今のお話は、戦闘行為のときには、それはもう正当事由かどうかで判断するんだということで、いわばノンルールじゃないですか。それでは、私、やはり説明になっていないと思うんですよ。法律上の根拠がやはり要るんじゃないか。具体的妥当性について、その場合、一々知事に通知しなきゃいかぬとか、そういうことを言うつもりはありませんよ。しかし、それならそれで、きちんとそういうものがルール化されていないと、結局、超法規で何でもできるという話につながりかねない問題だ、そのことを最後指摘申し上げて、同僚議員にかわりたいと思います。
 終わります。

瓦委員長 この際、玄葉光一郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玄葉光一郎君。
玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。
 私は、緊急事態に備える法整備は必要だというふうに思っています。ただ問題は、できばえだということだと思います。実効性が余りになかったり、あるいは過度のあいまいさとかごまかしがあったりするならば、つくり直して出し直してもらった方がよいのではないか、そう考えています。率直な御答弁をこれからお願いしたいというふうに思います。
 各論に入る前に、総論を一つだけ聞いておきたいというふうに思うんです。
 それは内閣の情報体制という課題であります。
 これは、この有事関連法制に密接に関連をすると同時に、ある意味ではそれ以前の最重要課題だと言っても過言ではないというふうに思うんです。情報が、この場合、インテリジェンスという意味での情報というニュアンスが強いですけれども、情報が的確に収集をされて、分析をされて、もちろんその前に伝達されて、活用されなければ、そもそも武力攻撃事態の認定もできなければ、あるいはその後の的確な対応ができなければ、あるいは、我々とても大事にしていますけれども、事前に紛争の芽を摘むということもできないわけであります。
 この内閣の情報体制について、果たして総理は、現在十分であるというふうに考えておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これはなかなか難しい問題でして、情報が十分かどうか。
 情報の持つ重要性というのは今も昔も変わらないと思います。特に専守防衛という体制をとっている我が国におきましては、まず、いかに国際情勢あるいは安全保障情勢、国内の危機に対する情報を収集していくか、その機関なり体制を整えていくか、人員をどのように的確に配置していくか、これは大変重要な問題であります。
 その情報の収集と分析については、いかに十分な体制をとるかということは、まあ限度がないと思いますけれども、できるだけの体制をとって、誤りない情報の分析、収集に努めていきたいと思います。
玄葉委員 私は、率直に言って、現状は、残念ながらお粗末だというふうに思っています。
 例えば、日米安保の将来という議論をするときに、私自身も大事だと思っていますけれども、戦略対話だ、こういう話が出てきます。あるいは情報の共有だ、こういう話も出てきますね。だけれども、私も当選して以来、アメリカの担当者と話をすると、戦略だ、情報の共有だと言ったって情報が筒抜けになるじゃないかと、直接、間接によく言われます。こういう問題がまず一つありますね。
 それに、逆に、例えば情報を漏らさないようにというふうに仮にしたとしても、我々は、残念ながらといいますか、米国に情報を依存している側面が強いと思います。そうなると、逆にアメリカに振り回される、こういう危険も率直に言ってある。
 あるいは、もう一つ例を挙げますけれども、今引き揚げ中の不審船、この不審船が発見されたときに、一体、当初、官邸はどういう判断をしたか。これは中国の密輸船ではないか、中国の密航船ではないかというふうに判断をしたのではないかというのは、いわば公然の秘密と言ってもよいのではないかというふうに思うんですね。
 ですから、これは全くお粗末な状態ではないかという危惧を持っているわけですけれども、課題は何だというふうにお考えになっておられますか。
小泉内閣総理大臣 これは、表に出せる情報と出せない情報があるといった、今玄葉議員の指摘、確かにあるんです。
 官邸としては、この武装不審船の問題につきましてはそれぞれの場合を想定して、またある国のことを想定して、どのような態勢をとるべきか、海上保安庁がやるべき問題、自衛隊がどこまでやっていいかという問題、いろいろ含めて対応したわけでありますが、こういう観点から、私は、最近の情報の重要性を見ると各国との共有という問題も非常に重要だと思っております。
 そこで、各国との情報の交換、共有というような場合、情報の交換と同時に情報の秘密をいかに守るかということも非常に重要だということを、私はいろいろな各国との首脳の会談でも経験的にわかってまいりました。どの程度こちらが言っていいのか、また相手の情報をどの程度公表していいのかというのは非常に難しい問題であります。
 こういう問題もありますから、それだけに日本国内だけの問題ではない、相手国の問題のある場合、相手国が一国だけの問題、複数に絡んでいる問題、こういう問題につきましても私は、情報の共有と、情報の秘密をいかに守って国民の安全を確保するかというのが非常に重要でありますので、情報の重要性というものを、これは日本としてもよりこの情報収集体制、分析体制について細心の注意、強化が必要だと思っております。
玄葉委員 課題はたくさんあると思うんです。
 これは先ほどの戦略対話とか情報の共有という意味からは、総理も御答弁されたように漏れるという話がある。先ほどの不審船の話からは、十分に正確に伝達されないあるいは分析されないという側面も現状だ。率直に言ってお粗末だというのは、これは言わざるを得ないというふうに思います。
 ですから、ここは私は、早急に検討チームをつくって検討に入るというふうにしないと、武力攻撃事態に万全の措置をとるんだ、こう法案に書いてありますけれども、その前の情報収集、分析、活用の体制に万全の措置がとられなければ何にもならない、これが大前提ですよ。
 今、やじというかお話の中に、機密漏えい防止策の話も出ていました。これは非常に繊細な問題です、率直に言って。漏れるという話からはそういう議論は出てくると思いますよ。これは知る権利との関係だ、あるいは表現の自由との関係だ。
 誤解なさらないようにしていただきたいんですけれども、例えば個人情報保護法案によるメディア規制というのは、私は反対ですよ。私は反対です。だけれども、もっと言えば、情報公開法の機密の範囲なんというのももっと限定した方がいいと思っていますよ、私は。ただ、より限定された本当に守らなきゃいけない機密に関しては、ここは本当に守れるんだという防止策は私自身はつくらなきゃいけない、そう思っているんですよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは一見矛盾しているような話だけれども、重要な指摘だと思っています。
 というのは、情報を公開するということは、守らなきゃいけない、公開してはいけない情報もあるんです。その線引きというのは非常に難しいんです。この点は、その時々の問題によって、ある人によってはそういう情報は公開すべきだということも言うでしょうし、その情報が公開されることによって非常に安全に対しても、あるいは個人の場合はプライバシーの問題について被害を受ける場合がある。第三者は全く被害を受けない場合がある。
 こういう点において、情報を公開すべきだという一般論については私も賛成ですけれども、同時に、秘密を守らなきゃならない、公開すべきでない情報もあるという、その両面の対応が私は大変重要ではないかと思っております。
玄葉委員 ですから、個人情報保護法のように、表現の自由あるいは知る権利などとの調整を図る必要がないところで図っていて、本当は表現の自由との調整を、いわば本当にぎりぎりのところで収れん点を見つけていかなきゃいけないテーマがこのテーマだと、私自身はそう思っているんです。ぜひ、こればかりやっているわけにはいきませんから、御認識を改めてしていただきたいというふうに思っています。
 それでは、各論に入りますけれども、岡田政調会長の質問内容とできるだけ重ならないようにしたいというふうに思います。
 一つは、古典的な武力侵攻よりも周辺事態の方が蓋然性は率直に言って高いと思いますので、周辺事態の関係についてお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、周辺事態法というのは、周辺事態法第一条でこう書いてあります。「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということであります。武力攻撃事態とは、これもこれまで議論されてきたとおり、予測の事態、おそれの事態、実際に武力攻撃が発生した事態ということでありますけれども、では、どういう事態が周辺事態と武力攻撃事態と重なる事態なのかということです。重なることは、あるいは併存することは既に答弁で聞いておりますけれども、どういう事態を併存する状態、事態というのかということであります。
 例えば、確認したいんですけれども、武力攻撃事態、その前に周辺事態があった、周辺事態がすなわち武力攻撃事態になる、すなわちイコールだということではないということは、普通に考えればそうかなというふうに思うんですが、そのことを確認したいということと、もう一つは、わかりやすい例示として、先ほど申し上げたように、周辺事態法の一条に書いてあるんですからね、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」と書いてあるんですが、このわかりやすい例示として示されているこのような事態は、これは武力攻撃事態になるのですか、重なる事態なんですか、確認をしたいと思います。
中谷国務大臣 なる場合もあれば、ならない場合もございます。
 御質問にありました、この「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」というのが周辺事態の一例でございますけれども、そのまま放置をすればということでありまして、周辺事態の際に適切に処理をすれば、我が国の武力攻撃事態またおそれの事態に至らない事態で終わる可能性もありますし、その対処がまずければ、我が国の武力攻撃に発展する可能性もあるわけでございまして、この場合は周辺事態でございますが、事態によってなる場合とならない場合があるわけでございます。
玄葉委員 本来、先ほど議論されていた予測される事態というのは例示されるべきだというふうに思いますけれども、なかなか、今例示するというわけにいかないでしょうから、あえて、わかりやすくするために幾つか聞きたいと思います。
 周辺事態というのは、六つ例示をされています。これは御存じのとおり、平成十一年の四月に、政府統一見解として六つ例示をされているわけでありますけれども、それぞれ、その周辺事態のケースが武力攻撃事態に当たる可能性について言及をしていただきたいんです。簡単に申し上げますけれども、六つ。
 一つ目は、「我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合」、これで平和と安全に重大な影響を与えればこれは周辺事態で、我々は、後方支援をし、捜索救助活動をし、また避難民救援活動をするわけですけれども、この(1)。
 そして(2)の紛争発生ケース、「我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合」、こういう周辺事態の場合はどうなのか。
 あるいは、周辺の地域において武力紛争そのものは一応停止した、一応停止したけれども、いまだ秩序の回復、維持が達成されていない。こういう周辺事態は武力攻撃事態に当たるのですか、どうなのですか。
 あるいは、内乱、内戦が拡大していったケース。これも周辺事態に当たる場合があるわけですけれども、これは武力攻撃事態にやはり当たる可能性はあるのですか、どうなのですか。
 五つ目は、大量避難民が流入したケース。これも周辺事態に当たる可能性があるわけですけれども、武力攻撃事態に当たる可能性はあるのですか、ないのですか。
 そして最後に、安保理による経済制裁ケース。経済制裁を行ったときに、これは周辺事態、船舶検査をする可能性があるわけですけれども、そういう事態も武力攻撃事態に当たる可能性があるのですか、ないのですか。
 以上、お答えいただきたいと思います。
中谷国務大臣 今、周辺事態の概念に関する政府の統一見解によりまして、事例を六つ挙げていただきました。
 内乱や内戦等の事態が発生し国際的に拡大している状況とか、大量の避難民が発生し我が国への流入の可能性が高まっている状況のようなものまで武力攻撃事態に該当することがあるかどうかというふうに御質問をいただきましたけれども、これは、この六つのケースすべて、状況によっては、我が国の武力攻撃のおそれのある場合、または事態が緊迫して武力攻撃が予測される事態に該当することとなる可能性が完全に排除されているわけじゃございませんので、一概に入るか入らないかというのは、その状況等の推移をよく注視をしなければならない問題であると考えております。
玄葉委員 私は最初に、周辺事態イコール武力攻撃事態じゃないでしょう、だからそれをできるだけ国民の皆さんの前で説明をしていただいた方がよいのではないかと思って、丁寧に、できるだけ皆さんのことを考えてある意味では聞いてあげた側面もあるのですが、今の御答弁だと、周辺事態六つ、全部可能性は排除できないと。果たしてそうなのかなという感じが私はしますけれども、ということは、ほとんど重なってくる、その可能性はあるというふうに理解をしていいということですね。
中谷国務大臣 周辺事態というのは、周辺においてそのような事例が起こっている事態であって、極力我が国の有事に発展しないように、大ごとにならないように努力をしてその状況を回避するわけでありまして、それがもう武力攻撃になるというのは不幸な事態でございまして、極力武力攻撃事態にならないように、周辺事態で対処をしなければならない問題であります。
 イコール武力攻撃事態になるかどうかという点につきましては、よくその状況推移等を判断して、これはまさしく周辺事態ではなくて我が国の武力攻撃事態で国内防衛の見地から実施するということで、概念的にも違っておりますけれども、周辺事態において極力武力攻撃事態にならないように努めるわけでございます。
玄葉委員 ますますわからなくなっちゃうんですよ、逆に。そうなると、武力攻撃事態というのは、もう本当に拡大しちゃうんですよ。
 つまり、何で聞いているかというと、周辺事態だけの発生ではできないことが、事態が併存することで、つまり武力攻撃事態とあわせて認定されることでできることというのはたくさん出てくるわけですよ。だから、そうじゃないんだということを言ってもらおうとして聞いているのに、全部可能性があるんだ、こういう話ですね。私は、果たしてそうなんだろうかというふうに思いますよ。
 状況の推移によっては――そんなの当たり前ですよ。状況が推移したらそれはどうなるかわかりませんよ。だけれども、この時点でこういう周辺事態が発生しているときに、今具体的に申し上げたわけですから、武力攻撃事態になるんですか、その可能性はあるんですかと聞いているのです。
中谷国務大臣 例え話で誤解を招く面もございますが、例えば、周辺事態を近所の火事としますと、それが三軒先か十軒先かわからないんですけれども、風向きによっては我が家に火がうつってくるわけであります。ですから、その風向きの要素もありますし、事態の状況を見て判断しなければなりませんが、武力攻撃事態というのは、まさに我が家の火災に対していかに火を消して住民を安全に守るかという観点でありまして、まさに我が家に火がうつる事態が武力攻撃事態であり、うつりそうな段階が予測される事態でありまして、周辺事態というのは、その近所の火事の状況に対して、いかにその消火に対して支援をするかという事態ではないかと私は考えております。
玄葉委員 中谷長官、総理も笑っていますよ。いや、率直に言ってわからない。
 私、こればかり本当はやりたくないんだけれども、では、この六つの事態はすべて予測される事態になり得る、この時点でなり得る可能性があるんですか。では、イエス、ノーで答えてください。イエスという答えをしていると思うんですけれども、本当にそうですか。
中谷国務大臣 まさしく状況を見なければなりませんけれども、完全にあるかどうかというのは全く言えないわけでありまして、ほとんどないと思いますが、完全に排除できるというふうに言い切れる状況でもないわけでございます。
玄葉委員 ちょっと答弁、ひどいですね。
 今の答弁になっていくと、何か率直に言って、周辺事態はイコール武力攻撃事態だというふうに聞こえなくもない。そういう答弁に聞こえなくもないですよ。可能性はほとんどないとはっきり、きちっと言えばいいんだけれども、そういうところがある。
 これはまた別の機会にやらせていただきたいと思いますが、米軍との関係、関連しますから一言申し上げたいと思いますけれども、御案内のとおり、我が国に武力攻撃事態が発生したらば、特に日米安保の五条で米軍と自衛隊が共同対処行動をとるということになっているわけでございます。これは、米軍に対してどう支援するのか、あるいはその行動の円滑化をどう図るのかということで、先ほどの質疑の中にもありましたけれども、これは支援法、具体的にどういうふうに、どういう法整備を考えておられるのですか、外務大臣。
川口国務大臣 お尋ねに対してでございますけれども、米軍に対する支援のあり方といたしましては、武力攻撃事態対処法案に規定をされていますように、日米安保条約に従いまして武力攻撃事態を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施をする物品、施設または役務の提供などが考えられるわけでございますけれども、より具体的には、事態対処法制の中で、この法制を整備する中で検討をすべき問題であると考えております。
 その場合には、次に申し上げるような考え方に基づいて検討されるべきものだと思っております。
 まず一に、我が国の支援が日米安全保障条約の目的の枠内で行われるということでございます。
 二番目に、我が国の支援が我が国の憲法の範囲内において行われるということでございます。
 三番目に、我が国の支援が国際連合憲章を初めとする国際法に従って行われるということでございます。
 四番目に、米軍の行動は、我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るためのものでございますので、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、また国民への影響が最小限になるように、米軍に対する支援を検討する必要があるということでございまして、いずれにいたしましても、今後、政府全体の問題といたしまして各省庁間で協議の上、米側と協議をしていく予定でございます。
玄葉委員 今、支援法の話と、少し行動の円滑化の話も触れておられますけれども、行動の円滑化の話では、よく言われるように、米軍は、一般国際法上は接受国の国内法の規制は受けないということになっています。だけれども、自衛隊は、今回適用除外の法律を審議することになりますけれども、しかし、国内法の規制は何らかの形で受けていくわけです。しかし、米軍は受けないということなんですけれども、この調整はどうするのか。日米地位協定では尊重義務がありますけれども、尊重義務であって、それは尊重するということであって、守らなきゃいけないという話ではありませんので、何らかの取り決めとか法整備がここも必要になってくるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
川口国務大臣 日米地位協定との関係でお尋ねでございますけれども、先ほど申しましたように、武力攻撃事態における米軍の行動を円滑かつ効果的なものにするための措置のあり方につきましては、今後、この武力攻撃事態対処法案に基づきます事態対処法制の整備の中で検討をしていくということでございます。そのような措置をとるために日米地位協定を改正するということは検討はいたしておりません。
玄葉委員 それでは、先ほど周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態について話をしましたけれども、その事態、いわば重複事態というか併存事態において整理されなければならない課題というのがかなりあるのではないかというふうに思うんです。自治体、民間との関係とか、さまざまあると思うんですけれども、例えばこの場合はどうなるんでしょうか。
 武器弾薬の提供という議論がございます。つまり、周辺事態法では、たしか第三条だったと思いますけれども、我が国は米軍に対して、周辺事態にあっては武器弾薬の提供はできない、しないということになっています。もっと細かいことを言うと、戦闘作戦行動の発進準備中の云々、こういうこともありますけれども、例えばの例で、武器弾薬の例で話をしたいと思いますけれども、武器弾薬の提供はできない。
 しかし、今後、今外務大臣がおっしゃったように、米軍への支援法とかあるいは有事ACSAのようなものが整備されていくと、当然、そもそも我が国の武力攻撃事態なわけですから、我が国の武力攻撃事態にあっては武器弾薬の提供はしますよね。そこはいいですか、ちょっと確認のため。当然だと思うんですが、どうぞ。
川口国務大臣 具体的な内容につきましては、これから検討する中で検討をしていくことです。
玄葉委員 いや、具体的な内容といっても、これは少なくとも、武力攻撃が我が国に対して発生して自衛権の問題が発生した、こういうときに武器弾薬の提供というのは私はできるんだと思っているんですけれども、米軍に対してですよ、米軍は私たちの国を守ってくれているんですよ、そういう場合、それもこれから検討するんですか。
川口国務大臣 国内的な法制ということについては、ございませんので、それを検討していくということでございまして……(玄葉委員「武器弾薬について」と呼ぶ)武器弾薬について、自衛権の行使の範囲内でそれはできると思いますけれども、それをやっていく国内的な法制、それをこれから検討する、そういうことでございます。
玄葉委員 例えば、こういう事態のケースを考えたときにどうなんでしょうか。
 あえてわかりやすくするために、これはわかりやすく議論しないとなかなか国民の理解を得られないので、あえて特定します。朝鮮半島で事態が起きちゃった。それで、それは周辺事態と認定した。同時にそれは我が国の武力攻撃事態にも認定した。そうなったときに、米軍から武器弾薬の提供を求められた。こういう場合米軍は、朝鮮半島で、朝鮮半島でですよ、日本側が提供した武器弾薬というのは、これは使えるんですか、使えないんですか。
中谷国務大臣 その場合は、朝鮮半島における周辺事態の支援とまた我が国の武力攻撃事態における米軍の支援と、それは区分をして支援を行うわけでございます。
玄葉委員 そうすると、どうですか。五条事態、つまり武力攻撃事態でこの米軍に対する武器弾薬の提供を読むのであれば、その武器弾薬は、米軍は朝鮮半島でも使っていいんだということなんですか、それともそうじゃないんですか。
中谷国務大臣 武力攻撃事態における米軍の支援につきましては、あくまでも我が国の自衛権、すなわち自衛権発動の三要件の認定があって、それに伴って行動する米軍に対する支援でございますので、我が国の米軍への支援は我が国の防衛に関するものに限定されるわけでございます。
玄葉委員 そうすると、朝鮮半島で米軍はそれを使用してもいいということですね。どうなんですか。もう一回確認したいんです。
中谷国務大臣 そういうことは一概に言えないわけでございます。(玄葉委員「一概に言えない。どっちなんだよ、これは。答弁になっていない」と呼ぶ)
 我が国の武力攻撃に対する米軍への支援は、あくまでも我が国の武力攻撃に限定されるわけでございますので、ほかの地域の周辺事態には使わないわけでございます。
玄葉委員 いや、率直に言って答弁になっていないところがあると思います。これは後で、追って同僚議員にバトンを渡しますけれども、なぜ私がこういうことを聞いているかということなんです。つまりそれは、やはり私たちの国の安保政策というのは、フィクションというか虚構で成り立っているという側面が率直に言ってあるんだと思うんです。
 例えば今、法律を使い分けるみたいな話ですよ、そこもまだよくわからないんだけれども、仮に使い分けるとしたら、オペレーション上は全くナンセンスですよね。全くナンセンスだ。だから私は、そういうことも含めてきちんと正面から説明した方がいいんじゃないかと。今、私たちの国の国益を考えるとすれば、集団的自衛権の問題もあります、ただ、今それを改正するわけにはいかないし改正するべきじゃない、だけれども、国益上、今使い分けすることがベストなんだ、そういう正面からの説明を聞きたいと思って、そういう意図で一つは質問をしているんです。
 ただ、これは一つの大きな課題だと思いますから、全く答えられていませんので、後でまた質問をさせていただきたいというふうに思います。
中谷国務大臣 使い分けができるかどうかということでございますが、我が国の武力攻撃事態におきましては、共同作戦計画や相互支援計画等をつくりまして、軍事面でのオペレーションにつきましては日米間で調整をして行うということになっております。
 こういう点で、先ほどの周辺事態との区分けについて区分をしてまいりたいと思いますけれども、もう一度申しますけれども、予測される事態またはおそれのある事態においては我が国は武力の行使を行うことはなくて、このような状況においては米軍の武力の行使と一体化するような支援は憲法上容認されないと考えておりますが、安保条約五条に定めることに従って我が国自身が武力を行使して米国と共同対処することになる武力攻撃が発生した場合におきましては、我が国の対米支援については、いわゆる一体化論から生ずる制約を受けることはないと考えられまして、このような場合におきましては我が国の支援が憲法の範囲内で行われるわけでございます。
玄葉委員 いや、先ほどの私の具体的な質問には残念ながら答えてもらっていないんです。ですから、そこは多分何度聞いても同じなんでしょうから、ぜひこれはこれから整理をしていきたいというふうに思っています。
 あと、周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態において、地方自治体の対応、あるいは国以外の者、そういう方々との対応、これも一つの問題になってくるんだ、論点だというふうに思います。
 つまり、周辺事態においては、地方自治体に対してまさに必要な協力を求めることができる、あるいは国以外の者に対しては依頼をすることができる、このレベルなんですね。だけれども、先ほどほとんど重なるような御答弁でしたけれども、予測される事態だというふうになった時点で、先ほど来から議論が出ているような、総合調整権を総理に与える、あるいは指示権を与える、あるいは代執行権を与えるということになっているわけですけれども、これも事態が重なったときには使い分ける、こういうことなんですか。いかがですか。
福田国務大臣 基本的にはそういうことなんですね。
 周辺事態と武力攻撃事態、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございまして、周辺事態安全確保法による協力の求め、そして武力攻撃事態対処法による指示などについても、それぞれの法律に基づいて行われる、こういうことになっております。
 仮に、これらの事態が併存する場合におきましても、それぞれの法律に定める要件に基づく措置が講ぜられる、こういうことになっております。
玄葉委員 関連して、地方自治体との関係を少しお尋ねしたいんですけれども、地方自治体との関係については、五条と七条に、地方公共団体の責務ということが書いてあり、同時に地方公共団体と国との役割分担というのが書いてあるわけです。具体的には何も書いてないと言っても過言ではないというふうに思いますけれども、一体地方自治体は武力攻撃事態があったときには何が求められるでしょうか。いかがでしょう。
片山国務大臣 地方公共団体の責務につきましては、今後の個別法制の整備の中で具体的に決めていくことになると思いますけれども、地方団体は一般的には、住民の生命、身体、財産を守るという使命がありますから、想定されるものとしては、例えば避難のための警報の発令、伝達や、被災者の救助や、あるいは施設設備の応急的な復旧や、そういういろいろな措置の場合の中で地方団体は国との関係で一定の役割を果たす、こういうことになると思います。
 具体的には、個別法制をやる場合に、私は、地方団体の意向を十分体してその法制の中に盛り込みたい、こういうふうに思っております。
玄葉委員 いわゆる地方自治体にそういう役割を負っていただくということになるのであれば、当然それなりの権限を例えば知事さんなり市町村長さんなりが持たないとできないという側面もあるのではないかというふうに思いますし、あるいは警察とか消防なんかとの関係も出てくると思うんですけれども、そこはいかがですか。
片山国務大臣 御指摘の点を含めまして、内閣官房を中心に関係省庁集まりまして、その点は整理しながら個別法制を整備してまいりたい、こういうふうに思っております。
玄葉委員 ですから、米軍との関係なんかもそうなんですけれども、国民の皆さんにとって大事な、いわゆる住民の避難だとか誘導をどうするかとかということが抜け落ちているんですね。これはやはり重大な欠陥だというふうに言わざるを得ない。一緒に出すというのが本来なんじゃないかと思うんですけれども、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 不備な点があったらば、ぜひ提言していただきたい。よく検討したい。
玄葉委員 ですから、なぜ一緒に出さなかったのかということ。それは間に合わなかった、こういうことですか。
小泉内閣総理大臣 本来もっと早くやるべきだという意見だったら、これは大変建設的な議論だと思います。私としては、今まで備えが不十分だったんじゃないかという点を考えて、今回この法案の審議をお願いしているわけでありますので、今回、不十分であるともし思われるんだったら、十分な提言も出していただき、私どももよく検討させていただきたいと思います。
玄葉委員 ですから、これを出すならば、本来は、俗に言う第三分類、それも一緒に出してほしかったということであります。優先順位の問題としては、先ほど、今回の武力攻撃事態に当たらないテロとか不審船の問題もある。もっと言えばサイバーテロの問題なんて何も対応できていないと言っても過言ではないというふうに思うんですけれども、それはまさに優先順位をどうつけるかという話で、同時並行で進めなきゃいけない話だ。だから本来一緒に出してほしかった、こういうことを実は申し上げているということでございます。
 もう一つ、先ほど岡田委員の方から質疑がありましたけれども、武力攻撃事態の終わりの認定ですね、これはぜひ国会が関与できるようにしなければならないんだろう。やはり泥沼化を防ぐ手だてというのは法律に内在させておかなきゃいけないというふうに思っています。せめて、これは最低限国会決議があればそれはやめます、こういうことだろうというふうに思いますけれども、それは総理、いかがですか。
福田国務大臣 武力攻撃事態が終了しまして、一連の対処措置を継続する必要がなくなったという場合には、政府は対処基本方針を速やかに廃止して国会に報告する、こういうことになっております。その際、政府が対処基本方針についての国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重することは当然でございます。
玄葉委員 そうすると、仮に終わりの認定について総理と国会の意思が乖離をして、そのときに国会が決議して、もう引こう、やめよう、少なくとも武力攻撃事態ではないというふうに認定しよう、認定というか終わりを決めようということであれば、それはもう尊重するということですね。
福田国務大臣 政府が対処基本方針を廃止し、そして国会に報告する、こういうことになりまして、国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重する、こういうことであります。
玄葉委員 いや、もう余りやりませんが、アメリカでも、例えば国家緊急事態法なんかでは、それは連邦議会が決議すればやめるということになっているわけですよね。そこは、やはり我々としては最低限求めなきゃいけない話だというふうに思っています。
 以上です。


2002/05/07

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