2001/05/09

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小泉総理の所信表明演説に対する代表質問

民主党 鳩山 由紀夫

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の所信に対し質問をするとともに、私の所信を表明し、私たちが政権を担うため、これまで積み上げてきた構造改革の姿を明らかにしていきたいと考えます。

 この大型連休中、日本各地の行楽地では、子どもや父母とともに、つかの間の休日を楽しむ多くの人々の姿が見られました。夏の沖縄から、桜のつぼみがようやくふくらんだ北海道まで、美しい日本の風景の中に溶け込む姿には、どこかほっとさせられるものがあります。しかし、普段と変わらぬその光景とは裏腹に、今、多くの国民は言い知れぬ不安と、遅々として進まないこの国の改革に苛立ちを募らせています。言うまでもなく、この国民を包む暗い空気をつくり出した責任の多くは、あなたが総裁となった自由民主党そのものにあります。だからこそ、いや、今度こそ、あなたの力で、あなたの所属するあの忌まわしい自民党を変えることができるのではないかという期待が、あなた自身に寄せられているのです。

 私たち民主党が、党是として主張してきた日本の構造改革に、あなたが嘘偽りなく取り組むというのであれば、あなたの内閣と真摯に議論を重ねていき、改革のスピードを競い合うことは、やぶさかではありません。

 しかし、あなたが、目前に迫った参議院選挙のための単なる偽善的改革者であるとすれば、私は、徹底的にその欺瞞を白日の下にさらす決意であります。総理、私たちの国に残された時間は長くはありません。私は単に、危機感を煽るために言っているのではなく、あなたの党が今までやってきたような、改革を先送りする政治をこれ以上続けられては、この国に未来がないと確信するからです。

 一昨日の総理の所信表明には、「改革」という言葉が何と四十一回も踊りました。その勇ましいかけ声とは裏腹に、具体的な提案はどこにも見当たらず、まさに「言葉は踊る、されど改革は進まず」の感は否めませんでした。

 そこで、あなたの政治姿勢についてお尋ねします。
 まず、あなたがつい最近まで、森派の会長として支えてきた森内閣は、景気対策と称してはバラマキを続け、構造改革を先送りしてきました。では、一体なぜ、森内閣では改革ができなかったのでしょうか。あなたは昨年、森改造内閣ができたとき、私との雑誌の対談で「この内閣は歴代最高の出来の内閣だ」と豪語されました。しかしその内閣は、結局なにもできませんでした。しからば、森内閣ではできなかったことが、あなたの内閣ならできるという理由は、どこにあるのでしょうか。

 次に、自公保連立という政権の枠組みをまったく変えないまま、なぜ今度は「改革断行内閣」と言えるのか、あなたは国民に説明する義務があります。国民に対して、総理はどう説明するおつもりなのでしょうか。

 さらに、総理は自ら、改革に抵抗する勢力を恐れず、ひるまず、断固として改革を進めるとしていますが、一体、その抵抗勢力とは誰のことなのでしょうか。

 以上三点について、総理の改革姿勢を明確にする上でも、是非、明らかにしていただきたいのです。

 さて、私たち民主党は、これまで愚直なほどに、構造改革の必要性とそのための具体的な改革提案を行ってまいりました。小泉総理が、抵抗を排してでも改革を断行すると力強い決意を示されたので、私たちは、やっと対等の立場で政策論争ができるようになったと素直に喜んでいるところです。そして、日本大改革のためのリードオフマンとしての、積極的な役割を果たしていく決意を新たにしています。その観点から、「批判のための批判ではなく、改革のための改革提案」を総理に申し上げ、その一つひとつについて、小泉総理ご自身の姿勢をお尋ねし、また、その改革姿勢を、野党の立場からチェックしていきたいと考えています。

 そこで伺います。第一は、経済・財政の構造改革です。
 小泉総理は、内閣の第一の仕事として、緊急経済対策を速やかに実行に移すと言われました。政府の緊急経済対策は、構造改革を先送りするものや、国民の理解を得ることが困難なもの、モラル・ハザードを生み出すだけのものが含まれています。これでは、構造改革が聞いて泣きます。その森内閣がとりまとめた緊急経済対策を実行に移すことが、なぜ改革の断行につながるのですか。私には不思議に思えてなりません。

 小泉総理は、自民党総裁選で、国債発行額を三十兆円以下に抑制することを、公約に掲げられました。私は、当然これは今年度から実行する公約であると受け取りました。しかし、連立与党合意では、これは来年度予算の目標とされ、さらに一昨日には、何か起きれば柔軟に考えると、公約だったはずのものがどんどん後退しております。加えて、総裁選であなたと真っ向から意見がぶつかった自民党の麻生政調会長からは、補正予算を組むという発言も出ています。これでは、どれが本当なのか、国民にはまったくわかりません。この際、はっきりしていただきたいと思います。

 財政健全化の道筋として、国債発行額の抑制は当然のことであり、問題はその先のビジョンを示すことにあります。私たちなら、五年以内に、プライマリー・バランスの均衡をめざします。そのためには、公共事業を三割削減し、行政改革を断行して特殊法人への補助金や行政経費を大幅削減するなど、まず徹底した歳出削減に取り組みます。

 そこで、総理、提案があります。財政構造改革に取り組む姿勢を明確にするため、国債発行額を三十兆円以下に制限する法案を私たちは準備しようと考えますが、総理は当然この法案に賛成すると考えてよいか、明快なご答弁をお願いします。

 今年度から、財政投融資制度が変わりました。しかし、道路公団に代表される非効率な特殊法人の延命に国民の税金と郵貯資金を投入する仕組みは、今までと何ら変わりがないではありませんか。せめて、特殊法人の資金調達方法として、財投債や政府保証債は認めず、財投機関債に限るべきではないですか。私たちが、そうしたルールを明確にした法案を提出すれば、郵貯改革・特殊法人改革を主張してきた総理は当然賛成していただけると思うのですが、いかがですか。

 これまで、不良債権の実態は常に黒いベールに包まれていました。そして、年を追うごとに、不良債権の金額は増え続けてきました。大蔵省時代から、一貫して金融当局が真実を隠し続けたことが、巨額の不良債権という怪物を生み出してしまったのです。こうした姿勢が続く限り、金融システムに対する不信感はなくなるはずがありません。先月、ようやく私たちの要求に応じて、政府は、わが国の問題債権がなんと百五十兆円にのぼることを明らかにしました。この数字は、これまで公表していた数字の倍近い数字であり、驚くべきものと言うほかありません。小泉総理は、この百五十兆円という数字を聞いてどうお感じになったでしょうか。また、金融当局がその事実をこれまで隠し続けてきたことを、やむを得なかったと認めるのでしょうか。ご答弁願います。

 政府の緊急経済対策は、不良債権の最終処理を売り物にしています。しかし、その対象はごく一部に限られ、肝心な部分がまったく抜け落ちています。すなわち、倒産寸前企業など明らかに不良債権として処理すべきものを、甘い資産査定で、単なる灰色債権として、処理を先送りしているのです。問題の核心は、百七兆円にのぼる要注意債権の査定を、あらためて厳格にやり直すことです。私たちなら、直ちに大手銀行を中心とした一斉検査を実施し、厳格な資産査定と引き当てを行わせ、半年以内に金融不安を解消します。その上で、不良債権の抜本処理を二年で終わらせます。これこそ構造改革のスタートです。総理が金融改革に本格的に取り組むなら、当然そのようにされると考えますが、いかがですか。

 まだ問題はあります。それは、経営不振企業に対する安易な債権放棄を、最終処理と称していることです。甘い再建計画で借金を棒引きし、一時的な企業の延命を認めたところで、問題が先送りされるだけです。私たちは、公的資金を投入した銀行による安易な債権放棄、すなわち、税金による私企業の救済は認めるべきではないと考えます。小泉総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 雇用のセーフティ・ネットを整備することは、国民が抱く失業の不安を解消するために極めて重要な問題です。私たちなら、国民が安心してその能力を発揮し、働くことのできる環境をつくるため、失業に備えた雇用保険制度を充実するとともに、再チャレンジを応援する制度を創設します。また、高い金利の住宅ローンに悩むサラリーマンについても、金利減免などの支援策を検討します。

 森内閣が掲げたIT基本法では、五年間かけて日本をIT先進国に押し上げるとしています。しかし、この分野における進歩のスピードは早く、世界は待ってくれません。IT革命のスピードをあげて起業活動を活発にし、新しい雇用のチャンスを広げることが必要です。
働く生活者への支援とIT革命の推進について、総理の積極的なお考えをお聞かせください。

 第二は、中央集権が生み出した補助金行政の改革です。
 明治維新のころ、欧米列強の圧力を前にして、私たちの祖先は、中央集権体制をめざしました。それはある時期まで、うまく機能しました。しかし、官主導の中央集権体制は、一人ひとりの多様性が生きる二十一世紀の社会には、ふさわしくありません。そこで、私たちは、官僚主義、中央集権体制をうち崩し、民主主義に基礎をおいた分権社会を確立するために、二つの改革を提案しています。

 一つは、天下り禁止法の実現です。
 官僚が、自ら認可した公益法人に天下り、その影響力を行使して補助金・出資金を注ぎ込む。果ては政治連盟なるものを立ち上げ、特定の議員や政党に政治資金を提供するという仕組みが、この国でまかり通っています。小泉総理が真に改革を望むのであれば、何よりもまず、こうした理不尽な税金の無駄遣いと不正使用を止める覚悟が必要だと考えます。

 私たちは、補助金や出資金を受けている公益法人、国から仕事を受注している企業・団体への天下りを禁止する法案を、今国会中に提出する予定です。総理なら当然この法案に賛同されると考えますが、いかがでしょうか。

 次は、地方分権改革の実行です。
 私たちは、自治体と地域に根ざして生活している住民が、権限と責任を持ち、自ら決定できる地方分権の社会を確立すべきだと考えています。

 そのためには、補助金を「一括交付金」に改め、自治体が必要な事業を自らの判断で実施すべきだと思います。小泉総理は、この考えに賛同し、私たちが提出する公共事業一括交付金法案に賛成していただけますか。

 第三に、公共事業の問題について質問いたします。
 私たちは、これまで一貫して、無駄な公共事業の歳出削減と、今現実に進められている事業の再評価の必要性を訴えてまいりました。あなたがもし所信表明演説で主張したとおりに、構造改革を断行して歳出を削減するというのであれば、公共事業は当然削減するということになりますが、総理のお考えを具体的にお示し下さい。

 諫早湾の干拓事業や熊本県の川辺川ダムの事業は、小泉総理なら当然、即刻中止するものと思いますが、いかがですか。また、公共事業の予算を確保するために政府が行ってきた、長期計画の策定というやり方を直ちに改めなければ、現実には無駄な公共事業は見直せないと思いますが、総理は今後どのようにするおつもりなのか、ご答弁をお願いします。

 小泉総理、私は、農林水産業に従事する人たちが今、経済的に厳しい環境に置かれていることを憂慮しています。農林水産業は、国の基本です。しかし、これまで自民党政権が、この人々を豊かにするために予算を使ってきたとは、私には到底思えません。

 自民党政権の農政は、毎年一兆二千億円もの農業土木予算を使い、農道や大規模林道の建設、さらには飛行機がほとんど着陸しない農道空港などを日本中につくり、予算をばらまいています。これでは、農業に生きる人々を豊かにするのではなく、まさに農業土木に従事する業者を潤すための農政でしかありません。

 私たちは、農業予算を、農業土木者の手から農民の手に取り戻すことを強く訴えています。具体的には、農業土木予算を、「緑のダム」づくりなどの森林再生や、その人材の確保、さらには農業後継者の養成など、人への投資に振り向けるべきだと考えますが、総理のお考えを伺います。環境を重視し、人への投資を重視する小泉総理であれば、この意見にご賛同いただけると思いますが、いかがでしょうか。

 第四に、小泉総理の外交について質問します。
 私たちは、日米同盟関係を外交政策の基軸に置きます。しかし、それは米国の顔色を窺い、唯々諾々と従うことを意味しません。例えば、地球温暖化対策に関する京都議定書の枠組みから米国が離脱を表明したことは、地球温暖化対策を後退させ、グローバルにもわが国の国益にとってもマイナスです。総理は、米国の対応いかんにかかわらず、日本政府として議定書を早期批准すべきだと考えませんか。

 東アジアの平和と安定は、日本外交のもう一つの重要な柱です。私は先週、韓国を訪問し、金大中(キム・デジュン)大統領をはじめとする韓国のリーダーたちと、二十一世紀の日韓関係や東アジアのあり方について率直に意見を交換してきました。また、昨年末には中国を訪問し、江沢民主席をはじめとする中国の政治指導者たちと会談しました。

 二つの訪問で私が一貫して呼びかけたのが、東アジア地域の平和と安定のために、「不戦共同体」をつくることです。この構想を実現するためには、日本と近隣諸国の間に強い信頼関係を築きあげねばなりません。だからこそ、私たちは過去の歴史を直視すべきなのです。そして、政府も国民も、わが国のことのみを考える狭い国益概念にとらわれることなく、広く東アジアの平和と安定に責任を持つんだという自覚を持つべきです。私は、日本と韓国・中国との間で歴史教科書対話に着手し、これを推進することを提案します。総理のご所見を伺います。

 一方、総裁選の最中、総理は何度も靖国神社に公式参拝すると言ってこられました。閣僚の公式参拝は、宗教に対する国家権力の関与に当たるとの指摘もあります。あなたは、現在も、首相として靖国神社を公式参拝するおつもりなのですか。

 小泉総理が誕生した直後に、北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏と思われる人物が、偽造パスポートを持って、わが国に不正入国しようとした事件が起こりました。この人物は、出入国管理法違反を繰り返していたと見られますが、政府は、十分な審査はもちろん、明確な身元確認さえ行わず、実にあっさりと国外退去させてしまいました。まさに、総理自身が、かつて厳しく批判した外務省のことなかれ主義に、自ら染まってしまわれたのではありませんか。本件に関する政府の対応は、わが国の主権と国益の観点から、どのように説明されるのですか、総理に質問します。「時間をかけても結果は同じだった」などという消極的な答弁は望みません。

 次に、対ロ外交について質問します。北方四島の帰属問題解決をめぐっては、自民党内に、「二島先行」か「四島の帰属優先」かという路線対立があります。そして、日本政府、すなわち外務省は、この自民党内の派閥次元の対立に振り回されてきました。森内閣では、明らかに二島先行返還論を推進してきましたが、小泉内閣では方針転換するのか、田中外務大臣に伺います。

 昨日、田中外務大臣は、外務省内人事をめぐって、「機密費もそうだが、どす黒い利権の問題もある」と語っています。外務大臣に端的にお聞きします。「どす黒い利権」とは、具体的に何を意味するのですか。あなたには国民に説明する義務があります。

 いわゆる外交機密費問題の発覚と、そのうやむやな内部調査によって、国民の外務省に対する信頼は地に墜ちています。よりオープンな真相究明を進めるとともに、今の機密費の制度的見直しが不可欠です。執行凍結などという姑息な手段でやり過ごすことは、透明性を重視する小泉総理ならあり得ないと思います。私たちは、法律で機密費の支出範囲を厳しく限定し、支出状況を国会の非公開委員会でチェックする「機密費公表法案」を用意しています。その上で、官房機密費は四分の一に、外務省機密費も二分の一以下に大幅削減することを求めています。総理、私たちが法案を提出すれば、これに賛成していただけますか。また、補正予算を組んで機密費を減額する意思をお持ちですか。

 七月の参議院選挙がいよいよ迫ってまいりました。各党の立候補予定者は、顔を真っ黒にして運動を続けております。総理、あなたの党の比例代表候補者はその多くが旧建設省、厚生省、運輸省、農林水産省など、役所の出身者で占められているのは周知の事実です。

 これらの候補者は、たとえば建設業界、日本医師会、全国農業協同組合など、多くの補助金を受け取るなど、政府の庇護の下に、既得権を手にした業界団体の支援を受け、この連休中も、東に行っては建設業者を集め、西に行っては農協の職員を集め、既得権を守るための活動を元気に展開しています。改革をさせまいとする多くの候補者たちが、改革を声高に叫ぶあなたと手に手を取って、ニッコリと写真を撮り、運動を展開しているのです。

 KSD事件、幽霊党員問題、あなたが守ろうとしている自民党の実態は、あなたが言うのとはまったく逆の方向へ、必死に走り続けているのです。あなたが総理になったことで、これらの人たちは、「これで選挙がやりやすくなった」と、内心ほくそ笑んでいるのではないでしょうか。これは皮肉を通り越して、喜劇にすら見えます。果たしてどちらが本当の自民党なのか、そしてあなたは本当はどちらの側に組しているのか、問われるべきはあなたそのものなのです。

 もし、あなたが自民党を変えようと本気で思うならば、まず、既得権を守るために立候補を予定している比例代表の候補者を見直すべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。

 あなたは所信表明演説で、長岡藩に届けられた米百俵の話を紹介しました。しかし、よく考えてみれば、米百俵を将来への投資のための学校づくりに当てず、百俵どころか子供たちに借金まで背負わせて、千俵、万俵の米を食い続け、ついには日本そのものを食い物にしているのが、自民党政治そのものではありませんか。私たちは、資源も何もないわが国が世界の中で生きてゆくために、人への投資を徹底的に行うべきだと、結党以来訴えてまいりました。

 しかし、そうした議論には一切耳を貸さず、まったく利用されない港湾や、自然を破壊するための林道開発など、まさに国民の米ともいえる大事な税金を、あなたの党は食い続けてきたのです。このことが結果として、六百六十六兆円もの借金をつくり、わが国財政を破綻寸前にまで追いやったのです。米百俵の教訓は、あなたの足元の自民党こそが、胸に刻まなければならない話です。

 私は、二十一世紀の日本が、他者を思いやり毅然とした品格ある国家として再生するために、民主党を結党いたしました。私たちは、自立と共生にもとづく市民が主役の社会、そしてすべての人に公正であることを約束する社会を実現します。

 小泉総理、私たちに残された時間はわずかしかありません。これまで国民が築き上げてきた日本のすべてを失うか、それとも明るい未来の扉を開けるか、道は二つしかありません。改革を具体的に行い、そのスピードを競い合う場に、この国会がなることを切に願い、私の所信の表明と質問を終わります。

■小泉首相の答弁

 鳩山由紀夫議員の御質問にお答えいたします。

 初めに、小泉内閣において構造改革ができるのか、その理由のお尋ねでありますが、私は、構造改革なくして景気回復はない、あるいは経済の再生はないと言っておりますが、今回の小泉内閣におきましては、改革断行内閣にふさわしい陣容が整ったものと考えております。

 また、経済財政政策について、従来の需要追加型の政策から、不良債権処理、競争的な経済システムの構築、国債発行の抑制など構造改革を重視する政策へとかじ取りを行ってまいります。他方、教育改革を初めさまざまな分野で、森内閣において改革の道筋がつけられているものも多々あります。いいものは継続していく、変えるべきものは変えていく、このような方針で今後ともさらに具体的な改革を進めていくつもりであります。

 抜本的な改革を進めるに当たりましては、国民との信頼関係が大事であります。私は、国民との対話を強化することによって、政策検討の過程を明らかにして、広く国民の理解と問題意識の共有を求める信頼の政治を実施していきたいと思っております。

 小泉内閣は、改革の意欲に燃えた、志と決意を持った内閣であると自負しております。今後とも、国民の理解と協力を得て、改革断行内閣にふさわしい実績を上げていきたいと思いますので、よろしく御理解、御協力をお願いしたいと思います。

 自公保連立という政権の枠組みに関する御質問がありました。
 私は、現在の公明党、保守党との連立の信頼関係を大事にしていきたいと思いますし、今後、小泉内閣の政策に共鳴をし賛成してくれる政党があったら、喜んで協力していきたいと思います。ぜひとも、御賛同いただけるなら多くの方々に、また多くの政党に協力していただく、そういう姿勢は堅持していきたいと思っております。

 改革の抵抗勢力についてのお尋ねがありましたけれども、私は、いろいろな改革を進める場合には、必ず反対勢力、抵抗勢力が出てきます。こういう勢力に対して、恐れず、ひるまず、断固としてて改革の初志を貫きたい。
 どういう勢力かというのは、やってみなきゃわからない。私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力であります。

 緊急経済対策についてお尋ねがありましたけれども、私は、この緊急経済対策は、日本経済の再生を最重要課題と位置づける小泉内閣の第一の仕事として速やかに実行に移すべき事項が盛り込まれておりますので、まず、森内閣のもとで定められました緊急経済対策、できることは速やかに実行に移していきたい。そして、さらに今後、小泉内閣としてやるべき改革を、早急に具体策をまとめて、順次実行に移していきたいと思っております。

 国債発行額と補正予算についてのお尋ねがありました。公約が後退しているというようなお話がありましたけれども、全然後退していません。国債発行を三十兆円以下に抑える目標、目標として、何で後退しているんですか。当たり前、目標、ただの。これ以下におさめていく努力をしていくんですから、後退したとは全く考えておりません。

 そして、さらに、私は増税は目標としませんから。増税はしない、そして国債発行は来年度は三十兆円以内に抑えていく、これは努力していく。あわせて、徹底したむだな歳出を削減していく、この見直しが大事であります。この実現に向けて、全力を傾けてまいりたいと思います。

 また、十三年度の補正予算についてでありますが、今、十三年度当初予算が執行の緒についたばかりであります。これを、今から補正予算を考える必要ないでしょう。この本年度予算の円滑、確実な、着実な執行に努めていくのが今の内閣に課せられた私は責任であると思っております。

 また、国債発行額を三十兆円以下にする法案についてお尋ねがありました。
 これは、私は今、平成十四年度予算について国債発行を三十兆円以下にする目標を財政健全化の第一歩として達成したい、その後さらに持続可能な財政バランスを実現するため、例えば過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない、そういうものを次の目標とする、そして、今後順次本格的な財政再建の取り組みを進めていきたいと言っているのでありまして、まず我々が取りかからなければならないのは、この第一歩、このとられた法案を準備することよりも、目標達成のために、どういう分野におけるいろいろな方策が必要かということを考えていきたい。そして、法案については、まだ出されていないんですから、出された段階でよく見て検討いたしたい。

 財投機関債についてのお尋ねがありました。この財投改革は、郵便貯金、年金積立金の全額を資金運用部へ預託する制度から、特殊法人等の施策に真に必要な資金を市場から調達する仕組みへと抜本的な転換を図るものであります。所要の法改正を行いまして、十三年度から実施することとしたものであります。

 また、財投改革後における各財投機関の資金調達については、まず、その資金を財投機関債の発行により自己調達するため、最大限の努力、検討を行うこととする。次に、財投機関債による資金調達では必要な資金需要を満たすことが困難な機関については、その業務が民業補完のために実際に必要なものかどうか、将来の国民負担を推計した政策コスト分析、償還確実性等の精査によりまして、当該法人等の業務についてゼロベースからの徹底した見直しを行った上で、真に政策的に必要と判断される場合においては、財投債によって調達した資金の貸し付けを受ける方式を認めると一いうことにしております。

 なお、政府保証債については、財政規律の確保等の観点から、個別に厳格な審査を経た上で限定的に発行を認めるという考え方を基本としているところであります。

 なお、特殊法人等については、現在、昨年十二月に閣議決定されました行政改革大綱にのっとり、新たな時代にふさわしい行政組織、制度への転換を目指す観点から、その業務の廃止、整理縮小・合理化、民間、国、その他の運営主体への移管等の改革を進めていくところでございます。

 預金取扱金融機関の要注意先以下の債権の合計額百五十兆円に関するお尋ねですが、御指摘の百五十兆円の中には、元利払いや貸し出し条件に問題が生じているわけではなくて、単に注意が必要なな債権が百兆円強含まれております。これは、国際的基準においても不良債権には該当しないものであります。
 不良債権は、銀行法に基づくリスク管理債権と、金融再生法に基づく再生法開示債権とがあり、これらについては、従来より適正に開示されてきていると私は思います。

 不良債権の抜本処理についてのお尋ねがございましたけれども、大手銀行十七行を中心とした一斉検査を平成十年に行っており、その後、既に十一行に対して二巡目の検査を実施済みであります。
 いずれにせよ、不良債権の査定等については、金融機関による自己査定、会計監査人による外部監査、さらに金融当局による厳正な検査監督を通じて、適切な資産査定等が行われるよう努めていきたいと思います。
 不良債権については、緊急経済対策を踏まえ、新規のものは三年以内に、既存のものは二年以内に最終処理を行うこととしております。

 公的資金を投入した金融機関による債権放棄についてのお尋ねですが、一般に、金融機関が債権放棄を行うか否かについては、各金融機関の経営判断により、経済合理性の観点から、個別具体的ケースに応じて判断されるべきものでありますが、政府保証を付した借入金を原資として資本増強を行った銀行の債権放棄に当たっては、資本増強の基本釣考え方において、借り手企業の経営責任任の明確、残存債権の回収がより確実となる等の合理性、当該企業の社会的影響等について考慮すべき旨が明らかにされているところであります。

 政府としては、資本増強行が債権放棄に応じるに当たって、このような点を十分考慮した上、適切に対応しているか、経営健全化計画のフォローアップの中で注視していくつもりであります。

 雇用のセーフティーネットについてのお尋ねでありますが、雇用保険制度については、倒産、解雇等による離職者に対して手厚い給付日数を確保.した改正雇用保険法の円滑な施行を図ることとしております。また、再チャレンジを応援する制度の創設についても、既に、求職者に対しては無料で公共職業訓練を実施しているほか、雇用保険の訓練延長給付や教育訓練給付など、現行制度の効果的な運用を図っているところであります。

 政府としては、不良債権の最終処理と構造改革に伴い厳しさの増す雇用情勢に的確に対応していくため、産業構造転換・雇用対策本部を速やかに改組強化し、新規雇用の創出、能力開発支援等により雇用対策に万全を期してまいります。

 住宅ローンの返済で苦労している方々に対して支援策を講じることは重要な課題だと考えております。このため、住宅金融公庫等において、住宅ローン返済が困難な者を対象に積極的にローン返済相談を行うとともに、返済期間の延長や据置期間中の金利の引き下げによる返済負担の軽減などの対策を講じているところであります。今後とも、これらの措置を的確に実施することにより、住宅ローンを返済している方々への支援を図ってまいりたいと考えております。

 IT革命の推進に関しましては、五年以内に世界最先端のIT国家となることを目指すという野心的目標を設定しております。その実現を確かなものとするため、e-Japan重点計画を着実に実行するとともに、中間目標を設定するIT2002プログラムを作成し、全力を挙げて取り組んでまいります。

 いわゆる天下り問題についてのお尋ねがありました。
 今のところ、民主党が提出を予定している法案についてはまだ詳細を承知しておりませんので、詳しいことは申し上げられませんが、出身省庁の権限や予算を背景としたいわゆる押しつけ型の天下り、この疑いを持たれる公務員の再就職について国民から厳しい批判を受けていることは私ども十分に認識しております。

 このため、公務員の再就職については、これによって行政がゆがめられることがないかとの国民の疑念を払拭できるような厳格なルールを設定することが必要と思います。三月に取りまとめました公務員制度改革の大枠に従い、今後、具体的な制度設計を進めていきたいと考えております。

 公共事業に関する補助金の一括交付についてのお尋ねですが、公共事業に係る個別補助金等のありり方については、平成十三年度予算においても地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金の一層の拡充を図るなど、積極的に見直しを図っているところであります。個別補助金の見直しについては、今後、財源問題を含めて、地方分権を推進するという観点から、種々の御提言にかんがみまして一層推進に努めてまいりたいと思います。

 公共事業費の削減についてのお尋ねですが、これは、今聖域なき構造改革というのは、歳出の増加削減においても聖域ない、徹底した見直しが必要だと思っています。私は、この二十一世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府をつくることが財政構造改革の主たる目的ですから、今後、公共投資のあるべき水準について、こうした改革の目的を踏まえて、今、経済財政諮問会議など政府・与党におけるさまざまな議論がこれから行われます。その中で、当然、公共事業費の問題についても検討を進めていかなきゃなりませんので、聖域なき構造改革、聖域なき歳出の見直し、この中で検討を行っていきたいと思います。

 諌早湾の干拓事業を中止すべきだという御意見でありますが、本事業は、長崎県を初めとする地元の強い要望に基づき、高潮、洪水等に対する防災機能の強化及び大規模かつ生産性の高い優良農地の造成を目的として着実に今実施してきているものでありまして、今後については、環境に十分配慮しつつ対応してまいりたいと思います。

 川辺川ダムについてのお尋ねでありますが、球磨川磨川流域ではたび重なる洪水被害によって多くの方々が苦しんでおりまして、治水対策が急がれていること、また安定的な農業用水を確保するため、川辺川ダムは必要な事業だと思います。したがいまして、今後とも、環境に十分配慮しつつ、完成に向け鋭意努力してまいりたいと思います。

 公共事業の長期計画の策定についてお尋ねがございました。
 公共事業についてはこれまでも、政策課題に対応した予算の重点化、事業評価の厳格な実施、入札・契約制度の適正化、コスト縮減等の見直しに取り組んできたところでありますが、歳出の見直しを行うに.当たっては公共事業も例外ではありません。さらに根本にさかのぼった見直しを行いまして、新しい時代の変化に対応し、より効率的で重点的な公共事業の実施に努めていく必要があり、経済財政諮問会議など、政府・与党におけるさまざまな議論の場において検討を深めてまいりたいと考えております。

 農林水産予算についてのお尋ねでありますが、農業公共事業につきましては、水田における麦、大豆生産の定着による食料自給率の向上や家畜排せつ物のリサイクル等の環境対策に資するよう重点的、効率的に事業を推進するとともに、農林水産業を担う人材の確保、育成対策等につきましても、森林整備の担い手である林業就業者の確保、育成対策や農業の後継者対策を講じているところであります。今後とも、循環型社会の実現や食料自給率の向上に向け、農林水産業の担い手対策を重点的、効率的に推進していきたいと思います。

 地球温暖化問題への対応ですが、我が国は、二〇〇二年までの京都議定書の発効を目指して、京都議定書を関係国が締結することが可能となるよう、七月のCOP6再開会合の成功に向けて全力を尽くします。

 その際には、地球規模での温室効果ガスの削減の実効性を確保するために、世界の二酸化炭素の排出量の約四分の一を占める米国が京都議定書を締結することが極めて重要であると考えております。このような考えのもと、京都議定書の発効に向けた交渉に米国が建設的に参加するよう、あらゆる機会を活用して働きかけを行っているところであります。

 また、環境問題への取り組みはまず身近なところから始めるという姿勢が大事でありまして、政府は、原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえるべく行動を始めたところであります。
 こうした取り組みを含め、京都議定書の目標を達成するための国内制度に総力で取り組んでまいります。

 歴史教科書についてのお尋ねですが、我が国にとって韓国、中国との友好協力関係の発展に努めることは重要であり、日韓、日中関係の大局に立ち、いかにすればこの問題が両国との友好関係を損なうことなく円満に解決できるか今知恵を絞っておりますが、こういう観点から、鳩山議員の御提提案も一つの御意見として、今後十分承りながら、検討していきたいと考えております。

 靖国神社への公式参拝についてのお尋ねがございました。
 御指摘の公式参拝は制度化されたものではないので、あえて公式参拝と呼ぶものとして行うかどうかについては、我が国国民や遺族の方々の思い及び近隣諸国の国民感情など、諸般の事情を総合的に考慮し、慎重かつ自主的に検討した上で判断したいと考えておりますが、私としては、今日の日本の平和と繁栄の陰には、みずからの命を犠牲にして尽くされた戦没者の方々がたくさんおられます。そういうとうとい犠牲の上に成り立って今日の日本があるんだということを考えますと、私は、戦没者に対して心を込めて敬意と感謝の誠をささげたい、そういう思いには変わりはありません。そういう思いを込めて、私は、個人として靖国神社に参拝するつもりでおります。

 金正日氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その対応についてのお尋ねがありました。

 本件については、法務省から、五月一日の夜、事案の第一報を受けました。その際、私からは、事案の解明を進め法令の手続に従って処理するようにとの指示をいたしました。その後、法務省は、関係当局と協議の上、関係法令等に従い退去強制という処理方針を定めたものと承知しております。

 私としても、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれなどもあり、そうした事態を避けるためにも今回の措置は適切な対応であったと考えております。

 報償費に関する民主党の機密費公表法案及び補正による減額についてのお尋ねでありますが、報償費については、国政の円滑な遂行という目的にかなうものでなければならない、真に目的にかなうものであるかどうかすべてについて再点検を行った上で執行する、執行及び管理の層の適正化のための体制を整備するという考えのもとで、厳正かつ効果的に使用するべきものと考えております。こうした考え方のもとで、平成十三年度については、減額も含め、厳正に執行します。民主党が用意されている機密費公表法案については、仮に国会に提出されるのであれば、国会の審議の場において御議論いただくべきものであると考えております。

 自由民主党の比例代表の候補者の見直しについてのお尋ねがありました。
 私は、候補者の選定に当たっては、今後、「聖域なき構造改革」、改革断行内閣、この趣旨と目的に沿った方々にぜひともたくさん出ていただきたい。この我が党の、そして小泉内閣の政策を支持するという方々が、国民の支持も得られてたくさん当選してくれたらいいなと思っております。そうすることによって、自由民主党が掲げたこの改革への意欲、また小泉内閣の掲げる政策の実現のため、候補者が、すべて一致協力して実行に移していける方々にできるだけ立候補してもらうように、これからも努力を続けていきたい、そういうふうに考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。

■田中外務大臣の答弁

鳩山代表にお答え申し上げます。二島先行返還という提案は、我が国の政府といたしましては、ロシアに対して今まで一度も提示したことはございません。これは森内閣も含めます。

 それから、二つ目のお尋ねでございますけれども、これは必ずしも特定の問題を念頭に置いたものではございませんで、むしろ、これからが大事なんです、むしろ外務省の体質及び外務省が抱えている問題というものは極めて根深いものがある、このように感じております。したがって、これを、国民の目線に立ちまして、真の国益ということのために、外務省の組織を抜本的に、しかもわかりやすく改革していきたいという私の考えを示したものでございます。


2001/05/09

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