人間空母 弁護士を笑え! 戻る目次

旧石器人でどこが悪い

改正された住民基本台帳法の第二次施行が、今年8月に予定されています。

というのは何かというと、住民票のデータ処理を全国共通仕様にして、市町村にあるデータを都道府県に集めるようにする、というものです。

市町村の規模にもよりましょうが、東京都23区の場合で、これにかかる費用は億単位で、おまけに毎年システムの維持にかかる経費も億レベル、といわれています。

これだけなら、「また例によって税金の無駄づかい」というだけの話です。しかし、この話にはまだ先があります。

総務省の「方針」では……ということは、ほとんど決まったも同然ですが……

  1. 都道府県は、集積されたデータの処理を、(財)地方自治情報センターに委託する。(このセンターは、旧自治省系列中で最大級の天下り先です)全都道府県が情報処理を委託することによって、全国どこでも住民票がとれるようになる。

  2. その便宜のために、国民一人一人に(ご希望に応じて)住民登録データの入ったIDカードを発行する。カードは身分証明書がわりにも使えて(ご希望とあれば)これを使って買い物もできる。
    というのです。

ちょっと見には、便利な制度みたいに見えます。しかし、これはどうも話全体がおかしい。

(1) 住民登録データのバイト数はたかが知れています。「全国どこででも住民票がとれる」便利の程度もたかが知れています。これに対して、一枚のカードのデータ容量は天文学的、システム導入に必要な行政費用も天文学的です。私は(すれっからしなもので)行政がサンタクロースになるような話はアタマから信用できません。

(2) カードがあれば便利ですから、クレジットを組むにも、ビデオを借りるにも、カードと個人認証ナンバーを使ってするようになるでしょう。ということは、その人の日常生活のありとあらゆるデータが、個人認証ナンバーをもとにして集積されるということになります。その集積データは誰が管理することになるのか?「センター」に集積されて、行政はそこから必要に応じてどんなデータでも拾うことができるのではないか?

(3) いちばんヤバいと思うのは、現実に今日こんにち、行政民間を問わず、個人情報のセキュリティは全くなっておらない、ということです。私が個人的に出くわした範囲に限っても、住民登録、社会保険、電話加入などの個人データは……漏れ口がどこにあるのかは知りませんが……ダダ漏れの状態です。卑近な例で申しますと、我が家の長女は芳紀19才にあいなりますが、ここんとこ、成人式用に振袖をあつらえませんかという電話があっちこっちの呉服屋さんからやたらにかかってきます。それも電話帳にのせてない番号に。

さて問題ですが、クレジットの使用履歴からエロビデオの借出本数にいたるまでのデータが1か所に集積されちゃって、それがダダ漏れに流出しちゃうと、アナタやワタシの立場はどうなるのでしょうか?

しかも、いま国会にかかっている個人情報保護法案や、政府が準備中の行政部門の個人情報保護法制は、このセキュリティの問題や、流出がおきたときの補償の問題は、きれいにネグレクトされているのです。

日弁連は住基法の第二次施行については、「条件がととのっていない」という理由で反対していますが、さてどの程度効果があるものやら。

とりあえずワタシ個人としては、旧石器人と罵られようが軽蔑されようが、自分が納得いくまでは、断じてIDカードは受け取るまい、と思っている次第です。

(2002/01/23)


人間空母 弁護士を笑え! 戻る目次