2002/02/07

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(民主党ニュース)
【参院本会議】江田議員、空疎なデフレ対策を批判

小泉首相の施政方針演説に対する代表質問が衆議院に続き参議院でも7日、8日の日程で始まった。トップバッターは民主党・新緑風会の江田五月議員。田中前外相更迭問題、小泉内閣の構造改革の頓挫、BSE(牛海綿状脳症)問題などについて、40分間にわたり、小泉首相の姿勢を厳しく問い質した。

 江田議員は、田中前外相の更迭について「国会の混乱を収めるためだと説明しているが、参議院では野党は予算委員会出席の方針を固めていた。もともと田中前外相を更迭したいと機をうかがっていた人々が自ら国会を混乱させ、これを利用したのではないか」と質した。首相は「国会が混乱したのは事実。本来外務省内の問題が国会全体の問題になった。私がそう判断したのだ。見解の相違だ」と補足答弁で述べた。

 江田議員はまた、「小泉首相は就任当時『構造改革なくして景気回復なし』と言っていたが、最近は『改革なくして成長なし』と言い替えている。この看板の書き換えには何か意味があるのか。前の看板は下ろしたのか」と小泉首相の改革姿勢の後退を批判。首相は「言葉は短い方がいい。構造が抜けたから改革しないのか、などと言うのは言葉尻をとらえた議論で遺憾」と開き直った。
 
 デフレ対策については、「あなたの処方箋は『予算の切れ目なき執行』『細心の注意』『日銀と一致協力』『強い決意』などの言葉しか見当たらないが、それだけでデフレが阻止できるのか。この際、与野党共同で『デフレ阻止共同宣言』などを行うべきではないか」と提案したが、首相は「総合的に」「切れ目なく」などの言葉を繰り返すのみだった。

 食の安全問題では「農水省や厚労省に分かれている食の安全行政を統合し、内閣府に包括的な機関を作るべき」と具体的な提案を行ったが、首相は「食の安全と安心のための仕組み作りに真剣に取り組む」などと抽象的な決意を述べるにとどまった。

 首相が施政方針演説の中で昭和天皇の詠んだ和歌を引用したことについて江田議員は「まだ影響力の強く残っている天皇の和歌を、あなたのメッセージの説得力を補強するために使うのは、天皇の政治利用であり、慎むべき」と首相を批判した。首相は、「この歌を読むたびに感動している。私は天皇の政治利用にはあたらないと考える」と説得力を欠く答弁を行った。


第154回国会 小泉総理の施政方針演説に対する代表質問と答弁


○議長(井上裕君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る四日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。江田五月君。
   〔江田五月君登壇、拍手〕

○江田五月君 おはようございます。私は、民主党・新緑風会を代表して、小泉首相に対し質問と提案をします。

(はじめに)
 小泉内閣の支持率は一気に急落しました。小泉首相、あなたはさきの外相らの更迭につき、誤算だったと言われましたね。何が誤算だったのでしょう。あなたは田中眞紀子外相を更迭しても支持率にさほど影響はないと思っておられた。ところが、何と三〇ポイントもの下落、これはあなたにとって予期せざる出来事だった。そこで誤算、そうですね。まず、あなたの感想をお伺いいたします。

(国民の期待への裏切り)
 小泉さん、あなたは先日までの高い内閣支持率の理由は何だったとお考えですか。
私は、やはり国民は政治に何かを期待しているのだと思います。今のままで将来がうまくいくとはとても思えない、何とか変えてほしい、小泉さんという人は変人らしいが、それでも目は国民の方向を向いている、期待してみようと、こういうわけです。
しかし、あなたは国民の期待を裏切った、少なくとも国民にはそう映った。そこで思わざる支持率の下落となった。原因はそこですね。お答えください。

(田中外相の更迭)
 田中眞紀子外務大臣は、本気で外務省改革をしようとしていました。あなたが先日、本院委員会でおっしゃったとおり、外務省は特定の政治家の言うことを気にし過ぎる、それを眞紀子さんは変えようとした。国民は田中眞紀子さんのこの姿勢を応援していた。しかし、あなたはその田中眞紀子さんの首を切った。これは三方一両損ではありません。非のある二人と一緒に、正しいことをした人まで首を切った。理非曲直が正されていないのです。正義に反するやり方です。しかも、事実隠ぺいなのです。これでは国民があなたを信頼できるはずがありません。
 しかも、小泉さん、あなたは国民に今までとは違うぞという期待を持たせていただけに、余計にこの裏切りは罪が深い。あなたはそのことがいかに国民に失望を与えるか考えていなかった。この瞬間、あなたの目線は国民から離れて永田町の派閥政治家や霞が関の官僚の方に移っていた。これでは、小泉政治も結局は旧来型の自民党政治の一つにすぎない、国民はそう思ったのではありませんか。伺います。

(国会の混乱は口実)
 小泉さん、あなたは三人を辞めさせたのは国会の混乱を収めるためと言われますが、それはあなたの口実です。参議院では、私たち民主党を始め野党は、予算委員会出席方針を固めて質問の準備をしていたのですよ。それに、私たち野党は、今回のNGO参加問題で正しい行動を取った田中眞紀子さんの更迭など全く求めていません。
あなたにはどういう情報が入っていたのですか。お尋ねします。元々、田中眞紀子さんを更迭しようと機をうかがっていた人たちがいて、国会を混乱させ、これを利用したのではありませんか。あなたもそのことを知りながら、この機会に乗じて田中眞紀子さんを辞めさせたのではありませんか。お答えください。

(更迭すべきは武部農水相)
 あなたは大きな間違いを犯しました。今回更迭すべきだったのは、特定の政治家の横やりを排除してアフガン支援国会議へのNGOの出席を決めた田中眞紀子さんではなく、BSEつまり狂牛病対策の失敗で国民に二千億円もの損害を与え、国民の怨嗟の的になっている武部農水相、農水大臣なのではありませんか。目線を国民の方に向け直す気はありませんか。お尋ねします。

(日本の未来について)
 さて、昨年は新世紀のスタートでした。しかし、祝福されたスタートとはとても言えません。逆ですね。世界は九月十一日の同時多発テロとアフガン空爆、これをきっかけに世界各地に緊張が広がっています。国内も不良債権とデフレ、心の荒廃、特に子供たちが危ない。大変です。

 何より大変なことは、世界も日本も人々が理想や目標を見失っていることです。日本は特にそうです。もちろん、国家目標を一つに定めて国家総動員でという時代ではありません。逆です。一人一人が自分の夢や理想を持って自分の人生を生きる。それを国も社会も応援する。二十世紀型でない、二十一世紀らしい理想や目標をみんなが持てるようにしないと、日本も世界も漂流状態になります。行き着く先は戦争やテロの横行、地球環境の破壊。みんなで協力して社会を作っていく力量を持った市民がいなくなってしまいます。小泉首相、あなたは今、国民にどのような未来を作ろうと呼び掛けられますか。

(教育改革)
 特に子供たちに何を呼び掛けられますか。人づくりなくして国づくりなし、教育は未来への先行投資。御同意いただけるでしょう。しかし、現場は大変なのです。小泉さん、あなたは日本の未来のために教育をどう充実させますか。奨学金はどうしますか。三十人学級はどうしますか。伺います。

(将来推計人口)
 先日、衝撃的な将来推計人口が発表されました。一人の女性が生涯で産む子供の数を表す合計特殊出生率が一・三九で長期安定し、日本の人口は二〇〇六年をピークに減少を始めて、五十年後には今より二千五百万人以上減るという推計です。これは日本の未来像を根底から考え直さなければならない重大な数字だと思います。小泉さん、あなたはこの推計をどのように受け止め、どのように日本の未来像を展望されますか。お答えください。

(政治とカネ)
 国民に理想や目標を持とうと呼び掛けるのは政治です。政治にしかできない仕事です。しかし、その政治を国民が信頼しなければ、何を言っても聞く耳を持ってもらえません。政治を信頼できないことは国民の不幸です。しかし、政治の側が手をこまねいていて国民に信頼してくれと言っても無理というもの、政治の側から身を正さなければなりません。
 そこでお尋ねします。あっせん利得罪の処罰対象に、口利き行為を行って利得を得ようとしたすべての私設秘書を加えましょう。ずばりお答えください。

(ブッシュ演説)
 さて、私は、やはり一番大切なことは世界の平和だと思います。もちろん、平和だけが私たちの課題のすべてではありません。しかし、平和がなければすべてはありません。昨年を表す漢字が「戦」、戦争の戦だったことはよく知られています。今年も「戦」ではいけません。
 そこでお尋ねします。
 先日、アメリカのブッシュ大統領が一般教書演説をし、イラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸と名指しで非難しました。これは世界じゅうに波紋を広げています。ところが、小泉さん、あなたの施政方針演説では、このことについては何も触れられていません。それどころか、日米の戦略対話の強化を強調しておられます。これでは、日本はブッシュ大統領の路線に追随するんだというメッセージを世界に発してしまうことになります。 このことだけでなく、テロ対策でも経済・金融政策でも、小泉内閣はアメリカ一辺倒、つまりアメリカの言うことは何でもオーケーだという批判があります。
 イランは、日本、アメリカ、EU、サウジアラビアが共同議長を務めたアフガン復興会議の参加国ではありませんか。そのイランをあなたは敵視するのですか。答えてください。

 北朝鮮については、韓国の金大中大統領がいわゆる太陽政策で対話の努力をしています。そのことを尊重すべきではないですか。ブッシュ大統領の一方的な敵視政策は、あなたが演説で二度も触れられたワールドカップサッカー大会にも悪影響を及ぼします。そうは思いませんか。あなたは、近々、ブッシュ大統領にお会いになるのですから、直接、悪の枢軸という敵視政策、戦争政策をたしなめてください。いかがですか、はっきりお答えください。

(集団安全保障)
 昨年の同時多発テロを目の当たりにして、私たちは、この地球上からテロを一掃するには国際社会が一致協力しなければならないと決意しました。私たち民主党も、激しい党内議論を経て、戦時に初めて自衛隊を海外に派遣することに同意しました。国際緊張の激化は私たちにとっては大変なピンチですが、ピンチはチャンス、今こそ国際社会はテロや紛争を戦争によらずに解決するシステムを築くための大きな一歩を踏み出すときだと思います。
 日本は何ができるか。私は以前から、PKOや将来の国連軍や国連警察軍といった国連を中心にした集団安全保障の活動には、日本も自衛隊とは別組織の待機部隊を作って、国際公務員として積極的に参加すべきだと主張しています。小泉首相はどうお考えですか、伺います。また、国際安全保障については、日本はあくまで国連中心主義でいくことが基本だと思いますが、いかがですか、伺います。

(国際刑事裁判所規程)
 国連中心の国際秩序の構築のために、具体的な提案があります。国際刑事裁判所の創設です。そのための国際規程の批准が昨年秋から注目を浴び、秋だけでイギリスを始め九か国が批准し、批准は四十七か国、署名は百三十九か国となりました。日本は、この国際規程の提案国なのに、いまだに署名も批准もしていない。なぜですか、お答えください。

(東ティモール・NGO・ペシャワール会)
 もちろん私は、軍事力でできることは小さいと思っています。アフガン復興や東チモール建国支援では、特にNGOの力が最大限発揮されるように政府が支援すべきだと思います。アフガンの五億ドルと比べると東チモールの建国支援は今のところゼロ。真実和解委員会のための五十三万ドルを決めただけですね。どうしますか、伺います。

 アフガンや東チモールの陰に隠れて、自分のところの援助が大きく削減されるのではないかと不安に思うアジア、アフリカの国々がたくさんあります。ODAは、一律にカットではなく、めり張りを付けて、これらの国々の不安を招かないようにすべきだと思いますが、いかがですか。ちなみに、あなたの施政方針演説には、NGOという言葉が一度も出てきませんでしたね。なぜですか。

 NGOについては、今回は政府がお金を出し、政府と協力して活動するNGOがクローズアップされましたが、本来は、政府とは全く別に独立して活動している団体が多いのです。アフガンでは、十七年にわたる中村哲医師が中心のペシャワール会がよく知られています。御存じでしょう。小泉さんは、その活動をどのようにごらんになりますか。緒方貞子さんと並んで、中村医師とペシャワール会も日本の宝だと思いますよ。お答えください。

(東アジア諸国との関係)
 平和な国際秩序を築くためには、何といっても東アジア諸国との友好関係が何より大切です。しかし、日本はこの諸国の人々に対し、さきの戦争で大変な痛手を負わせています。だから、友好関係を築くために、日本がしなければならないこと、また日本がしてはならないことがあるのです。
 小泉さん、あなたは今年の靖国神社参拝をどうするつもりですか、伺います。だれもが気持ちよく参拝できる新たな国立の慰霊施設を造ることに、今年前半にも結論を出しましょう。伺います。また、歴史教科書の共同研究はいつスタートさせるのですか。この三点について具体的にお答えください。

(京都議定書)
 今後百年で、最大五・八度も気温が上昇し、異常気象も増えると、地球温暖化が懸念されています。昨年十一月のCOP7で、やっと京都議定書の細かなルールにつき合意ができました。日本は、COP3の議長国としての一層のイニシアチブが世界から求められています。リオから十年、今年の九月のヨハネスブルグ・サミットで京都議定書発効まで持っていくには、六月上旬をめどとした我が国の締結が欠かせません。あなたの決意をお伺いします。

(言葉だけの構造改革)
 小泉内閣の目玉は、言うまでもなく構造改革です。自民党を壊してもやり抜くと言われました。しかし、小泉さん、あなたは本当にこれをやり遂げる決意があるのですか。あなたは就任時の所信表明演説では「構造改革なくして景気回復はない」と言っておられました。最近は「改革なくして成長なし」ですね。この看板の書換えには何か意味があるのですか、前の看板は下ろされたのですか、お答えください。

 あなたの決意に大きなクエスチョンマークが付いたのが先日の更迭劇です。昨年秋には、道路公団、道路関係四公団改革の不徹底もありました。道路公団については、昨年末に十三の工事発注を中止した件につき、自民党橋本派の有力幹部のツルの一声で中止が撤回されたと言われています。あなたは、この事実関係についてどのようにお考えですか。道路公団や国土交通省も、このような政治家の干渉をはね付けるべきだとは思われませんか。一般論でなく、この件につきはっきりとお答えください。

 特殊法人改革は、百六十三の特殊法人、認可法人のうち、大半が結局は看板の書換えです。公務員制度でも、民主党の提出した天下り禁止法案は与党の抵抗でたなざらし。小泉さん、あなたは天下り禁止をやる気があるのかないのか、はっきりさせてください。
 道路特定財源の一般財源化は、施政方針演説の中では全く触れられていません。どこへ行ったのでしょう。これもきちんと答えてください。 先日の更迭劇であれっと気が付き、よく見ると実は改革は言葉だけ、実行は先送りのオンパレードなのです。

(「改革なくして成長なし」)
 私たちは、本気で構造改革を成し遂げる決意です。しかし、構造改革は、当面はデフレ効果を伴うことも明らかです。ですから、構造改革なくして景気回復なしというのは論理的にはつながりません。小泉首相、これは認められますか、伺います。

 私たちは、構造改革と同時に、デフレを阻止し経済を安定成長に軟着陸させるための経済政策が是非とも必要だと思います。改革しさえすれば成長するというほど私たちの社会のモデルは単純ではありません。改革と経済政策と、政策目標は二つ必要なのです。政策手法を多様に組み合わせ、息長く懐の深い生き生きとした政策運営が必要なのです。
 しかし、小泉さん、あなたの政策手法は経済無策です。株価下落は市場の悲鳴なのです。あなたはこの声を聞く気がないのですか。一本調子の政策手法では、政治の可能性は干からびてしまいます。多くの手法を総動員することによって、政治は柔軟性と多様性を備えた豊かな可能性を取り戻せるのです。あなたはどうお考えですか。

(国民の痛み)
 昨年、あなたの言葉で最も印象に残ったものの一つが、夏場所優勝した横綱貴乃花に優勝カップを授与する際のものでしたね。痛みに耐えてよく頑張った、感動したでしたね。その貴乃花関は、今なお土俵に上がれずに、リハビリに努めています。痛みに耐えて頑張るだけが良いのではありません。
 あなたのデフレに対する経済無策で、国民の痛みは限界に達しています。ホームレスは大都市だけの話ではありません。今や地方都市でも明日はホームレスかという恐怖が広がり、そこに付け込む新手の商売まで出てきているのです。その一方で、狂牛病対策失敗の最大の責任者である前農水事務次官には八千九百万円の退職金満額支給でお構いなし。高級官僚には甘く、国民にだけ痛みを押し付けるのはおかしいとは思いませんか、答えてください。

 民主党はホームレス自立支援法案を出し、継続審議になっています。これには与党の中にも賛同者がたくさんおられます。御存じですね。賛成してくださいますか、伺います。

 あなたは、国民に対し、就任早々、改革に立ち向かう決意を、昨年秋の臨時国会では変化を恐れない勇気を、そして改革の痛みが現実のものとなりつつある今、希望を決して失わない強さを求められました。そして、ついには、戦後の国土の荒廃に立ち向かった先人たちのように雄々しく立ち向かえとむちを入れられます。人は雄だけではありませんよ。
 円安、株安、債券安、週明けにあなたの言葉を聞いた市場の反応です。失業率はとうとう五・六%、毎日、百人もの人が自殺しています。これにあなたの支持率急落を加えて、小泉スパイラルと言われています。国民は、貴乃花ほど、痛みに対し体を鍛えていません。痛みを和らげる方策をなぜ考えないのですか、伺います。

(デフレ阻止)
 小泉さん、あなたは経済情勢は厳しいと予想し、デフレ阻止に取り組むと言われました。しかし、あなたの処方せんは、予算の切れ目なき執行のほかは、細心の注意、日銀と一致協力、強い決意くらいしか見当たりません。そして他方で、改革断行を強調されます。注意深い金融政策で円安誘導さえしておれば、本当にデフレ阻止ができますか。国民は不安です。私は、この際、与野党共同でデフレ阻止共同宣言を行い、超党派のデフレ阻止政策協議会といったものを設置することを提案したいと思います。あなたはどうお考えでしょうか。

 今あなたが取り組んでおられるのは、戦後五十年余の努力で築いた繁栄の仕組みが、いささか古く非能率で新たな発展の障害になっているので、これを壊し更地にしようというものだと思います。しかし、人が住んでいるのに建物を壊しては、居住者はたまりません。雇用政策が大切です。さらに、更地の上に何を作るか、この国のかたちをどう構想するのかが示されなければなりません。
 あなたは、「構造改革と経済財政の中期展望」でこれを示したつもりなのでしょう。しかし、これは具体的処方せんのない言葉の羅列にすぎず、正に絵にかいたもちです。無駄なダムでなく、緑のダム構想があります。自然破壊の干拓でなく、白砂青松を回復する公共事業だってあるのです。京都議定書に基づく経済社会の在り方は立派な中期展望になるのです。従来型の延長ではない新しい発想の中期展望を作る気はありませんか、伺います。

(雇用政策)
 イギリスでは、鉄の宰相サッチャー夫人でさえ、改革と同時に雇用対策として大規模なセーフティーネットを張っていたといいます。あなたは、製造業や建設業などでの就業者の減少に見合うサービス業での就業者の増加があると言われますが、数字でつじつまが合っていても、実際にハローワークへ行ってみてください。一緒に行きますか。そこに並んでいる皆さんに何と言われますか。明日にも倒産しかねない中小企業の経営者や従業員は、あなたの万全を期してまいりますという言葉は空虚に響くだけです。
 私たち民主党は、四兆円規模の雇用対策を提案しています。不良債権の処理のためには必要不可欠な措置です。この提案をどうお考えですか、伺います。

(ワークシェアリング)
 さらに、今後の雇用政策の大きな課題としてワークシェアリングがあります。これは、単に労働政策だけでなく、社会の在り方、家庭の在り方、人々のライフスタイルの変更にかかわる壮大な社会の構造改革という課題です。
 仕事さえあれば、仮に一家の大黒柱の収入が下がるようなことがあっても、配偶者やお年寄りや子供たちの収入でこれを補い、世帯としての収入は確保できます。これを嫌々ながら受け入れるのでなく、むしろすべての人が能力に応じて労働という形で社会参加するのです。さらに、これにより生活時間にゆとりが生まれますから、仕事人間も家庭参加ができるようになるのです。

 今後、人口減少が予想される日本の経済を大きく成長させることは全体としては困難な課題かもしれませんが、女性や高齢者の働く機会を増やすことによって、六千三百六十二万人の就業者数を増やすことはできるし、生活水準やクオリティー・オブ・ライフの向上は必ず達成できます。そのためのキーワードは、様々な形の労働力が極力均等に扱われ、保護されること、つまり均等待遇だと思いますが、小泉首相は基本的にどのような考え方でこのワークシェアリングという課題に臨まれるのですか、伺います。

(NPO支援税制)
 官から民へ、中央から地方へという言葉は、お題目だけではいけません。
 例えば、NPO税制です。福祉システム、文化活動、街づくり、途上国支援などでは、官ではかゆいところに手の届くサービスが提供できません。地域の皆さんのやる気を支援し、地域社会を再構築するためのキーワードがNPO、特定非営利活動法人なのです。

 支援の枠組みとして税制は外せません。役所のコントロールを離れ、同時に公的役割をきちんと担うようにするため、政府も野党もパブリックサポートテストを取り入れた具体案を昨年作りました。しかし、政府案は実際には利用不可能。私たちはこれを羊頭狗肉だと批判し、修正を求めました。あなた方は、NPOの重要性については、一見私たちと同じ立場に立ちながら、あれこれ言って私たちの修正案に耳をかしませんでした。今、認定NPO法人、これはわずかの二件。二件ですよ。そういえば、小泉さん、あなたの施政方針演説にはNPOという言葉も一度も出てきませんでしたね。NPOについての理解がないのではありませんか。多くのNPOが利用しやすい支援税制に改めるつもりはありませんか、伺います。

 ついでに一つ。NPOでもNGOでも重要なのは、政府との信頼関係ではなく、彼らの自主性なのです。ところが、さきの外相更迭劇では、政府を批判するNGOとは政府は信頼関係を持てないとの外務省の態度が明らかになりました。あなたは、あなたの政府を批判する団体とは信頼関係を持てないのですか。なぜ、これらの自主活動までコントロールしたがるのですか。なぜ、そんなに御自分たちのやり方に自信があるのですか。市民の知恵や力を信頼できないのですか、伺います。

(地方財源)
 次に、地方のことを伺います。
 小泉内閣の下で、すさまじい中央集権と地方破壊が進んでいます。今や地方自治体の財政は軒並み破綻寸前です。それでもなお、地方自治体によっては財政改革の取組よりも補助金に手を伸ばすことに精力を使っています。補助金に自己資本を足して箱物を作り、これが市民にとって魅力皆無で、見向きもされず金食い虫になって困り果て、客集めのためと称して次の箱物作りのために補助金を求めるという悪循環にはまり込むのです。
 このくらいの知恵しか出ないのは、地方の財政権限が弱いからなのです。思い切って財源移管をしてはいかがですか。また、私たち民主党は、地方財源強化の第一歩として、補助金を一括して地方自治体の一般財源とする一括交付金制度を提案しています。小泉さんはこれを実現する考えがありますか、伺います。

(地域金融円滑化法案)
 地域経済や地域金融をどうするつもりですか。
 地域の経済は、元々不況のところに、目前に迫ったペイオフに備え、地域金融機関に対し不良債権処理を強く求めていますから、本来、中小企業を支えるはずの金融機関の融資が激減し、地域経済は危機的状況です。地域の赤字企業を黒字にするための地域企業再生法といったものが必要だと私は思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。
 また、地域の中小企業を支えている地域金融機関が地域の実情に応じた役割を正しく果たせるようにするため、私たち民主党は、昨年与党の反対で廃案となった地域金融円滑化法案、略称金融アセスメント法案を昨日再び本院に提出しました。既に全国で中小企業家を中心に五十万人もの署名が集まり、二百十一の自治体で意見書が採択されています。小泉さん、あなたも、多くの国民の声を無視するのではなく、是非この法案の成立に御協力ください。答弁を求めます。

(官僚政治・機密費)
 小泉さん、あなたは口では官僚に厳しいことを言っておられますが、実は小泉内閣は官僚に大甘の政治で、もっとはっきり言えば、実は官僚政治ではありませんか。税制改革も、結局は財務省主導の増税策ではないのでしょうか。少なくとも、プライマリーバランスの赤字解消は歳出削減で行うべきではありませんか。お答えください。
 前農水次官への退職金満額支給で、消費者や畜産農家の怒りは頂点に達しています。外務省については、あなたは体制を一新したと言われますが、それは見せ掛けで、田中眞紀子さんもてこずった機密費上納問題に完全にふたをし、改革放棄をしたのではありませんか。そういえば、今回のあなたの施政方針演説から聖域なき構造改革という言葉が消えました。やはり、機密費問題はあなたにとって聖域だったのでしょうか。外務省と内閣官房の機密費問題の真相解明は、もうおしまいではないでしょうね。はっきりとお答えください。

(農業)
 今、日本の農業は危機に瀕しています。
 長く食の安全の問題を放棄し、農薬漬けも平気、季節無視も平気、とにかく収量優先。農家は土地改良と機械化で借金に追われています。しかし、大規模化も機械化も中途半端で、何より後継者がいません。気が付けば農業は崩壊寸前。農業土木偏重の従来型農業政策をやめて、所得政策中心の政策体系に移行し、環境や国土保全などの農林業の多面的な機能を重視した政策を進めるときが来ているのではありませんか。
伺います。

(食の安全)
 食の安全のことになると、やはりBSEの失敗から学ばなければなりません。
 私は、この際、農林水産省と厚生労働省に分かれている食の安全行政を統合して、内閣府に、アメリカのFDA、連邦食品医薬品局や、EUの食品安全庁のような食の安全のための包括的行政機関を作るべきだと思いますが、小泉さん、あなたはどうお考えですか。さらに、食の安全を害する行為を厳しく罰し、消費者本位の食の安全行政を実現するため、JAS法と食品衛生法の抜本改正を行うべきだと思いますが、お考えを伺います。

(司法制度改革)
 司法制度改革について伺います。
 施政方針演説の中にもコンパクトに言及があります。私たち民主党も、市民が主役の司法の実現のため、これまで司法制度改革の提言もし、審議会意見書に賛意を表してきました。司法改革与党のつもりです。小泉さん、あなたも市民が主役の司法とか国民主権の下にある司法という理念に賛同していただけますよね。伺います。
 しかし、あなたは余り御存じないでしょうが、問題はこれから。ここでも抵抗勢力はかなり強力なのです。あなたは司法制度改革推進本部の本部長なのですから、是非ともリーダーシップを発揮して、本部の活動の情報公開、会議のリアルタイム公開など、プロセスを国民に開かれたものにしてください。さらに、予算措置が必要です。
人を養成するのですから、おろそかにはできません。大丈夫ですか、伺います。

(人権救済制度)
 人権救済制度についても議論の真っ最中です。救済機関の独立性は、国内でこれでよろしいと言うだけでは済みません。パリ原則という国際社会のルールがあります。
同じ作るのなら、世界じゅうどこに出しても恥ずかしくないものを作りましょう。私たち民主党は、内閣府に人権委員会を作ることを提案しています。どうお考えですか。

(国民共通番号制)
 小泉さん、あなたは施政方針演説で、世界最先端のIT国家や電子政府、電子自治体を実現すると言われました。大いに結構ですが、それが世界最先端の国民管理国家となってはいけません。今年の八月五日からすべての国民に十一けたの番号が付きます。小泉さん、あなたは、この国民共通番号制が個人の自由とプライバシーを侵害しないものだと約束できますか、お答えください。

 この国民共通番号制には、ジャーナリストの櫻井よしこさん、作曲家の三枝成彰さん、長野県の田中知事、杉並区の山田区長始め多くの人々と百十九の地方自治体が反対しています。総務省は住民基本台帳の四項目のデータにしか使用しないと言っていますが、経済産業省始め各省庁は既に拡大利用の研究を始めています。行政が個人を支配するような拡大利用を認めてはならないと思いますが、いかがですか、伺います。

(男女共同参画)
 昨年末、私の大変尊敬する大先輩、加藤シヅエさんが百四歳で永眠されました。愛をテーマに女性の健康と地位向上のために生涯をささげられた加藤さんの精神を私たちはしっかりと引き継いでいく責任があります。

(児童扶養手当)
 今国会で政府は、母子家庭に対する児童扶養手当の削減をしようとしています。正に小泉首相のおっしゃる痛みに直撃されている母子家庭をあなたは更にねらい撃ちしようというのでしょうか、お答えください。
 働く意欲を増す効果があるなどと言われているようですが、意欲があっても場がないのです。病児保育や夜間・休日保育も十分でない日本社会では、子供の都合によって働き方を左右されざるを得ない一人親世帯は最も職場から遠ざけられてしまいます。生活保護世帯になってしまうのなら、結果として国庫負担が増すだけだし、労働力はますます封じ込められるのではないでしょうか。どうお考えですか。

 小泉さん、あなたは、女性の涙については差別的な認識をお持ちのようですが、児童扶養手当を削減されて成長権を脅かされる子供たちの涙についてはどう考えられるのでしょうか。この計画を断念するつもりはないのか、お答えください。

(民法改正)
 昨年の内閣府の世論調査を受けて、今国会で政府は選択的夫婦別姓を認める民法改正案の提出を検討しています。女性の人権という観点からも、また、多様な家族にそれぞれの在り方を認め、愛をはぐくむ環境を提供するためにも、民法改正は長年の懸案であり、私たち民主党も積極的に取り組んでまいりました。現在も私たちが提出した法案が衆参ともに継続中です。

 民法改正案を提出しようとする政府に対して与党の根強い反対があると聞いていますが、この程度の改革もできないようでは、日本を立て直すことなどできないでしょう。断固として法案を提出する決意が、小泉さん、あなたにおありかどうか、伺います。

(DV法)
 DV、ドメスティック・バイオレンス、つまり家庭内暴力の被害者の自立支援について伺います。
 昨年成立したDV法は、主として女性の被害者の保護と加害者の行動制限などについて定めるだけで、被害女性が加害者から逃げた後の生活再建や自立支援については不十分です。今後、被害者の自立、自己決定を尊重しながら地域で支援する仕組みを作ることが重要です。特に、地域福祉の観点からの取組の強化が必要ですが、小泉さん、あなたはどうお考えですか、伺います。

(天皇の政治利用・皇室典範)
 ところで、小泉内閣総理大臣、あなたは演説の冒頭、愛子内親王の御誕生に言及されました。私も愛子様の健やかな御成長を楽しみにしています。しかし、最後に昭和天皇の和歌を引用されたのはちょっといただけません。あなたにはお分かりにならないかもしれませんが、施政方針演説はあなたの政治的意思の表明なのです。そこに、まだ影響力の強く残っている天皇の和歌をあなたのメッセージの説得力を補強するために使うのは、やはり天皇を政治に利用したことになるのです。慎んでください。どのように答えられますか。
 私は、この際、むしろ皇室典範の改正を提言します。女性の天皇を可能にしようではありませんか。お答えください。

(最後に)
 最後に、小泉さん、あなたは憎めない人だと思います。しかし、抵抗勢力に支えられて構造改革を行うという絶対矛盾の政権では、あなたの目指すものはいずれ必ず行き詰まります。もう行き詰まっているとも言えます。あなたの一番いいところは、率直に、思い切って自分の思っていることをはっきり言うところです。行き詰まりが分かれば、どうぞ、恐れず、ひるまず、たじろがず、もうお手上げだ、代わってくれとおっしゃってください。私たちはいつでも代わります。
 終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 江田議員にお答えいたします。
 田中大臣の更迭及び内閣支持率の低下についての御質問であります。
 今回のNGOの出席拒否をめぐる問題、これは本来外務省の問題であります。これが国会全体の問題に変わってまいりました。そういうことから、この国会の混乱という事態を打開するために打った処置でありまして、今でも適切な判断だと思っております。

 また、支持率の低下が懸念されておりますが、支持率が高かろうが低かろうが、私の改革への決意は全く揺るぎません。恐れず、ひるまず、とらわれず、断固として改革を進めてまいります。
 支持率が下がったといっても、依然として民主党より高い。これを真摯に受け止めて、小泉内閣に対する期待というものをしっかりと受け止めて、断固としてこの改革を推進していきたいと思います。

 武部大臣を罷免すべきではないかとお尋ねでありますが、一昨日、不信任決議案が否決されました。立法府からの信任が得られました。
 政府としては、一連の経緯を真摯に受け止め、今後とも、生産現場や消費者の意見をしっかり踏まえ、BSE対策に遺漏のないよう全力を尽くしてまいります。
 また、武部大臣の取るべき責任は、BSEに関する正確で科学的な情報を国民にきちんと伝えること、BSE発生に伴う生産から消費に至る様々な悪影響に対応するための措置を講ずること、過去における行政措置等を点検し、将来にわたりBSEの発生防止に取り組むことにあると考えておりまして、今後とも、これらの職責を果たし、国民に安心していただける体制を作るよう、全力を尽くしていただきたいと考えております。

 未来の姿についてでございますが、施政方針演説及び先般閣議決定した「改革と展望」において示しましたように、人の能力と個性の発揮を大切にすることにより、人材大国の実現を目指すことを示しました。明るい未来を力強く切り開いていただく担い手は、人であります。わけても子供たち、青年たちであります。そういう方々の夢と希望をはぐくみ、子供たちが豊かな個性と能力を持った人間に育つよう、全力を尽くし、そういう環境を整えることが政治の役割だと認識しております。
 このような考えの下に、努力が報われ再挑戦できる社会などを構造改革の目指す未来の姿として国民に呼び掛けていきたいと思っております。

 教育に関する御質問でございますが、いろいろ歳出の思い切った見直しを十四年度予算におきまして行いましたけれども、わけても人材育成・教育については重点分野の一つとして予算を再配分しております。また、育英奨学事業の充実、教科等に応じた少人数の授業推進など、今後とも教育の充実に努めてまいりたいと考えます。

 人口推計についてでございますが、我が国の人口が二〇〇六年から減少に向かう原因は、出生児数の減少、すなわち少子化であります。急速な少子化の進行は、我が国の経済社会に広く大きな影響を与えるものと思っております。子を持つこと、育てること、このことに大きな喜びと価値が見いだせるような社会にするのも必要ではないかと思っております。こうした家庭や子育てに夢や希望を持つことができるような社会にしていかなければならないと思います。

 あっせん利得処罰法の処罰対象についてのお尋ねでございます。
 私設秘書等に処罰対象を拡大する問題も含めまして、各党会派の議論を踏まえつつ、私としても、いろんな議論を総合的に考えながら、腐敗防止に役立つような適切な対処をしていきたいと思います。

 ブッシュ大統領の演説に関してでございますが、様々な課題に直面する二十一世紀において、日米の協力関係は引き続き極めて重要であります。これからブッシュ大統領が訪日されますが、今後、日米関係の強化というものは、単に日本やアメリカの関係のためだけではない、世界の繁栄と発展のために必要不可欠なものであるという認識の下に、率直な意見交換を行っていきたいと思います。

 イランについては、我が国は、その改革路線を支援していくことが重要と考えておりまして、同時に、イランが国際社会の懸念を払拭する措置、行動を取るよう促してもいます。
 北朝鮮については、ブッシュ政権は、前提条件なく北朝鮮との真剣な協議を開始する用意があるとの立場に変更はないものと承知しております。
 今月訪日されるブッシュ大統領とも、いろいろな国際情勢につきましても、個人的信頼関係の下、幅広い意見交換をして、今後とも日米強化の進展に役立つような意義深い会談にしたいと思っております。

 国連を中心とした安全保障についてでございますが、我が国は国連への協力を外交の重要な柱としております。国連平和維持活動などの国連諸活動に積極的に今後も協力していきたいと思います。
 また、国連の活動への参加のために自衛隊と別個の組織を設けるべきだというようなお考えでございますが、これは膨大な経費と時間を要します。また、第二自衛隊的なものを作るのがいいのかどうか、いろんな御批判もございます。そういう点を考えますと、国連の諸活動への新たな組織をPKOのために作るということについては、非効率な点もありますので、私は、その必要はないと考えております。

 国際刑事裁判所規程についてのお尋ねでございますが、我が国は、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持する観点から、国際刑事裁判所の設立に向けて努力してきております。国際刑事裁判所規程の締結については、現在、同規程の内容を精査するとともに、国内法令との整合性について必要な検討を行ってまいります。

 東チモールに対する支援についてでございますが、東チモールの安定はアジア太平洋地域の安定にとって重要であるとの認識の下、九九年に東京で我が国は支援国会合を開催し、三年間で約一億三千万ドルの復興開発及び人道支援を表明しました。これまでNGOや国際機関とも協力して東チモールの国づくりのプロセスを支援してきており、今後とも、東チモールの自立に向け可能な限りの支援を行ってまいりたいと考えます。

 ODAの今後の取組についてでございますが、ODAは、我が国が国際社会の安定と繁栄の実現に向け取り組むに当たっての極めて重要な手段であります。厳しい財政状況の下で、来年度予算については一〇%削減の方針でありますが、ODAを戦略的かつ効果的に活用することによって国際社会の期待に積極的にこたえてまいります。

 アフガニスタンにおけるNGOの活動についてでございますが、現地で人道支援活動を行っているNGOの活動は、重要であると認識しております。施政方針演説においてNGOに具体的な言及はしませんでしたが、アフガニスタンの復興支援を含め、我が国の外交全般においてNGOの果たす役割にかんがみ、NGOとの間で十分な連携協力を図っていく考えであります。

 靖国神社参拝についてでございますが、諸般の状況を見て判断したいと考えております。
 新たな国立の慰霊施設についてでございますが、現在、内閣官房長官の下に懇談会を開催し、おおむね一年を目途として、だれもがわだかまりなく戦没者等に追悼の誠をささげ、平和を祈念することのできる記念碑等国の施設の在り方について幅広く御議論いただいているところであり、この懇談会の意見を踏まえて対応を検討してまいります。

 日韓の歴史共同研究についてでございますが、本件歴史共同研究については、昨年十月に金大中韓国大統領との間で行いました首脳会談を踏まえ、現在、韓国側と最終的な調整を行っております。調整の具体的見通しを申し上げることは現時点においては差し控えたいと思いますが、両国は本件共同研究を早期に立ち上げることで一致しており、韓国側との間で精力的に協議を行っていきたいと思います。

 京都議定書についてでございますが、地球温暖化問題は早急な対応が必要であり、今国会における京都議定書締結の承認と必要な国内法の整備を目指します。また、米国の建設的な対応を引き続き求めるとともに、途上国を含めた国際的ルールが構築されるよう、最大限の努力を続けていきたいと思います。

 小泉内閣の経済政策についてでありますが、構造改革、構造が抜けたじゃないかというお話でありますが、言葉は短い方がいい。聖域なき構造改革というのは何回も言っていることであります。改革なくして成長なしの方が分かりやすいでしょう。構造が抜けたから改革しないなんというのは、言葉じりをとらえた発言だと、大変遺憾に思っております。

 私の構造改革は、国民の将来に対する不安の解消を通じ、消費、投資の経済活動を活性化するとともに、金融機能の再生、新規成長分野への資源の投入、民間ビジネス機会の拡大による設備投資、雇用増加、コストの低下等を通じ、中期的には景気を回復させ、持続的な経済成長を実現するものであります。引き続き、このような考えの下に、経済・財政、行政、社会の各分野における構造改革を断行してまいります。

 日本道路公団が昨年十三の工事を発注中止した件についてでありますが、本件は、道路公団の事業執行上の問題であり、道路公団において予算の状況などに基づき判断がされたものと考えております。

 天下り禁止についてでございますが、天下りの問題については、公務員制度改革大綱などに基づき、特殊法人等の役員退職金の大幅削減や再就職状況に関する情報公開の徹底等に努め、国民の理解を得られるよう、厳しく対処してまいります。

 道路特定財源についてでございますが、平成十四年度予算においては、公共投資を一割削減する中で道路予算についても削減を行っております。その結果、自動車重量税を含めたいわゆる道路特定財源の額が道路予算の額を上回ることとなり、十四年度においては、これを使途の限定なく一般財源として初めて活用することを決定しております。
 なお、道路を含め、特定財源及びその税制の見直しについては、その基本的な在り方について経済財政諮問会議や政府税調等の場において幅広く検討を進め、十五年度予算に反映させていきたいと考えます。

 痛みを和らげる方策についてでございますが、構造改革を推進する過程では、非効率な部門の淘汰が生じ、社会の中に痛みを伴う事態が生じることもあります。しかし、この構造改革抜きにやったならば、将来もっと大きな痛みを伴うということを考えなくてはなりません。
 私は、この構造改革なくして成長なしという方針の下に、雇用対策、中小企業対策等を始め、できるだけの痛みを緩和する措置を努めて改革に邁進していきたいと思います。

 経済情勢が厳しく、多くの方が困難に直面している中にあって、私は、改革なくして成長なしというこの小泉内閣の方針は依然として多数の国民の支持を得ていると考えております。この声をしっかりと受け止めまして、揺るぎない決意で構造改革に邁進してまいります。

 ホームレスの自立の支援についてでございますが、政府としては、平成十一年に取りまとめましたホームレス問題に対する当面の対応策に基づき、関係省庁が関係地方公共団体と一体となって雇用、保健医療、住まい等の各般にわたる対策に取り組むなど、ホームレス対策の推進に努めてまいります。

 デフレ阻止についてでございますが、デフレ阻止のためには、金融政策による対応のみならず、政府、日本銀行が一致協力してデフレ問題に総合的に取り組むことが必要であると考えます。
 緊急対応プログラムを政府としては策定し、平成十三年度第二次補正予算を編成したところですが、今後は、十四年度予算と十三年度第二次補正予算とを切れ目なく執行するとともに、不良債権の処理、特殊法人改革、税制改革などの構造改革を断行することにより、将来に対する国民の不安感の解消等を通じた個人消費の回復や経済の活性化を図り、デフレの阻止に取り組んでまいります。

 「改革と展望」についてでございますが、今般閣議決定した「改革と展望」は、日本が目指す経済社会の姿とそれを実現するための構造改革を中心とした中期的な経済財政運営について、具体的な数値とともに明確な将来展望を示しており、絵にかいたもちとの御批判は当たらないものと考えます。

 雇用対策とワークシェアリングについてでございますが、厳しい雇用失業情勢を踏まえて、政府としては、サービス業を中心とした新規産業の創出、雇用の創出を推進するため、医療・福祉分野等を中心とした規制改革の推進、さきの第一次補正予算で計上した緊急地域雇用創出特別交付金を活用した新公共サービス雇用の創出等の施策を積極的に推進しております。

 加えて、雇用のミスマッチの解消を図るため、インターネットを通じて官民の求人情報を一覧で検索できるしごと情報ネットの運用、中高年ホワイトカラー離職者等に対する職業能力開発を企業や大学、NPO等のあらゆる民間資源を活用して推進していきたいと思います。
 沖縄県において本年四月に稼動予定の、再就職を希望する者に対して全国の再就職支援機関の情報提供を行う情報ネットコールセンター、いわゆる働らコールの活用等の施策を積極的に推進しております。

 さらに、ワークシェアリングを推進するため、昨年十二月に政労使ワークシェアリング検討会議を設置しましたが、その検討に当たっては、労働者の多様な働き方に応じてその適正な処遇を確保するという観点も十分に踏まえ、本年三月を目途に基本的な考え方についての合意が得られるよう取り組んでまいります。

 NPOに対する認識及び支援税制についてでございますが、NPO、NGOは、行政でも営利企業でもない第三の主体として、国民の様々な多様化した要望にこたえ得る組織としてこれからも大いなる役割を発揮してくれると期待しております。
 NPO法人に対する寄附金について、税制上の優遇措置を与える認定NPO法人制度は昨年十月から施行されたところであり、できるだけ多くのNPO法人に活用していただくことを期待しておりますが、その認定要件については、今後、NPO法人の実態等を見極めた上、検討していくことが必要であると考えます。

 地方の財源や補助金の一括交付金についてのお尋ねですが、地方の財源の問題については、地方にできることは地方にゆだねる、この方針の下に、民主党の考えも含め根本的に検討してまいりたいと考えております。
 補助金等の在り方については、平成十四年度予算においても、地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金について、制度の改正を含めた一層の拡充を図る等、積極的に見直しを行っているところであります。

 民主党が提出した地域金融円滑化法案についてでございますが、御指摘の地域金融円滑化法については、金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については慎重に考えるべきものと考えます。政府としては、先般の改革先行プログラムに基づき、中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の一層の円滑化に努めるよう金融機関に対して要請しているところであります。

 税制改革及びプライマリーバランス赤字解消に向けた取組についてでございますが、税制の改革は、構造改革の大きな柱の一つでありまして、増税策との批判は当たりません。プライマリーバランス赤字解消について、先般閣議決定された「改革と展望」を踏まえ、歳出の質の改善や抑制等を推進するとともに、受益と負担の関係についても引き続き検討を行い、取組を進めてまいります。

 外務省改革及び機密費に関するお尋ねでございますが、これからの外務省改革について、川口大臣も意欲的に取り組んでおられます。内外の信頼を一刻も早く回復するように、私も川口大臣の先頭に立つ積極的な姿勢を応援し、政府一体となってこの改革に取り組んでいきたいと思います。
 また、報償費の執行に当たっても、厳正かつ効率的な執行の徹底を図り、国民の信頼の回復に努めてまいりたいと思います。なお、内閣官房長官からも度々答弁しているとおり、外務省の報償費が内閣官房に来ているということはございません。

 農業政策についてでございますが、我が国の農業は、食料の安定供給はもとより、国土、自然環境の保全等の多面的な機能を有していますが、御指摘のように、このような多面的機能の十分な発揮を図るための施策を講じていくことが必要であります。
このため、農業生産基盤については、環境創造型事業への転換を図りつつ、重点的、効率的な整備に努める一方、意欲と能力のある経営体が創意工夫を生かした経営を展開できるよう、農業の構造改革を進めてまいります。

 食の安全についてでございますが、国民に安心して食の不安を解消していただけるためにも、この食の安全の一層の確保に最善を尽くしていく必要がございます。このため、畜産・食品衛生行政の改革を目指し、例えば、農林水産大臣と厚生労働大臣の諮問機関であるBSE問題に関する調査検討委員会の報告なども得て、食の安全と安心を確保する仕組み作りについて真剣に取り組んでまいります。
 また、JAS法など食品の表示制度を見直し、その改善強化を急がせるとともに、食品衛生法等に基づく規制、基準の遵守の徹底を図るなど、消費者の安心と信頼の回復に総力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

 司法制度改革でございますが、政府としては、必要な法制上又は財政上の措置等を講じるなどして、新しい事後チェック・救済型社会にふさわしい、国民にとって身近で信頼される司法制度を構築してまいりたいと思います。改革の推進に当たっては、情報公開による検討過程の透明性の確保に最大限の努力を行ってまいります。

 人権委員会の設置場所についてでございますが、このたび新たに設置される人権委員会については、法務省が関係分野に関する事務につき人材やノウハウの蓄積があることを考慮し、委員会運営の独立性にも配慮した形で法務省の外局として設置することとされたものと承知しております。

 住民基本台帳ネットワークシステムについてでございますが、このシステムでは、都道府県や指定情報処理機関が保有する情報は、法律上、氏名、住所、性別、生年月日の四情報などに限定されていること、利用目的に法律上の根拠を必要とするほか、目的外利用を禁止していること、こういうことなどから、個人の自由とプライバシーを侵害するおそれは少ないものと考えます。このシステムを有効に活用し、電子政府、電子自治体の中核となる行政手続のオンライン化を図ってまいります。

 児童扶養手当制度でございますが、今回の児童扶養手当制度の見直しは、新しい時代の要請に的確に対応するため、母子家庭対策を総合的に見直す一環として行うものです。
 具体的には、母子家庭の自立促進のため、相談機能の強化を図るとともに、子育て支援策、就労支援策、養育費の確保策、経済的支援策などについて見直し、母子家庭の総合的な施策の展開を図るための法改正を行ってまいりたいと考えております。
 この中で、児童扶養手当制度につきましては、児童の福祉や自立が困難な者についてきめ細かな配慮をしつつ、母子家庭の自立が一層促進され、また、制度そのものが厳しい財政状況の中でも維持可能なものとなるようにしていきたいと考えております。

 選択的夫婦別姓を認める民法改正についてのお尋ねでありますが、この問題は婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題でありますから、御指摘の世論調査の結果に見られる国民の意識動向や議論の推移を踏まえて、更に検討を進めてまいりたいと考えます。

 配偶者からの暴力被害者の自立支援についてでございますが、配偶者暴力防止法に基づき、本年四月から業務を開始する都道府県の配偶者暴力相談支援センターにおいて、被害者の自立を促進するための援助が行われることとなっております。また、地域の様々な関係機関、団体等が連携協力し、被害者の自立を支援していく活動におきましても、支援センターなどを活用してまいりたいと考えています。

 昭和天皇の和歌の引用についてでございますが、私は、あの「ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ松そをゝしき人もかくあれ」、この歌が、敗戦後まだ半年もたたない、多くの国民が敗戦に打ちひしがれたときに詠まれたことについて、いつもあの歌を読むたびに心から感動しております。
 困難に屈しない、難局に直面しても雄々しく立ち向かうという気概を込めて歌ったものでありまして、私は、これを天皇陛下を政治的に利用したとの御指摘は当たらないと考えております。

 皇室典範に関するお尋ねでありますが、女性天皇の問題を含め皇位継承制度の在り方については、皇室の歴史や伝統、そしてそれらを踏まえた国民の皇室に対する気持ちなど様々な背景があるため、幅広い観点から考えるべき問題であると考えております。(拍手)

○議長(井上裕君) 答弁の補足があります。小泉内閣総理大臣。
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 先ほどの江田議員の質問の中で、NGO問題で国会を混乱させ、これを利用したのではないか、それを知りながらこの機会に乗じて外相を辞めさせたのではないかとの質問がありましたが、これは次のような意味です。
 私が言ったのは、本来、外務省の問題が、国会全体の問題になってきたと、認識が違うんです。江田議員はそう思っているでしょうけれども、国会が混乱したのは事実なんですよ。しかし、衆議院で混乱したのが参議院に及ぶかもしれないというのは、それは私の判断なんです。それは認識の違いだと思う。いずれにしても、国会全体を混乱させた事実には変わりないんです。私はそういうように思います。
 そういうことで、私は、これは国会全体の混乱を最小限にとどめようということで判断したわけであります。見解の相違だと思います。(拍手)


2002/02/07

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