2002/04

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武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び
国民の安全の確保に関する法律(案)の概要

平成14 年4 月
内 閣 官 房

1 目的
 
この法律は、
@ 武力攻撃事態への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態への対処のための態勢を整備し、
A 併せて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、
もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

2 武力攻撃事態
(1)武力攻撃とは、我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。
(2)武力攻撃事態とは、武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む。)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

3 対処措置
 
対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次の措置。

(1)武力攻撃事態を終結させるために実施する次の措置
@ 自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動
A 自衛隊の行動及び米軍の行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置
B @及びAのほか、外交上の措置その他の措置

(2)国民の生命、身体及び財産の保護、又は国民生活及び国民経済への影響を最小とするために実施する次の措置
@ 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置
A 生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置

4 基本理念
(1)武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。

(2)事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。

(3)武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

(4)武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。

(5)武力攻撃事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力しつつ、国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。

5 国の責務等
(1)国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、基本理念にのっとり、組織及び機能のすべてを挙げて、武力攻撃事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。

(2)地方公共団体は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する。

(3)指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。

(4)武力攻撃事態への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする。

(5)国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。

6 対処基本方針
(1)政府は、武力攻撃事態に至ったときは、次の事項を定めた武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針(対処基本方針)を閣議で決定する。
@ 武力攻撃事態の認定
A 武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針
B 対処措置に関する重要事項

(2)内閣総理大臣が次の措置を行う場合には、その旨を(1)Bの重要事項として対処基本方針に記載しなければならない。
@ 防衛庁長官が予備自衛官及び即応予備自衛官の防衛招集命令を発することの承認
A 防衛庁長官が防衛出動待機命令を発することの承認
B 防衛庁長官が防御施設構築の措置を命ずることの承認
C 防衛出動を命ずることについての国会承認の求め
D 防衛出動を命ずること(特に緊急の必要があり事前に国会承認を得るいとまがない場合)

(3)対処基本方針については、閣議決定後、直ちに国会の承認を求めなければならない。

(4)不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了しなければならない。防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。

(5)防衛出動を命ずることにつき国会の承認が得られたときは、対処基本方針を変更して、防衛出動を命ずる旨を記載する。

(6)対処措置を実施する必要がなくなったときは、対処基本方針を廃止する。

7 対策本部
(1)対処基本方針が定められたときは、対処措置の実施を推進するため、内閣に、内閣総理大臣を長とする武力攻撃事態対策本部(対策本部)を設置する。対策副本部長及び対策本部員は国務大臣をもって充てる。

(2)対策本部長は、対処基本方針に基づき、対処措置に関する総合調整を行うことができる。

(3)内閣総理大臣は、国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべきことを指示することができる。

(4)内閣総理大臣は、次の場合において、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、自ら又は当該対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体又は指定公共機関が実施すべき当該対処措置を実施し、又は実施させることができる。
@ 指示に基づく所要の対処措置が実施されないとき。
A 国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき。

(5)政府は、対処措置の実施に関し、上記の総合調整又は指示に基づく措置の実施により当該地方公共団体又は指定公共機関が損失を受けたときは、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずる。

(6)政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

8 国際連合安全保障理事会への報告
政府は、国連憲章第51 条等に従って、武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、直ちに国連安保理事会に報告しなければならない。

9 事態対処法制の整備
(1)基本方針
@ 基本理念にのっとり、武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制(事態対処法制)を整備する。
A 事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。
B 事態対処法制の整備に当たっては、対処措置について、その内容に応じ、安全の確保のために必要な措置を講ずる。
C 事態対処法制の整備に当たっては、対処措置及び被害の復旧に関する措置が的確に実施されるよう必要な財政上の措置を講ずる。
D 事態対処法制の整備に当たっては、武力攻撃事態への対処において国民の協力が得られるよう必要な措置を講ずる。この場合、国民が協力をしたことにより受けた損失に関し、必要な財政上の措置を併せて講ずる。
E 事態対処法制について国民の理解を得るために適切な措置を講ずる。

(2)政府は、事態対処法制の整備に当たっては、次の措置が適切かつ効果的に実施されるようにする。
@ 国民の生命、身体及び財産の保護、又は国民生活及び国民経済への影響を最小とするための措置
イ 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置
ロ 施設及び設備の応急の復旧に関する措置
ハ 保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置
ニ 輸送及び通信に関する措置
ホ 国民の生活の安定に関する措置
ヘ 被害の復旧に関する措置 等

A 自衛隊の行動を円滑かつ効果的にするための措置その他の武力攻撃事態を終結させるための措置
イ 捕虜の取扱いに関する措置
ロ 電波の利用その他通信に関する措置
ハ 船舶及び航空機の航行に関する措置 等

B 米軍の行動を円滑かつ効果的にするための措置

(3)事態対処法制の整備は、その緊要性にかんがみ、この法律の施行の日から2 年以内を目標として実施するものとする。

10 その他の緊急事態対処のための措置
政府は、我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保を図るため、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとする。


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