河田英正の主張

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2001/02/11 法曹の仲間意識

最も公平・公正な試験といわれている司法試験(若年者の優遇枠が導入されているが)に合格し,2年間(最近1年半に短縮)の合同の研修期間を終えて希望に従って裁判官,検察官,弁護士になっていく。この三者を法曹といいます。私は,研修所26期生ですが,互いの期を確認しあうことによって,何となくその人をわかりあえる雰囲気があります。

こうした「仲間意識」は,同一の司法試験,同一の教育を受けた者で,人権の擁護と社会正義の実現という共通目的のために,対等の立場で切磋琢磨しながら職務を遂行していくところに生まれます。今回の福岡事件は,この法曹の仲間意識とは全く異なるものです。検察庁と裁判所の癒着というべきものです。特に,刑事司法の病める部分として厳しく追及されなくてはなりません。「仲間意識」が悪しき方向に流れぬよう,自戒しなければと思いました。

司法制度審議会では,誰でも受験できる司法試験から,特定の大学院を卒業した者だけが受験でき,その合格率を70パーセントぐらいにする制度にしようとしています。そして,修習は検察官,裁判所,弁護士が独自で行うようにすることが重視されるようになります。互いの信頼感はなくなり,対等に職務を遂行することが難しくなり,大学別の系列化が進むことになるでしょう。もう「大平光代弁護士」(「だからあなたも生き抜いて」の著者)のような人は生まれなくなります。今回の福岡事件が法曹の真の「仲間意識」を否定する方向に進んでいることに危惧を感じています。


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