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 平成25年5月9日
川口環境委員長解任決議案 賛成討論
みんなの党
水野賢一

みんなの党の水野賢一です。川口順子環境委員長解任決議案に賛成の立場から討論いたします。
 まず今回の問題の本質は川口委員長が、私的な外遊を優先して、公務である委員会をすっぽかすという前代未聞の不祥事を引き起こした点にこそあります。
 川口氏は訪中の成果についてこう言っています。「ハーバード大学教授からも良い会談だったとのコメントを貰っている」。しかし、これは明らかに論点のすりかえです。問題は訪中が有意義だったか否かではないんです。今回の川口氏の訪中は国会から派遣されたものでもなければ、委員会を代表しての訪問でもない。ましてをや政府の親書を持っていったわけでもありません。いわば川口氏の私的な外遊であります。その外遊を優先して、委員長自らが設定した環境委員会をすっぽかし、それを流会にしたことを許してよいのかという問題なんです。
当然のことではありますが、私は委員長たるものの最大の務め・公務は国会の委員会であると確信しています。私事を優先して公務を疎かにした人が常任委員長の職にふさわしいはずがありません。

 念のため申し上げておきますが、私たちも議員外交の意義は十分に理解・尊重をしています。それを邪魔したなどという事実はまったくありません。国会開会中の議員の海外渡航は基本的には議運理事会での承認が必要となっています。今年の通常国会が始まってから渡航の申請があったのは、これまで43人から計60件です。これらの申請は自民党からの申請も含めてほとんどすべて、それを承認しています。承認を得られなかったのはわずか1件のみです。今回の川口議員の訪中でさえ4月18日の議運理事会で“2日間の中国渡航”として了承しているんです。つまり野党が議員外交を妨害・邪魔しているなどという事実はまったくありません。
ただ国会開会中である以上、渡航にあたってのルールを守るのも、これまた当然のことではありませんか。今回の川口氏のように認められていた日数を自分で勝手に延長することが許されないのは当然のことです。もちろん委員会という公務を疎かにすることも許されません。

 川口委員長は中国滞在を延長する手続きをとったと主張しています。自民党国対の了承を得たとも主張しています。しかし根本的なところで間違っているんです。海外渡航については本会議もしくは議運理事会で承認します。つまり一党一派が了承すれば良いのではなく、国会の承認が必要なんです。自民党国対の了承は必要条件の一つではあるでしょう。しかし十分条件ではないんです。それを自分の党が判断したから、それでよいという川口氏の姿勢は国会の明確なルール違反であると同時に、それを庇う自民党の姿勢もまた驕りと断ぜざるをえません。
現に渡航の延長については、自民党所属の岩城議運委員長でさえ了承を与えていないではありませんか。岩城委員長がおっしゃっておられたのは「期限内に帰国するように」ということです。川口さん、要はあなたは、自民党の許可は受けたにしても、国会の正式な許可のないままに無断滞在をしたんです。これが実態ではないですか。

 委員長の海外渡航をめぐっては一昨年、昨年と2年間続けてゴールデンウィーク前後に問題が発生しました。こうしたことも踏まえて、自民党も中心になって委員長の海外渡航について新たな申合せを作ったばかりじゃあ、ありませんか。確かに、その申合せの中では、いくつかの場合には委員長の海外渡航を容認しています。しかしそれと同時にこうあります。「なお、いずれの場合も当該委員会理事会の了承を得るものとする」。当然のことでしょう。
川口さん、あなたがやったことは委員長による委員会のすっぽかしという極めて異例のことです。では、あなたはそれをするにあたって当該委員会、つまり環境委員会の理事会メンバーに了解を得ましたか。もっといえばそのための努力さえしましたか。すでに明らかになっている事実は、川口委員長は滞在延長を勝手に決めるに当たって環境委員会の理事会の誰に対しても相談・報告さえしていないということです。与党の筆頭理事に対してさえ中国からの国際電話一本もなかったのです。
すっぽかしという異例のことをするならば、すっぽかす相手に対して最低限の礼儀を尽くすのが当然ではないですか。もちろんそうしたからといってこの行為を容認する野党はないでしょう。しかし異例のことをするならば、そして自分自身で「滞在延長は国益のために必要だ」と本当に信念を持っているならば、その信念で自ら直接、野党に対しても説明するくらいの努力をしたらどうだったのですか。
そうした努力を何もせずに、自らセットした委員会に戻ってこないというのはいったいどういう神経をしているのですか。国会軽視も極まれりです。

 そもそも本当に国益を守ったのかも疑問です。いま明らかになっているのは、中国側の都合に合わせて川口さん、あなたが日程を変えたというだけのことであって、国家国民のために具体的にどのような利益があったのか、説明はまったくないのです。

 さて解任決議案に対してはこういう声もあるかもしれません。「川口委員長の行動は問題があったとしても謝っているのだから解任までするのはちょっと行き過ぎじゃないか」という意見です。しかし私は野党の対応は過剰反応どころかむしろ抑制的なものだと思っています。
そもそも川口氏のとった「無許可滞在、委員会すっぽかし」という行為は委員長として許されないのはもちろんのこと、国会議員としてあるまじき行動です。本来であれば国会議員としての懲罰にも相当する行為です。現に国会法124条には「正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席」した場合や「請暇の期限を過ぎた」場合を懲罰事由に掲げているじゃありませんか。そうした中、私たちは川口順子議員の国会議員としての資質を問う懲罰動議までは出していません。私たちが言っていることは「委員会に戻ってこない人はせめて委員長という要職からは退いてください」というだけのことです。この要求は決して過剰なものではないと考えます。

 私は川口氏の能力、特に外交や環境面での見識には敬意を持っています。私自身、11年前に当時民間人閣僚として外務大臣に起用された川口大臣の下で大臣政務官をつとめましたから、正直、そう思っています。
しかしその11年前にも海外渡航をめぐって川口大臣と私は意見を異にしました。私は外務大臣政務官として台湾訪問を希望し、大臣側は「中国が怒るから」と判断されたのでしょう、それを却下しました。その時、川口大臣はこうおっしゃいました。「台湾を訪問するならば政府の一員ではなく、政務官をやめて一議員として行きなさい」。私は政府の一員が台湾を訪問することにこそ意義があると考えていましたから、大臣の意見には反対であり、その結果、抗議の意思表示として政務官を辞任をした想い出があります。
私自身は今でも自らの主張は間違っていなかったと思っていますが、それは見解の相違ですからここでは論じません。ただ、あなたがおっしゃられた最後の部分「一議員として行きなさい」という言葉はそのまま今の川口委員長にお返ししたいと思います。一議員としての川口順子さんが中国を訪問し、日中関係について意見を交換すること自体には何ら反対しません。有意義な結果を生み出すこともあるかもしれません。しかしあなたは委員長なんです。委員長の最大の仕事である委員会を放棄するならば、委員長の職からは去るべきなんです。一日6千円の委員長手当を受け取る資格もありません。委員長を辞めた上で一議員として外交に力を注いだらいかがですか。

 これまで参議院本会議では通算すると24回にわたって委員長解任決議案が採決されてきました。結果は24回ともすべて否決でした。その多くは強行採決に抗議するための解任決議案だったからでしょう。
本日、本会議の採決によって常任委員長が解任されるとなれば衆参両院を通じて憲政史上初のことになります。それは、これまで委員会すっぽかしなどという恥知らずな事件を起こした委員長がいなかったからなんです。もしいても解任決議の採決前に自らを恥じて辞職していたからです。

 この採決は党派間の争いではありません。国会議員としての良識が問われる採決です。常任委員長というのは国会の役員です。国会の公務を平然と後回しにする委員長が、参議院の、国会の役員としてふさわしいかどうかが問われる採決です。与党議員におかれましても、ゆめゆめ川口委員長の擁護に回るような投票行動をとらないよう、国会議員としての良識を発揮していただくことをお願いして、私の賛成討論を終わります。

2013年5月9日

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