2000/05/15 戻るホーム憲法目次

21世紀の『この国のかたち』を築くために いまこそ“論憲”のとき


■「憲法調査会」の活動スタート

 憲法の議論には、いつもトゲトゲしさがつきまとっていましたが、憲法も議論のテーブルに乗せて大いにみんなで論じあおう、憲法を幅広く総合的に調査しようという趣旨で、国会法が改正され、衆参両院に「憲法調査会」ができました。その動きに合わせ、民主党内の憲法論議も大いにやろうと、党内にも「憲法調査会」が去年の秋にスタートしています。これは鳩山代表の直属におかれ、会長は鹿野道彦さん、私が事務局長です。

 そこにおける議論は、「はじめに憲法改正ありき」または「憲法改正をしてはならない」という前提をおかない。21世紀の『この国のかたち』をこれからどう創っていくのかを考えていく上で、憲法はどのような役割を果たすのか、どのような中味がよいのかという観点から、さまざまな議論を積み重ねる。そして、今の憲法と同じがよいならそれでよいし、変えたほうがよいとなればそうすればよい。『論憲』の立場にしっかり立ち、議論を避けたり、先送りしたりという消極的な立場はとらないことを原則としています。

■日本国憲法をグローバルな視点から捉える

 戦後、現・日本国憲法が生まれる歴史を大きな世界史の流れの中で捉えてみると、戦前の日本は他の枢軸国と共に自由や民主主義の歩みとは違う方向に動き出しましたが、戦争に敗れて、自由とか民主主義や人権を大切にする方向へもう一度戻っていった、その過程で憲法が生まれたのだと思います。これは占領軍が押しつけたという話ではなく、現憲法こそが世界史の流れに添い、しかもその流れを前に進める憲法だったのです。

 しかも今日まで、現憲法とともに豊かで平和な日本を創ってきました。この憲法は国民に定着し、受け入れられています。生まれた時の悩みがあるから変えなければならないというものではない、私たちにとってはたいへん大切な憲法になっていると思います。

 男女平等については(今は男女共同参画社会と言っていますが)、つい50年ちょっと前まで日本には女性に選挙権はありませんでした。契約をしたり財産を持ったりする権利もなかったのです。しかし、この憲法ができたからこそ公職選挙法を変え、民法も変えて今日にいたっているわけで、この憲法が男女平等社会を作るうえで果たした役割は、たいへん大きなものがあります。

 9条については、「冷戦は第三次世界大戦だった」と考えてみると、物事の整理がしやすいでしょう。第二次世界大戦後、日本の立場は敗戦国。廃墟となった日本は、戦争はしません、軍備は持ちませんということ以上にはなにもできませんでした。しかし第三次世界大戦が終わって、これから冷戦後の新しい世界を作ろうという時代の日本は、世界の中でもっと大きな役割を果たすべき立場にあります。世界の中で、日本は軍備を持ちません、というだけでは済みません。9条を大切にしながら、たとえば国連が世界の警察軍(多国籍軍ではない)として世界の秩序を維持しようというなら、日本は国威発揚ではなく、いわば国際公務員として出かけて行くといった役割も果たすこともあります。さらに、第二次世界大戦直後には問題にはなっていなかった、環境権や知る権利など、50年前とは違うテーマが問われる時代になってきたことも考慮にいれなくてはなりません。

■「最良の国・日本」の実現のために

 一部には「変えることが何より大事だ」というような意見もあり、改憲をゴリ押ししてくる心配もあります。しかし、今の与党だけが3分の2で 憲法改正を発議するというのでなく、政権交代を担う複数の勢力が大合意をするのでなければ、国民的合意で、本当にすばらしい21世紀の日本を創ることにはなりません。

 党内ではこのようなことを踏まえながら、大いに議論しようと考えています。これまで、正村公宏さん、坂本義和さん、佐々木毅さん、松本健一さんなどにお話を聞きましたが、これからも大所高所の議論をもう少し聞いて、文明論、歴史論などをみんなで共有しながら、具体的に検討していきたいと思っています。

 また、常に国民のみなさん、特に女性のみなさんと共に議論し、その意見を調査に反映させていくことも大切だと考えます。国民世論の理解や後押しがなければ、現実に新しいものはできないからです。その機会も順次、設けていきますので、みなさんのご意見をぜひお聞かせ願いたいと思います。

(D'ear Vol.4掲載・4/4インタビュー)


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