2002/10/21

戻るホーム情報目次


小泉総理の所信表明演説に対する代表質問

民主党 鳩山 由紀夫

「小泉不況に今こそNOを」鳩山代表が代表質問 (民主党ニュース)

 民主党の鳩山由紀夫代表は21日、衆議院本会議で小泉首相の所信表明演説に対する代表質問を行い、小泉内閣の経済失政、日朝国交正常化交渉を通じた大失態、金権腐敗政治打破への消極姿勢などを厳しく批判し、「政権交代こそが日本再生のための唯一の道」だと訴えた。

 鳩山代表はまず、現下の経済状況について、小泉首相の経済無策が政権発足以来の「小泉デフレ・スパイラル」を招いたうえ、内閣改造直後の竹中経財・金融担当相の不用意な発言が株価の「竹中クラッシュ」を招き、株価の時価総額が首相就任以来130兆円失われるなど、今や日本は完全に「経済有事」だと指摘。こうした経済状態の悪化に対して、「構造改革なくして景気回復なし」と絶叫し続けるだけの小泉首相の政治には、「心」が感じられないと批判した。

 不良債権処理問題については、「不良債権の正確な事態把握と公表、経営責任の明確化を条件にした公的資金の投入や一時国有化を速やかに行う」という4年前の金融国会以来の民主党の方針に基づいて対応しなかったことが現在の事態を招いたと指摘。小泉首相のペイオフ解禁再延期などの無責任な政策転換を批判するとともに、中小企業などに対する地域金融の円滑化に向け、民主党が現在提案している「金融アセスメント法案」の早期実現を求めた。

 補正予算については、「デフレ対策や景気対策は必要だが、同時に、安易な財政支出は容認できない」とし、民主党が当初予算審議時に求めたように、経済効果の薄い従来型の公共事業関連支出を抑制し、本当に経済効果のある事業、民間投資を誘発できるような支出、国民の雇用や老後の不安を解消するような政策への支出へと予算の組み替えを行うとともに、不要不急の歳出の削減、国有財産の売却などによって国民に新たな財源負担を求めない内容の補正予算を可及的速やかに編成すべき、などと提案。他方、今後の経済情勢次第では、本格的な補正予算を編成する必要がでてくるかもしれず、その場合、小泉政権の公約であった「国債30兆円枠」を堅持できなくなるとすれば、小泉政権の明らかな公約違反であり、直ちに小泉首相は退陣するのが筋だと迫った。

 次に、鳩山代表は、外交問題について質問。小泉首相が今月29日に日朝国交正常化交渉を再開すると表明していることに対し、「拉致問題の真相解明について北朝鮮の誠実な対応に確信が持てないまま、北朝鮮による核開発という事実を受け、なぜ、そのように国交正常化交渉を急ぐのか」と質すとともに、核開発について、首相の訪朝前に米国政府から知らされていたことを国民に隠して平壌宣言に署名したことは「国家・国民への背信行為だ」などと厳しく追及した。

 鳩山代表はさらに、今回の統一補選の原因ともなっている「政治とカネ」問題を取り上げ、首相の消極姿勢を突いた。鳩山代表は、「日本社会から信頼という言葉が急速に失われているが、その元凶は、自民党長期政権下で増殖してきた政官業癒着構造にある」と指摘するとともに、公共事業受注企業や公的資金投入先金融機関等からの企業献金を「無条件に永久禁止すべきだ」と提案。また、新入閣した大島農水相の口利き疑惑について、農水相が「秘書官は金をもらっていない」と弁明する一方、秘書官を解任したことは不可解だとし、任命権者としての小泉首相の責任を明確にするよう迫った。

 答弁に立った小泉首相は、現在の経済状況について「『改革なくして成長なし』という私の路線に原因があるというのは誤解。この路線はしっかりと堅持していく」と強弁。鳩山代表が紹介した中小企業者の悲痛な声についても「たしかに現在の困難、窮状から出てきたものだが、厳しい中で果敢に取り組んでいる企業もたくさんある。あまり悲観主義に陥らずに明るい展望を持ち、力強く希望を持って取り組んでもらいたい」とかわしたが、議場内には激しい怒りのブーイングが上がった。

 この他の財政規律、補正予算、外交問題などについては、小泉首相は官僚の作成した答弁書に目を落としたまま早口で棒読みの答弁。北朝鮮の核開発を知りながら平壌宣言に署名した問題については、「情報は日米の信頼関係に基づいて提供されたものであり、信頼関係に鑑み、対外的に明らかにしなかった」との苦し紛れの答弁。

 大島農水相の口利き疑惑についても、「政治とカネの問題については、つねに襟を正すべき。(疑惑が事実だったらとの)仮定の議論よりも、しっかり事実関係を調査し明らかにすべきだ」と他人事のような答弁に終わった。

 小泉首相に続いて答弁に立った大島農水相は、「秘書官について報道されて以来、彼がその職務に全力を投じられない状況になったので交代させることとした」とし、秘書官の解任は疑惑の有無とは無関係との説明を繰り返した。

 本会議後に鳩山代表は、「小泉首相の真剣な答弁を期待していたが、全くの期待外れだった。経済政策に関して、何の具体的説明も具体策も示されなかった。核開発についても、なぜ知っていながら署名したのかという点についての具体的な説明がなかった。『政治とカネ』の問題に至っては、全くの無関心ぶりで、明確な答弁はなかった」と記者団に感想を述べた。


鳩山由紀夫君

(はじめに)
 鳩山由紀夫です。私は、民主党・無所属クラブを代表して、過日の小泉首相の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)
 質問に先立ち、過日、小柴昌俊さんと田中耕一さん、お二人がノーベル物理学賞及びノーベル化学賞を受賞されたことに対し、心からお祝いを申し上げます。
 大学時代、優が二つだった小柴さんと、四十三歳のサラリーマン研究者である田中さんの快挙には、不況、失業、生活苦、将来不安の影に悩まされている多くの日本人が非常に勇気づけられました。
 さて、小泉総理、一体どうしたのですか。今は未曾有の経済不況です。日本じゅうの国民が、一体日本はこれからどうなるのだろうかと不安に駆られながら、経済国会、まさに不況国会と言われる今国会冒頭であなたが示すであろう処方せんに注目をしていました。
 しかし、そこにあったのは、政治責任を避けて具体論をすべて先送りし、官僚の官僚による官僚のための所信表明演説を棒読みしただけのあなたの姿でした。私は、今、怒りすら覚えています。

(経済状況についてのレビュー)
 現在の経済状況について再確認をしておきます。
 総理、あなたの経済無策が政権発足以来の小泉デフレスパイラルを招き、さらに、改造内閣スタート早々、竹中大臣の不用意な発言が株価の竹中クラッシュをもたらしました。小泉スパイラル、竹中クラッシュによって経済環境がますます悪化する中、今国会は小泉不況国会の様相を呈しています。
 今や、日本は完全に経済有事であります。昨年四月小泉政権成立以来、各種の景気指標は悪化の一途をたどっています。あなたの就任当時の株価は一万三千九百七十三円。しかし、その後は下落を続け、とうとう一九八三年二月以来十九年ぶりの低水準を記録するに至りました。先週末の水準で計算しても、就任以来の株価下落率は三五%、まさに百三十兆円の時価総額を喪失したことになります。
 総理、歴代政権下での株価時価総額の推移を御存じでしょうか。森政権下では七十七兆円、橋本政権下では六十兆円、宮澤政権下では四十二兆円が失われました。しかし、小泉政権では既に百三十兆円の損失です。断然のトップです。あなたは株価下落のチャンピオンであります。
 失業者数は十七カ月連続増加、企業倒産は二万件、自己破産は十六万件を超えました。高校生の就職内定率は三割を切る地域も出ており、いずれも過去最悪の状況です。その一方で、国債はふえ続け、健康保険法改悪で国民負担も一・五兆円増大しました。国民の将来不安は増幅されるばかりであります。
 構造改革が一向に具体的成果を上げない一方で、大島農相をめぐって再び構造汚職が発覚をしました。
 今国会、そして、今月二十七日に迫った衆参の統一補欠選挙でも、その最大の争点は小泉不況対策と構造汚職問題だということを国会の開会に当たり明確に申し上げた上で、質問に入ります。(拍手)

(経済:日本経済の窮状の原因如何)
 総理、あなたは、十八日の所信表明の中で、今直面する最重点の課題は、厳しさを増す日本経済の再生だと述べられました。しかし、あなたが総理に就任して既に一年半が経過しています。そもそも、日本経済が厳しさを増している理由は、あなた自身の無定見、無為無策、経済失政によるものではないですか。改めて、日本経済をここまでおかしくしてしまったことについて、あなたのお考えを聞かせていただきます。
 そもそも、あなたの経済失政の結果として、今、世間がどのような状況になっておるのか、あなたは理解をしていますか。
 先日、私は、千葉県の補選の応援に行くために、地下鉄有楽町線に乗りました。その際、偶然隣に座った社会保険労務士の女性から声をかけられました。自分のお客さんが一月に三件も倒産したんです、こんなことは生まれて初めてです、小泉さんを初め政治家の皆さんは景気の状況がわかっているんでしょうか、ぜひこのことを総理に伝えてくださいと。総理、今、その言葉をそっくりあなたにお伝えをいたします。よくよくかみしめていただきたい。
 日夜資金繰りに奔走する中小企業。職を失い、毎朝ハローワークに通い続ける求職者。収入が減って、子供の教育費の工面に頭を悩ます親御さん。体調が悪いにもかかわらず、医療費がふえ続け、病院に行くこともできないお年寄り。総理、あなたの耳にはそうした国民の声がしっかりと届いているでしょうか。
 先日、私は都内の中小企業を訪問し、お話を伺いました。金型の製造機械五台を大切に使い、熟練した技術で長い間日本経済の下支えとなってきたその企業も、今は受注がほぼ底をつき、機械も毎日午後にはとめている状況でした。その経営者の方は私の手をぐっと握り、何とかしてくださいと語るその目には涙がにじんでいました。総理、あなたは、その涙さえ構造改革が成功しているあかしだとおっしゃるおつもりでしょうか。それとも、あなたの構造改革が失敗していることを示す涙と思われるでしょうか。あなたの意見を伺いたい。

(経済:総合的対応策の内容如何)
 また、所信表明演説の中で、早急に総合的な対応策を取りまとめると述べていますが、あなたは今までに何本の対策方針ペーパーをまとめたのですか。昨年六月のいわゆる骨太の方針に始まって、ことし六月の骨太の方針第二弾まで、計八本です。竹中さんを登用したかいがあったとおっしゃるかもしれませんが、レポートをまとめるのが政治の仕事ではありません。正しい対策を実行し、実際に経済を立て直すのが、本来の政治の仕事です。
 今回まとめると言われている対応策の目的は何ですか。また時間稼ぎをするつもりですか。経済対策というのは、それによって経済を、雇用を、国民生活を再建することでなければなりません。あと何年、国民に痛みを与え続けるつもりなのでしょうか。明確にお答え願いたい。

(経済:構造改革と景気回復の関係)
 総理、あなたは、ことし一月二十四日の衆議院予算委員会における我が党の菅直人議員との質疑を覚えておられますか。菅議員は、構造改革や地方分権、官から民への仕事の移行は私たちも必要だと思う、しかし、構造改革や地方分権が進むと景気がよくなる、官から民に仕事を移すと景気がよくなるというのは、どういう理屈でそうなるのですか、総理の考え方を聞きたいと真摯に質問しましたが、あなたは、景気は直ちにはよくならない、多少の痛みはやむを得ないという趣旨のことを繰り返されるばかりで、結局、明確な答えは何も聞こえてきませんでした。そして、さらに経済状態は悪化したのです。
 私は、政治は心だと信じていますが、小泉さんの政治には心というものが全く感じ取れません。
 改めてお伺いします。構造改革なくして景気回復なしとは、どういう理屈でそうなるのですか。説明を飛躍させずに、絶叫しないで、論理的に冷静に説明をいただきたい。(拍手)
 そもそも、この点を明確に国民に説明しておられないから、国民の皆さんの不安と不信が増大するばかりなのです。本日の中継は多くの皆さんがごらんになっておられますから、国民に向かってきちんと説明をしていただきたい。官僚の作成した答弁に頼らずに、自分の心でお答えを述べていただきたい。

(経済:金融検査マニュアルの見直し、地域金融機関の育成)
 次に、不良債権処理に関する金融庁の対応について伺います。
 そもそも四年前に、金融国会の際、きちんと民主党の方針に基づいて対応していたのならば、こんな事態には陥りませんでした。すなわち、不良債権の正確な事態把握と公表、経営責任の明確化を条件にした公的資金の投入や一時国有化を速やかに行うことが重要であります。
 一方で、あるべき金融行政の姿とは、自立可能で、まじめに頑張っている企業には資金が回り、不明朗、不適切な案件にはきちんと対処するものでなければなりません。しかし、金融検査の現実はそうなっていません。中小零細企業に対する検査基準が実態を踏まえておらず、これでは中小零細企業の存在そのものがなくなってしまう、検査基準を再考してもらいたい、先日お会いした信用組合の支店長さんもそう言っていました。
 現行の金融検査マニュアルが、中小企業や中小金融機関にとってどの点が非現実的な内容となっているかをよく洗い出していただき、的確に修正すべきだと考えます。総理は、見直しを指示するおつもりがあるかどうか、お答えを願いたい。
 民主党は、地域金融円滑化評価委員会に金融機関の中小企業など地域金融への寄与度を評価させる、いわゆる金融アセスメント法案を既に国会に提出しています。中小企業経営者同友会など多くの中小企業団体も、その実現に向けて積極的に活動してもらっています。政府は、メガバンクの動静ばかりに目を奪われることなく、健全な地域金融機関の育成にも真剣に取り組むべきです。金融アセスメント法案の早期実現を強く求め、総理の見解を伺います。

(経済:補正予算)
 次に、景気対策について伺います。
 厳しい景気の状況を反映し、補正予算に関する議論も活発化しています。確かに、デフレ対策や景気対策が必要です。と同時に、安易な財政支出を容認できないことにも変わりはありません。したがって、我々は、まず予算の組み替えを行うべきだと考えます。
 我が党は、当初予算の審議の折にも予算の組み替えを求めましたが、小泉政権はこれを受け入れず、その結果が一段の景気悪化です。我が党が主張したように、経済効果の薄い従来型の公共事業関連支出を抑制し、本当に経済効果のある事業への支出、民間企業の投資を誘発できるような支出、国民の雇用や老後の不安を解消するような政策への支出が必要であったことを、現下の小泉不況が事実をもって証明しているのです。
 我が党としては、予算の組み替えや不要不急の歳出削減、国有財産の売却などによって、国民に新たな財源負担を求めない内容の補正予算を可及的速やかに編成するべきと考えますが、今国会における補正予算編成を実施するのかしないのか、総理の考えを聞かせてください。
 また、キャピタルゲイン課税の大幅な見直し、NPO、社会福祉法人、学校法人など、今後雇用増の可能性がある非営利セクターに対する税制の支援、住宅・教育ローンの利子減税などの速やかな実施を提案いたします。御見解を聞かせていただきたい。
 さらに、小泉内閣の公約である国債発行三十兆円枠を堅持するのか破るのか、総理の正式な御見解を伺います。
 今後の経済情勢いかんでは、新たな財源負担を国民に求めてでも補正予算を編成する必要が出てくるかもしれません。ただし、その場合、小泉政権の公約である国債三十兆円枠が堅持できなくなることは明らかであり、小泉政権の明らかな公約違反、経済失政であります。
 総理は、ペイオフ解禁再延期を初め、余りにも無責任に公約や前言を翻し続け、しかも、それを政策強化などという詭弁、強弁で開き直っています。
 「玉の盃底無きが如し」とは、韓非子の言葉です。「玉の盃底無きが如し」、すなわち、幾ら格好がよくても使い物にならないという意味であります。幾ら歯切れのいい言葉や格好いいパフォーマンスを並べ立てても、経済再生には何の役にも立ちません。むしろ、こうした無責任、開き直り、不誠実な姿勢が政府の政策に対する内外の信頼を損ね、小泉政権発足以来の景気低迷につながっていることにあなたは早く気づくべきです。
 そして、国債増発、増税等、国民の皆さんに新たな財源負担を求める補正予算編成が必要になった場合には、これは、先ほど申し上げたように、明白な公約違反であり、直ちに小泉首相は退陣するのが筋であります。(拍手)
 改めて申し上げます。本格的な補正予算の大前提は、小泉首相の退陣であります。

(北朝鮮問題:拉致問題)
 次に、外交問題について伺います。
 十月十二日深夜、インドネシア・バリ島で爆弾テロが発生をし、鈴木康介さん、由香さん御夫妻を含め百八十名以上の人命が失われました。心より哀悼の誠をささげたいと思います。負傷された数多くの方々にも心よりお見舞い申し上げます。また、同時に、卑劣なテロに対して毅然として対応することを誓います。
 北朝鮮問題について質問をします。
 現在、北朝鮮による拉致被害者五名が一時帰国を果たし、二十四年ぶりに祖国の土を踏み、家族や友人との再会を果たしています。今回帰国を果たせなかった拉致被害者の方々やその御家族の方々も含め、余りにも長い道のりであり、私を含め政治に身を置くすべての者の責任を痛切に感じています。
 また、北朝鮮の卑劣な行為に対し改めて非難をし、事件の完全解決と再発防止に全力を尽くすことをここに誓います。
 総理、あなたは、所信表明演説の中で、国交正常化交渉を今月二十九日に再開すると明言されました。しかし、拉致問題の真相解明について北朝鮮の誠実な対応に確信が持てないまま、北朝鮮による核開発という事実を受け、なぜそのように国交正常化を急ぐのか、どのような成算を持っているのか、これらの点について明確に説明をしていただきたい。
 総理、あなたは、従前より、拉致問題の全面解決なくして国交正常化なしと発言してきましたが、あなたの言う拉致問題の全面解決とはどのような状態を指すのか、明確にするよう求めます。
 また、政府は、第二次調査団派遣を当面見送ると言っていますが、それでどのように真相究明を行っていくのですか。何もかもがあいまいなままでは、この交渉をあなた自身にゆだねるわけにはいかないと申し上げなければなりません。総理、明確にお答え願いたい。

(北朝鮮外交:核開発問題の認否)
 ところで、臨時国会開会の前日、北朝鮮が核開発を継続していたことが明らかになりました。これは、一九九四年の米朝枠組み合意やNPTに対する明らかな違反行為であり、我が国及び北東アジアの平和と安全にとって看過できない重大な事態であります。こんな重要なこともきちんと確認をせずにあなたが平壌宣言に署名したことは、日本の外交史上の大失態として歴史に記憶されることになるでしょう。
 あなたが署名してきた平壌宣言を読み直してみましたが、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と明記しています。総理は、所信表明の中でも、国交正常化交渉について、「日朝平壌宣言の原則と精神が誠実に守られることが交渉進展の大前提」と述べています。
 北朝鮮が平壌宣言署名後の今月三日になって核開発を認めたことは許しがたい約束違反であり、総理みずからが交渉進展の前提と述べた平壌宣言及びその精神は既に破られたと言えます。にもかかわらず、総理が二十九日に国交正常化交渉を再開するとしているのは理解できません。この点に関して総理の説明を求めるとともに、二十九日までに北朝鮮に対していかなる行動をとり、交渉においては何を進展の条件とするのか、明らかにしていただきたい。
 また、北朝鮮の核開発という事態を受け、KEDOについて、資金供与を含めて、日本政府としてどのように対応していくのか、方針を示すよう求めます。

(北朝鮮外交:核開発問題に関する外務省と総理の責任)
 この核問題に関して、さらに質問いたします。
 福田官房長官は、総理の訪朝前に米国政府から北朝鮮の核開発について知らされていたと明らかにしています。総理は、北朝鮮が核開発を継続していることを知りながら、「すべての国際的合意を遵守することを確認した。」という、事実に反する外交文書に署名してきたのですか。明確にお答えください。これは、重大な国家国民への背信行為であります。なぜ核開発継続の事実を隠す必要があったのか、説明をしていただきたい。
 この点について納得できる説明がなければ、やはり、核開発の事実が表に出なければ、小泉総理は、その事実を知りながらも、それを国民に隠し、日朝国交正常化と経済協力に突っ走ろうとしていたのではないかという疑念は増幅されるでありましょう。
 さらにお尋ねをいたします。
 政府筋の発言によれば、会談の席上、金正日総書記が、核開発問題は日本には関係がない、核問題は米朝間の問題だ、米朝のどちらが強いかは戦争をやってみなければわからないと発言したと聞いています。総理、あなたはその発言を聞いたとき、なぜ明確に反論しなかったのですか。陸奥宗光ならば、必ず反論していたはずです。核問題は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。この点をもってしても、あなたは日本の総理として失格、その責任は重大です。明確な答弁を求めます。

(イラク問題)
 次に、イラク問題について質問します。
 去る十六日、ブッシュ大統領は、イラクへの武力攻撃権限を大統領に与える議会決議案に署名しました。私は、イラクがすべての国連決議を受け入れ、国連による査察を即時かつ無条件に受け入れることを強く求める一方、米国に対しても慎重に行動することを求めます。
 総理は、所信表明演説の中で、ブッシュ大統領に国際協調が重要であることを明確に伝えたと言及しましたが、抽象的な物言いばかりで、具体的提言を行うことを避けているように見受けられます。
 イラク攻撃が現実のものとなれば、中東は政治的に極めて不安定な状況になることが予想されます。日本にも多大な影響を与えることは必至ですし、イラク攻撃が新たな憎しみと報復の連鎖を生む可能性が高いということも十分考慮して事に当たらなければなりません。米国の単独主義的な行動こそが、テロリストたちにテロを行う口実を与えてしまっているのではないでしょうか。日本としては、安易に協力や支援を表明するのではなく、主体的に態度を決するべきであります。
 そこで、総理にお伺いをします。
 あなたは、中東地域の政治的安定のために、テロの連鎖防止のため、米国の対イラク攻撃問題についてどのように対応するか、明確にお答えください。

(構造汚職と統一補欠選挙)
 不良債権、デフレの放置、北朝鮮問題の放置、昨今の企業の隠ぺい、偽装の放置など、日本社会から信頼という言葉が急速に消え去っています。その元凶は、自民党長期政権下で増殖してきた政官業の癒着構造にこそあります。
 こうした構造汚職体質を改めるために、民主党は、一貫して公共事業受注企業からの企業献金禁止を唱え、法案も提出してまいりました。しかし、さきの国会でも、あなたは何の関心も示されませんでした。政治と金をめぐる消極的な姿勢は今も変わりませんか。
 さらに、既に公的資金が投入をされ、再投入の是非が議論されている金融機関からの政治献金を、この際、無条件に永久に禁止すべきだと考えます。こうした利権企業から献金禁止をするのかしないのか、はっきりさせてください。御答弁願います。
 さて、最後に、今月二十七日の衆参統一補欠選挙について申し上げます。
 加藤紘一前議員の辞職に伴う衆議院山形四区、井上裕前議長の辞任に伴う参議院千葉選挙区は、両前議員の口きき疑惑に端を発した出直し選挙です。議員辞職こそしていませんが、鈴木宗男議員も逮捕、収監中であります。このたびの補選は、自民党にしみついた構造汚職体質、口ききビジネス体質に対する有権者の怒りを示す選挙でなければなりません。
 この重要な補選を控えた折、過日、内閣改造が行われ、新入閣した大島農相に口きき疑惑が早速発覚しました。総理、この事態をあなたはどのように受けとめているのですか。大島大臣は自民党の国会対策の最高責任者でもありましたが、このような汚職疑惑議員を以前から重用し、さらに引き立てたのは、小泉総理、あなた自身です。
 大島農相は、十八日の閣議後記者会見で、秘書官は金をもらっていないと弁明したと聞いています。それでは、大島農相はなぜ秘書官を解任するのですか。やましいことがなければ、解任する必要は全くないのではないんですか。大島大臣、明確にお答え願います。
 総理に伺います。
 現時点での大島農相の責任並びに総理の任命責任をどのように考えているのか。また、仮に大島農相の弁明が事実でないことが明らかになった場合には、大島農相を更迭するのか。さらには、任命権者としての総理はどのように責任をとる覚悟なのか。構造汚職体質が争点となっている補選を前に、すべての有権者の皆さんに明確に答弁をしていただきたい。(拍手)

(おわりに)
 小泉政権は、六つの改革を標榜しながら内実は国民の負担増とパフォーマンスに終わった橋本政権と極めてよく似ています。そして、国民は、一九九八年夏の参議院選挙で橋本首相を事実上リコールしました。今週末、二十七日の衆参統一補欠選挙は、国民にとって、小泉不況に対してノーを突きつけ、自民党腐敗政権にピリオドを打つ大事な選挙です。日本の荒廃の元凶である自民党政権の交代、人心の一新こそが日本再生のための唯一の道であることを強調し、私の代表質問を終わります。(拍手)

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員にお答えいたします。

 日本経済低迷の原因、中小企業経営者の涙に関するお尋ねがございました。
 私は、今日の経済の低迷というものは、これまでうまく機能してきた経済社会システム等、これが時代の流れに対応できなくなっている、そこに根本の原因があると考えております。こうした状況を打破するためにこそ、私は、構造改革が必要だ、改革なくして成長なしと。いろいろな、今まで手をつけられなかったような構造問題に踏み込んで取り組んでいるところでございます。

 こういう経済低迷の原因が私の構造改革路線にあるというのは、それは私は誤解だと思っております。むしろ、今までそのような原因に手を突っ込まなかったことこそ今日の経済停滞をもたらしてきたのではないかと思っております。一刻も早くこの日本経済をたくましく再生させるためにも、構造改革なくして成長なし路線を堅持してまいります。

 御指摘のあった事業者の方々の涙も、確かに、現在の窮状、困難さによってそのような、泣きたくなるというような涙が出てきたものと思っておりますが、我が国経済というのは、厳しい状況の中にも果敢に挑戦意欲を持って取り組んでいる中小企業もたくさんあります。そういう中小企業が数多く存在するのも事実だということを認めながら、余り悲観主義に陥らないで、少しは明るい展望を持って進むのも必要ではないかと思っております。

 私は、就任以来、二、三年は痛みに耐えて、あすをよりよくしようというその姿勢こそが大事なんだと。将来の明るい展望を持ちながら、力強く、希望を持って意欲的に取り組んでいってもらいたいと思います。

 今回まとめる総合的な対応策についてでございます。
 デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長を実現するためには、政府、日銀一体となって総合的な取り組みを行う必要があります。

 今申し上げましたように、これをすればすぐ景気がよくなるとか、即効薬、そういうものはありません。改革なくして成長なし、行財政改革の基盤に立って金融改革、税制改革、規制改革、歳出改革、これを予定どおり、あるいは予定を早めるような形で加速させることによって、この困難な経済状況を打開していきたい。もとより、その間生じるであろう雇用問題、中小企業対策などのセーフティーネット策に対しましては、しっかりとした対応策を今月末に取りまとめていきたいと思います。

 こうした取り組みを進めて、民間需要、雇用の拡大に力点を置いた改革を推進することにより、私は、将来、持続的な成長が可能になるような体制をつくっていきたいと思います。

 構造改革と景気回復についてのお尋ねであります。
 常々言います、構造改革するから景気回復しないんだ、早く景気回復させろ。逆だと私は思っています、見解は全く違う。構造改革しないで、補正予算を出して、財政支出をして、何で景気が回復するんですか。そんなことできなかったから、構造改革に手を出しているんです。その辺は全く違う。今後とも、私は、構造改革なくして景気回復なし、この路線をしっかりと堅持させていく。

 金融検査マニュアルの見直しを指示すべきではないかとのお尋ねがありました。
 金融機関においては、適切な資産査定等を行うことによりその健全性を確保することは、金融機関の規模のいかんにかかわらず、共通の原則であります。
 金融検査マニュアルにおいては、特に中小零細企業等について、その特殊性を総合的に勘案して判断するものとしておりますが、先般、債務者企業の経営実態のより的確な把握を目的として、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」を作成、公表したところであります。現在、その内容を検査の現場や債務者企業などに広く浸透させているところであり、こうした努力を継続していくことが重要であると考えます。

 民主党が提案している金融アセスメント法案についてのお尋ねです。
 金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、民主党提案のように、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと思います。

 補正予算の編成と三十兆円枠についてでございます。
 政府としては、総合的な対応策を今月末に取りまとめ、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく所存です。しかしながら、対応策に伴い今国会に補正予算を提出することは考えておりません。このため、現時点で国債発行三十兆円枠の問題は生じませんが、いずれにせよ、十四年度の国債発行額を三十兆円以下に抑制するとの精神は、我が国の財政需要が厳しさを増している中で、財政規律を維持するため、大切な役割を果たしていると考えております。

 キャピタルゲイン課税の見直し等についてお尋ねがありました。
 証券税制については、簡素でわかりやすく、貯蓄から投資へといった視点から、十五年度税制改革の一環として、本格的な見直しを既に指示しております。NPOなどへの税制支援や住宅・教育ローンの税制についても、NPO法人の実態や租税特別措置の整理合理化方針等を踏まえつつ、十五年度税制改正の中で検討してまいります。

 拉致問題や核問題の扱いと日朝国交正常化交渉についてのお尋ねであります。
 政府としては、拉致問題や核開発問題を初めとする諸懸案の解決のためには、国交正常化交渉を再開させ、その中で、北朝鮮に対して首脳間での合意である日朝平壌宣言に従って誠実に対応するよう求めていくことが最も効果的と考え、国交正常化交渉を予定どおり再開させることとします。

 拉致問題についてのお尋ねです。
 この問題については、北朝鮮による拉致の事実関係の解明とともに、生存者及びその家族の帰国の実現など、御家族を初めとする関係者が納得する形で問題が解決されるということが重要と考えています。
 また、調査団の今後の派遣については、これまでの調査結果の分析、鑑定結果等を踏まえて検討していく考えです。なお、真相解明については、国交正常化交渉等の場でも引き続き詳細な情報の提供を求めていく考えであります。

 今後の政府のKEDO、いわゆる朝鮮半島エネルギー開発機構への対応についてであります。
 KEDOは、国際社会が北朝鮮の核開発を阻止するための現実的な手段であるとの認識に変わりはありません。政府としても、今後とも、日米韓三国が緊密に連携し、KEDOの場をも活用しつつ、北朝鮮の核開発問題の解決を図っていく考えであります。

 北朝鮮の核開発問題と日朝平壌宣言に関するお尋ねです。
 先般の日朝首脳会談においては、その時点で得ていた情報も踏まえ、金正日国防委員長に対し、核問題を取り上げ、責任ある行動をとるよう強く求めました。これに対して、金正日委員長は、関連するすべての国際的合意を遵守するとしました。私は、これを実現していくことが問題解決に資すると判断し、この点を明記して日朝平壌宣言に署名しました。
 なお、本件に関する情報は、日米同盟関係に基づく信頼関係のもとで米国より提供されてきているものであり、米国政府との関係にかんがみ、対外的に明らかにしなかったものであります。

 日朝首脳会談において、先方が、核開発は米朝の問題であると述べた点についてのお尋ねです。
 日朝首脳会談で、私は、金正日国防委員長に対し、核問題は米朝だけの問題ではなく、日本さらには北東アジア全体の問題である旨指摘し、核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意の遵守を強く求めました。
 いずれにしても、日朝間に横たわる過去の問題、現在の問題、将来にわたる問題、これを交渉を通じて、対話を通じて私は解決していきたい。今、いろいろ不満があるからといって交渉再開に反対であるという態度は、まことに残念であります。

 米国の対イラク政策についてのお尋ねです。
 米国がイラクに対して軍事行動をとることを予断することは適当でないと考えます。
 重要なのは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、すべての関連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきです。この点については日米の意見は一致しており、我が国は、国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。

 政治と金の問題と金融機関からの献金についてのお尋ねです。
 政治献金については、いささかの疑惑も持たれることのないよう適正になされなければなりません。
 公的資金の投入を受けている銀行の政治献金については、自民党では、平成十年十月より、公的資金投入銀行からの一切の寄附を自粛しております。

 大島農相の元秘書官の問題についてでございます。
 政治と金の問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない大事な問題であります。このような問題については、仮定の議論をする前に、まず、しっかりと事実関係を明らかにすることが重要であると考えます。
 大島大臣に対しては、農林水産大臣としての職務に全力を尽くすとともに、事実関係を明らかにし、疑惑を晴らすよう指示しております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

国務大臣(大島理森君) 今回の報道以降、政務秘書官としての仕事に支障を生ずる状況にあることから、交代させることとしたものであります。


副議長(渡部恒三君) 鳩山由紀夫君の質疑に関して、農林水産大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。農林水産大臣大島理森君。

国務大臣(大島理森君) 補足して答弁をさせていただきます。
 大臣政務秘書官の職務は、大臣職と政務の調整で、秘書官として、政務調整であります。例えば、スケジュール調整等があると思います。
 報道以来、その職務に彼が全力で集中して仕事ができる環境と状況でないと判断して、そのような対応をいたした次第でございます。


2002/10/21

戻るホーム情報目次