2002/07/25

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154 参院・厚生労働委員会


○委員長(阿部正俊君) 先生、もしよろしければどうぞお座りになって、御遠慮なくやっていただきたいと思います。

○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。

 我が党は、一九九七年の改革もそうですが、特に今回、本会議以降、前回に引き続き、本当に国民のための医療改革、抜本改革ないままに負担増だけ、財政問題だけが先行することに反対してまいりました。そういう反対という立場だけではなく、衆議院での質疑、それから我がこの委員会での、参議院での質疑を振り返ってみましても、まだまだ審議が尽くされていない。それはもちろん私ども自身の責任でもあるわけですけれども、余りにも問題が広く大きいので、これがこのまま、今も何人もの委員からお話が出ましたが、本日強行採決されるというふうな変なうわさがありますが、そんなようなことがあってはならないんではないかという視点に立って、まだこれからこういうふうに整理して議論を進めなければいけないんじゃないかということも含めて、質疑をしたいと思います。

 たまたま今日は一九九七年の与党協の責任者として前回の抜本改革案をまとめられた丹羽元厚生大臣もお見えになっているので、大変有り難いことだと思いますし、質疑をさせていただきたいと思います。

 それで、まず最初に、これは委員長にも理事の皆さんにも、それから厚生労働省にも御礼を申し上げたいと思いますが、本委員会においては共通の認識で議論するために、それぞれ出されて説明の資料はいただいていたんですが、この委員会としての共通の資料をいただきたいということで、二回にわたって資料を出していただいたことをまず感謝申し上げたいと思います。

 ただ、残念ながら、前回出していただいた厚生労働省の資料の十二、十三、十四、附則第二条の規定にかかわる件、つまり、お金の話じゃなくて、それとは別の、医療の中身を良くする、改革することにかかわるこの附則第二条を整理し直して資料として出してほしい、いつまでにと書いてあるもの、書いていないものがあるが、その理由はなぜかと。いつまでにというのはやるという意味なのか、方向を示すというものなのか。これも我が党の山本委員の方から質問したんですが、そういう中身については全然なくて、ただ、法案だと縦に附則第二条何々、つらつらと書いてあるものを横書きにして表にしたというだけなのが非常に残念だと。

 残念だというのは、ひょっとするとこれ厚生労働省がサボっていたというだけではなく、中身がないということになるんではないだろうかというふうに思わざるを得ないので、この五年間一体何をしていたのか。この五年間抜本改革がされていないというのは国民もそれから我々国会議員も大方の認識のはずなんですが、一部には、いや、部分的には進んだよという認識があるようで、小泉総理もその辺が非常にあいまいなんですね。

 衆議院での坂口厚生労働大臣の答弁をお聞きしますと、忘れもしません、五月二十三日ですか、あのハンセン病のことについて劇的な解決を図られたそのときに、総理から、本当に今度こそ抜本改革やってくれよということで、坂口厚生大臣が小泉総理からもう熱っぽく頼まれたという答弁をされていて、小泉さんもやっぱりこの前できなかったと思っているんだなと、本当にやらなきゃならないと思っているんだなと私は思ったわけですが、一方の答弁を聞くと、薬価差益が三分の一に減ったから進んでいるんだとか、薬価差益が減ったから抜本改革が進んだというのは、これは全然見当違いじゃないかななんと思いながらお聞きをしていたわけです。

 そこで今日、私なりに資料を作らせていただきました。前回、厚生労働省から出していただいた、抜本改革にかかわる、今回の健保法改正案附則第二条にかかわることを、横書きになっていたので、前回どうだったかなということとの比較表で出させていただきました。

 それをごらんいただきたいんですが、前回の改革は、丹羽元厚生大臣お見えにならなくなっちゃったので言いやすくなりましたが、前回は四つの柱というのを立てたんですよね、抜本改革をするには。その前提としては、国民の立場に立った医療提供体制と医療保険制度の両面にわたって改革をしなければならない、この認識は私どもも一致しております。

 ところが、四本の柱を立てた。四本の柱というのは、薬価制度の見直し、二本目の柱が診療報酬体系の見直し、三番目が、先ほども何人かの方から話が出た、新しい高齢者医療制度の創設、それで四番目が、非常に多岐にわたる、医師教育から医の倫理まで、情報公開まで含む医療提供体制の見直しと、四本なんですね。

 それに対して我が民主党は、医療改革案の中間報告を一九九九年に発表したときに、こういう四本の柱という立て方がそもそも間違っちゃっているんだということを申し上げたんです。

 それは、そもそも、先ほど引用しましたように、どういう医療がいいのかという改革とその医療を行うためのお金はどうやったらいいのかという医療保険制度と、この二本の柱にしなきゃいけないのを四本にばらしちゃった。それで、厚生省が縦割りですから、それを縦割りの部局で縦割りの審議会に掛けてやったから、全部袋小路に入っちゃった。これを原点に帰れということを私どもは提案したわけですが、それはそれでおいておきましょう。おいておいて、四本の柱に合わせてどういうふうに取組が進んだのか、全く進んでいないのか。

 そうすると、一番上の薬価制度の見直しが今度の附則にも何も書いていないんですね、消えちゃっているんです。もう済んだとお考えなんでしょうかね。それから四番目の、国民にとって一番関心の深い医療提供体制の見直しも今度の附則には何も書いていない。だから、そこに横棒線を引っ張ってあります。

 何も書いていないと言われると何か厚生労働省言うでしょうから、関係あることは、第六項一号の医療事故対策、これも苦情処理ぐらいのことしか書いていないんですね。それから第六項の二号が医療及び医療費のデータベースを作ることと、こう書いてあるんですね。これは私も評価いたします。それから、第三項の一号に社会保険病院等の在り方の見直し、これも医療提供体制の在り方、国立病院なんというのは本当に必要なの、社会保険病院、労災病院というのは役割を果たしているのという話が今出ていますから、医療提供体制と言えばそうですけれども、これはむしろ厚生省改革の一環として出ているので、むしろ医療提供体制に入れるのはやめようかなと思ったんですが、でもあえて入れればこうなるんです。

 簡単に言えば、薬価制度と医療提供体制は今度の抜本改革、この附則にも全然書かれていないと考えていい。この辺どうしてなんですかね。厚生労働大臣、そこを。

○国務大臣(坂口力君) こうして先生に表にしていただきましてこれを拝見をいたしますと、確かに薬価制度の見直しというのが私たちの今回挙げました中から落ちているわけです。

 これは、私個人の気持ちの中には、この薬価制度というのは診療報酬の問題と非常に結び付きが強い。どちらかといえば診療報酬体系の見直しをする中で薬価は一緒にやったらいいんではないかという思いが強くて、薬価としてここに名前を挙げなかった。しかし、御指摘を受ければやはり薬価は薬価としての非常に大きな問題点、診療報酬の問題以外の問題もあることは事実でございますから、あるいは挙げておいた方がよかったのかなという気もしながら今お聞きをしていたところでございますが、しかし、ここは、この薬価の問題につきましての見直しというのは診療報酬だけでございませんで、それにまつわるほかのことにつきましてもその中に含めて、これは改革に取り組まなければならないというふうに思っております。

 それからもう一つの方の、医療提供体制の、これは、こっちの方は大変大事なことでございまして、これは現在のいわゆる制度を改革をしていくといいますよりも、これは厚生省の中で決着をしていかなければならないことの方が私は大きいというふうに思っている次第でございます。もちろんそれがすべてではないかもしれません。

 したがいまして、これは全体として制度改革ということよりも内部で決着を付けなければならない話でございますので、これも私たちは断行をしていかなければならない問題の重要な柱であるという認識は持ち合わせておりますことを御理解をいただきたいと思います。

○今井澄君 私、大臣の認識は基本的に私も共有するもので、そのとおりだと思います。

 薬価については、私ども民主党の提案では、そもそも製薬メーカーが薬を作るという制度自身、これは市場経済の中で作るわけですから、そもそも公定薬価なんて決めること自身の中に無理がある。しかし、国民皆保険ですから、皆さんから集めた保険料や税金をどう払うかということだから、じゃ薬価、野放しでいいかというとそうもいかない。ここの矛盾をどう解決するかは正に診療報酬体系の問題だと思うんですね。正に大臣の御認識のとおりだと私は思います。

 ですから、民主党としては、むしろ診療報酬の支払の基本を定額制にすれば、お薬を使うのか、手術で治すのか。あるいはお薬を使うとしても、高くても効き目のいい薬をちょこっと使って治すのか、何となくだらだらと薬をあれ使ってみる、これ使ってみるという今のようなやり方でいいのか。これはおのずと定額制にすればその中で方向が見えてくるという提案を申し上げているんですが、一向にそうならない。

 ただ、この問題も、薬価の問題だって、例えば医薬分業がいいかどうか。私は、歴史から考えて、昔、日本では、これ中国もそうでしょうか、医師は薬師と言われていたんですね。いいお薬を調合するのが優秀なお医者さんだった。聞いてみると、実はイギリスもそうで、アポテカリーという薬を商う者というのがそもそものイギリスの家庭医の元だったらしいですね。

 そういうことですから、これは医薬分業もいいですけれども、もう一つ患者の利便からいいますと、私は患者になってみて分かったんですけれども、今コンピューターシステム、トータルシステムの入っている病院に行くと、もう会計を済ませたら薬できているんですよ。待ち時間ないんですよ。処方せんもなくて、調剤薬局なんか行く方がかえって患者にとっては利便性が悪いんです。しかも、処方せん料が上乗せされているから支払料も高いんですよ。そうすると、これも薬価差益があるから医薬分業、それで薬価差益が減ったと言うけれども、本当にいいことなのというのは本当は見直してみなきゃならない。

 それから、薬の承認制度も随分変わりましたね。アメリカに後れを取らずに承認しようと変わってきたり、いろいろあります。だけれども、そもそも、日本の薬価は高いというのを大阪の保険医協会が現地調査に行ってばあんと出して以来、日本の薬価は外国に比べて高いのか安いのかという論争、実はまだ決着が付いていないんですよね。そうすると、この薬価の問題一つ取っても本当に十分審議する必要がまだ残されている。

 だけれども、私は、今日は薬価のことはこれ以上踏み込みませんが、二点だけあれします。

 実は、日本版参照価格制という、ドイツを見習って給付基準額制度というのが厚生省原案で出されて、結局、それは健保連や日経連、支払者側は一生懸命推奨したし、私どもを応援してくれている連合も何とかこれだけはやらせてくれということを言いに来ました。ところが、自民党さんは、何だか訳の分からない理由でこれをつぶしちゃって、白紙に戻した。

 私ども民主党は、そもそも薬は市場経済の中でできている、これに対して規制を強化するようなこういう日本版参照価格は反対だと。しかも、ドイツでやったように、二、三年しか効果がなくて、効果がないということは分かっているじゃないか、だから反対だというのをいち早く打ち上げたんですよ。

 あれ、つぶれちゃって私はよかったと思っているんですけれども、厚生労働省当局は、あの日本版参照価格制、鳴り物入りで提出して、これが通らなければ改革ができないようなことを言いましたけれども、通らなかったのに、薬価差益は三分の一に減って進んだなんということを小泉総理の答弁で耳打ちをして言わせている。どういうように御認識ですか。

○政府参考人(大塚義治君) 当時の厚生省の考え方といたしまして、御指摘のございました日本型参照価格制度というような、仮称でございますが、そうした御提案をしたわけでございますが、その趣旨は、正にただいまの御質問の中にございましたように、一方では、製薬企業のある意味では自由な活動というのを制度的にも保障、保障といいましょうか、導入をすると。これは価格設定は、最終的な価格は、売買価格は当然のことながら当事者で決めるという意味でございますが、と同時に、一方で、保険給付、保険財政も考えました保険給付として一定の基準を定めるという、その両者の調整を図る仕組みという意味で、たまたまドイツが先行的に実施をしておった例も倣いまして、日本版という前提を置きまして御提案をしたわけでございます。

 これもお話にございましたけれども、賛否が率直に言って分かれました。審議会におきましても賛否が分かれまして、例えば学識者と言われるお立場の方々の賛否も分かれました。一方、それに対する別の御提案というのも多数出てまいりました。

 私どもがあえて提案した立場で今思いますと、特に大きな論点が二つございまして、ちょっと長くなって恐縮でございますが……

○今井澄君 できるだけ短くしてください。

○政府参考人(大塚義治君) はい。
 論点がいろいろございまして、私どもの反省点としては、その論点に対して十分御説明がし切れなかったという意味では私ども反省点の一つでございますが、当時、最大の問題はやはり薬価差ということでございました。

 薬価差の存在が医療全体を、あるいは薬価全体をゆがめているんではないかというお話が論点の焦点でございましたので、その後、この参照価格制度を断念せざるを得なかったわけでございますけれども、薬価差の縮小、解消ということに焦点を合わせまして、その後、様々な改革をしてきたと。特に、価格を決定する手続を透明化すると、この点に重点を置きまして改革を進めてきたというふうに認識をいたしております。

○今井澄君 確かに、価格の決定システムが透明化されたとか承認が早くなった、これは私も率直に認めます。御努力があったと思いますが、その薬価差の問題だって、今日はもう先ほども言いましたように質疑しませんけれども、表面上の薬価差は三分の一に減ったと言われるけれども、これ世の中、商売というのは安く買って高く売るのが商売の常識なんですよね。これに付け込んで薬漬けになるからいけないんであって、今度、薬価差どこかへ行っているんじゃないのと、調剤薬局には薬価差というのはないんですかということだって調べてみたいし、それをやるために、例えば処方せん料という新たなもので医療費が増えているんじゃないですか、それを差し引きしたらどうですかということだってまだまだ議論する余地があるんですよね。

 それから、二百五円ルールが問題になりましたけれども、今度は二万円ルールなんて変なものもあるわけでしょう。審査に出さなくてもいいわけですよ、月二万円以下はね。そうすると、またまた不透明なもの。まあそれはそれでいいです。苦しい答弁、要するに、あれが抜本改革ではなかったということですよね。

 それでもう一つ。本当にお薬の無駄を患者の立場に立って、薬害の問題もなくすとすれば、今日はあえて新聞コピーをここに付けましたけれども、これは医政局長と保険局長、両方にお聞きしたいんですが、昨年の八月、約一年前に、動脈硬化学会がコレステロールの正常値を二十上げるということを提案した、九月までにそういうガイドラインを作るということになったと。そうすると、およそ二千三百万人の人がコレステロールを下げる薬を飲んでいるんだけれども、そのうちの一千万人はお薬飲まなくてよくなるようになりますねということが書いてあるんです。これは医療界の中に抵抗が大きいと。そんなことを言ったら、昨日まで出していたのに患者に何て言うんだって言っている人がいる。何て言うんだって、あんた、どういう医者ですかと言いたくなるんですけれどもね。そういうことが書いてある。

 それから、今年六月十八日にまた同じ新聞が取り上げて、その後、全然決まっていない、あれだけの提案があったのに決まっていないと。相変わらず一千万人以上も無駄に飲まなくていい人が飲んでいて、たなざらしになっている。しかも、飲まなくていい人は主に女性だと。女性なんというのは、女性なんというのはじゃない、女性はそもそも心筋梗塞になりにくいんだよね。その人たちが主に飲んでいる。

 こういうことを新聞に書かれて、国民の健康に責任を持つ、そしてしかも医者が、医者であって局長をやっておられる医政局、厚生行政をどう考えられるのか。また、保険局長には、一千万人がコレステロールのお薬を飲まなくてよくなれば医療費は幾ら安くなるのか。それを答えてください。

○政府参考人(篠崎英夫君) ただいま先生御指摘のコレステロールの基準値のことでございますが、確かに、今月十九日に、日本動脈硬化学会におきまして疾患の診療ガイドラインというのが取りまとめられまして、合併症の有無によって違いますけれども、それに基づいた基準値の見直しが行われたというふうに承知をいたしております。

 今回のように、学会においてその治療法などに関する様々な御意見、またあるいは学説がございまして、意見の集約が困難な場合があるということは承知をいたしておりますけれども、このような議論が起こる原因の一つとしては、我が国においては臨床研究が少ないというような事情もあるのではないかと考えております。よりレベルの高い科学的な根拠を生み出すような、そういう大規模な臨床研究の振興が必要なのではないかというふうに考えております。

 御指摘の点でございますが、今回学会が作成された診療ガイドラインにつきましても、十四年度、十五年度、準備期間を設けまして、十六年度から供用を開始する予定にしておりますが、診療ガイドラインのデータベースに収載するなどいたしまして、こういう最新の医学情報が速やかに国民、そしてまた医師サイドに提供できるように努めてまいりたいと考えております。

○政府参考人(大塚義治君) 仮にコレステロールの基準値が変更になりまして患者さんが半分になる、翻訳をさせていただきまして、高脂血症用剤が仮に半分になると、こういう前提で数値を申し上げますと、十二年度の調査でございますけれども、高脂血症用剤が全体の医薬品に占める割合が一・一二%という数字がございます。こういうことでございますので、薬剤費とのボリュームを掛け算をいたしますと、三百数十億というようなことかなというふうに考えております。

○今井澄君 三百数十億という数字は信じられないですね。というのは、高脂血症薬である有名な、私も医者の時代に使いまして、本当に切れ味がいいんですね、下がるんです。そのお薬はその一品目だけで一千億を超える売上げがあるんですよね。どうも三百数十億というのは分からないので、後でその算定根拠を出していただきたいと思いますが。そのお薬の名前、具体的に私取り上げてかつて厚生委員会時代にやったんですけれども、余り具体名挙げるとやっぱりいけないようですので、やめますけれども。一品目だけで一千億を超える売上げがあるお薬があるんだから、今の数字は信じられないです。

 それから、前者、医政局長のお答えに対しては、私、恥ずかしいと思います。質疑準備が不足だったな。そうですか、十九日に動脈硬化学会でガイドライン出しましたか。それは分かりました。そのことを調べていないまま質問したのは非常に恥ずかしいと思いますが。

 ただ、この問題は、医療内容というのはあくまでも現場の医師と患者の問題ですから、確かに私も国家権力が介入すべき分野かどうかは大変疑問に思っておりますが、しかし国民の健康に、あるいは経済も含めて、財政も含めて責任を持つ厚生労働省としては、やはり正しいものは正しいということで進める方向で、特にデータベースの方や何かはもっともっと力を注いでいただきたいと思うんです。

 ついでに、ちょっと時間がない中で申し上げますと、実はコレステロールに関して私苦い経験があるんですが。

 私、三十年前に長野県で脳卒中の予防、高血圧の予防に取り組んだときに、何しろ当時の地方では卵や牛乳、こういうものの摂取が少なくて、動脈硬化が進んで高血圧二百を超える人はざらでしたし、脳卒中で倒れる人、多かったんですね。どういう指導をしたかというと、もちろん寒さ、塩、と同時に牛乳や卵、こういうものを摂取して丈夫な血管を作れという指導をしたんです。

 ちょうどそのころアメリカから、心臓病の予防にはコレステロールはいけないよというので、卵、牛乳を制限する運動が入ってきたんです。それがいきなり田舎にストレートで来るんですよね。ああいう世界は医者の世界でも速いんですよね、ばかげたことに。それで、こっちが保健婦さんと一緒になって一生懸命、塩分減らせ、卵と牛乳一日一本一個と言っているときに、卵と牛乳減らせというような指導する保健所のばか所長がいる。もう参ったですね、本当に。いや、まあそれはそれとしておいて。こういう点も厚生労働省としてはきちっと見張っていただきたいと思います、過剰な介入はともかく。

 そこで、もう一つ、今度、医療提供体制なんですけれども、これが今度ないということで、厚生労働大臣の方から先ほど、これは全力を挙げて取り組むけれども、これは厚生労働省の問題だというお答えがあったんですが、確かにこれ健保法の問題ではないことは確かだと思うんですね。だけれども、これは医療法とかそういうことにかかわる問題で、これはやっぱり厚生労働省だけの問題じゃなくて、やはり国会にかかわる問題だと思うんですよ、法律にかかわること。

 特に、私は、やはりこの医療改革の根本は、今医療がどんどんどんどん一方で高度化する、医療費もどんどんどんどん増えていくと。その中で、医師と患者の関係、あるいは医療機関と患者の信頼関係がどんどん損なわれている。事故もある、情報隠しもある。実は、そこを直していくことを抜きにしては、単にデータベースを作って情報を出したから国民がいい医療を受けられるかというと、そういうものでもないんですね。

 私も今度患者になっていろいろ掛かってみましたけれども、やはり情報だけだったら取れるんですよ、何も日本の情報じゃなくても。アメリカの情報をデータベースでどんどん取れますからね。

 これはある患者団体からも聞いたんですけれども、今の三十代、四十代は説明なんかしてほしくない、説明を求めていないと。インターネットでもう情報は取れるんだと。その情報が正しいかどうか、お値段としてこれが適切なお値段でこれだけ払っても受ける価値があるかどうかということのアドバイザーとしての医師が欲しいんだという年代もあるそうです。七十、八十になると、あなたの病気はねなんて説明をすると、先生、もういいです、お任せしますからというふうに違うんですよね。

 そう考えてみますと、やっぱりこれ医師、患者関係の在り方をどう作り直すかということだと思うんです。その根本としては、私はやっぱり医者教育というのは非常に必要だと思うんですね。

 さっき文部科学省の方が来られて、ヒポクラテスの誓いなんていう非常に懐かしい古典的な言葉を聞いたんですけれども、あれ大間違いなんですよ、いないところで言っちゃ申し訳ないんですけれども。確かに、我々、私のような年代の人間はヒポクラテスの誓いということを教わりました。医の倫理ということ。だけれども、その前提に立っているのは、医療というのは極めて専門的な知識や技術であって、これは医者のみぞ知るものなんだ、一般の人は知らないんだと、したがって我々はそういう立場にあるんだから、尊い仕事をしているんだから、高い倫理性を持ってやらなきゃならないということを教わったんです。

 ところが、今はそうじゃないんですよ。情報は患者のものなんです。患者の選択権、患者の権利という時代になったんです。もうヒポクラテスというのは知らしむべからずよらしむべしの時代の医の倫理で、あんなことを言っているから古いんですよね。そういう中で育てられた医者は、どんなにいい医者であっても患者の立場なんて分からないということが私よく分かりました。

 私は、この間、もう数々の専門医に実は恥ずかしながら掛かりました。ところが、その専門医は、自分の専門のことは本当によく知っています、教えてくれます。自分の専門以外のことは一切分からないんです。それをコーディネートする必要があるんですが、私は幸い医者だったからコーディネートをして、今度は皮膚科だ、今度は整形外科だとか、うまく掛かって、ちょっと医者歩きをしちゃって医療費を増やして申し訳なかったと思っておりますけれども。

 実は、必要なのは、患者は何で悩むのか、何が困っているのか、情報がないから困っているだけじゃないんですよ、患者の立場に立って考えてくれる専門家がいないから困っているんですよ。それは、大学のように研究や学問や教育を中心とするところで、医者を集めてヒポクラテスの誓いなんて言っているから、それは優秀なお医者さん育つでしょう。でも、その優秀なお医者さんは本当に患者のためにその優秀な技術も知識も発揮できないという悲劇が今日本じゅうに生じちゃっている。

 しかも、日本は医療費抑制策がどんどん進むから、現場のお医者さんが夢を失っている。最近、東大病院の病院長以下幹部七名とも話しましたが、一人一人はみんないいお医者さんで、何しろ医者を教育するのに非常に困っている、夢を与えられなくて困っていると。

 優秀なお医者さん、これ新聞にも出ていましたね、ドイツも今医者不足なんだそうですね、あの医師過剰だった。なぜかというと、医学部に入った学生の二割が卒業するまでに転科、転部をしてしまう。医者になっても展望がないと。卒業して医師免許を取った二割が外国へ行ってしまうと。一生懸命立派な医者になりたい人間は実力の発揮できるアメリカに行くと。金をもうけたい人は今医者不足で困っているスウェーデンとかそういうところへ行って出稼ぎをする。あとは製薬メーカーとか保険会社に勤めて、医者の専門知識を高く、そこで高い給料をもらうと。なぜか。忙し過ぎるんですよ。忙し過ぎて、その割に、ドイツも相当医療費抑制策やっていますよね、それで給料が少ないというんで、良心的な医者ほど忙しくなって、実入りが少なくて、評価がないもんだからそうなる。

 日本でもそうなんですね、実は、だんだん。

 ある人の本に書いてありました。本当に医者らしい医者をやろうと思うんだったら外国へ行く。外国へ行っちゃったのいます。金をもうけたかったら開業する。権威が欲しいんだったら、研究したいんだったら大学に残ると。誠におかしな世の中になってきてしまっていると思うんです。

 そうすると、この医者の教育の問題というのは、これは確かに厚生労働省の管轄ですけれども、もう一つ相手、文部科学省があります。厚生労働省だけではどうにもなりません。

 それから、もう医師の研修の義務化が二年後に控えていて、これは確かに政省令の事項、厚生労働省の事項になっているかもしれないけれども、しかしこれはやっぱり国民的議論をする必要があるんですよ。うちの今、櫻井先生が法改正も含めて取り組んでいるから、是非これはやっていただきたいと思うんですが。

 さて、ちょっと余分なことを申し上げましたが、医療提供体制の在り方について厚生労働大臣にお尋ねしたいんですけれども、どういうことがポイントで、そして一九九七年の改革にもいろいろなことが書いてありましたが、どの程度進んだ、これはもしあれでしたら事務当局でも結構ですが、今、何をじゃ厚生労働省としてお考えなのか、進めているのか、進んできたのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) これまで進みました問題は事務当局の方から少しやらせたいと思いますが、医療供給体制の今後の進め方でございますが、これも考え方、それぞれあるだろうというふうに思っておりますけれども、やはり地域の医療を中心に考えましたときに、そこに中核の病院があって、そして他の診療をおやりになっている先生方がおみえになっている。やはり連係プレーがうまくいっているようでいっていない。そして、そこがうまくいかないものですから、患者の皆さん方にとりましては、いわゆる渡り鳥をしなければならないというようなことが起こってきている。そのやはり連携がひとつうまくいかなければいけないと、そこをもう少し、どう知恵を絞るかということが一つ。

 それからもう一つは、病院の在り方。地方の病院は何でもやらなきゃならないということもありますから、そう系統化ということはなかなか難しいかもしれませんけれども、しかしもう少し大きい病院におきましては、どういうふうなところを自分の専門にやって私のところは成果を上げているということは、これはもう情報開示もしていただかなければなりませんし、また全体に情報開示をしなきゃならないというふうに思いますが、もう少しそこは、何をやはり得意としているのかということを明確にして、そうした病院との体系をどうしていくかということがもう一つ。

 三番目に、もう一つ挙げさせていただければ、これは救急医療の問題でございまして、これなかなか、小児の問題も含めて、掛け声は掛けるんですけれども、現実問題としてうまく機能していない。ここを、救急医療体系をどう構築をしていくのか。現在でもまだまだできていないところがたくさんございまして、そうしたことをどうしていくのかということが、先生が先ほどお挙げになりましたような医師そのものの質の問題とまた別個に、病院、診療所の体系化の問題として私は大きな問題ではないかというふうに考えている次第でございます。

○政府参考人(篠崎英夫君) 御質問の、平成九年以降、医療提供体制の見直しにつきまして、経年的に、具体的なものを代表的なもので幾つか御説明をさせていただきますが、平成九年の第三次医療法改正におきましては、まず、患者の立場を尊重した医療を確保するためのインフォームド・コンセントの規定を整備をいたしました。そして、医療機関の機能分担と連携の促進を図るための地域医療支援病院というものの創設を行いました。

 平成十二年の第四次医療法改正におきましては、まず、患者の病態にふさわしい医療を提供するための病床区分を明確にいたしました。急性期病床と療養病床の区分でございますが。次に、療養環境を向上させるため、人員基準、そして設備構造基準を改善をいたしました。さらには、医療従事者の資質の向上を図るために、医師などの臨床研修の必修化を図りまして、これは平成十六年の四月から実施という、そういう措置を講じたところでございます。

 平成十三年になりまして、昨年の九月には、「二十一世紀の医療提供の姿」として我が国の医療の将来像のイメージを御提示申し上げまして、その実現に向けた改革のスケジュールも御提示したところでございます。このスケジュールにのっとりまして、昨年の末には「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」というのを公表いたしまして、電子カルテなどの普及目標、その実施方策をお示しをいたしました。

 そして、今年になりましてでございますが、平成十四年の四月には、患者の選択の拡大のため、広告規制を大幅に緩和をいたしました。

 そして、平成十四年度、先ほど御答弁申し上げましたけれども、十四年度から、最新の医学情報などを医師や患者に提供するEBMデータベースの構築に着手をいたしまして、十四年度、十五年度、準備期間を置きまして、十六年度から供用開始の予定というようなことでございます。

○今井澄君 それなりにいろいろやってきておられることは私も知っておりますし、今お話しになったようなことだと思うんですが、しかし問題は、なぜ抜本改革なき負担増と私どもが批判するか、あるいは国民はそう受け取るかということは、やっぱり目に見えた形で、これまでの医療の在り方をこういうふうに変えるんだという、そのやはり基本的な視点の変え方がないと思うんですね。

 例えば広告規制の緩和、今度の四月からの広告規制の緩和はかなり大胆だと私も評価いたします。ですけれども、要するに厚生行政のこれまでの考え方は、広告をやたらにやらせると、今度の中国のやせ薬じゃないけれども、国民に被害が及ぶから、認めたものしか広告させないよという規制行政。要するに、悪いやつがいるから、そういうやつをはびこらせないためにまず規制するんだという考え方でずっとやってきているわけですね。その結果どうなったかというと、それはいい面もあるけれども、既得権を持った人の既得権を守ることになっちゃっているんじゃないですか。新しいことをやるようになった人たちというのがなかなか知られない。

 例えば、アレルギー科なんというのは、あれ、いつ認められたんですか、今は認められていると思うんですけれども。アレルギーなんというのは国民の中ではもうとっくに知られているのに、アレルギーを専門として言うことができない。それは、言ってみれば医療界の古い体質の中で、これは自分の科の、自分の縄張だと思っているものだから、新しい科の名前なんかを作られて、新しいばりばりの医者にそこをやられると困るからという、そういう既得権を守ることに実は国民を守るはずの規制がなっちゃっているというところで今、実は大改革。

 したがって、広告規制の緩和も、原則広告はいいですよと、だけど国民に害を与えるようなこういう広告は規制、してはいけませんよ、そういうふうに例えば法律を変えるということをやると国民にも分かりやすいし、我々も、ああ、抜本改革だなというふうに受け取れるんですよ。それを役所の中で、業界との、業界の既得権を持ったところとあれこれ。これはもう医療界だけじゃないですよ、建設業界だってどこだって。それが今問われているわけでしょう。

 そうすると、やっぱり抜本改革と言うからには、そこのところを法体系も含めて根本的に変えるということが必要だと思うんですね。

 それで、実は、質問、ちょっと急いじゃったんで飛ばしちゃったんですが、さっきの診療報酬との関係でも、これは大臣にも是非お聞きしたいんですけれども、私どもは、ずっと議論されてきている診療報酬、医師への支払システムが今のような出来高払、注射一本やったから幾ら、肝機能調べたから幾ら、往診に行ったから幾ら、こういう出来高払から、治して幾らという包括払にすべきじゃないかとずっと提案してきているわけですよね。そう提案してきているからといって、包括払、定額払の方が絶対的にいいとか、出来高払は絶対に駄目だとか、そういうことを言っているつもりはないんですよ。

 結局、現場の医療機関がちゃんとした医療をやって、そして職員を、ちゃんと過重労働にならないように働いてもらって、経営が成り立つ診療報酬であればどういう支払い方でもいいんですよ。ただ、坂口厚生大臣も何回もお答えのように、今の診療報酬は本当に数千項目あるんですよね。

 私も診療報酬の審査員というのを十四年やっていました。もう大変なことですよ。それで、あのレセプトというのを毎月二万件も机の上に積まれて、それを審査するんですからね。もう大変なことですよ。これを民営化しようなんという意見がどこかにあるようですけれども、民営化してごらんなさいというんですよ。だれが引き受けてくれますかって、こんな専門的な知識と技術を要するレセプトの審査なんというのは。恐らく、民営化したってだれも引き受けてくれないんですよ。

 その話は別として、経験がありますけれども、坂口大臣もおられるように、あんな複雑なものは窓口で患者さんが見れば、ああ、そうか、おれの注射は幾らだったのかと分かるぐらいまで簡素化できないんだったら、治して幾らにした方がよっぽどましじゃないですかというのが我々の主張なんです。だから定額制を言っているんですが。

 そこで問題になるのは、定額制の前に標準化があるんですよね、医療の標準化。今、EBMとかなんか言われましたけれども、やはり今の医療というのは、患者によって同じ病名でも違うんだ、同じ病名でもそのときによって違うんだ、何か常識みたいなことを言われますよね。風邪だって人によって違うよ、風邪だって今日と明日で違うよ、だから治療法が違うんだよ、だから標準化はできないよ、まして定額払はできないよと言われると、そうかなと思うけれども、皆さん、医者に行ってごらんなさい。自分の前に診てもらった風邪の患者と自分と違う治療を受けていると思う人はいますか。どう少なく見積もっても、八割以上の患者は定型的な治療を受けているんですよ。なぜか。その方が安全だからなんですよ。間違えないからなんですよ。

 例えば胃がんの手術だったら、入院して、手術して、何日目にどうなってこうなってと、クリニカルパスがもう今進んだ病院に全部できているんですよ。胃がんは慢性期か急性期かどっちに分類するのか知りませんけれども、こういう病気はもう治療法はきちっと決まっているんです。肺炎だとなったら、まずばい菌が、原因の菌を検査に出すと。その菌に一番効く抗生物質を使おうなという前提の下で、しかし今最もはやっている菌はこの菌で、今一番効く抗生物質はこれだからというので、はい、入院して、点滴して、抗生物質はこれ。決まっているんですよ、マニュアルが大体。それが決まっていなかったら医者はやってられないですよ、一人一人全部考えて。

 第一、昔は医者のさじ加減といったけれども、今は全部錠剤じゃないですか。背の低いおばあちゃんが来てコレステロールの薬を出した。次には相撲取りみたいな大人が来てコレステロールの薬を出した。さじ加減なんかしないで同じ薬を出しているじゃないですか。それが現実でしょう。標準化しているんですよ。

 これは坂口大臣も御経験はおありだろうと思いますが、私も医者になったときに、これは小池さんたちのグループで作っているんですかね、「臨床医の注射と処方」、非常に便利な薬がありましてね。風邪だと思ったら、風邪の種類、鼻水が主体かせきが主体かによって、薬はこう、注射はこうという非常に便利な薬が毎年改訂されて出ているんです。我々は、教授に教わるよりも、それを大事にしながら、OJT、医者になってからのトレーニングを始めたんです。

 そのぐらいどの世界にだってマニュアルがあるし、マニュアルに沿ってどうやって治すか、マニュアルに合わない人にどうするかというところで医者の裁量権があるんですよ。そうすると、標準化をしなければ何もできない。それを今までは、何ですか、厚生労働省も、審議会の偉い先生方も。医者から、患者一人一人違うんだよと言われると、ああ、そうですかと引き下がっちゃって。ばかげた話ですよ。

 そこで、坂口大臣にお尋ねしたいんですけれども、いっそのこと、ここで抜本改革と言うからには、診療報酬の支払制度も治して幾らということにしてみようじゃないか。下手くそやったらその病院が損するよ、うまく治したら得するよと。お薬の使い方もそうです。そういうふうにしてみて、当然それに当てはまらないものあるでしょう。この人は特例でした、その人だけ紙に書いて、どうして特例かということでプラスアルファくださいと、そういうシステムに切り替えることこそが抜本改革だと思うんですが、そう思いませんか。どうでしょう。

○国務大臣(坂口力君) 名医今井先生がおっしゃるんですから間違いないんだろうと思いますが、出来高払でずっと今までまいりまして、出来高払だけではやはりいろいろの弊害を生むというので、包括払を大分混ぜ合わせてまいりました。しかし、まだ十分ではないというふうに私たちも思っておりまして、とりわけ救急のものとそれから慢性のものと、慢性のところには包括医療を大分入れてきたわけですね。しかし、少しまだ足りない。

 今回、今度は大学病院の中で包括医療をやってもらってはどうかという提案を申し上げて、そして今、大学病院と御相談をさせていただいている。これはかなりな抵抗ございまして、病院長さん方に先日もお会いをいたしましたけれども、東京大学の附属病院長さん始め皆さん方、これ、余り機械的にやられちゃ困るというので随分お言葉がございました。

 しかし、ここは大学病院のようなところこそ包括医療でひとついろいろおやりをいただいて、そしてお若い皆さん方にも、やはりこういうふうに医療というのはやるものだと。掛かるところは掛かるけれども、しかしここはこういうふうにすれば少なくてよくできるんだというところをやはり教えていただかなければならないのではないかというふうに思っておりまして、これはお話合いを十分させていただきますけれども、是非やらせていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 そんなことで、御指摘のように、ここは拡大をしていく方向であることはもう間違いがございませんので、そのスピードをどうするかという問題だろうというふうに思っています。

○今井澄君 そこなんですけれども、大臣、やっぱりちょっと歯切れが悪いと思うんですよ。確かに、大臣がちょっと言われた、データがないと。実は、日本の厚生労働行政で一番後れてきたのはそこなんですよね。もう定額払というのは、いいか悪いかは別として、世界の流れなんですよね、DRG―PPS。それを今ごろ厚生省は、まだ何病院か本当に数えるような病院で試行実験やっているだけでしょう。本当に後れているんですよね。

 つい最近、私は、レセプトの電算処理システムについて三十年来、最初のころからやっているあるコンピューター会社の人から手紙をもらいました。

 私も、実は三十年ぐらい前からそういう人たちとお付き合いしながらコンピューター化やってきたんですけれども、日本と同じ出来高をやっている韓国では、もうコンピューターでほとんど八割、九割はレセプト審査やっている。ところが、日本はいまだにできないと。聞いてみると、何かDSLですか、あれなんかでも韓国は完全に進んでいるそうですね、ADSL、ブロードバンド。日本は本当、後れちゃっているんですね。どうしてかということを調査団出して調査してもらうべきじゃないかと、手紙いただいたんです。

 本当にここは後れているんですよね。ですが、だからこそ、だからこそこれは、大臣が先頭に立って声を掛けないとだめだろう。ここは、小泉総理も前回の改革のときにも歯切れが悪かった。これはだれに遠慮しているかということ、本当に気になるんですけれども。

 いや、要するにどっちがいいと言っているんじゃないんですよ、さっきから、出来高と包括と定額とが。そうじゃなくて、頭を切り替えて、どっちを基本にするというやり方で今後やりましょうよという、そこにこそ抜本改革ができるかどうか、スタートできるかのかぎがあるから、そこを言ってほしいというふうに私は考えているんです。

 現に、今までは、慢性疾患だったら定額でいいだろう、急性はそうもいかないだろうなというけれども、今、大臣がおっしゃられたように、正に急性期病院で何だか訳の分からない千差万別の難しい病気を扱う大学からまず定額払を始めようとしているわけでしょう。さっきお話ししたように、風邪みたいな典型的な急性疾患が定額払にふさわしいということはお分かりでしょう、大体。風邪治して幾らでいいじゃないですか。いや、風邪だと思ったら違ったんですよと、プラスアルファくださいという請求システムを付加しておけばいいでしょう。

 急性疾患こそある意味では私は定額がふさわしい、治して幾らの包括がふさわしい。慢性疾患の方がコントロールが難しいんですよ、実は。実は、慢性疾患の患者を数多く病院や医者に通わせている日本のシステムが問題なんで、慢性疾患は自己コントロール、地域での管理を含めてやることで医療費以外のところで見る方がいいわけです。

 私は、一歩も二歩も後れているし、これ、勘違いしているんじゃないか。今まで慢性疾患は定額払、急性疾患は出来高払とか、何か常識みたいに言われていたような、常識を覆したところから、いいと思います、大学病院からでも。急性疾患でもいいんです。とにかく標準化と包括払をやりましょうと。そのために厚生労働省はデータベースをきちっとそろえますよと。もう急いでここにはお金をつぎ込んでやりますよという姿勢を見せた方が、実は診療報酬システムも医療の標準化も情報公開も私は早道だと思うんですけれども、その辺、厚生大臣からもう一度お答えをいただきたいと思うんです。

○国務大臣(坂口力君) 標準化の問題は、今一生懸命取り組んでおりますが、私も初めて知ったんですけれども、この標準化というのも随分金の掛かるものでございまして、こんなに金の掛かるものかと今思っているわけでございますが、しかし、そういうことを言っておれませんしいたしますから、この標準化をもう積極的に進めまして、今、病気の中では十幾つですかね、十数種類ぐらい、十六種類ぐらいでき上がってまいりましたし、これをすべて国の方がやらなきゃならないか、やはりここはそれぞれの専門学会等もあるわけでありますから、そういうところでお出しいただいているところもあるわけでございますので、そうしたこともお願いをして、できるだけ早く広げていきたいというふうに思っております。

 包括払の方は、一生懸命御指示に従いましてやりたいと思います。

○今井澄君 御答弁ありがとうございました。

 それで、政府参考人にお尋ねしたいんですが、標準化とかあるいはデータベース化とか、それに幾ら予算付いているんでしょうかね。昨年の補正予算で、たしか病院にコンピューター入れてレセプトをコンピューター化するというのには二百何十億付いていたんですけれども、ちょっとその辺お願いします。

○政府参考人(篠崎英夫君) 昨年の補正予算のことで、電子カルテ等につきましては二百五十億でございましたが、平成十四年度、ただいま先生御質問のございましたEBM等の関連予算といたしましては五十三億七千万円でございます。

 先ほど来御質問がございますように、診療ガイドライン等の整備は大変重要なことというふうに考えております。このために、現在、公的な第三者機構にこのデータベースをお願いするということがようやく決まりまして、今年度、来年度そのデータベースを構築をいたしまして、既に診療ガイドライン、今年度中に十六ほどでき上がることになっておりますが、逐次そういうものを整備して、そして医療現場の医師、そしてまた国民にも提供できるような形にしていきたいというふうに考えております。

○今井澄君 時間がなくなってきましたので、あと二つほどあれしますが、一つは先ほどちょっと話し掛けた医師の教育のことなんですけれども、やっぱりどの職業でも大学を出てから、あるいは資格を取ってからの訓練ですね、いわゆる職業人としての訓練、OJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニング、現場でやるのがどの世界でも常識ですよね。

 先ほども申し上げましたように、国民が一番必要としているのは、例えば欧米では九割の患者さんは家庭医に掛かっているわけですね、地域のお医者さんに。そうすると、そういう医者を育てるということをまず一つやらなきゃならない。それから、専門医も必要なんです、高度な専門医ね。多少心根が悪くたって、腕さえ良けりゃいいという点もありますからね、まあそれはそれで。

 そうすると、患者の立場に立った医者を教育するシステムに今なっていないんですよね、大学病院中心にやっているから。これ、地域で育てるべきだし、ある意味で、そういう医師を育てる、そういう医師が必要なんだという、厚生省もかつて家庭医を取り上げました。私は、家庭医というのはどうもいろいろ評判悪いんで、顧問医と呼んだらどうかと思っているんですけれどもね。

 そういうシステムを二〇〇四年の医師の卒後研修に合わせて、それと同じじゃなくてもいいですけれども、お考えになっていく、医師の研修場所を地域にしていくと。専門医は専門病院でいいです。そういうことについていかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 研修医につきましては、今まで余りにも大学病院に偏り過ぎておりました。そうではなくて、地域でこの研修医を受けていただけるようにしたいというふうに思っております。一つの病院でいろいろな科をやっていただくのは御無理な場合もあるわけでありますから、それは、例えば小児科なら小児科がその病院にはないというときには、別に開業しておみえになりますところでもいいと思います。

 そうしたところでそこはお受けをいただくというふうにして、それこそ、今御指摘のように、地域の病院群の間で研修を受けていただくというふうにしたいというふうに思っているところでございまして、そうした中で新しいドクターをはぐくんでいくということが大事。いわゆるプライマリーケアという言葉がございますけれども、そうしたところに勘の鋭い医師というものが大事だというふうに思っております。

 家庭医という言葉がございますし、今いろいろ、そういう言葉はございますが、何となく受け止め方が、医師の側のですよ、医師の方の受け止め方が、専門医と家庭医といいますと、何か専門医は偉くて家庭医は一段差が付いているような錯覚に陥ると。

 先ほどの薬の話じゃありませんが、先発品と後発品といったら、別に悪いことないんですけれども、後発品というと何か悪いような感じが受けるというのと同じでございまして、何となくそういうところがございまして、やはり家庭医というのも、これはスペシャリストだと私は思うんですね。プライマリーケアというふうにいったら、本当にこれはスペシャリストで、非常に大事なところだと思うんです。

 その辺のところも考えて、今後、ネーミングも含めながらどういうふうにしていくかということをやはり検討しないといけないと思っております。

○今井澄君 この問題はやっぱり大きな問題で、医師の養成システムをどうするのか、場をどうするのかというのは非常に大事だと思うんですね。

 私なんかも、考えてみますと、長野県で脳卒中の予防だとかいろんなそういう活動に携わってきたのは、先輩の若月先生とか吉沢先生とかいうそういう先輩のお医者さんに教わった面も多いんですけれども、むしろ現場では、今は保健師ですね、保健婦さんに教わったことの方が多いんですよね。あるいは栄養士さんに教わったことの方が多いということを考えると、やっぱり本当に生活の中での医療が大部分、八割、九割ですし、本当に専門医を必要とするような高度な医療が必要な場合というのは非常に少ないんで、遅れずにそこへ到達できればいいわけですから、そういうことをやってくれる医師の養成を主体とする方向にやらないと、どうもさっきのヒポクラテスの誓いじゃないけれども、何か専門の偉いお医者さんをどう育てるか、その人はどう崇高な使命を持つべきかなんという何か雲の上の話で研修問題を考えていては全然駄目だと。

 本当に国民的な視点の議論をこの委員会でも引き続き本当は、強行採決なんかせずに、きちんとやっていかない限り、抜本解決はできないんじゃないかと思います。

 それで、あと二問用意したんですが、一問は、病院の数を減らすという厚生労働省のあれが出ているのは私はいいことだと思うんですね。数だけあればいいというものじゃなくて、今みんな日本の病院が質が落ちてきているんですよね。だったら、数を減らしても質を上げながら、一方で今の家庭医みたいなのを作る方がよっぽど大事だと思っているんですが、これはもう質問しませんが。

 制度論、これは差し替えで来られた入澤肇先生が制度論をやらなきゃ駄目じゃないかということを質疑をされました。今日、森先生の方からも制度論の話出たし、大脇先生からも老人医療が出ましたが、この問題、最後に一つだけ。

 実は、新しい高齢者医療をどうするかということが前回の抜本改革の項目にも一つの柱として立てられ、今回の附則の中でも大きな柱として立てられていると。これがどういくのかが大変大切だと、方向を示せと先ほど御意見があったと思うんですが、私の認識は、実はこの新しい高齢者医療制度という、七十歳なり七十五歳なり年齢で区切って、老人を一まとめとして、この人たちの医療は中身はどうするか、お金、財源はどうするかという議論はもう実は終わったと、やっても袋小路に入ったということが明らかなんじゃないかと思っているわけです。それは、去年、厚生労働省が主宰して全国四か所で行われた公聴会でも結局そうでしたよね。

 問題は、日本だけですよね、年齢で区切って高齢者の医療制度を作っているの。その元は何かというと、老人医療の無料化から出発して、あれ自身は良かったか悪かったか、いろいろいい面もあったわけですが、袋小路に入っちゃったと。欧米どこを見たって年齢で区切っている制度、アメリカみたいな国民皆保険でないところはありますけれどもね。

 そうすると、今、坂口大臣が言い出された保険の統合、一本化ですよね。本来、全然別にサラリーマンだ、自営業だ、無職者だとできてきたものを今全国民でどうするのか、どうやって地域化するか、そういうことを一生懸命考えていかなければ、医療だけじゃなくて保険制度も都道府県化したり、住民の近くへ持っていって、そして住民がお金の使い方までコントロールできる、保険料まで介護保険のように参加できる、保険料を決めるまで。そうなれば、老人だけ区別する必要ない時点に来ているんじゃないかと。

 だから、新しい高齢者医療制度をどう作るかなんという、あの四案どれ取るか、お金どうするかよりも、そっちを先にした方がいいんじゃないかと。それこそ制度論だと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 確かに、医療保険制度を統合していきますとそうした問題に突き当たってくるわけであります。一元化してしまえば、これはもう言うに及ばずでございますけれども、今御指摘のありましたように都道府県単位で統合するということが可能であれば、私もあえて老人医療制度というのを別に作る必要はないと、そう思っております。

○今井澄君 ありがとうございました。


2002/07/25

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