2000/04/21

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自然エネルギー発電の促進に関する法律(仮称)大綱(案)

第1.総則
  1. 目的

     この法律は、自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずることにより、枯渇しない資源の有効な利用及び温室効果ガスの排出の抑制による地球温暖化の防止を図り、もって環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することに資することを目的とする。

  2. 定義等

    (1)この法律において、「自然エネルギー発電」とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

     @太陽光発電

     A風力発電

     B小水力発電(政令で定める出力以下の規模のものであって、ダム(河川法(昭和39年法律第167号)第44条第1項に規定するダムをいう。)を利用しないものをいう。)

     Cバイオマス発電(農業、林業又は製材業において副産物又は廃物として生ずるわら、家畜の排せつ物、木くず等を全部又は大部分とする有機物(当該有機物から得られる液体又は気体を含む。)を燃料として利用して行う発電をいう。)

     D@からCに掲げるもののほか、自然界に存在する枯渇しないエネルギー又は生物体から取り出すことができるエネルギー源による発電であって、経済性の面における制約から普及が十分でなく、かつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することに資するため特に必要なものとして政令で定めるもの

    (2)経済産業大臣は、(1)B及びDの政令の制定及び改廃の立案をしようとするときは、環境大臣に協議するとともに、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。

    (3)この法律において「一般電気事業者」とは、電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第2号に規定する一般電気事業者をいう。

  3. 国の責務

    (1)国は、自然エネルギー発電を促進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

    (2)国は、教育活動、広報活動等を通じて、自然エネルギー発電の促進に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

    (3)国は、自然エネルギー発電の安定供給、効率化、低価格化等のための研究開発の実施及びその成果の普及に努めなければならない。

  4. 地方公共団体の責務

     地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた自然エネルギー発電の促進のための施策を推進するものとする。

  5. 一般電気事業者の責務

     一般電気事業者は、自ら自然エネルギー発電を行い、又は、自然エネルギー発電による電気を買い取ることにより、自然エネルギー発電による電気の供給を促進するよう努めなければならない。

  6. 年次報告

    (1)政府は、毎年、国会に、自然エネルギー発電の状況及び政府が自然エネルギー発電の促進に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。

    (2)政府は、毎年、(1)の報告に係る自然エネルギー発電の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

第2.国の供給目標

  1. 国の供給目標

    (1)経済産業大臣は、自然エネルギー発電の促進の見地から、国の自然エネルギー発電による電気の供給目標(以下「供給目標」という。)を定め、これを公表しなければならない。

    (2)供給目標は、地球温暖化対策に関する基本方針(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)第7条第1項に規定する地球温暖化対策に関する基本方針をいう。)、自然エネルギー発電に係る技術水準その他の事情を勘案して定めるものとする。

    (3)経済産業大臣は、供給目標を定めるときは、環境大臣に協議するとともに、自然エネルギー発電審議会の意見を聴いて、閣議の決定を経なければならない。

    (4)政府は、(3)の規定により決定された供給目標を、国会に提出して、その承認を受けなければならない。

    (5)政府は、(2)の事情の変動のため必要があるときは、供給目標を改定するものとする。

    (6)(1)から(4)までの規定は、(5)の規定による供給目標の改定に準用する。

第3 認定設備

  1. 発電設備の認定

    (1)自然エネルギー発電を行う者は、その発電設備について、自然エネルギー発電に係る発電設備として政令で定める基準に適合する旨の経済産業大臣の認定を受けることができる。

    (2)経済産業大臣は、発電設備が(1)の政令で定める基準に適合しなくなったと認めるときは、認定を取り消すことができる。

    (3)経済産業大臣は、(2)の政令の制定及び改廃の立案をしようとするときは、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。

  2. 認定設備の設置の補助

     国は、認定発電者( 8.(1)の認定を受けた者をいう。以下同じ。)に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、認定設備( 8.(1)の認定を受けた発電設備をいう。以下同じ。)の設置に要する費用の1/2以内を補助することができる。

第4.自然エネルギー発電供給促進計画

  1. 自然エネルギー発電供給促進計画

    (1)一般電気事業者は、国の供給目標に即して、経済産業省令で定めるところにより、毎年度、当該年度以降経済産業省令で定める期間における自然エネルギー発電による電気の供給の促進についての計画(以下(2)及び(3)において単に「計画」という。)を作成し、当該年度開始前に、経済産業大臣に届け出なければならない。

    (2)一般電気事業者は、計画を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を経済産業大臣に届け出なければならない。

    (3)経済産業大臣は、自然エネルギー発電を促進するため必要と認めるときは、計画を作成した一般電気事業者に対し、その適正な実施又は変更を勧告することができる。

第5.自然エネルギー発電による電気の買取り

  1. 一般電気事業者の買取り約款等

    (1)一般電気事業者は、認定発電者からの自然エネルギー発電による電気の買取りに係る対価、期間その他の買取り条件について、経済産業省令で定めるところにより、買取り約款を定め、経済産業大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

    (2)(1)の買取り約款に定める買取りの対価及び期間については、自然エネルギー発電の促進に資するよう配慮するものとする。

    (3)経済産業大臣は、(1)の規定による届出に係る買取り約款が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該一般電気事業者に対し、相当の期限を定め、その買取り約款を変更すべきことを命ずることができる。

     @買取りの対価が不当に低く、又は定率をもって明確に定められていないこと。

     A一般電気事業者及び認定発電者の責任に関する事項並びに電気計器その他の用品及び工事に関する費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていないこと。

     B特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものであること。


    (4)一般電気事業者は、(1)の買取りを行う場合には、買取り約款に定める買取り条件以外の条件で買い取ってはならない。ただし、認定発電者が電気事業法第22条第1項に規定する供給条件により卸供給を行う場合は、この限りでない。

  2. 買取り約款の公表義務

     一般電気事業者は、11.(1)の規定により買取り約款の届出(変更による届出を含む。)をしたときは、その買取り約款をその実施の日の10日前から、営業所及び事務所において、公衆の見やすい箇所に掲示しておかなければならない。

第6.系統連系

  1. 技術上の指針

    (1)経済産業大臣は、自然エネルギー発電による電気の買取りに必要な認定設備から一般電気事業者の電力系統への連系に関する技術上の指針(以下「指針」という。)を定めるものとする。

    (2)指針は、自然エネルギー発電の促進を阻害することのないよう配慮して定められなければならない。

    (3)経済産業大臣は、指針を策定するときは、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。

    (4)経済産業大臣は、自然エネルギー発電に係る技術の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、指針を改定しなければならない。

    (5)(2)及び(3)の規定は、指針の改定について準用する。

    (6)認定発電者及び一般電気事業者は、指針に基づいて連系するものとする。

  2. 当事者間の協議

    (1)認定設備から一般電気事業者の電力系統への連系に関する具体的な措置及び費用負担については、当事者間の協議により定める。

    (2)一般電気事業者は、費用負担についての(1)の協議に当たっては、自然エネルギー発電の促進を阻害することのないよう配慮するものとする。

  3. 経済産業大臣の裁定

    (1)14.の協議をすることができず、又は協議が調わないときは、当事者は、経済産業大臣の裁定を申請することができる。

    (2)経済産業大臣は、(1)の規定による裁定の申請を受理したときは、その旨を他の当事者に通知し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならない。

    (3)経済産業大臣は、(1)の裁定をしようとするときは、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。

    (4)経済産業大臣は、(1)の裁定をしたときは、遅滞なく、その旨を当事者に通知しなければならない。

    (5)(1)の裁定があったときは、その裁定の定めるところに従い、当事者間に協議が調ったものとみなす。

  4. 一般電気事業者に対する補助

     国は、政令で定めるところにより、一般電気事業者が自然エネルギー発電による電気の買取りによって負担することとなる費用について、予算の範囲内において、必要な補助を行うことができる。

第7.自然エネルギー発電審議会

  1. 設置

     経済産業省に、自然エネルギー発電審議会(以下「審議会」という。)を置く。

  2. 所掌事務

     審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、自然エネルギー発電の促進に関する重要事項について、調査審議する。

  3. 組織

    (1)審議会は、自然エネルギー発電を行う者を代表する委員(以下「発電者委員」という。)、一般電気事業者を代表する委員(以下「事業者委員」という。)及び自然エネルギー発電の促進に関し学識経験を有する委員(以下「学識経験者委員」という。)各○人をもって組織する。

    (2)委員は、非常勤とする。

  4. 委員の任命

    (1)委員は、経済産業大臣が、任命する。

    (2)学識経験者委員の任命については、両議院の同意を得なければならない。

    (3)経済産業大臣は、学識経験者委員を任命するに当たっては、自然エネルギー発電の促進を目的とする市民活動を行う団体を代表する者であって適当なものが含まれるよう努めなければならない。

第8.雑則

  1. 報告の徴収

  2. 立入検査


附 則

  1. 施行期日

     この法律は、○○から施行する。

  2. 検討

     政府は、この法律の施行後5年以内に、この法律の施行の状況、電力の自由化の進展その他の社会経済情勢の推移及び燃料電池その他の自然エネルギー発電に係る技術の発展等を勘案し、自然エネルギー発電を促進するための制度について総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

  3. 経過措置

     この法律の施行前に自然エネルギー発電による電気の買取り契約を締結している者についての経過措置を置く。

  4. 電源開発促進対策特別会計法の一部改正

     電源多様化対策に、自然エネルギー発電の促進に関する法律(平成十二年法律第   号)の規定に基づいて行う補助を加える。

その他必要な他法改正

 


2000/04/21

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